日本の循環型社会づくりはどこが間違っているのか
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著者 熊本 一規
雑誌名 明治学院大学国際学部付属研究所研究所年報 =
Annual report of the Institute for International Studies
号 13
ページ 49‑51
発行年 2010‑12
その他のタイトル What is Wrong with the Recycling Society in Japan?
URL http://hdl.handle.net/10723/973
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日本の循環型社会づくりはどこが間違っているのか?
熊 本 一 規
ダイオキシンが大きな社会問題になった 1997 年から約 12 年、「循環型社会元年」とされた 2000 年から約 9 年が経った。この間、ダイオキシンを規制する法律や循環型社会関連の法律が 整備され、表面的には汚染対策も循環型社会づくりも順調に進んでいるかのように見える。
しかし、産業界や国が進めているのは「産業政策としての循環型社会づくり」である。産業界 の負担をできる限り回避しつつ、税金を産業興しに注ぐことによって進められている「産業政策 としての循環型社会づくり」は、汚染物質を合法的に全国に撒き散らす仕組みを創りつつある。
「産業政策としての循環型社会づくり」がこのまま進められていくならば、全国各地で大気や水 質や土壌が汚染されることになり、「資源循環型社会」でなく、「汚染循環型社会」ができあがっ てしまう。
汚染対策は汚染の形を変えるだけ
汚染対策は、汚染物質をなくしているのではなく、汚染の形を変えているにすぎない。
たとえば、大気汚染防止技術は、汚染物質を集塵機などで捕捉する。しかし、集塵機等にたま った汚染物質を時折抜き出さなければならず、抜き出された汚染物質はダストと呼ばれる廃棄物 になる。ダストは廃棄物処分場に運んで埋めなければならない。つまり、大気汚染防止技術は大 気汚染物質を廃棄物に変えているにすぎない。汚水処理施設もまた、水質汚濁物質を汚泥という 廃棄物に変えているにすぎない。
廃棄物処分場が水質汚染を永久に防ぎ得るものならば、汚染の形を変えるだけの汚染対策でも かまわない。しかし、処分場からの汚水を処理する汚水処理施設もまた水質汚染物質を汚泥とい う廃棄物に変えているにすぎず、その汚泥は、再び処分場に埋めなければならない。つまり、汚 染物質は、処分場と汚水処理施設の間をぐるぐる回るだけで、最終的には処分場に落ち着く。他 方で、水質汚染を防ぐための遮水シートは時間が経つにつれて劣化するため、いずれは必ず水質 汚染をもたらすことになる。
汚染の形を変えるだけの汚染対策が通用しているのは、「大気・水質・土壌」のすべてにおい て規制を受けている項目がカドミウムと鉛しかなく、他の項目はすべてどこかに抜け道が設けら れているからである。形を変えれば容易に排出できるのである。
骨抜きにされている拡大生産者責任
一般廃棄物問題を解決する鍵は、拡大生産者責任である。
税金負担によるごみ処理の下では、処理やリサイクルのことを考えない生産物が氾濫するが、
処理やリサイクルの費用を生産者が負担する拡大生産者責任の下では、それらの費用をなるべく
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少なくしようとする企業努力が生じることとなる。
しかし、拡大生産者責任がヨーロッパで実現する一方、日本では、拡大生産者責任が骨抜きに された循環型社会づくりが進められている。容器包装リサイクル法は、回収・保管を自治体負担、
リサイクルを事業者負担としており、事業者負担はトータル費用の約1割に過ぎない。家電リサ イクル法は、リサイクル費用を排出時に消費者が負担することとしており、生産者が負担して製 品価格に含めることを本質とする拡大生産者責任は全く実現していない。そのため、容器包装の 減量ははかばかしくなく、また、家電の不法投棄が横行する結果を招いている。
産廃の処理を事業者任せにするのは誤り 産業廃棄物の最大の問題は不法投棄である。
廃棄物処理法では、産業廃棄物の処理責任を排出事業者として、その処理を事業者任せにして いる。しかし、事業者は処理費にお金をかけたくないため、事業者任せにすると産業廃棄物は
「安きに流れる」ことになる。具体的にいえば、処理業者に委託する場合には受託料金の安い処 理業者を選ぶことになるし、自ら処理する場合にも安い処理、さらには不適正処理や不法投棄を 行うことになる。安い処理料金しか受け取らなかった処理業者も不適正処理や不法投棄に走るこ とになる。
不法投棄の最大の原因は、産業廃棄物の処理を、「安上がりの処理」を目指す事業者任せにし ていることである。事業者責任は処理費用を負担させることで全うすべきであり、産業廃棄物の 処理は、事業者任せにせず、公共管理の下に置く必要がある。
廃棄物がリサイクル製品になる
循環型社会づくりのなかでリサイクルが増えるにつれ、「偽装リサイクル」が横行するように なっている。「偽装リサイクル」とは、廃棄物を「リサイクル製品」と偽って販売することであ る。三重県では、重金属や放射性物質を含む「リサイクル製品」が県のお墨付きを得た土壌埋戻 材として販売されていた。
また、「偽装リサイクル」に加え、ガス化溶融炉や灰溶融炉から排出される溶融スラグが路盤 材等として利用されたり、焼却灰を用いた「フライアッシュセメント」がグリーン購入法に基づ く特定調達品目に指定され、その利用が公共機関によって推進されたりしている。それらは、
「廃棄物をリサイクル製品に含めて合法的に環境中に撒き散らす仕組み」にほかならない。
「廃棄物がリサイクル製品になる」事態が拡がってきた原因は、「拡散型リサイクル(地中や 地面に接して利用するようなリサイクル、及び一定期間使用した後には廃棄物として処分しなけ ればならないようなリサイクル)」と「回収型リサイクル(廃棄物となった製品から同じ製品を 作ったり、製品から特定の物質を取り出し、再び製品の原料として生産過程に投入したりするよ うなリサイクル)」とを区別せずにリサイクルをむやみに進めてきたこと、及び、リサイクルを 事業者任せにしてきたことである。
51 汚染循環型社会から資源循環型社会へ
「汚染循環型社会」を「資源循環型社会」に変えていくための鍵は、汚染問題では「大気・水 質・土壌のすべてにわたる規制」を設けるとともに、次の三原則からなる「汚染防止の社会シス テム」を創ることである。
① 生産物を変えること……有害物質を生産物に含めないこと、含める場合には最少化する こと。
② 回収型リサイクルを進めること
③ 処分場を永久監視すること
さらに、一般廃棄物では「拡大生産者責任」を徹底すること、産業廃棄物では「公共管理の下 での処理」を図ること、リサイクルでは「回収型リサイクルと拡散型リサイクルの区別」・「公共 管理の下でのリサイクル」を図ることである。