岩石の比抵抗測定
−岩手県土畑鉱山付近の火山岩について−
奥 山 良 俊
MeasurementofSpecificResistivityofRocks
‑IntheCaseofVolcanicRocksinTsuchihataMine District,IwatePrefecture,Japan‑
RyosyunOKuYAMA (昭和46年10月29日受理)
1 まえがき
岩石の電気伝導度は半導体から絶縁体までの広い範囲 にわたっているが,色々な岩石の電気的性質を調べるた めに実際に電気伝導測定を行なって承ると,常温常湿の もとでは資料の体積抵抗値が極めて広い範囲にばらつき 同一の資料について測定を繰り返しても測定値の再現性 に乏しくその処理に困難をきたした。
これは岩石が多孔質,吸湿性にと象常温常湿のもとで は岩石の細隙中に水分を含承やすいためで,溶解してい る電解質によって測定値が著しく変化するからである。
そこで筆者は測定条件に一つの基準を設定しその基準 に対する比較的狭い範囲での測定値の再現性を得ること と,含水量の電気伝導に与える影響のおおよその程度を 知るための実験を行なった。
岩手県土畑鉱山付近の火山岩を例として次に報告す る。
2測定方法 2. 1測定資料と測定装置
測定に用いた岩石資料は岩手県土畑鉱山付近の火山岩 で資料採集の位置は図1に, また資料に付された記号,
岩石名は表1に示される。
これらの地域の玄武岩(Basalt),安山岩(Andesite) 流紋岩(Rhyolite)は塩基性火山岩,中性火山岩,酸性 火山岩のように分類され,凝灰岩(Tuff),凝灰角礫岩
(Tuffbreccia)などの堆積岩類を伴っている。
次に測定方法として先ず岩石資料の体積抵抗を求めな ければならないが,基本的には直流の二極法,四極法或 は交流法などがあり,各々の方法で若干違った測定結果 が得られるとされている。この実験では保護電極を用い た二極法をとりチョッパー型超絶縁計(SM‑10,SM‑
15)を使用した。
g#・〜C
O
霊
鷲rびof.
締
g.、'o
図1 資料採集位置 表1資料に付された記号
資 料 名 | 資・料番号
J
展しkA
2JkJA22唖剛唖仙此A7 20
01hhhka鼬呑蝿yyH1RRRAAABOOTRR
畑平流紋岩(抗内)
畑平流紋岩(本仁王沢)
畑平流紋岩(畑ケ沢)
甲子安山岩 川尻層安山岩 大鞍山安山岩 白土沢玄武岩 大荒沢層変朽安山岩 大石層凝灰岩 川尻層凝灰角礫岩 湯川流紋岩 川尻層流紋岩
岩石の比抵抗測定
資料 遮蔽箱
主電極 電 資料
対電極 真空デシケータ
図2 測定資料の電極及び測定装置
資料に電極を取り付けるには色左な方法があるが,市 販の銀製導電塗料を用いて主電極,対電極,保護電極と し資料の形は直径3.5cm,厚さ5mm程度の円板状のも のとした。図2に資料の電極と測定装置を示す。
一一一四一一恥一工卜
○門
2. 2室内(常温常湿)での測定
一般に絶縁体の体積抵抗は図3の等価回路で示され,
C,, C2……Cnが充電を完了したときの電流から決定す るが,岩石それ自体は絶縁物に近いので絶縁体と同様に 電流は図4のように時間とともに変化するolCooは電圧 を加えた瞬間の充電電流, Iaは吸収電流, Irは伝導電 流であり従って岩石資料の体積抵抗値Rvと時間tの関 係は図5のようにならなければならない。
一般に岩石は吸湿の状態にあるが含まれている水分は 1100C以上, 2時間程度の乾燥で殆ど取り除くことがで きるとされているので, このように乾燥した資料をデシ ケーター内に保存し室温になるのを待って常温常湿の室 内で測定すると図6のように体積抵抗が時間とともに減 少するoこれは室内の水蒸気が乾燥状態の資料に付着す るためで可成りの時間経過しても減少の状態が続き極め てゆっくり吸湿の状態が続いていることを示している。
次に1500Cにおいて1.5時間程度乾桑した資料につい て直ちに室内で測定を始めると図7から図9が得られ る。これは資料の温度が下がり始めて1000C前後までは 水蒸気が付着しにくいことと,温度降下の影響を受けて 体積抵抗が増加し,さらに温度が降下すると急激に水蒸 気が付着しやすくなりその影響が大きく体積抵抗が減少 するものと考えられる。このように岩石は吸湿性にと承 乾燥の状態,気象条件などに左右されて常温常湿のもと では測定が難かしぐ測定値の再現性は殆どゑられない。
握總趨裾
Ir
Rv 時間t
図3抵抗の等価回路 図4充電電流の時間依存性
畠
轄薗漣蛙
時間t
図5 体積抵抗の時間的変化
に図2に示す如く資料を真空デシケーター内におき, 5 mmHg以下の圧力のもとで測定すると,Rh(H8),Rh
(H4)について図10及び図11が得られた。これは資料を 110°Cにおいて2時間乾燥後デシケーター内に2時間保存 し室温になってから測定したものであるが,再現性をゑ るために同一の条件で別の日時に再び測定し表2の結果 を得た。測定値に狭い範囲での再現性のあることが示さ れている。そこでこの測定条件を一つの基準として他の 多くの岩石について同様に測定すると抵抗値の変化は,
2. 3真空デシケーター内(常温無湿状態)での測定 常温常湿のもとでは2.2からわかるように水蒸気の影 響で測定値が著しく変動するので湿度の影響を除くため
×叩画○hm
XlO'2ohm
4.0
40
〜<〜
aO
3.0 畠20
160 ……
這加
0 10
図6
釦 釦 40 釦
t
Rh(H8)の体積抵抗
印越I
1.0
1
7.0 0
1 2 3 4 5min
t 図9 Rh(H4)の体積抵抗
6.0
5.0
×1014o1m
1.5
4.0
。
。 O−0−5画ずα石‑0=◎
畠
1.0
3.0 シ塵
2.0 0.5
1.0 0
15 20 min
mt
5
0
、 1 2 3 4 5 6 7 8 9min
t
図7 Rh(H8)の体積抵抗
図10 Rh(H8)の体積抵抗
×1014⑥ト、
1.5
H4
><1011ohm … ー、
4.0 畠 1.0 亮⑥巴
◎〆設 ず
0 』
3.0 5 10 15
t
図11 Rh(H4)の体積抵抗 表2測定値の再現性
20 、◆
造2.0 1
’ ’ po(ohm-cm)
Sample Obs.Date
H4 NNJ OOa vvn●●● 000111 444111
17, 19, 21,
1970 1970 1971
241●●●233 ×××
1.0
H8 NNDJ OOea vvcn
1970 1970 1970 1971
4444111100001111
17, 19, 10, 21,
3573●●●●4445 ××××
0
1 2 3 4 5min
t
図8 Rh(H,)の体積抵抗
岩石の比抵抗測定 99 個々の岩石によって異なった様相を示すが,おおよそ図 β・とし次に常温常湿の室内(15。C〜25oC, 40〜50%)
5に近いことがわかった。そして電圧を印加してから20 に放置し同一の条件のもとで水分を含んだ状態での質量 分〜30分程度経過すると抵抗値の増加が承られなくなる を、,比抵抗をβ,含んでいる水分の質量を4mとして
傾向にあることが知れた。 表3及び表4の結果が得られた。
表3の畑平流紋岩(Rh)について象れぱH1からH22ま
3測定結果と考察 で土畑鉱山の抗内の資料で抗道入口から内部に向って5
m毎に採集されたものであり,各々の岩体の岩質の相違 110oCにおいて2時間乾燥後2時間デシケーター内に がp。, p, 4m/mの値の変化として認められる。即ち 保存したときの質量を、。,圧力5mmHgでの比抵抗を H1からH7,H8からH9,H13からH,4,H18からH191
表3流紋岩の比抵抗と含水量
β。 (P.c、) β 。c、)−(%) 、。(9) m(9)
00 4m(g)
Sample
01100びぴぴびぴぴぴぴぴぴぴぴ111111111111
44444438342びひび00ぴひび0ぴびひ111111111111
0.069 0.052 0.082 0.13 0.16 0.52 0.50 0.32 0.26 1.9 0.65 0.49
28.0444 33.1421 30.6048 30.3325 25.8510 34.2831 21.1836 27.6650 23.2310 34.0325 25.7060 25.7958
28.0638 33.1594 30.6298 30.3722 25.8926 34.4629 21.2909 27.7538 23.2908 34.6867 25.8734 25.9212
0.0194 0.0173 0.0250 0.0397 0.0416 0.1798 0.1073 0.0888 0.0598 0.6542 0.1674 0.1254
××××××××××××617317131103●●●●●●●●●●●●134542835332 ××××××××××××230341866265●●●●●●●●●●●●831735521225
H1 H4 H7 Hg H9 H,3 H,4 H18 H19 H22 Ho2
HA,"
’
表4安山岩及びその他の岩石の比抵抗と含水量
Sample lpo("・cm) ! PW・cm) │ ‑F』里一(%) 、。(9) m(9)
Sample m 4m(9)
434243323312979119996111111111100000000000030000001111111111111111111 0100000ぴぴぴびぴぴぴぴぴびひびぴぴぴぴぴひび1111111111111111111
31.7701 31.4441 43.4525 11.8860 10.7911 46.0686 46.0686 36.2566 31.9803 4.9750 41.2285 1.5352 3.7654 3.7064 7.1430 5.15%
30.1303 29.1110 11.2377
31.8481 31.5847 43.7160 11.9216 10.8427 46.1138 46.1033 36.3389 32.7115 4.9872 41.3042 1.5445 3.7750 3.7150 7.1645 5.1671 30.1884 29.1363 11.2938
0.0780 0.1406 0.2635 0.0356 0.0516 0.0452 0.0347 0.0823 0.7312 0.0122 0.0757 0.0093 0.00%
0.0086 0.0215 0.0075 0.0581 0.0253 0.0561 0.24
0.45 0.60 0.30 0.48 0.98 0.075 0.23 2.2 0.24 0.19 0.62 0.25 0.23 0.30 0.15 0.19 0.087 0.50
×××××××××××××××××××2245001860666896150●●●●●●●●●●●●●●●●●●●8371274413124114723
1251124 11kkk78000s23567蝿yyHAAAAAAAABOOOOOOOTRR ×××××××××××××××××××6669544299772663011●●●●●●●●●●●●●●●■●●●2515555711511126114
心
た。この測定条件を一つの基準として表3,表4のよう に多くの岩石について比抵抗を互に比較検討することが できる。
(2)乾燥状態の岩石を常温常湿のもとで自然に放置す ると吸湿の状態を続けるが吸湿性を示す含水量の重量比 4m/m(%)の値は岩石の種類そして変質の程度と密接 な関係がある。
(3)乾燥状態での比抵抗poと吸湿状態での比抵抗pを 4m/mを参考にして比較すると含水量の電気伝導に与え る影響の程度を推定することができる。
そしてH22のグループに測定値を区別することができ る。抗道入口付近は岩体が新鮮で内部にはいるにしたが って変質しておるとされているがH22は特に変質が著し く他に比べて値が異なるものと考えられる。またHo2と HA,αはほぼ近い値を示し岩質が類似しているものと推 定される。
次に表4の安山岩類は細かく承れば値がばらついてい るが甲子安山岩(AK,〜AK") ,川尻層安山岩(A7 A8) ,そして大鞍山安山岩(Ao,〜Ao2)の三つのグル ープの中で近い値を示している。また白土沢玄武岩 (Bs4)は一つの資料ではあるが他の岩石類と非常に値 が異なり,大荒沢層変朽安山岩(O,〜O7)は各々類似 した値であることが知れる。大石層凝灰岩(Ot3) ,川 尻層凝灰角礫岩(Ty) ,湯川流紋岩(Ry) ,川尻層流 紋岩(RH,,)については資料が少ないので明確なこと はいえない。
以上報告するにあたり御指導戴いた秋田大学鉱山学部 教授乗富一雄先生に厚く御礼申し上げるとともに測定資 料の作製を願った鈴木正明氏(当時秋田大学鉱山学部院 生)に深く感謝致します。
参考文献
4結 語
(1)乗富一雄鈴木正明(1970)
岩手県土畑鉱山付近の火山岩の磁性
(秋田大学地下資源開発研究所報告)
(2) E、 I.Parkhomenko(1967)
ElectricalPropertiesofRocks
(3)飯田修一他編(1%6)
電気的測定(物理測定技術4)
土畑鉱山付近の火山岩類について比抵抗測定を行なっ たが得られた結果をまとめると
(1)岩石は吸湿性にとゑ常温常湿のもとでは気象条 件,乾燥の状態によって比抵抗が極めて大きく変化する が,資料を110・Cにおいて2時間乾燥後2時間デシケー ター内に保存し,常温, 5mmHgの圧力のもとで測定 すると表2のように測定値に再現性を認めることができ
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