原子核の相対論的平均場模型の改良
平成23年2月8日
酒井 優,西川 恵子
(学籍番号 03380214,07380356)
本卒業研究では、三和之浩氏の修士論文(「原子核の相対論的平均場模型プログラムの開発と検証」, 2008 年2月)で開発された原子核の相対論的平均場模型の解を求める数値計算プログラムを理解するため、その 基礎となる理論を学習した。続いて、効率良く計算精度を向上させるため動径グリッド のとり方や自己無撞 着解を求める過程で起こりうる振動現象の回避方法に関して改良をした。
原子核は原子の中心にあり、陽子と中性子から構成される。陽子と中性子はまとめて核子と呼ばれ 、核 子の間には引力が働いている。核子同士の間には 、中間子を媒介として核力という力が働く。この核力に よって原子核は結合しているのである。原子核の記述において相対論を用いることには、Schr¨odinger方程 式を用いる時と較べて大きな利点がある。まず、非相対論の場合と違いスピン・軌道結合力が自然に導か れることである。又、運動エネルギーが非常に大きくなる高温・高圧下への外挿の信頼性が高い。そして、
より基本的な理論( 相対論的な場の理論)との関係がつくことである。
本論文ではまず、特殊相対性理論の基礎となる原理について説明し 、非相対論のガリレ イ変換を拡張して 相対論的なローレンツ変換を導き出した。続いて第3章では、非相対論的量子力学のSchr¨odinger方程式に とって変わるべき核子の従う相対論的量子力学の方程式であるDirac方程式の導出方法を示した。
次に、本研究で使ったプログラムの依拠する原子核の相対論的平均場模型の概念を説明した。ここでは、
まず平均場模型に用いられる重要な近似のうちの一つについて論じた。それは 、核子間の相互作用の媒介 として導入された各種の中間子場のもつゆらぎを無視して平均値だけに注目するという、中間子の古典場近 似である。
三和之浩氏は、動径波動関数を等間隔に配置したグリッド 点上の値で表現しそれらをRunge-Kutta法に より決定した。しかし 、十分な精度を得るにはグリッド 間隔を非常に密にとらなければならず、長い時間が かかった。そこで、より少ないグリッド 点で精度の良いプログラムにするため、まずグリッド 間隔と誤差の 関係について調べ、最適なグリッド 間隔を求めた。続いて、動径座標r軸上のどこで大きな誤差が見られる かを調べ、誤差の大きいr= 0付近でのみグリッド 間隔を小さくとれる非等間隔グリッド を導入することで 誤差の軽減が出来ることを示した。
最後の章では、まず自己無撞着解を求めるアルゴ リズムについて説明し 、その反復計算でおこることがあ る軌道の入れ替わりによる振動を抑制するための解決策を与えた。この振動は、フェルミ面を挟む2軌道の エネルギー準位が近いためおこることが分かっている。1つめの方法として減衰因子の導入を行ったが、結 果として振動の振幅を減少させることはできたが 、振動を消すことはできなかった。2つめの方法として、
有限温度化を行った。これにより、振動を抑制することが出来たが、有限温度で行ったため温度ゼロの場合 の解とは少し異なる解が得られた。3つめの方法として占拠核子数の固定を行い、振動を抑制することが できた。今回は中性子176個、陽子82個の鉛の場合のみ検証したが、他の原子核でも同様に検証を行い プログラムで自動で振動現象をとめられるように改良するのが今後の研究を引き継ぐ 者の課題であろう。