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論文の内容の要旨 氏名:齋

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:齋

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名:口腔扁平上皮癌細胞におけるウアバインのシグナル伝達について

口腔癌(

oral squamous cell carcinoma; OSCC

)の大部分は扁平上皮癌であり,恒常的な転写因子の活 性化により種々のサイトカインが構成的に産生されている。これらのサイトカインは腫瘍の進展・増 殖に関与するため,その産生を抑制することは,

OSCC

の浸潤増殖を抑止する有効な手段となりえる。

強心配糖体は,構造的に共通のステロイド骨格を有する物質であり,様々な生物学的効果を発揮す る。ウアバインは強心配糖体に属し,強心作用を有するのに加え抗癌作用があることが報告された。

この報告以後,様々な癌細胞への感受性が検討されてきたが,

OSCC

に対する効果は未だ明らかにさ れていない。本研究では,

OSCC

に対するウアバインの抗癌作用について検索する前段階として,そ のシグナル伝達経路について検討を行った。

本研究には,ヒト口腔扁平上皮癌由来株化細胞である

HSC3

を用いた。細胞は

Roswell Park Memorial Institute 1640

RPMI 1640; Thermo Fisher Scientific

)に,

10%

ウシ胎児血清(

fetal calf serum: FCS

)お よび

1% penicillin-streptomycin

Sigma

)を添加した

10% FCS-RPMI

を用いて,

5% CO

2

37°C

の条件下 で培養した。

IL-8

および

IL-1α

濃度の測定は,

HSC3

細胞を

0

30

60

および

120 μM

のウアバイン存 在下で

1

時間培養し,培養上清を回収し,

enzyme-linked immunosorbent assay

ELISA

)により行った。

BAPTA-AM

10μM

)及び

L-glutathione

10μM

)の前処理は

1

時間行った。

Real-time polymerase chain reaction

PCR

)による遺伝子発現解析は,

RNeasy mini kit

QIAGEN)

を用いて

total RNA

を抽出し,

complementary DNA

Superscript III reverse transcriptase

Invitrogen

)を用いて作製した。発現の強度 はハウスキーピング遺伝子である

β-actin

の増幅量で補正し,相対的な比率として求めた。

Luciferase assay

に用いる

reporter vector

は,

IL-8

遺伝子の非翻訳領域(

untranslated region: UTR

TATA box

上流

1 kb

)を,

HSC3

由来のゲノム

DNA

を鋳型として

PCR

により増幅し,この

fragment

pGL4 vector

Promega

)にサブクローニングし作製した(

NF-κB-long vector

。増幅された領域は

2

つの

NF-κB

合部位を含んでおり,上流結合部位を欠失した

NF-κB-short vector

site-directed mutagenesis

により作 製した。

NF-κB

および

AP-1

レポーター

vector

Stratagene

社より購入したものを用いた。

HSC3

細胞

5

時間

transfection

し,

30 μM

のウアバイン存在下または非存在下で

1

時間刺激した。その後,細胞 溶解液を回収し,

Dual-Luciferase Reporter Assay System

Promega

)にてルシフェラーゼ活性測定を行 った。

Western blotting

HSC3

細胞を

30 µM

のウアバインで

1

時間刺激した後,

10% FCS-RPMI

によ り洗浄後,新しい培地により

0

15

30

および

60

分間培養した。その後細胞を回収し,総タンパク質

100 µg

10% SDS-PAGE

によって泳動後,分離したタンパク質を

Immobilion

膜(

Millipore

)に転 写した。一次抗体により室温で

1

時間反応させた。用いた一次抗体はウサギ抗ヒト

p65

抗体

Santa Cruz

ウサギ抗ヒト

p50

抗体(

Santa Cruz

,ウサギ抗ヒト

c-Jun

抗体(

Santa Cruz

,ウサギ抗ヒト

c-Fos

抗体

Santa Cruz

,およびウサギ抗ヒト

GAPDH

抗体(

Santa Cruz

)であり,それぞれ

1% BSA-PBST

0.1%

tween-20/PBS

)で

1,000

倍に希釈して用いた。その後,

horse radish peroxidase

HRP

)標識ヤギ抗ウサ

IgG

H+L

)抗体(

Jackson Immuno Reserch

1% BSA-PBST

により

10,000

倍希釈)により室温で

30

分間反応させた。

Immobilion

膜を

Clarity Western ECL Substrate

Bio-Rad

)に浸漬して発光反応を行っ たのち,

Chemi Doc XRS

Bio-Rad

)で撮影した。免疫蛍光染色は細胞をウアバイン

30 µM

の存在下ま たは非存在下で

6

時間培養した。一次抗体はウサギ抗ヒト

p65

抗体(

Santa Cruz

,ウサギ抗ヒト

p50

抗体(

Santa Cruz

)を

1% BSA-PBS

100

倍希釈し,室温で

1

時間反応させた。二次抗体は

green

fluorescence protein

GFP

)標識ヤギ抗ウサギ

IgG

H+L

)抗体(

Jackson Immuno Reserch

)を

1% BSA-PBST

10,000

倍に希釈し,室温で

30

分間反応させた。その後,蛍光顕微鏡

BZ-X700

Keyens

)にて撮影 した。蛍光強度は

Image J

National Institutes of Health

)を用い,核および細胞質内の輝度を測定した。

(2)

2

ELISA

の結果,

HSC3

IL-8

585 ± 33.3 pg/mL

)および

IL-1α

93 ± 7.2 pg/mL

)を恒常的に産生し ていた。次いで,

HSC3

をウアバインで刺激したところウアバイン濃度依存的に

IL-8

産生を低下させ た。

IL-8

産生は

30 μM

のウアバインで

299 ± 45.8 pg/mL

まで低下した。一方,

IL-1α

産生はウアバイン 刺激により

122 ± 4.59 pg/mL

まで増加した。またウアバインによる

IL-8

産生抑制は

BAPTA-AM

及び

L-glutathione

により解除された。これらの変化が転写レベルで調節されている可能性について

real-time PCR

により検討した。ウアバインの非存在下での

mRNA

発現レベルを

1

とした場合,

IL-8 mRNA

現は

30 μM

0.153 ± 0.05

に抑制された。対称的に,

IL-1α mRNA

発現は,ウアバイン刺激

3

時間後に

1.14 ± 0.04

に増強された。

Luciferase assay

では,

NF-κB

および

AP-1

を用いて検索したところ,ウアバ イン刺激により

NF-κB

活性はコントロールと比較して

47%

まで低下し,逆に

AP-1

活性は

333%

まで 増加した。

IL-8

遺伝子調節領域における

NF-κB

結合部位の関与について調べるために,

NF-κB-long vector

および

NF-κB-short vector

を用いて検討を行った。その結果,

NF-κB-short vector

では,ウアバイ ン刺激によりルシフェラーゼ活性に変化を示さなかったのに対し

NF-κB-long vector

では,ルシフェラ ーゼ活性の低下を示した。

Western blotting

の結果,ウアバイン刺激による

NF-κB

サブユニットのリン 酸化には変化が認められなかったのに対して,

c-Jun

および

c-Fos

のリン酸化はウアバイン刺激

15 ~ 30

分後に有意に増加した。ウアバイン刺激前後の

NF-κB p65

p50

サブユニットの細胞内局在を免疫蛍 光染色により検索した。

p65

p50

サブユニットは共に,未刺激の細胞では主に核内で検出されたのに 対し,ウアバイン刺激により

p65

は細胞質中により強い蛍光が認められた。一方,

p50

では変化は認 められなかった。

本研究の結果,ウアバインは転写因子

NF-κB

AP-1

に対し相反する効果を発揮することが明らか になった。

IL-8 mRNA

の転写誘導は,主に

NF-κB

によって調節され,その結合部位は

IL-8 5'-UTR

内の

TATA

ボックス

150 bp

上流までの領域に位置するとされている。しかし上述のデータから,

TATA

ボックスのさらに上流

1 kb

に位置する

NF-κB

結合部位がウアバインによる

IL-8 mRNA

発現抑制に大 きく関与することが示され,ウアバインの効果が既知のメカニズムとは異なったシグナル伝達経路を 経由する可能性が示唆された。

ウアバインは

AP-1

のコンポーネントである

c-Jun

および

c-Fos

のリン酸化を亢進し,

AP-1

を活性化 することが明らかとなった。

Luciferase assay

で用いた

5'-UTR

領域には,

AP-1

結合部位も存在するこ とから,

HSC3

においては

AP-1

の効果が限定的である可能性が考えられた。

NF-κB

に対する抑制効果 のメカニズムを追求するために蛍光免疫染色により検討したところ,ウアバイン刺激により

p65

サブ ユニットの核移行はわずかに抑制されることが明らかとなった。この結果が

p65

サブユニットの核移 行の阻害なのか,あるいは核からの移行促進によるものなのか,そのメカニズム解明についてはさら なる検討が必要と考えている。

以上の結果から,ウアバインは

HSC3

細胞において細胞特異的なシグナルパターンを示すものと考 えられた。これは癌細胞の種類により強心配糖体の効果が異なる可能性を示唆するものであり,癌治 療における強心配糖体の使用には,その効果を事前に充分検討することが不可欠であると考えられた。

参照

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