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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:石 渡 康 弘

博士の専攻分野の名称:博士(工学)

論文題名:アルミニウム箱形断面材とスギ製材による合成構造柱に関する研究

現代社会では,近年の地球温暖化をはじめとする環境問題などの影響から,無駄なエネルギーをなるべ く排出せず,エネルギー資源を循環させるようなシステムを作り上げようとする動きや,既存の資源を有 効的利用する働きも顕著となっている。これは,建築分野においても同様で,資源の有効活用や環境負荷 の低減を課題としており,再利用可能な資源を積極的に利用していく必要があると考えられている。そこ で,本研究では環境問題に配慮した資源材料としてアルミニウムと木材に注目した。

2002年の建築基準法改正により,アルミニウムは建築構造部材として正式に認定された。しかし,アル ミニウム表面には一般的に耐食性,耐摩耗性向上のためにアルマイト加工が施されていることから,現場 での施工に必ずしも適しているとは言えない。そこで,アルミニウムを鉄骨などのように一般的に用いら れる構造部材と同程度に普及させるためには,金物やボルトを用いた単純明快な施工方法が必要であると 考える。

このように金物やボルト接合による施工方法を確立し,システム化することで,以前よりアルミニウム が建築構造部材として一般的に普及されやすくなることも期待される。

一方,木材は生産する際のエネルギーが他の材料と比較しても小さく,省エネルギーな資源であること から,国家プロジェクトにおいても木材の積極的な利用が推進されている。特に,木材需要量における建 築用材の割合は約4 割であるため,建築分野において積極的な国産材利用を高めることで,木材需要の波 及効果が見込まれている。

このような背景から,本研究ではアルミニウムと木材という2種の異なる材料を用いて,アルミニウム 箱形断面材に木材(スギ製材)を挿入した合成構造柱を提案した。この方法であれば,現場施工が難しい TIG 溶接をせず,鉄骨構造の仕口形式や,木質構造の在来軸組構法で使用されるような仕口金物等による ネジやボルト留めによる施工が実現可能である。

また,提案する合成構造柱は,アルミニウム箱形断面材内部にスギ製材が挿入されることで,ボルト留 めとする場合にダイアフラムなどを設ける必要がなく,貫通ボルトとした際にも断面に影響しないことが スギ製材を挿入する利点である。更に仕口金物等を用いることで,接合部がすべて目視により確認できる ため,リフォームする場合などには仕口部の欠陥部分を一目で把握することが可能となり,欠陥部分のみ の修復や交換を行うことができるという利点にも繋がる。このことから,本研究で提案する合成構造柱お よびその施工方法については,リユースやリサイクルのしやすい工法であるといえる。なお,合成構造柱 の使用用途としては木質構造規模の建築を対象としている。

しかし,木材を金属材料で被覆したハイブリッド部材の研究例はほとんどなく,既往の研究としては,

建築研究所が行っている技術開発プロジェクトである木質複合建築構造技術の開発のように,木材が外側 に存在することで鋼材などを覆う本研究とは逆タイプの工法を提案しているものが多い。そのため本研究 では,既往の研究で実施されていない,アルミニウムがスギ製材を被覆する構造部材について研究を行う ものとする。また,スギ製材は節や繊維方向による耐荷性能のばらつきを生じ,アルミニウムは板要素が 局部座屈を起こすため,合成構造とした場合にスギ製材の耐力等のばらつきを抑え,アルミニウムの局部 座屈を防ぐなど,互いの欠点を補うことが可能であると考えられる。

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実験はまず,部材の耐力評価を行うために,アルミニウム箱形断面材およびスギ製材の単一柱と合成構 造柱の試験体を用いて,純曲げ実験,曲げせん断実験,短柱圧縮実験,中心圧縮実験を行い,単一柱と比 較した場合の合成構造柱における部材の構造特性を明らかにしていく。各実験では,スギ製材をアルミニ ウムで拘束することにより可能な耐力等のばらつきの低減,累加耐力や変形性能の向上について検証を行 う。実験結果を踏まえて本研究で提案する合成構造柱の耐力評価式を誘導し,適切な耐力評価を行ってい く。

次に,合成構造柱を柱構造材として利用できるような仕口の提案を行っていく。仕口の耐力評価は,合 成構造柱と軽量H形鋼の梁を,提案した各種仕口金物で接合した試験体を製作し,鉛直荷重による曲げ実 験,および水平荷重による逆対称曲げ実験を行い,仕口耐力について検証を行う。

更に,提案した仕口金物で形成された柱梁接合部を有する架構形式の耐力を載荷実験により評価してい く。実験は中間階の側柱を模擬したト字形架構と,柱脚部も含めた門型架構の二種類の水平加力実験によ り,それぞれの架構の耐力の評価,変形性状の検証を行う。

最終的には全ての実験,検証結果から合成構造柱を用いた建物を提案し,一般的に利用可能となるよう な位置づけを図ることを目的とした。

本論文は,全6章より構成されており,各章の要旨を以下に述べる。

1 章は序論であり,本研究の背景と目的を述べ既往の研究を概観した上で,本研究の位置づけを図る とともに,研究の目的および内容を明示した。

2 章ではアルミニウム箱形断面材とスギ製材の合成構造柱において曲げ性状,曲げせん断性状,圧縮 性状を把握するため,純曲げ実験,曲げせん断実験,短柱圧縮実験,中心圧縮実験を行い,累加耐力や変 形性能等について検証した。短柱圧縮実験では,一般的な圧縮時の耐力や変形性能ならびに破壊状況等を 把握した。また,純曲げ実験,中心圧縮実験においては,木材の経年劣化として,乾燥して木がやせるこ とによる肌すきによる影響を確認するため,肌すきを有する材と一般的な材を用いた実験を行い,肌すき の有無による強度の違いや変形性能等を比較するとともに,肌すきが部材に及ぼす影響について検証した。

3 章では提案した合成構造柱を架構形式として活用するため,木質構造の在来軸組工法のように,ネ ジやボルト留めが可能となる仕口金物形式として,合成構造柱と軽量H形鋼の梁フランジを山形鋼で接合 した試験体,フランジとウェブをそれぞれ山形鋼で接合した試験体,梁フランジをカットTで接合した試 験体などの仕口形状を提案し,軸方向力を想定した鉛直荷重と水平荷重による逆対称曲げを想定した実験 により,仕口耐力の検証を行った。

第4章では提案した仕口形式で接合された実際の構造物の一部を模したト字形架構と門型架構を用いて,

地震荷重を想定した正負交番繰り返し載荷実験を行い,その結果より合成構造柱を用いた架構の構造特性 を検証する。また,各実験では,単調載荷と繰返し載荷を実施し,載荷方法の違いによる各性状の違いに ついても検証した。

5章では第4章までに得られた結果から,適用範囲を特定し,アルミニウム箱形断面材とスギ製材を 用いた合成構造柱による建築物を提案し,適用例を明示した。

6 章では本研究を総括し,各章の結果と考察に基づき,得られた成果を要約するとともに,今後の検 討課題,展望について言及した。

本研究の成果から,アルミニウム箱形断面材とスギ製材による合成構造柱に関する以下の知見を得た。

1) 合成構造柱の最大耐力は,アルミニウム箱形断面材とスギ製材の単純累加耐力によって安全側に計

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算できることが明確となった。また,肌すきを有する合成構造柱の最大耐力についても単純累加耐力によ り評価可能である。

2) 合成構造柱ではスギ製材でみられた初期剛性や最大耐力の不均一性を抑え,いずれも単一柱より向 上することが明らかとなった。そのため,アルミニウム箱形断面材の拘束効果によってスギ製材のばらつ きや割れによる破壊を防ぎ,大幅な耐力増加とともに各材料の欠点に対する互いの補剛効果が顕著に現れ た。

3) アルミニウム箱形断面材とスギ製材の単純累加耐力が,合成構造柱の最大耐力と同程度となること から,合成構造柱の最大耐力は単純累加耐力により評価可能である。

4) スギ製材における初期剛性や最大耐力の不均一性を,合成構造柱ではアルミニウム箱形断面材によ って概ね抑えることが可能であり,合成構造柱は最大耐力後も復元力を維持しているため変形能力は高い ため,単一材のような破壊に至るまでの変形能力の急激な低下がないことが明らかとなった。

5) アルミニウム箱形断面材とスギ製材の単一柱および合成構造柱の耐力評価式の誘導にあたり,限界 細長比を境界にJohnson式およびEuler式を適用し,実験値と概ね一致したため耐力評価式の妥当性が検 証できた。

6)仕口実験,架構実験においては,今回の実験で用いた4種類の仕口のうち山形鋼にリブを取り付けた

仕口形式が最も変形能力が大きく,アルミニウムとスギ製材の合成構造柱を用いた架構に最も適している と考える。

7 単調載荷と繰り返し載荷を比較すると全ての仕口で地震時のような繰り返し荷重下であっても単調 載荷と変わらない構造性能を発揮できることが確認された。

以上,本研究ではアルミニウムとスギ製材による合成構造柱の構造特性について明らかにするとともに,

合成構造柱の耐力を単純累加式で評価することを提案し,実験によりその妥当性を検証した。今後は本研 究で提案した合成構造柱を用いた建築物の詳細な設計法を提案,検証することにより,社会に普及するこ とが可能となるものと考える。

以 上

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