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大正大学大学院研究論集42号 003木村 秀成「『マハープラティサラー(大随求陀羅尼経)』におけるダラニの尊格化について ――宝思惟訳を中心に――」

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大正大学大学院研究論集   第四十二号

1.研究目的

本論は、筆者の木村(2016)を補完するものである。すなわち木村 (2016)では、『マハープラティサラー(Mahāpratisarā 以下 MP とす る)』所説のダラニが尊格化され、後期密教のマンダラについて説かれる 『Nis・pannayogāvalī(以下 NPY とする)』第 18 章(以下 NPY18 とする)パ

ンチャラクシャーマンダラ(Pañcaraks・āman・dala)のマハープラティサラー

女尊(以下 MP 女尊とする)へ至った過程について検証した。先行研究にお いて、十一面観音や不空羂索観音がダラニから尊格化され成立したことが明 らかになっている。ダラニより尊格が形成される潮流がインド密教において 認められていることから、NPY 所説の MP 女尊も同じようにダラニから尊 格化し成立した可能性があると予想し検証を行った。 MP には、梵本一本、チベット語訳一本、不空訳と宝思惟訳の漢訳二本の 存在が知られている。従来、先行研究の浅井(1988)において報告されて いるように、宝思惟訳が本経の初訳であり、この宝思惟訳の梵本原典から増 広されて後に梵本、およびチベット語訳、不空訳の原本が成立したと予想さ れてきた。この増広された梵本、チベット語訳、不空訳は、主に二つのダラ ニ(D1、D2)、四つのマントラ(M1 〜 4)、九つの説話、そして護符の作 製法により構成されている。一方、宝思惟訳は梵本等の構成と一応対応して いるものの、宝思惟訳では、D1 を分割して扱っていること、D2 が欠落し

『マハープラティサラー(大随求陀羅尼経)』

におけるダラニの尊格化について

――宝思惟訳を中心に――

木 村 秀 成

(2)

『マハープラティサラー(大随求陀羅尼経) 』におけるダラニの尊格化について ていること、また護符の作製方法等に違いがみられる。このことから宝思惟 訳が先駆経典であり、のちに D2 等が増広され梵本、チベット語訳、不空訳 が成立したと予想されてきた。 しかし、Hidas(2012)において宝思惟訳(A.D.693)よりも古い 7 世紀 前半に成立したとされるギルギット写本断片の校訂テキストが発表された。 このギルギット写本断片の構成は、梵本、チベット語訳、不空訳の構成と ほぼ一致する。よって宝思惟訳は、梵本の先駆経典ではなく、梵本と並存し ていた別系統の経典である可能性がでてきた。そのため木村(2016)では、 宝思惟訳から梵本 MP への直接的な発展の可能性は低いと判断し、またダラ ニの扱いに問題があるため、宝思惟訳を一旦考察の対象から除外した。 木村(2016)では、MP 女尊が梵本のダラニから尊格化した可能性が高 いことを明らかにし、特に九種の持物を持つ女尊の明確なイメージを読み取 ることができる D2 において、尊格との高い関連性を確認し、NPY18 の MP 女尊はこの D2 を中心として尊格化したと推定した。さらにこの D2 の示す 尊格に D1 の「与願印を持つ女尊よ」という用例に現れる与願印と、D1 の 身色が黄色系統であると連想できる尊容が加わり、最終的に NPY18 の尊格 が成立したと推定した。以上が前研究の概要である。 本論では、前研究で考察から外した宝思惟訳について特にダラニを中心に 検証する。宝思惟訳の研究は少なく、わずかに浅井(1988)においては梵 蔵漢を比較対照して成立過程を考察し、宝思惟訳の成立が一番早く、不空訳 との間に経全体にわたって改編・増広されたとしている。宝思惟訳のダラ ニは全て漢字を用いて音写されているが、大正蔵では、ダラニについては 底本(高麗版)と他の資料の差が大きいため、校訂せずに底本のみが提示さ れ、巻末に底本以外のダラニの音写だけが別出されている1)。しかし、浅井 (1988)においても宝思惟訳の詳細な報告はなされず、底本と他版の音写ダ ラニの関係については全く触れられていない。そのため本校ではまず両者を 正確に対照し検証する。また梵本等では D2 において尊格化が顕著にみられ るが、宝思惟訳には D2 が存在しない。しかし梵本等の D2 以外のダラニに おいても尊格化の傾向がわずかであるが見られており、対応する宝思惟訳の 二

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大正大学大学院研究論集   第四十二号

2.宝思惟訳『マハープラティサラー(大随求陀羅尼経)』

について

(1)概要 宝思惟訳は四段構成に分けることができる。まず第一段では随求ダラニを 説くまでの因縁譚が語られる。耆闍崛山に在する釈尊を訪れた大梵天王が、 衆生利益のために「随求即得大自在陀羅尼神呪」を説くことを申し出て、そ れを受けて釈尊がダラニの功徳を説く。第二段では、八首のダラニが順に列 挙され説かれる。第三段では、随求ダラニによって諸々の功徳を得た説話が 九つ語られる。そして最後の段には、八葉蓮華上に三叉戟・金剛杵・斧鉞・刀・ 剣・螺・羂索・火焔珠といったその尊格に対応する持物をシンボルとして配 したマンダラを作壇し2)、護符を書写し加持する法や護符を持つ功徳が説か れている。 以上、宝思惟訳を概観すると、経題にある「随求」の原語であるとされる プラティサラ(pratisara)が護符を意味しているように3)、本経では主にダ ラニを書写した護符によって様々な災厄などから身を守る法が説かれてい る。さらにこのダラニの功徳はあらゆる現世利益に及ぶ4) (2)文献資料 MP は、以下のように梵本一本、チベット語訳一本、漢訳二本(宝思惟訳、 不空訳)の存在が知られている。さらに梵本の英訳、そして漢訳それぞれの 和訳も存在する。梵本校訂テキストには Iwamoto(1938)と、Hidas(2012) の再校訂テキストが存在する。写本については、敦煌において十四本の宝思 惟訳の写本が発見されている5) Hidas はギルギット写本断片の成立が 7 世紀前半であること、宝思惟訳の 漢訳が 693 年であることから、MP の成立はおそらく 6 世紀頃の北インド であるとしている6) 【Skt. 校訂テキスト】

・Iwamoto(1938):Iwamoto Y(岩本裕). Pañcaraks・āⅡ (Beiträge

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『マハープラティサラー(大随求陀羅尼経)

』におけるダラニの尊格化について

zur Indologie, Heft 3 ),kyoto, 1938.

・Hidas(2012):Hidas G. Mahāpratisarā-MahāvidyārājñīThe Great Amulet, Great Queen of Spells. Introduction, Critical Editions, and Annotated Translation, Śata-Pit・aka Series vol. 636, 2012.

【Tib. テキスト】

・デルゲ版:東北目録 No.561. [Pha. 117b4-138b5] ’Phags-pa rig-pa’i rgyal-mo so-sor ’brang-ba chen-mo. Ārya-Mahāpratisarāvidyārājñī.

T. Jinamitra, Dānashīla, Ye-shes sde. R. gZhun -nu dpal.

・北京版:大谷目録 No.179. [119b4-141b4] 【漢訳】 ・『随求即得大自在陀羅尼神呪経』一巻、宝思惟訳(A.D.693)(大正蔵 vol.20,No.1154.) 和訳〔那須政隆監修「仏説随求即得大自在陀羅尼神呪経」(『続国訳秘密 儀軌』七巻、国書刊行会、1975 年、pp.141-158)〕 ・『普遍光明清浄熾盛如意宝印心無能勝大明王大随求陀羅尼経』一巻、不 空訳(A.D.746〜771)(大正蔵vol.20,No.1153.) 和訳〔塚本(1973):塚本賢暁訳「国訳普遍光明焔鬘清浄熾盛如意宝印 心無能勝大明王大随求陀羅尼経」巻上・下(『国訳秘密儀軌』十巻、国 訳秘密儀軌編纂局、今泉誠文社、1973 年、pp.132-162)〕 【梵本英訳】

・Hidas(2012):Hidas G. Mahāpratisarā-MahāvidyārājñīThe Great Amulet, Great Queen of Spells. Introduction, Critical Editions, and Annotated Translation, Śata-Pit・aka Series vol. 636, 2012.

宝思惟訳『随求即得大自在陀羅尼神呪経』(大正蔵 vol.20,No.1154.)は、 高麗版を底本に宋・元・明版を対照して校訂されている。しかし八首のダラ ニに限って本文では高麗版の音写のみを表示し、経典が終わった後に明版の

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大正大学大学院研究論集   第四十二号 この高麗版と宋・元・明版のダラニを対照して還梵を試みた。さらに還梵 テキストを Hidas(2012)の再校訂テキストと対照し、論末に「宝思惟訳『大 随求陀羅尼経』(T.20,No.1154)ダラニ一覧」として示した。高麗版と宋・元・ 明版のダラニは一見差が大きいように思われたが、還梵し対照してみるとほ ぼ同一であることが確認できた。ただし宋・元・明版のダラニは高麗版のダ ラニに比較すると、26 箇所で sarva(一切の)や miri miri などの語句の増 加が確認できた。よって宋・元・明版のダラニより高麗版のダラニの方が原 型に近いと予想できるだろう。 (3)『マハープラティサラー』所説のダラニ 梵本の MP では、表1で示したように二つのダラニ(D1、D2)、四つの マントラ(M1 〜 4)が説かれる。一方、宝思惟訳では①根本ダラニ・②一 切仏心呪・③一切仏心印呪・④灌頂呪・⑤灌頂印呪・⑥結界呪・⑦仏心呪・ ⑧心中心呪の八首のダラニが説かれる。このうち①、②、④のダラニは D 1に対応し、⑤、⑥、⑦、⑧のダラニはそれぞれ四句のマントラ(M1 〜 4) に対応する7)。また③は梵本とチベット訳では欠落しており8)、前に述べた ように宝思惟訳においてはダラニの尊格化の兆候が顕著に見られる D 2は 説かれていない。それらの梵文の対応箇所は以下のようになる。 表1:ダラニの対応表 宝思惟訳 ①    ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ 欠 梵本 D1     D1 欠 D1 M1 M2 M3 M4 D2 Hidas(2012) p.115 l.3-p.126 l.7 p.127l.1-l.2 欠 p.127l.4-l.6 l.10p.151 p.152l.1 p.152l.3 p.152l.4-5 p.177 l.9-p.182 l.1

3.ダラニの考察

(1)ダラニの尊格化 還梵した宝思惟訳の①根本ダラニと③一切仏心印呪では、梵本と同様に尊 格化に結びつくと思われる女性形単数呼格の用例があり、以下にそれらを持 物・身色・その他に分類し、梵本と対照させてそれぞれダラニに現れる順に 五

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『マハープラティサラー(大随求陀羅尼経)

』におけるダラニの尊格化について

提示する。

ⅰ①根本ダラニの持物を示唆する句

宝思惟訳の還梵 還梵和訳 梵本

(a) kamale9) 蓮華を持つ女尊よ kamale

(b) śrīvapurdharajayakamale10) 美しい姿を持つ勝利の蓮を持つ女尊よ jayakamale

(c) sarvadevatāvaradān・

kuśe11) 一切諸天の与願鉤を持つ女尊よ varadān

kuśe

(d) padmaviśuddhe12) 蓮華清浄女尊よ padmaviśuddhe

(e) 欠 欠 khad・gini(2 回)

(f) vajravati13) 金剛杵を持つ女尊よ vajravati (g) prabhe14)(2 回) 輝ける女尊よ prabhe(2 回) (h) suprabhaśuddhe15) 美しい清浄女尊よ suprabha-viśuddhe (i) pin・ gali16)(2 回) 黄褐色の女尊よ pin・ gali(2 回) (j) jvālini17) 光明を持つ女尊よ jvālini (t) vajravati27) 金剛杵を持つ女尊よ (k) ratnamakut・amālādhari 18) 宝冠と花環を持つ女尊よ ratnamakut・ a-mālādhari (l) vicitraves・arūpadhārin・i 19) 美しい衣服の姿の女尊よ bahuvividha-vicitraves ・ a-dhārin・i (m) can・d・ini 20) 激怒せる女尊よ can ・d・ini (n) pavitramukhi21) 神聖な顔を持つ女尊よ pavitramukhi

(o) jvalitaśire22) 輝く頂きを持つ女尊よ jvalitaśikhare

(p) indre23) インドラ女尊よ indre (q) indravati24) インドラを伴う女尊よ indravati (r) brahme25)(2 回) ブラフマ女尊よ brahme (s) man・iviśuddhe 26) マニ宝珠清浄女尊よ man ・iviśuddhe ⅱ①根本ダラニの身色を示唆する句 ⅳ③一切仏心印呪の持物を示唆する句 ⅲ①根本ダラニのその他を示唆する句 六

(7)

大正大学大学院研究論集   第四十二号 以上(a)〜(t)までの用例 20 のうち、(e)を除く 19 の用例は、梵 本とほぼ同じ句が宝思惟訳においても存在する。またこれらのうち、(c) sarvadevatāvaradān・ kuśe(一切諸天の与願鉤を持つ女尊よ)、(f)vajravati(金 剛杵を持つ女尊よ)の二つの用例と(i)pin・ gali(黄褐色の女尊よ)の用例 は、NPY18 の MP 女尊との対応関係が確認される。すなわち NPY18 の MP 女尊は、金色であり、右手に与願印をなし、左手に金剛杵を持っている28) この宝思惟訳の三例は、NPY18 の尊容と矛盾せず関連がうかがえ、宝思惟 訳のダラニ①から NPY18 の MP 女尊への尊格化もある程度予想できる。 また③一切仏心印呪においても同様に、(t)vajravati(金剛杵を持つ女尊 よ)の用例は NPY18 の尊容と矛盾しない。③一切仏心印呪が梵本とチベッ ト語訳で欠落してしまった理由は不明である。なおダラニ①・③以外の②・ ④〜⑧のダラニにおいては、梵本と同様に尊格化を示唆する用例は見つから なかった。 このように宝思惟訳においても、梵本等と同様にダラニからの尊格化があ る程度は認めることができると思われる。 (2)ダラニを構成する語句の増減 宝思惟訳の還梵したダラニと梵本のダラニを比較すると、53 箇所・119 語句で梵本ダラニを構成する語句の増加が見られた。また減少は、18 箇所・ 34語句あった。この減少した18箇所のうち、語句の繰り返しの省略と「mama ca」「mām・ mama ca」の削除が 11 箇所を占め、これを除く減少箇所は 7 箇

所・12 語句のみとなった。このように全体としてダラニを構成する語句の 増加傾向が明らかに見られる。

これらの中で、重要と思われる特徴的な用例を以下に揚げる。

(8)

『マハープラティサラー(大随求陀羅尼経) 』におけるダラニの尊格化について (Ⅰ)①根本ダラニ 高麗版 毘質多羅二合鞞沙 波陀唎尼 宋元明版 毘質多囉鞞沙嚧波陀唎尼 還梵 vicitraves・arūpadhārin・i 29) 還梵和訳 美しい衣服を着た女尊よ skt bahuvividhavicitraves・adhārin・i skt 和訳 沢山の様々な美しい衣服を着た女尊よ (Ⅱ)①根本ダラニ 高麗版 欠 宋元明版 欠

skt raks・a raks・a mām・ sarvasattvānām・ cānāthān atrān・ān aparāyan・ān parimocaya mām・

sarvaduh・khebhyah・ skt 和訳 守護せよ、私と一切衆生を守護せよ、貧しきものを、保護なき者を、保護を有せざ る者を、私を完全に守護せよ (Ⅲ)①根本ダラニ 高麗版 欠 宋元明版 欠

skt khad・gini khad・gini

skt 和訳 剣を持つ女尊よ、剣を持つ女尊よ

(Ⅳ)①根本ダラニ

高麗版 欠

宋元明版 欠

skt tāraya tāraya mām・ sarvasattvām・ś ca

skt 和訳 私と一切衆生を済度せよ、済度せよ (Ⅴ)①根本ダラニ 高麗版 欠 宋元明版 欠 skt sarvavyādhibhyah・ skt 和訳 一切の疾病から 八

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大正大学大学院研究論集

 

第四十二号

(Ⅰ)、(Ⅲ)の用例では、女尊の同じ語句に対する形容詞が加わっている ことが確認できる。すなわち(Ⅰ)では、vicitraves・arūpadhārin・i(美しい衣

服を着た女尊よ)が bahuvividhavicitraves・adhārin・i(沢山の様々な美しい衣

服を着た女尊よ)となり、尊容の表現が増加している。また(Ⅲ)では、新 たに khad・gini khad・gini(剣を持つ女尊よ、剣を持つ女尊よ)の句が加えら

れている。 (Ⅱ)、(Ⅳ)では、一切衆生の救済の句が増広されたことが確認できる。 (Ⅴ)、では sarvavyādhibhyah・(一切の疾病から)の句が加えられ、ダラ ニの功徳として疾病を防ぐことを強調されている。 (Ⅵ)、はダラニによる svāhā を伴った諸天へ帰依の句の挿入が確認できる。 また同様の用例がダラニ①の後半他にも多く見られた。 (Ⅶ)、の用例では、悪意のある敵を除去する句が加えられダラニの功徳が (Ⅵ)①根本ダラニ 高麗版 欠 宋元明版 欠

skt mārutāya svāhā mahāmārutāya svāhā agnaye svāhā

skt 和訳 風天に、スヴァーハー、大風天に、スヴァーハー、火天に、スヴァーハー

(Ⅶ)①根本ダラニ

高麗版 欠

宋元明版 欠

skt sarvaśatrūn・ām・ bhañjaya bhañjaya svāhā

skt 和訳 一切の怨敵を破れ、破れ、スヴァーハー (Ⅷ)①根本ダラニ 高麗版 三牟逹囉二合娑伽囉鉢唎演二合多波多羅伽伽那 宋元明版 三慕逹囉娑伽囉鉢利演多波跛羅伽伽入聲那 還梵 samudraśakraparyantapātālagagana-30) 還梵和訳 海と帝釈の辺際と地下と虚空において skt sarvatra skt 和訳 一切所において 九

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『マハープラティサラー(大随求陀羅尼経) 』におけるダラニの尊格化について 強調されている。 以上がダラニを構成する語句が増加された特徴的な用例であるが、減少さ れた用例もあり、(Ⅷ)では、宝思惟訳において samudraśakraparyantapātā lagagana-(海と帝釈の辺際と地下と虚空において)だったものが、sarvatra (一切所)としてまとめられ、語句が整理縮小されている。 以上のように宝思惟訳のダラニと梵本のダラニとを比較した結果、若干で はあるが梵本ダラニを構成する語句の増加が確認できた。

4.まとめ

宝思惟訳では高麗版と宋・元・明版間のダラニの音写に大きな相違があっ たが、還梵して対照するとほぼ同一であることが確認できた。強いて言えば ダラニを構成する語句の増加の数から高麗版が宋・元・明版より古いという ことも確認できた。また宝思惟訳から梵本へのダラニを構成する語句の増加 傾向も確認できた。 還梵したダラニを検証した結果、梵本等に見られたダラニの尊格化の傾向 が宝思惟訳のダラニにおいても確認できた。宝思惟訳は、MP の初訳である と推定されており、ギルギット写本などへ増広される前の原型に近い形を伝 えている可能性があるだろう。もし宝思惟訳の原文が 6c 後半成立とされる MP の原型に近いならば、十一面観音や不空羂索観音から始まったインドに おけるダラニの尊格化の潮流が一歩進み、宝思惟訳においてはダラニの創出 の際に尊格のイメージ化が連動して行われた可能性がある。ダラニの文言か ら MP 女尊が尊格化したのか、もしくは感得した尊格のイメージをダラニ化 させたのか、ダラニの尊格化ついてどのようなプロセスがあったのかは慎重 に検討する必要がある。しかし宝思惟訳では本文中に尊容は説かれずとも、 ダラニと尊格の結びつきが確認でき、尊格化されていく過渡期にあった可能 性があると言える。 一〇

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大正大学大学院研究論集   第四十二号 【和文参考文献類】 浅井(1988): 浅井覚超「『大随求陀羅尼経』梵蔵漢対照研究」(『密教文化』 162、密教研究会、1988 年、pp.104-91)

Iwamoto(1938):Iwamoto Y( 岩 本 裕 ). Pañcaraksā Ⅱ (Beiträge zur Indologie, Heft 3 ),kyoto, 1938.

大塚(2013):大塚伸夫『インド初期密教成立過程の研究』(春秋社、2013 年)

【欧文参考文献類】

Hidas(2012):Hidas G. Mahāpratisarā-Mahāvidyārājñī The Great Amulet, Great Queen of Spells. Introduction, Critical Editions, and Annotated Translation, Śata-Pit・aka Series vol. 636, 2012.

【筆者発表論文】 木村(2016): 木村秀成「Nis・pannayogāvalī 第 18 章パンチャラクシャーマ ンダラの研究――ダラニからマハープラティサラー女尊への尊格化を中 心として――」(『豊山教学大会紀要』44、豊山教学振興会、2016 年、 pp.1-23) 1)vol.20.638 異読③「以下陀羅尼明本大異故別出於巻末 ,cf.p.642b」 2)八種のシンボルの多くが、日本の胎蔵曼荼羅の随求菩薩の持物に通じる ことが指摘されている。(石田尚豊『曼荼羅の研究』東京美術、1975 年、 p.44) 3)Iwamoto(1938)p.4(解説) 4)大塚(2013)p.756 5)『大蔵経対照目録 Ⅱ 大正蔵・敦煌出土仏典対照目録 暫定第 3 版』 国際仏教学大学院大学附属図書館、2015 年、p.201。写本の対照は、 また別の機会に行いたい。 6)Hidas(2012)p.21 7)大塚(2013)p.756 では、ダラニ(①〜⑧)と梵本 Iwamoto(1938) 一一

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『マハープラティサラー(大随求陀羅尼経) 』におけるダラニの尊格化について との対応関係を示している。 8)浅井(1988)p.98 9)①根本ダラニ、高麗版割注番号「三十四」。 10)同上、「六十八」。 11)同上、「七十」。 12)同上、「七十二」。 13)同上、「(百)五十三」。 14)同上、「五十九」。 15)同上、「六十」。 16)同上、「九十二」。 17)同上、「(百)三」。 18)同上、「三十九」。 19)同上、「四十」。 20)同上、「四十六」。 21)同上、「七十八」。 22)同上、「八十一」。 23)同上、「(百)六十」。 24)同上、「(百)六十」。 25)同上、「(百)六十一」。 26)同上、「(二百)三十七」。 27)③一切佛心印呪、高麗版割注番号「二」。 28)木村(2016)p.5 29)①根本ダラニ、高麗版割注番号「四十」。 30)同上、「九十七」。 一二

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﹃マハープラティサラー︵大随求陀羅尼経︶

﹄におけるダラニの尊格化について

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﹄におけるダラニの尊格化について

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﹄におけるダラニの尊格化について

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﹄におけるダラニの尊格化について

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