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人口減少の中で求められる生産性向上 第 1 回

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株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和 証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での複製・転載・転送等はご遠慮ください。 2015 年 6 月 17 日 全 11 頁

人口減少の中で求められる生産性向上 第 1 回

経済成長に必要な労働力の増加とは

経済環境調査部 (主任研究員) 小黒 由貴子 経済環境調査部長 内野 逸勢

[要約]

 少子高齢化が進展し、人口が減少する中で、労働力人口の減少と労働力不足は、依然、 同じように議論されている傾向がみられる。  日本の経済成長(あるいは潜在経済成長率)の低下は、主に労働投入量(就業者数×就 業時間)が減少してきた(していく)からと考えられている。政府は更なる高齢者の活 躍、女性の労働市場への参加等を促すことで、労働力人口の減少への対応を図っている。  一方、日本の産業構造のサービス化が進むことで、製造業の付加価値額が減少し、就業 者数も減少傾向にある。このため就業者数がサービス業等へシフトする傾向がみられる。  労働力人口の減少への対応だけでは、労働力不足には対応できない。産業構造が変化す る中、労働力の供給サイドと需要サイドのギャップを埋めていき、各産業の労働生産性 を向上させていくことが求められていよう。さらに、働き方、働く人が多様化する中、 一定の質の高い労働力を確保するため、就業者の意思と労働環境のギャップを埋める必 要があろう。生産性を高めていくためにはイノベーションも必要であるが、まずは働く 人のモチベーションを向上させ、能力を活かすことが必要ではないか。

はじめに

本稿の大きなテーマである「人口減少の中で求められる生産性の向上」における問題意識は、 今後、“人”の生産性の向上を如何に図っていくかということである。一般的に言われているよ うに、単に労働力人口の減少の埋め合わせ、あるいは設備や IT への投資だけでは労働生産性の 向上に結びつかないと考えられる。日本の産業構造の変化による各産業の付加価値と就業状況 を詳細に把握し、女性・高齢者のみならず男性就業者を含む就業環境の更なる改善等を改めて 見直すことで、労働生産性の改善を検討していくことが必要ではないかと考えられる。第1回 では、経済成長に必要な労働力を定義し、女性、高齢者等の就業者の就業の意思と就業状況を 把握していく。

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1.就業者数の減少と労働力不足

(1)経済成長と労働投入量(就業者数×労働時間)の関係

日本が人口減少社会に直面する中で、労働力人口の減少を前提に、労働供給力の不足から経 済成長が損なわれることが懸念されている。一般に、国内総生産(GDP)は各産業が新たに生み 出した付加価値の合計として定義され、国内総生産=労働投入量(就業者数×労働時間)×労 働生産性1の関係にあるとされている。この方程式の「就業者数」の減少が労働力人口の減少に 相当し、経済成長に影響を与える。 図表1に見られるように、1994 年から 2014 年までの 20 年間において、労働投入量の伸び率 の平均はマイナス 0.6%、労働生産性は同 0.39%であり、労働投入量が国内総生産の伸び率に マイナスに寄与してきたと言える。 図表1 生産性・労働投入と名目 GDP(前年比) (注)「産業」区分のみ (出所)内閣府「国民経済計算」より大和総研作成 労働投入量の内訳をみると、図表2に見られるように、同 20 年間における就業者数(内閣府 「国民経済計算」の“産業”のみの就業者数)は、1997 年の 6,215 万人をピークに 2002 年に 5,907 万人まで落ち込み、その後、2006 年に 6,019 万人を回復したものの、リーマンショック等の影 響により 2013 年は 5,906 万人の水準まで落ち込んだ。加えて、就業時間は一貫して減少傾向に ある。GDP の成長のためには、労働生産性の向上が必要ではあるが、労働投入量の減少を、労働 時間や就業者数の増加で補う必要がある。 1 労働生産性は就業者一人当たりが生み出す付加価値に概ね相当する。付加価値は賃金として就業者に支払われ る(利子・配当として資金(資本)提供者に支払われる)ため、所得水準等を決める重要な要素。産業(企業) の生産性を測定する指標として、全要素生産性(労働と資本ストック活用の効率性を測る指標)がある。 -8.0% -6.0% -4.0% -2.0% 0.0% 2.0% 4.0% 1995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013 労働生産性変化率 労働投入量変化率 国内総生産変化率 (年)

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図表2 労働投入と生産性の関係 (注)「産業」区分のみ (出所)内閣府「国民経済計算」より大和総研作成

(2)労働時間の減少

労働時間については、日本では、企業の改正労働基準法2への対応強化(時間外労働の削減等) 企業の業務自体の効率化による労働時間省力化の経営努力、従業員の業務の効率性向上の努力、 働く人および働き方の多様化等から、今後も減少し続けることが見込まれる。他国との比較に おいても、今後、この減少傾向が継続する可能性があると考えられる。図表3は、1990 年~2013 年における日本の労働時間の水準について、欧米主要国(アメリカ、ドイツ、フランス、スウ ェーデン)の平均年間総実労働時間(以下、平均労働時間)で比較したものである。 図表3 平均年間総実労働時間(欧米主要国)の推移 (注)1990 年は旧西独地域が対象。集計方法が変更されたため、90 年と 95 年以降の数値は接続しない。 (出所)独立行政法人労働政策研究・研修機構 「データブック国際労働比較 2015」より大和総研作成 2 2010 年 4 月 1 日施行の「労働基準法の一部を改正する法律」 5,700 5,800 5,900 6,000 6,100 6,200 6,300 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 労働時間(時間) 生産性(人/時間) 就業者数(万人;右軸) (年) (時間) (万人) 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 2,200 1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 日本 アメリカ ドイツ(注) フランス スウェーデン (時間) (年)

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図表3(続き) 平均年間総実労働時間(欧米主要国)の推移(1990=100) (注)1990 年は旧西独地域が対象。集計方法が変更されたため、90 年と 95 年以降の数値は接続しない。 (出所)独立行政法人労働政策研究・研修機構 「データブック国際労働比較 2015」より大和総研作成 日本の 2013 年の平均労働時間は 1,735 時間であり、1990 年の 2,031 時間から大幅に減少した。 この結果、2013 年は 1990 年(=100)比で見ると、85 程度の水準にあり、他の諸国よりも減少 幅は大きい。しかし、欧州のドイツ、フランスにおける平均労働時間は、1990 年当時、各々1,578 時間、1,665 時間と低い水準にあり、さらに 2013 年には各々1,388 時間、1,489 時間となり、1990 年(=100)比においても日本と遜色ない水準まで低下させている。この理由が、就業者数の減 少なのか、一人当たり労働時間の減少なのかは検証する必要がある。しかし、ドイツ・フラン スの労働時間の水準が低いことを考えると、日本の労働時間を減少させる余地は今後もあると 想定される。

(3)就業者数の減少と労働力不足の相違

労働時間が増加に転じる可能性が低いと想定される中、就業者数を増加させることが重要と なる。政府は、女性の労働市場への参加、高齢者の活躍等、これまで活用が不足していた層を 就業者に取り入れることにより、就業者数を増加させ、就業者数全体つまり労働力人口の減少 を抑制することに注力している。これにより、労働投入量の低下による日本の潜在成長率の低 下率を抑制しようとしているのである。「『選択する未来』委員会」における「日本潜在成長率 の推計 3」は、「経済成長・労働参加ケースは、女性、高齢者や若年層の労働市場への参加が進 む」という前提をおいて推計したものであり、政府は女性、高齢者等の労働市場の参加を促進 3 内閣府 「『選択する未来』委員会」(平成 26 年3月 12 日) 資料2「労働力人口と今後の経済成長について (『成長・発展』補足資料)」。この中で、さらに「潜在成長率を高めるためには、TFP(全要素生産性)の伸 びが重要」としている。 80 85 90 95 100 105 110 1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 日本 アメリカ ドイツ(注) フランス スウェーデン(年) 1990年=100

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する政策を打ち出している。 一方、付加価値が増加している産業は、通常、労働需給がひっ迫する、つまり労働力不足が 生じることとなる。このように就業者数の増加は、産業全体の付加価値の増加(需要サイド) を考慮しなければならない。独立法人 労働政策研究・研修機構による「産業別就業者数の将 来推計」の推計モデルにおいても、「産業別付加価値」の将来的な増加率等をもとに算出した「産 業別労働力需要」と、「就業率」や「将来推計人口」等から「産業別就業者数」を推計している。 このように供給サイドと需要サイドの両方の視点を踏まえ、“労働力人口の減少”と“労働力不 足”については慎重に議論していく必要があろう。どの産業においても、労働生産性を向上さ せるための労働力(あるいは労働の質)は不足していると考えられるが、女性と高齢者による 就業者数の増加によって、労働力不足が解消されるかは検証が必要であろう。

(4)労働力活用のために対応が求められる2つのギャップ

日本全体の GDP の増加≒付加価値額の向上を、一定の労働生産性の向上を伴う、労働投入量 (就業者数×労働時間)の増加によって実現していこうとする場合、次の二つの動向を把握し、 その対応を図っていく必要があると考えられる。 一つ目は、日本の産業が構造的に変化していく中、“労働力不足”が付加価値額の高い産業の 問題なのか、付加価値額の低い産業の問題なのか、労働の需給のギャップの問題を全産業で把 握し、付加価値額の増減と就業者の増減の関係を見ていく必要があろう。 二つ目は、就業する人の意思と就業環境のギャップ(ミスマッチ)の問題である。急激な少 子高齢化によって人口構成が変化する中で、各年齢層の就業形態の状況から、団塊の世代が労 働力の中心にいた時代の就業環境と現在の就業環境とのギャップを把握することが重要であろ う。人口構成の変化に合わせて、就業環境が改善され、個々人の希望する就業形態の現実との ギャップが縮小されれば、労働インセンティブが高まり、生産性が改善することも考えられる。

2.産業構造の変化に合わせた労働力の効率的な配分と労働生産性の向上

経済成長のためには、サービス化4という産業構造全体の変化を考えて、労働需要の増加が見 込まれる産業に労働力を効率的に配分し、労働生産性を高めることが重要であると言われる。 また、産業のサービス化という現象は、域外で稼げる産業(域外市場産業)である製造業の全 産業に占める付加価値額の比率が低下していき、域内で稼げる産業(域内市場産業)であるサ ービス業等の付加価値額の比率が上昇することを意味する(図表4)。 4 サービス産業(=第三次産業と同義)への移行を意味する。また、第二次産業自体でも、例えば保守・運用、 コンサルティングなどの業務の占める割合が高まることをサービス化と呼ぶ。

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図表4 国内産業構造(付加価値額、従業者数、労働生産性)(2012 年) (注)サービス業:学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽 業、教育、学習支援業、医療、福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの) (出所)総務省・経済産業省「経済センサス」より大和総研作成 これに伴い就業者も相対的に労働生産性の高い製造業から生産性の低いサービス業、卸売・ 小売業等へシフトする傾向にある(前掲の図表4、図表5)。図表6に見られるように、既に、 労働生産性の全産業平均比で 1.0 を下回る(平均以下)サービス業、卸売・小売業、建設業の 付加価値額が占める割合は 50%を超えている。 図表5 (全国)製造業における付加価値額と従業者数の推移(2012 年) (注)対象は従業者 4 人以上の事業所。従業者 29 人以下は粗付加価値額。2013 年は速報値、他の年は確報値。 (出所)経済産業省「工業統計」、総務省・経済産業省「経済センサス」より大和総研作成 製造業 農林水産業 鉱業 建設業 卸売・小売業 金融保険業 不動産業 運輸通信業 電気・ガス・ 水道業 サービス業 0 300 600 900 1,200 1,500 0 500 1,000 1,500 2,000 労働生産性 (万円) 従業者数 (万人) ※バブルの大きさ=2012年付加価値額 660 680 700 720 740 760 780 800 820 840 860 880 0 20 40 60 80 100 120 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (万人) ( 兆 円) 付加価値額(左軸) 従業者数(右軸) (出所)経済産業省「工業統計」、同「経済センサス」より大和総研作成 (歴年)

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図表6 全産業に占める付加価値額の割合と労働生産性の全産業平均比(2012 年) (注)サービス業:学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽 業、教育、学習支援業、医療、福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの) (出所)総務省・経済産業省「経済センサス」より大和総研作成 図表5に見られるように、製造業の従業者数はリーマンショック前の直近 10 年の 2007 年の ピーク(851 万人)から、2013 年には 100 万人以上減少し 734 万人となった。2013 年の付加価 値額(89 兆円)は、リーマンショック直後の 2009 年のボトム(80 兆円)から回復したとは言 え、直近 10 年間のピークの 2007 年(108 兆円)の水準の 8 割程度である。 ただし、サービス業においても、将来的に少子高齢化の進展による総人口の減少によって国 内需要が縮小していけば、それに見合って必要な労働力も減少していくことは避けられない。 サービス業を労働生産性の高い(=“稼げる”)産業に育成し、同時に製造業等の既存の“稼 げる”産業の付加価値の低下を防ぎ、就業者数を維持・増加させていく努力が必要であろう。“稼 げる”産業が劣化すれば、海外経済の成長を享受できない可能性が出てくる。さらに、サービ ス化という産業構造の変化による労働生産性の低下を補うためには、新たな産業を創出して稼 げる産業として育てると共に、稼げる産業への労働配分を考え労働生産性を高めていく必要が あろう。このためには、稼げる産業の目利き、稼げる産業に育てる人材、戦略が重要となる。 また、人材については、需要側のニーズと供給側のニーズのマッチングを考える必要がある。 つまり就業者の働く意思と就業環境のギャップを考えていく必要があろう。

3.男性・女性および高齢者の就業環境の変化と就業の意思

男性・女性層、各年齢層、高齢者層(60 歳以上)の就業環境の変化は、各層の就業に影響を 与えると考えられる。 2002 年から 2014 年の就業者総数で見ると、男性は 2,800~2,900 万人の水準にあり、女性の 製造業 農林水産業 鉱業 建設業 卸売・小売業 金融保険業 不動産業 運輸通信業 電気・ガス・水道業 サービス業 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 付加価値 額:全 産業に 占める 割合 労働生産性:全産業平均比 (倍)

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就業者数は 2002 年の 2,073 万人から 300 万人程度増加し、2014 年には 2,351 万人に達した(図 表7、図表8)。 正規・非正規別の就業形態では、男性の非正規比率は上昇傾向にあり、2002 年 15%程度の水 準から 2014 年には 20%を超えた。女性も 2002 年に 49%であったものが 2014 年に 57%と半数 を超えた。男性・女性とも、非正規の人数が増加して比率が上昇している。 また、正規・非正規別の就業形態を年齢階級別で 2002 年と 2014 年を比較した(図表9、図 表 10)。男性は、2002 年に正規の人数が最も多かった年齢層(25~34 歳)が、2014 年には 35 ~34 歳の年齢層に移り、依然、その正規の人数の水準は維持している。ただし、2014 年の 25 ~34 歳の年齢層の正規が 200 万人程度減少する一方、非正規が 30 万人増加した。35~44 歳の 層でも非正規が 40 万人程度増加、55 歳以上の非正規は倍の人数になった。 女性では、2002 年に正規の数が最も多かった 25 歳~34 歳の年齢層が、35~44 歳になり、人 数の水準は減少したものの、2002 年の 35~44 歳の年齢層よりは正規の人数が多い。一方、男性 と同じく、34 歳以下の年齢層の正規が減少した。非正規の人数は、35 歳以上の全ての年齢層に おいて増加した。 図表7 正規・非正規別の就業者数(男性) 図表8 正規・非正規別の就業者数(女性) (注)役員は含まず (出所)総務省統計局 「労働力調査」より大和総研作 成 (注)役員は含まず (出所)総務省統計局 「労働力調査」より大和総研 作成 図表9 年齢別正規・非正規の人数(男性) 図表 10 年齢別正規・非正規の人数(女性) (注)役員は含まず (出所)総務省統計局 「労働力調査」より大和総研作 成 (注)役員は含まず (出所)総務省統計局 「労働力調査」より大和総研 作成 高齢者(60 歳以上)の就業者数の推移(図表 11)を見ると、65 歳以上の年齢層の伸び率が 0 5 10 15 20 25 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 正規 非正規 非正規の割合(右軸) (万人) (%) (年) 44 46 48 50 52 54 56 58 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 正規 非正規 非正規の割合(右軸) (万人) (%) (年) 0 50 100 150 200 0 100 200 300 400 500 600 700 800 15~24歳 25~34歳 35~44歳 45~54歳 55~64歳 65歳以上 正規2014年 正規2002年 非正規2014年 非正規2002年 (万人) (万人) 0 50 100 150 200 250 300 350 400 15~24歳 25~34歳 35~44歳 45~54歳 55~64歳 65歳以上 正規2014年 正規2002年 非正規2014年 非正規2002年 (万人)

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2012 年以降、60~64 歳の年齢層の伸び率を逆転した。2012 年は、団塊の世代が 65 歳に達し始 めたこと等により、65 歳以上人口は前年に比べ 88 万人の増加となったことが要因である。 図表 11 60 歳以上の就業者数(農林業、非農林業別)の推移と変化 (出所)総務省統計局 「労働力調査」の「年齢階級(5 歳階級)別就業者数及び就業率」より大和総研作成 厚生労働省が 2013 年に公表した調査では、非正規形態での就業の主な7つの理由を比率で見 ると(図表 12)、男性では、女性と比較して 15~64 歳以下の年齢層において、「正規の職員・従 業員の仕事がないから」の比率が高い。特に 25~54 歳の 3 つの年齢層において、同比率は 50% 程度となった。他方、「専門的な技能等を活かせるから」の比率は年齢層が上昇するにつれ高く なっている。また、「自分の都合のよい時間に働きたいから」の比率は、24 歳以下の層と 65 歳 以上の層で高いことから、働き方の多様化が見て取れる。 図表 12 男女別・年齢層別の非正規で就業した主な理由の割合(%)(2013 年調査) (出所)厚生労働省「平成 25 年 国民生活基礎調査の概況」より大和総研作成 一方女性は、男性と比較すると、15~24 歳の層を除いて「自分の都合のよい時間に働きたい -7% -5% -3% -1% 1% 3% 5% 7% 9% (600) (400) (200) 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 19 73 19 74 19 75 19 76 19 77 19 78 19 79 19 80 19 81 19 82 19 83 19 84 19 85 19 86 19 87 19 88 19 89 19 90 19 91 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 20 14 (万人) 60~64歳(非農林業) 65歳以上(非農林業) 60~64歳(農林業) 65歳以上(農林業) 65歳以上(変化率・右軸) 60~64歳(変化率・右軸) (年) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 15 ~ 24 歳 25 ~ 34 歳 35 ~ 44 歳 45 ~ 54 歳 55 ~ 64 歳 65 歳以上 15 ~ 24 歳 25 ~ 34 歳 35 ~ 44 歳 45 ~ 54 歳 55 ~ 64 歳 65 歳以上 男 女 その他 正規の職員・従業員の仕事がないから 専門的な技能等をいかせるから 通勤時間が短いから 家事・育児・介護等と両立しやすいから 家計の補助・学費等を得たいから 自分の都合のよい時間に働きたいから

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から」、「家計の補助・学費等を得たいから」、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」の比率が 高い。背景には、家事・育児・介護等との両立や、配偶者控除や配偶者の企業の扶養手当の対象 からはずれないように、年収を一定範囲内に抑える意図があると考えられ、短時間労働を志向 している可能性がある。 「家計の補助・学費等を得たいから」の比率は、女性は 35 歳以降の年齢層で高いが、男性は 55 歳以上の年齢層で高い。一方、総務省の「全国消費実態調査」の直近のデータ(2009 年)と 10 年前のデータ(1999 年)を比較すると、全ての層で経常収入の金額が減少しているが、特に 50 歳以降の年齢層では 10 万円程度減少している(図表 13)。こうした家計環境の変化と、男性の 55 歳以上の層で家計の補助等を目的とした非正規が多いことは無関係ではないだろう。 図表 13 年齢層別 家計収支の状況(全国の月次の平均 1999 年から 2009 年の比較) (注)二人以上の世帯のうち勤労者世帯 (出所)総務省「全国消費実態調査」(平成 11 年(1999 年)および 21 年(2009 年))より大和総研作成 18 22 24 28 33 39 42 39 35 32 29 30 37 41 47 53 59 64 63 50 46 43 -10 0 10 20 30 40 50 60 70 25歳未満 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 65~69歳 70歳以上 (万円) 1999年 消費支出(除く家賃地代) 非消費支出 純預貯金 家賃地代 土地家屋借金返済 保険料 経常収入 17 21 24 26 29 34 38 35 31 29 27 28 35 40 43 48 52 55 53 39 36 33 -10 0 10 20 30 40 50 60 25歳未満 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 65~69歳 70歳以上 (万円) 2009年 消費支出(除く家賃地代) 非消費支出 純預貯金 家賃地代 土地家屋借金返済 保険料 経常収入

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4.おわりに

高齢者の活躍、女性の活躍、さらには外国人労働者の活躍等、働く人の層を増やすことで労 働力人口減少の対応は着実に進みつつある。しかし、全体としては産業構造が変化する中、製 造業等の労働生産性が高い産業からサービス業等の労働生産性が低い産業に、労働力がシフト している。このため、一部の産業の労働力不足が深刻化する一方、他の産業では労働余剰の問 題を抱えている。この結果、就業者数を増やしても、全体の労働生産性が向上せず、付加価値 自体が上がらない可能性が高まっている。 今後の経済成長のために政府は、産業構造の変化に合わせた効率的な労働力の配分を考える 必要があると同時に、どの産業も、“稼げる”産業になり続けるために、必要な労働投入量を 確保しつつ、労働生産性を向上して、付加価値を高めていくことが重要であろう。供給サイド では就業者のモチベーションと労働環境のギャップを埋める必要があろう。 産業全体と労働者が抱える問題を解決することは、労働生産性を飛躍的に向上させるような イノベーションが生まれる可能性も高めよう。付加価値を高めるような労働環境の改善を基盤 として、安倍政権の3本目の「成長の矢」を強化する手段が生きてくると考えられる。 第2回では、各産業別に高齢化・女性活躍・非正規の現状を見ていく。

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