DIC 療法
2019年3月20日
救急部&総合内科の朝のミニレクチャー
神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野 小谷穣治
スコア 基礎疾患
臨床症状 検査成績
出血症状* 臓器症状 FDP 血小板数* フィブリノゲン PT時間
(時間比)
0 なし なし なし <10 >12 >150 <1.25
1 あり あり あり 10≦
<20
12≧
>8
150≧
>100
1.25≦
>1.67
2 20≦
<40
8≧
>5 100≧ 1.67≦
3 40≦ 5≧
旧厚生省DIC診断基準
(1988年改訂)非白血病群
7点以上 : DIC
6点 : DIC疑い
5点以下 : DICの可能性少ない
白血病群
4点以上 : DIC
3点 : DIC疑い
2点以下 : DICの可能性少ない
*項目を除く
スコア 基礎疾患
臨床症状 検査成績
出血症状* 臓器症状 FDP 血小板数* フィブリノゲン PT時間
(時間比)
0 なし なし なし <10 >12 >150 <1.25
1 あり あり あり 10≦
<20
12≧
>8
150≧
>100
1.25≦
>1.67
2 20≦
<40
8≧
>5 100≧ 1.67≦
3 40≦ 5≧
旧厚生省DIC診断基準
(1988年改訂)非白血病群
7点以上 : DIC
6点 : DIC疑い
5点以下 : DICの可能性少ない
白血病群
4点以上 : DIC
3点 : DIC疑い
2点以下 : DICの可能性少ない
*項目を除く
・
臨床症状
がスコアに含まれているため、DICが進行しないと診断されにくい。
・
フィブリノゲン
が診断項目に含まれており、感染症では、肝予備機能低下の影響を受けやすい。
治療開始時のDIC scoreと改善率
Wada H, Thromb Haemost. 1995; 74: 848-852.
DIC score*の増加
20 40 60 80 100
(%)
悪化率 改善率
N=395 例(白血病群154 例,非白血病群241 例)
Pre-DIC
(78)
0
(102)
1
(95)
2
(59)
3
(39)
4
(19)
5
(12)
*旧厚生省DIC診断基準
Pre-DIC の時点で治療すると80%以上のDIC が改善し、8%のみが悪化。DIC スコアが増加するに 従いDICの改善率は低下し、悪化率は増加した。このことから、DIC の早期に治療するほうがDICの予 後が良いことがわかる。
急性期
(救急領域)DIC診断基準作成の必要性
旧厚生省診断基準(7点)を満たしてからの 治療開始では、良好な予後は期待できない。
早期に治療を開始でき、それによって
予後の改善が期待できる診断基準が必要。
5
SAC
(SIRS Associated Coagulopathy)日本救急医学会DIC特別委員会コンセンサスより改変
≧4:DIC
<1.2
<PT比1.2に相当する秒数(秒)
≧PT比1.2に相当する活性値(%)
<10
0 0-2 ≧12万
1
3
≧3
≧8万,<12万
あるいは24時間以内に 30 %以上の減少
<8万
あるいは24時間以内に 50 %以上の減少
≧1.2
≧PT比1.2に相当する秒数(秒)
< PT比1.2に相当する活性値(%)
10≦ <25
≧25
PT比 FDP (μg/mL)
スコア SIRS 血小板数(mm3)
急性期DIC診断基準
≧4:DIC
<1.2
<PT比1.2に相当する秒数(秒)
≧PT比1.2に相当する活性値(%)
<10
0 0-2 ≧12万
1
3
≧3
≧8万,<12万
あるいは24時間以内に 30 %以上の減少
<8万
あるいは24時間以内に 50 %以上の減少
≧1.2
≧PT比1.2に相当する秒数(秒)
< PT比1.2に相当する活性値(%)
10≦ <25
≧25
PT比 FDP (μg/mL)
スコア SIRS 血小板数(mm3)
急性期DIC診断基準
・旧厚生省DIC診断基準にあった
臨床症状
とフィブリノゲン
を削除・
SIRS
を追加・
血小板減少率
を反映させた早期診断
(急性期診断基準と旧厚生省診断基準)丸藤哲, 射場敏明, 江口豊, ほか. 急性期DIC 診断基準多施設共同前向き試験結果報告.
日救急医会誌. 2005; 16: 188-202.
-3 -2 -1 0 1 2 3
⊿診断日:急性期診断基準診断日 - 旧厚生省診断基準診断日 26例/107例 (24%)
急性期診断基準が 早期に診断した症例
旧厚生省診断基準が 早期に診断した症例 急性期診断基準と
旧厚生省診断基準が 同日に診断した症例
急性期診断基準が、より早期にDICを診断することが可能であった。
死亡例 生存例
SOFAmax Mortality(%)
12 10 8 6 4 2 0
50
40
30
20
10
0 1 2 3 4 5 6 7 8
DIC score max
急性期DIC診断基準と臓器不全および死亡率の関連
SOFA score Mortaity(28日)
丸藤哲, 射場敏明, 江口豊, ほか. 急性期DIC 診断基準多施設共同前向き試験結果報告.
日救急医会誌. 2005; 16: 188-202.
Ⅶa 組織因子
Ⅹa
トロンビン
フィブリノゲン TM
トロンボモジュリン
フィブリン 血栓形成
APC
活性化プロテインC
AT TAT
トロンビン- アンチトロンビン 複合体
トロンビンの生成を阻害 トロンビンを除去
血栓形成と制御メカニズム(凝固系)
Ⅹa
トロンビン
血栓
フィブリノゲン プロトロンビン
フィブリン
血栓の溶解メカニズム(線溶系)
プラスミノゲン プラスミン
FDP・Dダイマー
フィブリン tPA
プラスミノゲン アクチベーター
α2-PI
プラスミン インヒビター
PIC
プラスミン
プラスミンインヒビター 複合体
血栓溶解
tPA プラスミノゲン プラスミン
血栓
FDP・Dダイマー
フィブリン
血栓親和性が高く、フィブリン上に集積
血栓上でプラスミノーゲンは、効率的に
プラスミンに変換され血栓を溶解する α2-PIがプラスミン
を制御している 線溶系が亢進してくると、プラスミン とα2-PIが複合体を形成し、PIC が産生され、プラスミンを低下させる
造血器悪性腫瘍のDICでは、線溶系が亢進しているためPICの値は、高値となる。
血栓上でプラスミノーゲンは、効率的にプラ スミンに変換され血栓を溶解する
血管内皮障害
(NF-κB活性化)PAI-1
PAI-1
PAI-1
線溶抑制
(プラスミン産生低下)
PAI-1亢進
凝固亢進
(トロンビン産生)TM
TM TM
組 織 因 子
組 織 因 子
組 織 因 子
TM抑制 組織因子発現
敗血症性 DIC
血管内皮障害と凝固線溶異常
炎症性サイトカインの影響によって血管内皮障害が起こる TMの発現抑制やエラスターゼによる不活性化(分解)
DICの引き金である組織因子が発現
↓
過度な凝固亢進状態 PAI-1が過剰産生
↓
線溶系が抑制
↓
臓器不全をともなうDICの発症
敗血症性 DIC
血栓の溶解メカニズム(線溶系)
プラスミノゲン プラスミン
FDP・Dダイマー
フィブリン tPA
プラスミノゲン アクチベーター
α2-PI
プラスミン インヒビター
PIC
プラスミン
プラスミンインヒビター 複合体
血栓溶解
PAI-1
プラスミノゲン アクチベーター インヒビター
感染症
敗血症性DICでは、PAI-1の産生によってプラスミンの生成が阻害
される。その結果、フィブリン(血栓)が分解できず臓器障害を引き起こす。
血管内皮障害によってPAI-1産生 tPAの作用が抑制
プラスミン産生が低下
PICは殆ど上昇せず、FDPやDダイマーの値も 造血器悪性腫瘍のDICに比べると低値である
TAT
正常上限
(ng/mL)
APL*
(n=22)
固形癌
(n=23)
敗血症
(n=40)
0 10 20 30 40 50 60 70
基礎疾患別の臨床検査値の変動
凝固を反映
(トロンビンの産生)
PAI-1
(ng/mL)
正常上限
200
150
100
50
0 APL
(n=22)
固形癌
(n=23)
敗血症
(n=40)
FDP・DD
(ng/mL)
APL
(n=22)
固形癌
(n=23)
敗血症
(n=40)
FDP DD
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
PIC
(μg/mL)
正常上限
APL
(n=22)
固形癌
(n=23)
敗血症
(n=40)
0 2 4 6 8 10 12
線溶を反映 14
(フィブリンの分解)
*急性前骨髄急性白血病
TAT:トロンビン‐アンチトロンビン複合体 PIC:プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体
PAI:プラスミノゲンアクチベーターインヒビター APL:急性前骨髄球性白血病 AAA:腹部大動脈瘤
病 型 凝固
(TAT) 症 状 Dダイマー PAI-1 代表的 疾患
線溶抑制型
(凝固優位型)
線溶亢進型 出血症状
臓器症状
線溶
(PIC)
線溶均衡型
微増
上昇
著増
微増
敗血症
固形癌
APLAAA
DICの病型分類
朝倉英策:金沢大学血液内科ホームページより
1991年
SCCM
とACCP
合同によるSepsis
とそれに基づく 多臓器不全の定義に関するカンファレンス 2001年SCCM, ESICM, ACCP, ATS
とSIS
が,Sepsis
の定義を明確化
ISTH/SSC
がOvert-DIC
診断基準を提示2002年
SCCM, ESICM, ISF
が,5年間でsevere sepsis
患者の死亡率を
25%
減らすという国際的なキャン ペーン”Surviving Sepsis Campaign”
を開始2004年 世界初の
Sepsis
の管理指針を示したSevere Sepsis Campaign Guideline (SSCG)
を発表2008年 これまでの
SSC
ガイドラインをリニューアルしSSCG2008
を発表(ATS,ANZICSは不参加)2013年
SSCG2012
を発表歴史的背景(欧米)
欧米のDIC治療は基礎疾患の治療重視,抗凝固剤はヘパリン程度
歴史的背景(日本)
1988年 厚生省DIC基準の改定
1992年 血小板とFDPのみで診断する松田試案が考案
2002年 日本救急医学会の
DIC
特別委員会と日本血栓止血 学会学術専門員会DIC
部会より「救急領域のDIC
診断基準案」が発表
2005年 SAC(
SIRS associeted coaguropathy
)2006年 日本救急医学会より「急性期DIC診断基準」
2009年 「科学的根拠に基づいた感染症に伴うDIC治療の エキスパートコンセンサス」が公表
•
DIC治療で基礎疾患の治療はコンセンセスが得られている•
抗凝固療法による治療は推奨度Aである日本では,「敗血症」と いう括りより「DIC治療」
を対象にコンセンサス 形成がなされてきた
Yamakawa K, et al. Crit Care 2016, 20(1):229.
Anticoagulants: 1247 patients
(antithrombin, recombinant thrombomodulin, heparin, and protease inhibitors)
Patients: 2663 consecutive patients with sepsis
No treatment; 1416 patients
Anti-coagulant
Yamakawa K, et al. Crit Care 2016, 20(1):229.
Anti-coagulant
Yamakawa K, et al. Crit Care 2016, 20(1):229.
Anti-coagulant
DICに限ると効果がある。
Yamakawa K, et al. Crit Care 2016, 20(1):229.
Anti-coagulant
High riskに効果がある。→重症度の選択が必要か?
Antithrombin Ⅲ ( AT Ⅲ )
ATⅢ(KyberSept Trial)
Warren BL. JAMA 2001; 286(15): 1869-78
対象 : 重症敗血症
試験群 : ●
ATIII
群(30,000 U/4
日,N=1,157
)6,000 U/30min + 250 U/hr
×96hr
●プラセボ群(
N=1,157
) 主要評価項目:90
日目転帰•日本のATⅢは1500U/日×3日です.
•最大3000Uまで増量可能
•保険で切られることがある。
Warren BL. JAMA 2001; 286(15): 1869-78
KyberSept
主要評価項目(90目転帰)でATIII群とプラセボ群で差はなかった。
(28日目の死亡率・・・ATIII 群:38.9%,プラセボ群:38.7%)
ヘパリン非併用の場合,
ATIII
は,90
日後転帰を有意に改善(死亡率・・・
ATIII
群:44.9%
,プラセボ群:52.5%
)Warren BL. JAMA 2001; 286(15): 1869-78
p=0.03
KyberSept
A : ヘパリン非併用かつDIC合併患者において,ATIIIは90日目の転帰を改善 死亡率・・・ATIII群:34.3%(37/108例)vs. プラセボ群: 50.4% (58/115例)
B : ヘパリン非併用かつ非DIC患者の90日目の転帰は, ATIII群とプラセボ群で 差なし.
KyberSept(サブ解析)
Kienast J. J Thromb Haemost 2006; 4(1): 90-7
DIC あり DIC なし
1,008 patients (43.6% of the overall intention-to-treat population, n 2,314) with a predicted mortality rate of 30–60% at study
entry as defined by the Simplified Acute Physiology Score II.
Patients:
Interrvention: Interventions: Patients were randomized in a 1:1 fashion to receive either high-dose antithrombin III (30,000 IU
intravenously over the period of 4 days) or placebo.
Unifactorial and multifactorial reanalysis of prospectively defined populations from the KyberSept trial.
Setting:
Kienast J, et al. JTH 2006, 4(1):90-97.
Kienast J, et al. JTH 2006, 4(1):90-97.
重症には効くかも
…
丸藤哲、他. 日救急医会誌, 2013; 24: 105-15
丸藤哲、他. 日救急医会誌, 2013; 24: 105-15
• non-randomized multi-institutional survey
• 307 septic DIC patients who had AT activity less than 40%
• 1,500 IU/day (n=259) or 3,000 IU/day (n=48) for three consecutive days
• Primary efficacy endpoints:
– recovery from DIC by day 7
– an all-cause mortality on day 28.
• Adverse bleeding events
Iba et al. Critical Care 2014, 18:497
Comparison of survival. A Kaplan-Meier
Iba et al. Critical Care 2014, 18:497
• DPC data base
• Sepsis-oinduced DIC following severe pneumonia
• Antithrobin (n=2,263) , control (n=6,412)
• Propensity matched cohort (n=2,194)
• Multiple logistic regression analyses
Tagami T, JTH 2014, 12(9):1470-1479.
AT
Antithrombin の抗炎症作用
AT の抗凝固作用と抗炎症作用
Opal SM1, et al. Crit Care Med. 2002 May;30(5 Suppl):S325-31.
0 40 80 120 160
0 2 4 6 8
肺における好中球集積と HMGB-1 発現 LPS
投与18
時間saline AT III LPS LPS+AT III HMGB-1
β-actin
AT IIIは
肺における好中球集積と HMGB-1の発現を軽減した
**, p<0.01; Tukey-Kramer’s post hoc test
Saline AT III
LPS+AT III LPS
20 μm
20 μm 20 μm
20 μm
saline AT III LPS LPS+AT III
視野あたりの平均好中球数(個)
**
**
**
肺胞壁の平均厚さ(μm)
**
****
saline AT III LPS LPS+AT III
(naphthol AS-D chloroacetate esterase stain)
Ishikawa M, Yamashita H, Oka N, Ueda T, Kohama K, Nakao A, Kotani J: Antithrombin III improved neutrophil extracellular traps in lung after the onset of endotoxemia. J Surg Res 2017, 208:140-150.
リコンビナント・トロンボモジュリン
Yoshimura J, et al. Crit Care 2015, 19:78.
rhTM
Yoshimura J, et al. Crit Care 2015, 19:78.
rhTM
Yoshimura J, et al. Crit Care 2015, 19:78.
rhTM