T P P の 制 度 論 的 考 察
⎜
⎜ A P E C と の 構 造 比 較
⎜ ⎜
椛 島 洋 美
は じめ に 1 ア ジ ア太 平 洋 地域 の 国際 経 済ガ ヴ ァナ ン ス 2 ア ジ ア太 平 洋 地域 の 問題 領 域と ア クタ ー 3 T P Pを め ぐ って お わり に
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は じ め に
二〇 一五 年七 月
︑ハ ワイ で開 催 され た環 太平 洋 経済 連携 協定
︵ TP P︶ 閣僚 会 議で は 交渉 内容 の大 筋 合意 に至 るこ と が でき ず︑ 九月 以 降に 閣僚 会議 を 再度 開催 して 合 意し
︑年 内に 署 名す る道 を探 る こと に なっ た1
︒︶
TP P は︑ そも そも 高 い 水準 の自 由化 を 目標 とし てお り
︑物 品市 場ア ク セス やサ ービ ス 貿易 ばか りで は なく 非 関税 分野 のル ー ル作 りな どを 含 む 包括 的協 定と し て加 盟国 が同 定 して きた のだ か ら2
︑︶
早々 に合 意 に至 らな いと し ても 不 思議 では なか ろ う︒ むし ろこ こ で 問い たい のは
︑ 医薬 品の 開発 デ ータ に関 する 保 護期 間や 乳製 品 の自 由化 など 各 国の 国 内社 会を 直撃 す る争 点が 多々 盛 り 込ま れて いる に もか かわ らず
︑ 交渉 が頓 挫す る こと なく 交渉 の 未解 決部 分を 処 理し よ うと いう 勢い が 失せ ない のは な ぜ かと いう こと で ある
︒ アジ ア太 平洋 地 域で は︑ 一九 八 九年 にア ジア 太 平洋 経済 協力
︵ AP EC
︶が 誕 生し て 以来
︑自 由貿 易 圏の 検討 が幾 度 か なさ れ︑ 自由 貿 易の 正当 性や 必 然性 に関 する 認 識を 共有 して き たが
︑そ の具 体 的実 施 に関 して メン バ ーの コン セン サ ス を得 るの は容 易 でな かっ た︒ 結 果と して
︑こ れ まで AP EC に おけ る自 由貿 易 の試 み はほ ぼ挫 折し て きた
︒A PE C は その 創出 当初
︑ 地域 枠組 みと し て新 たに 設け ら れる こと その も のに 異論 が出 さ れた 経 緯が ある
︒今 日 では AP EC を 継 続さ せて いく こ とに 異議 を唱 え る動 きこ そ見 ら れな いが
︑そ れ でも AP EC が 自由 貿 易を 標榜 する 共 同体 へと 展開 し て いく 道の りは 遠 いと 言わ ざる を 得な い3
︒︶
経済 自由 化に つ いて
︑A PE C では 何度 も挫 折 し遅 々と して 進 まな かっ たの に 対し
︑ TP Pで は最 終 合意 に向 けた 調 整 を行 って いる 段 階に まで 来て い る︒ AP EC と TP Pの 違い は どこ にあ るの か
︒A P EC の誕 生か ら TP P設 立ま で
︑ 約 20年 の歴 史的 経 験が AP EC と TP Pの 違い を 生じ させ てい る と言 えな くも な い︒ し かし
︑現 行の A PE Cに おい て も アジ ア太 平洋 自 由貿 易圏
︵F T AA P︶ が企 図 され てい るも の の︑ 具体 的行 程 表す ら 出て いな い状 況 で︑ 明ら かに A
(法政研究 82‑2・3‑448 704)
P EC とT PP と での 相違 は大 き い︒ 本稿 はT P Pと AP EC と の比 較を 通し
︑ TP P の枠 組み の意 味 につ いて 考え る も ので ある
1
︒ア ジ ア 太 平 洋 地 域 の 国 際 経 済 ガ ヴ ァ ナ ン ス
︵ 1
︶ グ ロ ー バ ル
・ ガ ヴ ァ ナ ン ス
一九九三 年に 世 界銀 行が 発表 し た﹃ 東ア ジア の 奇跡
﹄で は︑ ア ジア が経 済発 展 した 要 因と して 経済 開 発に 関す る公 共 政 策が 大き く作 用 した と分 析し た
︒外 資の 導入 と 輸出 を促 進さ せ るた めに アジ ア 諸国 政 府は 規制 緩和 を 進め
︑イ ンフ ラ を 整備 し︑ 中等 教 育人 口の 拡大 の ため の制 度を 用 意す るな ど輸 出 主導 型工 業化 政 策を 採 用し た結 果︑ 国 際競 争力 が高 ま り 経済 成長 が実 現 した とい う︒ 経 済発 展が 市場 原 理を 通し ても た らさ れた とい う より も 政府 の強 力な 介 入に よっ て実 現 し たと いう 見方 で ある4
︒︶
確 かに 第 二次 世界 大戦 後 のブ レト ンウ ッ ズ体 制の 中で
︑ GA T Tを 通し て貿 易 自由 化が 目指 さ れ たも のの
︑G A TT 発足 当初 か らア メリ カを 含 め加 盟国 は手 厚 い保 護を 求め た ため
︑ 数々 の例 外が 設 けら れ政 府が 通 商 政策 に関 与す る 余地 は大 きか っ た︒ また
︑I M Fに つい ても ア メリ カと イギ リ スの 間 で資 本取 引の 自 由化 をめ ぐっ て 見 解は 分か れた た め︑ 過渡 的な 措 置と して 経常 取 引で の為 替制 限 をI MF 加盟 国 に認 め
︑資 本移 動に 関 する 政府 の介 入 を 可能 にし てい た5
︒︶
こう し て貿 易 及び 投資 の自 由 化を 旨と する 戦 後の ブレ トン ウ ッズ 体 制は 各国 の福 祉 国家 政策 と共 存 す るよ うな 形で 維 持さ れた6
︒︶
アジ アで は日 本を は じめ 西側 勢力 に 属す る国 々が
︑ ブレ ト ンウ ッズ 体制 に 基づ きな がら も 国 家の 経済 開発 を 理由 に保 護主 義 的姿 勢を とっ て いた
︒ しか し︑ 世界 の 貿易 量が 拡大 す ると とも にサ ー ビス 貿易 や電 子 取引 など 貿易 の 質の 変 化が 生じ てき た り︑ 貿易 に伴 う
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諸 課題 が生 じた り する につ れて 通 商に 関す る政 府 の制 御が 難し い 場面 がし ばし ば 生じ る よう にな った
︒ 金融 面に おい て も 変動 為替 相場 制 に移 行し
︑各 国 の為 替レ ート や 金利 の変 動が 激 しく なっ た一 九 八〇 年 代以 降︑ 政府 の 統制 が利 きに く い 状況 が散 見さ れ るよ うに なっ た
︒通 信情 報技 術 の発 展や 新し い 金融 商品 の開 発 の活 発 化な どプ ライ ベ ート
・セ クタ ー の 事情 に より 通商 や金 融の 環境 が 複雑 化す ると
︑政 府 の 対応 はま すま す困 難 にな る︒ こ のこ とは ア ジア 太平 洋 地域 に 限 って みて も同 様 のこ とが 言え よ う︒ たと えば 一 九九 七年 のア ジ ア通 貨危 機で は
︑短 期 資本 流入 の急 増 が主 な原 因の 一 つ とれ さる が︑ そ の予 防と 事後 の 処理 につ いて 各 国政 府は 十分 に 対応 でき なか っ た︒ 他方
︑開 発の 問 題︑ 知的 所有 権 の問 題︑ 環境 問 題︑ 人権 問題 な ど幅 広く 様々 な 問題 が 発生 する につ れ て国 際機 関の 国 家 への アプ ロー チ も変 わっ てき て いる
︒決 して 順 風満 帆で はな い が︑ 一定 の国 際 規範 や ルー ルが 共有 さ れ︑ 各国 家の 政 策 へ置 き換 える 方 向へ 進ん でき て いる 分野 もあ る
︒金 融分 野に 関 して 言え ば︑ I MF や 世界 銀行 は各 種 の規 制や 制度 を 準 備し 各国 政府 に 遵守 を求 め国 家 の権 限は 国際 的 合意 の範 囲内 で しか 認め られ な い︒ 国 家政 府は 一元 的 に政 策決 定す る の を難 しく して い ると いう 意味 で
︑プ ライ ベー ト
・セ クタ ーと 国 際機 関の 双方 か ら自 律 性の 危機 に立 た され てき てい る
︒ そ して
︑国 家政 府 が自 律性 の危 機 に直 面す る中 で 選択 され たの が AP EC であ り TP P であ った
︒ GA TT
・W T Oに しろ IM F にし ろ︑ 参加 す る行 為主 体は 先 進国 と途 上国 の 両方 を 含み
︑経 済政 策 への 姿勢 が様 々 に 異な る国 家を 抱 えて きた
︒さ ら に通 商政 策や 金 融政 策に 関わ る 利害 関係 者が 企 業や N GO など 国家 に 限ら れな い範 囲 に まで 拡大 して き てい るこ とも 指 摘で きる
︒ま た
︑G AT T・ W TO は貿 易︑ I MF は 融資 と単 純化 で きず
︑相 互の 乗 り 入れ もや むを 得 ない ほど に多 様 な問 題領 域︑ 様 々な 争点 を抱 え てき てい る︒ 一 定の 規 範や ルー ルに 関 する 合意 形成 は 行 われ てき たが
︑ 途上 国の 存在 ゆ えに 厳格 なル ー ルの 設定 と実 行 とい う一 律の 対 応に と どま るわ けに は いか ず︑ 貿易 促 進 措置
︑経 済技 術 協力
︑ル ール 施 行の 逃げ 道な ど も用 意し なけ れ ばな らな い︒ こ れら は グロ ーバ ル・ ガ ヴァ ナン スの 一 つ の特 徴で ある
︑ 行為 主体
︑問 題 領域
︑対 処方 法 での 多様 化の 側 面で ある
︒グ ロ ーバ ル
・ガ ヴァ ナン ス とは
︑国 際社 会
(法政研究 82‑2・3‑450 706)
の 中で 中央 政府 が なく とも 規範 や ルー ルが 遵守 され る過 程や 状況 を 指す7
︒︶
山本 吉宣 は︑
特 定の 問題 領域 に おけ る︑ 国 家 の︑ ルー ルに 基 づい たガ バナ ンス
﹂ 原 文マ マ︶ と定 義す る国 際レ ジー ムに 対し
︑構 造 とし て のグ ロー バ ル・ ガ ヴァ ナ ンス を︑ 問題 領 域の 多様 化︑ 行 為主 体の 多様 化
︑統 治手 段の 多 様化 とし て説 明 する8
︒︶
GA TT
・W T O体 制は まさ に グ ロー バル
・ガ ヴ ァナ ンス なの で ある
︒ AP EC やT P Pは
︑行 為主 体 にお いて も問 題 領域 にお いて も 対処 方法 にお い ても 多 様化 の方 向を 限 定し てい る︒ 行 為 主体 の多 様化 に つい ては AP E Cで は21 の国 と 地域
︑T PP で は12 カ国 に現 在 のと こ ろ限 定し てい る
︒ 問題 領域 の多 様化 に つい ては
︑G A TT
・W TO 交渉 を促 進す る 役割 とし てA PE C を規 定し てき たた め に GA T T
・W TO とA P EC で問 題領 域 に共 通す ると こ ろは ある もの の
︑G AT T・ W TO が 開発
︑環 境︑ 人 権の 問題 に翼 を 広 げる 一方
︑A P EC は国 際テ ロ や感 染症 など 非 伝統 的安 全保 障 への 関心 も示 し てい る
︒む しろ 問題 領 域に 関し て注 目 す べき なの はT P Pで あろ う︒ T PP では 交渉 の 範囲 を21 分野 に 限っ て交 渉が 成 り立 つ よう に工 夫し て いる
︒ 対処 方法 の多 様 化に つい ては
︑ 前述 のと おり G AT T・ WT O では ルー ル整 備 と実 行 以外 の道 を様 々 に用 意し てい る の に対 し︑ AP EC では 拘束 性 のあ るル ー ルを 含む 制 度化 を極 力排 し︑ 自 主 性に よる 実行 を担 保す る 行 程 表の 作 成︑ グ ッド プラ クテ ィ スの 提出
︑目 標 達成 状況 の検 証 など を行 って い る︒ 一般 的に は 経済 自 由化 の周 辺部 分 とさ れる ビジ ネ ス の円 滑化 や経 済 技術 協力 の促 進 につ いて 強調 し てい るの もA P EC の対 処方 法 の特 徴 であ る︒ 他方
︑ TP Pで は︑ 経 済 自由 化を 具体 化 させ るル ール に つい て原 則と し て厳 格に 設定 す る方 向で 動い て いる
︒ GA TT
・W T Oや AP EC が 方 法の 多 様化 を進 める のと は全 く 逆の 形で ある
︒行 為 主 体︑ 問 題領 域︑ 対 処 方法 それ ぞ れの 多 様 化 がグ ロ ーバ ル・ ガ ヴ ァナ ンス と位 置 付け られ るの に 対し て︑ TP P は逆 方向 の動 き をし
︑言 わば カ ウン タ ー・ グロ ーバ ル
・ガ ヴァ ナン ス の 状況 を作 り出 し てき てい ると 言 えよ う9
︒︶
(82‑2・3‑ ) 707 451
︵ 2
︶ ガ ヴ ァ ナ ン ス と は
河野勝に よる と
︑ガ ヴァ ナン ス には 機能 とし て のガ ヴァ ナン ス と︑ 状態 とし て のガ ヴ ァナ ンス とが あ ると いう
︒河 野 は グロ ーバ ル・ ガ ヴァ ナン スの 一 例と して 京都 議 定書 を取 り上 げ
︑温 室効 果ガ ス 削減 の ため にな んら か の制 度を 作ら な け れば なら ない と 認識 して いる 状 況を
︑機 能と し ての ガヴ ァナ ン ス︑ 国際 協力 等 をと お して 温室 効果 ガ ス削 減へ 向か っ て いる 状況 を︑ 状 態と して のガ ヴ ァナ ンス と区 別 する
︒一 部の 国 が京 都議 定書 の 方向 性 に反 発し てい る こと はひ とま ず お くと して
︑世 界 中の 多く の国 家 が地 球温 暖化 抑 制に 向け て協 力 の着 地点 を見 つ けよ う とし てい るこ と は︑ 少な くと も 機 能と して のガ ヴ ァナ ンス が実 現 して いる こと を 示す
︒河 野の 言 うよ うに
︑機 能 とし て のガ ヴァ ナン ス が特 定の 利害 関 係 者の ため に規 律 づけ るメ カニ ズ ムを 指す とす れ ば︑ 機能 とし て のグ ロー バル
・ ガヴ ァ ナン スと は︑ 国 家な ど行 為主 体 や その 相互 関係 を 規律 づけ るメ カ ニズ ムと いう こ とに なる
︒ま た
︑状 態と して の ガヴ ァ ナン スが 公共 財 の提 供さ れる 状 況 を意 味す るな ら ば10
︑︶
状態 とし て のグ ロー バル
・ ガヴ ァナ ンス と は国 家等 行為 主 体間 で 共有 され る規 範 が実 体化 して い る とい うこ とに な ろう11
︒︶
ガヴ ァナ ンス 論 の存 在意 義か ら して 最も 焦点 を 当て られ るべ き は︑ 機能 とし て のガ ヴ ァナ ンス と状 態 とし ての ガヴ ァ ナ ンス との 関係
︑ すな わち
︑ガ ヴ ァナ ンス のメ カ ニズ ムと 結果 と がい かに 関係 し てい る かで ある
︒ガ ヴ ァナ ンス のメ カ ニ ズム を完 璧に 整 備し て︑ その 結 果が 良く なる 場 合も あれ ば︑ そ うは なら ない 場 合も あ る︒ 利害 関係 者 のた めに 規律 づ け るメ カニ ズム を 整備 する こと が その ガヴ ァナ ン スの 結果 にど う 結び つく か︒ 河 野は そ の例 とし て︑ 国 家ガ ヴァ ナン ス に おけ るガ ヴァ ナ ンス のメ カニ ズ ムと 結果 の関 係 を挙 げて いる
︒ 国家 のガ ヴァ ナ ンス では
︑た と えば グロ ーバ ル 化に 適応 して 経 済成 長を 記録 す ると い う結 果が 出て い ても
︑利 害関 係 者 であ る国 民の た めに 国家 政府 の 権力 を制 限す る メカ ニズ ムが 整 って いな い場 合 があ る
︒ま た︑ 脆弱 国 家の 政府 機能 が
(法政研究 82‑2・3‑452 708)
正 常に 働い てい な い場 合︑ 本来 当 該国 政府 が持 つ 機能 を国 際機 関 や他 国政 府が 肩 代わ り する こと にな る が︑ それ によ っ て 政府 サー ビス の 提供 シス テム が うま く回 復し
︑ 想定 され た結 果 が出 てく るか は 別問 題 にな る︒ ゆえ に
︑メ カニ ズム の 点 でい うガ ヴァ ナ ンス と︑ 結果 の 点で いう ガヴ ァ ナン スと はパ ラ レル に生 じて く るわ け では なく
︑ガ ヴ ァナ ンス のメ カ ニ ズム をい かに 整 えて も︑ それ が 結果 の点 でい う ガヴ ァナ ンス に 結び つか ない 場 面は し ばし ば見 られ る
︒し かし
︑利 害 関 係者 の利 益の た めに エー ジェ ン トの 規律 づけ に 関す るメ カニ ズ ムを 整備 する こ とに よ り︑ 少な くと も 機能 とし ての ガ ヴ ァナ ンス は確 保 され るこ とに な る︒ グロ ーバ ル・ ガ ヴァ ナン スに お いて も︑ ガヴ ァ ナン スの メカ ニ ズム 整備 とそ の 結果 と が必 ずし も因 果 関係 を持 って い る とは 限ら ない
︒ しか し現 実に は
︑い わゆ る国 際 公共 財の 確保 に 向け て組 織と ル ール を 整備 し︑ 機能 と して のガ ヴァ ナ ン スを 実現 させ る こと が各 方面 で 模索 され てき た
︒無 政府 状態 と され る国 際社 会 の中 で の組 織化 とル ー ル化 は︑ 古く か ら 議論 さ れて きた とこ ろで あり
︑現 在の 国際 社会 にお い て見 られ る組 織化 と ルー ル 化は 様々 な 形 態 があ る
︒組 織化 と い って も事 務局 を 持ち 回り にし て
︑閣 僚会 議等 議 論の 場を 定例 化 する にす ぎな い レベ ル から
︑三
〇〇
〇 人以 上の 職員 を 擁 し業 務分 担の セ クシ ョン 化が 進 む事 務局 を設 置 して いる EU の よう なレ ベル ま で存 在 する12
︒︶
ま たル ー ルに 関し ても
︑ 国 際会 議で の共 同 声明 のよ うな 拘 束性 のな い形 か ら︑ 慣習
︑そ し て拘 束力 や強 制 力の あ る国 際約 束ま で 幅広 くあ る︒ 組 織 化と ルー ル化 は
︑グ ロー バル
・ ガヴ ァナ ンス の 体系 から 見れ ば 機能 とし ての ガ ヴァ ナ ンス を確 実に す るも ので あり
︑ 時 間の 地平 から 見 れば 一定 の構 造 を長 期化 させ る もの であ る︒ 一 定の 構造 を長 期 化さ せ る︑ 機能 とし て のガ ヴァ ナン ス が 実現 して いる こ とは 利害 関係 者 にと って 好ま し いも ので ある 一 方︑ 規律 づけ ら れる エ ージ ェン トに と って はそ れな り の 義務 的な コス ト がか かっ てく る
︒だ から こそ 組 織化 とル ール 化 のレ ベル につ い て︑ 意 見の 相違 がた び たび 見ら れる こ と にな る︒ グロ ーバ ル・ ガ ヴァ ナン スの 場 合︑ 利害 関係 者 が多 岐に わた っ てい るこ とが 多 く︑ 利 害関 係者 とエ ー ジェ ント の区 別
(82‑2・3‑ ) 709 453
も 判然 とし ない こ とが 少な くな い
︒地 球環 境ガ ヴ ァナ ンス の場 合
︑利 害関 係者 は 広く 市 民と 言え るか も しれ ない が︑ 規 律 づけ られ る行 為 主体 は国 家や 企 業ば かり でな く 一般 市民 も含 ま れる 可能 性が あ る︒ 感 染症 対策 のよ う な非 伝統 的安 全 保 障ガ ヴァ ナン ス の場 合︑ 利害 関 係者 は市 民か ら 法人 等各 種団 体
︑自 治体
︑国 家 政府 に まで 及ぶ 一方
︑ これ らの 利害 関 係 者は また
︑規 律 づけ られ るエ ー ジェ ント でも あ った りす る︒ 国 際経 済ガ ヴァ ナ ンス に おい ても 同様 の こと が言 えよ う
︒ 今 日の 実体 経済 を 考え るな らば 利 害関 係者 は企 業
︑業 界団 体︑ 非 営利 法人
︑市 民
︑自 治 体︑ 国家 政府 で あり なが ら︑ そ こ で規 律づ けら れ る対 象者 も企 業 その 他の 団体 や 自治 体︑ 国家 政 府な ど︑ 重な り が生 じ てい る︒ これ ら の行 為主 体は
︑ 機 能と して のガ ヴ ァナ ンス から 得 られ る利 益を 享 受し
︑同 時に そ れに 対す るコ ス トを 払 う必 要性 が出 て くる
︒A PE C
︑ T PP とも に構 成 メン バー の国 や 地域
︑企 業や 業 界団 体か ら賛 否 それ ぞれ 詳細 な 意見 が 出て くる こと は 避け られ ない
︒ 機 能と して のガ ヴ ァナ ンス を実 現 しよ うと する と
︑長 期の 構造 が 確定 され るた め に︑ 利 害関 係者 でも あ り規 律づ けら れ る エー ジェ ント で もあ る行 為主 体 が立 場や 認識 に 基づ いて 様々 な 反応 をす るか ら であ る
︒
2 ア ジ ア 太 平 洋 地 域 の 問 題 領 域 と ア ク タ ー
︵ 1
︶ A P E C 地 域 の 課 題
第二次世 界大 戦 後︑ 国境 を越 え た経 済ネ ット ワ ーク が進 展し
︑ アジ ア太 平洋 地 域で の 相互 依存 関係 は 徐々 に深 めら れ た
︒そ のこ とは 日 本を はじ めと す るア ジア 諸国 の 急速 な経 済発 展 をも たら した が
︑ア ジ ア太 平洋 地域 全 体を 通し た共 通 の ルー ルや 制度 が ない こと もあ り
︑国 際取 引上 の 予測 可能 性を 著 しく 阻害 する 状 況が 生 みだ され てい た
︒ AP EC が誕 生し た 一九 八〇 年代 末の 国 際環 境を 振り 返れ ば︑ 冷戦 の終 焉に よる 旧 共産 圏の 市場 経済 へ の 移 行︑ グ
(法政研究 82‑2・3‑454 710)
ロ ーバ ル化 の拡 大 と深 化︑ GA T Tウ ルグ アイ ラ ウン ドの 停滞
︑ 欧州 等で の国 際 地域 統 合の 展開 とい っ た激 動の 時代 を 迎 えて いた
︒ア ジ ア太 平洋 の域 内 外で の変 化に つ いて
︑日 本を は じめ とす る関 係 諸国 が 政府 の関 与す る 地域 的枠 組み に よ って 対応 しよ う とい う算 段の 結 果こ そが AP E Cだ った ので あ る13
︒︶
一九 八九 年一 一 月に 豪州 キャ ン ベラ で開 催さ れ た第 一 回A PE C 閣僚 会議 では
︑ 世界 経済 およ びア ジア 太 平洋 地域 経 済の 発展
﹂︑ グ ロー バル な貿 易 自由 化⎜ アジ ア 太平 洋地 域の 役 割﹂
︑ 特 定分 野 にお け る地 域協 力の 可 能性
﹂︑ アジ ア 太 平洋 経済 協力 の ため の将 来の 方 途﹂ の四 つの テ ーマ に基 づき 議 論が 展開 され た
︒翌 一 九九
〇年 七月 に シン ガポ ール で 開 かれ た第 二回 A PE C閣 僚会 議 にお いて も︑ 議 題は
﹁世 界お よ び地 域の 経済 発 展﹂
︑ GA TT
﹂︑ 地 域貿 易自 由化
﹂ な どで あっ た︒ この うち GA T Tに おけ る貿 易 の自 由化 につ い ては
︑当 時世 界 が共 通し て直 面 して い た︑ 切迫 した 課 題だ った と言 っ て よい
︒農 業︑ 知 的財 産権
︑サ ー ビス
︑紛 争解 決 など 新し い分 野 を盛 り込 んだ G AT T ウル グア イラ ウ ンド は一 九八 九 年 四月 まで に中 間 合意 に至 った
︒ この 中間 合意 を 受け てG AT T 加盟 国は それ ぞ れ具 体 的な 提案 を出 し たが
︑各 国の 主 張 の隔 たり は大 き く︑ 一九 九〇 年 末に 予定 され て いた 最終 合意 へ の見 通し は全 く つい て いな かっ た︒ こ のこ ろの 世界 の 状 況を 俯瞰 する と
︑欧 州に おけ る 単一 市場 誕生 の 動き が高 まる と とも に︑ 北ア メ リカ で もア メリ カと カ ナダ との 間の F T Aが 発効 した り
︑ラ テン アメ リ カで も経 済統 合 の動 きが 模索 さ れた りし てい た
︒万 が 一G AT Tで の 交渉 が決 裂し て G AT Tが 解体 す れば
︑世 界は ブ ロッ ク経 済の 道 を再 び歩 むこ と にな ると いう 懸 念が 出 てく るの も当 然 だっ た︒ 世界 各 地 でリ ージ ョナ ル な自 由貿 易協 定 が締 結さ れつ つ ある 段階 にあ っ て︑ AP EC は GA T Tが 最終 合意 へ 向か うよ う︑ そ し て貿 易自 由化 が GA TT 推進 路 線の 方向 で展 開 され るよ う︑ 合 意形 成を 行い 世 界へ 向 けて 発信 した14
︒︶
一方
︑A PE C 創出 当初 に貿 易 自由 化と 並び テ ーマ とし て掲 げ られ た﹁ 経済 発 展﹂ や
﹁協 力﹂ につ い ては きわ めて 広 い 意味 を含 んで い た︒ アジ アで い う発 展と は︑ 一 義に は国 家の 発 展で あり
︑ア ジ ア諸 国 では いわ ゆる 開 発独 裁に よっ て
(82‑2・3‑ ) 711 455
そ れを 実現 させ て きた15
︒︶
し かし
︑ モノ
︑ヒ ト︑ カ ネ︑ 情報 がコ ス トを かけ ずに 国 際移 動 する こと が可 能 にな ると
︑発 展 が 国家 政府 に一 手 に担 われ る構 造 は変 容す る︒ 国 境を 越え て移 動 する ヒト
︑カ ネ
︑情 報 をい かに 国家 領 域に 引き 込ん で 活 用す るか
⎜⎜ そ こで は国 家に 担 われ る発 展で は なく
︑市 場に 担 われ る発 展と い う認 識 の転 換が 迫ら れ た︒ そも そも 経済 発 展と いう 言葉 自 体は 同床 異夢 の 状態 を招 きや す い︒ 何に 対し ど のよ う なア プロ ーチ を とっ て経 済発 展 を 実現 させ るか と いう AP EC 創 出以 来の 目的 に 対し
︑ア メリ カ が音 頭を とっ た 一九 九 三年 の首 脳宣 言 では
︑貿 易と 投 資 に関 する 障壁 削 減と 経済 技術 協 力が 示唆 され た16
︒︶
但し
︑ 貿易 と 投資 の自 由化 に つい て 踏み 込ん だ施 策 は提 示さ れた わ け では なか った
︒ 最恵 国待 遇を 域 外諸 国に 無条 件 に適 用す るか ど うか に関 する 主 張の 違 いは メン バー 間 で大 きく17
︑︶
経済 発 展の 過程 に対 す る思 惑の 違い か らか
︑ど の程 度 の自 由化 を行 う かと いう 点の 詳 細も 十 分に 詰め られ な かっ た︒ 議題 と し て俎 上に 載せ ら れて いた 協力 に つい ても
︑先 進 経済 メン バー と 途上 経済 メン バ ーと の 両方 を含 んで い るこ とに 鑑み て
︑ 教 育の 改善 や技 術 移転 の可 能性 に 若干 触れ ては い たも のの
︑そ の 具体 性の 部分 ま で突 っ 込ま れる こと は なか った
︒ 冷戦 の終 焉と 地 域統 合の 拡大 と いう 激動 の時 代 を迎 え︑ アジ ア 太平 洋地 域の 課 題に 直 面す る状 況に は あり なが らも
︑ 多 義性 や曖 昧さ を 含ん だ経 済発 展 や協 力と いう 言 葉が 先走 って 使 われ てい るに す ぎな か った
︒情 報通 信 関連 の技 術革 新 が 進展 した り株 式 など 保有 資産 の 価格 上昇 から 生 じる キャ ピタ ル
・ゲ イン が発 達 した り して
︑プ ライ ベ ート
・セ クタ ー が 先行 し︑ それ を国 家が フォ ロ ーす る形 での 経済 発展 へ と向 かお うと する 環 境は
︑ この とき 少な か らず A P E Cメ ン バ ーに 認識 され て いた 可能 性が 高 い︒ しか し︑ 先 行す るプ ライ ベ ート
・セ クタ ー によ っ て導 かれ る構 造 をい かに 経済 発 展 へと つな げる か とい う点 で合 意 され るこ とは な かっ た︒
(法政研究 82‑2・3‑456 712)
︵ 2
︶ T P P 地 域 の 課 題
TPP地 域の 課 題は
︑経 済不 均 衡問 題︑ 金融 危 機︑ 自由 化の 三 つに 集約 でき る
︒一 つ 目の アジ ア太 平 洋地 域の 経済 不 均 衡は もち ろん 今 に始 まっ たも の では ない
︒一 九 五〇 年代 から 日 米貿 易摩 擦な ど が断 続 的に 勃発 し︑ 為 替摩 擦に つい て も 一九 八〇 年代 に 日本 円︑ 韓国 ウ ォン
︑台 湾ド ル に関 する 為替 レ ート の大 々的 是 正が 行 われ るほ どで あ った
︒し かし 21 世 紀に 入っ ての 米 中間 の経 済不 均 衡問 題は 世界 の パワ ーバ ラン ス の変 更を も予 感 させ る 規模 とな る︒ ア メリ カか ら中 国 に 対す る輸 出は 一 九九
〇年 の四 八 億ド ルか ら二
〇
〇二 年に 二二 一 億ド ルに
︑中 国 から ア メリ カへ の輸 入 は一 九九
〇年 の 一 五二 億ド ルか ら 二〇
〇二 年に は 一二 五二 億ド ル へと 拡大 し︑ 中 国は 二〇
〇三 年 以降 G DP 二桁 の成 長 を記 録す るよ う に なっ た︒ 結果 と して アメ リカ の 対中 貿易 赤字 は 同期 間に 一二 七 億ド ルか ら一
〇 三一 億 ドル まで 増加 し て︑ 二〇
〇〇 年 に は中 国が 日本 に 代わ って アメ リ カの 最大 貿易 赤 字国 とな り︑ 二
〇〇 三年 一一 月 から ア メリ カは 中国 製 品に 対し てセ ー フ ガー ドや 反ダ ン ピン グ措 置を 講 じる ほど にな っ た18
︒︶
中国 の対 外 収支 の黒 字拡 大 とそ れ に伴 う外 貨準 備 率の 増加 の結 果
︑ 人 民元 切り 上げ 要 求が 高ま り︑ 二
〇〇 五年 七月 に は二
%切 り上 げ られ て︑ さら に その 後 三年 間で 約二
〇
%切 り上 がる な ど 人民 元は 急速 に 国際 化す る時 代 に突 入し た︒ 貿 易不 均衡 の大 き さや 外貨 準備 の 拡大 と それ に伴 う問 題 の質 から 見る と
︑ 単 なる 中国 一国 の 経済 や米 中間 の 不均 衡と いう レ ベル を越 えて い ると 見て よい か もし れ ない
︒ま た中 国 が保 有す るア メ リ カ国 債は
︑二
〇
〇一 年に 二一
〇
〇億 ドル 強だ っ たの が二
〇〇 六 年に は一 兆ド ル を越 え て世 界第 一位 の 保有 国と なり
︑ 二
〇一 五年 三月 段 階で 約一 兆二 六
〇〇 億ド ルに の ぼっ てい るこ と が報 告さ れて い る19
︒︶
二つ 目の 課題 で ある 金融 危機 と して
︑二
〇〇 七 年の サブ プラ イ ム・ ロー ン問 題 とそ れ に続 くリ ーマ ン
・ブ ラザ ーズ の 経 営破 たん によ る 世界 金融 危機 の 衝撃 の大 きさ が 指摘 され る︒ 一
〇〇 年に 一度 と いわ れ るほ どの 危機 に よっ て世 界金 融 資 本市 場の 緊張 は 一気 に高 まり
︑ 二〇
〇九 年一
〇 月に アメ リカ の 失業 率は 二六 年 ぶり に 一〇
%を 越え る など
︑大 景気 後
(82‑2・3‑ ) 713 457
退
︵great recession
︶と 呼 ばれ る 深刻 な事 態を 迎 えた20
︒︶
ま たア ジ アの 通貨 の中 に は過 小 評価 され るも の と過 大評 価さ れ る もの に二 分さ れ るな ど非 対称 な 対応 を示 し︑ 危 機に 遭遇 する と 域内 為替 相場 の 不安 定 性を 引き 起こ す こと が露 呈し た21
︒︶
二
〇〇 九年 夏に は 世界 経済 全体 の 景気 の下 げ止 ま りの 兆候 が訪 れ
︑二
〇一
〇年 に はア メ リカ でも 回復 傾 向が 現れ たが22
︑︶
ア ジア 諸国 がそ れ より もず っと 前 に回 復し
︑既 に 二〇 一〇 年の 段 階に は実 質的 な 経済 成 長を 実現 して い たこ とか ら考 え れ ば︑ 金融 危機 の 回復 段階 にお い ても アジ ア太 平 洋地 域内 に非 対 称性 のあ るこ と が明 ら かだ った
︒ 三つ 目の 課題 で ある 経済 自由 化 につ いて はA P EC でも 指摘 さ れて きた とこ ろ であ る
︒し かし 一九 九
〇年 代後 半に A P EC で 構想 され た早 期自 主的 分 野別 自由 化プ ログ ラ ムが 早々 に 頓挫 した こ とも あり
︑合 意 事項 を 実施 する に 際に は 個 々の メン バー の 自主 性に 任せ る とい う︑ AP E Cの 創設 当初 か らの スタ イル か らは 一 線を 画し
︑拘 束 的な ルー ルを 指 向 する 二国 間経 済 連携 等が 散見 さ れる よう にな っ てい る23
︒︶
この 間︑ 民間 企 業は グロ ーバ ル 化︑ 技術 革新
︑ 規制 緩和 など に よる 変化 に対 応 する
︑ より 効果 的な 経 営戦 略を 模索 し て きた
︒そ の例 と して 今日 プラ イ ベー ト・ セク タ ーの 舞台 では
︑ 国際 分業 の新 し い二 つ の顕 著な 動き が 見ら れる
︒一 つ は
︑生 産工 程を
︑ 各工 程に とっ て 適し た立 地条 件 の土 地で 行わ れ るよ う分 割し
︑ 一つ の 製品 につ いて 複 数の 工程 を異 な る 場所 で実 施し 作 り上 げら れる 国 際分 業の 形態 で ある24
︒︶
か つて の 国際 分業 と言 え ば産 業 単位 の分 業で
︑ 国境 を越 えて 移 動 する のは 一定 の 原材 料と 最終 生 産物 と決 まっ て いた
︒そ れが 通 信技 術や 輸送 手 段が 発 達し て地 理的 遠 隔性 がコ スト に 値 しな い時 代に 入 った こと で︑ 原 材料 の調 達か ら 生産 加工 の各 段 階︑ さら に流 通
︑販 売 とい う工 程が ア ジア 太平 洋地 域 の 多く の国 にま た がる こと にな っ た︒ もう 一つ は
︑シ リコ ンバ レ ーの よう に一 定 の地 理 的範 囲に 特定 の 産業 が集 積す る 状 況で
︑市 場の 拡 大や 関連 産業 の 存在 など によ る 外部 経済 が産 業 立地 や周 辺パ タ ーン を 生み 出す 形態 で ある25
︒︶
ア ジア で は 機械 産業 を中 心 に企 業間 取引 を 主要 な要 素と す る産 業集 積の 形 成も 始ま って お り︑ 効 率的 な分 業体 制 に対 応で きる 産 業 政策 や通 商政 策 を提 示し てい く こと が求 めら れ るこ とに なる26
︒︶
(法政研究 82‑2・3‑458 714)
この よう に︑ T PP 地域 では 実 体経 済と して
︑ 通貨
︑金 融︑ 貿 易︑ 投資 に関 す る急 激 な構 造変 化が 指 摘さ れて きた
︒ こ の急 激な 変化 の 中で 経済 界か ら AP EC 加盟 メ ンバ ーす べて に かか る連 携と し てF T AA Pの 要請 が あり
︑他 方短 期 間 に決 定︑ 実行 で きる 枠組 みと し てT PP が生 ま れた ので あっ た
︒ TP P加 盟国 は
︑そ の重 要な 特 徴と して
︑ 包括 的な 市場 ア クセ ス﹂
︑ 地域 全域 にま たが る 協定
﹂︑ 分野 横 断的 な貿 易 課題
﹂︑ 新た な 貿易 課題
﹂︑ 生 きて いる 協定
﹂ の五 つを あげ
︑ 特に 経済 障壁 の 撤廃
︑ 貿易 と投 資を 拡 大す るた めの 規 律 付け
︑競 争的 なビ ジネ ス環 境 の創 出へ の強 い意 思を 示 して いる27
︒︶
TP Pの 前 身で ある 環太 平洋 戦 略的 経済 連 携協 定
︵通 称 P4
︶以 来意 図 され てき た動 機 の一 つ とし て︑ グ ロー バ ル・ スタ ンダ ード と し ての 高度 な自 由化 モデ ル の提 示が あ り28
︑︶
まさ に市 場 を拡 大さ せ市 場 原理 をベ ース に した 自由 化モ デ ルの 構築 とい う 点で メ ンバ ー間 の意 見 が収 斂し てき て い るこ とは TP P を前 進さ せる 強 みと なっ てい る
︒
︵ 3
︶ A P E C の ア ク タ ー
APEC 創設 当 初12 カ国 だっ た メン バー は︑ 21 の国 と地 域に ま で拡 大し た︒ A PE C メン バー の条 件 とい うの は特 に 存 在せ ず︑ 一九 八
〇年 代以 降の ア ジア 太平 洋地 域 の経 済交 流実 態 を反 映さ せた 構 成で 先 進経 済と 途上 経 済の 双方 を含 ん で いる
︒A PE C が生 まれ た当 初
︑パ ワー を持 っ てい るア メリ カ がA PE Cの 動 向を 左 右し て︑ AS E AN 諸国 は従 属 し た位 置に 置か れ るこ とに なる か もし れな いと い う懸 念が 途上 経 済メ ンバ ーな ど から 示 され たり
︑A S EA Nと いう 枠 組 みが 既に 存在 す る中 での AP E Cは 屋上 屋を 重 ねる こと にな っ てA SE AN の 意義 を 失わ せる こと に なる とい う主 張 が なさ れた りし た29
︒︶
AS E AN 諸 国は
︑A PE C に参 加す るこ と によ って 大国 の 影響 力 を構 造化 させ る 可能 性を 懸念 し て いた
︒
(82‑2・3‑ ) 715 459
AP EC で決 め られ た規 範や ル ール が︑ メン バ ーで ある 国と 地 域を 強く 規定 し
︑メ ン バー は自 ら動 か すこ との でき な い 所与 の国 際シ ス テム の構 造的 条 件に 左右 され る こと にな ると い うの は︑ エー ジ ェン ト
・ス トラ クチ ャ ー問 題と して 古 く から なさ れて き た議 論で ある
︒ エー ジェ ント は 依頼 人等 から の 制約 によ って 行 動が 規 定さ れ︑ 行為 主 体で はあ って も 自 らの 意思 によ っ て行 動で きる と は限 らな い︒ 一 方︑ エー ジェ ン トが 存在 しな け れば 構 造‖ スト ラク チ ャー は存 在せ ず
︑ 構 造‖ スト ラク チ ャー はエ ージ ェ ント の相 互作 用 によ って 形成 さ れて いる とい う 見方 も でき る30
︒︶
国際 関 係論 で付 きま と う
︑エ ージ ェン ト が先 か︑ 構造
‖ スト ラク チャ ー が先 か︑ とい う エー ジェ ント
・ スト ラ クチ ャー 問題 の うち
︑エ ージ ェ ン トの 行動 が構 造
‖ス トラ クチ ャ ーに 拘束 され る 側面 は︑ 先進 経 済と 途上 経済 の 力の 差 を理 由と して
︑ AP EC 揺籃 期 に おい て途 上経 済 メン バー から 強 調さ れて いた
︒ 先進 経済 と途 上 経済 の双 方が 同 じ構 造
‖ス トラ クチ ャ ーの 中に 位置 づ け られ る限 り︑ A PE Cの 途上 経 済メ ンバ ーか ら 出さ れて いた 危 惧は 各国 の歴 史 的経 験 から 見て もっ と もな のか もし れ な い︒ 大国 が存 在 し︑ その 影響 力 でい った ん形 成 され た構 造‖ ス トラ クチ ャー の 中で は
︑力 の分 布が 変 化し ても 一定 の 国 際秩 序と して 維 持さ れる 可能 性 があ る31
︒︶
エー ジ ェン トが 先か
︑ 構造
‖ス トラ ク チャ ー が先 かと いう エ ージ ェン ト・ ス ト ラク チャ ー問 題 の見 方の 違い に より
︑A PE C とし ての 経済 発 展の 方法
︑そ し ても っ と具 体的 には 最 恵国 待遇 の域 外 適 用な どに つい て メン バー 間の 利 害が 真っ 向か ら 対立 する こと に なっ た︒ この よ うな 中 での 合意 形成 は 困難 を極 め︑ 閣 僚 会議 の際 に発 表 され る共 同声 明 が玉 虫色 の結 論 で終 わっ てい る と批 判さ れる こ とも し ばし ばで あっ た
︒
︵ 4
︶ T P P の ア ク タ ー
TPPの 構成 も 先進 国と 途上 国 の両 方を 含ん で いる
︒し かし
︑ そこ にA PE C で露 呈 した よう な︑ 大 国が TP Pと い う 構造
‖ス トラ ク チャ ーを とお し て小 国の 意思 決 定や 行動 を統 制 する とい う懸 念 はほ と んど 示さ れて こ なか った
︒T P
(法政研究 82‑2・3‑460 716)
P 加盟 国の うち
︑ ベト ナム を除 く 一一 カ国 は一 九 九五 年の WT O 発足 当初 から W TO の メン バー であ り
︑ベ トナ ムも 二
〇
〇七 年に WT O に加 盟し た︒ T PP のメ ンバ ー であ る一 二カ 国 は自 由化 をベ ー スに し たW TO の加 盟 国と して の経 験 や 難航 する ドー ハ ラウ ンド にお け る問 題を 当事 者 とし て抱 えて い る︒ した がっ て
︑個 々 の国 家に よっ て 自由 化に よる 損 益 は異 なる もの の
︑自 由化 を進 め なけ れば なら な いと いう 規範 そ のも のに 関す る 認識 は 一定 のと ころ で 収斂 して いる は ず であ る︒ 両 性の 闘い
﹂と い う名 称で 有名 な 調整 ゲー ムを 考 えて みよ う32
︒︶
行為 主体 であ る国 家 Aと 国家 Bが あり
︑国 際基 準を 統 一化 し て設 定す るこ とを 模索 し てい る︒ 現 段階 では 国 家A は基 準a を国 家 Bは 基準 bを 採用 し てお り︑ 国 際 基準 を 作 って 統一 化さ せ たほ うが 双方 の 国家 にと って 明 らか に利 益だ が
︑基 準a で統 一 する と 国家 Aが より 大 きな 得を する し
︑ 基 準b で統 一す る と国 家B がよ り 多い 利益 を享 受 する こと にな る
︒国 際基 準を ど ちら に する かに つい て の合 意ま では 波 乱 が予 想さ れる が
︑い った ん合 意 がで きる とそ れ は容 易に 守ら れ るこ とに なる33
︒︶
TP P加 盟国 間 で市 場原 理の 尊 重や 自由 化に 関 する 規範 は共 有 され てい たも の の︑ 自 由化 の国 際基 準 とし て著 作権 の 保 護期 間や 輸入 制 限の レベ ルを ど う設 定す るか で厳 しい 交渉 がな さ れて いた
︒し か し︑
経 済の 競争 力を 強 化し
︑ イノ ベ ーシ ョン と企 業 家精 神を 奨励 し
︑経 済の 成長 と 反映 を促 進し
︑ 及び 雇用 の創 出 を支 援 する
﹂基 準を 作 り上 げる 点で は
︑ す でに 合 意が でき てい る34
︒︶
市 場 での 競争 につ いて はT P P加 盟国 間で もは や 争い はな い︒ た とえ T PP で設 定 され る ル ール がア メリ カ 主導 のも ので あ った とし ても
︑ 市場 競争 のた め のル ール を採 用 する と いう とこ ろで 落 ち着 いて いる と 見 るこ とが でき る
︒大 国が 小国 の 行動 を規 定す る とい う懸 念よ り も︑ 安定 した 生 産ネ ッ トワ ーク をい か に形 成し
︑国 際 競 争を いか に勝 ち 抜く かと いう 点 で合 意形 成し て いる こと は︑ A PE Cと の違 い を決 定 的に して いる と 言え るか もし れ な い︒ A P EC とT PP とは 構 成メ ンバ ー 間で の力 の 非対 称性 は共 通し てい る が︑ メ ン バー 間 で の ゲー ム の 構 造が 異 な って いる
︒
(82‑2・3‑ ) 717 461
前節 で確 認し た よう に︑ ゲー ム の中 でい かに 規 律づ けを 行う か とい うレ ベル で は︑ A PE Cで もT P Pで も長 期の 構 造 を確 定す るゆ え にと もに 様々 な 行為 主体 から 異 論が 出て くる こ とに 変わ りは な い︒ そ れに 対し てど の ゲー ムを 選択 す る かと いう レベ ル では
︑A PE C では 構造
‖ス ト ラク チャ ーの 見 方の 違い から メ ンバ ー 間で 対立 して き たこ とに より
︑ A PE Cと いう ゲ ーム の枠 組み 自 体に 争い があ る 一方
︑T PP で は市 場競 争の た めの ル ール を採 用し 国 際競 争を いか に 勝 ち抜 くか とい う ゲー ムに つい て 大枠 での 合意 が あり
︑こ こに A PE Cと TP P の違 い を見 るこ とが で きる
︒
3 T P P を め ぐ っ て
︵ 1
︶ T P P 誕 生 に 向 け て
ブルネ イ︑ チリ
︑ニ ュ ージ ーラ ン ド︑ シン ガ ポー ル の 四 カ 国 に よ る 環 太 平 洋 戦 略 的 経 済 連 携 協 Strategic Economic Partnership Agreement 定︵Trans-Pacific
︑ 通称 P4 協定
︶ は二
〇〇 五年 六 月に 署名 され
︑ 二〇
〇六 年一 月に 発効 し た︒ P4 のメ ン バー はと もに 新 自由 主義 的指 向 が強 く経 済自 由 化に 積極 的だ が
︑世 界 的に 見て 経済 的 パフ ォー マン ス が 顕著 なわ けで は なか った
︒そ の よう な条 件ゆ え
︑P 4を 国際 的 に意 義の ある も のに す るた めに は︑ 国 際的 に優 位か つ 競 争的 な枠 組み に して
︑域 外へ 与 える イン パク ト を強 くし なけ れ ばな らな い︒ 同 協定 は 全二
〇カ 条と
︑ 環境 およ び労 働 の 二つ の分 野に 関 する 覚え 書き か ら構 成さ れ35
︑︶
関 税障 壁の 削減
︑ 関税 手続 き︑ 動 植物 検 疫手 続き
︑貿 易 に関 する 技術 的 障 壁︑ 知的 財産 権
︑市 場競 争活 性 化︑ 政府 調達
︑ 紛争 手続 きな ど WT Oを 越え る 先進 的 な取 組み が導 入 され てい た︒ 関 税 障壁 につ いて 言 えば
︑合 意当 時 にす でに かな り の分 野で 関税 が 撤廃 され てい た が︑ 二
〇一 五年 一月 ま でに 経済 自由 化 を 完成 させ るこ と で一 致し てい た36
︒︶
また
︑ P4 で の合 意は
︑メ ン バー を拡 大さ せ 将来 的 にア ジア 太平 洋 地域 の通 商連 合
(法政研究 82‑2・3‑462 718)
へ と展 開さ れて い くこ とが 企図 さ れて いた37
︒︶
S・ シュ ワブ 米 国通 商代 表部 代 表は 二〇
〇八 年 二月 に︑ 同年 三 月か らP 4で 始 まる 投 資と 金融 サー ビ スに 関す る交 渉 に アメ リカ が参 加 する こと を表 明 した38
︒︶
九 月に ア メリ カは P4 に 加盟 する こと を 正式 に 表明 する とと も に︑ P4 に入 っ て いな い関 係各 国 に一 考を 求め た
︒結 果と して 一 一月 には オー ス トラ リア とペ ル ーが 参 加の 意思 を示 し
︑ベ トナ ムも オ ブ ザー バー とし て 参加 する こと に なっ た39
︒︶
その 際
︑メ ンバ ーが 拡 大し た状 態を 反 映さ せ るた めに
︑名 称 をT PP と変 更 す るこ とで 合意 が なさ れた40
︒︶
TP Pで は二
〇 一〇 年三 月に メ ルボ ルン で開 か れた 第一 回交 渉 から 高い 水準 の 地域 協 定を いか に確 実 に実 現す るか が メ ンバ ー間 で認 識 され てい た︒ こ の段 階で
︑T P P地 域に おけ る
︑統 合︑ 基準 の 一貫 性
︑競 争性
︑透 明 性︑ 発展 を促 進 す るよ うな 協定 に なる よう に協 定 自体 をい かに 設 計し てい くか で 一致 して いた と いう41
︒︶
二〇 一五 年七 月 にハ ワイ で行 わ れ たT PP 閣僚 会 合ま での 動向 を 概観 して みて も
︑T PP がグ ロ ーバ ルな 貿易 の 新し い 基準 を設 立し
︑ それ によ って 競 争 力を 高め られ る よう な21 世紀 型 の貿 易協 定と な るこ とに TP P メン バー から 少 しの 躊 躇も 見ら れな い42
︒︶
市場 競 争の た め に高 レベ ルの ル ール を採 用す る とい うの はT P Pで の国 際的 な 公共 財で あり
︑ その 実 現へ の視 角は 国 家の 意思 の集 合 と いう より 国家 を 超え るも のに な って きて いる と 言え るか もし れ ない
︒こ れは
︑ AP E Cと きわ めて 対 照的 であ る︒ 一 九 九四 年一 一月
︑ AP EC 首脳 会 議で 公表 され た ボゴ ール 宣言 で は︑ 世界 経済 の 問題 に 関す る協 力や 多 角的 貿易 体制 の 支 持︑ 経済 自由 化 につ いて 各メ ン バー が努 力す る こと とし た43
︒︶
こ こに 国家 を超 え る理 念 的な 存在 を発 見 する こと はで き な い︒ 二〇 一〇 年 一一 月の AP E C横 浜首 脳会 議 の際 に出 され た 横浜 ビジ ョン で も︑ 金 融危 機を 経験 し たこ とで
﹁強 固 で 強靱 な世 界金 融 シス テム を構 築 する ため の措 置 を引 き続 きと る べき であ る﹂
︑ 開か れ た市 場を 維持 し 保護 主義 と闘 う こ とに 引き 続き コ ミッ トし てい る
﹂と 述べ るも の の︑ その 具体 面 に関 して は各 構 成メ ン バー の判 断に 依 拠す る程 度の 意 思 しか 見せ てい な い44
︒︶
TP Pで は 理念 の共 有の 基 づく 主権 の共 有 の可 能性 が垣 間 見ら れ るの に対 し︑ A PE Cで は理 念
(82‑2・3‑ ) 719 463
の 共有 に基 づく 個 別の 主権 の行 使 にと どま ると い う違 いが ある
︒
︵ 2
︶ 集 合 体 と し て の T P P
TPPに 関し て は前 述の とお り
︑現 在︑ 物品 の 関税 削減 や撤 廃
︑サ ービ ス貿 易 の自 由 化︑ 非関 税分 野 のル ール づく り
︑ 環 境や 労働 など 新 しい 分野 を含 む 21分 野で 交渉 が なさ れて いる
︒ 各分 野で TP P とし て の基 準が 確立 さ れる と︑ 以後 メ ン バー 各国 はそ の 基準
︑ル ール に 従う こと が求 め られ
︑国 内事 情 の変 化等 があ っ たと し ても 各国 が例 外 とし て個 別に 基 準 やル ール を決 め るこ とは 難し く なる
︒T PP で の交 渉結 果は T PP の意 思と し て共 同 管理 され る基 盤 とな り︑ その 後 発 効す る協 定は 個 別国 家の 意思 の 総和 とい うよ り は共 通の 意思 と いっ たほ うが よ いか も しれ ない
︒T P Pは 国家 を上 回 る 決定 主体 とい う わけ では ない が
︑T PP で交 渉 が行 われ その 交 渉結 果に 基づ い て行 わ れる 各国 の制 度 整備 は︑ TP P が グロ ーバ ルな 経 済競 争の 新基 準 を設 定し て運 用 する とい う意 思 を構 成し てい る と言 え よう
︒ 盛山 和夫 は﹁ 意 志決 定と 決定 の 遂行 に関 する 諸 ルー ルを 備え た 集合 体だ とし て 人々 に よっ て思 念さ れ たも の﹂ を組 織 と 定義 し︑ 組織 の 意志 は﹁ 意志 と して 人々 によ っ て了 解さ れて い る﹂ もの であ る とす る
︒T PP が盛 山 の言 う組 織に 相 当 する もの だと す れば
︑現 在行 わ れて いる TP P の交 渉は
︑機 能 とし ての ガヴ ァ ナン ス をど のよ うな 形 に確 定さ せる か で あり
︑T PP の 一連 の交 渉を 通 して 集合 的決 定 がT PP の意 志 とし て加 盟国
︑ より ミ クロ 的に は市 民
︑各 種業 界関 係 者
︑政 策担 当者 な どに よっ て了 解 され る状 態に な るは ずで ある
︒ 盛山 は﹁ 集合 的 決定 と は︑ 集合 体と い う超 個人 的な 理 念 的実 在の 意志 を 確定 する こと で あり
︑こ の意 志 は一 般に 集合 体 に関 わる どの 個 人の 意 志あ るい はそ の 集合 とも 同一 で は あり えな い﹂ と いう45
︒︶
T PP は グロ ーバ ル化 す る市 場へ の国 家 を超 えた 共通 了 解に ほ かな らな い︒ 盛 山の 説明 は個 人 と 集合 体に 関す る もの であ るた め
︑T PP への 安 易な 適用 は控 え なけ れば なら な い︒ し かし TP Pで の 交渉 の先 には 個
(法政研究 82‑2・3‑464 720)
人 や国 家に 還元 で きな い理 念と し て各 行為 主体 に 共有 され る現 実 があ り︑ その こ とは 各 行為 主体 とT P Pの 関係 を盛 山 の 集合 的決 定論 の アナ ロジ ーと し てと らえ るこ と を許 すこ とに な ろう
︒
︵ 3
︶ A P E C と い う 空 間
APEC では
︑ 直接 投資 と輸 出 主導 型工 業化 に よっ て経 済発 展 して きた 経験 か ら域 内 外を 問わ ず輸 出 市場 の維 持が 重 視 され た46
︒︶
労働 力 やプ ラン ト建 設 を低 コス トに 抑 えら れる 途上 経 済と 資本 力と 技 術力 で 優位 性を 持つ 先 進経 済と の組 み 合 わせ こそ がア ジ ア経 済の ダイ ナ ミズ ムで あり
︑ それ は域 内の 生 産要 素集 約性 の 差異 が あっ てこ その も ので あっ た︒ ア ジ ア太 平洋 地域 内 での 生産 要素 集 約性 の差 異は
︑ 経済 的影 響力 の 差異 でも あり
︑ それ は 政治 的関 係に も 影響 を及 ぼし た
︒ そ もそ もア ジア の 途上 経済 は域 内 の経 済的 社会 的 差異 を前 提と し
︑ア メリ カの 安 全保 障 体制 と市 場に 依 存し て発 展し て き た︒ アメ リカ の 安全 保障 体制 と 市場 がな けれ ば 現在 のア ジア は なか った とさ え 言え る かも しれ ない
︒ 一方 でそ のこ と は
︑ア メリ カが ア ジア 諸国 に圧 倒 的な 影響 力を 及 ぼし てき たこ と を示 唆す る︒ A PE C にお いて エー ジ ェン ト・ スト ラ ク チャ ー問 題の と らえ 方が メン バ ーに よっ て異 な り︑ それ がA P EC の枠 組み に おけ る 合意 を難 しく し てい るこ とか ら わ かる よう に︑ ア メリ カな ど大 国 の意 向が 幅を き かせ る構 造を 長 期的 に確 定さ せ ない よ う︑ また AP E Cの 枠組 みが 権 力 化し ない よう に 努め てき た︒ 一 九八
〇年 代末 に アジ ア太 平洋 地 域に AP EC を 誕生 さ せた こと は︑ 国 際空 間を 人為 的 に 区切 って 一定 の 管理 を可 能に し たが
︑あ る空 間 のモ ノ︑ ヒト
︑ カネ
︑情 報の 移 動を 管 理で きる とい う こと は︑ その 空 間 に対 して 権力 を 及ぼ すこ とが で きる こと を意 味 して いた47
︒︶
AP EC をき わめ て 緩や か な枠 組み とし て 維持 しよ うと す る のは
︑空 間に 対 する 権力 性と 無 縁で はな い︒ A PE Cが 域外 と 域内 を隔 てる 線 引き を 明確 に行 えば
︑ AP EC はそ の 空 間の モノ
︑ヒ ト
︑カ ネ︑ 情報 の 制御 を可 能と す る権 力の 源泉 と なる が︑ 域内 の 力の 分 布か ら見 てア メ リカ 等先 進国 に
(82‑2・3‑ ) 721 465
A PE Cと いう 空 間の 権力 が左 右 され る可 能性 は 高い
︒A PE C 空間 の権 力創 出 への 懸 念こ そが
︑A P EC とし ての 空 間 の線 引き を曖 昧 にす る原 動力 に なっ たと 言え よ う︒ 結果 とし て
︑A PE Cは イ ンフ ォ ーマ ルな フォ ー ラム とし て位 置 づ けら れ︑ コン セ ンサ スに よる 合 意形 成と 開か れ た地 域主 義を 重 視し てき た48
︒︶
こ れは
︑ AP EC 空間 か ら極 力権 力性 を 排 除す るメ カニ ズ ムと 理解 する こ とが でき る︒ A PE Cの メン バ ーが 合意 して 公 表し た 共同 声明 など の 文書 にお いて も 権 力性 の排 除を 前 提に した 意思 決 定シ ステ ムに よ るこ とか ら︑ 国 家を 超越 する 意 思で は なく 国家 の意 思 の集 合と 位置 づ け られ る︒
︵ 4
︶ T P P と い う 空 間
APEC が輸 出 市場 の維 持を 重 視し てき たの に 対し
︑T PP は 域内 およ び域 外 市場 の 能力 と質 を重 視 する
︒新 自由 主 義 的な 市場 競争 に 積極 的な TP P の原 メン バー は
︑公 平で 公正 な 競争 が可 能と な る運 営 方法 やル ール を 求め
︑グ ロー バ ル な貿 易の 中で 高 い水 準の 黄金 原 則を 設定 しよ う とし てき た︒ 自 由競 争に 基づ く 市場 の 中で 行為 主体 は 平等 であ ると 想 定 され てい るこ と から
︑T PP 加 盟国 も原 則と し て平 等と 見な さ れる49
︒︶
そ もそ も TP P 加盟 国の 持つ 国 家主 権の コロ ラ リ ーと して 主権 平 等の 原則 があ り
︑主 権国 家間 の 関係 を規 律す る もの とし て国 際 法的 に は所 与の もの と して 想定 され て い るが50
︑︶
国 際法 的 な平 等と 自由 競 争環 境で の平 等 とは 国際 社会 に おけ る平 等の ス タン ス に違 いが ある
︒ 主権 平等 原則 で は
﹁平 等に 取り 扱 われ なけ れば な らな い﹂ とし 国 際社 会の 義務 を 示唆 する 一方 で
︑自 由 競争 環境 での 平 等は 一定 のル ー ル に基 づい たゲ ー ムに 参加 する 各 国の 決意 に基 づ いて 導か れる も ので ある
︒T P P加 盟 国は
︑国 際社 会 にお いて 平等 に 取 り扱 われ なけ れ ばな らな いと い う受 け身 的な 平 等は とも かく
︑ ゲー ムで プレ ー する た めに 平等 な一 員 であ ると いう 能 動 的な 平等 観を よ り強 く持 って い ると 言え よう
︒ 平等 を前 提に し たゲ ーム のル ー ルづ く りに 好意 的な T PP メン バー は
︑
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