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エネルギー情報を用いた X 線 CT 画像の 高画質化

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(1)エネルギー情報を用いたX線CT画像の高画質化 著者 発行年 出版者 URL. 井村 ゆき乃 2013‑01 静岡大学 http://doi.org/10.14945/00007651.

(2) 静岡大学 博士論文. エネルギー情報を用いた X 線 CT 画像の 高画質化. 2013 年1月 創造科学技術大学院 自然科学系教育部 ナノビジョン工学専攻. 井村ゆき乃.

(3) 概要 論文要旨:X 線 CT は医療、セキュリティ、非破壊検査等の分野において広く応用される技術である。 X 線は物質を透過すると減弱されるが、減弱量は X 線のエネルギーに依存し、透過物質固有の値を 持つ。半導体検出器による高解像度化とフォトンカウンティング技術の実用化にともなって近年、X 線のエネルギーにより異なる減弱係数を利用した材料識別の実用化が期待されている。CT 画像によ る材料識別では現在、2つの異なるエネルギーにおける線減弱係数を用いる二色 X 線 CT が盛んに 研究されている。この方法では線減弱係数を各エネルギーに対し正確に取得することが重要であるが、 CT 画像には様々なアーチファクトと呼ばれるエラーが発生し CT 画像の精度を下げる原因となって いる。その中でもビームハードニングによるアーチファクトは、X 線が物質を透過する際、低いエネ ルギーの X 線は高いエネルギーに比べより減弱されやすく、減弱と透過距離との線形性が失われる ことにより発生するため、特に金属を含む撮像対象では回避が難しく、画質を悪化させる原因の一つ である。医療や非破壊検査の分野で利用されている管電圧の X 線管を使用する場合、スペクトルの カウント数のピークは数十 keV であることから、この低いエネルギー帯の CT 画像を使う必要があ るが、ビームハードニングによるアーチファクトが多く発生し、CT 画像の画質が低下することが問 題となっている。 本論文ではまず、白色 X 線とエネルギー弁別型フォトンカウンティング検出器を用い、金属材の サンプルのビームハードニングによるアーチファクトの発生とエネルギーの関係性を実験により調 査した。これにより、ビームハードニングによるアーチファクトは、低エネルギーの CT 画像で発生 していても、高いエネルギーでの CT 画像では比較的発生が少ないことが確認できた。このことから、 低いエネルギーの CT 画像と高いエネルギーの CT 画像を比較することで低いエネルギーの CT 画像 のアーチファクトの補正を行う方法を提案した。 ビームハードニングによるアーチファクトの補正方法として、白色 X 線とエネルギー弁別型フォ トンカウンティング検出器を用いて得た2つの異なるエネルギーにおける CT 撮像データを比較し、 サイノグラムを補正する方法を検討した。CT 撮像データは撮像角度ごとに透過データが並んだもの であるため、各角度における透過データの合計は常に一定である。しかしながら、低いエネルギーの CT 撮像データにおいてのみ、透過データの合計が角度により変動することがあり、シミュレーショ ンによりビームハードニングによるものであることを確認した。この撮像データを再構成するとアー チファクトを含んだ CT 画像になることから、透過データの合計の角度による変動幅を利用してサイ ノグラムを補正する方法を提案し、実測データを用いてその有効性を確認した。しかしこの方法では、 減弱係数の角度間の変動をサイノグラムに加算して補正を行うため、ビームハードニングによるアー チファクトの発生箇所が特定できることが条件であることから、複雑なサンプルでは適用の限界が予 想された。 次に、ビームハードニングによるアーチファクトが出現しにくい高エネルギーCT 画像の各ピクセ ル間における CT 値の勾配を参照し、低エネルギーCT 画像の再構成を行うためのアルゴリズムを検 討した。ビームハードニングによるアーチファクトが発生する撮像データを欠損データを含むと捉え、 欠損データを補う画像再構成法を拡張することで、CT 画像を補正しながら再構成が可能であるとい.

(4) う考えに至った。そこで、欠損データを含むデータや間の空いた角度からの撮像データの画像再構成 法として有効性が示されている、逐次近似型画像再構成法の1つである代数的画像再構成法を拡張し、 高エネルギーの CT 画像を参照する方法を組み込むことで画像再構成法の開発を行った。この方法は、 逐次的な画像再構成において、高いエネルギーの CT 画像のピクセル間の CT 値の傾きを参照して、 CT 値を修正していくものである。従来の画像再構成法でビームハードニングによるアーチファクト が発生する金属サンプルの CT 撮像データについて、開発した方法により画像再構成を行い、ビーム ハードニングによるアーチファクトの削減を画像と CT 値により確認した。さらに参照した傾きを修 正値に反映させる重み付けや、閾値、収束性に関する検討を行った。また補正された CT 画像を用い た材料識別でも実効原子番号の改善を確認した。 本論文はシミュレーションと実測によりビームハードニングによるアーチファクトの削減を検討 し提案したものであるが、 これはカドミウムテルライド(CdTe)検出器の高分解能とフォトンカウンテ ィング技術により実証された。現在 CdTe 検出器のダイナミックレンジの低さや高価格などの課題が あるが、今後これらの改善と、計算時間の短縮によって、本論文により提案されたビームハードニン グによるアーチファクトの削減方法の X 線 CT 装置での実用化が期待される。.

(5) Outline: The material identification with use of the difference of attenuation at different X-ray energies has been expected to be in practical use along with the progress of application technology of high resolution CT image and photon counting with semiconductor detectors. In the material identification, it is important to measure the linear attenuation coefficients at each X-ray energy bins accurately. However, artifacts appear in the CT image and make the accuracy of the CT image down. The artifact induced by the beam hardening is difficult to avoid because the linearity between the attenuation and the penetration length is lost when X-ray transmit the metal material. The peak energy of X-ray spectrum of commonly used X-ray tube is tens of kilo electron volts. It is needed to use the CT image of these low energy bands. In this paper, a new method for correcting artifacts in CT images of low-energy CT images by comparing to high-energy CT image is proposed. Expanding an algebraic image reconstruction technique which has been validated as a method for imaging data with missing data or few-view angles, a new method to reconstruct low-energy CT image referring to high-energy CT image was developed. In this method, the CT value is corrected by referring to the gradient between pixels of high-energy CT image in the iterative reconstruction algorithm. Imaging data of metal samples measured by photon counting type CdTe detector were reconstructed by this method and the reduction of artifact is confirmed..

(6) 博 士. 学. 位 論. 文. 井. 目 次. 村 ゆ. き. 乃. エネルギー情報を用いたX線 CT画像の高画質化. 目. 次. 第1章 序 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1-1. 研究の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1-2. 本研究の目的と概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1-3. 本論文の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第2章 X 線 CT ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-1.前書き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-2.X 線と物質の相互作用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-2-1.X 線・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-2-2.X 線の発生方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-2-3.連続 X 線と特性 X 線・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-2-4.X 線と物質との相互作用・・・・・・・・・・・・・・ 2-3.X 線・γ線の検出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-3-1.半導体検出器の特性・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-3-2.カドミウムテルライド(CdTe)・・・・・・・・・・・・ 2-4.X 線 CT における画像再構成法・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-4-1.X 線 CT の投影データ・・・・・・・・・・・・・・・ 2-4-2.2次元フーリエ変換法・・・・・・・・・・・・・・・ 2-4-3.Filtered Back Projection(フィルタ補正逆投影)法・・・ 2-4-4.Maximum likelihood Expectation Maximization (ML-EM)法・ 2-4-5.Algebraic Reconstruction Technique(ART)法・・・・・・・ 2-5.CT 値・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-6.Dual energy X-ray CT(DXCT)による材料識別・・・・・・・・・・・ 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 1頁 1頁 6頁 7頁 8頁 11 頁 11 頁 11 頁 11 頁 11 頁 12 頁 13 頁 15 頁 16 頁 17 頁 18 頁 19 頁 20 頁 23 頁 25 頁 27 頁 28 頁 29 頁 31 頁.

(7) 第3章 エネルギー弁別型 X 線 CT ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-1.前書き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-2.線減弱係数(μ)の測定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-3.CdTe 単検出器と放射性同位体元素による線減弱係数の測定・・・・ 3-4.エネルギー幅・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-5.まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 33 頁 33 頁 34 頁 35 頁 37 頁 41 頁 42 頁. 第4章 ビームハードニングによるアーチファクト・・・・・・・・・・・・・ 4-1.前書き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4-2.ビームハードニング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4-3.エネルギーとビームハードニングによるアーチファクト・・・・・・・・・ 4-4.イメージングエラー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4-5.まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 43 頁 43 頁 44 頁 47 頁 48 頁 50 頁 51 頁. 第5章 ビームハードニングによるアーチファクトの補正・・・・・・・・・・・・・ 5-1.前書き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5-2.サイノグラムによるアーチファクト削減・・・・・・・・・・・・・・・・ 5-2-1.ビームハードニングによるアーチファクトの シミュレーション・・・・・・・・・・・・・ 5-2-2.サイノグラムによる補正・・・・・・・・・・・・・・・ 5-3.高エネルギー側の CT 像を参照して 低エネルギー側の CT 像を較正する方法・・・・・・ 5-3-1.ART-FG-TV 法の開発・・・・・・・・・・・・・・・ 5-3-2.CT 撮像実験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5-3-3.CT 撮像データのアーチファクト削減の検証・・・・・ 5-3-4.FG パラメータの CT 画像への影響・・・・・・・・・ 5-4.まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 53 頁 53 頁 54 頁. 第6章. 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 73 頁. 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 75 頁. 56 頁 57 頁 61 頁 62 頁 65 頁 66 頁 69 頁 71 頁 72 頁.

(8) 第 1 章 序論 1-1. 研究の背景 1-1-1. X 線 CT の歴史 X 線は 1895 年ドイツの物理学者 Wilhelm Conrad Rӧntgen によって発見された。 Rӧntgen は低圧気体放電や陰極線などを研究している時、放電の光をさえぎっても放電管外の蛍光 板が蛍光を発することを見出した。これは明らかにある透過性の高い放射線が放電管から 出ていることを示すものであり、これを X 線として報告した。 この報告を受け各国で研究が開始され、数カ月後には医学的に使われるようにさえなった。 Rӧntgen は X 線に関する特許を取得しなかったことからその技術は世界中に広まり、第1 回ノーベル物理学賞を受賞する [1]。 1912 年、ドイツの物理学者 Max Theodor Felix von Laue によって結晶の回折現象が発見 され、X 線の波長が1Å 程度の短い波長の電磁波であることが確認された。1915 年には William Henry Bragg および William Lawrence Bragg により X 線が連続スペクトルと線 スペクトルを含むことがわかった。連続スペクトルの X 線は連続 X 線、線スペクトルの X 線は特性 X 線である。特性 X 線のスリットによる回折、複プリズムによる干渉、平面格子 による回折などにより、屈折率は1よりわずかに少ないということが調べられた。 X 線の利用は現在(1)X 線が物質により吸収されることを利用した X 線透過(2)X 線が物質 により散乱されることを利用した X 線回折(3)蛍光 X 線による X 線分光の3つが挙げられる。 このうち、X 線透過は、いわゆるレントゲン写真として医療分野で一般的に利用されている。 また、空港等での手荷物検査などのセキュリティ分野や工業用製品の検査など非破壊検査 においても X 線透過が利用されている。 コンピュータ断層撮影(Computer Tomography, CT)は、測定する物体に多くの異なる方 向から X 線を照射して物体の X 線吸収率を測定し、コンピュータによって画像を再構成し 2次元断面像を得る装置である [2]。 1917 年、オーストリアの数学者 Jordan Radon が、対象領域における物質の分布はその 投影データの無限集合から一意的に再生できることを証明した。この理論は 1972 年、英国 EMI 社の G. N. Hounsfield により X 線 CT 装置として実質的に実装された。この報告では それまでの X 線透過像では見えなかった脳の断面像が示され、その診断価値に対し放射線 医学における革命的な発明であると賞賛された。この発明により Housfield は 1976 年、ア メリカの A.M.Cormack とともにノーベル医学生理学賞を受賞している。 医療分野における CT スキャナの導入は 1974 年には世界で 60 台であったのが、手術せ ずに体内を鮮明に観察できるという有用性から世界中に急速に普及し 1980 年には 10,000 台以上と急激に広がった [3]。以後撮像方法と画像再構成についての研究が進み、これまで にヘリカルスキャン、リアルタイム、マルチスライス CT 等装置が開発されてきている。表 1-1 は、これまで医療分野において開発された CT 撮像方法である。 1.

(9) 表 1-1. 医療分野における CT 撮像方法 [4] 第一世代 Translate/Rotate(ペンシルビー. ディテクタ1個、X 線ペンシルビーム。X. ム)方式. 線管および検出器を移動と撮像を各角度ご とに繰り返すため、スキャン時間が長い。. 第二世代 Translate/Rotate(ナローファン. 検出器数十個、X 線は小型ファンビームス. ビーム)方式. キャン。原理は第一世代と同等であるが、フ ァンビームにより補正が可能であることか ら、画質が向上している。. 第三世代 Rotate/Rotate(ワイドファンビー. ディテクタ250~900個、X 線ファン ビーム、X 線管とディテクタともに回転する. ム)方式. 現在主流の方法 第四世代 Stationary/Rotate(ワイドファン. ディテクタが600から4800個、X 線. ビーム)方式. はファンビームで、検出器が円周上に配置さ れ X 線管のみが回転するが、現在は生産さ れていない. 第五世代 Scanning Electron Beam 方式. 円周上に検出器と X 線管のターゲットリン グが配置され、電子ビームを変更させターゲ ットに当てることで X 線の向きを変える。 高速スキャンが可能。 多数の検出器列と面検出器による3次元 X. Dynamic Spatial Reconstructor. 線 CT コーンビーム X 線 CT. 大視野 X 線 CT. 撮像システムに使われる X 線イメージング用検出器は、開発当初ヨウ化ナトリウム(NaI) シンチレータと光電子倍増管(Photo Multiplier; PMI)であったが、解像度が高くなるに つれて、Si Strip Detector(SSD)とフォトダイオードの組み合わせが主流となっている。ま た、大視野 X 線 CT においては面検出器が用いられている。 撮像データの再構成方法は、近年まで Filtered Back Projection(FBP)法に代表される数学 的に厳密なコンボリューション法を用いて画像を再構成するシステムが主流であった。現 在は計算機能力の向上に伴い、Maximum Likelihood-Expectation Maximization(ML-EM) 法、Ordered Subset-Expectation Maximization(OS-EM)法などの逐次近似法が実用化され つつある。逐次近似法はそれまでの FBP 法に比べ被曝量が低減できることが期待されてい る。 再構成の計算時間を含めた撮像時間は、最初の CT スキャナが一枚の画像を撮像するのに 300 秒かかっていたものが、現在では 100 ミリ秒台を実現している [3]。高速化により現在 2.

(10) は、立体の CT 像の撮像や動画 CT、立体の動画である 4 次元 CT [5]を実現した。 X 線 CT 撮像における課題も存在する。通常の X 線 CT で使われる X 線はスペクトル分 布をもち、スペクトルの低エネルギー側 X 線は高エネルギー側に比べ物体を透過しにくい ため、ビームハードニングによるアーチファクトが発生して画像の精度が落ちる場合があ る。医療分野においては体内に存在する金属類や厚みのある骨からのビームハードニング によるアーチファクトで臓器や血管等の画像が不鮮明となり、撮像画像が診断に利用でき ない、あるいは、誤診の原因となりうるため、さまざまな補正方法が検討されてきた [6,7]。 また X 線 CT による放射線被曝は、 レントゲン撮影での被曝が 0.1mSv であるのに比べ、 スキャンの種類に応じて 1~10mSv である [8]。放射線治療での被曝量に比べれば数十~数 百分の一であるが、米国でのスキャン中の照射事故 [9,10]や、日本での原発事故による放 射性物質拡散をうけて、CT 撮像においても被曝量を低減させる動きが出ている。近年の再 構成方法が FBP 法から逐次近似法へ移行し始めたことやフォトンカウンティングの導入 [9]がそれである。 セキュリティの分野では、X 線透過像や X 線 CT により手荷物や貨物等から危険物を検 出する検査が行われている [11,12]。X 線透過検査が一般的であるが、危険物が他のものに 隠された場合に検出できないため、X 線 CT 検査が導入されてきている。 1-1-2. Dual Energy X-ray CT X 線のエネルギーごとに異なる減弱から材料識別を 行い診断への応用の可能性が Alvarez らによって 1972 年に示されていた [13]。医療分野においてはヨウ素等の造影剤を 使用することで血管や臓器の詳細な検査方法が開発された。造影剤を用いた CT 撮像は、2 つの異なるエネルギーの X 線を用いた Dual energy X-ray CT(DXCT)により正確に病態 を観察できることが多く報告されている [14]。この成功でさらに、X 線のエネルギーを正 確に取得することでエネルギーの異なる CT 画像から物質を特定できるのではという期待 が広がっている。2003 年、鳥越らによりシンクロトロン放射光による DXCT が発表された [15]。この中では 40keV および 70keV における CT 画像から電子密度が得られた。また副 次的に実効原子番号も得られることが示され [16]、新たな診断材料としての可能性が示さ れた。DXCT と従来の CT との違いは、DXCT では2つの異なるエネルギーにおける減弱 情報を利用することである。このため DXCT には、1つの X 線管で管電圧を高速にスイッ チングする方法 [14]、2つの X 線管および検出器の組み合わせを配置する方法 [17]、X 線 へのフィルタを施す方法 [18]あるいはこれら方法の組み合わせ [19]等がある。しかしなが ら、例えば管電圧をスイッチングする方法では、X 線のエネルギーに幅があり実効エネルギ ーと実際に出力されるエネルギーとの間の差が無視できないなど、それぞれに課題が存在 している。 セキュリティの分野においても、X 線 CT 検査において危険物と非危険物が同様な画像に 映るため区別が困難な場合に対し DXCT を利用して危険物を判別するシステムの開発が進 3.

(11) められている [20,21]。医療分野においては撮像対象が人体であり組成が既知であること、 軽元素が主であること対し、セキュリティ等他の分野においては対象物を構成する元素が 広範囲でありかつ、金属等重い元素も含まれることから、医療分野とは別の材料識別法が 必要と考えられる。 1-1-3. 検出器 X線透過像を映像信号として電気信号に変換する方法には、シンチレータなどの蛍光体 を用いてX線を可視光に変換し、光電子倍増管(Photomultiplier Tube;PMT)などの可視光 用のイメージセンサで撮像する方法と、半導体検出器によりX線を直接電気信号に変換す る方法がある [22]。PMT は 1970 年代から用いられたが、CT 画像の解像度が高くなるに つれて小型化が必要となったことや、高いX線感度を実現するため蛍光体を厚くすると蛍 光体中で光散乱により解像度が劣化するため高解像度化が難しい等の問題が存在する。半 導体検出器は蛍光体を使わないため解像度の劣化が起きないことから高解像度が可能であ る [23]。またX線を直接電気信号に変換できるため高い感度が実現でき、X線照射量が前 者に比べ少なくても撮像可能である。X 線検出用の半導体は主にシリコン(Si)、ゲルマニウ ム(Ge)、カドミウムテルライド(CdTe)である。Si は最も広く利用されているが原子番号が 14 のため、100keV 以上の X 線は検出の効率が悪い。Ge は 100keV 以上の X 線も検出可 能であり半値幅も 122keV で 0.9keV とエネルギー分解能は高いが、そのバンドギャップが 0.665eV と小さいため常温で使用できない [22]。これに対し CdTe は比較的大きな原子番 号(Cd=48,Te=52)で構成されているためγ線、X 線に対する捕獲断面積が大きく検出に適し ており、さらにバンドギャップが 1.47eV と大きいため常温での動作が可能である。半導体 検出器による高解像度および低線量の検出で、光子を1つ1つ計測するフォトンカウンテ ィングが次世代の X 線 CT 技術として期待されている [9]。 1-1-4. フォトンカウンティング フォトンカウンティングは入射フォトンを1つずつエネルギーとともに計測する方法で ある。 フォトンカウンティング型検出器でエネルギー弁別を行う場合、閾値を多く設定出来れ ばできるほど実効エネルギーとの差が小さくなり実際のフォトンのエネルギーでの CT 像 を取得できる。また、X 線スペクトル全体を利用する X 線スペクトル CT により、同一レ ジストレーションの任意のエネルギーにおける CT 画像で材料識別をすることが可能で、対 象物に応じてエネルギーの組み合わせを撮像後に選択できるため、医療、セキュリティ等 非破壊検査の分野に広く応用ができると考えられる。医療分野におけるラインセンサの応 用も検討されている [24]。また、Zou らによる DXCT のセキュリティ分野への応用はフォ トンカウンティング型検出器で行われた [25,26]。. 4.

(12) 1-1-5.ビームハードニング X 線 CT 画像において問題となるのは、ビームハードニングと呼ばれる現象に起因するア ーチファクトである。ビームハードニングは、X 線スペクトルの低エネルギーが撮像対象物 により多く吸収され X 線の平均エネルギーが透過後に高くなる現象である [2,27]。医療分 野ではビームハードニングによるアーチファクトが CT 画像の画質を下げ、診断や治療にお ける誤判断の原因や、被曝を冒して撮像した CT 画像が利用できない等問題となりうる。ま たセキュリティ分野では対象物質の予測がつかないことから、ビームハードニングによる アーチファクトと本来の CT 像との区別がつきにくく、危険物検知の精度を下げることが懸 念される。. (a). (b). (c). 図 1-1.ニッケル円柱のエネルギー別 CT 画像(a)40keV(b)80keV(c)120keV これに対しエネルギー弁別型 CT では、X 線の透過データをエネルギー帯域別に分割する ため、エネルギー帯域別に X 線を観察した場合、ビームハードニングは顕在化しないと考 えられる。しかし低いエネルギーの帯域では、対象物の透過後に十分なカウント数を得ら れない場合、減弱と透過距離との線形性が保たれなくなりアーチファクトが発生する(図 1-1)。このことから白色 X 線のビームハードニングによるアーチファクトと同意と考え、 本論文内ではビームハードニングによるアーチファクトと述べる。 ビームハードニングによるアーチファクトの補正や削減方法については多くの報告例が ある [28,29]。医療分野では、撮像対象が人体の各組織であり、それぞれの検査対象に特化 されたモデルによる方法が主である。これらの方法は対象物が限定されない他分野への適 用は難しいと考えられる。 また今後 DXCT による材料識別が実用化されることが予想されるが、DXCT では異なる 2つのエネルギーにおける CT 画像を使用し、一般に用いられる X 線管(管電圧~150keV) が用いられる場合その低エネルギーは数十 keV となり、このエネルギー帯でのビームハー ドニングによるアーチファクトの削減が求められると考えられる。. 5.

(13) 1-2. 本研究の目的と概要 以上の背景から、X 線スペクトル CT を利用した X 線 CT 画像のアーチファクト削減方法 の検討を行った。スペクトルをエネルギーバンドに分割して任意のエネルギーにおける CT 画像を同時取得できるフォトンカウンティング型エネルギー弁別法の利点を生かし、低エ ネルギーに発生するアーチファクトを、ビームハードニングによるアーチファクトが比較 的発生しにくい、より高いエネルギーの撮像情報を用いて削減が可能ではないかと考え、 フォトンカウンティング型 CdTe 検出器および X 線スペクトル CT による CT 画像のアーチ ファクトを除去する方法の検討を行った。 ビームハードニングによるアーチファクトの低減のため、エネルギー弁別により同時に 得られる高いエネルギーの画像との比較によって撮像データを補正する方法を検討した。 このうち、サイノグラムに現れる透過情報の矛盾からビームハードニングによる透過量の 不足分を、サイノグラムの透過データの角度ごとの合計値が一定であることを利用して推 定し、サイノグラムデータの較正方法を検討した。この較正により、CT 値が改善すること が確認された。しかしながら、この方法ではビームハードニング発生箇所が特定できるこ とが条件であったことから、より複雑な対象物に適応が難しいことが予想された。 次に、対象物質の構成にかかわらず画像再構成の過程でアーチファクトを低減させる方 法の研究を行った。ビームハードニングによるアーチファクトを、X 線フォトンが検出器に 十分到達しないことによるデータの欠損とみなすことで、欠損データを含む撮像データの 画像再構成法が適用可能ではないか、と考えた。欠損データを含むデータや、間隔の空い た角度の撮像データ(Few-view あるいは Limit-view 撮像データ)の画像再構成に適用され、 有 効 性 が 検 討 さ れ て い る Algebraic Reconstruction Technique(ART)-Total Variation(TV)minimization 法へ、スペクトル X 線 CT で同時に得られる高エネルギーの CT 画像を参照して CT 値を修正していく Flatten Gradient(FG)ステップを開発して組み込 んだ(ART-FG-TV 法)。実測データをこの方法により再構成し、CT 値及び CT 画像の改善 を確認した。. 6.

(14) 1-3. 本論文の構成 本論文では、第2章で X 線および X 線 CT に使われる半導体検出器、CT 画像再構成法、 DXCT について述べる。第3章では、フォトンカウンティング検出器によるエネルギー弁 別型 X 線 CT の研究を開始するにあたり行った CdTe 検出器の特性、弁別するエネルギー幅 の線減弱係数への影響の調査結果について示す。第4章では、金属サンプルのビームハー ドニングアーチファクト解析について述べる。第5章で本研究のスペクトル X 線 CT とフ ォトンカウンティング型検出器を用いたビームハードニングアーチファクトの補正方法の 検討について述べる。. 7.

(15) 第1章 参考文献. [1] 平山令明, X 線が拓く化学の世界.: ソフトバンククリエイティブ株式会社, 2011. [2] 飯沼 武、舘野之男, X 線イメージング.: コロナ社, 2001. [3] Willi A. Kalender, "X-ray computed tomography," Physics in Medicine and Biology, vol. 51, p. R29, 2006. [4] 日 本 画 像 医 療 シ ス テ ム工 業 会 . X 線 CT 装 置の ス キ ャ ン 方 式 の 変 遷 . [Online]. http://www.jira-net.or.jp/vm/pdf/xrayct_pdf01.pdf [5] Masahiro Endo et al., "Four-dimentional Computed Tomography(4D CT)-Concepts and Preliminary Development," Radiation medicine, vol. 21, no. 1, p. 17, 2003. [6] E Van de Casteele, D Van Dyck, J Sijbers, and E Raman, "An energy-based beam hardening model in tomography," Physics in medicine and biology, vol. 47, p. 4181, May 2002. [7] Julia F. Barrett and Nicholas Keat, "Artifacts in CT: Recognition and Avoidance1,". Radio Graphics, p. 1679, 2004. [8] J. Als-Nielsen and D. McMorrow, X 線物理学の基礎.: 講談社, 2012. [9] 和子 大野, "CT の被ばくを考える," マルチスライス CT, vol. 43, no. 8, p. 40, 2012. [10] U.S. Food and Drug Administration(FDA) Safety communications. [Online]. http://www.fda.gov/MedicalDevices/Safety/AlertsandNotices/ucm185898.html [11] G. Harding, "X-ray scatter tomography for explosives detection," vol. 71, no. 3-4, p. 869, 2004. [12] S. Singh and M. Singh, "Explosives detection system (EDS) for aviation security,". Signal Processing, vol. 83, no. 1, p. 31, 2003. [13] Alvert Macovski and Robert E. Alvarez, "Energy-selective reconstructions in X-ray computerised tomography," Physics in medicine and biology, vol. 21, no. 5, p. 733, 1976. [14] Ge Healthcare Gemstone Spectral Imaging. [15] Masami Torikoshi et al., "Electron density measurement with dual-energy x-ray CT using synchrotron radiation.," Physics in medicine and biology, vol. 48, no. 5, p. 673, 2003. [16] M. Torikoshi et al., "Features of dual-energy X-ray computed tomography," Nuclear. Instruments and Methods in Physics Research A, vol. 548, p. 99, 2005. [17] T.G.Flohr et al, "First performance of dual-source X-ray CT(DSCT)system," Eur. 8.

(16) Radiol, vol. 16, p. 256, 2006. [18] 山崎陽一, 戸田尚宏 "非対称性フィルタによる Dual-Energy CT の効率的な実装方法,". 信学技報, p. 17, 2006. [19] B. J. Heismann, J. Leppert, and K. Stierstorfer, "Density and atomic number measurements with spectral x-ray attenuation method," JOURNAL OF APPLIED. PHYSICS, vol. 94, no. 3, p. 2073, 2003. [20] H. Strecker, "Automatic detection of explosives in airline baggage using elastic X-ray scatter," Medicamundi, vol. 42, no. 2, p. 30, 1998. [21] G. Zentai, "X-ray imaging for homeland security," International Journal of Signal. and Imaging Systems Engineering, vol. 3, no. 1, p. 13, 2010. [22] 野口正安、富永 洋, 放射線応用計測 基礎から応用まで.: 日刊工業新聞社, 2004. [23] 富田康弘, "CdTe 光導電薄膜を用いた高感度、高解像度 X 線イメージセンサーの研究," 博士号論文 1996. [24] Y. Ohno, M. Torikoshi, T. Tsunoo, and K. Hyodo, "Dual-energy X-ray CT with CdTe array and its extension," Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, vol. 548, p. 72, 2005. [25] Wenjuan Zou et al., "Atomic Number and Electron Density Measurement Using a Conventional X-ray Tube and a CdTe Detector," Japanese Journal of Applied. Physics, vol. 47, no. 9, p. 7317, 2008. [26] Wenjuan Zou et al., "Application of the dual energy technique by using a photon counting CdTe detector," Proceedings of SPIE, vol. 7079, pp. 7079I-1, 2008. [27] R. A. Brooks and G. Di Chiro, "Beam Hardening in X-ray Reconstructive Tomography," Phys.Med.Biol., vol. 21, no. 3, p. 390, 1976. [28] Oliver Watzke and Willi A. Kalender, "A pragmatic approach to metal artifact reduction in CT: merging of metal artifact reduced images," Eur. Radiol., vol. 14, p. 849, 2004. [29] Jay Wu et al., "Metal artifact reduction algorithm based on model images and spatial information," Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A, vol. 652, p. 602, 2011.. 9.

(17) 第2章 X 線 CT 2-1. 前書き X 線 CT は、X 線の物質による減弱を多角度から計測し画像再構成によって断面像を得る 方法である。画像に含まれる減弱の強弱は使用する X 線のエネルギーや検出器、画像再構 成に依存するため用途に応じて使い分けられている。ここでは、X 線 CT システムを構成す る X 線、検出器、画像再構成法と、CT 撮像で得られる情報の CT 値、さらに、X 線 CT に よる材料識別法の一つである、二色 X 線 CT(Dual energy X-ray CT;DXCT)について述 べる。 2-2. X 線と物質の相互作用 2-2-1. X 線 X 線は電離性放射線に分類される電磁放射線(電磁波)であり、その波長は 1pm~10nm 程度である [1]。X 線は荷電粒子の運動状態や束縛状態が変化する際に、余分なエネルギー が光子の形で放出されたものである。同じエネルギー帯の電磁放射線にγ線が挙げられる が、γ線の発生は、原子核反応や素粒子反応により余分になった静止エネルギーが光子の 形で放出されたものであることから、区別できる。 2-2-2. X 線の発生方法 X 線を発生させるためには、高速の電子の流れをターゲット(対陰極)に衝突させる。 ターゲットとなる対陰極は、普通タングステンまたはモリブデンのような融点の高い金属 で作られる。X 線発生装置である X 線管の構造について原理図を図 2-2-1 (a)に示し、X 線 管のスペクトルの概形を図 2-2-1(b)に示す。. 図 2-2-1. X 線発生装置および X 線スペクトル [2]. 11.

(18) 陽極電圧を増加させると陽極に衝突する電子のエネルギーが高くなり、得られる X 線は 透過性の高いものとなる。透過性の高い X 線は「硬い」X 線と呼ばれる。電子源として熱 電子と発生させるフィラメントを用いたものは、熱電子 X 線管またはクーリッジ管と呼ば れる。 2-2-3. 連続 X 線と特性 X 線 連続 X 線は、外部から加速された熱電子がターゲット物質内の原子核のクーロン場で向 きを変えられることに起因する。運動エネルギーE0 の電子がターゲット物質の原子核のク ーロン場の影響により、E という運動エネルギーの電子に変化したとすると| E0- E|という エネルギー差が発生する。そのエネルギー差ΔW は電磁波の量子として放出されると考え られる。このような過程で作られる輻射(放射)は制動輻射(放射)と呼ばれる。この時 の振動数は. hν= ΔW. (2-2-1). で与えられる。電子はターゲットの原子と衝突する場合、原子のそばを通過するだけの場 合が考えられ、それによりエネルギー損失ΔW はまちまちである。このことが連続 X 線の存 在を示す。 電子1個が1回の衝突で停止した場合、その運動エネルギーはすべて1個の光子に与え られるが、このとき発生する X 線の波長は、加速電圧を V とすると、 (2-2-2) で与えられるので、 (2-2-3) となる。λを Å、V をボルトで表すと、h=6.6262×10-34Js、c=2.997925×108ms-1、e=1.60219 ×10-19C により、 (2-2-4) で与えられる。波長の最短は 40keV で約 0.3Å、150kV で約 0.08Å=8pm である。 線スペクトルは、加速された電子が、ターゲットの原子の原子核に近い殻の電子にエネ ルギーを与えてこれを弾き出した場合、弾き出された電子が占めていた位置へそれよりも 外側の電子が移る(遷移する)ことにより、エネルギー差に相当した振動数の輻射が発生 する。従って遷移前後のターゲット原子のエネルギーをそれぞれ Ei、Efとすれば、その波 長λは (2-2-5) で与えられる。 一方、特性 X 線は次のように発生する。加速された電子がターゲットに衝突しターゲッ 12.

(19) トの原子内に進入すると、核の電子軌道上にある電子をある確率で原子外へたたき出す。 この電子があった場所は空席となり、さらに外側にある電子軌道の電子がこの空席へ遷移 する。このときのエネルギー状態をそれぞれ ER,EL とすると、. Kν ER-EL. (2-2-6).  のエネルギーをもって電子がフォトンとなり(光電子) 、核外へ放出される。放出されるフ ォトンのエネルギーはターゲット物質に固有な値である。 2-2-4. X 線と物質との相互作用. 図 2-2-2. X 線・γ線検出器の概要 一定方向に進む単色 X 線が厚さ x の物体を通過する際、X線の強度の減少量 dI はあたった X 線の強度 I と吸収帯の厚さ dxとに比例すると考えられる。 . (2-2-7). μは物質による比例定数で減弱係数と呼ばれる。μが x に関係しなければ、この式を積分 して. , C は積分定数. (2-2-8). もし x = 0 のときの強度を I0 とすれば、C = log I0 であることがわかる。したがって、 .  (2-2-9). μは同じ物質でも密度により異なり、その値は密度に比例するため、次の質量減弱係数μm を定義できる。  (2-2-10) この質量減弱係数μm は状態にかかわらず物質で一定である。 100keV 以下のエネルギーの X 線と物質との相互作用を考える場合、X 線に対する主な吸 収過程は光電効果である。この過程では、吸収層内に含まれる原子の内部の殻いずれかの 電子に X 線のエネルギーを完全に与えて X 線自身は吸収される。エネルギーを受け取った 電子は hνから軌道外へ出るエネルギーを引いた分の運動エネルギーを持って原子外に飛 13.

(20) び出す。この電子を光電子と呼ぶ。この光電子のエネルギーは分布を持つ。 X線の物質のよる散乱には、光子のエネルギーに変化のない散乱と、変化の起こる散乱 があり、変化のない散乱を弾性散乱、変化のある散乱を非弾性散乱と呼ぶ。弾性散乱の代 表的な過程は Thomson 散乱と呼ばれる。非弾性の場合は Compton 散乱と呼ばれる。. 14.

(21) 2-3. X 線・γ線の検出 X 線・γ線を含む放射線の検出には、放射線と検出器を構成する物質との励起作用や電離 作用によって、エネルギーが他の物理量として変換され、そのエネルギーが物質に吸収さ れ物質において、励起作用によって光が、電離作用によって正孔・電子対が発生し、電気 信号に変換されて検出される。 .  図 2-3-1.; 線・γ線による信号の生成プロセスと分類  X 線やγ 線などの光子(電磁波)は、検出器内部において光電効果、コンプトン散乱、 電子対生成の光子相互作用によって高速二次電子を生成する。この高速二次電子の電離・ 励起作用によって多くの電子と陽イオンまたは正孔がつくられる [3]。X 線検出器は、X 線 を直接電気信号として検出するか、蛍光体等を利用していったん光に変換してから検出を 行うかで、直接変換方式・間接変換方式に分類される(図 2-3-1)。図 2-3-2 に X 線を直接 電気信号として変換する直接変換方式と X 線をシンチレータを用い光に変換し、その光を 電気信号に変換する間接変換方式の検出器の構成図を示す [4]。. 図 2-3-2. 直接変換方式と間接変換方式の検出器構成 電離作用に基づく検出器では、発生した電荷キャリヤ(気体中では電子と陽イオン、固体中 では電子と正孔)が移動することによって電流または電圧の出力信号となるため、直接変換 方式である。励起作用に基づく検出器では、発生する光量を光電子増倍管やフォトダイオ 15.

(22) ードで増幅し出力信号となるため、間接変換方式である。 さらに、検出器からの出力信号は、X 線光子 1 つ 1 つを検出するパルス信号と、信号を 蓄積してから読み出す直流信号に大別できる。 一般的には、X 線、γ 線の強度情報とエネルギー情報を取得できるのは、出力がパルス 信号の時のみである。直流信号の場合、強度情報を持つが、エネルギー情報を持たない。 本研究では、X 線のエネルギー測定が材料識別に必要な条件となるため、パルス信号測定 が重要となる。 パルス信号の X 線検出器には比例係数管、シンチレーション検出器、半導体検出器など がある。比例係数管は気体検出器であるため、密度が固体の 1000 分の 1 程度と小さく、 主に 10keV 以下の低エネルギーX 線の検出に利用される。医療、危険物探知用途の透過 X 線画像に使われる X 線エネルギーは 30keV 以上であるため、透過 X 線イメージングには 適していない。シンチレーション検出器と半導体検出器の違いは X 線の検出方式が、間接 変換方式か直接変換方式の違いである。この二つを比較すると、半導体検出器の方が高エ ネルギー分解能である。シンチレーション検出器のように励起作用を利用した検出器では、 放射線吸収効率、発光効率、光伝達効率、検出器での量子効率の各効率の積によって光電 変換の損失が大きくなるが、半導体検出器では放射線が直接光電変換されるため、原理的 に高いエネルギー分解能を実現できる [5]。半導体検出器に利用される半導体としては、シ リコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、カドミウムテルライド(CdTe)、ヒ化ガリウム(GaAs)等が挙 げられる。 2-3-1. 半導体検出器の特性 [3] フォトンが検出器内で1個の電子・正孔対を生成するのに必要な平均エネルギーはε値 (eV)であるが、半導体は気体の W 値に比べ 10 分の 1 程度と小さく、効率的に電子・正孔 対が生成されるため、出力信号が大きく、エネルギー分解能が高い。 半導体により X 線やγ線が入射して電子・正孔対が生成されると、電子は結晶内の電場 により陽極(n+層)へ移動し、正孔は陰極(p+層)へ移動する。電場が十分に高い場合は 生成された電子・正孔対は電極に到達しパルス波形信号として検出される。例えば E(keV) のエネルギーのフォトンが半導体検出器に吸収された場合、E/ε×1000 個の電子・正孔対 が生成され、全部が電極に到達した場合、1.602×10-19×E/ε×1000[Coulomb]の電荷信 号が生じる。 X 線やγ線が物質に入った場合の光電効果の確率はほぼ. (Z は原子番号、E はフォ. トンのエネルギー)に比例するため、原子番号 Z が高いほど、また、エネルギー(E)が低 いほど光子にたいする全エネルギー吸収の確率が高くなる。そのため、Z の低い Si は低エ ネルギーに使用される。Ge、CdTe は高エネルギーまでの計測が可能である。 禁止帯域(エネルギーギャップ、Eg)が大きいほど常温での電気伝導度が小さいため漏 16.

(23) 洩電流による雑音が低い。シリコン、CdTe は Eg が大きいため室温で動作可能であるが、 Ge は小さいため冷却が必要である。 放射線検出器として利用される半導体の特性を表 2-3-1 に示す。 表 2-3-1. 放射線検出器として利用される半導体の特性 [3] 半導体. 原子番号 Z. 密度(g/cm3). ε値(eV). エネルギー ギャップ(eV). Si. 14. 2.33. 1.12. 3.61. Ge. 32. 5.32. 0.665. 2.96(@77K). GaAs. 31,33. 5.31. 1.43. 4.27. CdTe. 48,52. 5.85 [6,7]. 1.5. 4.43. 2-3-2. カドミウムテルライド(CdTe) 半導体検出器は有感部が固体であることから、光子(X 線、線)に対して全エネルギー吸収 の確率が高いためエネルギー測定に適している。現在半導体検出器に用いられる半導体に は、Si、Ge、CdTe 等が挙げられるが、CdTe は、大きな原子番号(Cd=48、Te=52)を持つた めに全エネルギー吸収の確率が高く、Si に比べ高エネルギーの X 線スペクトル測定に使わ れる。また、Ge に比べ大きなバンドギャップエネルギーを持ち、室温でも漏洩電流が少な く動作可能である。電荷の移動度が低く、寿命が短いため電荷収集効率が低いという短所 があるが、素子に高電圧を印加することによって電荷収集効率を高めることができる。よ って、CdTe は優れた光電変換特性と高い電荷収集効率、高いエネルギー分解能が得られる といった特徴を有し X 線、γ線検出に適した半導体材料である。 本研究では、フォトンカウンティング型の CdTe 検出器を用い、エネルギー弁別型 CT 撮 像を行った。. 17.

(24) 2-4. X 線 CT における画像再構成法 CT 撮像データを再構成する方法として、現在一般的に使われているのは解析的方法の一 つ Filtered Back Projection(FBP)法である。この方法は、逆フーリエ変換を用いて、各 投影角度におけるデータから CT 像を求める方法であり、投影角度が多いほど正確に再構成 ができる。フィルタをかけるため元の正確な CT 値が取得できない、欠損データがある場合 アーチファクトが発生するという欠点がある。 これに対し逐次近似法は、繰り返し演算のために時間がかかるとされてきていたが、低 線量で撮像可能なこと、欠損データやノイズを含むデータの再構成にも有効であることが 示されていた。コンピュータ計算能力の向上に伴い、近年実用化への研究や開発が進めら れている。 ここでは X 線 CT の投影データの定義と、解析的方法の代表例として FBP、逐次近似法 の例として Maximum Likelihood-Expectation Maximization(ML-EM)法と、本研究で用い た逐次近似法の一つである Algebraic Reconstruction Technique(ART)法について述べる [8]。. 18.

(25) 2-4-1. X 線 CT の投影データ. 図 2-4-1. 線減弱係数が一様な場合の X 線計測 X 線の計測では既知の強度 I0 の X 線を被写体に照射して、強度 I の X 線を検出する。図 2-4-1 に示すように、線減弱係数を一様μとすると、強度 I は (2-4-1) となる。長さ x0 を透過した減弱量は μx0 となるが、これを積分形式で表すと (2-4-2) と表すことができる。図 2-4-2 に示すように、線減弱係数が不均一で. という分布を. 持つとすると、直線 l に沿った X 線の減弱は、積分系の形を用いると. ∞ ∞. (2-4-3). となる。. 図 2-4-2. 線減弱係数が不均一な場合の X 線計測 X 線 CT の測定データは、X 線管から放射され、被写体を透過して減弱を受けた X 線を検 出器で測定し、その強度として与えられる。まず、図 2-4-3 のような座標系を考える。. 19.

(26) 図 2-4-3. X 線 CT の座標系 X 線 CT で得られる測定データは、X 線管から放射され被写体を透過して減弱された X 線 を検出器で測定することで得られる。図 2-4-3 のような座標系を考える。被写体に対して固 定した直交座標系を x-O-y とし、 この座標(x, y)において被写体の線減弱係数の分布を f(x, y) とする。 この座標系 x-O-y に対し原点を中心に角度θだけ回転した新たな直交座標系を X-O-Y とす る。両座標系間の関係は次の式で表される。 (2-4-4) ここで、Y 軸に平行に強度 I0 の X 線ビームを照射すると、被写体を透過した後の X 線強度. I(X,θ)は (2-4-5) となる(測定データ) 。これから、X 線強度の減弱率の対数変換 g(x,θ)は (2-4-6) により表すことができる。これを X 線 CT の投影データと呼ぶ。f(x, y)から g(X,θ)を求め る変換を Radon 変換と呼ぶ。 このデータを 0≦θ<2πの範囲に対して取得して被写体の線減弱係数の分布 f(x, y)を求 めることが X 線 CT の画像再構成の問題となる。 2-4-2. 2次元フーリエ変換法 2 次元フーリエ変換法は、前節で示した、g(X,θ)の集合から f(x, y)を求める解析的アルゴ リズムである。2次元の再構成問題として、実空間(x, y)に対応する周波数空間の角周波数 20.

(27) の座標を(ξ,η)で表し、被写体の線減弱係数の分布 f(x, y)の2次元フーリエ変換を F(ξ,η) とすると、 (2-4-7) と表される。直交座標系で表されている(ξ,η)を極座標系(. θ に変換すると、 (2-4-8). となる。ω は各周波数。この式を上の式に代入すると (2-4-9) となる。ここで、 (2-4-10) と積分 dxdy=dXdY と表されることにより、. (2-4-11) と書くことができる。この式から、角度θの方向に取られた投影データ g(X,θ)を変換 X に ついて 1 次元フーリエ変換すれば、求める線減弱係数の分布 f(x, y)の2次元フーリエ変換の 極座標表示における角度θ方向成分が得られる。よって、投影データ g(X,θ)を 0≦θ<πに 対して得ることにより、f(x, y)のフーリエ変換 F(ξ,η)は完全に定まる。 従って、被写体の線減弱係数の分布 f(x, y)は F(ξ,η)の2次元逆フーリエ変換である、 (2-4-12) の式で求めることができる。以上の関係を図 2-4-4 に示す。この関係は、投影切断面定理で ある。この関係を直接実行する方法は 2 次元フーリエ変換と呼ばれている。 この方法では、具体的な計算は 1 次元および 2 次元のフーリエ変換に関するもののみで あり、いずれも高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform, FFT)を利用して、きわめて迅 速に計算することができる。しかしながら具体的な計算機によるディジタル計算を考える 21.

(28) と、式(2-4-11)の. を表す極座標表現による格子点. を表す直交座標表現による格子点. と式(2-4-12)の. の位置は一般には異なるため、適当な内挿. 計算が必要となる。この際、計算精度が十分に得られなければ、誤差に基づくアーチファ クト(偽像)が発生する [8]。. 図 2-4-4. X 線 CT における解析解(投影切断面定理). 22.

(29) 2-4-3. Filtered Back Projection(フィルタ補正逆投影:FBP)法 フィルタ補正逆投影法(Filtered back-projection 法:FBP 法)は、前節で述べた 2 次元フ ーリエ変換法と数学的に等価な解析的方法であり、現在医療分野等において最も一般的に 用いられている画像再構成法である。 この方法では内挿計算による誤差を避けるために、式(2-4-12)を直交座標表現ではなく、 極座標表現で行う。式(2-4-8)を用いて式(2-4-12)を動径方向 、角度方向 の極座標系で表す と、積分は. となるので (2-4-13). となる。 の積を. とすることにより、 の範囲をマイナス領域に拡張することができる。. よって式(2-4-13)は (2-4-14) となる。ここで. である。式(2-4-14)の. 内の積分を. として. (2-4-15) となる。この. を用いて残りの式を表すと. (2-4-16) となる。 この方法では、図 2-4-5 に示すように角度 方向の投影データ で示したフィルタリングで修正した新しい投影データ て. にたいして式(2-4-15). をつくった後、これを逆投影し. を求める。このために、この方法はフィルタ補正逆投影法と呼ばれる。フィルタ補. 正逆投影法は、現在の CT で最も一般的に用いられている再構成法である。. 23.

(30) 図 2-4-5. FBP(Filtered back-projection)法. 24.

(31) 2-4-4. Maximum likelihood Expectation Maximization (ML-EM)法 解 析的に 解くこと が難し い問題 に対して 有効な 方法と して、逐 次近似 法 (iterative method)と呼ばれるものがある。これは、はじめに任意の画像(例えば平坦な分布の画像)を 仮定し、次に、その推定された任意の画像から作られる投影を計算し、これを実測の投影 データと比較して差があれば、この差を小さくするように画像を逐次に修正していく方法 である。逐次近似法には一般に、不完全投影やノイズ混入など解析的には解けないような データでも計算が実行できるという利点がある。Shepp [9]らは放射型 CT に適する EM(expectation maximization)アルゴリズムを提案している。ML-EM 法はその EM アル ゴリズムを利用した繰り返しの画像再構成法である。ML-EM 法は以下のような逐次式で表 される。 (2-4-17). ここで、k は繰り返し回数、j は再構成画像の画素、i は検出器上の画素番号を表す。 ある画素 j の濃度(あるいは、これに比例する量)、 は検出器 i での投影データ、. は. は画素. j から放出された光子が検出器 i に到達する割合(検出確率)を表す。以上の画素と投影デー タの関係図を図 2-4-6 に示す。検出確率を求めるとき、画素は四角形なので、その投影は図 2-4-7 に示すように、0、90、180、270°では四角形、45、135、225、315°では三角形、 それ以外の角度では台形になる。その図形の合計面積 1 として、画素の中心が投影される 検出器とその両脇の検出器に検出された値を振り分けることによって検出確率を求める。k 回目の画像から k+1 回目の画像を(2-4-17)式にしたがって作成する様子を図 2-4-8 に示す。. 図 2-4-6. ML-EM 法における画像と検出器の関係図. 25.

(32) 図 2-4-7. 1 画素の投影. 図 2-4-8. ML-EM 法の繰り返しで k 回目の画像から k+1 回目の画像を導きだす方法. 26.

(33) 2-4-5. Algebraic Reconstruction Technique(ART)法 任意の画像を設定し、その画像から得られる計算上の投影データと、実測投影データの 差分を求め、それを逆投影してもとの画像に加えることで修正を行なっていく方法である [10,11]。いまk番目の画像を fk とし、k+1 番目の画像を fk+1 とすると、この手順は次の式 で表される:. (2-4-18). ここで gi は投影データ、P は投影回数、Hi は投影行列を表す。投影データと、k 番目の画 像の投影との差分を計算し、画像 fk へ加算する手順を繰り返す。この方法の中で投影と逆 投影を1つの角度ごとに行い画像を更新していく方法を ART 法と呼ぶ。実際には加算する 差分の逆投影を適当な数値で割って与える。 ART 法に類似する方法の最初の提案は 1937 年と古いが [12]、投影と逆投影を1つの角 度ごとに行い、反復的に画像を修正するので計算時間が長く、近年まであまり利用されな かった。計算機能力の向上で実用化が可能となり、また、Total-Variation と合わせること で投影データに欠損がある場合に適用可能であることが検証された [13,14]。. 27.

(34) 2-5. CT 値 画像再構成によって得られる CT 画像は、CT 値、あるいは、CT ナンバーと呼ばれる数 値の集合であり、この数値データを画像処理することにより、撮像対象物の定量的な判断 が可能となる [11]。 現在、医療分野においては、CT 値あるいは CT 数(CT number)と呼ばれる定量的単位 が用いられ、これは水を基準とした相対値で次の通り表される [15,16]。 value. (2-5-1). k=1000 とした場合の CT 値は Hounsfield unit と呼ばれ、遮蔽物を置かない場合、つまり、 空気の減弱が-1000、水 0、とした時の体内各組織の減弱係数の値を相対的に表すために利 用されている。 これに対し、CT 画像の CT 値をそのまま評価する方法もある [17]。本研究では画像再構 成された値をそのまま利用し、CT 値(あるいは CT value)と表記する。. 28.

(35) 2-6. DXCT による材料識別 異なる2つのエネルギーの X 線の減弱の違いを利用して電子密度分布(Dual-energy X-ray CT, DXCT)を求め、医療分野で応用する試みは、2003 年鳥越らによって有効性が示 された [18]。ここでは DXCT の基本概念と、材料識別の例を示す。 物質のエネルギーk の X 線に対する線減弱係数は、光電効果断面積、コヒーレント散乱 断面積、インコヒーレント散乱断面積により次のように表される: (2-6-1) ここで、ρ、NA、A はそれぞれ質量密度、アボガドロ数、原子質量数を示す。Jackson と Hawkes は 1981 年、医療応用目的の式を提案した [19]。光電効果断面積は L 殻と K 殻の 励起電子がフォトンを吸収するという方法で次の通り近似される:. (2-6-2). この記述では、K 殻効果は主な項として取り扱われ、他の殻による効果は集積項 fnll’として 取り扱われている。フォトンのエネルギーkは吸収端のエネルギーより高くなければなら ない。散乱断面積は弾性散乱と非弾性散乱の組み合わせとして次の通り記述できる: (2-6-3) 右辺の第一項は Klein-Nishina 断面積である。第二項はコヒーレント断面積及び、インコ ヒーレント散乱断面積の修正項である。この近似において、原子番号 Z の原子のコヒーレ ント断面積は原子番号 Z’の標準原子のコヒーレント断面積を使って記述されている。 Jackson と Hawkes は標準原子として Z’=8 の酸素を使った。コヒーレント散乱項の計算に と変換されている。パラメータ b は、鳥越ら. おいて修正されたエネルギーk’が により 0.5 と提案されている。ここで、. は と置き換えることができる。(2-6-1)式. は次の通りに示すことができる: (2-6-4) ここで、. および. はそれぞれ線減弱係数の光電項および散乱項を示す。2. つのエネルギーの X 線において線減弱係数を測定し、 と Z の未知の計数を持つ連立方程 式を得るとすると、以下の通り表すことができる: (2-6-5) 29.

(36) (2-6-5)’ ここで、 F(k, Z)も G(k,. Z)も Z に強く依存しないと仮定し、 Z4 について連立方程式をとくと、 (2-6-6). この等式は逐次的に解くことができる。この Z を使って次の式で電子密度を求めることが できる。 (2-6-7) 以上の DXCT に沿って開発されたプログラム [20]よる材料識別例を図 2-6-1 に示す。. 図 2-6-1. DXCT による材料識別プログラムの計算例 図 2-6-1 に示すプログラム画面では、プラスチックケース内の文房具(スティック状糊、油 性マーカー、鉛筆、シャープペンシル)の 40keV と 60keV の CT 画像からの DXCT によ る材料識別の例を示す。 この DXCT 法では、式 2-6-3 の近似において、標準原子を酸素(Z’=8)としている。こ の近似は、医療分野においては、撮像対象である生体が炭素(Z=6)、酸素(Z=8)、リン(Z=15) 等の軽元素からなることから妥当であるが、対象物が金属を含むセキュリティ等の分野で は、酸素との開きが大きくなり、この近似をそのまま利用することができない。原子番号 の大きな元素も対象物として材料識別を行うためには、スペクトル X 線とエネルギー弁別 を用いた新たな材料識別の方法が必要と考えられる。. 30.

(37) 第2章 参考文献 [1] 原島 鮮, 基礎物理学Ⅱ.: 学術図書出版社, 1969. [2] 羽石秀昭, "X 線イメージング技術," 画像電子学会誌, vol. 37, no. 5, p. 748, 2008. [3] 野口正安、富永 洋, 放射線応用計測 基礎から応用まで.: 日刊工業新聞社, 2004. [4] 飯沼 武、舘野之男, X 線イメージング.: コロナ社, 2001. [5] 富田康弘, "CdTe 放射線検出器の開発と応用," 放射線, vol. 31, no. 2, 2005. [6] Wikipedia. [Online]. http://ja.wikipedia.org/wiki/ [7] Acrorad. [Online]. http://www.acrorad.co.jp/cdte.html [8] 橋本雄幸、篠原広行, C 言語による画像再構成の基礎.: 医療科学社, 2006. [9] Shepp and Logan, "The Fourier reconstruction of a head section," IEEE Trans.. Nucl. Sci., vol. 21, p. 21, 1974. [10] 篠原広行, 今門隼也人, 橘篤志, 寺松翔太, and 橋本雄幸. (2010, Sep.) 首都大学東京 機. 関. リ. ポ. ジ. ト. リ. .. [Online].. http://www.repository.lib.tmu.ac.jp/dspace/bitstream/10748/4170/1/10250-001.pdf [11] 岩井喜典, CT スキャナ X 線コンピュータ断層撮影装置.: コロナ社. [12] K. Hanson, "Bayesian and Related Methods in Image Reconstruction from Incomplete Data," in Image Recovery:Theory and Applications.: Academic Press, 1987, ch. 3, p. 79. [13] Emil Y. Sidky, Chien-Min Kao, and Xiaochuan Pan, "Accurate image reconstruction from few-view and limited-angle data in divergent-beam CT," Journal of X-Ray. Science and Technology, vol. 14, p. 119, 2006. [14] X. Duan et al., "X-ray cargo container inspection system with few-view projection imaging," Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A:. Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment, vol. 598, no. 2, p. 439, 2009. [15] 平 尾 芳 樹 . (2008, Mar.) 国 立 科 学 博 物 館. 技 術 の 系 統 化 調 査 報 告 . [Online].. http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/045.pdf [16] P. Kinahan, B. Hasegawa, and T. Beyer, "X-ray-based attenuation correction for positron emission tomography/computed tomography scanners.," Seminars in. nuclear medicine, vol. 33, no. 3, p. 166, 2003. [17] Shin-ichiro Iwamoto and Akira Shiozaki, "Evaluation of the accuracy of CT numbers in statistical correction of nonlinearity for polychromatic X-ray CT projection data," Radiol Phys Technol, vol. 1, p. 162, 2008. 31.

(38) [18] Masami Torikoshi et al., "Electron density measurement with dual-energy x-ray CT using synchrotron radiation.," Physics in medicine and biology, vol. 48, no. 5, p. 673, 2003. [19] Daphne F. Jackson and D. J. Hawkes, "X-RAY ATTENUATION COEFFICIENTS OF ELEMENTS AND MIXTURES," PHYSICS REPORTS, vol. 70 , no. 3, p. 169, 1981. [20] 大西慶明, "材料識別型フォトンカウンティング X 線 CT," 修士論文 平成20年. [21] 村 山 秀 雄 , "ECT に お け る 逐 次 近 似 型 画 像 再 構 成 法 ," MEDICAL IMAGING. TECHNOLOGY, vol. 8, no. 5, p. 557, 1990. [22] 尾川浩一, "SPECT における画質劣化とその補正Ⅴ画像再構成," 映像情報 Medical, vol. 34, no. 10, p. 1014, 2002. [23] 浦部洋史、森川琴子、尾川浩一, "SPECT における逐次近似型画像再構成法の比較,". MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY, vol. 18, no. 1, p. 84, 2000. [24] 富田康弘, "CdTe 光導電薄膜を用いた高感度、高解像度 X 線イメージセンサーの研究," 博士号論文 1996. [25] K. Hanson, Vayesian and Related Methods in Image Reconstruction from. Incomplete Data., 1987.. 32.

(39) 第 3 章 エネルギー弁別型 X 線 CT 3-1. 前書き フォトンカウンティング検出器によるエネルギー弁別型 X 線 CT では、スペクトルで得 られる透過情報をエネルギー帯別に分割し、それぞれのエネルギーにおける CT 画像を得る。 X 線の物質による減弱はエネルギーにより異なるため、CT 画像から撮像のより詳しい減弱 分布を読み取ることが可能である。従来の白色 X 線 CT に比べて、エネルギー帯に含まれ るフォトンのエネルギーとそのエネルギー帯の実効エネルギーが近いため、材料識別への 利用が期待されている。 本章ではフォトンカウンティング型 CdTe 検出器を用いて、エネルギー弁別のエネルギー 幅を変化させ線減弱係数の精度を測定した。 X 線 CT では、CT 値に物体を透過した X 線の減弱情報が含まれている。しかしながら CT 画像では、CT 値と物体の線減弱係数は一致しない場合が多い。CT 画像により材料識別 を行う場合、CT 値が相当するエネルギーの線減弱係数と一致するか、何らかの補正を行う ことで線減弱係数とエネルギーの比を取得できることが必要である。 白色 X 線とフォトンカウンティングによる CT 装置により CT 像を取得する場合、CT 値 に影響する要素には以下の3つが考えられる [1,2,3]; (1)アーチファクト、(2)エネルギーバ ンド幅、(3)散乱線。これらのうち、 (1)アーチファクトはビームハードニング、ミスレジス トレーション、ラインセンサや並列センサを用いた場合の検出器間の検出効率のばらつき に拠るものがあげられるが、そのうちビームハードニングによるアーチファクトは形状が 変化する程度に CT 画像への影響が大きいため、次章で述べる。ミスレジストレーションは 対象物(医療分野においては患者)の動きによるものや、検出器の動きによる「ズレ」に よるアーチファクトを示す。本研究において対象物は固定でき、CT 撮像系では検出器は固 定しているためここでは取り扱わない。ラインセンサ等の検出器では、検出器間の検出効 率のばらつきが存在する場合があるが、ここでは単検出器を用いる。(3)散乱線に関しては、 コリメータにより CdTe 検出器での検出で影響を無視できるとする [4]。 放射性同位体元素と CdTe 単検出器で測定を行い、CdTe 検出器での実験室レベルでの線 減弱係数の誤差を測定した。さらに 90kV マイクロフォーカス X 線管および CdTe 単検出 器を用いて、エネルギー弁別のエネルギー分割幅(エネルギーバンド幅)を変えた場合の 線減弱係数への影響を調べ、適切なエネルギーバンド幅の決定を行った。. 33.

(40) 3-2. 線減弱係数(μ)の測定方法 CdTe 検出器によるフォトンカウンティング X 線 CT で得られる CT 値と線減弱係数を比 較するに先立って、線減弱係数の測定を放射線エネルギーが既知である放射性同位体元素 (RI)と、単体の CdTe 検出器、マルチチャネルアナライザ(MCA)を用いて、CdTe 検 出器の線減弱係数の精度を確認する実験を行った。 X線がよくコリメートされ散乱線を無視できる場合、線減弱係数μ[cm-1]は次の式で与え られる [5] (3-1) これより (3-2) ここで、x は遮蔽物の厚さ、I0 および I は遮蔽される前と後のフォトン数である。 遮蔽物の厚さを 1cm にすることで、線減弱係数が求められる。 (3-3) この式を用いて、実験レベルでの線減弱係数を求めた。. 34.

(41) 3-3. CdTe 単検出器と放射性同位体による線減弱係数の測定 RI と検出器の間に遮蔽物をおいた場合と置かない場合で同時間ずつフォトン数を測定す る方法で、線減弱係数の測定を行った(図 3-3-1) 。. 図 3-3-1. CdTe 単検出器と放射性同位体による線減弱係数の概要 CdTe 検出器は、散乱線を防ぐため、鉛の箱に入れ、γ線を取り入れるφ2mm の穴を空け た。それぞれの RI につき、炭素(C) 、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、シリコ ン(Si)それぞれのサンプルのμを測定した。厚さは C、Al は 1cm、Mg 9mm、Si 8mm である。検出器におけるパイルアップを防ぐため、200 秒×5 回測定を行った(図 3-3-2)。 測定のバイアス電圧は 200V である。使用した RI とエネルギーピークを表 3-3-1 に示す。. 図 3-3-2. 単検出器外観(左)と概要図(右) 表 3-3-1. CdTe 単検出器による線減弱係数測定に利用した RI とエネルギーピーク RI. 測定に使用した エネルギーピーク[keV]. 241Am. 59.5. 57Co. 122.1. 35.

(42) 241Am. および 57Co の測定結果を図 3-3-3 に示す。. 図 3-3-3.CdTe 単検出器による 241Am および 57Co のスペクトル測定結果 半値幅(FWHM)は 59.5 keV において 1.94 keV。 200 秒×5回の合計カウント数を I、同じ時間で遮蔽物を置かない場合の合計カウント数を. I0 として線減弱係数を算出し、理論値と比較した結果を表 3-3-2 に示す。 表 3-3-2. CdTe 単検出器による線減弱係数の測定 6C. 59.5 keV μ. 13Al. 14Si. 理論値. 0.3306. 0.4654. 0.7587. 0.7573. 実験値. 0.2993. 0.4630. 0.7271. 0.7113. 0.0313. 0.0240. 0.0316. 0.0460. 理論値. 0.2686. 0.2721. 0.4104. 0.3751. 実験値. 0.2371. 0.2943. 0.3989. 0.3857. 0.0315. 0.0222. 0.0115. 0.0106. Diff.(|μth-μex|) 122.1keV. 12Mg. Diff.(|μth-μex|). CdTe 単検出器による線減弱係数の測定誤差は、 Z≦14 の範囲で最大でシリコン(Si) の 0.046 と 6%以下であることが示された。エネルギーの高い 122.1keV での精度はいずれのサンプ ルにおいても低い 59.5keV よりも良い結果となった。  このエネルギー帯(約 50~130keV)においては、使用したサンプルのうちアルミニウム (Al)の線減弱係数がもっとも理論値に近かったことから、次のエネルギー幅の検討にア ルミニウムサンプルを使用することとした。. 36.

参照

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