短 報 試料の回収に際し,全観測点の降水と霧水試料を同 一日のうちに回収した。回収時には降水受け器や貯蔵 タンクをイオン交換水で洗浄し,再セットした。
実験室に持ち帰った試料は分析時まで冷蔵庫で保管 した。イオン分析には陽イオン成分,陰イオン成分と
もイオンクロマトグラフを使用した。pHはガラス電
極法(堀場D‑l4)で測定し,電気伝導度は導電率計(堀 場ES‑l4)を使用した。以下の報告では月単位の平均値を使ってグラフを作 成したが,集計期間は,7月は7月11日〜8月8日,8月 は8月8日〜9月5日,9月は9月5日〜10月9日,10月は10 月9日〜11月13日である。降水量に関しては期間中の 合計値イオン成分は降水量で加重平均した値を使用 した。なお,美松坂の9月分の試料の一部に異臭があ り,分析値も異常であったため,グラフからは除外し てある。原因は烏の糞によるものと考えられた。また,
8月8日〜22日の試料はオーバーフローしたため雨量計 データから降水量を推定した。
立山における標高別の酸性雨観測結果2008誉
朴木英治'),渡辺幸一2)
')富山市科学博物館,2)富山県立大学
Acidrainobservationreportatdifferent altitudesontheMt,Tateyama(2008)
')HidehamHonokiand2)KoichiWatanabe ')ToyamaScienceMuseum,l‑8‑31Nishinakano‑machi‑ Toyama‑shi,Toyama939‑8084,Japan
2 ) T o y a m a P r e f e c m r a l U n i v e r s i t y , s 1 8 0 K u r o k a w a l m i z u ‐
shiToyama939‑0398,Japan1 . は じ め に
立山における標高別の酸性雨観測は2003年から開始 し,2008年で6年目となる。特に2005年以降は,立山 黒部アルペンルートの桂台〜室堂平間で7カ所の観測 点を設置してきめ細かな観測を行うと共に,富山市市 街地での観測との比較も行っている。ここでは,
2008年の観測結果について報告する。
4.結果 4.1降水量
図lは各観測点の標高に対する降水量を月毎にプロッ トしたもので,縦軸が観測点の標高,横軸が降水量で ある。
7月と9月のグラフはほぼ同じパターンとなり,富山 市の市街地での降水量は少なく,桂台では富山市の降 水量の2倍程度となり,桂台〜室堂平間では,標高が 高い方が降水量がやや多くなっていた。ただ,弥陀ヶ 原と美松坂の観測点では,7月と9月とでは若干異なっ たグラフとなった。8月は7月,9月と比べると降水量 2.観測地点
観測地点は,桂台(桂台料金所),美女平(美女平駅) 上ノ小平(上ノ小平駐車スペース),弘法平(弘法平駐 車場(有料トイレ近く)),弥陀ヶ原(弥陀ヶ原駐車場).
美松坂(天狗鼻第二駐車場),室堂平(自然保護センター 敷地))である。弘法平では標高が低い方の駐車場に移 動したが,他の観測点は2005年に設定した観測地点と 同じ位置(朴木・渡辺2007)で行った。
250逢
200唾
0000 50
11︵E︶純雛唖藁騒3.観測方法および分析方法
全地点による観測は2008年7月11日〜10月9日まで行 い,週に1回〜3週間に1回の頻度でサンプリングを行っ た。10月9日以降は桂台と美女平で観測を継続し'1月 13日に全ての観測を終了した。
また,酸性雨の観測と並行して,美女平,弥陀ヶ原 室堂平で酸性霧の観測を行い(富山県立大学),美女平、
弘法平,追分で総合気象観測を行った(九州大学,富 山市科学博物館,立山カルデラ砂防博物館)。
500
2 0 0 4 0 0 6 0 0 降水量(m、)
観 測 点 標 高 に 対 す る 降 水 量 の 変 化 図
*富山市科学博物館業績第394号
113
朴 木 英 治 ・ 渡 辺 幸 一
が多くなったが,変化パターンは7月,9月とよく似て
いた。
10月は富山市の市外地から美女平までほぼ同程度の 降水量であった。美女平よりも上部でどのように変化 するのか興味あるところである。
250蓬
0000
00000505 211
︵E︶沌雛唾棄鰯
4.2降水中の硝酸イオン濃度
降水中の硝酸イオンは自動車排ガスにも多く含まれ る窒素酸化物が起源物質である。降水中の硝酸イオン 濃度は平野と比べて立山の観測点で濃度が低く,さら に,立山の観測点では標高が高くなるほど濃度が低下 する傾向が見られ,従来の観測結果と同様であった
(朴木・渡辺2007,朴木・渡辺2008,朴木・渡辺・
米谷2009)。これに対して,冬型気圧配置が強まる
10月の観測値では富山市市街地も立山の観測点である 桂台,美女平も同程度の濃度で,しかも,他の月と比 べて濃度が高くなった点が特徴的であった(図2)。1 2
nssSO42‐(mg/│)
図3観測点標高に対する降水中の非海塩性硫酸イオン濃度
4.4硝酸寄与比
硝酸寄与比は(1)式で表される組成比で
硝酸寄与比=NO3(NO;『+nssSO42)(雌
25砿
この値が大きいほど,国内起源の酸性物質の寄与か 高くなると推定される。
図4は観測点標高に対する硝酸寄与比の値で,どの 月も平野で高い値を示し,観測点の標高が高くなるほ どその値は低下していた。この結果も従来の観測結果 と同様であった(朴木・渡辺2007,朴木・渡辺20蓬 8,朴木・渡辺・米谷2009)。
10月分は硝酸イオン濃度が他の月の2倍程度あった ため,硝酸寄与比の値は他の月と比べて高かった。
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︵E︶沌雛唾棄職7月
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8 月
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図2観測点標高に対する降水中の硝酸イオン濃度の変化 250蓬 △
000000000505
21
1
︵E︶沌雌唾一一醒騒
4.3降水中の非海塩性硫酸イオン濃度
降水中の非海塩性硫酸イオンの起源成分は硫黄酸化 物である。
図3は観測点標高に対する降水中の非海塩性硫酸イ オン濃度をプロットしたもので,硝酸イオンの場合 (図2)と同様,7月,8月,9月の変化パターンは比較的 似ていた。ただ,7月では弥陀ヶ原で他の観測点と比 べ て 濃 度 が 高 ま っ た 。 ま た , 硝 酸 イ オ ン と 同 様 , 市 街 地の観測点で濃度が高く立山の観測点で濃度が低下し たが,立山の観測点では標高が高くなっても濃度の 低下は比較的少なく,従来の観測結果と同様であった (朴木・渡辺2007,朴木・渡辺2008,朴木・渡辺・
米谷2009)。さらに,10月では市街地の観測点と比 べて桂台,美女平など立山の観測点の濃度が高くなる 現象が見られた。
9 月 △ 、 、
0 . 1 0 . 2 0 . 3
N03/(NO3+nssSO42)
0ど
図4観測点標高に対する降水の硝酸寄与比(当量濃度比)の値
4.5降水中のアンモニウムイオン濃度
図5は観測点標高に対する降水中のアンモニウムイ オン濃度の関係を示したものである。
114
が強かったと言える。9月も立山の観測点ではpHか 低めであった。
標高に対、する降水のpHの変化パターンでは,7月 は 富 山 市 の 市 街 地 で 酸 性 雨 が 最 も 強 く 、 標 高 が 高 く な るほど酸性雨が弱まる傾向が見られたのに対し,9月 は逆に,富山市の市街地で酸性雨が最も弱かった。
2500
200唇
0000
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500
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一 ‐ ー
211 000000000505
︵E︶距離唾棄鰯
0 0 . 2 0 . 4 0 . 6 0 . 8
NH4十(mg/│)
図5観測点標高に対する降水中のアンモニウムイオン濃度
﹇・堂一一
降水中のアンモニウムイオン濃度は平野で高く,立 山の観測点で低く,さらに,立山の観測点では標高が 高くなってもそれほど濃度が低下していない点が見ら れ,非海塩性硫酸イオン濃度の変化パターンと似てい た。さらに,7月は弥陀ヶ原で濃度が高くなっていた 点も非海塩性硫酸イオンのパターンと似ていた。
縛貝
皇
4 . 6 0 4 . 8 0 5.00
pH
5 . 2 0 5 . 4 0
図 7 観 測 点 標 高 に 対 す る 降 水 の 平 均 p H
4.6降水中の非海塩性カルシウムイオン濃度 図6は観測点標高に対する降水中の非海塩性カルシ ウムイオン濃度を示したものである。
非海塩性カルシウムイオン濃度は平野で高く,立山 ではかなり濃度が低く,分析値がOになった場所も多 かった。
謝 辞
こ の 調 査 に 係 わ る 研 究 資 金 の 一 部 に 文 科 省 科 学 研 究 費補助金(基盤研究B)を使用した。
また,観測に際し,環境省立山自然保護官事務所,
富山森林管理署,富山県(自然保護課,立山土木事務 所),富山県道路公社立山有料道路管理事務所,立山 黒部貫光(株),富山警察署の協力を得ました。さら に,試料の回収の際に,富山県立山センター・富山県 自然保護センター,立山有料道路管理事務所,美女平 駅およびバス整備工場,弥陀ヶ原ホテルの各皆様の協 力を得ました。ここに厚くお礼申し上げます。
250蓬
000000000505 211
︵E︶仰馳睦云溌
参考文献
朴木英治,渡辺幸一,立山における標高別の酸性雨観 測2005,富山市科学文化センター研究報告,31 89‑97,2007
朴木英治,渡辺幸一,立山における酸性雨観測2()06,
富山市科学文化センター研究報告,31,105‑112
2008
朴木英治,渡辺幸一,米谷正広,立山における酸性雨観 測2007,富山市科学文化センター研究報告,32 125−131,2009
0 0 2 0 . 4 0 . 6 0 . 8
nssCa2+(mg/│)
図 6 観 測 点 標 高 に 対 す る 降 水 中 の 非 海 塩 性 カ ル シ ウ ム イ オ ン濃度
4.7降水の平均pH(酸 性雨)
図7は観測点標高に対する降水の平均pHをプロッ トしたものである。pH56以下を酸性雨とするため,
ど の 月 も 全 て の 観 測 点 で 酸 性 雨 が 降 っ て い た こ と に な る。10月は酸性雨が弱く,7月は他の月よりも酸性雨
115
朴 木 英 治 ・ 渡 辺 幸 一
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