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大学ジャーナル
7月号
(第18巻2号・通巻105号)
Daigaku Journal
vol.
グ ロ ー バ ル 社 会 と
そ こ で 問 題 と
な っ て い る こ と
今日のグローバル社会
は、東西冷戦の終焉と、
同時期に始まったインター
ネットによる産業革命以来
の産業・社会構造の変化に
よってもたらされたと考え
られています。ここで大き
な問題となっているのが、
人口爆発とグローバルエコノ
1955年、成蹊高等学校卒業。1962年3月東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院イ ンターンを経て、1963 ~1967年まで東京大学医学部第一内科に勤務。医学研究科大学院に て医学博士取得。1969 ~1983年在米。ペンシルバニア大学などを経て、UCLA(University of California at Los Angeles)医学部内科の教授、1983年より東京大学医学部第四内 科 助教授。1989年、東京大学医学部第一内科 教授。1996年、東海大学 教授、医学部 長、2003年、日本学術会議会長、内閣府総合科学技術会議議員、2006年、内閣特別顧問、
政策研究大学院大学教授。2009年11月より同アカデミックフェロー。日本医療政策機構、
IMPACT Foundation Japan 代表理事も兼務。紫綬褒章、フランス共和国よりレジオンドヌー ル勲章 シュバリエ、旭日重光章など受賞多数。主な著書に『世界級キャリアのつくり方』、『大学 病院革命』、『イノベーション思考法』など。
C o n t e n t s
F R E E
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ります。今や世界の誰もが、
この問題から目が外せませ
ん。それは明日にはわが身
に及ぶかもしれないからで
す。 グローバル社会では各国
は相互依存を深め、もはや
一国だけの問題というもの
はありえません。しかも同
時に、それぞれの国の固有
の問題は国際協調を難しく
しますから、一方でそれは
分断の危機さえはらんでい
ます。世界は極めて脆弱な
状態にあり、近未来も予測
不能です。この
20~
30年で、
世界は大きく変化するに違
いないと考えているのは、私
一人ではないはずです。
グ ロ ー バ ル 社 会 と 日 本
グローバル社会は、「フラッ
ト」な社会とも言われるよ
うに、そこでの人と人とのつ
ながりは国境を無視した「タ
テ」型から「ヨコ」型にな
り、所属ではなく《私は何
者か》、つまり世界から見え
る個人のありのままの姿、
その価値と力量が問われま
す。人と違っていること、ユ
ニークであることが強みと
なり、ネットワークが、ヨ
コのつながりを持つことが、
「やればできる」 をやろう!
03
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今春、東京大学の入学式で、海外へ出ることの大切さなどを説き、最後に「今を生きよ」と後輩
たちを激励した黒川清先生。昨年から今春にかけては、日本の憲政史上初となる国会東京電力 福島原子力発電所事故調査委員会(以下、国会事故調)の委員長として活躍、アメリカ科学振興 協会(AAAS)からは「科学の自由と責任賞」を受賞
※1し、アメリカの雑誌『Foreign Policy』では
「2012年 世界の代表的な論者100人」
※2に選ばれました。自らを日本という閉鎖社会での≪
出る杭≫に譬え、グローバル化の中で立ちすくむ日本社会に鋭い警鐘を鳴らされてきた黒川清 先生★に、グローバル社会の中で求められる学びについてお聞きしました。
★黒川先生は日米で医師、教授、帰国してからはさらに医学部長として医学部や大学病院の改革に注力され てこられたとともに、日本学術会議※3、内閣府総合科学技術会議、内閣特別顧問など、政府の枢要なポストを 歴任され、日本の科学技術政策等についての提言などをまとめられてきた。
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個人の大きな価値にもなり
ます。
翻って、「タテ」社会と
言われる社会構造がいまだ
に支配的な日本は、個人の
力そのものよりも属性と肩
書きが重んじられ、集団は
できるだけ均質であること
が常識とされ、現在でもな
お、
18歳時の1回の大学入
学試験で、将来のかなりの
部分が決まるという極めて
いびつな社会です。社会的
な評価の高い大学に合格す
れば、卒業時には新卒一括
採用で官庁、「一流」企業
へ就職でき、その後は年功
序列、終身雇用の伝統が根
強く残る中、よほどのこと
がない限り路線が変わるこ
とはない、と信じられてい
ます。ちなみに東大生の4
人に1人は東京大学合格者
数トップ
10の高校の卒業生
で、5人に2人がトップ
20
までの高校の卒業生です。
しかもこうした学校には中
高一貫制のところも少なく
ありません。また女子の比
率は
19%と主要大学の中で
は一番低い。こうした極めて
均質な学生が、官僚組織や
大企業へトップ予備軍とし
て毎年、輩出されていくわ
けです。しかもこのことは
社会の大学進学マインドに 反映されていますから、そ
れが年々繰り返されていく
のはみなさんの方がよくご
存知だと思います。
このような均質な単線型
エリートは、多様なグローバ
ル社会に対応できないばか
りでなく、外部の変化にも
きわめて脆弱です。私はこ
のことを、福島の原子力発
電所に関する国会事故調で
目の当たりにしました。詳
細は『報告書』に譲ります
が、そこでわれわれの出し
た結論とは、あの一連の事故
は、ほぼ
50年にわたる一党支
配※4、年功序列や終身雇用
といった官と産業界に見ら
れる「追いつき追い越せ型」
社会特有の組織構造、それ
を当然と考える日本人の集
団思考(Groupthink)、つま
り「マインドセット」に根
本原因があるとするもので
す。「単線型のエリート」は
失敗を恐れるあまり、決断
せずに問題を先送りする。
そこに無責任体制ができあ
がる土壌が広がります。一
方で、それを不思議とも思
わない日本人の思い込みも
問題なのです。日本の「常
識」は、時として世界から
見れば「非常識」であるこ
とをわれわれは常に心して
おかなければなりません。
トップ が 語る 「 世界 の 中 の 日本人 」 に なろ う 「 大 学 」 と高 校 生 へ の メッセ ー ジ・特 別 編
政策研究大学院大学 アカデミックフェロー
黒川 清 先生
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※1 American Association of Advancement of Scienceに よ るAward for Scientific Freedom and Responsibility。AAASは世界的に著名 な科学雑誌『サイエンス』を発行する。
※2 Foreign Policyの100 Top Global Thinkers 2012
※3 日本の内閣府の特別の機関のひとつ。科学者の内外に対する代表機 関であり、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を 反映浸透させることを目的とする(日本学術会議法第2条)。内閣総 理大臣に任命された210人の会員により構成される(第7条)。2005 年に総務省から移管された。特別の機関であるため、行政・立法・司法 の三大権限は有していないが、政策提言や政策意見具申などの権限 は有している。黒川氏は2003年から2006年まで会長を務めた。
ミーによる格差拡大とその
顕在化です。人口爆発は医
学や様々な科学や技術の進
歩によるものですが、一方で
環境・エネルギー問題を惹
き起こしています。グロー
バルエコノミーでは資本も生
産工場も、政府が自分たち
に有利な政策を行っている
国や、労働力が豊富で賃金
の安いところを求めて世界
中を移動するため、中間層
は減少し格差は拡大してい
きます。世界的な若者の失 業問題もこのことと無関係
ではないでしょう。
ツイッターやフェイス
ブックの利用者は膨大です
が、これらの企業で給与を
もらっている人はほんの一
握り。世界全体では、トッ
プ1%の収入がその他
99%
の収入におおよそ当たると
いう見方もあります。しか
もこうした現実は、ネット
へのアクセスを容易にした
タッチパネルのアイフォン
(2007年発売)、アイ パッド(2010年発売)
などの出現で、世界の極め
て多くの人々の知るところ
となります。貧富の拡大や
アフリカなどの貧困が、今
あらためて問題とされてい
るのはこのためでもあるの
です。人々の不満に火がつ
くと、それがアラブの春を
生み、エジプト、リビア、
シリアへと連鎖していく。
2月のアルジェリアの問題、
最近のトルコやエジプトの
再度の混乱も同じ理由によ
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