論文内容要旨
Development of a high-intensity focused ultrasound exposure device for reducing skin burn risk
(皮膚熱傷を低減させるための HIFU照射装置の検証)
THE SHOWA UNIVERSITY JOURNAL OF MEDICAL SCIENCES Vol.32 NO.1.2019.3
外科系 産婦人科学 西井彰悟
【背景】出生前診断の進歩に伴い、胎児期に異常が診断される機会が増え ている。一方、その治療に対して有効な胎児治療の手段は限られている。
現在の胎児治療は、基本的に体外部から子宮内に医療用デバイスの挿入が 必要なため、一定数の破水に伴う感染や早産などの合併症が生じる。一方、
強出力集束超音波(以下HIFU)は、超音波発信源(トランスデューサー)
から出力の強い超音波を目的の組織1点に集束させることにより、熱エネ ルギーを蓄積し照射点を加熱凝固することで治療に使用可能である。治療 領域を自由な形で設定し目的の組織に集束させるため、焦点までの到達経 路上の組織に大きな影響を与えないとされているため、非侵襲的に体内へ 照射できるHIFUは胎児治療にとってよい適応となる。我々はHIFU治療シ ステムを開発し、無心体双胎の胎児治療に世界で初めて成功し、その後、
機器改良を繰り返している。その中で何例かの症例で母体の腹壁皮膚の熱 傷を引き起こし、それに対する対策が必要になった。
【目的】HIFU 照射による熱傷の低減に必要な条件及び病理学的変化を知 ることで、ヒトへの応用に資する照射方式に関する知見を得ることを目的 に研究を行った。
【方法】従来の HIFU 照射方式において、F ナンバー(焦点距離/開口径)
を下げ、トランスデューサーの振動子を分割照射できるように6分割に改 良した。改良型HIFUトランスデューサー(6分割照射)と従来のHIFUト ランスデューサー(全面照射)を用いて、全面照射と6分割照射とで皮膚 熱傷の程度を比較した。全身麻酔下の幼若豚の左右大腿内側4カ所に1回 ずつ、計8カ所に対して同一験者が照射した。両側大腿部の全面照射と6 分割照射の照射部位の皮膚所見を肉眼的及び HE 染色により病理組織学的 に比較した。
【結果】全面照射は全ての部位で深達性Ⅱ度熱傷であった。6分割照射で は深達性熱傷は認められなかった。全面照射では、照射部位に一致して硬
結のある白色病変を認め、全ての照射部位で深達性Ⅱ度熱傷と評価された。
一方、6分割照射では、一部に白色病変を認めたが点在するのみで、全て の部位で浅達性Ⅱ度熱傷もしくはⅠ度熱傷であった。照射部の病理組織学 的検討では、全面照射では真皮のほぼ全層に熱変性を認め、真皮内の毛細 血管に空胞変性を認めた。分割照射では真皮への熱変性は、表層から1/2 以内で、血管の空胞変性は認めなかった。
【結語】Fナンバーを下げたことで、HIFUトランスデューサーの表面積が 大きくなり、皮膚界面での超音波エネルギー密度が減少し、超音波吸収が 抑えられた。また、改良型トランスデューサーを用いて分割照射とするこ とで、HIFU 振動子と組織の間での定常波の発生を防ぎ、キャビテーショ ン気泡の発生を抑え、皮膚熱傷を軽減できた。本研究では動物の皮膚・脂 肪・筋肉を照射対象として新たな HIFU 照射方式による知見を得たが、今 後ヒトの組織との違いを検証する予定である。
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