• 検索結果がありません。

タイムプレッシャーによる作業効率向上に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "タイムプレッシャーによる作業効率向上に関する研究"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

タイムプレッシャーによる作業効率向上に関する研究

A Study on Improvement of Work Efficiency using Time-pressure 1W163130-3 山本 優理子 指導教員 長 幾朗 教授

YAMAMOTO Yuriko Prof. CHOH Ikuro

概要:働き方改革の推進に伴いナレッジワーカーの存在が重要性を増す中、オフィスでの知的生産性の向上は関 心が高い話題である。本研究では、これまで多くみられたオフィス環境等の外的要因からのアプローチではなく、

作業者の内的要因に着目し生産性向上の新たな手法を検討した。タイムプレッシャー下では作業効率が向上する と言われているが、意図的に生じさせたタイムプレッシャー下でも同様であることがわかっている。また、タイム プレッシャーを感じると焦りも生じるが、このとき交感神経が高まり心拍が上昇すると考えられる。そこで、胸部 に心拍を模した振動を提示し振動速度を操作することで、自身の心拍が上昇していると思い込ませ焦りを喚起で きると考えた。実験では胸部に振動を提示した状態で知的作業を実施し、振動速度によって作業効率に変化がみ られるか検証した。

キーワード:知的生産性、タイムプレッシャー、心理的時間、ジェームズ・ランゲ説、疑似心拍

Keywords: intellectual productivity、time pressure、psychological time、James-Lange theory、false physiological feedback

1.知的生産性について

働き方改革の実施に伴い、無駄な労働時間をい かに削減していくかという問題はオフィスワー カーの注目を集めている。オフィスにおける生産 性、すなわち知的生産性の向上を求める声は今後 もますます増えていくだろう。

知的生産性を向上させる方法の1つは、限られ た時間内での作業効率を高めることである。これ まで、働く人々が1日の大半を過ごすオフィスの 環境が作業効率に与える影響についての研究は 盛んにおこなわれてきた。一方で、環境の操作に より作業効率を高める取り組みには限界もみら れる。外的要因は個人や作業内容によって影響の 大きさが異なるため、複数人で同一の環境を使用 する際に効果量を制御することが難しいからで ある。そこで今後は、快適な作業環境を前提とし て、11人の作業効率をより向上できる手法の 開発が必要である。したがって、本研究では内的 要因に焦点をあて、作業効率向上の新たな手法の 提案を目的とした。

2.タイムプレッシャーについて

タイムプレッシャー(以下、TP)とは、何らかの 時間的制約を受けた状態で作業をした際に作業 者が受ける認知負荷の一種である。本研究では辛 島らの研究をもとにTPを以下のように定めた。

TP = Tt/𝑇𝑎 TP: タイムプレッシャー

Tt: 問題解決のために必要な時間に対する心理的時間

Ta:制約時間

先行研究から、作業者が感じるTPは作業効率向 上に寄与することがわかっている。また、時間と いう概念には、時計が示す「物理的時間」と、人 間が相対的に知覚する「心理的時間」の2種類が あり、TPは心理的時間の認知に影響される。よっ て、時間感覚に変化を与えれば、TPを疑似的に生 じさせることも可能である。

心理的時間の認知を左右する要因は様々だが、

松田の4 要因乗法モデルでは「時間の経過への 注意」,「経過時間中におきた出来事の多さ」,「生 理的なテンポ」「経過時間」の4つを定めている。

これをもとに、本研究では焦りの感情に着目した。

焦りとは、締め切りなどに追われ時間経過に注意 が向いていると生じる感情であり、交感神経が高 まるため心拍数の増加がみられる。そこで、なん らかの方法で焦りを誘発し時間感覚に変化を与 えることができれば、TP が生じ作業効率を向上 できると考えた。

3.感情を喚起する方法について

「ひとは悲しいから泣くのではない、泣くから 悲しいのだ」と主張するジェームズ・ランゲ説で は、身体の変化が情動に先立って起こるとされる。

(2)

2 西村らは、被験者の胸部に心拍を模した振動を提 示した状態で異性の写真を見せたところ、振動の 周波数を上昇させたときに好意が増幅すること を示した。これは、振動速度の上昇を好意のドキ ドキと捉えたからである。そこで、胸部に振動を 提示した状態で知的作業をすれば、振動速度の上 昇を焦りと捉えるのではないかと考えた。本研究 では、焦りを誘発する手法として疑似心拍の触覚 提示を用い、実験で検証をおこなった。

4.実験

実験は、情報処理作業としてタイピングタスク をする実験①と、知識処理作業として計算タスク をする実験②を各3回実施した。21歳~25歳の 男性7人、女性6人を対象とし、早稲田大学59- 405のメディアデザイン研究室でおこなった。

実験中は、音声データを振動に変換して出力で きるデバイス(HapBeat 合同会社製)を用いて被 験者の胸部に振動を提示した。また、簡易的に心 拍を計測できるスマートウォッチ(Semiro 社製) を装着させ、「振動デバイスの振動はリアルタイ ムに計測している心拍のリズムと同期している」

と嘘の教示をした。振動デバイスに入力する音声 データは表1に示す3種類作成し、実験ごとにい ずれかの振動を提示した。被験者により提示する 順番をランダムにしてカウンタバランスをとっ た。評価方法として、実験①では打鍵速度・正答 率・打鍵数・ミス数を、実験②では解答時間・正 答数を計測し Tukey 法による多重検定をおこな った。また、SD法を用いた感性評価を実施した。

1: 各音声データの心拍数変化

条件 音声データの心拍数の変化 定常条件 66~72bpmの間で5秒おきにランダムに変動

上昇条件 66bpm30秒経過したのち約35秒かけて77.9bpmまで上昇

下降条件 66bpm30秒経過したのち約30秒かけて56.1bpmまで下降

実験結果を以下にまとめて示す。

(1)【実験①】タイピングタスク

正答率と打鍵数において有意差が認められた。い ずれも、定常、下降、上昇の順で好成績となった。

また、上昇条件で最もネガティブな感情を抱いた。

(3)【実験②】計算タスク

解答時間において「定常―下降」の条件間でのみ 有意差が認められた。定常条件の方が下降条件の 時より好成績だった。また、下降条件で最もネガ ティブな感情を抱いた.

このように、仮説とは異なる結果となったが振 動条件により作業成績に及ぼす影響に差が出る ことがわかった。また、振動条件によってミス数 に差がないことから、振動による刺激はエラーを 増加させるものではないと示された。さらに、実 験後のアンケートから、提案手法は心拍を充分に 再現できたことが確認された。振動が心拍と同期 していないことに気づいた被験者が1名いたが、

他の被験者と同様に作業成績に変化が見られた。

したがって、本提案手法は振動が心拍と同期して いないことを知っていても効果がある可能性が 示唆された。

5.結論・今後の展望

本研究結果から導かれる結論は 2 通り考えら れる。1つ目は、振動はリズムに関係なく作業の 妨げとなるということ。2つ目は、定常条件での 成績が良かったことから、自身が持つリズムを喚 起するような振動であれば作業に好影響を与え るということである。仮説通りの結果が得られな かった原因としては、上昇/下降条件の振動が、

被験者が本来持っている体内リズムを妨げてし まったことが考えられる。今後は、振動を与えな い場合や、被験者本人の心拍をもとに生成した振 動をフィードバックした場合の作業成績への影 響を調べることで、振動と作業効率の関係性をさ らに明らかにしていく必要がある。

注:

[1]西川雅弥(2010)『疲労と作業成績による室内環境の

知的生産性評価に関する研究』

[2] Hendy K.C.、Liao J. Milgram P.(1997) “Time and Intensity Effects in Assessing Operator Information-Processing Load、 Human Factors” 、 p.39(1)、pp.30-47

[3] 辛島光彦、山崎寛享(2003)『時間的制約によるタ イムプレッシャーと時間評価の関係に関する研究』

[4] 村上勝典(2016)『時間評価に関する心理学的研究 -青年期における男女差の検討-』、pp.7-12

[5] 西村奈令大、石井明日香、佐藤未知、福嶋政期、

梶本裕之(2012)『自己の心拍を触覚提示するデバイス の検討』、情報処理学会インタラクション2012 [6] 松田文子(2009)『時間評価のモデル』, 松田文 子・調枝孝治・甲村和三・神宮英夫・山崎勝之・平伸 二(編)『心理的時間―その広くて深いなぞ―』北大路 書房, p.132, pp.135-142

1 各音声データの心拍数変化(山本、2020)

参照

関連したドキュメント

軸流反転ファンとは,動翼間に静翼を持たず 2

ている。このことから、地域の環境問題に対する関

達成可能であることが明らかになった.本論文の第三の貢献は,OoO プロセッサの構造とインタプ

オフィスが求められていること 知識社会における日本のオフィスのあるべき姿

で示される実効保護率も当然大きくなる。要するに,関税の国内生産量増加効果を考慮に

環境保険は、環境汚染事故を引き起こした場合、企業の安定化に寄与する。ついで、被

図2:区間効率値 東大阪市は特異的なDMtJであるとはいえない.区間 データによる区間効率値とクリスプデータによる区

注意すべき点は, (4) において, 各 DMU の入力価格 が既知で,一定であるとし、ぅ仮定にある.本論文では, (4)