日機連18高度化-6
平成18年度
アジアにおける情報通信機器産業の動向と 情報化協力に関する調査研究報告書
平成19年3月
社団法人 日 本 機 械 工 業 連 合 会 財団法人 国際情報化協力センター
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://keirin.jp
序
我 が 国 機 械 工 業 に お け る 技 術 開 発 は 、戦 後 、既 存 技 術 の 改 良 改 善 に 注 力 す る こ と か ら 始 ま り 、や が て 独 自 の 技 術・製 品 開 発 へ と 進 化 し 、近 年 で は 、科 学 分 野 に も 多 大 な 実 績 を あ げ る ま で に な っ て き て お り ま す 。
し か し な が ら 世 界 的 な メ ガ コ ン ペ テ ィ シ ョ ン の 進 展 に 伴 い 、中 国 を 始 め と す る ア ジ ア 近 隣 諸 国 の 工 業 化 の 進 展 と 技 術 レ ベ ル の 向 上 、さ ら に は ロ シ ア 、イ ン ド な ど B R I C s 諸 国 の 追 い 上 げ が め ざ ま し い 中 で 、我 が 国 機 械 工 業 は 生 産 拠 点 の 海 外 移 転 に よ る 空 洞 化 問 題 が 進 み 、技 術・も の づ く り 立 国 を 標 榜 す る 我 が 国 の 産 業 技 術 力 の 弱 体 化 な ど 将 来 に 対 す る 懸 念 が 台 頭 し て き て お り ま す 。 こ れ ら の 国 内 外 の 動 向 に 起 因 す る 諸 課 題 に 加 え 、環 境 問 題 、少 子 高 齢 化 社 会 対 策 等 、 今 後 解 決 を 迫 ら れ る 課 題 も 山 積 し て お り 、 こ の 課 題 の 解 決 に 向 け て 、 従 来 に も 増 し て ま す ま す 技 術 開 発 に 対 す る 期 待 は 高 ま っ て お り 、機 械 業 界 を あ げ て 取 り 組 む 必 要 に 迫 ら れ て お り ま す 。
こ れ か ら の グ ロ ー バ ル な 技 術 開 発 競 争 の 中 で 、我 が 国 が 勝 ち 残 っ て ゆ く た め に は こ の 力 を さ ら に 発 展 さ せ て 、新 し い コ ン セ プ ト の 提 唱 や ブ レ ー ク ス ル ー に つ な が る 独 創 的 な 成 果 を 挙 げ 、世 界 を リ ー ド す る 技 術 大 国 を 目 指 し て ゆ く 必 要 が あ り ま す 。幸 い 機 械 工 業 の 各 企 業 に お け る 研 究 開 発 、技 術 開 発 に か け る 意 気 込 み に か げ り は な く 、方 向 を 見 極 め 、ね ら い を 定 め た 開 発 に よ り 、今 後 大 き な 成 果 に つ な が る も の と 確 信 い た し て お り ま す 。
こ う し た 背 景 に 鑑 み 、当 会 で は 機 械 工 業 に 係 わ る 技 術 開 発 動 向 等 の 補 助 事 業 の テ ー マ の 一 つ と し て 財 団 法 人 国 際 情 報 化 協 力 セ ン タ ー に 「 ア ジ ア に お け る 情 報 通 信 機 器 産 業 の 動 向 と 情 報 化 協 力 に 関 す る 調 査 研 究 」を 調 査 委 託 い た し ま し た 。本 報 告 書 は 、こ の 研 究 成 果 で あ り 、関 係 各 位 の ご 参 考 に 寄 与 す れ ば 幸 甚 で す 。
平 成 1 9 年 3 月
社 団 法 人 日 本 機 械 工 業 連 合 会 会 長 金 井 務
はじめに
我が国の機械産業にとって、アジアは、マーケットとして、生産拠点として、また、
ビジネスアウトソーシング先としてその重要性が年々高まってきております。アジアは その経済的成長率の高さ、人口増加に起因する購買力の裾野の広がり等から高い潜在力 を有しており、我が国機械産業の持続的発展のためには、アジア各国と連携を図ること が不可欠となっております。
中でも、情報家電機器や情報通信機器に代表される IT 産業における連携は、生産に おける国際分業のみならず、インフラ整備や人材育成等幅広い協力が必要となります。
近年、アジアの中でも韓国、中国、シンガポール等の国は我が国に比肩する IT 先進国 に成長しており、国際的なデファクト競争が激化するなか、積極的なアジア情報化協力 に取り組みはじめております。
我が国でも、これまでe-Japan戦略等に基づき、IT分野における国際協調・貢献が推 進されており、また、平成18年1月に策定された「IT新改革戦略」においては、国際 競争社会における日本のプレゼンスを高めることを目標の1つに掲げております。この ため、アジア各国の情報通信機器産業の動向やアジアのIT先進国の情報化協力の状況 を的確に把握することが必要でありますが、アジア各国の発展段階及び重点戦略は国に よって大きく異なってきており、我が国は各国の IT 産業の現状や重点方針を十分に把 握しているとは言い難い状況にあります。
このような実情に鑑み、財団法人国際情報化協力センター(略称CICC)では、社団法人 日本機械工業連合会より「アジアにおける情報通信機器産業の動向と情報化協力に関す る調査研究」事業を受託し、「アジア各国における情報通信機器産業の動向と諸政策に関す る調査・分析」及び「アジアのIT先進国の情報化協力の状況に関する調査研究」を行いま した。
本報告書は、我が国産業界がもつ優れた情報技術や情報システムのアジア展開に関する企 画立案や、我が国IT産業界のアジアへの事業展開戦略立案の基礎資料となるよう、調査研 究の結果を取り纏めたものであります。関係方面の皆様方に利用され、いささかでもお役 に立ちますよう願う次第であります。
平成19年3月
財団法人 国際情報化協力センター 理 事 長 秋 草 直 之
「平成 18 年アジアにおける情報通信機器産業の動向と情報化協力に関する調査」
タスクフォース メンバー名簿
(敬称略・順不同)
リーダー 荒 木 幸 治 株式会社 日立製作所 メンバー 浅 見 隆 幸 株式会社 日立製作所
〃 石 井 達 也 富士通株式会社
〃 岩 井 利 仁 松下電器産業株式会社
〃 上 原 明 住友電気工業株式会社
〃 河 内 浩 明 三菱電機株式会社
〃 北 岡 正一朗 沖電気工業株式会社
〃 草 刈 隆 日本電子計算機株式会社
〃 黒 崎 雄 二 東芝ソリューション株式会社
〃 小 林 英 次 NECラーニング株式会社
〃 佐 嶋 広 秋 株式会社 富士通ラーニングメディア
〃 佐 立 一 範 株式会社 日立インフォメーションアカデミー
〃 種子田 暁 夫 日本電気株式会社
〃 角 田 和 裕 学校法人 電子開発学園
〃 成 清 義 光 株式会社 システムコンサルタント
〃 針 池 真 一 シャープ株式会社
〃 古 澤 章 社団法人 電子情報技術産業協会
〃 松 波 孝 信 株式会社 リコー
〃 三 田 昌 弘 キーウェアソリューションズ株式会社
〃 山 崎 信 雄 株式会社 SCC
〃 吉 岡 亨 株式会社 NTTデータ
< 事 務 局 > 兼谷 明男 (財)国際情報化協力センター(CICC)
佐藤 敬幸 (財)国際情報化協力センター(CICC)
保谷 秀雄 (財)国際情報化協力センター(CICC)
梅村 香織 (財)国際情報化協力センター(CICC)
石村 真弓 (財)国際情報化協力センター(CICC)
目次
総論...ⅰ
各論... 1
1. 調査研究の概要... 1
1.1 背景と目的... 1
1.2 調査研究体制... 1
1.3 調査研究項目・スケジュール... 3
1.3.1 調査研究項目... 3
1.3.2 事業のタイムスケジュール... 4
2. アジア各国における情報通信機器産業の動向と諸政策... 5
2.1 アジアの IT 市場動向... 5
2.1.1 世界 IT 市場動向... 5
2.1.2 アジア太平洋地域(除く日本) の IT サービス市場動向... 5
2.1.3 アジア太平洋地域(除く日本)、IT 企業上位 20 社... 5
2.2 アジアにおいて目立った動き... 5
2.2.1 アジア地域において、中小企業(SME)IT 市場規模が拡大... 6
2.2.2 米国企業のアジアへの攻勢... 6
2.2.3 ソフトウェア開発におけるアジアとの連携... 7
2.2.4 オンライン・ゲーム市場・産業の拡大... 7
2.2.5 アジアの検索エンジンの動きが活発化... 8
2.3 中国... 9
2.3.1 国の概要... 9
2.3.2 中国の情報化サマリー... 10
2.3.3 目立った動き... 11
2.4 台湾... 15
2.4.1 国の概要... 15
2.4.2 台湾の情報化サマリー... 16
2.4.3 目立った動き... 17
2.5 韓国... 18
2.5.1 国の概要... 18
2.5.3 目立った動き... 20
2.6 シンガポール・マレーシア・インドネシア・タイ・フィリピン・ベトナム... 22
2.6.1 シンガポールの情報化サマリーと目立った動き... 24
2.6.2 マレーシアの情報化サマリーと目立った動き... 25
2.6.3 インドネシアの情報化サマリーと目立った動き... 26
2.6.4 フィリピンの情報化サマリーと目立った動き... 26
2.6.5 タイの情報化サマリーと目立った動き... 27
2.6.6 ベトナムの情報化サマリーと目立った動き... 28
2.7 ミャンマー、ラオス、カンボジア... 30
2.7.1 ミャンマーの情報化サマリー... 31
2.7.2 ラオスの情報化サマリー... 31
2.7.3 カンボジアの情報化サマリー... 32
2.7.4 カンボジア、ラオス、ミャンマーの目立った動き... 34
2.8 インド... 35
2.8.1 国の概要... 35
2.8.2 インドの情報化サマリー... 37
2.8.3 目立った動き... 38
3.アジアの IT 先進国の情報化協力の状況... 40
3.1 情報化協力の枠組み... 40
3.2 情報化協力の現状... 45
3.2.1 調査対象とした資料... 45
3.2.2 資料調査の結果... 54
3.2.3 資料調査のまとめ... 79
3.3 今後の情報化協力のあり方への展望... 80
3.3.1 交差する矢印... 80
3.3.2 マルチステークホルダー主義と市民社会の参加... 81
3.3.3 具体的な課題の例... 83
4.まとめ... 84
総論
総論
総論
1. 調査研究の概要
我が国の機械産業にとって、アジアは、マーケットとして、生産拠点として、また、ビ ジネスアウトソーシング先としてその重要性が年々高まってきている。アジアはその経済 的成長率の高さ、人口増加に起因する購買力の裾野の広がり等から高い潜在力を有してお り、我が国機械産業の持続的発展のためには、アジア各国と連携を図ることが不可欠とな っている。
中でも、情報家電機器や情報通信機器に代表される IT 産業における連携は、生産におけ る国際分業のみならず、インフラ整備や人材育成等幅広い協力が必要となる。近年、アジ アの中でも韓国、中国、シンガポール等の国は我が国に比肩する IT 先進国に成長しており、
国際的なデファクト競争が激化するなか、積極的なアジア情報化協力に取り組みはじめて おり、アジアにおけるプレゼンスを高めるべく独自の戦略をもって情報化協力を進めてい る状況にある。
IT 新改革戦略の目標にもある通り、我が国がもつ優れた IT 技術等を効果的にアジアに 展開し、国際競争社会における日本のプレゼンスを高めることが急務となっている。
本調査では、そのような背景に基づき、「アジア各国における情報通信機器産業の動向と 諸政策に関する調査・分析」及び「アジアの IT 先進国の情報化協力の状況に関する調査研 究」を行い、得られた情報を分析・活用し、我が国とアジア各国の情報通信機器産業の育 成を図り、ひいては、我が国企業が競争力と経験を有する情報システム技術や要素技術の アジア展開による国際競争力の強化に資することを目的とする。
なお、調査研究体制としては、社団法人日本機械工業連合会の委託を受けて、財団法人 国際情報化協力センターが、株式会社日立製作所の荒木氏をリーダーとする有識者による タスクフォースを設置し運営した。また、「アジアの IT 先進国の情報化協力の状況に関す る調査研究」については、国際大学グローバルコミュニケーションセンターに調査を委託 した。
2.アジア各国における情報通信機器の動向と諸政策
2.1 目立った動き(アジア全体)
¾ 拡大傾向にあるアジア IT 市場
アジアの IT 市場動向は、拡大傾向にある。ガートナー社によれば、2006 年のアジア太 平洋地域(除く日本)の IT サービス市場規模は、米ドル換算で 2005 年比 12.7%の拡大傾 向にある。国別規模では豪州(32%)、韓国(25%)、中国(12%)、インド(8%)、シンガポー ル(5%)、その他(18%)の順であり、上位 5 カ国で全体の 82%を占める。高い成長率はイ ンド(26.9%)、タイ(19.6%)、中国(11.3%)の順。セグメント別ではソフトウェアサポー ト、コンサルティングサービスが成長を牽引している。
各国の IT サービス企業上位 20 社をみると自国企業および欧米系グローバル企業にほぼ 独占されている。例外として域内企業は、富士通(日)、HCL(印)、Satyam(印)、Salmat(豪)、
TeleTech(シンガポール)、JOS(香港)の 6 社のみであった。
¾ アジア地域において、中小企業(SME)IT 市場規模が拡大
中小企業(SME)IT 市場規模が、アジアも含め、世界的に拡大の動きを見せた。
2006 年の SME 市場規模は世界全体で 4,650 億ドルとなった。業界全体の伸び 5.6%に対し、
中小企業分野の伸びは 7.6%に達した。世界の IT 大手でも SME を対象にした製品、戦略を 発表し、この市場を重視しつつ動きがある。IBM は売上げ全体の 50%を SME から、また、SAP は顧客の 65%が SME という。HP や日立製作所も続々と SME 向けの製品を発表している。
アジア太平洋地域でも SME は最も活発な市場となった。同地域の SME 市場成長率は 2007 年は 10%で 520 億ドル、2010 年には 660 億ドルに達する見通しという。
¾ 米国企業のアジアへの攻勢
Microsoft 社や IBM 社、Intel 社等、米国大手 IT 企業のアジアにおける活発な動きが目 立った。
アジア諸国では、現在、積極的に電子政府化が推進されているが、ベトナム、インドネ シア、ラオス、ミャンマー、スリランカ等の国では、IBM社、Oracle社、HP社といった米国 大手IT企業、または、中国、韓国、マレーシアなどのアジアのIT先進国によって電子政府 システムが構築されているケースが多く見受けられる。
米国大手IT企業はビジネスとしての投資拡大や企業間連携を進める一方で、公共部門や 教育機関での人材育成等に係わるアプローチも積極的に行っており、その勢いは益々強く なってきている。その狙いは、自社ブランドの各国における知名度向上を狙うとともに、
自社技術のプロフェッショナル育成による人材の囲い込みである。
¾ ソフトウェア開発におけるアジアとの連携
日本のIT企業のソフトウェアのオフショア開発パートナは、従来、中国、インド、韓国 等であったが、昨今ではベトナムが注目を集めている。2005年には日立ソフト、2006年に はNECソフト、日本ユニシス等の企業が相次いで同国企業との事業をスタートさせた。
ソフトウェア分野においては、組込み型ソフトウェアの重要性が増大している。中国、
インドはじめ、米国の大手企業も成熟しつつある従来のアプリケーションソフト開発より もこの分野の拡大に注目し人材の確保、拠点の設立に動き出している。
¾ オンライン・ゲーム市場・産業の拡大
アジア各国で急激に進むインターネット普及と通信の高速化等に伴って、オンライン・
ゲームに関する活発な動きが目立った。
IDC 社の調査によれば、日本を除くアジア太平洋地域の 2005 年のオンライン・ゲーム市 場は約 13 億 9 千万ドルであった。同社は、2006 年から 2010 年において年複利成長率 21%
の成長を遂げ、約 36 億ドルの市場規模になると予測している。
現在、オンライン・ゲームの産業育成の動きは東アジアから東南アジア全域に広がって おり、黎明期にあるベトナム等の地域に中国・韓国が率先して参入し、中長期的な収益を 見越した現地の市場開拓と産業育成を兼ねた開発者の教育を積極的に行っている。
¾ アジアの検索エンジンの動きが活発化
2006 年は、検索エンジンに関する動きが目立った。日本では、日本の企業や研究所など が持つ検索・解析技術を集積し、次世代検索技術の研究開発などを目指す「情報大航海プ ロジェクト・コンソーシアム」が発足した(7 月)。一方で、中国及び韓国の、それぞれ の国で一番の人気を誇る検索サイトが、日本への進出を発表した。
2.2 国別の IT 動向(目立った動き)
¾ 中国
中国 IT 企業の躍進は目覚しい。2004 年 12 月 8 日、Lenovo(レノボ)は IBM と合併合意書 を締結、パーソナルコンピュータ部門を買収したことは記憶に新しい。また、大手通信企 業の華為は、東欧を中心とした欧州、アジア市場を対象に第 3 世代移動通信網分野でグロ ーバル展開を行っている。ここ数年、中国政府の情報処理分野におけるアセアン地域に対 する協力も拡大している。様々な課題を抱えつつも、2008 年の北京オリンピック、2010
年の上海万博開催を目前に、IT を牽引役とした更なる経済発展の加速化に拍車がかかるこ とが予測される。
2006 年、中国において目立った IT 関連動向は以下の通り。
・中国における知財保護の動き加速
・日本企業から中国企業へのオフショア開発に加え、日中共同での中国 IT 市場開拓の動き
・第 3 世代携帯電話(3G)ライセンス交付延期に
・次世代 DVD の規格争い
・デジタルテレビを巡る動きの活発化
・中国ベンダのアジアへの攻勢
¾ 台湾
台湾はアジアの中でも ICT の先進地域であるが、国際機関による統計上の目覚しい数値 とは裏腹に、「台湾シリコンアイランド」を牽引してきたパソコンに代表される台湾ハード ウェア産業が、低価格化の波に押され苦戦を強いられている。それでも、業界団体は、台 湾 IT 産業の強みを生かし、自動車産業等への参入をねらっている。
2006 年はフラットパネルディスプレイ(FPD)テレビ市場が活発な動きをみせた。FPD の主力である液晶(LCD)では世界の 95%以上、有機 EL(OLED)では同 90%の市場を占有してい る。台湾政府では FPD を今後の成長分野と捉え、経済部工業局が FPD 産業の育成に力を注 いでいる。
¾ 韓国
1997 年、アジア通貨危機にも見舞われたが、果敢な IT 導入政策によって見事に回復し、
この経験を世界に普及させようと、活発な動きを見せている。パン屋の店先にまで、自由 にインターネットに接続できる端末が登場し、ほとんど 100%普及の携帯端末からネット バンキングや電子商取引も可能となっている。省庁間での連携を重んじた電子政府構築が 進み、パソコン端末に加え、近々、携帯電話による税金の支払いや住民登録申請まででき るようになる。
しかしながら、ブロードバンド人口は首都ソウルに集中する等、地方格差も依然として 存在する。このような問題も含め、韓国政府は、「あたたかい情報化社会(=人にやさしい)
実現」を盛り込んだ「u-IT839 戦略」を発表し、今後は、情報化社会の質の向上を目指し ている。
2006 年の目立った IT 関連動向は以下の通り。
・2007 年度の情報通信主要政策発表
▲IT 活用向上と情報化逆機能(情報化による悪影響)解消 ▲IT 産業のグローバル競 争力強化 ▲放送通信融合の積極対応▲郵政サービスの改革等、5 大戦略目標と 21 個の 中核的な課題を推進する計画である。
なお、韓国はデジタルコンテンツの育成にも力を入れる方針で、情報通信省が健全な UCC(User Created Contents)製作と産業活性化を支援することを表明している。
・WIBRO 推進の動きが活発化
ブロードバンド普及率で世界の上位に位置する韓国は、3G 携帯電話や無線 LAN などの モバイルブロードバンド通信の普及にも意欲的である。同国は、最近、広域にて高速無 線通信が可能な「モバイル WiMAX」をベースに新しい無線通信方式「WiBro(Wireless Broadband)」を開発し、国内外からの大きな注目を集めており、これに関するアジアと の連携の動きが目立った。
¾ シンガポール・マレーシア・インドネシア・タイ・フィリピン・ベトナム
・シンガポール
シンガポールの情報化は、ASEAN 諸国では首位、世界的に見てもトップレベルにある。
シンガポールの情報化の第一の特色は、情報通信開発庁(IDA)の主導による電子政府など官 主導のプロジェクトにある。政府主導で実現されてきた IT 国家は、多国籍企業のアジア拠 点の立地場所として、高い競争力を持っている。
2006 年 6 月 20 日、新しい国家的マスタープラン「iN2015」が発表された。2015 年を目 指した 10 年間を対象とする意欲的な長期計画である。IDA は、既に、その基盤となるべき 1Gbps を超える大容量の次世代国家ブロードバンド計画のコンセプトペーパを募集した。
また、2005 年に発表された標準 ICT 事業環境プログラム(SOE)は、政府機関の IT 環境を標 準化することで、効率的な電子政府、ひいては国民・企業への恩恵還元を目標としている。
・マレーシア
マレーシアでは、2020 年までに先進国入りを目指すという「ビジョン 2020 計画」が 1991 年に Mahathir Mohamad 元首相により発表されている。この目標達成には知識基盤型社会へ の移行が必須であるとして 1996 年 8 月に同元首相により発表されたのが「マルチメディア スーパーコリドー(MSC)構想」すなわちマルチメディア技術を駆使した高度情報化都市開発 計画である。
以来、同国では、この MSC 構想に基づいて建設された「サイバージャヤ」を中核都市と
して、7 つのフラッグシップアプリケーション(電子政府、多目的カード、スマートスク ール等)の開発に取り組んでいる。
2006 年 3 月に、2006 年から 2010 年の国家 5 ヵ年計画「第 9 次マレーシア計画」(Ninth Malaysia Plan:9MP)が発表された。ICT 関連事業に配分された予算は総額およそ 128 億 9,000 万リンギット(約 4,112 億円)で、8MP(第 8 次マレーシア計画)の約 78 億 9,000 万リンギット(約 2,517 億円)から 64%の増額となっており、より積極的に ICT 分野の外 資の投資を誘致し、ICT ソリューション市場のアジアでのリーダとしての地位向上を目指 す。
2006 年は、国際連携の面では、インドとの連携が目立った。
・インドネシア
ベトナムをはじめとして、数年前まで、IT においてインドネシアよりも低い発展レベルに あると見られてきた国々が急激に追い上げてきている。1997 年以来、インドネシア政府は IT 政策や振興策を大統領令や省令として公布してきたが、その推進力は弱かった。2004 年 に発足したユドヨノ新政権において、「庁」から「省」に格上げされた通信情報技術省の強 い政策推進力をベースとし、国内 IT 産業育成、海外からの IT 分野への投資の誘致、さらに は、国内で抱える課題(テロの撲滅、スマトラ島沖大規模地震からの復興等)に対し IT を 活用できる体制構築が期待される。
2006 年 11 月、2025 年までにインドネシアを情報社会への変革させることを目指す国家 情報通信技術会議がスタートした。この会議は、大統領の直下に置かれ、主要都市を通信 ネットワークでつなぐことを最優先として情報技術の発達にむけた青写真を描く。
現在、違法ソフトウェア利用率世界ワースト 3 の現状を打破すべく、政府機関でのオー プン・ソース・ソフトウエア(OSS)の利用促進に取り組んでいる。IGOS(Indonesia Goes Open Source)という、国内のオープン・ソースのソフトウェアの普及促進運動があり、2006 年も活発に OSS の利用が推進された。
・フィリピン
フィリピンの大統領府直属の最高意思決定機関である情報通信技術委員会(CICT)は、
2010 年までにアジアの知識センタとなることを目標に掲げた IT 基本政策である「IT21」
を機軸とし、積極的に IT 化を進めている。2007 年 11 月には米国国際開発庁(USAID)の 支援により策定された「ICT ロードマップ(2006-2010)」が発表され、今後 5 ヵ年はこの ロードマップに基づき情報化が推進される。
同国民の英語能力の高さを活かし、コールセンタや BPO など米国市場に向けた IT 及び IT 活用サービスが急成長している。2006 年 9 月には、オフショア・アウトソーシングのグ ローバル市場を共同で獲得していくことを狙い、フィリピン・ビジネス・プロセス協会
(BPA/P)がインド NASSCOM と戦略的 7 分野における協力について覚書を締結した。
米国のみならず、ヨーロッパや日本からのソフトウェア開発の受注も増えつつある。2006 年 12 月には、Fujitsu Philippines 社が、オフショア・ソフトウェア開発事業の増強を狙 い、シスコ装備による研修センタを開所した。
・タイ
タ イ の 情 報 化 は 、 世 界 的 に み て 中 位 に 位 置 づ け ら れ る 。 International Telecommunication Union(ITU、国際電気通信連盟)が発表する DigITal Access Index(DAI)
によると、タイは全 177 ヵ国中 68 位、アセアン諸国内でみるとシンガポール、マレーシア、
ブルネイに続いて 4 位となっている。
2006 年は、現行の ICT マスタープランの最終年となった。2007 年以降の 5 年間を見据え た新アクションプランの策定は、2007 年 8 月頃に発表される予定で、焦点分野として、ア ニメーション、マルチメディア、アウトソーシングを引き続き重視するとし、特に組込み システムを最重点項目となる見込みである。
ソフトウェア産業振興庁(SIPA、2003 年設立)やタイ組込みシステム協会(TESA)等の 機関が組込みシステム開発を積極的に推進している。タイにはトヨタ自動車や日立製作所 など日本の主要企業が製造拠点を置いており、現地における組み込み系の人材需要が急拡 大しているが、現状は需要に供給が追いつかない状況である。そこで、2007 年 1 月 22 日、
日本の情報処理推進機構(IPA)は SIPA との間で、組み込み技術者の育成支援に合意した。
・ベトナム
ベトナムは、世界の中でも情報化の進展速度は速いものの、IT 産業規模は小さく、IT の利活用の面でも遅れている。
他方、最近の貿易省の発表によれば、ベトナムはインターネットと移動通信の発展スピ ードにおいて世界第 2 位である。2005 年は過去数年間の平均成長率と比べ、年間 150-200%
もの急成長を遂げたというデータもあり、エマージング・カントリーとしての勢いある。
2006 年 11 月に WTO の加盟が正式に決定し、これが追い風となって、ベトナムの IT 分野は 今後益々の発展を遂げることが予想される。
日本企業ではコスト面、品質面、納期面等の観点から優位性のあるベトナムに業務委託
を行う動きが活発になっている地場企業の一部ではソフトウェア開発ビジネスにおいて日 本市場を最重要視する姿勢を鮮明に打ち出している。
2006 年は、米国の大手 IT 企業の活動が目立った。マイクソフトのビル・ゲイツ会長は 4 月に訪越し IT 分野における様々な連携を約束、IBM は南部に Global Delivery Center(GDC) を開設した。インテルはホーチミンシティのサイゴン・ハイテクパークのチップセット工 場への追加投資を発表し、米国からのベトナム過去最大規模の投資として注目を集めた。
¾ ミャンマー、ラオス、カンボジア
ミャンマー、ラオス、カンボジアは、アジア諸国において情報化が遅れている国である。
先進国の支援を受けながら、情報化に取り組んでいる。近年は、韓国と中国による IT 支援 の活発化しているが、2006 年も同様の動きが目立った。
韓国国際協力団(KOICA、Korea International Cooperation Agency)による電子政府の支 援の動きが目立った。ラオスに対しては、無償援助の一環として、科学技術環境庁(STEA) 内に電子政府研修センター(USD250,000 約 3 千万円)設置し、電子政府アクションプラン を作成している。カンボジアに対しては、既に電子政府プロジェクトを支援しており、2006 年 8 月には調査団がカンボジアの国家 ICT 庁(NiDA)関係者と電子政府計画プロジェクトの 地方展開(フェーズ 2)の打ち合わせを実施済みである。ミャンマーに対しては、2010 年 までの ICT 開発マスタープランづくりの支援を続けている。
中国による IT 支援も目立った。2006 年 4 月にカンボジアを訪問した中国・温家宝首相 が約束した 6 億ドル(約 708 億円)の経済協力には、約 40 億円相当の借款「メコン流域情 報スーパーハイウエイネットワークプロジェクト」が含まれている。本プロジェクトは、
メコン川流域インターネット網のカンボジアへの支線設置するものである。このプロジェ クトは、全て華為(Huawei 社)等中国製品を使用する条件が付けられている。
¾ インド
国としては後進国の範囲にあるインドだが、ソフトウェア産業では 2000 年問題への際立 った対応能力の高さで米国大手企業他からの一層の信頼を獲得し、世界の IT 産業における 確固とした不動の地位を築いた。
現在、世界的に組込み型ソフトウェア開発の需要が高まっており、インドでもこの開発 が増えている。2005 年 3 月期で組込みソフト開発を含む技術分野におけるインド IT 企業 の売上げ規模は 23 億ドルとなったことが発表された。インドにおける同分野は情報機器、
携帯電話、とりわけ二輪車の最も大きな市場であり関連する車載機器などの増大と共に急
激な成長が期待されており、今後、毎年 5,000 人規模の熟練技術者が必要と言われている。
インドは質量共に充実した IT 人材の供給能力を有している。伝統的、文化的に知識を重 視する傾向-特に数学、論理学を尊重する気風と、それから派生する激烈な学力競争の結 果、極めて優秀な一群の技術者(インド工科大学(IIT)卒業生等)が選抜されることに拠 る。
アジアの中でソフトウェア開発能力の高さで定評のある国は、中国、インド、韓国、ベ トナム等であり、欧米や日本からのオフショア開発を請け負っているが、最近では中国と インドが合弁会社を設立し、欧米向けオフショア開発を強化すると共にソフトウェア/ソリ ューション分野における人材育成に乗り出す等、業務の請負国間での連携の動きが見られ た。2006 年 7 月、TCS Asia Pacific は 15 百万ドルを投じ、北京中関村軟件開発有限公司、
他中国側 2 社及び米マイクロソフト社と中国に合弁会社を設立することを発表した。
3. アジアの IT 先進国の情報化協力の状況に関する調査研究
3.1 情報化協力の枠組み
情報化の進展は、一国の経済、社会、文化の発展に大きく影響する。情報社会を公平・公 正な場とするため、2000 年以降、「デジタルオポチュニティフォーラム」(G8)、「ICT タス クフォース」(国連)、「世界情報社会サミット(WSIS)」(ITU)等の枠組みで情報格差(デ ジタルデバイド)の問題が議論されてきた。インターネット黎明期においては、サイバー スペースの中で起こる事象について政府が干渉すべきではないという考えが主流であった が、現在では、豊かな社会を目指して政府が IT 政策を立案し、また、IT 政策実務者がこ れを実践に移す形で、情報化が進められている。IT 政策実務者の役割は益々重要になって きている。
アジアの IT 政策実務者は域内の情報化の発展のため、以下のような視点を踏まえる必要 がある。
・アジア域内の地域的連携の重要性について理解を深め、また、域内の政策実務者間での 共通理解を形成する。
・技術政策的な課題について理解を深め、また、域内の政策実務者間での共通理解を形成 する。
・IT 政策リテラシーを高める
・IT 政策実務者間の人的ネットワークを形成する
3.2 情報化協力の現状
アジア諸国で展開されている情報化協力のテーマについては、人材開発、ICT アプリケ ーションの開発、インフラ構築・整備といった伝統的な開発協力の課題に加えて、情報化 協力に相応しく、情報と知識へのアクセス提供が協力分野の上位に挙がっているほか、政 府とすべてのステークホルダーの役割創出も協力分野として大きな位置を占めている。ま た、国際機関や先進国からの協力事業に加えて、地域間の協力が少しずつではあるが実施 されている点も注目される。
援助を実施している機関としては、世界銀行やアジア開発銀行のような国際援助機関、
あるいは日本、アメリカなどの工業先進国による情報化協力事業(IBM、Microsoft、Sun Micro といった多国籍企業による支援事業も含む)が多いが、シンガポールや韓国などが 新たな援助提供国として存在感を増しつつある。
一方で、日本や、韓国、シンガポールといった先進国から途上国への協力だけでなく、
途上国間での協力も少しずつ試みられつつある。
3.3 今後の情報化協力のあり方への展望
今後の情報化協力には、アジア諸国の相互参加による協力の枠組みの構築が求められて いる。日本に期待されている役割は、自らが協力事業を率先して実現すること、つまり日 本発の協力を増やし、「スター型」の協力ネットワークを充実させることに加え、アジア諸 国のネットワークにおいて、各国がリソースを相互に持ち寄るための場を提供すること、
つまり地域内で完結する他の矢印による「メッシュ型のネットワーク」が形成されるよう、
促すことであろう。
また、アジア諸国のネットワークの形成には、マルチステークホルダー的なネットワー クが志向されることが望ましい。
4.まとめと今後の課題
トーマス・フリードマンが著書で述べている“フラット化する世界”は、アジアにおいて も情報技術を通じて実現に向けて一層加速化されている。
このような加速化する情報化状況の変化に対して、「2.アジア各国における情報通信機器 産業の動向と諸政策」では、アジア各国における IT による情報化の状況を展望した。調査 対象国となったいずれの国も、IT が 21 世紀の重要な産業、インフラであるという認識の 下で、IT インフラ投資、IT 産業育成等に積極的に取り組んでいるが、2006 年の動きを見
る中で、特に注目に値するのは、アジアの IT 市場の拡大に伴う米国・中国・韓国企業の一 層の活発化であろう。米国・中国・韓国ともに、インド等に拠点を設けたり、提携を進め たりし、ビジネスを拡大させているが、その一方で、米国・中国・韓国ともに、「情報化協 力」の名のもと、公共部門や教育機関での人材育成等に係わるアプローチも積極的に行っ ており、自社ブランドの各国における知名度向上を狙うとともに、自社技術のプロフェッ ショナル育成による人材の囲い込みを行っている状況が明らかになった。
続く「3.アジアの IT 先進国の情報化協力の状況」ではそのような情報化が進展する国々 では、情報化に関してどのような国際協力がなされているかについて、この 10 数年間に急 速に普及したインターネットや携帯電話、その他通信技術の普及に視点を置いて調査を行 い、必要な枠組み考察するととも、WSIS データベース、IGF 会議議事録及びアジア政策実 務者に対するヒアリングを通じて事例調査をおこない、情報化協力の考え方の変化及び事 例から今後の情報化協力が目指すべき方向性を述べた。
これら調査により、アジア各国がますます情報化に対する重要性を認識しその推進に力 を入れていると言う動向とその結果ますます“フラット化”していく様が明らかになり、
併せて、その推進に際しては、先進国からの技術面、経済面での協力が開発途上国にとっ て必要であることも明らかになった。国際協力に関しては、アジアの国々の中で、情報化 面での先行組が現れ始めたことに伴い、従来の一部の先進国から相手国への協力という構 図から、域内の国々がお互いの有する経験、技術など可能な分野で協力し合うメッシュ型 の協力が現出しはじめ、望ましい形がとられ始めている。
このような状況において、我が国では、IT 産業界が競争力と経験を有する情報システム 技術や先進的要素技術を用いて、アジアの“フラット化“に貢献するため、我が国はさら にアジアの各国に対して我が国の経験実績に基づく情報システム技術や先端要素技術を紹 介する活動が必要である。また、国際協力ネットワークにおいては、我が国がハブとなっ てそれらの国々間のメッシュ型協力構築とその実効性に貢献する必要がある。そのために、
引き続き、域内情報化に関して各国の情報化の動向ウォッチを継続すると供に、域内各国 間での情報シェア及びニーズ把握を行い、迅速にそのニーズに対応する姿勢が重要である。
各論
各論
各論
1. 調査研究の概要
1.1 背景と目的
我が国の機械産業にとって、アジアは、マーケットとして、生産拠点として、また、ビ ジネスアウトソーシング先としてその重要性が年々高まってきている。アジアはその経済 的成長率の高さ、人口増加に起因する購買力の裾野の広がり等から高い潜在力を有してお り、我が国機械産業の持続的発展のためには、アジア各国と連携を図ることが不可欠とな っている。
中でも、情報家電機器や情報通信機器に代表される IT 産業における連携は、生産にお ける国際分業のみならず、インフラ整備や人材育成等幅広い協力が必要となる。近年、ア ジアの中でも韓国、中国、シンガポール等の国は我が国に比肩する IT 先進国に成長して おり、国際的なデファクト競争が激化するなか、積極的なアジア情報化協力に取り組みは じめており、アジアにおけるプレゼンスを高めるべく独自の戦略をもって情報化協力を進 めている状況にある。
IT新改革戦略の目標にもある通り、我が国がもつ優れたIT技術等を効果的にアジアに 展開し、国際競争社会における日本のプレゼンスを高めることが急務となっている。
そこで、本調査では、「アジア各国における情報通信機器産業の動向と諸政策に関する調 査・分析」及び「アジアの IT 先進国の情報化協力の状況に関する調査研究」を行い、得 られた情報を分析・活用し、我が国とアジア各国の情報通信機器産業の育成を図り、ひい ては、我が国企業が競争力と経験を有する情報システム技術や要素技術のアジア展開によ る国際競争力の強化に資することを目的とする。
1.2 調査研究体制
本調査研究は、社団法人日本機械工業連合会の委託を受けて、財団法人国際情報化協力 センターが、有識者によるタスクフォースを設置し、また、「アジアのIT先進国の情報化 協力の状況に関する調査研究」について、国際大学グローバルコミュニケーションセンタ ーに調査を委託し、当初の目的を達成するべく調査研究を推進したものである。
社団法人日本機械工業連合
有識者タスクフォース*
財団法人国際情報化協力センター
国際大学 グローバルコミュニケーションセンター 委託
委託
*「平成 18 年アジアにおける情報通信機器産業の動向と情報化協力に関する調査」
タスクフォース メンバー名簿
リーダー 荒 木 幸 治 株式会社 日立製作所 メンバー 浅 見 隆 幸 株式会社 日立製作所
〃 石 井 達 也 富士通株式会社
〃 岩 井 利 仁 松下電器産業株式会社
〃 上 原 明 住友電気工業株式会社
〃 河 内 浩 明 三菱電機株式会社
〃 北 岡 正一朗 沖電気工業株式会社
〃 草 刈 隆 日本電子計算機株式会社
〃 黒 崎 雄 二 東芝ソリューション株式会社
〃 小 林 英 次 NECラーニング株式会社
〃 佐 嶋 広 秋 株式会社 富士通ラーニングメディア
〃 佐 立 一 範 株式会社 日立インフォメーションアカデミー
〃 種子田 暁 夫 日本電気株式会社
〃 角 田 和 裕 学校法人 電子開発学園
〃 成 清 義 光 株式会社 システムコンサルタント
〃 針 池 真 一 シャープ株式会社
〃 古 澤 章 社団法人 電子情報技術産業協会
〃 松 波 孝 信 株式会社 リコー
〃 三 田 昌 弘 キーウェアソリューションズ株式会社
〃 山 崎 信 雄 株式会社 SCC
〃 吉 岡 亨 株式会社 NTTデータ
オブザーバー 上 村 圭 介 国際大学グローバルコミュニケーションセンタ-
事 務 局 兼谷 明男 (財)国際情報化協力センター(CICC)
佐藤 敬幸 (財)国際情報化協力センター(CICC)
保谷 秀雄 (財)国際情報化協力センター(CICC)
梅村 香織 (財)国際情報化協力センター(CICC)
石村 真弓 (財)国際情報化協力センター(CICC)
1.3 調査研究項目・スケジュール
我が国 IT 産業のアジアでの事業展開を推進するための基礎資料を作成するべく、以下 の項目について調査研究を行った。
1.3.1 調査研究項目
(1) アジア各国における情報通信機器産業の動向と諸政策に関する調査研究
アジア各国の情報家電機器及び情報通信機器を中心とした産業の動向と各国の諸政策を 面談等を通して調査し、我が国がもつ優れた情報技術や情報システムのアジア展開に関す る企画立案ための基礎資料を作成した。
(2) アジアのIT先進国の情報化協力の状況に関する調査研究
韓国、中国、シンガポール等のアジアの IT 先進国による対アジア情報化協力の戦略や 実績を面談等を通じて把握する。また、被支援国関係者(カンボジア、ラオス、ミャンマ ー、ベトナム、モンゴル、ネパール等)との面接等を通し、被支援国としての戦略や今後 必要とされている支援についても把握した。
(3)(1)と(2)に関する分析
(1)と(2)の調査研究をベースに、我が国企業が競争力と経験を有する情報システム 技術や要素技術のアジア展開による国際競争力の強化を如何にして達成するかを分析し、
取り纏めた。
1.3.2 事業のタイムスケジュール
上半期 下半期
半期別・月別
項 目
18年
/7 /8 /9 /10 /11 /12
19年
/1 /2 /3
①アジア各国における 情報通信機器産業の動 向と諸政策に関する調 査
②アジアの IT 先進国 の情報化協力の状況に 関する調査研究
③上述の①②に関する 分析
④タスクフォースの開 催
○ ○ ○
⑤報告書の作成・公表
2. アジア各国における情報通信機器産業の動向と諸政策
2.1 アジアの IT 市場動向
2006 年のアジアの IT 市場の動向のポイントを以下にまとめる。なお、本項のデータの出 典は、ガートナー社である。
2.1.1 世界 IT 市場動向
世界 IT 市場規模の分野別の割合は通信(59%)、IT サービス(23%)、ハードウェア(13%)、
ソフトウェア(5%)であり、通信と IT サービスが全体の 82%の市場規模を構成する。地域別 では米国(31%)、西ヨーロッパ(29%)、アジア太平洋(13%)、日本(11%)、中南米(6%)、中近東
&アフリカ(5%)、東欧&ロシア(4%)、カナダ(2%)の順で、米国、西ヨーロッパ、日本を含む アジア太平洋の 3 地域で全体の 84%を占める。2010 年までの見通しでは全体の平均成長率 4.1%。分野別ではソフトウェア、IT サービスの分野が伸張。地域別では中南米、東欧&ロシ ア、中近東&アフリカ及びアジア太平洋地域など途上国での伸びが顕著である。
2.1.2 アジア太平洋地域(除く日本) の IT サービス市場動向
米ドル換算で対前年比 12.7%の拡大傾向にある。国別規模では豪州(32%)、韓国(25%)、
中国(12%)、インド(8%)、シンガポール(5%)、その他(18%)の順であり、上位 5 カ国 で全体の 82%を占める。高い成長率はインド(26.9%)、タイ(19.6%)、中国(11.3%)の順。
セグメント別ではソフトウェアサポート、コンサルティングサービスが成長を牽引している。
2.1.3 アジア太平洋地域(除く日本)、IT企業上位20社
IBMが金融機関向けサービスを中心に各国で安定的に首位の座を維持している。
過去一年のウォン高の影響で Samsung SDS、LG CNS、SK C&C の 3 大韓国ベンダの成長率は米 ドル換算で 20-25%を記録。しかし実質は 7-14%程度であった。
TCS などインドの IT 大手企業はまだ規模小であるが成長率は高い。依然ローコストが強 みと考えられているがソフトウェア技術力を武器に米大手 IT 企業と競合。具体例として豪 州の ANZ、Commonwealth Bank など大手金融機関からのアウトソーシング業務を米 EDS から リプレイス受注している。
各国の IT サービス企業上位 20 社をみると自国企業および欧米系グローバル企業にほぼ独 占されている。例外として域内企業は、富士通(日)、HCL(印)、Satyam(印)、Salmat(豪)、
TeleTech(シンガポール)、JOS(香港)の 6 社のみであった。
2.2 アジアにおいて目立った動き
アジア全体を俯瞰し、目立った IT 関連動向(2006 年 1 月以降)を挙げる。国別の目立っ
た動きについては、次章において各々記述する。
2.2.1 アジア地域において、中小企業(SME)IT 市場規模が拡大
中小企業(SME)IT市場規模が、アジアも含め、世界的に拡大の動きを見せた。
2006年のSMEのIT市場規模は世界全体で4,650億ドルとなった。業界全体の伸び5.6%に対し、
中小企業分野の伸びは7.6%に達した。世界のIT大手でもSMEを対象にした製品、戦略を発表 し、この市場を重視しつつ動きがある。IBMは売上げ全体の50%をSMEから、また、SAPは顧客 の65%がSMEという。HPや日立製作所も続々とSME向けの製品を発表している。
アジア太平洋地域でもSMEは最も活発な市場となった。同地域のSME市場成長率は2007年は 10%で520億ドル、2010年には660億ドルに達する見通しという。
2.2.2 米国企業のアジアへの攻勢
Microsoft社やIBM社、Intel社等、米国大手IT企業のアジアにおける活発な動きが目立っ た。
2006年11月、IBM社はインド及び中国北京にサービス・オリエンティド・アーキテクチャ
(SOA)1 センターを設立し、同年12月には、HP社もインド・バンガロールSOAセンターを設 立した。IT界の巨人の2社がインドの地でこれらのセンターをどう活用していくか、今後に 注目したい。
アジア諸国では、現在、積極的に電子政府化が推進されているが、ベトナム、インドネシ ア、ラオス、ミャンマー、スリランカ等の国では、IBM社、Oracle社、HP社といった米国大 手IT企業、または、中国、韓国、マレーシアなどのアジアのIT先進国によって電子政府シス テムが構築されているケースが多く見受けられる。「米国大手IT企業による支援は、システ ムを設置だけしてすぐ帰る」との不満の声も多く聞かれるが、それでも米国大手IT企業をは じめとした企業がこれを受注している実態がある。これら企業によるアジアのIT後発国の公 共部門への攻勢は年々強まっている感がある。
米国大手IT企業はビジネスとしての投資拡大や企業間連携を進める一方で、公共部門や教 育機関での人材育成等に係わるアプローチも積極的に行っており、その勢いは益々強くなっ てきている。その狙いは、自社ブランドの各国における知名度向上を狙うとともに、自社技 術のプロフェッショナル育成による人材の囲い込みである。
Microsoft社では、“Partners in Learning (PiL)”と呼ばれる初等・中等教育における 協力プログラムを世界戦略の一環として展開しているが、アジア地域ではこれまでに、中国、
香港、インド、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、ベトナ ムの11ヵ国・地域ですでに実施されており、今後も拡大していく模様。同社はこの他にも、
各国内有数の大学との提携プログラムを進めている。
IBM社でも、“IBM Academic InITiative”と称した高等研究機関向けの協力プログラムを
1 SOA とは、ソフトウェアの機能をサービスという業務の単位やプロセスから見た粒度でコンポーネント化 したものを機能的に組み合わせてアプリケーションを開発する手法である。
全世界を対象として実施しており、オープンスタンダード技術を中心とした教育、研究に必 要なIBMソフトウェア、技術情報、学習資料の無料提供を行っている。
IBM社ではインド工科大学(IIT)ボンベイ校、モトローラ社はIITムンバイ校、Cisco Systems社はIITルールキー校、SAP社はインド経営大学バンガロール校(IIM-B)と相次いで R&D分野での連携についてMOU等を締結している。
米国大手IT企業と各国政府機関と情報化協力における覚書締結の動きも目立った。中国で は、Microsoft社が情報産業部と中国国内におけるIT産業育成の協力強化を謳った覚書を締 結(5月)したほか、Intel社も同じく情報産業部と中国農村地域における情報化の覚書に調 印(7月)。ベトナムでは、Microsoft社のビル・ゲイツ会長が当地を訪れ人材育成協力等に 関する協力を約束し(4月)、Intel社は共産党科学教育中央委員会とITインフラ整備に関す る協力の覚書を締結(8月)した。
2.2.3 ソフトウェア開発におけるアジアとの連携
日本のIT企業のソフトウェアのオフショア開発パートナは、従来、中国、インド、韓国等 であったが、昨今ではベトナムが注目を集めている。2005年には日立ソフト、2006年にはNEC ソフト、日本ユニシス等の企業が相次いで同国企業との事業をスタートさせた。
ソフトウェア分野においては、組込み型ソフトウェアの重要性が増大している。中国、イ ンドはじめ、米国の大手企業も成熟しつつある従来のアプリケーションソフト開発よりもこ の分野の拡大に注目し人材の確保、拠点の設立に動き出している。
2.2.4 オンライン・ゲーム市場・産業の拡大
アジア各国で急激に進むインターネット普及と通信の高速化等に伴って、オンライン・ゲ ームに関する活発な動きが目立った。
IDC 社の調査によれば、日本を除くアジア太平洋地域の 2005 年のオンライン・ゲーム市 場は約 13 億 9 千万ドルであった。同社は、2006 年から 2010 年において年複利成長率 21%
の成長を遂げ、約 36 億ドルの市場規模になると予測している。
日本のゲーム市場は、ネットに接続しない家庭用ゲーム機と付属ソフトが中心で、ゲーム 産業は、IT 産業というよりはむしろエンターテインメント産業として位置づけられ、主に 企業単独での市場開拓が行われている。他方、アジアのゲーム市場は、インターネットに接 続してプレイするオンライン・ゲームが中心で、ゲーム産業は IT 産業発展の重要な起爆剤 として位置づけられており、現状では中国・韓国の存在感が圧倒的に大きい。中国・韓国を 含めたアジア全体の傾向として、ゲーム産業は高度知識集約型産業として認識されており、
IT 産業振興政策の一環として、官主導での積極的な振興が行われている。
現在、オンライン・ゲームの産業育成の動きは東アジアから東南アジア全域に広がってお り、黎明期にあるベトナム等の地域に中国・韓国が率先して参入し、中長期的な収益を見越 した現地の市場開拓と産業育成を兼ねた開発者の教育を積極的に行っている。
図表の出典:IDC
"IDC Says Thailand Online Gaming Market Maintains Exponential Growth and High Acceptance of Foreign Online Game TITles"
(IDC 2006/06/20)
2.2.5 アジアの検索エンジンの動きが活発化
2006 年は、検索エンジンに関する動きが目立った。日本では、日本の企業や研究所など が持つ検索・解析技術を集積し、次世代検索技術の研究開発などを目指す「情報大航海プロ ジェクト・コンソーシアム」が発足した(7 月)。一方で、中国及び韓国の、それぞれの国 で一番の人気を誇る検索サイトが、日本への進出を発表した。
中国において利用されている検索サイトは百度(Baidu)、谷歌(Google)、雅虎中国(Yahoo!
China)、捜狐・捜狗(Sohu・Sogou)等で、2006 年 8 月現在、シェアはそれぞれ百度 62.1%、
谷歌 25.3%、雅虎中国 4.8%、捜狐・捜狗 3.2%となっており、百度が圧倒的な強さ見せてい る。この百度が、2007 年中に日本に進出する。
韓国では、国産系の検索サイトの Naver や Daum が良く利用されており、他の国で圧倒的 な強さを持っている Google の存在感は乏しい。Naver はかつて日本でポータルサイトを運 営していたものの、人気を得られずに 2005 年にサービスを停止していたが、2007 年下半期 に同事業を再開すると発表した。
2.3 中国
2.3.1 国の概要
一般事項(出典:外務省、2006 年)
面積 960 万平方キロメートル(日本の約 25 倍)
人口 13 億 756 万人(中国国家統計局 2005)
首都 北京
人種 漢民族(総人口の 92%)及び 55 の少数民族
言語 漢語(中国語)
宗教 仏教・イスラム教・キリスト教など
政治体制・内政(出典:外務省、2006 年)
政体 人民民主共和制
国家主席 胡錦濤
経済状況(出典:外務省、2006 年)
主要産業 繊維、食品、化学原料、機械、非金属鉱物
GDP 20 兆 9,407 億元(2006 年)(数値は中国国家統計局)
(1 ドル=8 元で換算すれば約 2 兆 6,000 億ドル)
一人当たり GDP 1,700 ドル(2005 年)(数値は中国国家統計局)
経済成長率 10.7%(2006 年)(数値は中国国家統計局)
物価上昇率 1.5%(2006 年、消費者物価)(数値は中国国家統計局)
失業率 4.1%(2006 年、都市部登録失業率)(数値は中国国家統計局)
総貿易額 (1)輸出 9,691 億ドル(数値は中国国家統計局)
(2)輸入 7,916 億ドル
主要貿易品目 (1)輸出 機械電気製品、ハイテク製品、繊維・同製品
(2)輸入 機械電気製品、ハイテク製品、集積回路・マイクロ組立部品 主要貿易相手国 (1)輸出 米国、EU、香港、日本
(2)輸入 日本、EU、韓国、ASEAN
為替レート 1 ドル=約 8.00 元(2006 年)(数値は国家外国為替管理局)
最近の動向 (1)2006 年の中国の国内総生産額(名目額)は、約 2 兆 6,000 億ド ル、実質成長率 10.7%で 4 年連続で 2 ケタ成長。中国政府による引き 締め政策の実施にもかかわらず、成長率は目標(8%前後)を大幅に 超過。
(2)一方、都市と農村の経済格差の拡大、金融、エネルギー、環境 社会保障等、多くの課題も抱えている。
IT 関連指標 (出典:ITU)
固定電話普及状況 26.6/100 人(2005 年)
携帯電話普及状況 29.8/100 人(2005 年)
パソコン普及台数 4.0/100 人(2005 年)
インターネット利用状況 8.6/100 人(2005 年)
ブロードバンド加入状況 2.8/100 人(2005 年)
国際帯域 136,106(Mbps)(2005 年)
2.3.2 中国の情報化サマリー
中国の経済発展は目覚しく、2000 年から国内総生産年平均 7.5%~9%の好調な成長を続け、
2005 年は前年比 GDP9.9%の伸びを記録、18 兆元(約 234 兆円)を越えた。現在、電話ユー ザ数が世界 1 位、インターネット利用者数が世界 2 位、電子情報製品製造業の規模も世界 3 位にまで市場規模が成長している。
中国政府は、基本政策である「十五(第 10 次五ヵ年計画)(2000~2005 年)」に基づき情 報化が大きく進展し、引き続き「十一五(第 11 次五ヵ年規画)(2006~2010 年)」によって 更なる発展が期待される。この他、中国国内企業育成及び知的財産権確保のため、オープン ソースソフトウェアを重視し、第 3 世代携帯電話やデジタルテレビなど中国独自標準の制定 に注力し、ソフトウェア政府調達法成立を目指すなど、政府は様々な施策を打ち出している。
中国の経済及び情報化の進展には、外資系企業による対中投資も大きく貢献している。対 中投資の契約額は前年比 23%増加、また、貿易額を見ると 2001 年~2005 年の輸出入は平均 25%と堅調な成長をみせた。また、IT 分野における中国の優秀な人材に目をつけ、欧米大手 企業の IBM、HP、マイクロソフト、オラクルなどは情報産業部や地方政府と包括的な契約を 締結し、研究所の設置や人材育成プログラム、Linux 分野における提携を深めるのみならず、
インドやアイルランドも中国政府とソフトウェアに関する包括的な戦略的提携を行ってい る。
中国 IT 企業の躍進も目覚しい。2004 年 12 月 8 日、Lenovo(レノボ)は IBM と合併合意書 を締結、パーソナルコンピュータ部門を買収したことは記憶に新しい。また、大手通信企業 の華為は、東欧を中心とした欧州、アジア市場を対象に第 3 世代移動通信網分野でグローバ ル展開を行っている。ここ数年、中国政府の情報処理分野におけるアセアン地域に対する協 力も拡大している。
一方、課題も山積している。GDP の最も高い上海と最も低い貴州省では 13 倍となってお り、拡大する都市と地方の格差、農業・農村・農民問題、過剰投資、資源問題、人民元切り 上げなど、不安定要素も多い。
様々な課題を抱えつつも、2008 年の北京オリンピック、2010 年の上海万博開催を目前に、
IT を牽引役とした更なる経済発展の加速化に拍車がかかることが予測される。
2.3.3 目立った動き
2006 年 1 月以降、中国において目立った IT 関連動向を挙げる。
(1)中国における知財保護の動き加速
国務院新聞弁公室は、向こう 3 年間で、全国 50 都市に知財苦情センターを設置し、知財 侵害情報の収集体制を整備することを発表した。同時に各官庁間の連携をはかり、政府一体 となった対策を取ると発表した。その先陣を切るかのように、北京市は 2006 年 6 月より「知 財侵害の通報センター」設置した。
中国政府は今年「知的財産権保護行動計画」、「知的財産権保護要綱(2006-2007)」を制定 し、第 11 次 5 カ年計画(2006-2010)では、国産自主技術・自主ブランド振興策「自主創造 革新」を掲げ、知財保護とともに国内ブランドの育成を基本国策としているが、IT 分野に おいては、信息産業部が、年初に発表した「2006 年業務要点」の中で、知財権の保護強化、
中国の知財権の産業化を目標に掲げており、今年は知財元年の年となった。
一方民間では、この 4 月に国内 PC 製造大手4社、聯想(レノボ)、北大方正、清華同方、
TCL各社が、米マイクロソフト社と各々、12 億、2.5 億、1.2 億、0.6 億、計 16.3 億米ド ルにも及ぶソフトウェアの購入契約を結び、正規ソフトの普及が今後益々進むことが予想さ れる。
また、「自主創造」の面では、華為技術公司が、今年第1四半期(1-3 月)までに、国際 特許を 249 件出願し、米 IT 大手のシスコシステムズを抜いて、出願数では世界 37 位に躍進 したことに代表されるように、官民一体となった活動が行われた。
(2)日本企業から中国企業へのオフショア開発に加え、日中共同での中国 IT 市場 開拓の動き
日本では景気の回復傾向に伴い、大型案件が増えることを見越してオフショアを加速する 日本企業の動きが目立った。ソフトウェア開発のベース社は従来から行っている中国へのオ フショア開発に加え、日本の中堅 4 社と共同でオフショア開発及びシステム設計や組み込み ソフト開発人材育成のために 2006 年 3 月に無錫にソフトウェアセンターを開設した。また 富士通 BSC 同年同月に上海に中国 2 ヵ所目の営業開発拠点を開発した。
一方で、日本企業は中国をオフショア開発拠点として位置づけるのみならず、日中の IT ベンダが中国でのビジネスをターゲットとした動きが目立った。
その一つとして、2006 年 8 月、日本のソフトブレーン社は、サイボーグ社と供に日本の 有力 13 社を集めて“MIJS”(Made In Japan Software Consortium)を発足した。このコン ソーシアムには現在 17 社が参加している。その目的は、各社が得意とする優良日本発ソフ トウェアをコンソーシアムのシナジー効果で海外展開するというもの。現在、ソフトウェア の世界は輸入超過であるが、MIJS はシナジー効果を最大限に生かして、海外に打って出よ うと意気込んでいる。当面のターゲットは中国としている。
中国企業側も従来の低コストを売り物にしたビジネス開拓ではなく、優良パートナとの協 業による日中ビジネス開拓を目指し始めた。2007 年 11 月には北京市の有力 IT 企業 26 社が 来日し、日本のパートナ企業開拓、ビジネスネットワーク構築など、新たなビジネスチャン ス開拓をおこなった。
(3)第 3 世代携帯電話(3G)ライセンス交付延期に
2006 年中に交付されることが期待されていた第 3 世代携帯電話(3G)のライセンスは、
技術問題、特許問題等により同年内には交付されなかった。
中国国内では、信息産業部が準備を急ぐ第 3 世代携帯電話(3G)に対し、国内の著名な通 信専門家は公然と異を唱える等、両者は論争に発展していた。北京郵電大学のカン(門がま えに敢)凱力教授は、「技術が未成熟なうえ、需要が非常に小さく、投資資金の回収は極め て困難」との見方を示し、代わりに WiMAX、Wi-Fi といった無線 LAN や通信コストを削減で きる IP 電話、第 4 世代携帯電話(4G)への投資をすべきと語る。一方、中国独自技術の TD-SCDMA を核に年内の 3G 免許発給を目指す信息産業部は、「2006 年に 3G サービスをスター トした場合、初年は 225 億元、10 年には 2,264 億元、5 年間で累計 6,000 億元の売上げが出 る」と同部発行の人民郵電報にて発表するとともに、3G 基地局戦略会議において、同部の