建築構造を利用した建物の三次元モデル作成法に関する研究 野中 淳一,荒木 俊輔,硴崎 賢一§
A 3-D Building Model Generation System by Using Architectural Structure Jyun’ichi NONAKA, Shunsuke ARAKI and Ken’ichi KAKIZAKI
Abstract:
Recently, the demand for 3-D building model used for various application is rising. That model must have characterful shape to make that model real. However, it takes time and effort to generate 3-D building model with characterful shape. In this paper, we propose a system to generate 3-D building model that have characterful shape by using architectural structure to reduce time and effort.
Keywords:三次元建物モデル
(3-D Building Model),
建築構造(Architectural Structure),
柱(Pillar),
梁(Beam)
§ 硴崎,〒820-8502 福岡県飯塚市川津 680-4,九州工業大学院情報工学研究科,
E-mail:[email protected],TEL:0948-29-7674,FAX:0948-29-7651
1.
はじめに近 年
,
三 次 元 地 理 情 報 シ ス テ ム(Geographic
Information Systems: GISs)
が様々な分野で広く利用されるようになり, 三次元建物モデルの需要が高ま ってきている
.
これまでは,
広い領域に対してその 領域内の建物を効率良くモデル化することに主眼が おかれ,
それぞれの建物の特徴を形状とともにモデ ル化するといったことは重要視されていなかった.
しかし,
三次元GIS
の用途が広がるとともに,
特徴 的な形状を作り込んだ,
本物の建物らしいモデルが 求められるようになり, そういったモデルを作成す る様々な手法が研究されている[2].
しかし, 一般的には, そのようなモデルを作成す る場合
,
まだまだ手作業で作られているのが現状で あるため, このようなモデルを作成するためには非 常に時間と労力がかかる.
そのため,
こうした要求 に対応したモデルを効率良く作る方法が求められて いる.
そこで
,
本稿では,
建物の建築構造に着目し,
構 造を利用して特徴的な形状を抽出することで, 本物 の建物らしい三次元モデルを効率良く作成する方法 を提案する.2.
建物の建築構造と特徴的な形状本稿で定義する建物の建築構造とは
,
柱や梁とい った建物の骨組の構造のことである.
我々は,
この 建築構造が建物の特徴的な形状と密接に関係してい ると考えた.
例えば, 図 1(a)のように建物の底面形状が長方形 ではなく
,
さらに1
階部分の一部が柱を残してへこ んでいるような形状の建物を例に挙げる. この建物 の建築構造は,
図1(b)
のようになっていると考えら れる. 図 1のように, 特徴的な形状は柱や梁といっ た骨組の構造に沿って形成されていることが多く,
建築構造が建物の特徴的な形状に大きく影響してい る.
そのため
,
本稿では,
建物の特徴的な形状を,
柱 と梁, つまり建物の骨組の構造に沿って形成されて いる形状と定義する.
(a)建物の形状 (b)建物の建築構造 図 1:建築構造が影響している特徴的な形状
3.
建築構造の利用による効率化建築構造を全く考えずに, 図 1(a)のような建物の モデルを作成しようとすると
,
左右上下どれぐらい の長さの領域が奥行き方向にどれだけへこんでいる のかというような情報が,
特徴的な形状がある部分 ごとに必要となるため,
非常に多くの情報が必要に なる.しかし
,
図1(a)
の建物の建築構造の特徴を利用してモデルを作成する場合, 必要な情報は以下の二つ の情報でよい
.
(1)
建築構造の骨組の情報(2)
特徴的な形状がある部分の情報ここで挙げた特徴的な形状がある部分の情報と いうのは
,
特徴的な形状,
例えばへこんでいる部分 がある場合,
どれぐらいの範囲でへこんでいるか,
奥行き方向にどれだけへこんでいるか, というよう な情報ではなく,
そのへこんでいる部分が骨組のど こにあたるかという情報である. 骨組のどこにあた るかが分かれば,
へこみは骨組に沿って形成されて いるので, 骨組の情報からその形状が予測できる.そのため
,
特徴的な形状がある部分ごとに,
上下 左右どれだけの長さの領域が奥行き方向にどれだけ へこんでいるかといった情報を取得する必要はな い.
これらのことから, ラーメン構造のような規則性 がある単純な建築構造の特徴を利用することで
,
モデル作成に必要な情報を効率良く取得することが可 能になる.
4.
建築構造を利用した提案手法4.1.
提案手法の流れ本提案手法の流れを図 2に示す. 前の章で述べた 骨組の情報から三次元建物モデルを作成するため
,
まず,
骨組の情報を取得する.
このときの入力情報 は,
建物の写真と底面情報,
さらに作成者が手動で 入力する補助情報である.
これらの情報の定義やそ れらの情報から骨組の情報を取得する方法について 以下の節で詳しく説明していく.
建物の写真 底面情報
三次元建物モデル
建築構造の特徴を利用 骨組情報 入力情報
特徴的な形状
図 2:提案手法の流れ
本稿では作成する建物の種類を都市の代表的な 建物であるオフィスビル, さらにオフィスビルの主 要な構造であるラーメン構造の建物と仮定する
.
ラーメン構造とは, 現在最も広く, 数多く用いら れているもので
,
垂直な力を支える柱と,
水平な力 を支える梁によって結ばれた骨組構造である[1].
そ のため,
ラーメン構造の建物は,
柱が垂直,
梁が水 平であると仮定することができ,
柱と梁による三次 元の格子状の骨組となる. さらに, 一般的に全ての 柱の幅が等しく,
左右の柱の間隔,
奥行き方向の柱 の間隔が全て等しいという特徴や, 全ての梁の幅が 等しく,
全ての上下の梁の間隔が等しいという特徴 を持つため, 骨組の全ての格子が上下方向, 左右方 向,
奥行き方向全てにおいて長さが等しいと仮定す ることができる. ラーメン構造の中にはこのように 仮定できない特殊なものもあるが,
今回は特殊なも のは考慮しない.
建築構造をこのような規則的で単純な骨組構造
と仮定することで
,
骨組の情報についても取得する のが容易になるため, 本提案手法の有効性を確認す るのに最もふさわしい構造であるといえる.
次の節 からは, ラーメン構造という仮定のもとで骨組情報 取得方法について述べる.
骨組の情報としては, 柱・梁がどの位置にあると いう情報と
,
それぞれの柱の幅と柱同士の間隔,
梁 の幅と梁同士の間隔という情報がある.
後者の情報 については,
ラーメン構造の定義より,
どこか1
箇 所の柱,
梁の幅,
柱同士の間隔,
梁同士の間隔を取 得することができれば, 全てその値を利用すること ができる.
4.2.
写真からの骨組情報取得方法写真から柱や梁
,
窓の幅,
間隔といったラーメン 構造の骨組情報を取得する方法を述べる.本提案手法で用いる写真の条件を以下に示す
. (1)
建物の正面に近いところから撮影している(2)
撮影した建物表面において,
左端から右端まで全て入っている
2
層以上の連続した階層がある(3)
柱の輪郭線がはっきり見えている(4)
梁の輪郭線がはっきり見えている,
もしくは上 下の階層の窓間の間隔と窓の縦幅が分かるよう な窓枠の線がはっきり見えている骨組情報を写真から取得する際は, 柱が垂直, 梁 が水平であるといった構造の特徴を利用する
.
例えば, 柱の幅や間隔といった情報を取得する際 は
,
柱が垂直であるという特徴を利用して,
図3(a)
のように写真内の垂直な直線である柱の輪郭線を画 像認識処理により検出してその直線同士の間隔を求 めることで,
柱の幅や間隔といった情報が取得でき る.同様に
,
窓の幅や間隔といった情報を取得する際 は, 窓枠が垂直な直線と水平な直線から構成されて いるという特徴を利用して,
図3(b)
のように垂直な 直線である窓枠の輪郭線の間隔から窓の横幅, 左右 の窓との間隔を,
水平な直線である窓枠の輪郭線の 間隔から窓の縦幅,
上下の窓との間隔を取得できる.
柱の幅 柱の間隔 窓の横幅 左右の窓との間隔
窓の縦幅
上下の窓 との間隔 柱
窓
(a)柱の輪郭線 (b)窓枠の輪郭線 図 3:写真内の輪郭線検出による情報取得
ただし
,
このような方法を用いるにあたって三つ の問題がある.一つ目の問題は
,
画像の歪みである.
これを解決 するためにあおり補正を用いた.二つ目の問題は
,
障害物の問題である.
木の枝な どの障害物により柱などの検出したい輪郭線が途切 れている場合,
途切れのある直線を検出できる方法 が必要である. この方法としてHough
変換を用いた[4].
三つ目の問題は
,
縮尺の問題である.
対象の建物 までの撮影距離によって,
写真内の柱や窓の幅,
間 隔が異なるという問題が生じる.
例えば,
撮影距離 が長い場合は写真内の柱や窓の幅, 間隔は短くなる.同様に
,
撮影距離が短い場合は幅,
間隔は長くなる.
通常, 撮影距離を計測しておき, その値をもとに縮 尺を合わせる.
しかし,
本手法では撮影距離を計測 する手間を省くため, 撮影距離ではなく底面情報を 用いて縮尺を合わせる.
この方法については次節で 述べる.
4.3.
底面情報を利用した骨組情報取得方法写真からだけでは取得するのが不可能な情報を 取得するため, 底面情報を用いる. 本提案手法で用 いる底面情報の条件を以下に示す
.
(1)
建物底面の全ての頂点の二次元座標値が分かっ ている(2)
写真内に左端から右端まで全て入っている建物 表面がその底面においてどの二つの頂点間の面 であるか分かっている写真から取得した柱や窓の幅
,
間隔の縮尺を合わ せるために,
この底面情報を利用する.
底面情報か ら建物表面の横幅の実際の長さが分かるので, この 値とあおり補正により正面から見たように補正された画像内の建物表面の横幅の長さが等しくなるよう 縮尺を合わせる. このため, 本提案手法では, あお り補正により四隅の点を指定する際の条件として建 物表面の左端から右端まで選択する必要がある. こ れにより写真から取得した柱や窓の幅
,
間隔を底面 情報の縮尺に合わせた値に変換することができる.ここまでに取得した情報で建物表面の柱の位置 などは分かるが
,
奥行き方向の柱の位置については 写真から取得した情報だけでは分からない.
しかし,
これまでに取得した柱の幅と間隔の情報と底面情報 を利用することで, 図 4のように奥行き方向の柱の 位置を予測することができる.
ここで,
奥行き方向 の柱の間隔の値については, 写真から取得すること ができないため,
建物表面の柱の間隔と同じ値を用 いる. 梁の位置についても同様に予測できる.図 4:底面情報を利用した柱の位置予測
4.4.
補助情報を利用した骨組情報取得方法建物の階数や建物表面の柱の本数など計測する 手間を必要としないすぐに分かる情報については
,
その値を手作業で入力する.
また,
底面情報だけで は予測できないようなへこみに関して写真から人間 が判断できる場合は,
柱と梁に囲まれた格子単位で へこんでいる領域を選択することで, 形状に反映さ せる.
5.
実験実際に本提案手法を用いて三次元建物モデルを 作成し
,
有効性の確認を行った.
入力となる底面情 報は,
都市計画図のものを使用した.
1
階部分が柱を残してへこんでいるようなラーメ ン構造のオフィスビル(
図5
参照)
から作成した三次 元建物モデルが図 6である. 1 階部分が格子単位でへこんでいるのが分かる
.
底面形状が長方形ではないようなラーメン構造 のオフィスビル
(
底面形状を図7
に示す)
から作成し た三次元建物モデルが図 8である. 作成されたモデ ルに底面形状が反映されていることが分かる.
図 5:入力として用いたオフィスビルの写真(左) 図 6:1 階のへこんだ形状が表されたモデル(右)
柱の間隔 a
柱の間隔 a
柱の間隔 a 底面情報
結合
図 7:入力として用いた都市計画図の底面情報(左) 図 8:底面形状が反映されたモデル(右)
6.
おわりに本稿では
,
建物の建築構造を利用することで,
特 徴的な形状を作り込んだ,
本物の建物らしい三次元 モデルを効率良く作成する方法を提案した.
参考文献