限界集落を確保するための地域内交通手段
13D8104019C 東 恵実
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室
2017
年3
月あらまし: 岩手県上閉伊郡大槌町の道路ネットワークを 作り、その頂点への最短距離を、ダイクストラ法を用い て求める。大槌町の道路ネットワークに建物と人を発生 させ、住んでいる人たちの1か月の行動のシナリオを作 り、彼らを道路ネットワーク上で動かして、道路ネット ワークの交通量を調べ、地域の構造を考慮しながら、施 設の配置問題や交通ネットワークを考え、持続可能な地 域のあり方を考察する。
キーワード: 過疎地域、道路ネットワーク、ダイクスト ラ法、シナリオ
1 序論
日本では、現在少子高齢化が進んでおり、深刻な状況 に陥っている。生産人口の減少と高齢者人口の増加によ り人口構成の歪みをもたらし、経済、社会に影響を与え ている。人口減少によって高齢化が地方に現れていると いうこと、集落として存続が不可能になりつつあるこ と、また、存続するうちに最低限継続可能な交通手段を 提供することを踏まえ、国土交通省では、地方振興のひ とつとして、『小さな拠点』づくりを考えている。小さ な拠点というのは、小学校区など、複数の集落が集まる 基礎的な生活圏の中で、分散している様々な生活サービ スや地域活動の場などを「合わせ技」でつなぎ、人やモ ノ、サービスの循環を図ることで、生活を支える新しい 地域運営の仕組みをつくろうとする取り組みである。こ の取り組みを行うことで、日常サービスや医療サービス をコンパクトに集積でき、人々の移動時間を減らすこと ができる。地域社会への変貌を考える上で、近年、少子 高齢化が進んでおり、過疎地域の指定を受けている岩手 県上閉伊郡大槌町をモデルとして、研究を行う。大槌町 の道路ネットワークを作成し、作成したネットワーク を、探索プログラムを用いて特徴を調べ、仮想的に大槌 町に住んでいる人々を道路ネットワーク上に発生させ、
1か月のシナリオをもとに道路の交通量を調べる。その 結果をもとに、理想な街づくりを考察する。
2 大槌町の道路ネットワーク 2.1 道路ネットワークの概要
仮想的な街を作るために、まずモデルとなる大槌町の 道路ネットワークや大槌町の地形をコンピュータ上に実 現しなければならない。
大槌町は平成
28
年11
月30
日現在、人口は12,303
人、面積は約201
㎢である。岩手県三陸海岸の中央部に 位置しており、北上山地に覆われ、東側はリアス式海岸 に面しており、東から流れる大槌川と小槌川の流域に家 屋や商店街が密集している。大槌町の道路ネットワーク を構築するのに必要なデータを次のように定義する。座標データ:頂点を表す。
枝リンクデータ:始点と終点とリンクの幅を表す。
2.2 構築した大槌町の道路ネットワーク
図
2.1
に構築した大槌町の道路ネットワークを示す。ノード数は
6961,リンク数は 4767
である。
図
2.1 道路ネットワーク
3 大槌町の最短経路問題
3.1 ダイクストラ法(Dijkstra
法)ダイクストラ法とは、最短経路問題を効率的に解くグ ラフ理論におけるアルゴリズムである。ネットワーク
N
= (G , length)
の各辺e
の長さlength(e)
がすべて非負 のとき、最短経路木を求める以下のダイクストラ法のア ルゴリズムは点s
から残りの点への最短パスを広げてい き、最終的にすべての点への最短経路を求める方法で行 う。(VPはs
からの最短経路が確定した点の集合、V(G)-VP
は最短経路が未確定な点の集合を表す。)ダイクストラ法のアルゴリズム
図
3.1 ネットワーク N = (G , length)
とその最短経路 木s
からの最短経路を求めるダイクストラのアルゴリズム① スタート点
s
を選び、VP:=∅; distance[s]:=0;{path[s]:=0}とする。
s
以外の点v
に対しては、distance[v]:=∞; {path[v]:=-1}とする。
②
VP≠V(G)である限り以下の(a)、(b)を繰り返す。
(a) M=V(G)-VP
の点の内でdistance
の値の最小 な点wを求める。(b) VP:=VP∪{w}とする。
さらにwを始点とする各辺
e = (w , v)に対して、
distance[v] > distance[w] + length(e)
ならば、distance[v] := distance[w] + length(e) {; path[v] := e}と
する。3.2 大槌町の最短経路問題
大槌町の道路ネットワークの最短経路をダイクストラ 法で求める。プログラムで出力した道路ネットワークを 用いる。大槌町の最短経路問題では両方向通れることに する。
大槌町の道路ネットワークのノードとリンクの数はか なり大きいものである。膨大なネットワークでのダイク ストラ法を実行しようとすると、かなりの時間がかかっ てしまう。そこでヒープを利用することで計算量を抑え ることができる。
それらを考慮して求めた大槌町の最短経路は図
3.2
で ある。青の線が道路ネットワークを表しており、赤の線 が最短経路を表している。図
3.2
最短経路図
3.2 大槌町 最短経路
6
2 4
1
3 5
10,1
4,4
40,9
5,3
15,2 9,5
2,6 1,7
30,8
10,10
2 4
1
3 5
6 10
4
15
1
10
図
3.3
最短経路頻度また、大槌町の最短経路をネットワークの枝がどのくら い使われるかを表したのが図
3.3
である。道路の色が赤 いほど頻度が高く、青いほど頻度が少なくなっている。始点に近いほど赤くなっており、頻度が高い経路をたど っていくと、一本道となっている。最短経路の手法だけ で見ると、この一本道に交通手段としてバスを入れられ るのではないかと予測する。
4 大槌町の道路ネットワークの交通量 4.1 道路ネットワークの交通量
求めた大槌町の最短経路をもとに、道路ネットワーク の交通量を調べる。まず、コンピュータの道路ネットワ ーク上に建物を建てる。次にその建物の体積を求め、体 積当たりに住んでいる人数を出し、住んでいる人全員に 住んでいる場所、世帯、年齢、性別、1か月のシナリオ を与える。そして、1か月のシナリオをもとに道路ネッ トワーク上に動かす。大槌町の道路ネットワークの交通 量を求め、最短経路で求めた道路の使用頻度と比較し考 察する。
4.2 使用するデータ
大槌町に住んでいる人をシナリオ通りに移動させるの に必要なデータとして以下を定義する。
建物:5761世帯の家と
20
個の施設家:建物の重心とネットワークの頂点との距離が 最小のところに建てる。
施設:施設の頂点と道路ネットワークの頂点から 同様に求める。
個人:12955人の住所、世帯、年齢、性別、シナリオ 住所:家を建てた場所とする。
世帯:1~4人世帯で割り振る。
年齢:0~100歳の
5
歳階級ごとで割り振る。性別:半々で割り振る。
シナリオ:求めた年齢ごとに
31
日分の行動パター ンを予測し、1日に1
か所ずつ割り当 てる。表
4.1 個人のデータ例
4.3
大槌町の道路ネットワーク交通量人が流れて1か月のシナリオ通りに動くとしたらどのよ うに動き、どれくらいの交通量になるのかこの
super_source
を使って調べる。各々に1か月のシナリオを与えているので、まず自分が 住んでいるところからスタートし、1日
1
施設ずつ巡 る。目的地にたどり着いたら、経路を辿り、通った経路 を記憶しておく。それを31
日分行い、1人目のシナリ オが完成する。これを大槌町のおよその人口分(12955 人)で行った結果が以下の図である。図
4.1
大槌町 道路ネットワークの交通量 交通量の特徴西側にある集落地域は、交通量が多くあることが分かっ た。駅周辺には施設が密集しているため交通量が赤くな っている。海岸付近の集落には人があまり流れていない のでそれらの集落をつなぐためにコミュニティバスを交 通手段としておくことを提案する。
5 結論 5.1 まとめ
本研究では、岩手県上閉伊郡大槌町をモデルとして、道 路ネットワークを作成し、最短経路問題を求めた。ま た、建物と人を発生させ、シナリオを作り、その通りに 動かすことによって大槌町の道路ネットワークの交通量 を見ることができた。限界集落を持続させるためには、
各集落にどのようなサービスが失われているのかを探 し、それを補うために
1
か月のシナリオを見て、なぜ経 路を通る頻度が高いのか、低いのかを見たり、年齢ごと に交通量を見たりして、地域と地域をつなぐための手段 を考えるべきである。海岸地域は駅周辺に比べて商業サ ービスが少ないと考える。駅周辺にショッピングセンタ ーがあるが、また別の地域にショッピングセンターを作 ることで商業サービスが盛んになると考える。また大槌 町には町民バスというものがあるが、本数が少ないの で、本数を増やすことを提案する。そして町民バスと新 しいショッピングセンターをつなげ、人々の移動負担を 軽くすることができるもではないかと考える。5.2 今後の課題
・最短経路以外での交通量
・移動距離、移動時間の算出 謝辞
本研究を進めるにあたり、多くのご指導ご助言をいただ いた中央大学理工学部情報工学科の田口東教授、山形浩 一氏に深く感謝いたします。
参考文献
[1]
国土交通省ホームページ,(オンライン),<http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_
tk3_guidebook.html>
[2]
浅野孝夫,今井 浩,新コンピュータサイエンス講 座 計算とアルゴリズム,オーム社出版局,2006世帯 シナリオ
人 住所 世帯 年齢 性別 1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日
1 15 1 40 1 小 小 小 小 小 コ シ
2 15 2 35 2 老 病 郵 老 老 老 ス
3 15 2 25 1 消 消 病 消 消 消 シ
4 15 2 0 2 公 公 公 公 公 公 シ
5 19 3 70 1 病 老 老 老 老
6 19 3 50 2 駅 内 駅 駅 駅 シ シ
7 56 4 55 1 駅 駅 駅 駅 酒 駅 駅
8 56 4 45 2 駅 駅 シ 駅 シ 駅 駅
9 56 4 75 1 駅 駅 駅 駅 駅
10 56 4 0 2 公 公 公 公 公 公 シ
11 67 5 75 1 老 老 公 公 公
12 67 5 70 2 老 公 老 公 老
13 67 5 50 1 駅 駅 駅 駅 ス 駅 ス
14 67 5 0 2 公 公 公 公 公 公 シ
15 81 6 60 1 小 小 小 小 小 コ シ
16 81 6 60 2 老 老 老 老 老 老 ス
17 81 6 85 1 公 公 病 公 公
18 81 6 30 2 駅 駅 シ 駅 シ 駅 駅
19 81 7 65 1 老 老 老 老 老
20 81 7 75 2 病 公 病 公 公