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『特殊器台の世界』展示パンフレット 岡山市埋蔵文化財センター平成25年度特別展|岡山市|学び・生涯学習|遺跡・埋蔵文化財

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Academic year: 2018

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開催にあたって

 吉備では墳墓で使用される土器として、壷とそれを捧げる台-器

台-が非常に発達します。

 器台はもともと集落で農耕祭祀に使用される土器として出現する

と考えられていますが、巨大な墳墓を築くような権力者の出現とと

もに、非常に大型化し、複雑な文様で飾られる墳墓専用の器台-特

殊器台-が現れます。この特殊器台はやがて古墳に並べられる埴輪

へとつながっていくと考えられており、ヤマト王権成立に吉備の首

長たちが大きな役割を果たしたと思われます。

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 器台形土器は上下に開く鼓のような 形をした土器です。その名のとおり器 を置くための台であり、神様へのささ げものでしょうか、壷、あるいはその 中身を高く掲げることが役割です。壺 や甕などの日常の土器に比べて出土数 が少ないことから、集落内の祭祀-農 耕にかわわるマツリに使用されたと考 えられています。

 器台形土器は吉備南部では弥生時代 中期の中頃に現れます。このころに農 耕にかかわるマツリの形や道具立てが 整えられ、確立したと言えるでしょう。 南

みなみかた

方(済さいせいかい生会)遺跡や南みなみかたかまた方釜田遺跡 から出土した器台はこうした出現期の 器台です。後に凹線文や平行沈線で飾 られる部分が何本もの貼り付け突帯に なっていることや、上下の大きく開く 部分が直接つながるような形をしてお り中央の筒状の部分がはっきりしない などの特徴があります。

器台の発生とマツリ

器台形土器(南方 ( 済生会 ) 遺跡)

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集落遺跡出土の器台

 弥生時代中期後半から後期前半の器台 は、量は多くありませんが、特別珍しい わけでもなく、集落遺跡でもよく出土し ます。特別なマツリに使われた土器では なく、日常的な様々なマツリや祈りの場 面で使われた土器だったのでしょう。ま た、意外なようですが、墳丘墓では器台 と壺がセットになっていますが、集落遺 跡では器台だけが単独で出土する遺構も 認められます。壷だけでなく様々なもの をのせたり、捧げものを象徴的に表した りしたのでしょう。

 弥生時代後期後半以降、限られた人の ために墳丘墓が築かれるようになってか らは、集落内で出土する器台は小型化し、 出土数も激減していくようになります。 日常的な土器を用いた集落内での農耕に 関するマツリが、墳丘墓で行われる特定 な人物に対してのマツリに吸収され、再 編成されていくことを示していると考え られます。

器台形土器(東山遺跡)

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楯築弥生墳丘墓と

特殊器台の出現

 倉敷市矢部の丘陵上に立地する楯たてつき築弥生墳丘墓は円丘部の南北両側に突出部のついた形を

しており、墳長 70 m以上、日本最大の弥生墳丘墓です。墳丘に巨石を立て並べたその姿は

楯築型の特殊器台形土器(津寺 ( 加茂小 ) 遺跡)

楯築弥生墳丘墓(倉敷市矢部) 他に類を見ない特異なもので、最初の吉

備の王墓というにふさわしいものです。 同時に特殊器台を用いた最初の墳丘墓で もあります。

 楯築弥生墳丘墓の特殊器台は、特殊器 台に特徴的な文様である組くみおびもん帯文と呼ばれ る渦のような文様がなく、綾あやすぎもん杉文や鋸き ょ し歯 文

もん

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特殊器台の特徴と変遷

 特殊器台は非常にキッチリとしたきま りのもとに作られているようです。下か ら脚部、文様帯 4 段間帯 5 段からなる筒 部、頸部、受部という構成がその一つで す。また、角かくせんせき閃石という鉱物を含む褐色 がかった胎土が特徴的で、特別な粘土を 使用して作られたと思われます。  文様帯には楯築弥生墳丘墓の段階には 綾杉文、鋸歯文などの文様が施されます が、その次の段階からは組帯文と呼ばれ る水引のような渦文が特徴的です。  特殊器台は主にこの組帯文の変化から、 楯築型から立たちさか坂型、向む こ う ぎ み木見型、宮みややま山型と 変化すると考えられています。組帯文を もたない楯築型や組帯文の文様帯と綾杉 文などの文様帯が組み合わさる立坂型か ら次第に文様帯には組帯文だけが施され るようになり、同時に、脚部や受部に対 し筒部のボリュームが大きくなっていき ます。特殊器台の中で組帯文という文様 が非常に重要なものとなっていくことを 表していると考えられますが、この組帯 文の起源についてはよくわかっていませ ん。楯築弥生墳丘墓と鯉こいくいじんじゃ喰神社弥生墳丘 墓 ( 倉敷市矢部 ) の二基から見つかって いる弧こ た い も ん帯文石 ( 旋せんたいもん帯文石 ) に刻まれた文 様が組帯文の成立に大きくかかわってい ることが想像されます。

特殊器台形土器(西山遺跡)

写真提供:岡山県古代吉備文化財センター

特殊器台形土器(中山遺跡)

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特殊器台と 「特殊な」器台

 特殊器台は製作だけでなくその使用に も一定のきまりがあったようです。特殊 器台・特殊壺のセットをもつ墳墓、特殊 壺しかもたない墳墓などの「ランク」が あるようなのです。

 特殊器台とは若干異なる特徴を持つ 「特殊な器台」が認められます。これらの 器台はやや小型で、特殊器台の文様帯 4 段間帯 5 段などの規則に従っていません。 おそらく特殊器台を使用できない首長や 集団が使用したものなのでしょう。また、 特殊な器台には、平ひらおかにし岡西遺跡出土の器台 のように限られた地域に同じ特徴のもの が分布する場合と、長ながさか坂 1 号墳や津島遺 跡出土の器台のように、遺跡毎に特徴の 異なる独自性を主張するものとがあるよ うです。

「特殊な」器台形土器(平岡西遺跡)

「特殊な」器台形土器(長坂 1 号墳)

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お墓にお供えされる土器

 弥生時代のお墓を調査すると土器を伴う場合があります。それは死者にたむけられたもの であったり、多くの人が共同飲食した結果そこに残されたものであったりします。弥生時代 の後期後半、吉備では墳丘墓において特殊器台や特殊壺のほか、小型の高坏や壷などの多く の土器が出土します。特に、楯築弥生墳丘墓や立坂型の特殊器台をもつ墳丘墓では多量の小 型土器を使用した葬送儀礼の場がもうけられ、首長の権威を高める舞台として、それまでに 例をみない規模と内容をそなえたものでありました。

 しかしその後、お墓に供えられる土器は器台と壷のセットあるいはそのどちらかとなり、 こうした小型土器類はほとんど伴わなくなります。お墓自体が共同飲食を伴う葬送儀礼の場 であったものが、それを器台と壷で象徴的に表すようになってゆくためと考えられます。 

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天瀬遺跡の龍の器台

 天あ ま せ瀬遺跡は北区天瀬、岡山市 立市民病院一帯に広がる弥生時 代後期の遺跡です。この器台は 市民病院増築に伴う調査で出土 したものです。一番上に波のよ うな文様とそこから立ち上がる S 字状の曲線と三角形の突起が描 かれています。これは『龍』を 描いたと考えられています。龍 は中国で生まれた水をつかさど るとされる想像上の動物です。 天瀬遺跡では他にもこのような 龍を描いた器台が出土していま す。弥生時代には天瀬遺跡の辺 りまで海でした。海が見える所 に龍を描いた器台を並べ、船旅 の安全を祈ったのでしょう。  天瀬遺跡出土の龍の器台は脚 部や受部の形態などは不明です が、弥生時代後期の一般的な器 台とは異なり、筒部だけで 50㎝ を越える大型の物です。特殊器 台に直接つながるものではあり ませんが、特殊なマツリにそれ 専用の器台が用いられていたこ とを示すものと言えるでしょう。

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宮山弥生墳丘墓と特殊器台の終焉

 宮みややま山弥生墳丘墓 ( 総社市 ) と矢や と う じ藤治 山

やま

弥生墳丘墓 ( 北区西花尻 ) は前方後 円形をした弥生時代末の墳墓です。こ の二基は墳丘の形や規模、埋葬施設の 構造、副葬品の内容など非常によく似 ており、両者ともに最も新しい段階の 特殊器台が出土しています。

 しかし、特殊器台の特徴は大きく異 なっています。矢藤治山墳丘墓では口 縁部の形態などに新しい特徴を持ちな がら文様帯 4 段間帯 5 段という構成 など特殊器台の規則に従っていますが、 宮山墳丘墓のものは文様帯 3 段間帯 3 段となっており、文様も非常に特徴的 です。また、宮山型の特殊器台は奈良 県からも見つかっており、特殊器台形 埴輪と共伴しているものもあります。  宮山墳丘墓の特殊器台は謎の多い器 台ですが、激動の時代にあって吉備内 部の複雑な政治関係を示しているのか もしれません。

特殊器台形土器 ( 総社市宮山弥生墳丘墓 )

写真提供:岡山県立博物館

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特殊器台形埴輪

 およそ 50 年前、都と つ き ざ か月坂 1 号墳 ( 北 区津島本町 ) の発掘調査で奇妙な埴輪

が発見されました。 巴ともえ形と三角形の透

かし孔と蕨わらびて手文と直線文を組み合わせ

た複雑な文様で飾られた埴輪です。こ の埴輪は弥生時代の特殊器台の系譜を 引くものと考えられ、特殊器台形埴輪 またはこの古墳の名をとって「都月型」 埴輪と呼ばれます。この発見により、 埴輪の起源が吉備の特殊器台にあるこ とが確実となりました。すなわち、埴 輪は吉備の器台を用いた祭祀を象徴的 に表したものだったのです。

 特殊器台形埴輪は奈良県・箸はしはか墓古墳

をはじめ、吉備から近畿地方の最古段 階の古墳などから見つかっていますが、 わずかに 17 例しかありません。その 後、埴輪は古墳に多量に並べられるよ うになり、文様が施されなくなるなど 吉備的な色彩が減じるとともに、各地 の古墳に受け入れられていったようで す。

特殊器台形埴輪(矢部堀越遺跡)

写真提供:岡山県古代吉備文化財センター

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平成 25 年度岡山市埋蔵文化財センター特別展「特殊器台の世界」 平成 25 年 10 月 1 日

    編 集 岡山市埋蔵文化財センター 〒 703-8284 岡山市中区網浜 834-1       発 行 岡山市教育委員会     〒 700-8544 岡山市北区大供 1 丁目 1 -1

参照

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