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著者 佐竹 壮一郎

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(1)

2010年代におけるEUの危機と欧州統合の理論に関す る一考察 : ポスト機能主義と新機能主義をめぐっ

著者 佐竹 壮一郎

雑誌名 同志社法學

巻 71

号 5

ページ 1777‑1806

発行年 2019‑11‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000466

(2)

2010年代における EU の危機と 欧州統合の理論に関する一考察

――ポスト機能主義と新機能主義をめぐって――

佐 竹 壮一郎 

はじめに

1.ポスト機能主義とは何か 2.ポスト機能主義に対する評価

3.新機能主義の再検討:逆統合の側面を想定していた新機能主義 おわりに

はじめに

 2010年代における

EU

の危機は、従来の危機とは全く異なるものとして受 け止められた。それは、オックスフォード大学の教授であるヤン・ジーロン カが『

EU

は終わるのか』というタイトルのエッセイを出版したことや

Zielonka

2014)、ソフィアのリベラル戦略センター理事長およびウィーンの 人間科学研究所常任フェローを務め、メディアからも注目を集めているイワ ン・クラステフが、ヨーロッパを「アフター・ヨーロッパ」という視点で捉 えることが必要であると説くことに表れている(クラステフ 2018)1)

1) クラステフによれば、EUは今日、「欧州大陸全土にわたる市民の、プロジェクトの将来への 信頼を損うような数多くの危機によって四分五裂し」ている(2018: 116)。そして「アフター・

ヨーロッパ」とは次の4点を意味する(2018: 11)。⑴ 旧大陸が政治における中心的役割を失 い、また欧州人自身に対する自信を失ったこと、⑵ 欧州のプロジェクトがその目的論的な魅 力を失い、かつ「欧州合衆国」という考えが心に響かないものになっていること、⑶ 欧州が、

キリスト教と啓蒙主義の遺産がもはや確かなものではないという、アイデンティティの危機に 陥っていること、⑷ EUの終わりというよりは、欧州と世界の未来に関する甘い希望と期待 を捨て去る必要があること。

(3)

 事実、この10年の間、アメリカでの金融危機を発端とするユーロ危機やア ラブの春を契機とするシェンゲン危機、ロシアとの対立を顕在化させたウク ライナ危機、また台頭するポピュリスト政党、さらには2016年の国民投票以 降

EU

からの離脱を巡り混乱を続けるイギリスなど、

EU

は政治的、経済的、

文化的といった多方面より危機に襲われた2)。とはいえ、危機の始まりから 10年を経た現在、

EU

の分裂や崩壊を懸念する声は小さくなった印象を受け る3)

 こうした背景の中、過去10年の研究は、それぞれの危機の理解や危機の中 で導入された政策の検証、新たな「欧州統合」の在り方などを検討すること に重きを置いていた。同様に、

EU

自身も過去の危機を踏まえた上で、欧州 統合の将来を検討するような動きを見せてきた(

Council of the European Union

2017;

European Commission

2017

a

, 2017

b

)。

 その一方で、先に挙げた様々な危機を、理論的な側面から捉え直そうとす る動きが近年高まっている。その要因として、危機の帰結が異なっていたこ とが挙げられる。例えば、ユーロ危機は当初、ユーロの解体やギリシャのユ ーロ圏からの、さらには

EU

からの離脱(いわゆる

Grexit

)をも予感させた。

ところが、危機はむしろ、通貨同盟としての

EU

やその中心的な機関である 欧州中央銀行(

ECB

)の役割を強化させた4)

 翻って、大量の難民が地中海沿岸諸国に押し寄せたことで発生したシェン ゲン危機は、一部の協定締結国における国境管理を一時的に復活させ、それ が繰り返し延長される事態を引き起こしている(

Bux

2019)5)。さらに、同

2) 遠藤は、EUで発生しているのは「多層にまたがり連動する複数の危機」であるため、「複合 危機」として捉えている(2016: ii-iii)。

3) ただし、統合が大文字の「統合」物語から、EU諸機関への集権化という小文字の「統合」

へと転換したことついては、既に指摘されている通りである(遠藤 2013: vii)。

4) ユーロ危機を通じた経済統合や課題を言及した研究については、例えば島田・高屋・棚池編

(2018)、井上・吉井編(2018)。

5) 現在でも一時的な国境管理は続いている。詳細は以下を参照。‘Member States’ notifications of the temporary reintroduction of border control at internal borders pursuant to Article 25 et seq.oftheSchengenBordersCode’.https://ec.europa.eu/home-affairs/sites/homeaffairs/files/

(4)

what-we-do/policies/borders-and-visas/schengen/reintroduction-border-control/docs/ms_

notifications_-_reintroduction_of_border_control_en.pdf(2019年7月14日閲覧)。また2019年現 在の規制や一時的な国境管理等については Bux(2019)を参照。

6) 再配置についてはRegulation (EU) No. 516/2014を参照。また、現在のV4の立場については、

Slovak Presidency 2018/2019 of the Visegrad Group (2018) Dynamic Visegrad for Europeを 参 照http://www.visegradgroup.eu/documents/presidency-programs/slovak-v4-presidency-en

(2019年7月14日閲覧)。

7) 国際関係理論の葛藤については、Dunne et al. (2013)、葛谷・芝崎(2018)を参照。

8) ただし、ディーズらが述べるように、欧州統合の理論に関する研究は、ある完全な理論の構 築を求めようとはしていない(Diez and Wiener 2019: 21-22)。むしろ様々な理論を用いるこ とで、EUの多面的な側面を理解しようとする研究が多数である。

危機は、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロヴァキアの4ヶ国によって 構成されるヴィシェグラードグループ(V4)と西側諸国との、難民の再分 配に関する考え方の違いを浮き彫りにした6)

 では、具体的に何が危機の帰結の違いを引き起こしたのか。危機を類型化 することは可能なのか。こうした問いに対する回答を試みる際、欧州統合の 理論による分析枠組みの設定が有用である。しかし、国際関係論における理 論が停滞ないし無数の理論の提唱に伴って混乱しているように、欧州統合の 理論やアプローチも多数存在し、それは「モザイクな」状況にあると評価さ れている(

Diez and Wiener

2019: 21)7)

 とはいえ、欧州統合の理論には二大理論なるものが存在する8)。それは新 機能主義(

neofunctionalism

:以下、

NF

と表記する)とリベラル政府間主義

liberal intergovernmentalism

:以下、

LI

と表記する)である。前者は、

1958年に刊行されたハースの代表的な著作である

The Uniting Europe:

Political, Social, and Economic Forces, 1950-1957

を 出 発 点 す る(

Haas

1958)。本書は50年代の欧州統合の理由を説明する理論を提示したことで、

一躍脚光を浴びた。その後、統合が停滞するとともに

NF

は修正に追い込ま れたが、現在も重要な欧州統合理論の一つとみなされている。後者は、1998 年に刊行されたモラフチークの代表的な著作である

The Choice for Europe:

Social Purpose and State Power from Messina to Maastricht

を軸とし、現

(5)

在でも、新機能主義に並ぶ欧州統合の理論として広く受け入れられている9)。  しかし、2010年代の危機を通じて最も注目を集めた理論は、2009年にホー ヘとマークス(

Hooghe and Marks

:以下、

H

&

M

と表記する)によって提唱 されたポスト機能主義(postfunctionalism:以下、

PF

と表記する)であった。

マルチレベルガヴァナンスの概念で知られる両者が新たに提唱した

PF

は、

二大理論に対する挑戦として受け止められ、反響を呼んだ10)。では、

PF

と は一体どのような理論なのか。著者の分析枠組みはどのように設定されてい るのか。

 以上の研究背景を基に、本研究は次の2つの研究目的を設定する。第1に、

近年注目を集める

PF

の検討である。様々な論者より批判が加えられている

PF

を、「モザイクな」欧州統合の理論の中で、どのように位置づけることが できるかを明らかにする。

 第2の目的は、

PF

による

NF

の誤解を解くことである。

PF

は、初期段階 の

NF

に限定した分析を行い、その楽観的側面を批判した。しかし、実際の

NF

は楽観的理論に留まることなく、常に修正を繰り返していた。そこで本 研究では、もう一人の初期

NF

論者として知られるリンドバーグの見解を踏 まえた上で、

PF

の課題を検証する。

 本研究の主張は次の2つからなる。第1に、

PF

の主張が曖昧という点で ある。たしかに、

PF

は従来の理論では十分に検討されてこなかったアイデ ンティティや大衆の存在を分析枠組みとして取り入れることによって、欧州 逆統合の説明を試みた理論であると評価することができる。しかし、アイデ ンティティが形成される要因とは何か。従来の理論が示す経済的な選好と比 較して、アイデンティティがどの程度重要なのか。こうした重要な論点につ いて明快に回答することができていないという点において、

PF

は十分な説 得力を持つとはいえない。

9) LI自体はMoravcsik(1993)において言及がなされていた。

10) マルチレベルガヴァナンスについては、Marks et al.(1996)およびHooghe and Marks(2001)

を参照。

(6)

 第2に、

PF

NF

の一側面のみを捉えた上で、議論を展開していた点で ある。PFは、理論としての

NF

と、人としての新機能主義「者」を混同す ることによって、

NF

を楽観的であるとみなしていた。実際の

NF

は、本稿 で取り扱うリンドバーグらの研究に示されるように、欧州統合の将来に対し てより慎重な見方をしていたのである。

 本稿は次のような構成をとる。第1節では

H&M

による

PF

を概観し、そ の中心的主張を捉える。二大理論である

NF

LI

との違いもここで示す。

第2節では

PF

に対する評価を検討することで、提唱から10年の間にどのよ うな批判がなされてきたのかを整理する。第3節では、1970年に示されたリ ンドバーグらの見解、特にスピルバック(

spillback

)仮説に焦点を当てて説 明する。その上で、現在の危機にこの仮説を当てはめることで、

NF

から見 た逆統合を示すとともに、

PF

の課題を浮き彫りにする。

1.ポスト機能主義とは何か

⑴ ポスト機能主義の5つの主張

 2009年に

H

&

M

によって提唱された

PF

は、従来とは異なるアプローチを 採用したことで脚光を浴びた。その最大の特徴は、逆統合(

disintegration

) を分析枠組みに取り入れた「悲観的な」理論という点にある(

Webber

2019)。

H

&

M

の主張は、次の5つに集約することができる。

 第1の主張は、

EU

をどのような政体と認識するかという観点から述べら れる。

H

&

M

によると、

EU

は「機能的圧力や分配に関する圧力だけでなく、

アイデンティティによっても推進されるマルチレベルガヴァナンスのシステ ムの一部」である(2009: 23)。そこで

PF

も、

EU

がマルチレベルガヴァナ ンスに基づいていることを前提とする。

 第2に、アイデンティティの重要性である。マルチレベルガヴァナンスア プローチによって示された課題とは、「人的な協力のための機能的要求」と「コ

(7)

ミュニティの領域的範囲」の不一致である(2009: 2)。つまり、それぞれの コミュニティの選好や要求は、共同体が求める機能的な要求とは異なってい ることを意味する。このような、欧州統合におけるズレを理解するためにも、

アイデンティティに着目することが重要であると

PF

は論じる。

 第3に、大衆への着目である。

H

&

M

によると、初期の

NF

はエリートに 重きを置いていた11)。その上で、

H

&

M

はいわゆる「許容のコンセンサス

permissive consensus

)」から「拘束的不一致(

constraining dissensus

)」へ の転換を指摘する(2009: 5)12)

 初期

NF

論者として知られるリンドバーグとシャインゴールド(

Lindberg and Scheingold

:以下、

L

&

S

と表記する)によって欧州統合研究に持ちこま れた「許容のコンセンサス」は、次の2つから構成される(1970: 41)13)。第 1に共同体がエリートで完結している点である。

L

&

S

によると、共同体は「エ リートの産物」であり、それによって影響を受ける対象集団も、政府高官や 利益集団の指導者に限定されていた。第2に、その結果として、政治的行動 に対する世論の反応が希薄となり、社会的結束が強化されないという点であ る。以上を踏まえると、「許容のコンセンサス」とは、エリートが大衆から 大きな反対や挑戦を受けることなく、共同体を更なる統合へと進めることが できた状態と理解することができる。

 「許容のコンセンサス」は、デンマークショックに代表される、マースト

11) H&Mも指摘するように(2009: 6)、ハースは、統合の研究がエリートに焦点を当てる2つ の理由を提示した(1958: 17-18)。第1に、ヨーロッパでは官僚的性質が長年にわたり引き続 いており、そこでの決定は指導者によってなされるからである。第2に、大衆とエリート層の 統合に対する姿勢の違いである。ハースによれば、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)に対する大 衆の理解は十分ではないことが示されている。

12) 日本語訳として「制約する不一致」もあるが、いずれも同様の事象を指す。

13) なお、L&Sによると、「許容のコンセンサス」という概念を提示したのは Keyである(1970:

41)。彼は、「支持のコンセンサス(supportive consensus)」と「許容のコンセンサス」の2つ にコンセンサスを分類した。前者は大衆の積極的な支持に基づくコンセンサスであり、「許容 のコンセンサス」と比較すると、実施される政策に対する関心も高い(1961: 29-35)。なお、「許 容のコンセンサス」の日本語訳として「受容的コンセンサス」や「黙認のコンセンサス」もあ るが、全て同様の事象を指す。

(8)

リヒト条約発効に至るまでの政治的な混乱の時期に消滅したとされている。

その結果、90年代から2000年代にかけて、EUの正統性や民主主義の赤字に 焦点を当てる研究が盛んになされた14)

 ところが、PFにとっての「許容のコンセンサス」の終焉は、民主主義の 赤字に関する議論とは着眼点が異なる。「許容のコンセンサス」と同様に、「拘 束的不一致」についても分解して検討してみよう。まず、拘束されるのは誰 か。

H

&

M

によると、それはエリートである。「エリート、すなわちオーソ リティに位置する政党の指導者は、欧州の課題について交渉するとき、彼ら の肩越しを振り返らなければならない(2009: 5)」のであり、そして彼らが 意識しなければならなくなった存在というのが大衆である。

 第4に、マーストリヒト条約を転換点と見なしている点である。

NF

LI

も、マーストリヒト条約が自らの理論の修正を要求するものとは認識してい なかった。他方

PF

は、1991年の欧州理事会でのマーストリヒト条約の合意を、

欧州統合史における大きな転換点とみなす。先に述べたように、「許容のコ ンセンサス」から「拘束的不一致」への転換はこの時期であった。さらに、

H

&

M

によると、マーストリヒト条約発効以降は、欧州統合の決定方法が、

政党間の競争や選挙、国民投票にさらされ、論争を呼ぶようになった(2009:

7)。

 第5に、「政治化(

politicization

)」が欧州統合に与える影響である。政治 化という概念自体は60年代に

NF

によって議論されており、特別目新しいも のではない。しかし、その結果が

PF

NF

とでは異なることに留意しなけ ればならない。

 そこで以下では、

PF

の中心的な概念である「政治化」に焦点を当てるこ とによって、

H

&

M

の主張を整理していきたい。

⑵ ポスト機能主義にとっての「政治化」

 

NF

論者は、「政治化」が欧州統合を促すと論じた。例えば、代表的な

NF

14) 例えば、Weileret al.(1995); Majone(1998); Moravcsik(2002); FøllesdalandHix(2006)。

(9)

論者の1人であるシュミッターは、広く知られているスピルオーヴァー

(spillover)仮説と外部化(externalization)仮説だけでなく、政治化仮説を 提示していた(

Schmitter

1969: 165-166)。

 ここでの政治化とは、次の3段階を意味する。第1段階は「共同意思決定 による論争の増加の過程」である。第2段階は「統合に対して関心をもち、

行動する聴衆または顧客の拡大」である。つまり、共同意思決定によって影 響を受ける人々が増加することを意味する。第3段階は「相互目的の再定義」

である。すなわち、経済的だけでなく政治的な目的への転換の可能性をシュ ミッターは示唆していた。以上の3段階を踏まえ、

NF

は政治化によって「ア クターの期待と忠誠心が新たな地域の中心にシフトする」という仮説を導き 出した15)。つまり、政治化が欧州共同体の発展に寄与すると、

NF

は予測し ていたのであった。

 一方

PF

では、政治化によって導き出される結果は真逆である。

PF

は、

政治化の結果、「統合のスコープとレベルに下向きの圧力がかかる」と予測 した(

Hooghe and Marks

2009: 21)。こうした主張が、

PF

が「悲観的」な理 論と呼ばれる理由である。

 以下では

PF

と政治化に焦点を当てる。具体的には、⑴ 政治化のプロセ スとは何か、⑵ どのような問題が政治化を引き起こしているのか、⑶ 新 たな対立軸とは何か、⑷ どこで政治化が起きているのか、という観点につ いて解き明かしていきたい。

 第1の着眼点は、政治化のプロセスについてである。

H

&

M

は、国内の動 きに着目することで、政治化を説明しようと試みた(図1)。まず前提として、

決定がなされる、「大衆のアリーナ」と「利益集団のアリーナ」という2つ のアリーナを設定する。その上で、政治化は次の5段階を経る(2009:

15) ハースも共通の認識を持っていた。なお、こうした成功した政治化は「自動的政治化」とも 表 現 さ れ て い る(Haas and Schmitter 1964)。 ま たSchmitter(1969) 以 前 の 研 究 で は

politicizationをpolitizationと表記していたが、その内容は同じである。新機能主義の立場か

ら政治化を述べた他の文献については以下を参照(BarreraandHaas 1969; 鷲江 1989)。

(10)

8-9)16)。⑴ 改正の弾み:機能的効率性と管轄構造との間に、ミスマッチが 発生する。⑵ イシューの形成:政党が世論および利益集団に応答すること によってイシュー形成がなされる。⑶ アリーナのルール:どのアリーナに よって改正/非改正の決定が下されるのかを定める17)。⑷ アリーナの選択:

政党は、抱えるイシューが「大衆のアリーナ」または「利益集団のアリーナ」

のいずれかを選択する。その際、政党は⑶に示したように、アリーナのルー ルに拘束される。⑸ 対立の構造:対立が分配に基づくものか、アイデンテ ィティに基づくものかが決定される(

pp

. 8-9)。

 つまり、従来政治的指導者や

EU

官僚の行動で完結していた欧州の議論が、

政党間の競争にさらされることになり、その結果世論が重視されるようにな った、というのが欧州統合の変化やそれに伴う政治化に対する

PF

の見方で ある18)

16) 以下の⑴-⑸は図1の1.-5.に対応している。

17) その例として、国民投票を実施することが強制的か、それとも禁止されていることか、とい ったルールが挙げられる(Hooghe and Marks 2009: 8)

18) H&Mによれば、世論は80年代まで重視されていなかった (2009: 9)。

図1 国内における政治化のモデル

出典:HoogheandMarks (2009: 9) を加筆修正し、筆者作成。

機能的圧力と 管轄形式間の ミスマッチ

世論

利益集団による 圧力

政党の戦略

分配のロジック アイデンティティ

のロジック

(ʻgal/tanʼ)

分配のロジック

(経済的 左/右)

大衆の アリーナ

利益集団の アリーナ

1. 2. 3. 4. 5.

アリーナの

  ルール

(11)

 第2の着眼点は、どのような問題が政党や世論の関心を高め、政治化を引 き起こしているのか、という点についてである。H&Mによるとそれは経済 や分配といった課題だけでなく、アイデンティティに基づいた対立というこ とになる。その要因は、管轄の急速な変化と比較的固定化しているアイデン ティティとの緊張関係によるところが大きい(2009: 13)。まず、欧州統合は それまでの国境を破壊し、移民の流出入や経済的競争を各国にもたらす。次 に、そうした状況下で、政治的起業家(

political entrepreneurs

)が世論を動 員する19)。中でも、動員に成功しているのが、ナショナルアイデンティティ を強調する政党であると

H

&

M

は指摘する(2009: 17)。このように、経済的 視点だけでなくアイデンティティ、とりわけナショナルアイデンティティの 台頭に重要性を見出している点が、

PF

と二大理論の大きな違いである。

 第3の着眼点は対立軸である。

H

&

M

によると、従来の政治的対立は経済 的な

Left

Right

に基づいていた20)。しかし、欧州統合においてより重要な 対立軸へと成長したのが、

GAL

TAN

の軸である(

Hooghe and Marks

2002;

2005; 2009; 2018)。それぞれ

Green

,

Alternative

,

Libertarian

Traditionalism

,

Authority

,

Nationalism

の頭文字から構成されている。この亀裂が

EU

では「ト ランスナショナル」に発生していると

H

&

M

は述べる(2018: 110)。それは、

EU

を通じて経済活動や人の移動や容易になったことや冷戦の終結の終結に よるものとされる。そして、先に述べたように、

H

&

M

は、ナショナルアイ デンティティを強調する

TAN

側に位置する政党が、

GAL

に位置する政党や、

旧来の軸で行動する政党と比較すると多くの支持を集めていると論じる21)

19) ここでの政治的起業家とは、政治分野において新たなアイディア等を基にリーダーとして行 動する人物を意味する。例えば、イギリス独立党の台頭に貢献し、2016年の英国における国民 投票にも大きな影響を与え、さらに2019年の欧州議会選挙では、ブレグジット党を率いたナイ ジェル・ファラージはその一人といえよう。

20) ここでのEUの文脈における経済的なRightとは、市場統合と加盟国ごとに区切られた政治 的な権威の組み合わせによって満たされる者を指す。他方、経済的なLeftとは、欧州レベル での分配能力を形成することを望む一方で、国内レベルでなされる他の社会政策や分配の抑制 は望まない者を指す(HoogheandMarks 2005: 7-8)。

(12)

 第4の着眼点は、どこで政治化が起きているのか、ということである。先 に結論を述べると、それは国内においてである。大衆は、EUが具体的に何 を行っているのかを身近に感じることが難しい22)。大衆は、国内に基盤を置 く政治家や政党、メディアを通して

EU

を認識することを半ば強制されてい る23)。その結果、国内世論の動向に重きを置く

TAN

政党が、大衆には魅力 的に映るのである。また、大衆は国内で政治的な意見を形成しそれを表明す ることによって、

EU

の動きを拘束する可能性を持つ。

 以上を踏まえると、

PF

とは、

EU

の危機によって生じる結果の相違が生 じる理由を明らかにしようとする際、一定の分析枠組みを与えてくれる理論 といえる。そして

H

&

M

は、世論を巻き込んだ政治化による欧州統合の後退 の可能性を指摘した上で、現在の欧州統合を考える際、

GAL

TAN

という 新たな対立軸も考慮する必要があると議論を展開させたのである。

2.ポスト機能主義に対する評価

 冒頭で論じたように、欧州で発生した各種の危機は、

EU

の将来について、

これまで以上に悲観的なイメージを様々な論者に植え付けた。

PF

はそのよ うな悲観的な見方を、感覚的ではなく、政治化という概念を用いて説明する ことを目指した。

 では、

PF

がこれほどまで注目を浴びた要因は何か。

21) TAN政党の例として、フランス:国民連合(旧国民戦線)、オーストリア:自由党、ハンガ リー:フィデス=ハンガリー市民同盟、ポーランド:法と正義。

22) 欧州委員会はかねてより、EU市民との距離が離れていることについて懸念をもっていた。

そこで、2012年以降(バローゾ委員会)、「シティズンダイアログ」と呼ばれる、EU高官や加 盟国の政治的指導者とEU市民による「対話」の場を積極的に設けている。

23) 近年の研究では、一部加盟国においては国内のメディアがEUイシューとナショナルイシュ ーを分けて、報道するようになり、それと共に人々も両者を分けるようになっていると指摘さ れている(Beach et al. 2018)。ただし、こうした動きがEU全体に広がり、「二次的なもの」

とみなされていた欧州議会選挙が、大衆にとってより重要な意味を持つようになるかどうかは 未知数である。いずれにせよ、 EUレベルで誰もが同じメディアを通して情報を得ることは難 しく、既存の国内メディアや政治家、政党が未だに強い影響を持っている。

(13)

 二大理論である

NF

LI

が十分に欧州統合を捉えているとは言い難いと 認識されて以降、欧州統合に関する研究は大理論の追求から離れ、枝分かれ した24)。ただし、いずれも統合の進展を前提としており、逆統合を組み込ん だ理論やアプローチは十分に構築されていないと受け止められてきた。

 こうした背景の中で提唱された

PF

は、既存の二大理論に対する挑戦とし て受け取られただけでなく、「複合危機」とも表現された状況を捉えるための、

分析枠組み形成の需要に応える形で登場した印象を与えた。すなわち、未曽 有の危機が生み出したのは、理論形成という道具作りの復興であった。

 しかし、提唱から10年が経過した

PF

は、様々な側面から批判を浴びるこ とになった。具体的には次の3側面に、その批判者を分類することができる。

それは、主に⑴ 

NF

、⑵ 

LI

、⑶ 「政治化」に焦点を当てた研究者による ものである。本節では、各分野において代表的な3者の評価を検討すること で、

PF

の限界や課題を示していきたい。

⑴ 新機能主義者による評価

 第1に、代表的な

NF

論者であるシュミッター(

Philippe C

.

Schmitter

) の視点から

PF

を検討する(2009: 211-215)。彼は、自他ともに認めるように、

新機能主義にこだわりを持っている人物である(

Niemann et al

. 2019: 51)。

 彼の結論を先に述べると、

PF

NF

を置き換えるには至らない、となる。

その根拠として次の4点が挙げられる。第1に、大衆世論の動員による政治 化という点についてである。シュミッターは、アイデンティティに訴えかけ ることで、一部の政治家や政党が台頭したと述べる

H

&

M

の問題点を指摘す る(2009: 212)。シュミッターが違和感を覚える理由は、大衆の欧州統合に 対する選好は大きく変化していないが、「ゲームが変化した」という

H

&

M

の主張の根拠が十分に示されていないからである25)

24) 例えばRosamond(2019: 87)は、既存の二大理論の限界が確認されて以降に登場したアプ ローチを、大きく次の5つに、分類した。⑴ 比較政治科学的アプローチ、⑵ ガヴァナンス アプローチ、⑶ 規範政治論、⑷ 国際関係論、⑸ 批判理論。

(14)

 第2の問題としてシュミッターは、

PF

が「屈折(

refraction

)」の問題に 対する解決策を提供できていないことを挙げる。「屈折」とは、

EU

の政治が、

国内での対立や、

EU

レベルの政治が二次的な重要性しか持たないと考える 政治家たちの願望によって、歪められることを意味する。H&Mは「屈折」

という事象を説明したが、「屈折」を生じさせない代替策を提示していない とシュミッターは指摘する。先に述べたように、メディアや政党の多くは、

国内または地域に基盤を置いている26)。さらに、言語の壁という問題もある。

ただし、この点についてはシュミッター自身も解決策を提示してないため、

EU

研究に携わる全ての者が検討すべき課題といえよう。

 第3に、シュミッターは、

H

&

M

が悲観的すぎではないかと述べる。その 理由として、制度上

EU

に対する深刻な脅威が現れていない点を挙げる。さ らに、そのような事態が発生したとしても、むしろ急速にエリートと大衆間 のギャップは解消され、統合が進展するとシュミッターは主張する(2009:

215)。

 第4に、アイデンティティについてもシュミッターは言及する。第1節で 示したように、

H

&

M

TAN

政党の台頭を示すことで欧州統合の後退を示唆 していた。一方、シュミッターは、包括的なヨーロピアンアイデンティティ が形成されない理由はないと希望的観測を述べる(2009: 215)。

 ここまで、シュミッターの

PF

に対する見解を確認してきた。全体を通じ て確認できるのは、

PF

NF

に取って代わることはないという主張である。

ただし先に述べたように、シュミッターは

NF

論者の中でも、特に新機能主

25) なお、ベルツェルとリッセは、何が変化したのかという問いに対し、「EUに関わる問題の 国内と国境を越えた政治」が変化したのであり、もはやEUの問題について人々が沈黙を保つ ことはないと回答した(Börzel and Risse 2018: 102)。

26) シュミッターは、ユーロメディアとしてFinancial TimesやEuronewsを挙げるが、これら に目を通す層は限定的であるとする(2009: 214-215)。こうしたメディアの役割や限界を指摘 する研究は、欧州議会に関するものにおいてよく見られる。その例として、欧州議会選挙を二 次的な地位にあると主張した古典的研究であるReif and Schmitt(1980)や、それが現在にお いても引き続くとするCorbett(2014)が挙げられる。なお、Hobolt(2011)は、EUに関する 情報がより与えられることによって、有権者のEUに対する姿勢は大きく変化すると論じた。

したがって、有権者に対する情報提供を強化していくことが急務である。

(15)

義に思い入れがあることを留意する必要があるだろう。また、ヨーロピアン アイデンティティの構築や欧州統合に対する彼の見方は、非常に楽観的であ るといわざるを得ない。さらに、危機の発生がエリートと大衆間のギャップ の解消をもたらす根拠も十分に示せていない。そのため、シュミッターの

PF

に対する指摘は、彼が欧州統合に対して楽観的な新機能主義「者」であ ることを前提とした上で検討しなければならない。

⑵ リベラル政府間主義者による評価

 次に、

LI

の提唱者として、欧州統合研究の発展に多大な貢献を果たした モラフチーク(

Andrew Moravcsik

)による、

PF

に対する評価を概観してい きたい(2018: 1659-1665)27)。まず、彼にとって最も重要な点は、

LI

が「指 針的な理論」としての立場を維持していることにある(2018: 1649)。

 彼は

PF

が「政治的反発の理論化」を試みたとし、欧州統合の理論に関す る議論に一定の貢献をしたと述べる。しかし、大衆による反発や政治的停滞 および後退が、

PF

の主張を裏付ける根拠にはならないとする。また、どの ような状況下において、大衆による政治化が政策形成に影響を及ぼすのかに ついて不明瞭であることも問題であると指摘する(2018: 1660)。そのためモ ラフチークは、

PF

を自立した「欧州統合の理論」とはいえないと結論付け る(2018: 1661)。

 したがって、シュミッター同様に、

PF

が重要な点において明瞭さに欠け る点をモラフチークも批判的に評価しているということができる。

PF

は、

二大理論の補完的役割を果たすと期待される。しかし、「指針的な理論」と いう観点では、

PF

は不十分な理論に留まっているといえるだろう28)

27) なお、本論文はJCMS Special Issue 2018: Liberal Intergovernmentalism and its Criticsとし て特集が組まれた中で書かれたもののひとつである。このような特集が組まれていることは、

欧州統合の理論に関する再検討が様々な分野で求められていることを示しているといえよう。

28) なおH&Mは、「指針的理論」の構築を過度に意識することによってLIがインフレするので はないかと危惧する(2019b)。

(16)

⑶ 「政治化」に焦点を当てた研究者による評価

 最後に、

PF

を有望な欧州統合の理論として前向きに受け入れつつも、そ の課題を検証したグランドら(Grande and Kriesi:以下、G&Kと表記する)

の研究を概観する(2016: 279-300)。

G

&

K

は、「ポスト機能主義者は(ほぼ)

正しかった」と論じる29)

 では何が問題なのか。彼らは、

H

&

M

が提示した政治化仮説の修正の必要 性を指摘する。それは大きく次の4点にまとめられる。⑴ 政治化に固定し たパターンはなく、むしろ政治化の要因は数多く存在している。⑵ 極右政 党が成功した例は、

H

&

M

が指摘するほどではない。⑶ 政治化によって引 き起こされるのは、欧州統合の促進や後退ではなく、「不確実性」である。

⑷ 政治化は、脱政治化(

depoliticization

)も含め、戦略的機会として認識 されなければならない(2016: 299-300)30)

 従来の

NF

PF

による政治化仮説は、十分な実証をしないまま、政治化 が統合/逆統合のいずれかを引き起こすと予測した。他方、

G

&

K

の研究は、

上の⑴から⑷に挙げたように、理論化が進む過程で捨象されがちな側面を検 証した。だが、結論が「不確実性」という言葉で示されると、その意味はあ まり見えない。不確実な理由を明らかにすること、不確実な状況下において、

政党などの集団がどのような行動をしていたのかを明らかにすることが求め られるだろう。

 以上の検討から示唆されるのは、次の2点である。まず、

PF

が訴える政 治化やアイデンティティポリティクスといった諸概念は、曖昧な根拠に基づ いていた点である。そして、

NF

LI

の研究者から、

PF

は予想以上の注目 を集め、大理論に挑戦するものとして認識されるに至った点も確認でき

29) これは、H&Mによる「新機能主義者は(ほぼ)正しかった」という論文(2005)に対する オマージュであると考えられる。

30) 危機時における拘束的不一致とエリートによる非政治化の試みについては(Schimmelfennig 2014; BörzelandRisse 2018)を参照。

(17)

31) NFやLIは、国際関係理論を出発点とし、「一般化」を目指していることが各論者の主張よ り読みとれる。一方、H&MによるPFはEUにおいて起きている新たな統合の流れを説明す るような中範囲の理論の形成を目指していた(2009: 1)。また、近年の主張においても、ほか の理論との補完的な関係を目指す立場を示している(2019a: 1128-1129)。

32) H&Mは、空席危機によってその説明能力を失った初期の新機能主義について「ばら色」な 予測であったと述べている(2009: 4)。

31)。確かに、これまで述べてきたように

PF

は様々な課題を抱えている。

とはいえ、こうした議論が活性化したことは、欧州統合を捉える新たなレン ズが求められていたことを示しているといえよう。

3.新機能主義の再検討:

逆統合の側面を想定していた新機能主義

 第2節で述べたように、

NF

LI

論者は、

PF

を欧州統合の理論として受 け入れていない。その要因として、

PF

の主張が

NF

LI

に類似しているこ とや、

PF

が2つの理論を前提とした上で形成されていることが挙げられる。

 第1節で確認したように、

NF

PF

の最大の相違点は、政治化の結果に 関する見方である。しかし、

NF

も、

PF

とは異なる観点ではあるが、危機に 伴う統合の停滞や後退を、

PF

が提唱される約40年前に予測していた。

 そこで第3節では、本稿でも繰り返し取り上げてきた、

NF

の代表的論者 でありながらも1970年に将来的な逆統合の可能性を示唆していた、

L

&

S

の 見解に焦点を当てる。本節の目的は、「ばら色な」楽観主義とされる

NF

の 慎重な側面を検討することで、新機能主義「者」の中には楽観的な者もいた が、

NF

そのものは楽観主義でも悲観主義でもないことを示すことである32)

⑴ スピルバック仮説に関する4つの観点

 

L

&

S

は、第1節で論じたように、欧州共同体における「許容のコンセン サス」を提唱したことで知られている。その一方で、欧州統合の後退を示唆 していた点は見逃されがちである(

Eurobarometer

1993:

viii

-

x

)。例えば、「共

(18)

同体の成長は、国内での対立を引き起こす可能性がある」と

L

&

S

は述べて いた(1970: 274)。さらに彼らは、共同体の権限拡大による世論の支持の変 化や、危機に伴う大衆の動員とその影響を考慮し、「許容のコンセンサス」

が変化する可能性を示唆していた(1970: 277-278)。以上の見解は、NFと いうより、むしろ

PF

に近いといえるだろう。

 こうした欧州統合の後退を示す現象はスピルバックと呼ばれる。スピルバ ックとは「特定の義務一式から離脱する状況」を指し、共同体の規則が加盟 国を拘束する力を失う状況を意味している。それは同時に、共同体の行動や 制度的な能力を減少させることを表している(1970: 137)33)

 スピルバックの発生は危機を契機とすることがほとんどである。危機を発 端として、加盟国が共同体の規制の一部を反故にしたり、共同体そのものか らの離脱を望んだりすることは十分に想定できる。

 そこで

L

&

S

は、共同体のシステム内部を原因とする危機と外部からの刺 激を要因とする危機に分類した(1970: 298)。

L

&

S

は、外部からの危機は予 測することが困難な分野であるとし、大枠の議論に留めている34)。したがっ て、本稿においても分析の対象外とする。

 それでは、共同体のシステム内部を要因とする危機、それに伴い引き起こ されるスピルバックとはどのような状況を指すのか。

L

&

S

は、⑴ 利益の 均等化、⑵ 不十分なアウトプット、⑶ 新たなグループ、⑷ 機能的なつ ながりという4つの観点から検討を加えた(1970: 298-302)。以下では、こ の4つの類型を実際の事象に当てはめることによって、スピルバック仮説の 妥当性を検証する。

33) L&Sによると、スピルバックの結果は、⑴ システム全体に対する危機、⑵ 特定のルー ルに対する危機の2つに分かれる(1970: 137)。したがって、スピルバックは必ずしもEUの 崩壊を意味するのではない。スピルバックの例としてL&Sは、石炭を共同体の管理下で置く ことに、加盟国が有用性を見いだせなくなったことを挙げる(1970: 198-216)。

34) L&Sが設定した共同体システムの外部を要因とする危機とは、国際システムや個別の国家 内部において発生する危機を指す。その具体的内容は、核戦争による大虐殺から国内での市民 革命までと幅広い(LindbergandScheingold 1970: 303)。

(19)

35) 共同体内での分裂を修正し、その一体性の維持および向上を目指して、当時のドイツ外相で あったシュレーダーは、サンクロザシオン原則を唱えた。詳細は、川嶋(2014: 180)、

Moravcsik(1998: 201-204)。

36) 払戻金は一般に、リベート(rebate)やコレクション(correction)と表記される。なお、

1975年の国民投票前後の動きについては、力久(1996)を参照。ウィルソン政権からサッチャ ー政権期におけるEU側の動きを検討したものについては、橋口(2014: 195-220); 遠藤(2014:

221-254); 山本(2019: 133-166); 黒田(2019: 167-195); 池本(2019: 196-227)を参照。フォン テンブロー欧州理事会についてはEuropean Council(1984)を参照。払戻方法を定めた決定 に つ い て はCouncil Decision 2007/436/EC, Euratom of 7 June 2007 on the system of the European Communities' own resources, OJ L 163/17.およびその改正版であるCouncil Decision 2014/335/EU, Euratom of 26 May 2014 on the system of own resources of the European Union,

OJ L 168/105.を参照。これまでの払戻額や割合についてはD'Alfonso(2016)を参照。

37) ただし、国民投票より3年が経過した2019年6月現在も、離脱の先行きは見えない。

⑵ スピルバック仮説の検証

 第1の「利益の均等化」という観点は、共同体でなされる利益配分が勝者 と敗者を生じさせていることに由来する。欧州統合によって得られる利益が 異なれば、それは多大な問題を引き起こすことが推測される。

 

L

&

S

は、60年代の事例として、西ドイツ内での共通農業政策(

CAP

)に 対する憤り、またイタリアによる予算増加の要求などを挙げた(1970: 299- 300)35)。したがって、「利益の均等化」問題は、誰もが共同体への加盟に対 する見返りを求める状態において、予算配分が不公平であると各加盟国が判 断したとき、スピルバックが生じる可能性があると示唆しているのである。

 こうした予算に関する議論は、

L

&

S

が示した初期の対立にとどまらず、

その後も引き続いた。中でも最も加熱した対立は、イギリスの予算負担額に 関する問題であろう。ウィルソン政権での再交渉にも見られるように、

EEC

へ加盟した当初から引き続いたこの争いは、サッチャー政権にて一度、払戻 金という形で解決を見た36)

 しかし、この問題は現在も世論を注目させる争点であり続けている。周知 の通り、イギリスは2016年6月23日に実施された国民投票を経て、

EU

離脱 へと歩みを進めた37)。離脱派が残留派を上回った要因としては、外部的な要

(20)

因から内政事情まで、様々な側面から指摘がなされている。

 ホボルトらによると、国民投票に大きな影響を与えた争点は、経済的利益 と移民問題であった(

Hobolt

2016;

Hobolt and Wratil

2016)。具体的には、

残留に投票した人々は

EU

を離脱した際の経済的損失を考慮し、他方離脱に 投票した人々は、

EU

に残留した場合の移民の影響を危惧していたのであっ た38)

 ラフバラー大学は、2016年5月6日から6月22日にかけてメディアに登場 していた政党および政治家を分析した(

Loughborough University

2016)。そ の結果、残留派で最も登場していたのは、当時首相を務めていたデイヴィッ ド・キャメロンであった。他方、離脱派で最も登場していたのは、同じく保 守党に所属し、2019年7月にテリーザ・メイに代わり首相に就任したボリス・

ジョンソンであった39)。ジョンソンが国民投票前に注目を浴びた理由として、

「イギリスは

EU

に毎週3億5000万ポンド支払っている」、「

EU

の代わりに国 民健康サービスに(

NHS

)に資金を」という文言を記したラッピングバスと 共に活動をしていたことが挙げられる40)

 こうした主張が前面に押し出されるということは、国家が

EU

に加盟する

38) また、離脱に投票した人々は、EUに残留する場合のコストを問題視していたことも指摘さ れている(Hobolt 2016: 1263; Hobolt and Wratil 2016)。

39) 政党別にみると、メディアにおいて最も取り上げられた政党は保守党であり、他の政党を圧 倒していた(Loughborough University 2016: Figure 2.1, Table 2.2)。メディアという観点に限定 すれば、政党間対立というよりも、保守党内での対立を通じて世論は情報を得ていたことが伺 える(Loughborough University 2016)。ホボルトもラフバラー大学による調査を踏まえた上で、

保守党と比較すると、労働党のキャンペーンに活気がなかったことを指摘する(Hobolt 2016:

1261-1262)。

40) こうした文言は、ジョンソンが所属していたグループであるVote Leaveのウェブサイトに て 確 認 で き る。 詳 細 は、Vote Leave ‘Why should we Vote Leave on 23 June?’ http://view.

publitas.com/15010/164151/pdfs/9b3d7fac7290257c2e72c7784537315b9351806e.pdf(2019 年6 月18日閲覧)。また、単一市場がいかにイギリスに悪影響をもたらしているかについても主張 し て い る。詳細は、 Vote Leave ‘The single market is failing British Business.’ http://www.

voteleavetakecontrol.org/assets-d3n8a8pro7vhmx.cloudfront.net/voteleave/pages/212/

attachments/original/1451390475/151226_Cost_of_single_market.pdf(2019年6月18日閲覧)。

なお、Vote Leaveによるキャンペーンは、払戻金を含めていなかったとBegg(2016: 46)は問 題視している。

(21)

41) 対比として「人民による統治」を意味する「インプット正統性」が挙げられる。詳細につい ては、Scharpf(1999)や遠藤(2013: 237-263)を参照。

42) Eurobarometer(2018)は他にも重要なデータを提供している。例えば、PIIGSとも揶揄さ

際、経済的損得を考えることは、自然な行為であることを示唆している。本 事例は、EUへの加盟が「損である」と、利益集団だけでなく大衆もまたそ のように感じることが、スピルバックを生じさせる可能性があることを示し ている。

 第2の「不十分なアウトプット」という観点について、

L

&

S

は次のよう に仮説を立てた。それは、EUに対する支持の低下や共同体からの離脱は、

共同体が複数の政策分野において決定力を欠くことによっても引き起こされ るということである(1970: 300)。

 アウトプットといえば、シャルプフ(

Scharpf

1999)によるアウトプット 正統性が広く知られている。彼によると、アウトプット正統性とは、「政治 的選択は、当該有権者の共通の福祉を効果的に推進する場合、そしてするか らこそ、正統」であり、端的には、「人民のための統治」と表される(1999:

6)41)。さらに、彼はアウトプット正統性の特徴として、共通の利益を挙げて おり、これは「薄い」アイデンティティ下においても構築され得ると述べる

(1999: 10-13)。したがって、加盟国レベルでは解決できない問題を共同体レ ベルで解決することができるのであれば、それは「十分なアウトプット」を 持っていると

EU

市民に判断されるだろう。

 これは、2010年代の危機の一つであるユーロ危機を事例として当てはめる ことが可能である。つまり、ユーロ危機が引き起こした

EU

の崩壊という不 安は、

EU

が十分なアウトプットをしていないと判断されたゆえに引き起こ されたと理解できる。さらに、近年、ユーロに対する信頼が回復傾向にある ことも、

EU

のアウトプットという観点から導き出すことができる。すなわ ちユーロに対する支持は、強力なヨーロピアンアイデンティティに基づいて いたのではなく、自国通貨に回帰するよりも、ユーロがもたらす利益の方が 大きいと判断されたからである(図2)42)

(22)

 第3の「新たなグループ」という観点について、

L

&

S

は、欧州統合によ って利益を得るのは国だけではないという前提を置いた上で、国家以外に利 益を得る2つグループを提示した。1つは「地域」であり、統合によって得

れたGIIPS諸国(ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル、スペイン)のユーロに対

する支持は、67%、63%、84%、77%、78%と、EU平均(62%)を上回っていた(p. 6)。ま た本稿の検討内容を越えるが、ユーロに対する支持は社会・人口統計の側面からも、興味深い データが出されている。具体的には、以下の4点が挙げられる。⑴ 若い世代(15-24歳)ほ ど支持が高く(67%)、年齢が上がるにつれて支持が下がる(55歳以上では59%)。⑵ 20歳を 越えて教育を終了した層と15歳以下で終えた層を比較すると、前者の支持率が65%であるのに 対し、後者は57%に留まっている。⑶ 経営者層と労働者層の支持を比較すると、前者の支持 率は69%であるのに対し、後者は58%に留まっている。⑷ 生活に困窮した経験がある層とな い層を比較すると、前者の支持率は48%であり、後者は63%である。⑸ 自身を上位中産階級 と見なす層、中産階級と見なす層、下位中産階級と見なす層、労働者階級と見なす層を比較し た結果、それぞれの支持率は74%、67%、58%、51%と、差が確認できる(pp. 8-9)。

図2 過去15年の単一通貨(ユーロ)と欧州経済通貨同盟に関する支持/不支持 の変遷

出典:Eurobarometer 90 (2018: 5)より筆者作成。

80%

7066 68 65 6870 69 6770 69

67 65 68 66 64 63 66 62 63 67 6769 68 68 7073 74 7475 6359 60 59 6063 61 60 61 61 60

56 58 56 53 52 53 51 52 55 5657 56 55 5860 61 61 62 3135 34 34 3331 31 33 32 33 3337 35 3740 40 40 42 41

36 36 36 37 38 36 34 33 32 32 2530

27 28 27 25 24 27 25 26 2729 26 28 29 30 2831 31

26 26 25 26 26 25

22 21 20 20 6 6 7 7 6 6 8 7 7 6 7 7 7 7 7 8 7 7 7 9 8 7 7 7 6 6 6 7 6 75%70%

65%60%

55%50%

45%40%

35%30%

25%20%

15%10%

5%0% 24秋00 2005春 2005秋 2006春 秋2006 2007春 2007秋 2008春 秋0082 2009春 2009秋 2010春 秋0102 2011春 2011秋 2012春 秋2120 2013春 213秋0 2014春 秋2140 2015春 2015秋 6春210 2016秋 2017春 7秋012 2018春 2018秋

支持する(ユーロ圏) 支持する

支持しない 分からない

支持しない(ユーロ圏)

(23)

られる利益には地域間で差が生じることがある。その例として彼らは、中央 と周縁の関係やイタリアでの南北問題などを挙げた。もう一つは、「社会集団」

という枠組みである。具体的には、経営者や実業家、貿易業者、一部農家と 比較すると、学生や労働者、小規模農家が得る利益は少ないか、または損失 が多いことを指す。そこで彼らは、不利益を被っている集団の要求に共同体 が十分に応えられない場合の政治化、それに伴う対立を危惧していた。

 こうした問題は現在、欧州統合と格差という課題として示されており、注 目を集めている。そこで本稿では、久保(2018)と田中(2019)の研究に基 づいて、当時の

L

&

S

の仮説を検証していきたい。

 久保は、

EU

域内でのジニ係数上昇を鑑み、所得格差の拡大と欧州におけ る市場統合との因果関係の解明を試みた。久保によれば、次の2つが市場統 合の結果生じた所得格差拡大の主な要因である。第1に、同一産業において、

グローバル化に成功した企業と対応できなかった企業間の格差である。それ は、企業としての収益だけでなく、その企業に雇用されている労働者間の収 入にも差を生じさせる(2018: 49-52)。

 第2の要因は、税制の市場統合が進展していないことに由来する。つまり、

EU

の「不完全な市場統合」が、所得格差の独特な要因であった。確かに、

EU

は障壁の撤廃については成功した。しかし、間接税や直接税の調和につ いては進んでおらず、「不完全な市場統合」に留まっている43)。市場統合に うまく対応することができる企業は、各国での税制度が異なることを活かし、

節税に勤しむ。グローバルな企業はこうした側面からも利益を享受すること が可能である(2018: 53-55)。

 田中による分析の焦点は格差とポピュリズムである。その結論は、次の4 点にまとめることができる。⑴ 1980年代に戦後の管理資本主義がネオリベ ラル資本主義に転換した結果、格差が拡大した44)。⑵ ネオリベラル資本主

43) こうした障壁の撤廃と再構築は、それぞれネガティブな統合・ポジティブな統合と呼ばれて いる(Scharpf 1999: 45)。

44) グローバル化や技術革新が影響を与えている点も付記されている(田中 2019: 39)。

(24)

義が過度に展開された結果引き起こされたリーマンショックやユーロ危機 は、低所得層、低学歴層、ブルーカラー層による反感を招き、ポピュリズム 政党の台頭を招いた。⑶ 

Brexit

AfD

の台頭、東欧ポピュリズムのいず れにおいても、格差問題が一因となっていた。⑷ 選挙でのポピュリズムの 台頭には、失業率の上昇が関連しており、移民・難民の問題には一般性が見 られない。

 以上を踏まえると、地域間格差や未熟練労働者の生活環境の悪化、近年の ポピュリズム政党の台頭が、欧州統合によって引き起こされた側面は否定で きないことが分かる。したがって、既存の枠組みで利益を得ることができて いないと大衆が認識しはじめ、その声を集約した「新たなグループ」が誕生 する結果、スピルバックが生じる可能性は十分にあり得る。

 第4の「機能的つながり」という観点について

L

&

S

は、その限界を次の 2つの側面から示唆していた(1970: 301-2)。第1に、欧州統合に関する既 存の経済的・政治的理論では説明できない、機能間の不連続性や遅れが存在 するということである。第2に、経済的決定に関する選択肢の広さである。

以下で述べるように、

L

&

S

は、常に経済的な利益をもたらすような選択が なされるわけではないと指摘する。

 

L

&

S

は通貨統合の実現に懐疑的であった。単一通貨の実現は、ドイツの「ヘ ゲモニー」ないしリーダーシップを、他の加盟国が受け入れることを意味す る。それを機能的な必要性だけで片付けることはできないだろう、というの が

L

&

S

の見解である45)

 こうした予想に反し、ユーロは導入された。そして先に示したように、危 機を経た現在もユーロに対する支持は力強い。ただし、ドイツの

EU

に対す る影響力という点では、必ずしも全ての加盟国が好意的に捉えているわけで はないことが示されている。例えば、ピューリサーチセンターによると、欧 州ではドイツに対して好意的に見る国がほとんどであった(

Pew Research

45) 以上の主張は、Schmitt,H.O.(1968)に基づいている。

(25)

Center

2017)46)。ところが、

EU

における政策決定については、ドイツの影 響力が強すぎるのではないかと懸念する声が多い(図3、図4)47)

 以上、

L

&

S

によるスピルバック仮説および4つの内部の危機に伴うスピ ルバックの再検討を踏まえた結果、NFは

H&M

による見立て以上に危機を 想定し、欧州統合の後退の可能性を十分に検討していたことが明らかになっ た48)。したがって、

PF

が想定していた「ばら色な」楽観主義としての

NF

は、

NF

の限定的な側面を見ていたに過ぎないといえる。

図3 ドイツに対する各国市民の印象

出典 PewResearchCenter(2017: 18, 30)より筆者作成。

21% 71%

24 53

69 69 71

72 82

90 93 76

42 21 26

22 16 18

7 6 中央値

ギリシャ イタリア ポーランド ハンガリー スペイン

まったく好意的ではない・やや好意的ではない とても好意的・やや好意的

イギリス フランス スウェーデン オランダ

46) なお、調査の対象となった国は以下の通りである。オランダ、スウェーデン、フランス、イ ギリス、ポーランド、イタリア、ハンガリー、ギリシャ、スペイン、ドイツ。

47) ドイツのヘゲモニーという観点から2010年代の危機を分析したものとしてWebber (2019)

を参照。

48) 近年では、Schmitter and Lefkofridi(2017)によっても、新機能主義から捉えるEUの崩壊 ないし逆統合を捉える研究がなされている。

(26)

おわりに

 本稿は、

EU

の危機の中で提唱された

PF

を、欧州統合研究において古典 的な理論である

NF

の視点から再検討することで、「モザイクな」欧州統合 の理論における

PF

の位置づけを探ることを目的とした。

 

NF

と同様に政治化に着目した

PF

は、大衆やアイデンティティ、新たな 対立軸としての

GAL

TAN

を提示することによって、欧州逆統合の可能性 を示唆した。しかし分析の結果、

PF

が前提とする

NF

は、

NF

の一側面のみ を捉えて議論していることが明らかになった。さらに、

PF

が強調するアイ デンティティポリティクスの要因についても、十分な検討が加えられていな いまま主張がなされていたことも指摘できる。

 まず

NF

についてだが、確かに多くの新機能主義「者」は、彼ら自身が述 べているように、欧州統合の拡大と深化に対して楽観的であり、国家に代わ る新たな政体の発展を期待していた。しかし、

NF

自体はその提唱以降最も

図4 ドイツの影響力に対する各国市民の印象

出典  PewResearchCenter(2017: 20, 40)より筆者作成。なお中央値に、ドイツの数字 は含まれていない。

10%

10% 60% 26%26%

49

49 36 55

20

20 72 22

21

21 72 44

42

42 52 55

46

46 42 33

49

49 36 88

54

54 28 66

68

68 14 1010

68

68 24 44

89

89 5 55

中央値 ドイツ

スウェーデン オランダ フランス イギリス ハンガリー ポーランド イタリア スペイン ギリシャ

強すぎる ちょうどよい 弱すぎる

(27)

批判を浴びてきたこともあり、統合だけでなく逆統合のプロセスも取り込む など、理論を修正していたのであった。したがって、PFが前提としていた

NF

像は限定的であったといえる。

 これまで論じてきたように、

PF

は不完全な理論に留まっている。しかし、

既存の欧州統合の理論において無視されがちな大衆を理論的枠組みに取り込 んだ点、そして逆統合の発生は極めて自然であることを示した点において、

今後の欧州統合の理論と

EU

の実際を繋ぐ架け橋として捉えることができる。

 最後に、本稿では十分に論じられなかったが重要な研究課題を提示するこ とによって、結びとしたい。第1に、結局アイデンティティとは何か、アイ デンティティを形成するものは何かという課題である。

H

&

M

はナショナル アイデンティティに焦点を当てることで、政治化の過程や欧州逆統合の現象 の説明を試みた。だが、先に示したように、ポピュリズム政党の台頭には格 差の問題が大きく寄与していると指摘されている。したがって、利益配分が アイデンティティの形成にかかわっている側面は否定できない。さらに、な ぜナショナルアイデンティティが形成されるのかという問いに対して、

PF

は具体的な回答を示せていない。以上のように、アイデンティティが形成さ れる要因を検討することが、今後の

PF

の研究課題として挙げられる。

 第2の課題は、

GAL

TAN

軸の今後である。

H

&

M

も指摘したように、近 年の欧州議会選挙では、

TAN

政党の台頭が顕著であった。しかしながら、

2019年6月に行われた欧州議会選挙の結果、

GAL

側、特に緑の党の台頭が 目立った。これは、

H

&

M

による

GAL

TAN

軸がより強固になっているとも 捉えられる。それでは、変化の要因は何か。こうした現象は一時的なものか。

大衆が環境問題について本格的に意識するようになったのか。または、既存 の政党に対する支持は失ったものの、

TAN

政党には投票したくないという 意思がそうさせたのか。これらの項目については更なる分析が求められるが、

いずれも今後の研究課題としていきたい。

参照

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