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ヒューリスティック問題設定法の開発
常田 稔
1.はじめに
問題設定とは,要するに,問題を解くに先立って状況を検討し,解く べき問題を状況から分離・形成する事であり,それは状況への理解を深 め,解決への見通しを得るためになされる。
筆者は,以前経営管理(management)に関する問題設定について,そ の問題解決過程への位置づけ,その諸方法のサーヴェイ,その方法開発 の困難性の分析を試みた1)。
問題設定の方法を開発する際の困難さは,結局の所,そのアルゴリズ ムの開発が不可能な事にある。
ここでは,アルゴリズミックな方法を目指さないとすれば,どのよう な考え方に基づいてどのような事を手掛かりにしどのような方法を開発 すべきかを論考し,ひとつのささやかな方法を提案し,この方法を実際 に適用した実験からその有効性と限界を検討してみたい。
2.問題設定方法の開発への準備
1)ヒューリスティックスによる問題設定
たとえばOR(Operations Research)ないしは経営科学(Manage−
ment Science)で問題を解く場合,まず解くべき問題を設定し,、次にそ の問題を表現するモデルを構築し,そのモデルから数学的に解を導出す
る。導出の際の解法はしばしばアルゴリズム(有限回の操作によって解 早稲田社会科学研究 第47号 93(H5).10 97
が得られる事が証明された手続き)の形で与えられる。つまり,アルゴ リズムはモデルを前提とする。しかるに,問題設定はモテル構築に先行 する。よって,問題設定のアルゴリズムを開発する事は原理的に不可能 である。
実際,定評あるORの教科書でもそこに問題設定の重要性の指摘はあ っても,その形式化された(アルゴリズミックな)方法の提示はなく,
問題を設定する際の『心得』もしくは「コツ」の類が語られているのが 通例である。このような心得やコツをいくら集積してみてもアルゴリズ ムにはならない。たとえその集積をひとつの手続きとして体系化したと しても,その手続きはアルゴリズムではない。そのような手続きによっ て必ず問題の設定ができるという論理的保証がないからである。しかし そのような心得やコツは我々の過去の経験に基づいて得られたものであ り,それらの中にはrこのようにすれば多分問題をうまく設定する事が できるだろう』という一種の経験的裏付けが存在するものもある。その 場合,それはひとつの知識であると言える。
アルゴリズミックな方法の開発が不可能ならば,我々はこのような知 識に開発の活路を求めるべきである。このような知識をここでは簡単に
ヒューリスティックス(heuristics)と呼ぶ事にしたい。
ヒューリスティック(ス)の意味は多義的であるが,我々はヒューリ スティックに対する「ある与えられた問題を解決するかも知れないが,
その保証はかならずしも与えないプロセス」2》というニューエルらの定 義,ヒューリスティックスに対する「問題となる領域の性質や構造につ いての経験的知識。その領域について完全な知識がない状況においてど のような行為を行うべきかについての不完全ではあるが有効な知識」3)
というミカルスキらの定義に従う事にする。
結局,問題設定の方法を開発するためには,我々はアルゴリズミック 98
ヒューリスティック問題設定法の開発 な手続きを求めようとするのではなく,問題設定に関するヒューリステ ィ:ックスを集積しひとつの手続きとして体系化したヒューリスティック
(発見的方法と訳される事が多い)なものを目指すべきである。
この事は,コンピュータの使用を前提とする方法の開発を排除するも のではない。
問題設定は具体的な状況から本質的な部分を抽出し,概念として形成 する抽象化の過程を含む。抽象化は典型的な人間の心的作用であるから,
問題設定のすべてをコンピュータに代行させる事は本来的に無理であ る。しかし,一旦抽象化された対象はそれを記号に置き換える事が可能 だから,程度の差はあれ,コンピュータによる操作が可能となる。した がって,もし問題設定の一部でも抽象化(記号化)できれば,その部分 はコンピュータに代行させる事ができる。つまり,問題設定を支援する コンピュータ・プログラムを開発する事は可能なはずである。
以下,このような考え方を基本として問題設定の方法を考えて行く。
2)状況と問題の間の循環性
「混乱していたり,曖昧だったり,また矛盾を含んでいたりする,不 明確な状況に対処しなければならぬ場合に,われわれは問題に当面す る」4)。あるいは,現実の状況が理想(目標)から乖離しており,状況に 何らかの改善を施す必要がある場合に,我々は問題に直面する。
よって,状況を観察して何が不明確か,何が改善を要するかを明らか にすれば,問題は設定できるはずである。(不明確な状況が明確になった
とき,状況を改善する手段が発見されたとき,問題は解決された事にな
る。)
しかし,「ただ漠然と疑わしいという段階では問題は成立せず,状況を 構成する要素をしらべて状況が部分的に明確にされ,それを手がかりに 解決が求められるときに状況が問題としてとらえられる」5)のである。つ 99
まり,問題を設定するためには状況の不明穂な部分,改善を要する部分 を状況全体の構造の中に捉える事が必要である。これは問題設定の前提 条件として状況への理解が必要である事を意味する。
ところが,我々は問題が何であるかを理解できたときにはじめて状況 がどのようになっているかを理解できたという事をしばしば経験してい る。それは,問題が明確になったために,状況の構造が,たとえ部分的 にせよ明確になり,そのために我々の状況への理解を進展させる事がで きたからである。結局,状況をよりょく理解するためには,それに先立 って問題を設定しておく事が必要だという事になる。
すると,問題を設定するためにはまず状況を理解する必要があり,状 況を理解するためには問題を設定する必要があるとなってしまい,明ら かに矛盾である。もしくは循環論である。
問題設定にこのような循環がつきまとうという事実は,問題は状況か ら一方向的に設定できるものではないという事を意味する。そこで問題 を設定するためには,まず状況から問題を仮に設定し,その仮に設定さ れた問題を手掛かりにして状況を理解し,その理解をもとにして問題を 設定しなおし,そうすることによって問題を次第に改良して行き、つい に解くべき問題を得るという試行錯誤的な循環過程(フィードバック・
プロセス)を採るべきである。
3)問題と解答の聞の循環性
我々は最終的には問題を解かなければならない。問題を解くためには,
当然ながら解くべき問題は何であるかを明確に理解できなければならな い。問題が分かれば半ば解けたも同然との思いは我々のよく経験する所 である。
ところで,我々は問題を解いてその解(解答)を明らかにした瞬間に,
自分の解いていた問題は何であったか理解できたという事をよく経験し
ヒューリスティック問題設定法の開発 て鴨る。これは,問題の解によって状況の不明確な部分が明確になり,
そこから状況の構造ひいては問題の構造が問題を解く前よりも明らかに なったからであろう。
.よって,ここにも問題がはっきりしなければそれを解く事はできない のに,問題を解いてみる事によりはじめて問題は何であるかがはっきり するという循環論が存在する事になる。問題を解くために問題を設定す るはずなのに,問題を設定するためには解答が必要なのである。この事 は,前項の議論と同じく,解答を全く前提としない問題設定の方法を開 発する事はできないと言い換える事ができよう。
すると,先の議論と同じくして,我々は問題と(仮の)解答の間に循 環過程を形成する事により問題の改良をすべきであるとの見通しを得た 事になる。
4)状況から問題への初期過程
それでは,これらふたつの循環過程の最初の取掛かりをどこに求める べきであろうかP
我々が問題に最初に直面するのは,状況に混乱・曖昧・矛盾等を見出 したとき,あるいは不満・不安・悩み等を見出したときである。これら は言わば問題の兆候である。我々は,このような兆候を捉え,それを手 掛かりにして状況を部分的に理解する事により,状況の不明確な部分あ るいは改善を要する部分を明確にする事ができ,そこから解くべき問題 を発見できるという事を経験的に知っている。これがここで言うヒュー
リスティックスに他ならない。
このヒューリスティックスを利用すれば,取掛かりにできる問題を仮 に設定する事ができるであろう。すなわち,これによって状況から問題 への最初の過程が形成されるのである。
問題の兆候を的確に捉えるためには,問題意識を持つ事が必要である 101
とよく言われる虚問題意識のない人は決して問題を見つける事はできな い,とも。しかし,我々はその事の重要性を認めつつ,そこに立ち入る 事はしない。問題意識を持つためにはどうしたらよいかは多分に態度・
心構えの問題であり,方法開発の研究にはかならずしもなじまないから である。
ただ,方法論的な立場からは,問題の兆候を発見するためにも発見さ れた兆候から問題を形成するためにも,問題意識を持って状況をできる だけ客観的に観察し,それをできるだけ詳しく描写する事が重要である との指摘はできよう。状況に対する豊かな描写(チェックランドの言う rich picture6))を描く事が問題を設定する上で肝要である。
5)問題から状況への回帰
仮の問題が設定されると,次にその問題をもとにして状況へ回帰し,
状況に対する理解を深める事になる。
そのためには,問題(の表現)を念頭に置いて状況全体を観察する事 により,状況の中にその問題を現出せしめた問題の背景ないしは問題の 原因を浮かび上がらせる事ができるというヒューリスティックスが利用
できる。
これをひとつの例を用いて示そう。
たとえば,我々の当面の問題(最初に仮に設定された問題)は,「この 事業所の問題はホワイトカラーの生産性が低い事だ」という経営管理の 問題であったとしよう。この問題文を念頭において(その問題を意識し ながら),その事業所の経営状態という状況をつぶさに観察してみる。す ると,多分,たとえば昔の採用計画が杜撰で人手不足の時代に採り過ぎ たホワイトカラーが今や中高年層となってダブついている,という状況 がこの問題を現出せしめた背景ないしは原因として見えて来るだろう。
このような背景・原因は,状況をただそれのみで観察しても,あるいは 102
ヒューリスティック問題設定法の開発 問題をただそれのみで分析しても決して浮かび上がっては来ない。問題 から状況を見直す事によってはじめてそれがあらわになって来るのであ る。そして,さらに興味深い事に,この背景・原因を発見したとき我々 の状況への認識・理解が以前(問題設定の前)よりも進んでいるはずで ある。こうして,我々は問題から出発して問題の背景・原因を状況の中 に発見しようとする心的作業を行う事により,状況への理解を深める事 ができるのである。同時に、このような作業によって問題から状況への 図帰過程が形成される。
すると,その過程によって得られた状況への理解の深化に応じて,改 めて状況から問題を設定し直す事が可能となる。そこにおいては,おそ らく問題は以前のものよりも改良されているだろう。この作業が状況か ら問題への再過程である事は言うまでもない。
かくして,我々は前項の過程と本項の過程を連環させる事によって,
状況と問題の間の循環過程を完成させる事ができる。
前項と本項の結果をまとめると,我々は先ず状況の中に問題の兆候を 発見し,それをもとにして問題を仮に設定し,次に問題から状況を見直 して問題の背景・原因を考える事によって状況への理解を深化させ,そ こから再び問題を設定する事によってそれを改良するという循環過程を 形成する事ができるのである。
6)疑円形による問題表現
筆者は別箇所でいかなる問題も真偽の確定した命題として表現するこ とはできないという事を指摘した7)。真偽が確定してしまえば,もはや問 題ではないからである。これは,別の見方をすると,いかなる問題も本 質的に疑問形で表現できる,あるいはいかなる問題表現も疑問形の表現 に変換できるという事を意味する。
筆者が殊更これを強調するのは,肯定形によるよりも疑問形による方 103
が問題.を鮮明に表現できるからである。
これを例によって示そう。
たとえば,先の「この事業所の問題はホワイトカラーの生産性が低い 事だ」という問題は「この事業所のホワイトカラーの生産性が低いのは 何故かP」,「如何にすればこの事業所のホワイトカラーの生産性を高め る事ができるか2」等の疑問形に変換できる。そして,両者を比較すれ ば,疑問形表現の方が問題への焦点がするどく,解くべき問題の解答へ の方向がはっきりしている,すなわち問題の内容が鮮明であるという事 に気がつくだろう。
この例ウ ら,我々は肯定形の問題から疑問形の問題への変換は一意で はないという事もわかる。この例の場合,「それでは,この事業所のブル ーカラーの生産性は高いのかP」,「他の事業所に比較すると,ホワイト カラーの生産性は本当に低いのかP」等の問題にも変換可能である。す なわち,肯定形の問題から疑問形の問題への変換により,我々は問題を 多様化させる事ができるのである。多様化の過程の中で我々は,生産的 である限り,ごく自然に内容の鮮明な問題に興味を向けるだろう。これ
も一種の問題内容の鮮明化であると言ってよい。
問題の疑問形への変換が一意ではないという事は,たとえ論理的には 変換が可能であっても,事実上は必ずしもうまくはいかないかも知れな いという事も意味する。これも例で示そう。
「それは結局教育の問題ですよ」との言を会話の一部としてよく耳に する。この問題を疑問形に変換しようとすると,先の例とは違って,誰 も変換に躊躇・困惑を感じるに違いない。それでもこの躊躇に逆らって,
たとえば「どのように教育すれば,事態は改善されるのか2」と変換し たとしよう。すると,この表現からこの問題があまりにも漠然としてい て,何を明確にしょうとしているのか,何を改善しようとしているのか 104
ヒューリスティック問題設定法の開発 はっきりしていないという事を知る。その結果,我々は「それは結局教 育の問題ですよ」なる問題が下らない問題,解くに値しない問題であっ たという事実に気がつかざるをえない。その意味において,疑問形への 変換が問題を鮮明化したのである。
実は,「それは結局教育の問題ですよ」と言った場合,単に教育に問題 がありそうだという事実を述べているだけで,状況の何が不明確なのか 何に対して改善を要するのかは全く明らかにされておらず,解答への方 向付けもないから,これだけでは問題設定にはなっていないという事を 我々はひそかに知っている。ただ,「それは結局教育の問題ですよ」とい う表現では,その事実がこの表現の中に隠れてしまっていて見えないた め,我々は平気なのである。
8)で述べるように,問題の疑問形表現は必然的に解答への方向性を 持つ。そのため,問題を疑問形に変換しようとするときに我々は無意識 的にもこの方向性を問題表現の中に含意させようとする。ところが,「そ れは結局教育の問題ですよ」にはもともとその方向性が存在しないから,
疑問形にそれを含意させる事はすぐにはできず,我々は困惑を覚えるか 変換を躊躇するのである。
このような問題にならない問題の例としては,「という風潮にも問題が ある」,「やる気の問題だ」,「問題は組織がなってない事だ」等が数えら れる。
以上から我々は,肯定形の問題を疑問形の問題に変換する事によリ,
その問題の内容を鮮明化し,問題を(問題から)改良する事ができると いうヒューリスティックスを得た事になる。
7)疑二形の間題からの状況への回帰
多様な(複数の)問題を得たとき,我々はこれらの中のどれを真に解 くべきだろうかという疑問に突き当たるに違いない。その疑問を解消す 105
るためには,問題から状況に回帰し,状況の中に真に解くべき理由を発 見する事が必要である。
逆に,あるひとつの問題が与えられたとき,何故その問題を解く必要 があるのかを考えてみる事にしよう。この考察のためには,その問題そ れ自身をいくら細かく分析しても無駄である。問題を状況の中に投影し,
問題から状況を観察しなおし,状況にその必要性を語らせる事によっτ はじめてその理由が明らかになるはずである。
いずれの場合にしても,問題から状況に回帰し,問題を解くべき理由 を明確にする心的作業を行う事によって,我々は状況への理解を深める 事ができるであろう。その際,問題の疑問形表現を念頭に置いて状況を 観察する事により,その問題を解くべき理由を浮かび上がらせる事がで
きるとのヒューリスティックスが役立つ。
そうすると,疑問形表現の問題から状況に回帰し,その問題を解くべ き理由を考えるという回帰過程を形成する事になるが,これは5)にお ける問題から状況への回帰過程とは異なる。そこでの回帰は肯定形で表 現された問題からの回帰であったからである。
8)疑問形の問題から仮の解答への過程
問題を疑問形で表現すると,その表現が我々をしてその問題に解答を 与えるよう駆り立てる。
この事を例で示す。
たとえば,先の例で「この事業所の問題はホワイトカラーの生産性が 低い事だ」という形ではなく「この事業所のホワイトカラーの生産性が 低いのは何故か2」という形で問題提起がなされた場合,我々は思わず 知らずその解答を探究し,「ホワイトカラーの数が多すぎるのだ」,「コン
ピュータのような近代的ツールが導入されていないからだ」,「一流大学 へのリクルートに失敗したためだ」等の解答(案)を出そうとするだろ 106
ヒューリスティック問題設定法の開発 う。その理由は,多分,問題の表現が疑問形の場合には問いかけの形に なっているので自ずと我々の心に答えを要求する強制力を有するが,肯 定形の場合にはあたかも情景描写のごとくになってしまい答えを求める 力が弱くなるからである。
実は,前項で述べたヒューリスティックスが成立する原因もこの事に あると思われる。疑問形表現の方が問題の解答への方向づけが強く,そ のためにその問題を解くべき理由を見つけやすいという傾向を持つから である。さらに,6)で述べた疑問形表現が問題を鮮明化するという事 実も同様である。
別の例を示そう。「ボルトが緩んでいた」という問題表現に対しては,
「締めればよい」との安易な解答がすぐに浮かぶかも知れない。しかし,
「ボルトが緩んだのは何故か〜」とそれを疑問形に変換すると,我々は ボルトの緩んだ原因を探究する方向に駆り立てられ,その技術的あるい は人為的原因を発見しようと努力するだろう。
これは別の面から見ると,問題の疑問形表現は解の導出のための手掛 かり,すなわち問題解決の手段となりうると言える。それはその通りで ある。しかし,我々のここでの関心は解の導出ではなく,問題の設定で ある。だから,我々にとってそれはどうでもよい事である。
我々にとって重要な事は,疑問形表現は肯定形表現よりも我々を駆り 立て,我々に問題の解答を容易に想起させる事ができるというヒューリ スティックスだけである。これによって,我々は問題から(仮の)解答 への過程を形成する事ができるからである。
9)仮の解答から問題への回帰
先の例題の解答中の「ホワイトカラーが多すぎる」,「近代的ツールが 導入されていない」,「リクルートに失敗した」の言明を見直してみよう。
すると,それらはいずれも一種の状況記述になっている事に気がつく。
107
それは問題とその解答の意味・本質からして当然である。もっとも,こ の状況記述はあくまでも形式上での事であり,現実の状況がそれその通
りになっているかどうかとは関係ない。
さて,問題設定は状況から出発するはずであった。してみると,我々 はこれらの状況記述を出発点として新たに問題を作り出す事が可能なは ずである。実際,たとえば「ホワイトカラーが多すぎる」からは「この 事業所の適正直間比率はどれ位かP」,「近代的ツールが導入されてない」
からは「コンピュータはこの事業所の経営を近代化させる事ができる かP」,「ホワイトカラーにワープロは必要か2」等の問題を新たに作り 出す事ができよう。
すなわち,我々は問題に対して仮の解答を想定し,それを擬似的な状 況と見倣す事により,別の問題を派生させる事ができるとのヒューリス ティックスを得たのである。
次に,「この事業所のホワイトカラーの生産性が低いのは何故かP」と
「ホワイトカラーの数が多すぎるのだ」を一組の対にし,その対を虚心 坦懐にながめてみよう。すると我々はあたかも問題から状況を思い浮か べたかのような気分になり,「いや,真に重要な問題はそんな事ではない。
この事業所の組織構造がアンバランスな事だ。この事業所の最適な組織 構造はいかにあるべきかP」との思いに到るかも知れない。
すなわち,我々は問題一解答の対からもとの問題を別の問題に変形す る事ができるというヒューリスティックスを得た事になる。
以上ふたつのヒューリスティックスにより,我々は(仮の)解答から 問題への回帰過程を形成する事ができるであろう。
前項と本項の結果を合成すれば,問題と解答の間の循環過程を完成さ せる事ができ,それによって問題を改良できるという事はもはや明らか
である。
108
ヒューリスティック問題設定法の開発
3.新しい問題設定方法の提案
1)ヒューリスティック問題設定法の構成
前説では,我々の問題設定の方法はヒューリスティック(ス)に求め るべきである事を確認し,問題は状況と問題および問題と解答の間に形 成される循環過程によって設定されるべきである事を主張し,これらの 循環過程の中で活用できるいくつかのヒューリスティックスをほぼこれ らの循環過程に沿って展開した。これによって,我々の問題設定方法を 構成する準備はできたと言えよう。
我々の立場からすれば,問題設定は,コンピュータではなく,人間に よってなされるべきである。すると,我々の方法は前節でのヒューリス ティックスを基準にして,どのような事をどのようにしてなすべきかの 人間(問題設定者)への作業手順によって構成されるべきである。そし て,それらの手順は我々の考える循環過程が完結するような順序で配列 され,体系化されるべきである。
前節で論じた事からして,もはやここでその構成・体系化の経緯を述 べる必要はあるまい。結果のみを示すと表1のようになる。また,表1 の上段を見やすくするために,フロー・チャートにすると図1のように なる。これが我々の提案するヒューリスティック問題設定法である。
表1の上段は,これで必ず問題が設定できるとの論理的保証があるわ けではないが,このように作業を進めて行けば経験的裏付けからして多 分効率的・効果的に問題を設定できるであろうという一連の作業手順で ある。その意味で,これはヒューリスティックな方法なのである。なお,
ここでは効率的を少ない時間・労力で,効果的を望ましい質でというほ どの意味で使っている。
表1の中段は,このようになった場合にはその作業を打ち切って次に 109
衰1.ヒューリスティック聞題設定法 問 題設 定 の 手 順
1.問題があると思われる状況から、問題の兆候を発見する。
(混乱、矛盾、・不満、不安、心配等を自由な形式で描写する)
2.状況から、問題を想定する。
(兆候を綴り合わせて、問題を形成する)
3.次の作業によって、問題を表現する。
(1)問題を肯定形の文で陳述する。
(2)肯定形の問題を疑問形の問題に変換する。
4.表現された問題をもとにして、次の作業によって状況を見直す。
(1>肯定形の問題に対して、その問題の背景を描写する。
(一歩退いて状況を観察し、問題を現出させた原因を考える)
(2)疑問形の問題に対して、その問題を解くべき理由を陳述する。
(一歩進んで状況を考察し、それが何故問題かを分析する)
5.疑問形の問題をもとにして、次の作業によって問題を改良する。
(1)問題に対する仮の解答を想定する。
(思いつきの、突飛な、面白い、いい加減な解答を出す)
(2>仮の解答から別の問題を派生させる。
(仮の解答を状況と見立て、新たに問題を作り出す)
(3)もとの問題を新しい問題に変形する。
(問題一解答の対をヒントにして、改めて問題を作り直す)
6.以上を念頭に置きながら発想を転換し、異種の問題を想定する。
(発想を転換し、改めて問題を探求する)
7.全体を総括し、解くべき問題を確定する。
(状況への理解と解答への見通しの程度を確認し、問題を選ぶ)
作 桑 の 停 止 基 準 1.問題の派生、変形
①わからない、不明、データ不足等の解答になったとき ②つまらない、トリビアルな問題または解答になったとき 2.状況、問題の見直し
①新鮮な感じの問題が生まれなくなったとき ②発想の転換が生じにくくなったとき
設定をビジュアル化するための記号 L一→:問題の派生、変形
中 :仮の解答の想起
↓ ;異種の問題の提起
∈:問題の背景・原因
∋:問題を解くべき理由
( ):言い換え
〔 〕:判断の根拠
〈 〉:注記、補足
110
ヒューリスティック問題設定法の開発
1.問題兆候の発見
6.発想の転換
2.状況からの間口想定
3︐問題の表現
(1}肯定形での問題表現
(2)疑問形への問題変換
(2)問題の理出陳述
8︐1臥問題の改良
(1)問題の背景描写
亀状況の見直し
(1}仮りの解答想定
(2)別の問題派生
(3)元の問題変形
ヒューリスティック問題設定法の手順フロー
移るべきであるとの(一応の)基準を示す。これはまた,図1のフロー・
チャートにおける分岐の基準でもある。本方法はアルゴリズムではない から,各作業の打切・分岐の絶対的な基準はなく,こうなったらその作 業を切り上げて他に移った方がよいとの主観的判断基準にとどまる。
111 7.閲題の決定
終 了 図1.
表1の下段は,問題の設定作業を効率的・効果的に進めて行くために,
本方法を図上に展開すべく導入された記号である。これを使うと,次項 で示す通り,作業をビジュアルな形で進める事ができ大変便利である。
2)ヒューリスティック問題設定法の実行例
前項で提案した方法によって問題は具体的にどのように設定されるか を見るために,ひとつの例題を用いて表1もしくは図1の手順に従って 方法を実際に実行してみよう(図2参照)。
ここでは,現実の経営状況における実例ではなく,経営学のケース・
メソッド教育で有名なダッシュマン株式会社のケースを例題として用い る事にする。まず,このケースの最初の部分を佐藤により引用する8,。
ダッシュマン・カンパニーは多品種の米国軍隊装備を製造する 大メーカーであった。この会社は20の工場が国の中部地方に設置 されていたが,それらの工場の資材購入の手続は,いままで1度 も完全に整備されて運営されたことがなかった。実際のところ本・
社は,たいていの事柄について各工場長に対し,それぞれのスタ ッフによって独立の単位として操業するよう奨励してきた。
1990年の末,ある重要資材を確保することがしだいに困難にな ってくると考えられたとき,社長のマンソン(Manson)氏は,社 外から購買担当重役の経歴を持つポスト(Post)氏を,新しく設 けた購買担当副社長の職に迎えた。マンソンはポストに購買業務 の組織化について大幅な権限を与え,そしてポストの補佐として ラーソン(Larson)氏を任命した。ラーソンは当社に長年勤務し,
種々の地位についてきた関係上,たいていの工場の幹部を個人的 に知っていた。ポストの任命は,会社発行の社内報に公示される と同時に,社内の公式の組織経路を通じて発表された。(以下省略。
下線は筆者)
112
ヒューリスティック問題設定法の開発 さて,この記述は我々の言う問題状況の描写そのものであると言って
よかろう。我々は,この問題状況から問題の兆候を発見し(手順1),問 題を想定してみる(手順2)事になるが,ここでは簡単のためにあまり
それには深入りせず,引用文中のそれらしい箇所である下線部をそのま ま取り挙げて最初の仮の問題とし,その肯定形による問題表現を「この 会社では,いままで1度目資材購入手続が完全に整備・運営されたこと がない」どしてみよう(手順3(1))。実は,現実の問題に対しても,最初 の問題設定はその内容にあまりとらわれる必要はないのである。
この表現を疑問形に変換する(手順3(2))と,たとえば「なぜ,資材 購入手続は完全に整備・運営されていないのかP」というようになる。
次に,設定された肯定形の問題表現に対して,一旦この問題から一歩 退いて状況を見直し(この場合,ケース文を読み直し),なぜそのような 問題が現れて来たかを考える(手順4(1))。すると,「これまでこの会社 の管理は経営学で言うところの成行き管理であった」という問題の背景 が浮かび上がって来る。疑問形の表現に対しては,一歩進んでこれを状 況の中に分析し,このような問題を解くべき理由は何かを考える(手順
、4(2))と,たとえば「戦争に備えるためには,なぜ不完全だったかを明 らかにしておく必要がある」のようになるだろう。
この段階で,我々は再び状況に回帰して発想を転換し(手順6),状況 への再観察から問題を改良して設定し直す(手順2)事が可能である。
それを試みると,「戦争に備える購買手続としては,どのようなものが適 切かP」のような新しい問題が得られよう。
さて,次に疑問形の問題表現を使って問題を見直し改良する(手順5)
事になるが,ここではこれまでに得られたふたつの疑問形表現のうち「な ぜ,資材購入手続は完全に整備・運営されていないのかP」を使う事に する。そして,この問題に対して思いつきの解答を出してみる(手順5 113
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ふ灸eゼe鞄二︾﹂㍉絢蓑週・選溺U↑訳コ馨・トノ︑盤.馨楓 ︵面蝿り噂駅︻三謬∀墨︻邑︒二肋刃り喫θ㍉鞠蓬r圏夙・曙と醤U噛嫡矯渥下﹂・く鷺嵐ヤ★肛の蟹晒し﹂回議二.コシ#Sり ︵唄囑7一︸咽圏違︶調﹁三 ︒♂や尋・£﹁← ・飛郵・N︐貸
へ−三二顧喰・ .摯2£ぐ心↑選訓砲口窪く護→﹂
︒︵製甲マへート︶︸ぎソマ← .︾顧
114
ヒューリスティック問題設定法の開発
,(ユ))と,「不明(データ不足)」,「各工場まかせ」.という仮の解答が得ら れる。
これから,手順5(2)によって問題を派生させる,あるいは手順5(3)に よってこの問題を変形してみる。これらの作業の進行につれて,次々に 発想の転換が起こり,多くの問題(の候補)を得る事ができる(図2参照)。
手順5の作業が一段落し,作業の続行に行き詰まりが感じられるよう になって新しい問題が生まれなくなった(生まれにくくなった)と判断 されたならば,発想を転換して得られた問題全体を総括し,改めて問題 を設定し直す(手順6)。すると,たとえば「購買手続きが不備である」
という風になるだろう。
以下,同じようにして作業を続けて行くと,ここでは最終的に「迫り 来る戦争に備えて重要資材を確保するための最適な方策は何かP」が得
られた(手順7)。
この最終の問題を最初の問題と比較すると,最初の問題はその内容が 曖昧で状況への理解が浅く,何を明確にすべきかあるいは何を改善すべ きかの解決への見通 しがはっきりしてし}ず,またその解決に取組むべき 魅力にも乏しいが,最終の問題はこれよりも状況への理解が進み,解決 への見通しもつき,挑戦の魅力を持ったものに変わって来ている事に気 がつくだろう。この事によって,我々はζの状況(ケース)に対するひ
とつの解くべき問題を設定できたのである。
ここで筆者が何よりも重要と考えるのは,最終的にこのような結果が 得られた事ではなく,作業の経過の中で次第に状況への理解が深まり解 決への見通しがついて行ったという事実である。したがって,この方法 の実施に当たってはその途中経過が一目のうちに確認できる事が真に大 切である。図2に示す展開図はそのためには極めて有効で,これによっ て作業を効率的に進める事ができると同時に,図上で作業の流れ全体を 115
振り返って反省する事ができる。
4.提案された方法の試行実験
前節で提案した方法が果たして有効であるか否かを確認するために,
ダッシュマン株式会社のケースを使って,筆者を実験者とし学生を被験 者とする試行実験を行ってみた。
被験者は,社会科学系3・4年生の学生(42名)で,特に経営学に精 通している者もしくは特別に問題解決技法の訓練を受けた者は含まれて
いない。被験者は2つに分け,実験群1(20名)および実験群2(22名)
とした。実験群1はKJ下等の発想法に関する簡単な訓練を受けた者か ら成り,実験群2は全くランダムに選ばれたと言ってよいメンバーから 構成されている。実験群1にはあらかじめ実験の目的・方法を知らせて
おいて実験の全過程に参加させ,実験群2には実験目的・方法を知らせ る事はせずに授業における演習の一環として実験の一部のみに参加させ 実験群1に対する対照群とした。
以下,実験経過の順を追って記述を進めて行く。
1)自由発想法による問題の設定
まず,被験者全員にケースを熟読させ,自由に考えさせて個人毎に問 題を設定させてみた(実験群1については1992年6月10日実施,所要時 間約1時間。実験群2については1993年1月14日実施,所要時間約1時 間)。その結果得られた問題の数は非常に多い(全くもしくは殆ど同義の
ものを除いて71個)。その一部を表2に示す。
この表を見ると,設定された問題に個人間もしくは実験群間で特に顕 著な質的優劣は見当たらない。ただしここでは,質的に優れているとは 状況への理解が深く解決への見通しもあるという意味である。これによ って,被験者個人間で問題設定の資質に特に顕著な差異は存在せず,ま 116
ヒューリスティック問題設定法の開発
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117
た群としても実験群1が実験群2と比較して問題設定能力に特に優れて いるわけでも特に劣っているわけでもないという事が確認された。
2)グループ討議による問題の設定
実験群1をランダムにほぼ同数のメンバーから成る4つのグループに 分け,自由討議によってグループ毎に問題を設定させてみた(1992年7
月14日実施,所要時間約2時間)。結果を表3に示す。
衰3.グループ討餓法による問題の設定
グループ名
設定された問題
A ポストを斬って、プレーンな状態に戻す。
B ポストと現場の行き違い。
C 新組織計画がうまく機能しない。
D 社長が甘い。工場の状態を把握していない。
表2と表3を比較してみると,グループで設定された問題と個人によ るものとの間に質的に顕著な差は認められない。よって,この実験では,
自由な形式のグループ討議による問題設定方法と個人の自由な発想によ るそれとの間に顕著な優劣は存在しなかったと言える。
3)KJ法による問題の設定
次に,実験群1をランダムな基準でふたつのグループに分け,それぞ れのグループにKJ法によって問題を設定させてみた(1992年6月24日 実施,所要時間約3時間)。結果のうちの一例を図3に示す。
この図をみると,2)および3)の結果よりも質的に進歩していると 言える。よって,この実験では,KJ法は自由発想法やグループ討議法
よりも問題設定方法として優れていたと結論できる。
4)ギャップの概念による問題の設定
ワインバーグらは,問題は欲求された事柄(理想の状況)と認識され た事柄(現実の状況)の間の相違(ギャップ)であるとし,問題は何で 118
ヒューリスティック問題設定法の開発
﹃
戦争による資材不足 資材の購人の困難が
¥想される 戦争がある
改革が一・方的かつ 急激だった 祉内の人事、ノウハウ の急激な変化
ポストはよそ者 新計画の採用が 急だった
上層部が一方的に 改革を進めた 今まで奨励してきた ことをむりやり変える
計画の承認が役員 だけだった
ポストが自己中心的 ノ立ち振舞った ポスト氏実は無能 2、3の工場をほお チておいたこと ポストがラーソンの Aドバイスを聞かな ゥった
ポスト氏多忙 一
手紙でしか通告しな ゥった
工場がさほど本社に 依存していない
.丁場長の意志が 本社に伝わらない 一週間前に本社に 通告していない 工場長はうそつき
主権が工場にある 工場長がポストを ウ視した 各工場が独立して
「る 図3.KJ法による問題の設定
表4.ギャップの概念による間題の設定
欲求された事柄(目標) 認識された事柄(現状)
1万ドルを越える契約については ハ告する。
従来の運営方法で行われている。
ハ告することをしていない。
言うことを本当に聞かなければい ッない(諾否をはっきりさせる)
いかにも言うことを聞きそうな手
?をポストに返している。
はっきりしていること。 工場で本当に1万ドル以下の契約
しているか不明。
正確に知る。 正確に伝わっていない。
通告を受ける。 通告を受けなかった。
通告をきちんとする。 本社への通告を怠った。
ひ ま ポストは忙しすぎる。
? 工場がフル操業している。
119
あるかを発見す.るために欲求と認識との一覧表を作る事を勧めてい る9)。そこで,実験群1に全員討議でこれを用いた問題設定を試みさせた
(1992年6月24日実施,所要時間約1時間)。実施結果を表4に示す。
この実験では,表4に見られるように,意味のある問題の設定はでき なかった。その理由としては,①被験者の資質,②方法自体の欠陥,③ 方法の訓練の不完全さ,④被験者の方法に対する興味のありよう等が考 えられる。他の方法の実施状況から判断すると,①は全くありえない。
②と③がわずかに影響しているかも知れないが,ギャップで問題を考え る事に拒否的ないしは消極的反応を示す被験者が過半数であった事から すると,④が主原因であると実験者には判断される。方法への態度を消 極的にさせるという事は,致命的な欠陥ではないにしても,ひとつの短 所であると言えるだろう。
5)提案された方法による問題設定
実験群1全員をひとつのグループとし,本方法によって問題設定する 事を試みさせた(1992年7月6日実施,所要時間約4時間)。ただし,被 験者に対しては試行に先立って本方法の解説をし(1992年7月1日実施,
所要時間約1時間),全員の一応の理解を得たが,実験者による例題の実 行例を示す事はしなかった。したがって,被験者は本方法を概念的にか つ自由に解釈し,実験者による施行例にとらわれる事なく自由に試行し た事になる。その結果の一部を図4に示す。作業の途中経過は実験者に よるものと随分違うが,それは被験者が本方法を自由に解釈したためで
ある。
最終的に得られた問題を見ると,他のどれよりも状況に対する理解が 深く,解答への方向づけがあり,問題への興味が込められている事が明 らかである。1)で確認した事から,この差異は被験者の資質の優劣に よって生じたとは考えられない。よって,方法の優劣が設定結果の差異
ヒューリスティノク問題設走法の開発 困った状況、不満足な状況、理想的でない状況の列攣
●資材購入の手続き。
●戦争。
●⊥場が20もある。
●私企業である。
●ポストの立場が微妙。
●外部からポストを招いた。
●ポストが工場をまわらなかった。
〜途中鶴 状況に対する疑問形による問題の列挙
選
もの工場があることは睦営上不利ではないか,
20もの工場があるのはなぜか, 15でもよいのではないか?
ぜ購入手続は整備されてい」なかったのか?
どうずれば、購入手綬は整備されるか?
購入手続は必要か?
整備されて運営されるということはどのようなことか?
〜途中省略 なぜポストはラーソンの意見をしりぞけたのか?
←忙しい。エキスパートのほこり。ラーソンとうまがあわない。ポストの方がえらい。
L
」ポストはいやな奴か?
←その通り。
ポストは本当にエキスパートといえるのか?
・一いえない。アメりカではエキスパートだ。
ポストが工場訪問をしりぞけた理由は妥当だったのか?
〜途中省略 最終的に得られた問題
A. システム{贈買手続き}〔斬システムの導入、設爵1 どうしたら資材購入手統きを完全に整備遅営できるか?
B.心
どうしたら上と下の心のすきまをうめ、意思の統一ができるか?
Bl会社の運営〔新計画への移行の問題〕
どうしたらスムーズに、各工場を納得させて新計画を実行できるかウ C.人事システム〔登用の問題〕
マンソンは人事、人材育成をいかに進めるべきか?
図4.ヒューリスティック間鳳設定法による聞題の設定
121
の原因であると考えるべきであり,本方法が今回の実験中最も優れた問 題設定方法であったと判断しても差支えあるまい。
6)提案された方法による間題の改良
実験群1の各個人に対して,自由発想法で設定した問題を本方法の手 順5を使って改良する事を試みさせた(1992年7月20日実施,所要時間 約1時間)。その一例を図5に示す。
この例では,明らかに問題の質の向上が見られる。この実験において,
程度の差はあるが,すべての被験者の結果にそれが槻察される事が確認 された。よって,本方法は,状況への理解を深化させ解決への見通しを
問題(肯定文による)
本社が各工場を独立の単位として撮ってさたこと。
問題(疑問文による}
なぜ本社は観工場を独立の単位として撮ってきたのか?
←社長マンソンが決めた。 アメりカだから。
L取鞭飾これを承認したのか?
←わからない.たぶんYe5。
↓すると問題は何か
各⊥場を独立の単位として撮うことはなぜいけないのか?
←新計画が行ないにくい。 別にいけないところはない.
∈たいていのことは各工場 まかせであり、独立の単 位として撮叢することを・
奨励してきた。
∋新計画の採用をうまくい1 かせるために、はっさりさ せておく必要があるから。
L紅場を独立の嘘とL吟までどおりでいいのか?
して扱うことの利点は ←No.戦争にそなえ何らかの 何か, 対策をとるべきだ。
←なし0今まで竺L,れで。。後ど。、,な。策
をとっていけばよいのか?
←まだ答えは出ていない.
↓それで結局何が問題か
今後どのように各工場を扱っていけは よいのか? ∋曖味なためはっきりさせ
↓ なければならない。
本社・各工場間の連絡を円滑(密接)にするにはどうしたら よいか?
図5.ヒュ・」リスティック問題設定涜による聞題の改良
122
ヒューリスティック問題設定法の開発 得る上で有効であると言える。
この実験においては,実験に先立って実験者による例題を示して本方 法を再度解説し,被験者の方法に対する充分な理解を得ておいた。5)
における本方法の試行および6)における試行による問題設定結果の検 討,両試行における途中経過の観察から判断すると,本方法をマスター させるためには単なる概念的説明のみでは無理で,ある程度以上の実地 訓練を必要とする事が確認された。(これは後になって別の実験でも確か められた)
したがって,もし充分な訓練の後に,5)における集団による問題設 定実験をしていれば,さらに効率的・効果的な問題設定がなされたであ ろうと推定される。
フ)実験への感想の綱査
実験群1に対して,本方法を体験しての感想をアンケートと聞き取り によって調査した(1992年7月15目実施,所要時明約2時闇)。結果につ いては,総括して次項で述べる。
8)実験からの結論
被験者の問題設定作業に対する親察,問題設定結果の検討,および実 験後の調査結果の分析を総括すると,本方法は他の方法と比較して次の 長所を持つと推定される。
①個人の資質や感性に関係なく,誰でも一定の手順で問題の設定がで
きる。
②訓練次第で,誰に対しても一定以上の問題設定能力を酒養できる。
③集団討議に方向性を与え,詞搬成果の散漫化を防ぐ事ができる。
④常に参加者への問いかけがあり,豊かな発想を促す事ができる。
⑤状況への理解を深化させ,状況の構造を明確にする事ができる。
⑥問題の内容を鮮明化でき,解決への見通しを得る事ができる。
123
⑦したがって,本方法により効率的・効果的に問題を設定できる。
一方,作業の観察,実験後の調査から本方法には次の短所があると推 定される。
①定められた手順を踏むため,自由・奔放なアイデアを出しにくい。
②手順が作業の進行全体をコントロールするため,ふと思いついた事 を活かしにくい。
③参加者に対する拘束性が強いため,参加者の自主性が発揮しにくい。
④結果を出すまでに時間がかかるため,参加者を退屈させる。
⑤手順が複雑で作業が面倒なため,方法の訓練に時間がかかる。
⑥自由度が小さいため,方法修得の度合いに結果の賃が左右される。
これらによって,本方法の有効性と限界に対する一応の見通しが得ら れたと言える。しかし,それらを真に見極めるためには,なおさらなる 試行を必要とするだろう。
5.おわりに
筆者は,この小論で筆者のささやかなアイデアに基づく問題設定の方 法を提案した。筆者自身の施行体験の反省と学生の試行実験の観察から,
この方法は使用に耐えうるものである,と筆者はひそかに考えている。
問題設定はすぐれて人間の心的営為である。それ故,それはアルゴリ ズムの介入を許さない。したがって,人間から独立して問題を設定する 方法は存在しえない。問題設定の方法とは,問題を設定しようと意図す る人間の設定への営為を支援するようなものでなければならない。筆者 は,人間が自ら状況へ問いかけたときに問題は設定できると考える。こ こで提案した方法は,人間のこの問いかけを励まし助けるものである。
問題解決技法は人間が問いから答えを出す事を援助するが,この方法 124
ヒューリスティック問題設定法の開発 は逆に答えから問いを得る事を援助する。また,この方法は人間に答え を要求するのではなく,人間に問いかけを要求する。したがって,いわ ゆるチェックリスト法などとは異なる。
この方法は,形式的理論から演繹操作によって導出されたものではな く,人間の日常的経験に基づく知識を帰納的に体系化する事によって構 成されたものである。それ故に,それはアルゴリズムではなくヒューリ スティックである。したがって,この方法のすべてをコンピュータに実 行させる事はできない。しかし,その実行過程の一部,人間の心の作業 ではなく手の作業の部分はコンピュータに代行させる事が可能である。
たとえば,設定の展開図を描く作業にコンピュータを利用することは有 効である。
この方法がヒューリスティックスに基づくという事は,それが日常的 な問題設定の際に人間が行っている事をまとめたものであるにすぎない という事を意味する。したがって,筆者はこの小論で当り前の事を語っ ているにすぎない。しかしながら,我々は本当は問題ではない問題を問 題だと当り前に言い立てる事もする。この方法にいくばくかの当り前で ない所があるとすれば,当り前とする問題表現の欺哺性をあばく力がそ の中にひそんでいるという事である。方法というものは,本来それが健 全で頑健(ロバスト)であれば,必ず当り前の様相を呈すると筆者は考 えている。ソフトシステム方法論然り,KJ法然りである。
この方法は,この小論の中で何度も示唆したように,現在未完成であ り,多くの改良を要する。筆者としては,おいおいの改良によってロバ ストなものへの完成を目指したい。
〔付記1〕この研究は,早稲田大学特定課題研究助成費(92A−199)の交付を受け てなされたものである。
〔付記2〕筆者は,試行実験に参加した早稲田大学社会科学部筆者担当の専門演 125
習「システム分析研究」受購生および英書研究受講生に深甚よりの感謝の意を 表明するものである。
注)
1)常田稔「経営管理問題の設定・定式化」r早稲田社会科学研究」第46号,1993 年,69−95頁。
2)Newe11, A., Shaw, J. C.,&Simon, H. A., Empirical exploration with
the logic theory machine:Acase history in heuristics, E. A. Fei㎎enbaum,
&J.Feldman(Eds.), Coゆμ 薦ση4疏。㎎勉McGraw−Hi11,1963, p.114.
3)R.S.ミカルスキ他編,電総研人工知能研究グループ他訳著『知識獲得用語集 と総合文献集(知識獲得と学習シリーズ8)」共立出版株式会社,1989年,53頁。
4)栗田賢三・古在由i編r岩波哲学小辞典」岩波書店,1990年,237頁。
5)栗田・古在,前掲書,同一箇所。
6)P.チェックランド著,高原康彦・中野文平監訳r新しいシステムアプローチー 一システム思考とシステム実践一」オーム社,1990年,184頁。
7)常田,前掲論文,89頁。
8}佐藤允一r問題の構造学一問題発見と解決の技法一」ダイヤモンド社,
1979年,150頁。
9)Gause, C. D.,&Weinberg, G. M., AREγ0ω〜L∫GH7S Oハ1Pπoω o・
戸8μzεo一躍履吊出)配一三.,Winthrow Publishers, Inc.,1982, p.15.
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