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「中華人民 共和 国農村 土 地請負法 」 の検 討

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〈論 説 〉

「中華人民 共和 国農村 土 地請負法 」 の検 討

土地利用 の効率化 と土地財産 の保障 の実現 の視点 か ら

柳 澤 和 也

目 次

問題 の 所在

1.「 農 村 土 地 青負 法」 の 構 成 2.「 農 村 土 地 青負 法」 の検 討 3.「 農 村 土 地 青負 法」 の課 題 結 論

附 録 「中華 人民 共 和 国農 村 土地 請 負 法」

問 題 の 所 在

2002年8月29日,「 中 華 人 民 共 和 国 農 村 土 地 請 負 法 」(以 下,「農村 土地請負 法」 と表記 す る)が 中 華 人 民 共 和 国 第9期 全 国 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 第29回 会 議 で 採 択 さ れ,即 日公 布 さ れ た 。 同 法 は,2003年3月1日 に施 行 され た ば か りで あ る 。

同 法 制 定 の 目的 と背 景,お よ び提 言 とい う か た ち で 同 法 制 定 に 強 い 影 響 を 及 ぼ し て き た 中 国 (海南)改 革 発 展 研 究 院(以 下,中 改 院 と表 記す る)に つ い て は,前 稿*1で 紹 介 し た の で,詳 細 は そ れ に 譲 る 。 本 稿 の 冒 頭 で は,最 初 に 前 稿 で は 紹 介 で き なか っ た 同 法 制 定 の 主 体 に つ い て 言 及 し, 次 い で 同 法 制 定 の 目的 の 要 点 の み に つ い て 再 確 認 し て お く こ と に し よ う。

同 法 制 定 の 主 体 は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 起 草 組 で あ る 。 「農 村 土 地 請 負 法 」 起 草 組 は,起 草 指 導 小 組 と起 草 工 作 小 組 か ら な り,前 者 が 法 案 の 目的 と概 略 を 提 示 し,後 者 が そ れ に 基 づ い て 実 際 に 草 案 を 起 草 し,前 者 が ま た そ の 検 討 を 行 う と い う分 業 体 制 を採 っ て い た と思 わ れ る*2。 起 草 指 導 小 組 と起 草 工 作 小 組 の い ず れ に も,農 業 ・農 村 問 題 の 専 門 家 が 数 多 く見 受 け ら れ る 。 「農 村 土 地 請 負 法 」 は,草 案 作 成 者 の 顔 触 れ か ら,同 法 に 先 行 して 制 定 さ れ た 農 村 の 土 地 の 権 利 義 務 関 係 を 規 定 す る 関 連 法 規 に比 して,よ り農 業 ・農 村 の 実 情 に 即 して い る こ とが 内 容 の 検 討 に 先 立 っ て 窺

え る の で あ る 。

続 い て,同 法 制 定 の 目的 は,大 別 す る と2つ に な る 。 目的 の 第 一 は,農 業 政 策 担 当 者 の 立 場 に た ち,土 地 利 用 の 効 率 化 を め ざす こ とで あ る 。 土 地 利 用 の 効 率 化 を め ざ す と は,農 民 の 自発 的 な

「土 地 請 負 経 営 権 」 の 移 転 を 間 接 的 に 支 援 し,過 度 に 零 細 化 して い る 農 業 経 営 規 模*3を 漸 次 拡 大 し て い く こ と で あ る 。 中 国 政 府 は,2001年12月 に 実 現 し た 世 界 貿 易 機 関(WTO)へ の 加 盟 に よ っ て,あ ら ゆ る産 業 分 野 で の 自 由化(輸 入量制 限の撤廃 と関税 の引 き下 げ)を 段 階 的 に す す め て い

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か な け れ ば な ら な くな っ た 。 も ち ろ ん,農 業 分 野 も例 外 で は な い 。 中 国 の 農 産 物 が 国 際 競 争 力 を 獲 得 で き る か 否 か は,ひ とえ に 農 業 経 営 規 模 の 拡 大 如 何 に か か っ て い る とい え る 。 な お,「 農 村

十 地 請 負 法 」 第16条 に 規 定 され る 「土 地 請 負 経 営 権 」 と は,請 負 契 約 に基 づ い て 請 負 受 託 方 で あ る 農 民 に 与 え られ る 請 負 地 の使 用 ・収 益 お よ び 同 権 利 移 転 の 権 利 と生 産 ・経 営 の 自主 的 組 織 お よ び 生 産 物 の 自主 的 処 分 の 権 利 で あ る。 「土 地 請 負 経 営 権 」 に つ い て の 同 様 の 規 定 は,1993年7 月 に 施 行 さ れ た 「中 華 人 民 共 和 国 農 業 法 」(以 下,「農 業 法」 と表 記 す る)第13条 に もみ ら れ る。

「農 村 土 地 請 負 法 」 制 定 の 目 的 の 第 二 は,農 民 の 立 場 に た ち,土 地 財 産 の 保 障 を実 現 して い く こ とで あ る。 農 民 が 経 営 す る 農 地 は,農 民 に と っ て 不 可 欠 の 生 産 手 段 で あ り社 会 保 障 手 段 で も あ る 。 近 年,「 三 農 」 儂 業 ・農 村 ・農民)問 題*4*5*6の 深 刻 さ が 伝 え ら れ る な か で,国 家 が 法 規 に よ っ て 農 民 の 「十地 財 産 権 」 を強 化 し て い くこ と は,当 然 と られ る べ き対 応 で あ る とい え る だ ろ う*7。 ま た,農 民 の 「土 地 財 産 権 」 の 強 化 は,「 土 地 請 負 経 営 権 」 の 移 転 を 軸 に し た 農 業 経 営 規 模 拡 大 の 前 提 で もあ る 。

本 稿 の 目 的 は,上 記 主 体 に よ っ て 上 記2つ の 目的 を達 成 す べ く制 定 され た 「農 村 土 地 請 負 法 」 を検 討 し,現 代 中 国 農 村 に お け る 同 法 の 意 義 と課 題 を社 会 経 済 学 の 見 地 か ら明 確 に す る こ と で あ る 。 な お,本 稿 末 に 「農 村 土 地 請 負 法 」 の 全 文 を訳 出 して お くの で,本 稿 で 言 及 し な い 同 法 の 仔 細 あ る い は 全 体 に つ い て は,そ ち らを 参 照 さ れ た い 。

1.「 農 村 土 地 請 負 法 」 の 構 成

「農 村 土 地 請 負 法 」 は,以 下 の よ う に,全5章 全65条 で 構 成 され る。

第1章 総 則(第1条 〜第11条)

第2章 家 庭 請 負(第12条 〜第43条)

第1節 請 負 委 託 方 と請 負 受 託 方 の権 利 と義 務(第12条 〜 第17条) 第2節 請 負 の 原 則 と手 続(第18条 〜第]9条)

第3節 請 負 期 限 と請 負 契 約(第20条 〜 第25条) 第4節 土 地 請 負 経 営 権 の 保 護(第26条 〜第31条) 第5節 十 地 請 負 経 営 権 の 移 転(第32条 〜第43条) 第3章 そ の 他 方 式 の 請 負(第44条 〜第50条) 第4章 争 議 の 解 決 と法 律 責 任(第51条 〜 第61条) 第5章 附 則(第62条 〜 第65条)

同 法 一 読 後 の 筆 者 の 印 象 は,同 法 に は 中 改 院 が 提 言 して きた 事 柄*H*9*10*11の か な りの 部 分 が 反 映 さ れ て い る,と い う も の で あ っ た。 中 改 院 の 提 言 は,1980年 代 か ら1990年 代 の 農 村 で 土 地 の 権 利 義 務 関 係 を め ぐ っ て 生 じて い た 実 際 の 諸 問 題 を 整 理 ・分 析 し た う え で な さ れ て き た た め に9実 に 説 得 力 が あ っ た 。 そ れ ゆ え,全 国 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 の も と に組 織 さ れ た 「農 村 十 地 請 負 法 」 起 草 組 も,中 改 院 の 提 言 を 積 極 的 に 採 用 した の で あ ろ う*12。 した が っ て,同 法 は,

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「中華 人民共和 国農村 土地 請負法」 の検討61 土 地 利 用 の 効 率 化 と土 地 財 産 の 保 障 とい う2つ の 目 的 を実 現 す る う え で 生 じ て い る 係 争 と今 後 生

じ る で あ ろ う係 争 に た い して,法 律 の 形 式 上 は 相 当 程 度 対 応 で き る よ う に な っ て い る と判 断 さ れ る 。

2.「 農 村 土 地 請 負 法 」 の 検 討

そ れ で は,検 討 が 必 要 と思 わ れ る 「農 村 土 地 請 負 法 」 の 条 文 を み て い く こ と に し よ う。

囲 「土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 の 関係

第1条 は,同 法 制 定 の 目的 を 明 らか に して い る。 す で に,筆 者 は,同 法 制 定 の 目的 は,土 地 利 用 の 効 率 化 と土 地 財 産 の 保 障 の2つ で あ る と述 べ た が,第1条 で は,そ れ を 以 下 の4つ の 文 言 で 表 現 して い る。 第 一・は,家 庭 請 負 経 営 を基 礎 とす る系 統 的 に 分 か た れ た 双 層 経 営 体 制*13を 安 定 か つ 完 全 な もの とす る こ と。 第 二 は,長 期 的 か つ 保 障 を完 備 し た 「土 地 使 用 権 」 を 農 民 に 付 与 す る こ と。 第 三 は,農 村 の 土 地 の 請 負 当 事 者 の 合 法 的 利 益 を保 護 す る こ と。 第 四 は,農 業 ・農 村 経 済 の 発 展 と農 村 社 会 の 安 定 を促 進 す る こ と,で あ る 。

こ こで は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 制 定 の 目的 の 第 二 に あ げ られ た 文 言 に注 目 した い 。 「農 村 土 地 請 負 法 」 制 定 の 目 的 の ひ とつ が 完 全 な る 「土 地 使 用 権 」 を 農 民 に付 与 す る こ と に あ る と は,す な わ ち,完 全 な る 「土 地 使 用 権 」 を 農 民 に付 与 す る た め に は,「 土 地 請 負 経 営 権 」 の 確 定 ・強 化 が 不 可 欠 で あ る,と い う こ と を意 味 して い る*14。 中 改 院 は,長 期 的 か つ 保 障 を完 備 し た 「土 地 使 用 権 」 を農 民 に 付 与 せ よ とい う提 言 を こ れ ま で 一 貫 して 主 張 し て き た の で,こ の 文 言 が 「農 村 土 地 請 負 法 」 に採 用 さ れ た こ と 自体 は と りた て て 奇 異 な こ とで は な い 。 しか し,「 農 村 土 地 請 負 法 」 制 定 の 目的 と して 上 述 の 点 が 掲 げ ら れ て い る 以 上,「 土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 の 関 係 に つ い て は,若 干 の 解 説 と検 討 を 加 え て お く必 要 が あ る だ ろ う。 両 権 利 は,1987年1月 に 同 時 に 施 行 さ れ た2つ の 法 律 に よ っ て,現 代 中 国 の 法 体 系 の な か に は じめ て 登 場 した 権 利 概 念 で あ っ た*15。

1987年1月 時 点 に お け る 「土 地 請 負 経 営 権 」 の 根 拠 法 は,「 中 華 人 民 共 和 国 民 法 通 則 」(以 下,

「民法通則」 と表記す る)と 「中華 人 民 共 和 国 土 地 管 理 法 」(以 下,「土地 管理法」 と表記 す る)で あ っ た (1993年7月 以降 になる と,こ の2法 に 「農業 法」が加 わ るこ とになる)。 「民 法 通 則 」 は,第80条 第2項 で,「 公 民 ・集 団 は,法 に 基 づ い た 集 団 所 有 地 の 請 負 経 営 権 あ る い は 国 家 所 有 地 で あ る が 集 団 で 使 用 す る 土 地 の 請 負 経 営 権 に つ い て 法 律 の 保 護 を 受 け る 」 と定 め て い る 。 「民 法 通 則 」 と は,「 民 事 立 法 に お け る い くつ か の 共 通 の 原 則 ・制 度 は単 行 法 に よ っ て 個 別 に規 定 す べ きで は な い とい う 考 え に 基 づ き」*16,後 に 「民 法 典 」 を構 成 す る で あ ろ う 法 律 に 共 通 す る 原 則 ・制 度 の み を と り だ して(先 取 りして)制 定 さ れ た 法 律 で あ る(現 代 中 国の立 法機 関は,改 革 開放 路線 へ の転換 以後 も,政 治 ・経 済 ・社会の現状 に即 した 「民法典」 の制 定 にむけて努力 を重 ねて きた。 しか し,1982年5月,経 済体制 改革 の さなか にある 自国の現 状 におい て 「短期 間 に完備 され た民法典 を制 定す る こ とはで きない」*17と い う 立場 を明 らか に し,民 事 に関する諸 々の単 行法 を個 別 に制 定 した後,そ れ らを 「民 法典」 に統 合 して い く方針

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を宣 言 したの で ある*18。なお,「民 法典(草 案)」 の初案 は,2002年12月23日,第9期 全 国人民 代 表 大会 第 31回 会議 に提 出 され てお り*19*2〔},「民法典」 は,十 分に審 議 を重 ね た うえで,2010年 を 目途 に制定 され る予 定であ る)。 他 方,「 土 地 管 理 法 」 は,第12条 第3項*21で,「 土 地 の 請 負 経 営 権 は,法 律 の 保 護 を 受 け る 」 と定 め て い る。 「十 地 管 理 法 」 と は,国 家 が 国 土 全 体 の 管 理 ・保 護 ・開 発 ・合 理 的 利 用 をす す め る 目 的 で 制 定 した 法 律 で あ る。 「土 地 の 請 負 経 営 権 」 は,こ の よ う に,ま っ た く異 な る 目 的 の た め に制 定 さ れ た 「民 法 通 則 」 と 「土 地 管 理 法 」 を 根 拠 法 と して,家 族 農 業 経 営 を支 え る 権 利 と し て 成 立 した の で あ っ た。

あ ら た め て 言 及 す る まで も な く,本 稿 で 検 討 され る 「農 村 十 地 請 負 法 」 は,「 民 法 通 則 」 第80 条 第2項 と 「土 地 管 理 法 」 第12条 第3項(現 第14条 第1項)で 定 め られ た 「土 地 の 請 負 経 営 権 」

を 専 門 的 に 規 定 す る た め の 法 律 と して,施 行 さ れ た もの で あ る 。 同 法 は,「 民 法 通 則 」 と 「土 地 管 理 法 」 の 施 行 か ら16年 の 歳 月 を経 て よ うや く施 行 され る に 至 っ た 。 な お,「 農 村 土 地 請 負 法 」 で は,「 土 地 の 請 負 経 営 権 」(「土 地的承包 経営権」)を 「土 地 請 負 経 営 権 」(「土 地承包 経営権」)と 表 記 す る よ う に な っ て い る こ と を つ け 加 え て お こ う。

こ れ に た い して,1987年1月 時 点 に お け る 「土 地 使 用 権 」 の 根 拠 法 は,「 十 地 管 理 法 」 の み で あ っ た 。 「土 地 管 理 法 」 は,第11条*22で,「 土 地 の 所 有 権 と使 用 権 は,法 律 の 保 護iを受 け る」

と定 め て い る 。 実 は,「 十 地 管 理 法 」 は,「 土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 の2つ の 権 利 に言 及 し た 法 律 で あ っ た の で あ る 。 翌 年4月 に な る と,「 中 華 人 民 共 和 国 憲 法 」(1982年12月 に新 た に 制 定 され た 「憲法」 であ る。 以 下,「憲法」 と表記 す る)も,「 土 地 管 理 法 」 の 根 拠 法 の ひ とつ に加 わ る こ と に な っ た*23。 「憲 法 」 は,こ の と き第10条 第4項 に,「 土 地 の 使 用 権 は,法 律 の 規 定 に基 づ い て 譲 渡 す る こ とが で き る 」 と い う 一 文 を書 き加 え た。 「憲 法 」 は,「 土 地 の 使 用 権 」 が 第 三 者 へ 譲 渡 可 能 で あ る こ と を 「土 地 管 理 法 」 に 先 行 して 認 め た の で あ る。 「十 地 管 理 法 」 で 「十 地 使 用 権 」 の 第 三 者 へ の 譲 渡 を 認 め る 条 文 が 第2条 第4項*24と して 新 設 さ れ た の は,同 年12月 の 同 法 改 正 時 で あ っ た 。

以 上 で 紹 介 し た よ う に,「 土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 はf「 民 法 通 則 」 と 「十 地 管 理 法 」 が 施 行 さ れ た1987年1月 以 後,現 代 中 国 の 法 体 系 の な か に 登 場 す る よ う に な っ た 。 農 業 生 産 責 任 制(「 包 産到 戸」)の 導 入 か ら農 家 経 営 請 負 制(「 包 幹到 戸」)へ の 移 行 と と も に 成 立 ・強 化 ・ 拡 大 し て きた 農 民 の 「耕 作 権 」 に は じ ま る 諸 権 利 は,こ こ に して よ う や く,明 確 な 法 律 的 根 拠 を 与 え られ た の で あ っ た 。 しか し,両 権 利 の 登 場 は 同 時 に,新 た な 問 題 を もつ く りだ す こ と に な っ た 。 実 は,「 土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 の い ず れ に し て も,明 確 な 定 義 が 与 え ら れ て い な か っ た た め に,現 代 中 国 の 法 学 者 と 農 業 政 策 担 当 者 は そ れ ぞ れ,「 土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 は い っ た い ど の よ う な 関 係 に あ る の か,ま た 両 権 利 の い ず れ を も侵 害 す る こ と な く農 村 の 土 地 問 題 を 処 理 す る に は 具 体 的 に ど うす れ ば よ い か,と い う 疑 問 に 突 き あ た ら ざ る を え な く

な っ た の で あ る 。 現 代 中 国 の 法 学 者 は,自 ら発 し た 問 い か け に た い して,法 規 内 と法 規 間 の 整 合 性 が 失 わ れ な い よ う に 何 ら か の 回 答(解 釈)を 用 意 す る 必 要 に 追 られ,基 層 の 農 業 政 策 担 当 者

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「中華 人民 共和 国農村 土地請 負法」 の検 討63 は,法 学 者 の 自問 自答 を遠 目 に しつ つ も,両 権 利 の 存 在 を 独 自の 解 釈 を 交 え な が ら農 民 に 理 解 し て も ら う広 報 活 動*25に 努 め る必 要 に 迫 られ た の で あ っ た 。

な お,「 土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 の 関 係 に つ い て は,現 代 中 国 の 法 学 界 で は 大 別 す る と2つ の 見 解 が 示 さ れ て お り,現 在 に 至 る ま で 共 通 見 解 を み い だ す に は 至 っ て い な い*26。 両 権 利 は,法 律 の 文 面 を み る か ぎ りで は,相 互 補 完 関 係 に あ る と も上 位 下 位 関 係 に あ る と も解 釈 さ れ て し ま うの で あ る 。 現 代 中 国 の 法 学 者 の あ い だ で 「土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 の 関 係 に つ い て 異 な る 解 釈 が 相 対 す る 理 由 は,両 権 利 に 明 確 な 定 義 が 与 え ら れ て い な か っ た こ と に 加 え,「 土 地 使 用 権 」 の 成 立 時 点 か らの 根 拠 法 で あ る 「土 地 管 理 法 」 そ れ 自体 が 農 村 公 有 地(集 団所 有地)の 権 利 義 務 関 係 を確 定 ・処 理 す る こ と よ り も都 市 国 有 地 の 権 利 義 務 関 係 を確 定 ・処 理 す る こ と を 主 眼 と し て 制 定 さ れ た か らで あ ろ う。 都 市 国 有 地 に お け る 権 利 義 務 関 係 の 確 定 と処 理 は, 都 市 行 政 府 が1980年 代 半 ば に 「都 市 建 設 の 財 源 確 保 と 国 家 財 政 の 再 建 」 を 図 る た め に従 来 は 徴 収 して い な か っ た 地 代 を 国 有 企 業 や 集 団 所 有 企 業 に 求 め て い く方 針 に 転 換 し た こ と に さ い して,

ま た 外 資 企 業(合 弁 ・合作 ・独 資の 「三資企 業」)へ の 用 地 提 供 を は じめ る こ と に さ い して,早 急 に 対 応 を 迫 ら れ て い た 課 題 で あ っ た*27*28*29。 「土 地 管 理 法 」 が 都 市 国 有 地 の 権 利 義 務 関 係 の 確 定 と処 理 を優 先 し て い る こ と は,「 土 地 使 用 権 」 の 権 利 義 務 関 係 を具 体 的 に 規 定 す る 実 施 条 例 の 制 定 を約 束 し た 同 法 第56条 に 沿 っ て,都 市 国 有 地 の 「土 地 使 用 権 」 の み に 限 定 さ れ た 実 施 条 例 で あ る 「中 華 人 民 共 和 国 都 市 部 国 有 地 使 用 権 の 設 定 と譲 渡 に 関 す る 暫 定 条 例 」 を 「土 地 管 理 法 」 施 行 か ら わ ず か3年 余 り後 の1990年5月 に 早 々 に 公 布 ・施 行 させ た こ と に も垣 間 み る こ と が で き

る 。 こ れ に た い し て,農 村 公 有 地(集 団所有 地)の 「土 地 使 用 権 」 を も 包 括 し た 実 施 条 例 で あ る ド中 華 人 民 共 和 国 土 地 管 理 法 実 施 条 例 」 が 公 布 さ れ た の は,「 十 地 管 理 法 」 の 施 行 か ら約12年 後 の1998年12月,施 行 は 翌 年1月 で あ っ た。 こ う し た 経 緯 を み る と,「 土 地 管 理 法 」 に お け る 農 村 公 有 地(集 団所有 地)に 関 す る規 定 は,同 法 の 対 象 が 現 代 中 国 の 国 土 全 体 に 及 ぶ こ とが 望 ま し

い と考 え られ た 結 果,形 式 を 整 え る必 要 上 か らつ く りあ げ られ た もの で あ る こ とを 強 く印 象 づ け る の で あ る 。

と もあ れ,「 土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 の 曖 昧 な 関 係 は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 と並 行 し て 審 議 さ れ,な お 審 議 の 途 上 に あ る 「中 華 人 民 共 和 国 物 権 法(草 案)」(以 下,「物権 法(草 案)」 と表 記す る)か,あ る い は 先 述 した 「民 法 典(草 案)」 の 「物 権 篇 」 が 採 択 さ れ た段 階 で,は じめ て 決 着 す る こ と に な りそ う で あ る*30。 「農 村 土 地 請 負 法 」 の 検 討 と い う 本 稿 の 目 的 か ら は 逸 脱 す る が,ど の よ う な 内 容 の 「物 権 法(草 案)」 が 起 草 さ れ て い る か に つ い て,こ れ ま で の 経 緯 を た ど

りな が らや や 詳 し く紹 介 して お く こ と に した い 。

「物 権 法(草 案)」 の 作 成 は,1998年3月,立 法 機i関が9名 の 民 法 学 者 と専 門 家 か ら な る 民 法 起 草 工 作 小 組*31に 「物 権 法(草 案)」 の 起 草 を 付 託 した こ と に は じ ま る 。 し か し,民 法 起 草 工 作 小 組 内 で は,作 成 さ れ るべ き 「物 権 法(草 案)」 の 構 成 を め ぐ っ て 当 初 か ら意 見 が 対 立 して い た 。 民 法 起 草 工 作 小 組 は,こ の 対 立 を小 組 内 で 拙 速 に 解 消 す る必 要 は な い と い う判 断 の ゆ え か,1998

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年3月25日 か ら翌26日 に か け て 行 わ れ た 会 議 の 場 で,と く に対 立 す る 意 見 を 述 べ た2人 の 人 物 の そ れ ぞ れ に 「物 権 法 嘩 案)」 の 作 成 を委 ね る こ と を 決 め た 。2入 の 人 物 は そ れ ぞ れ,協 力 者 と と も に,「 物 権 法(草 案)」 を 作 成 し て い っ た の で あ る*32。 一 方 の グ ル ー プ の 「物 権 法(草 案)」

は,梁 慧 星(中 国 社 会 科 学 院 法 学 研 究 所 教 授)ほ か8名*33に よ っ て1999年10月 に 提 起 さ れ た*34*35。 も う… 方 の グ ル ー プ の 「物 権 法(草 案)」 は,王 利 明(中 国 人 民 大学 法 学 院 教授)ほ か5 名*36に よ っ て2000年12月 に 提 起 さ れ た*37。 梁 慧 星 は,前 者 を 「社 科 院 草 案 」,後 者 を 「人 民 大 学 草 案 」 と 呼 ん で い る の で,本 稿 も こ れ に 倣 う こ と に し た い 。 こ こ で は,「 社 科 院 草 案 」 と

「人 民 大 学 草 案 」 の 相 違 点 を 「土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 へ の 対 応 と い う一 点 に 限 定 し て 言 及 して お く こ と に す る 。

「社 科 院 草 案 」 の 特 徴 は,3点 に 絞 られ て い た 。 特 徴 の 第 一 は,第3章 の 第196条 か ら 第229 条 を 「基 地 使 用 権 」,第4章 の 第230条 か ら 第259条 を 「農 地 使 用 権 」(梁 慧 星 は,「農 地使 用 権」

は,rE体 国民法 の永 小作権 に相 当す る」 と述 べて いる)と い う権 利 に あ て て い た こ と で あ る 。 「基 地 使 用 権 」 は,「 他 人 が 所 有 す る 土 地 に 建 築 物 あ る い は そ の 他 の 付 着 物 を建 造 して 所 有 す る た め に 他 人 の 土 地 を 使 用 す る 権 利 」(第196条),「 農 地 使 用 権 」 は,「 栽 培,養 殖,牧 畜 等 の 農 業 目的 で 国 家 あ る い は 集 団 が 所 有 す る 農 用 地 に つ い て 占 有,使 用,収 益 を な す 権 利 」(第230条),と 定 義 さ れ て い た 。 現 在 の 「土 地 管 理 法 」 は,第4章 の 第31条 か ら第42条 で 耕 作 地 に つ い て,第5章 の 第43条 か ら第65条 で 建 設 用 地 に つ い て 規 定 して い るが,第3章 の 第17条 か ら第30条 で 土 地 利 用 全 体 計 画 を 定 め て い る よ う に,非 農 用 地 の 「土 地 使 用 権 」 と農 用 地 の そ れ と を 質 的 に 区 別 して い な い 。 し か し,「 社 科 院 草 案 」 は,非 農 用 地 の 「土 地 使 用 権 」 を 「基 地 使 用 権 」,農 用 地 の 「十 地 使 用 権 」 を 「農 地 使 用 権 」 と して 区 別 し,そ れ ぞ れ に 異 な る性 質 を与 え て い た の で あ る 。 特 徴 の 第 二 は,第236条 で 「農 地 使 用 権 」 の 最 長 設 定 期 限 を50年 と 定 め,さ ら に 第252条 で そ の 自 動 的 延 長 を 認 め る 条 文 を 設 け て い た こ と で あ る*38。 「社 科 院 草 案 」 は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 の 規 定 よ り も は る か に 強 い 権 利 を 農 地 使 用 権 者 に 与 え て い た と い え よ う。 特 徴 の 第 三 は,244条 で

「農 地 使 用 権 者 は 土 地 を 請 負 に だ し て 他 人 に 経 営 さ せ る こ とが で き る」(傍 点 筆 者)と 定 め て い た よ う に,現 在 の 「土 地 請 負 経 営 権 」 は,農 地 使 用 権 者 と農 業 経 営 を代 行 す る 第 三 者 と の あ い だ で 結 ば れ る 請 負 契 約 に 基 づ い て 発 生 す る農 業 経 営 代 行 者 の 権 利 と して 位 置 づ け る つ も りで あ っ た と推 察 さ れ る こ と で あ る*39。 こ う し た 「社 科 院 草 案 」 の 「土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 に た い す る対 応 の 背 景 に は,農 村 の 土 地 に 関 す る 「現 行 法 律 ・法 規*40の 相 互 不 協 調 ・重 複 規 定 ・相 互 抵 触 」 判1を 解 消 す る 狙 い と一 部 地 方 で 実 際 に 行 わ れ て い る 措 置*42を そ の ま ま肯 定 し よ う とい う狙 い と が み て とれ た 。 した が っ て,「 社 科 院 草 案 」 を 骨 格 に し た 「物 権 法(草 案 月 が 採 択 さ れ る こ と に な れ ば,「 土 地 管 理 法 」 と 「農 村 土 地 請 負 法 」 の 位 置 づ け は,「 物 権 法 」 体 系 の な か で 前 者 が 一般 法,後 者 が 特 別 法 と して 確 定 さ れ る こ と に な っ た と い え る 。

こ れ に た い し て,「 人 民 大 学 草 案 」 は,「 社 科 院 草 案 」 と は 大 き く異 な る 構 成 を と っ て い た 。

「人 民 大学 草 案 」 は,「 用 益 物 権 」 につ い て 規 定 し た 第3章 第1節 の 第233条 か ら第270条 を 「土

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「中華 人民 共和 国農村 土地 請負法」 の検討65 地 使 用 権 」,同 第2節 の 第271条 か ら第297条 を 「農 村 土 地 請 負 経 営 権 」,同 第3節 の 第298条 か

ら 第309条 を 「宅 地 使 用 権 」 に あ て て い た 。 「人 民 大 学 草 案 」 で は ,「 土 地 使 用 権」 は,「 開 発 利 用,生 産 ・経 営,社 会 公 益 事 業 を 目的 と し て 国 家 所 有 地 と集 団所 有 地 に 建 築 物 お よ び そ の 他 付 着 物 を 建 造 し 占 有,使 用,収 益 を な す 権 利 」(第233条),「 農 村 土 地 請 負 経 営 権 」 は,「 栽 培,放 牧 等 の 農 業 生 産 を 目的 と して 集 団 所 有 地 に つ い て 占 有,使 用,収 益 を なす 権 利 」(第271条),「 宅 地 使 用 権 」 は,「 都 市 と農 村 の 居 住 者 が 国 家 所 有 地 あ る い は 集 団 所 有 地 に 住 居 を建 設 して 居 住 す る 権 利 」,と 定 義 し て い た(第298条)。 ま た,「 人 民 大 学 草 案 」 は,「 土 地 使 用 権 」,「農 村 土 地 請 負 経 営 権 」,「宅 地 使 用 権 」 の 最 長 設 定 期 限 に つ い て も,そ れ ぞ れ 異 な る 年 数 を設 定 して い た 。 「土 地 使 用 権 」 は,国 家 所 有 地 と集 団所 有 地 で 区 分 さ れ,前 者 は 「土 地 管 理 法 」 等 の 規 定 に 倣 う の で 現 行 で は30年,後 者 は 契 約 当 事 者 の 協 議 に よ っ て 随 意 の 年 数 と な っ て い た(た だ し,永 久 は不可 とされていた)(第241条 ・第243条)。 「農 村 土 地 請 負 経 営 権 」 は,50年 で あ っ た(第274条)。 「宅 地 使 用 権 」 の 最 長 設 定 期 限 は,と くに 定 め られ て い な か っ た 。 「人 民 大 学 草 案 」 で は,権 利 の 定 義 お よ び最 長 設 定 期 限 の 相 違 か ら明 ら か な よ う に,「 土 地 使 用 権 」,「土 地 請 負 経 営 権 」,「宅 地 使 用 権 」 は,土 地 利 用 の 目 的 に よ っ て 明 確 に 区 別 さ れ た 権 利 概 念 と な っ て い た の で あ る 。 王 利 明 とか れ と と も に 「人 民 大 学 草 案 」 の 起 草 に あ た っ た 房 紹 坤(姻 台大 学 法学 院教 授)に よ る と,「 人 民 大 学 草 案 」 が 「土 地 使 用 権 」 と 「土 地 請 負 経 営 権 」 を 並 列 す る 理 由 は,現 代 中 国 で は これ ま で 農 家 経 営 請 負 制 を 定 着 させ 安 定 させ る た め の 一 連 の 政 策 と法 律 を数 十 年 に わ た っ て 実 施 ・施 行 し て き て お り,「 土 地 請 負 経 営 権 の 概 念 を取 り消 す こ と は,こ れ まで の 一 連 の 制 度 を完 全 に 廃 止 す る こ と に 等 し く,実 践 の な か で は お そ ら く不 可 能 で あ る」*43*44,と 考 え た た め で あ る 。 要 す る に,

「人 民 大 学 草 案 」 は,度 重 な る 権 利 概 念 の 変 更 は,農 村 に 無 用 の 混 乱 を もた らす 危 険 性 が 高 い ゆ え に,両 権 利 を並 列 す る 形 態 を と ら ざ る を え な か っ た とい うの で あ る。

そ の 後,2つ の 「物 権 法(草 案)」 は,法 制 工 作 委 員 会 民 法 室 で検 討 さ れ,草 案 の 一 本 化 が は か られ た 。 一 本 化 さ れ た 草 案 は,「 法 工 委 民 法 室 草 案 」 と して2001年5月22日 か ら29日 に か け て 開 催 され た 物 権 法 専 門 家 討 論 会 で 提 起 され て い る 。 「社 科 院 草 案 」 の 提 起 か ら は1年7ヵ 月 後,

「人 民 大 学 草 案 」 の 提 起 か ら は5ヵ 月 後 の こ とで あ っ た*45。 梁 慧 星 が 紹 介 して い る 「法 工 委 民 法 室 草 案 」 の構 成 を み る と,「 法 工 委 民 法 室 草 案 」 に お け る 「土 地 使 用 権 」 と 「土 地 請 負 経 営 権 」 の 位 置 づ け は,「 人 民 大 学 草 案 」 を 踏 襲 す る もの で あ っ た 。 「法 工 委 民 法 室 草 案 」 で は,第5章 の 第98条 か ら117条 が 「土 地 請 負 経 営 権 」,第6章 の 第118条 か ら139条 が 「建 設 用 地 使 用 権 」, 第7章 の 第140条 か ら150条 が 「宅 地 使 用 権 」 に あ て ら れ て お り*46,農 地 に 関 して は 「土 地 使 用 権 」 と呼 ば れ る権 利 概 念 は存 在 し な か っ た 。 現 在,農 地 に も設 定 さ れ う る 「土 地 使 用 権 」 は,

「土 地 請 負 経 営 権 」 と統 合 す る こ と で 独 立 し た 権 利 概 念 で は な く な っ た と い う こ と で あ ろ う 。 ま た,権 利 の 最 長 設 定 期 限 につ い て は,「 社 科 院 草 案 」(「農地使 用権 」)と 「人 民 大 学 草 案 」(「農村 土 地請負経営権 」)の い ず れ もが50年 と規 定 して い た が,「 法 工 委 民 法 室 草 案 」(「土 地請負 経営 権」)で

は30年 に短 縮 さ れ て い た と 聞 く。 農 民 の 「土 地 財 産 権 」 の 保 護 と い う観 点 か ら い え ば,後 退 し

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て い る よ う に 思 わ れ る か も しれ な い が,実 際 は か な らず し もそ うで は な い 。 こ の 点 につ い て は,

「農 村 土 地 請 負 法 」 に 定 め ら れ た 請 負 期 限 の 上 限 に つ い て 検 討 す る さ い に 言 及 す る こ と に した

いo

も っ と も,こ の 「法 工 委 民 法 室 草 案 」 は,「 物 権 」 につ い て の 定 義 を 欠 い て い た 等 の 指 摘 を は じめ,多 くの 批 判 を浴 び た こ と も あ り,お よ そ 半 年 を 要 して 大 き く改 め られ た 。 「法 工 委 民 法 室 草 案Jは,「 物 権 法(草 案)」 を起 草 して き た い ず れ に と っ て も,こ れ ま で 議 論 され て き た 「物 権 法(草 案)」 を ふ ま え た う え で 提 起 さ れ た も の に は 映 ら な か っ た の で あ ろ う。 大 幅 に 修 正 さ れ た

「法 工 委 民 法 室 草 案 」 は,2001年 末 か ら2002年1月 に か け て 「物 権 法 征 求 意 見 稿 」 と して 各 大 学 法 学 院,人 民 法 院,国 務 院 各 部 門 に 配 布 され た*47。 法 制 工 作 委 員 会 民 法 室 は,関 係 各 所 の 意 見 を再 び 求 め た の で あ る 。 た だ し,「 物 権 法 征 求 意 見 稿 」 で も,「 土 地 使 用 権 」 と 「土 地 請 負 経 営 権 」 の 位 置 づ け は,「 法 工 委 民 法 室 草 案 」 と 同 様 で あ っ た 。 権 利 の 最 長 設 定 期 限 に つ い て も,同 様 で あ る と 聞 い て い る。 と も あ れ,こ う した 草 案 の と り ま と め の 方 向 か ら 察 す る に,「 物 権 法

(草案)」 の 最 終 案 の も とで は,両 権 利 が 同 一 の 土 地 の う え に 同 時 に 発 生 す る とい う事 態 は ほ ぼ 確 実 に 回 避 さ れ る よ う で あ る。 く り返 しい え ば,「 土 地 使 用 権 」 は,非 農 業(社 会 公益 事 業 を含 む)

を 目的 とす る 土 地 の 利 用 に さ い して 発 生 し,「 土 地 請 負 経 営 権 」 は,農 業 を 目的 とす る 土 地 の 利 用 に さ い し て 発 生 す る こ と に な る 。 現 在,法 制 工 作 委 員 会 民 法 室 は,「 物 権 法(草 案)」 作 成 の 最 終 作 業 を 引 き続 き行 っ て い る とい う。

圏 請 負 期 限 の 上 限

そ れ で は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 に 限 定 した 検 討 に 戻 る こ と に し た い 。 「農 村 土 地 請 負 法 」 第20 条 は,請 負 期 限 に つ い て 規 定 し て い る 。 耕 地 ・草 原 ・林 地 の う ち,耕 地 の み に つ い て い え ば,請 負 期 限 の 上 限 は30年 と さ れ,中 国 共 産 党 中 央 委 員 会 と 国 務 院 の1993年11月 の 指 示 ・通 達*48

で 定 め ら れ た 期 間 を 「土 地 管 理 法 」 と 同 様 に踏 襲 す る に と ど ま っ た(草 原 の請負期 限 の上 限 は30年 か ら50年,林 地の請負 期限 の上 限は30年 か ら70年 であ る)。 こ の 点 は,「 物 権 法(草 案)」 お よび 「民 法 典(草 案)」 の 「物 権 篇 」 の 動 向 と軌 を 一 に し て い た と思 わ れ る 。 中 改 院 が 提 言 して き た 請 負 期 限 の さ ら な る 長 期 化,「 少 な く と も50年,ひ い て は70年,100年 」*49と は,大 分 か け 離 れ た 結 果 に な っ た とい え る 。2002年11月 に 他 界 し た全 国 人 民 代 表 大 会 農 業 ・農 村 委 員 会 副 主 任 兼 「農 村 土 地 請 負 法 」 起 草 指 導 小 組 組 長 で あ っ た 柳 随 年 に よ れ ば,草 案 で は 当 初,「 少 な く と も30年 」 (傍点 筆 者)と 規 定 され,集 団 経 済 組 織*50が 請 負 期 限 を30年 以 上 の 長 期 で 設 定 で き る よ う に 規 定 に 幅 が も た せ ら さ れ て い た とい うX51。 しか し,こ の 幅 は,請 負 期 限 が 際 限 な く拡 大 さ れ る 事 態 の 発 生 を 懸 念 す る 関 係 者 の 反 対 に よ り,中 華 人 民 共 和 国 第9期 全 国 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 第29回 会 議 に提 出 さ れ る段 階 で は 削 られ る こ と に な っ た*52。

そ も そ も30年 と い う請 負 期 限 は,ひ とた び 耕 地 を 請 け 負 っ た 農 民 が 少 な く と も現 役 で 農 業 を 営 む あ い だ,同 一 耕 地 で の 経 営 が 可 能 と な る よ う に 配 慮 して 設 定 さ れ た もの で あ る。 しか し,30 年 とい う請 負 期 限 は,そ の 反 面 で は,所 有 権 者 で あ る 集 団 経 済 組 織 が30年 を ひ と 区 切 り に し て

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「中華人民 共和国農村 土地請負 法」の検討67 土 地 請 負 経 営 権 者 を 変 更 し う る 権 利 を 保 有 し て い る と い う こ と で も あ る*53。 「農 業 法 」 は,第 13条 第2項 で,請 負 地 を 経 営 す る 農 民 あ る い は 各 種 団 体 は,請 負 契 約 が 満 期 を迎 え た と き に そ の 請 負 地 を優 先 的 に 請 け 負 え る権 利 を有 す る と定 め て い る が,実 際,こ の 条 文 が 空 文 と化 して い る場 合 は 多 い とい わ な け れ ば な ら な い 。 し た が っ て,こ の30年 と い う請 負 期 限 に た い す る 評 価 は,立 場 を ど こ に お くか に よ っ て 大 き く異 な っ て し ま うの で あ る。

察 す る に,請 負 期 限 を従 来 どお り30年 とす る か,あ る い は そ れ 以 上 に延 長 す る か は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 起 草 組 で も相 応 の 時 間 を 割 い て 議 論 さ れ た難 問 で あ っ た に違 い な い 。 少 な く と も今 世 紀 半 ば まで は 増 加 の 一 途 を た どる で あ ろ う 農 村 労 働 力 人 口 の 農 村 の 土 地 に た い す る圧 力 の 強 大 さ を勘 案 す る と,集 団 経 済 組 織 が 村 民 全 体 の 請 負 地 配 分 を30年 後 の 請 負 契 約 更 新 時 で 調 整 す る こ とは,就 業 構 造 の 転 換 が 着 実 に す す む と予 想 さ れ る 地 域 を 除 き,ほ ぼ 不 可 避 で あ る とい わ ざ る を え な い*54。 そ れ ゆ え,30年 を超 え た 請 負 期 限 の 設 定 は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 起 草 指 導 小 組 で も 最 終 的 に 撤 回 す る しか な か っ た の で あ ろ う。 新 規 労 働 力 人 口 の 大 部 分 が 農 外 産 業 に 雇 用 を 確 保 し て い か な い か ぎ り,農 民 の す べ て が 現 行 の 請 負 契 約 を数 十 年 後 に 無 条 件 で 更 新 す る こ と は 物 理 的 な 困 難 を と も な う。 農 民1人 あ た り請 負 面 積 は,人 口圧 力 に よ っ て,否 が 応 で も減 少 して い か ざ る を え な い か らで あ る。 とは い え,他 方 で は,農 民 の 「十 地 財 産 権 」 を 強 化 した う え で 「土 地 請 負 経 営 権 」 の 移 転 を期 待 す る た め に は,30年 の 請 負 期 限 で は 短 す ぎ る と い う 想 い も 同 時 に よ ぎ る。 土 地 を 請 け 負 う農 民 の 多 く は,こ の 第20条 の 規 定 に よ っ て,30年 後 に 請 負 地 を 縮 小(一 部 返還)す る こ とに 同 意 せ ざ る を え な い 。 現 時 点 で 土 地 を 請 け 負 っ て い る 農 民 の 多 く は,30年 後 に 請 負 地 が 縮 小(一 部返還)さ れ る とい う前 提 の も と で,農 業 経 営 に 従 事 して い る の で あ る。 農 業 収 入 を軸 に し て経 営 と生 計 を 維 持 して い くこ とは,農 民 の 多 くに と っ て も は や 許 され な い 行 為 に

な っ て い る の で あ る 。

こ う した 難 問 に た い す る妥 協 点 が,草 案 の 段 階 で み られ た 「少 な く と も30年 」 と い う表 記 で あ っ た とい え る 。 しか し,前 述 の よ う に,「 少 な く と も」 と い う表 記 は,採 択 さ れ た 「農 村 土 地 請 負 法 」 の 条 文 で は削 除 さ れ て お り,単 に 「30年 」 とい う表 記 が な さ れ て い る に す ぎ な い 。

■ 請 負 方 法 の 差 別 化

第3条 第2項 は,第2条 で 規 定 さ れ た 農 村 の 土 地(耕 地 ・林地 ・草原 ・そ の他)を 通 常 の 土 地 と 四 荒 地(荒 れ 山 ・荒 れ溝 ・荒れ斜 面 ・荒 れ干潟)と に 分 け,前 者 で は 家 庭 請 負 方 式 を実 施 し,後 者 で は 入 札 ・競 売 ・公 開 協 議 等 の 方 式 で 請 け 負 わせ る こ と を 指 示 す る 条 文 で あ る 。

さ きの 柳 随 年 は,通 常 の 土 地 で 家 庭 請 負 方 式 を 実 施 す る 理 由 は,国 家 が 農 家 に た い す る社 会 保 障 の 意 味 合 い を強 く う ち だ して い る た め で あ る と説 明 して い る。 国 家 は,公 平 の 実 現 を 第 一 に 考 え,通 常 の 土 地 で 家 庭 請 負 方 式 を 実 施 す る,と い う の で あ る 。 他 方,柳 随 年 は,四 荒 地 で 入 札 ・ 競 売 ・公 開 協 議 等 の 方 式 を 実 施 す る理 由 は,国 家 が 効 率 の 追 求 を 第 一 に 考 え て い る た め で あ る と 説 明 して い る*55。 柳 随 年 の 説 明 は,あ ま りに も簡 単 な もの で あ る の で,以 下 で は,こ の 柳 随 年

の 説 明 を補 足 して お く こ と に す る 。

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通 常 の 土 地 で 実 施 さ れ る 家 庭 請 負 方 式 は,第15条 の 規 定 に よ っ て,契 約 当 事 者 を 集 団 経 済 組 織 内 の 農 家 に 限 定 して い る 。 要 す る に,そ の 村 に戸 籍 を もつ 者 の み が 集 団 経 済 組 織 との あ い だ で 土 地 の 請 負 契 約 を締 結 で き る,と い う こ と で あ る。 逆 を い え ば,そ の 村 に戸 籍 を も た な い 者 や 村 外 の 各 種 団 体 は,そ の 村 の 土 地 を 請 け 負 う こ と は で きな い,と い う こ と に な る 。 他 方,四 荒 地 で 実 施 さ れ る 入 札 ・競 売 ・公 開 協 議 等 の 方 式 は,第47条 と 第48条 の 規 定 に み る よ う に,契 約 当 事 者 を 集 団 経 済 組 織 内 の 農 家 に 限 定 し て い な い 。 「当 該 集 団 経 済 組 織 以 外 の 各 種 団 体 あ る い は 個 人 」 に た い して も,広 く機 会 を 与 え て い る の で あ る 。 請 負 契 約 は,入 札 ・競 売 ・公 開 協 議 の い ず れ に しろ,請 負 費 の 最 高 額 を提 示 した 各 種 団 体 あ る い は 個 人 と結 ば れ る(請 負 費その 他の 条件が 同 等 の場合,第47条 の規 定 に基づ き,村 に戸籍 を もつ者が優先 され る)。 集 団 経 済 組 織 は,四 荒 地 の 請 負 費 収 入 を 競 争 原 理 を 通 じて 最 大 化 で き る と 同 時 に,四 荒 地 の 開発 を 請 け 負 わ せ る こ とに よ っ て 耕 地 面 積 の 拡 大 を促 す こ と もで き る 。 また,都 市 近 郊 の 集 団 経 済 組 織 は,請 負 地 の 耕 作 を希 望 す る構 成 員 農 家 が 少 な い た め に,全 国 的 に み れ ば 農 業 人 口 に た い す る 耕 地 の 割 合 が 低 い に もか か わ らず 多 くの 耕 地 の 経 営 が 放 棄 さ れ 四 荒 地 と化 して い る と い う現 状 を 当 該 集 団経 済 組 織 以 外 の 各 種 団 体 あ る い は 個 人 に 四 荒 地 を 請 け 負 わ せ る こ と を通 じて 打 開 す る こ とが で き るの で あ る 。 こ れ らの 点 が,柳 随 年 の い う効 率 の 追 求 を 第 一 に 考 え る と い う意 味 で あ る。

睡 「物 権 」 的 「土 地 請 負 経 営 権 」 と 「債 権 」 的 「土 地 請 負 経 営 権 」 の 設 定

集 団 経 済 組 織 と個 人 あ る い は 各 種 団 体 との あ い だ の 請 負 契 約 に よ っ て 生 じる 「土 地 請 負 経 営 権 」 は,請 負 方 式 が 通 常 の 耕 地 と四 荒 地 と で 異 な る こ と に 関 係 して,異 な る性 質 を も つ2つ の 権 利 と し て 了 解 され る こ と に な っ た(柳 随年 は,草 案 を審議 して いた過 程で,通 常 の土地 で実施 される家庭 請負 方式 の も との 「土 地請負 経営 権」 は,「物 権」 的保 護 を受 け,四 荒 地で実 施 され る 入札 ・競 売 ・公開協 議 等の方 式 の も との 「土 地請 負経営 権」 は,「債 権」 的保 護 を受 け る,と い う 「農村 土 地 請負 法」起 草 指導 小組 の見解 を発 表 してい る*56)。

通 常 の 土 地 で 実 施 され る家 庭 請 負 方 式 に 基 づ く 「土 地 請 負 経 営 権 」 は,第2章(第 ユ2条〜第43 条)の 諸 規 定 に よ っ て,「 物 権 」 的 扱 い を 受 け る こ と を 実 質 的 に 明 確 に して い る。 た と え ば,第 16条 は,請 負 受 託 方 が 有 す る権 利 を 明 記 した 条 文 で あ り,そ の(1)と して,「 法 に 基 づ く請 負 地 の 使 用 ・収 益 お よ び 土 地 請 負 経 営 権 移 転 の 権 利 」 と 「生 産 ・経 営 を 自 主 的 に組 織 し生 産 物 を 自 主 的 に 処 理 す る権 利 を 有 す る 」 と定 め て い る 。 ま た,後 段 の 第26条 か ら 第31条 で は,「 土 地 請 負 経 営 権 の 保 護 」 に 関 して 規 定 し,請 負 期 限 と して 定 め られ た 最 長30年 以 内 に お け る 行 政 に よ る 回 収 や 調 整 を 禁 じ る と 同 時 に(第26条 ・第27条),「 中 華 人 民 共 和 国 相 続 法 」 の 規 定 に 基 づ い た 相 続 も認 め て い る(第31条)。

他 方,四 荒 地 で 実 施 され る入 札 ・競 売 ・公 開 協 議 等 の 方 式 に基 づ く 「土 地 請 負 経 営 権 」 は,第 3章(第44条 〜 第50条)に よ っ て 「債 権 」 的 扱 い に と ど ま る こ とが 明 白 で あ る。 四 荒 地 で 実 施 さ れ る 入 札 ・競 売 ・公 開協 議 等 の 方 式 に 基 づ く 「土 地 請 負 経 営 権 」 は,法 に 基 づ い て 同 権 利 を移 転 で き る 権 利(第49条)と 請 負 契 約 者 が 契 約 半 ば で 死 亡 した さ い に 請 負 契 約 者 の 相 続 人 が 請 負 契 約

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「中華 人民 共和国 農村 土地請 負法」 の検 討69 を 継 続 で き る 権 利(第50条)を 家 庭 請 負 方 式 に 基 づ く 「土 地 請 負 経 営 権 」 と 同 様 に 認 め て い る が,そ れ ら以 外 に は 「土 地 請 負 経 営 権 」 を 保 護 す る 条 文 を と くに 設 け て い な い 。 こ の 点 か ら,柳 随 年 が 草 案 の 審 議 途 上 で 示 した 「農 村 土 地 請 負 法 」 起 草 組 の 見 解 の とお り,家 庭 請 負 方 式 に基 づ

く 「土 地 請 負 経 営 権 」 が 「物 権 」 的 扱 い を 受 け る の に た い して,入 札 ・競 売 ・公 開協 議 等 の 方 式 に 基 づ く 「土 地 請 負 経 営 権 」 は,「 債 権 」 的 扱 い を 受 け る に と ど ま る こ と が 理 解 し う る の で あ る 。

囮 係 争 の 処 理

第51条 か ら第61条 は,「 十 地 請 負 経 営 権 」 を め ぐる 係 争 を 処 理 す る た め の 条 文 で あ る 。 「土 地 請 負 経 営 権 」 を め ぐる 係 争 は,基 本 的 に民 事 扱 い と な り,契 約 当 事 者 間 で 係 争 が 生 じ協 議 に よ っ て解 決 で き な い 場 合 は,村 民 委 員 会 や 郷(鎮)人 民 政 府 等 の 調 停 に よ る 解 決 を 請 求 した り,農 村 土 地 請 負 仲 裁 機 構 に仲 裁 を 申 請 した り,あ る い は 人 民 法 院 に 直 接 提 訴 す る こ とに よ っ て 裁 決 を 仰

ぐ こ と に な っ て い る。

従 来,「 土 地 請 負 経 営 権 」 を め ぐ る民 事 ・刑 事 上 の 係 争 を処 理 す る 法 規 は,皆 無 で あ っ た 。 「土 地 請 負 経 営 権 」 と密 接 な 関 係 に あ る 「十 地 使 用 権 」 を め ぐる 民 事 上 ・刑 事 上 の 係 争 の 処 理 に つ い て は,「 土 地 管 理 法 」 が 条 文 を若 干 設 け て お り,こ れ ら条 文 の 範 囲 内 で 対 応 で き る もの は 処 理 さ れ て い た 。 また,「 土 地 請 負 経 営 権 」 を め ぐる 民 事 上 ・刑 事 上 の係 争 で も,「 土 地 管 理 法 」 に お け る 「土 地 使 用 権 」 に 関 す る 条 文 の 援 用 が 利 く も の は,同 様 に 処 理 さ れ て い た と 思 わ れ る 。 しか し,「 土 地 管 理 法 」 は,さ き に 述 べ た よ う に,国 家 が 国 土 全 体 の 管 理 ・保 護 ・開 発 ・合 理 的 利 用 をす す め る 目 的 で 制 定 し た 法 律 で あ る 。 当 然,「 土 地 管 理 法 」 は,農 民 の 「土 地 財 産 権 」 を保 護 す る と い う視 点 か ら法 律 責 任 を規 定 し て き た わ け で は な い 。 した が っ て,農 民 の 「土 地 財 産 権 」 と して の 「土 地 使 用 権 」 あ る い は 「土 地 請 負 経 営 権 」 が 侵 害 さ れ た と き に 「十 地 管 理 法 」 が どれ ほ ど効 力 を発 揮 し た か とい え ば,ほ と ん ど な か っ た と答 え な け れ ば な ら な い で あ ろ う 。 そ して, 法 規 に よ る規 定 が な い 以 上,「 土 地 使 用 権 」 と 「土 地 請 負 経 営 権 」 に つ い て の 民 事 上 ・刑 事 上 の 係 争 の 大 部 分 は,村 民 委 員 会 ・郷(鎮)人 民 政 府 ・県 人 民 政 府 な ど の 行 政 部 門 や 県 人 民 法 院 な ど の 司 法 部 門 に よ っ て,そ の 都 度 審 判 され る 以 外 に 方 法 は な か っ た*57。 そ こ に 担 当 者 の 主 観 が 入

り込 む 余 地 が 大 きか っ た こ と は,あ ら た め て 指 摘 す る ま で も な い で あ ろ う 。

こ れ に た い して,「 農 村 土 地 請 負 法 」 は,農 民 の 「請 負 地 経 営 権 」 ・ 「農 産 物 処 分 権 」 ・ 「相 続 権 」 等 の 保 護 を 目的 に した 条 文 を 有 す る だ け で は な く,そ れ ら の 権 利 が 侵 害 さ れ た と きの 対 応 も 明 記 して い る 。 第54条 は,請 負 受 託 方 が 法 に 基 づ い て 有 す る 生 産 ・経 営 の 自 主 権 に 干 渉 す る 行 為,本 法 の 規 定 に 違 反 して 請 負 地 を 回 収 ・調 整 す る行 為,請 負 受 託 方 が 「土 地 請 負 経 営 権 」 の 移 転 を行 う こ と を強 要 し た り阻止 した りす る 行 為,少 数 は 多 数 に し た が う こ と に か こつ け て 請 負 受 託 方 に 「土 地 請 負 経 営 権 」 の放 棄 あ る い は 変 更 を 迫 り 「十 地 請 負 経 営 権 」 の 移 転 をす す め る行 為,「 口糧 田 」*58と 「責 任 田 」*59等 を 区 分 す る こ と を 理 由 に 請 負 地 を 回 収 して 請 負 の 入 札 を行 う行 為,請 負 地 を借 金 の 代 わ り に 回 収 す る 行 為,女 性 が 法 に基 づ い て 有 す る 「土 地 請 負 経 営 権 」

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を 剥 奪 ・侵 害 す る 行 為,そ の 他 「十 地 請 負 経 営 権 」 を 侵 害 す る 行 為,を 禁 じ,こ れ に 反 した 場 合,請 負 委 託 方 は,「 侵 害 の 停 止,現 物 の 返 還,原 状 の 回 復,妨 害 の 排 除,危 険 の 除 去,損 失 の 賠 償 等 の 民 事 責 任 を 負 わ な け れ ば な ら な い 」 と 定 め て い る。

3.「 農 村 土 地 請 負 法 」 の 課 題

最 後 に,「 農 村 土 地 請 負 法 」 の 課 題 を指 摘 し て い く こ と に した い 。 圏 「土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 の 関 係

先 述 した よ う に,「 土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 の 関 係 は,目 下 の と こ ろ,判 然 と して い な い 。 両 権 利 の 関 係 は,「 物 権 法(草 案)」 が 採 決 さ れ た 段 階 で 決 着 す る か た ち に な る で あ ろ う 。 筆 者 は,法 理 論 的 整 合 性 を追 究 す る 能 力 に 欠 け る た め に,こ れ 以 上 現 行 の 問 題 点 を指 摘 す る こ と は 慎 み た い 。 た だ し,農 村 の 現 状 を 文 献 か ら整 理 し た か ぎ り に お い て は,「 人 民 大 学 草 案 」 が 危 惧 す る よ う な 意 味 で の 混 乱 は,農 村 で は 生 じ な い と思 わ れ る 。 現 在,請 負 契 約 に基 づ い て 土 地 請 負 経 営 権 証 と土 地 使 用 権 証 の い ず れ もが 請 負 農 民 に 同 時 に 発 給 さ れ る事 例 は,皆 無 に 等 し

く,請 負 契 約 の 当 事 者 双 方 は,ど ち ら か 一 方 の 発 給 を も っ て 契 約 手 続 の 完 了 と み な し て い る*6U。 ま た,省 ・自 治 区 ・直 轄 市 の 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 が 「農 業 法 」 や 「土 地 管 理 法 」 等 の 法 規 に 基 づ い て す で に 施 行 して い る 請 負 契 約 に 関 す る実 施 規 則 の 多 く は,「 土 地 請 負 経 営 権 」 と 「土 地 使 用 権 」 を 同 一の もの と して 規 定 し て い る よ う に しか 読 め な い 。 こ う した 事 実 か ら は,

「土 地 請 負 経 営 権 」 と 「十 地 使 用 権 」 は,請 負 契 約 の 当 事 者 の あ い だ で は 戴 然 と 区 別 さ れ る こ と な くsむ しろ 盾 の 両 面 の よ う に分 か ち が た い 同 一 の 権 利 と して 受 容 さ れ て い る 可 能 性 が 高 い,と い う結 論 が え られ る。 確 か に,請 負 契 約 を結 ぶ 当 事 者 の あ い だ で は,法 規 問 の 整 合 性 を 問 う必 要 は 微 塵 も な い 。

と こ ろ でz中 改 院 は,従 来 か ら 「請 負 使 用 権 」 と 「経 営 使 用 権 」 とい う2つ の 権 利 概 念 を新 た に 設 定 す る こ と に よ っ て,「 土 地 使 用 権 」 と 「土 地 請 負 経 営 権 」 と の 関 係 を 清 算 し て し ま お う と い う建 議 を 行 っ て い る*61。 建 議 の 内 容 は,以 下 の とお りで あ る 。

「請 負 使 用 権 は,集 団 構 成 員 の 身 分 と 密 接 に 関 係 す る 。 農 村 の 集 団 構 成 員 の 身 分 を有 す れ ば, 平 等 な土 地 請 負 〔使 用権一 引用者〕権 を 獲 得 で き る」。 「農 民 が 獲 得 し た もの は,物 権 で あ り,伝 統 的 意 味 で の 債 権 で は な い 」。 他 方,「 経 営 使 用 権 と い う概 念 は,土 地 の 流 動 化 の た め に 設 け ら れ

た も の で あ る。 こ の2つ の 概 念 は,土 地 の 流 動 化 が 進 展 す る な か で 分 離 し て き た 。 こ の う ち,

〔土地〕 使 用 権 は 請 負 使 用 権,経 営 使 用 権 は 土 地 利 用 権 を 指 して い る。 しか し,実 際 に 〔土 地〕使 用 権 が 長 期 不 変 と さ れ る な か で 農 民 の 土 地 の 流 動 化 が 進 展 して,土 地 請 負 経 営 権 も長 期 に わ た っ て 譲 渡 さ れ る よ う に な り,そ の 含 意 も拡 大 し て き て い る。 土 地 請 負 経 営 権 は,単 な る 土 地 の 利 用 権 に と ど ま らず,譲 渡 期 限 内 に お い て 土 地 利 用,収 益 分 配,部 分 的 処 分 の権 利 を 有 す るべ きで あ

る 。 そ れ ゆ え,経 営 使 用 権 も ま た,物 権 的 性 質 を帯 び る 」。

中 改 院 の 建 議 を 整 理 す る と,請 負 委 託 方 で あ る 農村 集 団 経 済 組 織 あ る い は村 民 委 員 会 と請 負 受

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「中華 人民共和 国農村土 地請負法」 の検討71 託 方 で あ る 個 人 あ る い は 各 種 団 体 とが 請 負 契 約 を 結 ん だ と き に発 生 す る 請 負 受 託 方 の 権 利 を 「請 負 使 用 権 」 と し,請 負 受 託 方(土 地請 負経営権者)が 「請 負 使 用 権 」 を 有 す る 請 負 地 の 経 営 を 自 ら 行 わ ず 第 三 者 に委 ね た と き に 発 生 す る経 営 代 行 者 の権 利 を 「経 営 使 用 権 」 とす る,と い う もの で あ る 。 中 改 院 の建 議 は,請 負 契 約 に よ っ て 請 負 受 託 方 に 特 定 の 権 利 が 生 じ る とい う 点 で は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 の 規 定 に 合 致 して い るが,請 負 受 託 方(土 地 請負経営 権者)が そ の 権 利 を 行 使 せ ず に経 営 を第 三 者 に委 ね た と き に そ の 第 三 者 に 別 種 の 権 利 が 生 じ る と い う点 で は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 の規 定 よ りい っ そ うふ み こ ん だ 内 容 に な っ て い る 。

「農 村 土 地 請 負 法 」 の も とで は,請 負 受 託 方(土 地請 負経 営権 者)は,第 三 者 に 農 業 経 営 の 代 行 を 委 託 した と し て も,「 土 地 請 負 経 営 権 」 を 譲 渡 しな い か ぎ り,そ の 第 三 者 に た い す る 圧 倒 的 な 法 的 優 位 を 失 う こ と は な い 。 農 業 経 営 を代 行 す る 第 三 者 が 契 約 の 更 新 を 願 い で た と して も,そ れ を 許 諾 す る か 否 か は,請 負 受 託 方(土 地請負経 営権者)の 判 断 の み に 委 ね ら れ る か た ち に な っ て い る の で あ る 。 こ の 点 は,経 営 を代 行 す る 第 三 者 が 商 社 な ど の営 利 企 業 で あ る 場 合 に は大 き な 意 味 を も つ で あ ろ う。 しか し,こ の 第 三 者 が 請 負 受 託 方(土 地請負 経営 権者)と 同 様 に 農 民 な い し は 農 民 集 団 で あ っ た 場 合(「 農村土 地請負 法」の もとで は,む しろ こ う した場合 が圧 倒的 に なる と予 想 され る) は,少 な か らず 問 題 を 生 じ させ る 。 この 問 題 を農 業 経 営 に と っ て 必 要 不 可 欠 な 行 為 で あ る 地 力 の 維 持 と 向上 とい う視 点 か ら考 え て み る こ と に した い 。

多 くの 産 業 に 共 通 し て い え る こ とで あ るが,と りわ け 農 業 で は,長 期 に わ た っ て 経 営 を存 続 で き る と い う前 提 が あ っ て は じめ て,良 好 な 経 営 に た い す る誘 因 が 強 くは た ら く。 こ う して,長 期 的 展 望 を有 す る 農 業 経 営 は,地 力 収 奪 型 経 営 に 陥 らず に す む の で あ る 。 「農 村 土 地 請 負 法 」 第43 条 に は,「 請 負 受 託 方 は,請 負 地 に投 入 して 土 地 の 生 産 力 を高 め た こ と に た い して,土 地 請 負 経 営 権 を法 に基 づ い て 移 転 す る と き に相 応 の 補 償 を獲 得 す る権 利 を有 す る 」 と 定 め ら れ て い る が, 第 三 者 が 農 業 経 営 の 代 行 を終 え た 後,当 該 請 負 地 を 請 負 受 託 方(土 地請 負経 営権 者)に 返 還 す る さ い に 考 慮 さ れ るべ き第 三 者 の 地 力 向 上 に た い す る補 償 に つ い て は,い っ さい 規 定 して い な い 。 そ れ ゆ え,「 農 村 土 地 請 負 法 」 の 規 定 が 遵 守 さ れ て い っ た と し て も,請 負 受 託 方(土 地 請負 経 営 権 者)が1年 な い し数 年 単 位 で 経 営 代 行 者 を 変 更 す る よ う な 契 約 を 第 三 者 との あ い だ で 結 ん で い く 場 合,当 該 請 負 地 の 地 力 が 長 期 に わ た っ て 低 下 して い く危 険 が 発 生 す る こ と を未 然 に 防 ぎ え な い の で あ る 。 し た が っ て,筆 者 は,地 力 の 維 持 と向 上 と い う点 に鑑 み て,請 負 受 託 方(土 地 請負 経 営権者)が 「土 地 請 負 経 営 権 」 を 保 有 し た ま ま 農 業 経 営 を 第 三 者 に 委 ね た と き,そ の 第 三 者 に も 一 定 程 度 の 排 他 的 権 利 が 生 じる と規 定 し て お く必 要 を 認 め る の で あ る 。

請 負 地 の経 営 を代 行 す る 第 三 者 の 排 他 的 権 利 を一 定 程 度 認 め て お く こ と は,国 家 の 食 糧 政 策 に と っ て も積 極 的 効 果 を もた らす と予 想 さ れ る 。 す で に,「 農 村 土 地 請 負 法 」 は,「 土 地 請 負 経 営 権 」 を 「物 権 」 的 「土 地 請 負 経 営 権 」 と 「債 権 」 的 「土 地 請 負 経 営 権 」 と で 構 成 す る こ と を 了 解 して い る の で あ る か ら,こ の 第 三 者 の 権 利 を 第 三 者 が 農 民 個 人 な い し は 農 民 集 団 の 場 合 と商 社 な どの 営 利 企 業 の 場 合 と に 区 別 す る こ と を 了 解 し て も差 し支 え な い と思 わ れ る 。 前 者 の 場 合,第 三

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図1農 産 物 の 実 質 生 産 者 価 格 指 数(1978年=100)

a食 糧0一 油糧 作物+綿 花 一 一一一畜 産 物 … … ・果物 一・・一・生鮮 野菜 250

200

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注 実 質 生 産 者 価 格 指 数=農 産 物 買 付 価 格 指 数/農 村 小 売 物 価 指 数

資 料 国 家 統 計 局 『中国 統 計 年 鑑 』(2001年 版)中 国 統 計 出 版 社,goal年,282,295〜296頁 。

者 は,中 改 院 の 建 議 で い う と こ ろ の 「経 営 使 用 権 」 の 行 使 を も っ て 請 負 受 託 方(土 地請 負経 営 権 者)の 「請 負 使 用 権 」 の 濫 用 に 対 抗 す る こ と が で きる よ う に な る の で あ る。

國 請 負 期 限 の 上 限

耕 地 の 請 負 期 限 の 上 限 を … 律30年 に した こ と は,前 述 した よ う に,や む を え な い と思 わ れ る。 こ の 問 題 は,今 世 紀 半 ば を す ぎて 農 村 労 働 力 人 口 が 減 少 に転 じた と き,あ ら た め て 検 討 し直 せ ば よ い 。 した が っ て,「 農 村 十 地 請 負 法(草 案)」 が 当初 耕 地 の 請 負 期 限 の 上 限 を少 な く と も30 年 と した り,「 物 権 法(草 案)」 が 当 初 「農 地 使 用 権 」 あ る い は 「農 村 十 地 請 負 経 営 権 」 の 上 限 を 50年 と して さ ら に そ の 自動 的 延 長 を も認 め よ う と して い た こ と は,や は り時 期 尚早 で あ っ た と い わ ざ る を え な い だ ろ う。

筆 者 が 当 初 請 負 期 限 の 上 限 の 延 長 に 関 して 危 惧 して い た 点 は,立 法 関係 者 が 楽 観 的 な 農 村 労 働 力 人 口 の 推 計 に基 づ い て 法 案 を作 成 して い た の で は な い か,と い う こ と に と ど ま ら な か っ た 。 邪 推 に す ぎ た と 思 わ れ る か も しれ な い が,実 は 筆 者 は,「 農 村 土 地 請 負 法(草 案)」 が 当 初 耕 地 の 請 負 期 限 の 上 限 を 少 な く と も30年 と し,「 物 権 法(草 案)」 が 当 初 「農 地 使 用 権 」 あ る い は 「農 村 土 地 請 負 経 営 権 」 の 上 限 を50年 と して さ ら に そ の 自動 的 延 長 を も認 め よ う と し て い た と い う背 景 に は,新 規 農 村 労 働 力 が 是 が 非 に も非 農 業 部 門 で 雇 用 機 会 を み い だ さ ざ る を え な い よ うに,新 規 農 村 労 働 力 に は 土 地 を 分 け 与 え る こ とが で き な い 情 況 を あ ら か じめ つ く りだ し て し まお う とす

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「中華 人民 共和 国農村 土地請負 法」の検 討73 図2農 村1人 あた り所 得の動 向

3,500 3,000 2,500

2,000

1,500 1,000 500

資 料 国 家 統 計 局 『中 国 統 計 年 鑑 』(1990年 版)中 国 統 計 出 版 社,1990年,313頁 同(1991年 版),1991年,295頁 。 同(1992年 版),1992年,307頁 同(1993年 版),1993年,312頁 。 同(1994年 版),1994年,277頁 同(1995年 版),1995年,279頁 。 同(1996年 版),1996年,301頁 同(1997年 版),1997年,313頁 。 同(1998年 版),1998年,345頁 同(1999年 版),1999年,338頁 。 同(2000年 版),2000年,331頁 同(2001年 版),2001年,323頁

る政 策 的 意 図 が 隠 さ れ て い た よ う に思 え て な らな か っ た 。

図1に 示 さ れ る よ う に,農 産 物 の 実 質 生 産 者 価 格 指 数 は,1990年 代 後 半 以 降,長 期 低 落 傾 向 を示 す よ う に な っ て き て お り,2000年 に は,集 団 農 業 経 営 時 代 末 の 水 準 に 回 帰 して し ま っ て い る。 生 産 量 が 消 費 量 を超 過 し,農 家 が 豊 作 貧 乏 に 直 面 す る よ う に な っ て い る 一 方 で,相 対 的 に 高 価 に な りつ つ あ る 農 業 投 資 財 や 耐 久 消 費 財 を消 費 す る 経 営 と生 活 の 様 式 が 農 村 に も定 着 し は じめ て い る た め で あ ろ う。 こ の 点 は,図2と 図3で い っ そ う 明 らか で あ る 。 図2か ら は,所 得 源 泉 に 占 め る 農 業 の 比 重 が 近 年 低 下 しつ つ あ る よ う す が 看 取 され,図3か ら は,都 市 と 農 村 の1人 あ た り所 得 格 差 が ほ ぼ 一 貫 し て 拡 大 の 一・途 を た ど っ て い る こ とが 明 瞭 と な る*62。 こ う した 基 礎 的 マ ク ロ統 計 か ら は,農 業 に 見 切 り をつ け て非 農 業 に 雇 用 機 会 を 求 め よ う とす る 農 民 が 潜 在 的 レベ ル で は 圧 倒 的 で あ る こ と が 窺 え る 。 確 か に,こ う し た 統 計 的 事 実 を前 提 と し た 場 合,「 農 村 土 地 請 負 法(草 案)」 と 「物 権 法(草 案)」 の 当 初 の 対 応 は,何 よ り も農 村 の 要 求 に 合 致 し て い た,と 考 え る こ と もで きた で あ ろ う。 しか し,こ う した 議 論 は,非 農 業 部 門 が 農 業 部 門 か ら排 出 さ れ る 労 働 力 の す べ て の 受 け 皿 に な り う る こ と を仮 定 し て い た の で あ る。 実 際,非 農 業 部 門 が 農 業 部 門 か ら排 出 さ れ る 労 働 力 の す べ て の 受 け 皿 に な り う る と い う保 障 は,ど こ に も な か っ た(現 在 中 国 農村 には,1億5000万 人か ら2億 人 の潜 在的失業 者がお り,今 後 の離 農者数 は,毎 年100万 人単位 で生 じる と

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図3都 市 と農 村 の1人 あ た り所 得 格 差

都 市 … … 懐 司

7,000 6,000 5,000 4,000

3,000 2,000 1,000 0

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繭● ¶F■●..

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資 料 国 家 統 計 局 『中 国 統 計 年 鑑 』(2001年 版)中 国 統 計 出 版 社,2001年,304頁 。

も1000万 人単位 で生 じる ともい われ てい る)。 と もあ れ,「 農 村 土 地 請 負 法 」 と 「物 権 法(草 案)」 あ る い は 「民 法 典(草 案)」 の 「物 権 篇 」 が 「土 地 請 負 経 営 権 」 の 上 限 を30年 と した こ と は,適 切 な 判 断 で あ っ た と い う しか な い 。

國 請 負 方 法 の 差 別 化

筆 者 は,通 常 の 十 地 と四 荒 地 とで 請 負 方 法 を差 別 化 す る こ と に つ い て 全 面 的 に賛 同 して い る 。 した が っ て,こ の 点 に つ い て は,課 題 と して 指 摘 し う る も の は な い 。

騒 「物 権 」 的 「土 地 請 負 経 営 権 」 と 「債 権 」 的 「土 地 請 負 経 営 権 」 の 設 定

筆 者 は,「 物 権 」 的 「十 地 請 負 経 営 権 」 と 「債 権 」 的 「土 地 請 負 経 営 権 」 の 設 定 に つ い て も, 請 負 方 法 の 差 別 化 と同 様 に全 面 的 に 賛 同 して い る 。

羅 係 争 の 処 理

係 争 の 処 理 につ い て は,第51条 と第52条 に 登 場 して い る 「農 村 土 地 請 負 仲 裁 機 構 」 に 仲 裁 を 委 ね る 点 に 問 題 が あ る よ う に 思 え る。 第51条 に は,係 争 当 事 者 双 方 の 協 議 あ る い は村 民 委 員 会 と郷(鎮)人 民 政 府 等 の 調 停 で 事 態 の 収 拾 が つ か な い 場 合,人 民 法 院 へ の 提 訴 と並 ぶ 手 段 と して

「農 村 土 地 請 負 仲 裁 機 構 」 に 仲 裁 を 求 め る こ と が で き る と あ る 。 こ こ で い う 「農 村 土 地 請 負 仲 裁 機構 」 と は,す で に 省 ・自 治 区 ・直 轄 市 の 人 民 代 表 大 会 常 務 委 員 会 で 制 定 さ れ て い る請 負 契 約 の 仲 裁 規 定 に 基 づ い て 各 級 農 村 行 政 主 管 部 門 に 設 置 さ れ て い る 機 関 で あ ろ う。 しか し,こ れ らの 機 関 は,独 立 性 と 中 立 性 に お い て 多 くの 問 題 を有 して お り,そ の 仲 裁 能 力 は 疑 わ しい 。 こ の 点 は, 土 地 を め ぐ る紛 争 の 多 くが 法 規 の 不 備 に よ っ て 生 じて い る の で は な く,法 規 が 実 効 性 に 欠 け る た

め に 生 じ て い る,と い う こ と と無 縁 で は な い 。 筆 者 は,「 農 村 土 地 請 負 法 」 に 「農 村 土 地 請 負 仲 裁 機 構 」 の 独 立 性 と 中 立 性 を担 保 す る 条 文 を設 け て お く必 要 を認 め る の で あ る。

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