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〈論 説〉
1)
経 済 の グ ロ ー バ ル化 と中 間 政 府 の 台 頭
ドイ ッの産業構造 転換 と地域産業政策
佐 藤 孝 治
目 次
1.は じめ に
2.NRW州 の 産 業 構 造 転 換 と地 域 産 業 政 策 (!)NRW州 の 概 観 と 産 業 構 造 の 特 徴 t2)NRW州 に お け る 産 業 政 策 の 動 向 (3)産 業 政 策 の パ ラ ダ イ ム 転 換 (4)地 域 産 業 政 策 と 産 業 遺 産 の 保 存
3.NRW州 の 科 学 技 術 政 策 と テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー (1)NRW州 の 科 学 技 術 政 策
(2>テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー の 動 向 (3)テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー の 評 価 4.BW州 の 産 業 政 策 の 動 向
(1)BW州 の 産 業 構 造 の 特 徴
(2)BW州 に お け る 産 業 政 策 の 動 向
5.経 済 の グ ロ ー バ ル 化 の も とで の リ ー ジ ョナ リ ズ ム の 役 割 (1)NRW州 の 産 業 政 策 に 関 す る 評 価
(2)BW州 の 経 済 成 長 と技 術 移 転 の 成 果 (3)わ が 国 に と っ て 学 ぶ べ き点
6.あ と が き
1.は じ め に
独 連 邦 雇 用 庁 が 発 表 した1997年12月 の 失 業 者 数 は452万2千 人 で,前 月 に 比 べ 約20万 人 増 加 した。 失 業 率 は1L8%で,前 月 比0.5ポ イ ン ト上 昇 した 。 400万 人 台 の失 業 者 数 は13ヵ 月 連 続 と な っ た。 こ の結 果97年 の 平 均 失 業 者 数 は前 年 に比 べ41万9千 人 増 え438万5千 人 と な り戦 後 最 悪 の 記 録 と な っ た 。
2商 経 論 叢 第33巻 第4号
0229)
ドイ ツ の雇 用 情 勢 は9月 ・10月 は や や 改 善 して い た が
,11月 に再 び430万 人 台 に 増 え,悪 化 が 懸 念 され て い た。12月 の 失 業 者 数 は 旧 西 独 地 区 が306万4千 人 で,失 業 率9.9%,旧 東 独 が145万6千 入 ,同19,4%で}東 西 と も悪 化 して い
る。
1990年11月 の 東 西 ドイ ッ統 合 後 の 経 済 成 長 の 低 迷 の も とで
,1996年 後 半 以 降 は企 業 レベ ル で 見 る と収 益 の 改 善 も見 られ る よ う に な って き た が,雇 用 に 関 して は 悪 化 の 一 途 を た ど り,と う と う第2次 世 界 大 戦 前 の1930年 代 前 半 と 並 ぶ 失 業 水 準 に達 す る こ と に な った 。 旧東 ドイ ッ地 域 の 高 失 業 率 は あ る程 度 予 測 で き る こ とだ っ た が,旧 西 ドイ ッ地 域 の 失 業 率 が9 .9%と2桁 台 近 くに な っ た こ と は注 目 に値 す る もの で あ る。 これ は欧 州 連 合(EU)全 体 の平 均 失 業 率 に近 い水 準 で あ りyこ の よ うな 大 量 失 業 を 景 気 循 環 だ け に よ っ て解 消 す る こ と は困 難 で あ る。
新 た な雇 用 機 会 を 生 み 出 す に は,産 業 構 造 を 転 換 して 高 度 化 す る必 要 が あ る こ と は 言 う ま で も な い。 ドイ ッ の 製 造 業 は本 来 強 い 国 際 競 争 力 を 持
っ て い る が ・ 日本 や ア メ リカ に大 き く差 を つ け られ て い る ハ イ テ ク分 野 を 拡 充 す る と と も に,経 済 の ソ フ ト化 ・サ ー ビ ス化 へ の 対 応 を 急 ぐ必 要 が あ る。 この よ う な 産 業 構 造 の 転 換 をEUの 経 済 通 貨 統 合 の プ ロ セ ス で も続 け な け れ ば な ら な い の が ドイ ツ経 済 が 直 面 して い る現 状 で あ り,今 後 必 要 な こ と は 技 術 革 新 を 通 じて 環 境 や 情 報 通 信 な ど の新 しい 産 業 分 野 の 需 要 を生 み 出 す こ とが で き る よ うな 産 業 政 策 を 展 開 す る こ と で あ る。
ドイ ツで は1980年 代 か ら テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー や イ ノ ベ ー シ ョ ンセ ン タ ー 建 設 が 盛 ん に な っ た が,こ れ は重 工 業 の 衰 退 で 失 業 率 が 高 くな っ た た め
a雇 用 を 創 出 す る新 産 業 を 興 す 必 要 に迫 ら れ て い た か らで あ る
。 テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー な ど は科 学 技 術 研 究 を 促 進 す る仕 組 み と して 注 目 を 集 め た が
,ア メ リカ や 日 本 に お け る サ イ エ ン ス パ ー ク と ほ ぼ 同 じ よ う な 機 能 を 果 た す も の で あ る
。 ル 騨一ル 地 域 を 抱 え る ノ ル トラ イ ン ・ヴ ェ ス トフ ァー レ ン州(NRW)に は
,こ の よ うな 産 業 構 造 の転 換 を 受 け て,イ ンキ ュ ベ ー シ ョ ン ル ー ム や ス タ ー トア
ップ ル ー ム な ど を提 供 す る60数 ヵ所 の テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー が 点 在 して い る
。
0228) 経済 の グ ローバ ル化 と中 間政 府 の 台 頭3
連 邦 国 家 で あ る ドイ ツ で は,産 業 構 造 の 転 換 に 対 応 す る た め の産 業 政 策 は連 邦 レベ ル で 実 施 さ れ る よ り も,バ ー デ ン ・ヴ ュ ル テ ンベ ル グ州(BW)やNRW
州 な ど に 典 型 的 に 見 られ る よ う に,伝 統 的 に州 政 府 主 導 に よ る政 策 に よ って 活 発 に 推 進 さ れ て き た 。 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 が 進 む と と も に,ヨ ー ロ ッパ 統 合 (EUの 成 立)に よ って これ ま で の 国 民 国 家 の 役 割 が 相 対 的 に 小 さ くな る 中 で, ヨ ー ロ ッパ で は 中 間 政 府(MesoGovernment)の 役 割 が注 目 さ れ る よ う に な っ て き た 。 中 間 政 府 と は,中 央 政 府 と基 礎 自治 体(一 般 的 に市 町村)の 中 間 レベ ル に あ る政 府 の こ とを 指 す が,イ タ リァ,フ ラ ン ス,ス ペ イ ン,ベ ル ギ ー,ポ ル ト ガ ル な ど の よ う に全 く新 た に地 域 レベ ル の 政 府 を 作 っ た場 合 と ノ ル ウ ェ ー,ス
ウ ェ ー一デ ン,デ ンマ ー ク,イ ギ リス な ど の 郡 や ドイ ツ の い くっ か の 州(Lander) の よ う に これ ま で の 中 間 レベ ル の 政 府 を 一 新 し,強 化 した 場 合 が あ る。
い ず れ に し て も,各 国 に お い て こ の よ う に 中 間 政 府 が 台 頭 して き た 背 景 に は,経 済 統 合 の 動 き な ど が 強 ま る中 で,リ ー ジ ョナ リズ ムが 大 き な役 割 を担 う 必 要 が あ る こ と が 認 識 さ れ る よ う に な っ て きた こ とが あ る。 ヨー ロ ッパ に お け る この よ うな 中 間 政 府 の台 頭 は,い くつ か の ヨー ロ ッパ諸 国 に と って は初 め て 経 験 す る最 も ラ ジ カ ル な制 度 的 な 革 新 の ひ と つ で あ り,そ の 基 本 的 な 意 味 は最 適 な 規 模 と最 適 な 行 政 区 域"anoptimumscaleandanoptimumterritorial
jurisdiction"を 模 索 す る た め の 政 府 レベ ル の 構 造 調 整 で あ る(Sharpe,1993)。
経 済 の グ ロー バ ル化 に よ って,リ ー ジ ョナ リズ ム の 存 在 意 義 が 薄 れ る こ と は な く,逆 に グ ロ ー バ ル な 経 済 活 動 が 展 開 さ れ る こ と に よ って リー ジ ョナ リズ ム の 役 割 は大 き くな って き た の で あ る。
ヨ ー ロ ッパ 統 合 と リー ジ ョナ リズ ム の 動 き は,西 ヨ ー ロ ッパ で 形 成 され た 国 民 国 家 に対 す る双 子 の 挑 戦 と して の 意 味 を 持 っ て い る。 ヨー ロ ッパ 統 合 は,経 済 的 な論 理 政 治 的 な論 理,そ して そ れ ら の論 理 を結 び 付 け る理 論 に 基 づ い た
も の で あ っ た 。 一 方,リ ー ジ ョ ナ リ ズ ム は,国 民 国 家 の ニ ー ズ と そ れ に 対 す る 外 的 な 圧 力 へ の 反 応 で あ り,ま た,文 化 的,歴 史 的 な ア イ デ ンテ ィテ ィの 主 張 へ の 応 答 と して ヨー ロ ッパ で は促 進 され て き た もの で あ る
。 政 治 に お け る地 方 分 権 的 な動 きが 加 速 され る と と もに,統 合 さ れ た ヨー ロ ッパ 市 場 の 出 現 に よ っ
4商 経 論 叢 第33巻 第4号 0227)
て,国 境 を 超 え て 自 由 に 移 動 す る企 業 投 資 に対 す る競 争 は激 化 して お り,中 央 政 府 は この 事 態 を次 第 に コ ン トロ ー ル で き な くな っ て きた 。 そ の よ うな 中 で, 市 場 原 理 に基 づ く ヨmッ1¥° の 経 済 統 合 の 理 念 と連 帯 や 福 祉 に 基 づ く社 会 政 策 的 な 理 念 の 間 の 対 立 を 最 も敏 感 に感 じ取 っ て 行 動 した の は,実 際 に は地 域 レベ
ル あ る い は 中 間 レベ ル の 政 府 で あ っ た(Keating,1993)。
経 済 の グ ロ ー バ ル 化 が 進 む こ と に よ って,地 域 経 済 や地 域 政 策 の 役 割 を 再 評 価 し,地 域 ガ バ ナ ン ス(統 治)の あ り方 を再 検 討 す る こ とが 今 日 で は 中 間 政 府 の 台 頭 の も とで の 大 き な 課 題 と な って き た。 企 業 に と って も,地 域 別,国 別,あ
る い は経 済 圏 別 の 違 い が 存 在 す る こ と は,グ ロ ー バ ル な 経 営 戦 略 を 展 開 す る上 で 非 常 に重 要 な戦 略 上 の ポ イ ン トで あ る。 グ ロ ーバ ル な 経 営 戦 略 と は,世 界 的 な 枠 組 み の 中 で 地 域 別 の 客 観 的 な 条 件 の 違 い を 比 較 優 位 と して 活 用 しよ う と す る企 業 組 織 の 戦 略(Braczyk,etai.,1996)の こ と で あ り,EU統 合 の も とで 中 間 政
2)
府 の 役 割 が 変 化 して きた こ と は この よ うな 点 か ら も理 解 す る こ とが で き る。
地 域 ガ バ ナ ン ス の形 態 と い う もの は,そ の 地 域 の 依 っ て 立つ 政 治,経 済,社 会 的 な条 件 や 歴 史 的 な背 景 な ど に よ って 違 っ て い る が,BW州 とNRW州 に お け る政 策 上 の経 験 は,経 済 の グ ロ ー バ ル 化 が 進 む 中 で の 中 間 政 府 や リー ジ ョナ リズ ム の 役 割 を検 討 す る 上 で 極 め て 有 益 な 示 唆 を 与 え て くれ る。BW州 は メ ル セ デ ス ・ベ ン ッ社 に 代 表 さ れ る 自動 車 産 業,機 械 産 業,ハ イ テ ク産 業 な ど の 集 積 が 進 ん で い る地 域 で あ り,州 政 府 の経 済 政 策 や 産 業 政 策 な ど は 市 場 重 視 の 政 策 理 念 の も と で 形 成 さ れ て い る。一 方,NRW州 に は1960年 代 ま で は石 炭 産 業 と鉄 鋼 産 業 に よ って 世 界 有 数 の工 業 地 域 を 形 成 して い た ル ー ル 地 域 が 立 地 して お り,産 業 構 造 の 転 換 の も と で,1960年 代 か ら中 央 集 権 的 な 政 策 理 念 を 重 視 し た 産 業 政 策 が 進 あ られ て き た 。 この よ う に そ の 依 って1L̲つ 理 念 の 違 い に よ っ て 政 策 的 な 対 応 に は顕 著 な違 い が 生 ま れ た 。
ドイ ッ の 連 邦 シ ス テ ム の も と で は,各 州 政 府 が 政 策 形 成 に 大 き な 役 割 を 果 た して い る。 た とえ ば,NRW州 に と っ て そ の 伝 統 的 な 産 業 構 造 を 転 換 して,よ り将 来 性 の あ る 市場 ニ ー ズ に対 応 した 産 業 を 創 出 す る こ とが 産 業 政 策 の 重 要 な 課 題 で あ る(HeinzeandHilbert1994)が,支 配 的 な 社 会 民 主党(SPD)の 政 策 理
(226) 経 済 の グ ロ ーバ ル化 と中間 政 府 の 台 頭5
念 が 現実 の政策 形 成 に も色 濃 く反 映 され て い るの も事 実 で あ る。NRW州 政府 は1987年 か ら州 内 の15地 域 に産 業 政 策 上 の実 質 的 な権 限 を 委 譲 す る こ とに よ って,産 業政 策 を分権 化 しよ う とい う取 り組 み を始 めた。 産 業政 策 の分 権化 を通 じて,NRW州 はその政 策 形成 プ ロセ ス に地域 の関係 者 を組 み入 れ る こ と を 組 織 的 に 試 み た。NRW州 政 府 は連 邦 政 府 やEUと 協 力 し提 携 す る こ と に よ って産 業 構造 の転 換 に対 応 す る政 策 を分 権 的 に進 め て きたが・ 産 業政 策 の分 権 化 の試 み が そ の狙 い通 りに成功 した か ど うか は十 分 に検 証 す る必 要 が あ るだ ろ う。 特 に,科 学 技術 政 策 や技 術 移 転 な どの分野 で はそ の よ うな分 権 的 な政策 が 十分 に効 果 を上 げ て い るの か ど うか は疑 問 で あ る。
そ こで 本稿 で は,NRW州 とBW州 を事例 と して,産 業構 造 の転 換 の もとで の ドイ ッ州 政府 の産 業政 策 の実態 を検 討 す る こ とで,中 間 政府 や リー ジ ョナ リ ズ ムの役割 を明 らか にす る こ とに した い。 具体 的 に は,第2章 で は,ド イ ッ経 済 の グ ロ ーバ ル化 の もとで のNRW州 の地 域 産 業 政 策 の特 徴 や役 割 を 明 らか
にす る。 一方,第3章 で は,科 学 技 術 政策 と リー一ジ ョナ リズ ムの関 係 をNRW 州 にお け る テ ク ノロ ジー セ ン ター事 業 を通 じて検 討 す る。 第4章 で は,BW州
の産業 政 策 の概 要 や特 徴 な どにっ い て明 らか にす る。 最 後 に結 論 と して,リ ー ジ ョナ リズ ムの役割 を整理 す る こ とに した い。
2.NRW州 の産 業 構 造 転 換 と地 域 産 業 政 策
(1)NRW州 の 概 観 と 産 業 構 造 の 特 徴
オ ラ ン ダや ベ ル ギ ー と国 境 を 接 す るNRW州 は人 口 約1780万 人 で,ド イ ツ の 中 で も っ と も都 市 化 の進 ん だ地 域 で あ る と と もに,ル ー ル 地 域 が 立 地 して い る ドイ ッ最 大 の 工 業 州 で あ る。 ル ー ル 地 域 は19世 紀 半 ば か ら石 炭 と鉄 鋼 を基 幹 産 業 と して発 展 して きた が,1960年 代 以 降,産 業 構 造 の 転 換 の も とで 石 炭 や 鉄 鋼 な ど の 産 業 の 衰 退 は 著 し か っ た 。1980年 の 時 点 で も,NRW州 の 主 要 産 業 ク ラ ス タ ー と して は化 学,自 動 車 と と もに 鉱 業(石 炭)や 鉄 鋼 が 入 って い た が, 今 日 で は 競 争 力 を 失 っ た石 炭 や鉄 鋼 に 替 わ って メ デ ィ ア ・情 報 通 信 産 業 や 環 境 保 全 産 業 が0躍 成 長 産 業 と して 登 場 して き た 。今 日 で は 石 油 化 学,機 械}電 機,
6商 経 論 叢 第33巻 第4号
(225) 表1NRW州 に関 す る経済 デー タ
指 標 NRW州
1980年 1993年 1994年
州 の人 口 17,044,0ao
177,220,QOO i7,78soao
労働力人口 8,948,4DO
7,515,700 7,412,70p 部 門 別 の労 働 力人 口
*第 一 次 産 業
171,200(2.5%) 137,800(1.8%) 141,400(1.9%)
*第 二 次 産 業 3,3fi2,100(48.4%) 3,099,340{41.3%) 一
2,992,900(39.7%)
*第 三次 産 業 3,415,100(49.1%) 4,278,5pO(56.9%) 4,328β00(58、4%)
失業率 4.6% 9.&%
10.7%
労 働 者1人 当 りのGDP(DM) 56,444
gs,4a1
}
1Q1,449
輸 出 の割 合 24.4% 25.5% 2fi.7%
輸 入 の割 合 29.1% novalue 32.1%}
直接投資
*海 外 か らのNRW州 へ の投 資(10億DM)
17.6 novalue 54.6
ア メ リ カ
5.2 14.0〜
オ ラ ン ダ 3.6 U.0
日 本 1.2
6.5 イ ギ リ ス
LO 5.9
ス イ ス
1.4 4.0
フ ラ ン ス 1.5 3.8
ベ ル ギ ー ・ ル ク セ ン ブ ル ク
1.2 2.4
*NRW州 か ら海 外 へ の 投 資(10億DM)
21.8 76.1
ア メ リ カ 4.4 22.1
ベ ル ギ ー ・ル ク セ ン ブ ル ク
2.9 10」
フ ラ ン ス
1.8 5.5
イ ギ リ ス 1.1 5.5
オ ラ ン ダ 2.4 5.5
ス イ ス 1.3 3.4
主 要 産 業 ク ラ ス タ ー 化 学 工 業 化 学 工 業
自 動 車 産 業 自 動 車 産 業
鉱 業 メディア・情報圃 誰 業
鉄 鋼 業 環 境 保 全 産 業
出 典:LDS‑Statistics,LAA‑Statisticsに よ り 作 成
(224) 経 済 の グ ローバ ル化 と巾 間政 府 の台 頭7
表2NRW州 の 就 業 構 造 の 変 化(1950‑1991)1 195Q1961197019871991
1000%1000%1000%1000%1000%
農 業 ・ 林 業 ・漁 業67411.74736.62423.51382.01441.9
製 造 業3,11254.24,00156.23,73953.83,02043.63,18242.5 商 業 ・ 運 輸 業961・16.71,25917.71,28518・51・22517・71・35018・0
そ の 他 サ ー ビ ス 業99817.41,38419.41,69024・32・55136・82・80637・5
合
言+5,7451007,tag1006,9571006・9331007・483100
1国 勢調査の最終結果 2金 融 ・保険を含む
出典:St。ti、tischesJ・h・bu・hN・・d・h・in‑Westfal・n1953,1962,1972,1989,1992
電 子,食 品 加 工 な ど の 産 業 の 成 長 も著 し く,化 学,機 楓 自動 車 はNRW州 の 主 要 な 輸 出 産 業 と な って い る。
統 計 デ ー タ に よ れ ば,NRW州 は ド イ ッ の 人 口 の22%,製 造 業 就 業 者 の 20%,工 業 生 産 の 約27%,輸 出 総 額 の23%を 占 め て お り・1992年 のGDPは 韓 国,香 港,タ イ の3ヶ 国 を 合 わ せ た もの と ほ ぼ 同 じ規 模 で あ る。NRW州 の第2
次 産 業 就 業 者 の 構 成 比 は1970年 の53。8%か ら1994年 の39.7%に 低 下 し た が, 依 然 と して ドイ ッ全 体 の 平 均 よ り も高 い割 合 を維 持 して い る。 な お ・ 同 年 の 第 1次 産 業 就 業 者 の 構 成 比 は1.9%,第3次 産 業 就 業 者 の 構 成 比 は58.4%と な っ
て い る(表1,表2参 照)。 ドイ ッの 大 企 業 ト ップ500社 の うち 約30%がNRW州
に本 社 を 置 い て い る が,中 小 企 業 の 集 積 も大 き くそ の 輸 出 競 争 力 は強 い。 州 都 ジ ュ ッセ ル ドル フ に は 日本 企 業 の 進 出 も多 く,日 本 人 の 居 住 者 は1万 人 を 超 え て い る。
海 外 か らのNRW州 へ の 直 接 投 資 は約546億DM(1994年)で,1980年 の176 億DMと 比 べ て 約3.1倍 の 規 模 に な って い る。投 資 額 は ア メ リカ・ オ ラ ン ダ・
日本,イ ギ リス の 順 に な って い る。 一 方,NRW州 か ら海 外 へ の投 資 は761億 DMで,1980年 の218億DMと 比 べ て 約3.5倍 の 規 模 に な っ て お り・投 資 先 と
して は ア メ リカ,ベ ル ギ ー ・ル ク セ ンブ ル グ,フ ラ ン ス,イ ギ リス,オ ラ ン ダ の 順 に な って い る。 海 外 へ の 投 資 の 方 が 金 額 的 に大 き い と 言 って も・ 海 外 か ら の 直 接 投 資 が 約72%の 規 模 を 持 っ て い る の で 日本 と は根 本 的 に条 件 が 異 な っ
8商 経 論 叢 第33巻 第4号
0223) て い る。
こ れ らの 統 計 デ ー タ か らNRW州 の 経 済 的 な パ フ ォ ー マ ン ス は な か な か 良 好 で あ る よ う に見 え るが ・そ の 失 業 率 は1・ .7%(1994年)で,ド イ ツ全 体 の 失 業 率 よ り も高 く・ 経 済 成 長 率 も高 くな い の が 実 態 で あ る
。 そ の 原 因 と し て は, ル ー ル 地 域 の 産 業 構 造 の 転 換 や 復 興 に 関 す る諸 問 題 がNRW州 全 体 の 経 済 指 標 に マ イ ナ スの 影 響 を与 え て い る こ と が あ る。 た と え ば,製 造 業 に 関 す る雇 用 統 計 の デ ー タ に よ れ ば,NRW州 の 雇 用 増 加 率 は ドイ ッ全 体 の 増 加 率 よ り も低 い こ とが 明 らか に な っ て い る が ,こ れ は ル ー ル 地 域 に お け る失 業 問 題 が 大 き な 要 因 と な って い る。
NRW州 の近 年 の 失 業 率 は だ い た い約10%程 度 で 推 移 して い る が
,ル ー ル 地 域 だ け を 取 り出 して 見 る と,そ の 失 業 率 は15%ま で 上 昇 す る
。製 造 業 就 業 者 は 1960年 を100と す る と,1993年 に はNRW州 で 約68,ル ー一ル 地 域 で 約50と な って お り・ 石 炭 や 鉄 鋼 の長 期 的 な衰 退 に よ って 地 域 が い か に 困 難 な状 況 に 直 面 して き た の か が よ く分 か る。 同 様 に,社 会 保 障 に 加 入 して い る就 業 者 の 割 合 も ル ー ル 地 域 が 足 を 引 っ張 る形 で,ド イ ッ全 体 と比 較 してNRW州 の割 合 を 低 下 さ せ て い る(図1,図2参 照)。
こ の よ うに構 造 的 な産 業 衰 退 に 直 面 して き た ル ー ル地 域 で は雇 用 問 題 が 極 め て 深 刻 で あ る が,工 業 集 積 度 の 高 い ル ー ル 地 域 は
,人 口 や 工 業 生 産 額 の 点 で NRW州 の1/3を 占 め て い る と と もに,今 日 で も産 業 構 造 に 石 炭 産 業 と鉄 鋼 産 業 の 影 響 力 が 根 強 く残 っ て い る。 旧 西 ドイ ッ地 域 の 石 炭 と鉄 鋼 生 産 の2/3
は依 然 と して ル ー一ル地 域 で 行 わ れ て い る。 石 炭 産 業 や 鉄 鋼 産 業 の就 業 者 数 は 今 で は20万 人 以Fに 減 少 して し ま っ た が,ル ー ル 地 域 の 製 造 業 は今 日 で も石 炭 産 業 や 鉄 鋼 産 業 の 伝 統 的 な生 産 ネ ッ トワ ー ク,生 産 概 念,生 産 体 制 な ど の 影 響 を 強 く受 け続 け て い る(Heinze,etaL ,1995)。
こ の よ う なNRW州 の 深 刻 な 労 働 市 場 の 状 態 が 政 治 的 な 関 心 を 高 め ,1960 年 代 か ら州 政 府 に と って 産 業 政 策 が 政 策 と して 優 先 順 位 の 高 い も の に なっ た。
こ の点 で ・ 既 存 の 企 業 に 新 規 事 業 へ の 参 入 を 促 す た め の 施 策 へ の 必 要 性 が 高 ま り,ル ー ル地 域 に お い て は構 造 不 況 の 直 中 に あ る石 炭 ・鉄 鋼 関 連 の 中 小 企 業 の
(222) 経済 の グ ロー バ ル化 と中間 政 府 の 台頭9
図1製 造 業 就 業 者 の 変 化(西 独,NRW州,ル ー ル 地 域)
出 典:LDS,StatistischesBundesamt;1960年 か ら1976年 ま で は従 業 員 規 模10名 以 ヒの 企 業 を 対 象,1977年 以 降 は従 業 員 規 模20名 以}二の 企 業 が 対 象 。
図2社 会 保 障 加 入 者 の 変 化(西 独,NRW州,ル ー ル 地 域)
出 典:LDS,StatistischesBundesamt;各 年 の デ ー タ は12月31日 現 在 の も の(た だ し1993年 の
み6月30日 現 在)
●
10商 経 論 叢 第33巻 第4号
0221)
多 角経 営 化 の 二〇 ズ も強 くな った。NRW州 の製 造 業 は高度 な技 術基 盤 を持 っ て い るが,同 州 に とって の問題 は高度 な技 術基 盤 が 伝統 的 かっ衰 退 しっ っ あ る 産 業 に集 積 して い る こ とで あ った。
その た め・NRW州 の産 業 政策 に と って は,製 造 業 全 体 を構 造転 換 させて よ り将 来 性 のあ る市場 に対 応 で き るよ うに,産 業 構 造 の高度 化 を 図 る こ とが 主要 な課 題 と して理解 され て きた。 この よ うな こ とが背 景 に な って
,産 業政 策 を推 進 して い く上 で 企 業 間 の ネ ッ トワ ー ク形 成 も重 要 な課 題 と考 え られ る よ うに
な って きた。
(2)NRW州 に お け る 産 業 政 策 の 動 向
NRW州 に お け る産 業 政 策 は,1968年 の 「ル ー ル 開 発 計 画 」(theDevelopment ProgrammeRuhr)か ら1980年 代 後 半 以 後 の 「産 業 政 策 の 分 権 化 」(th
eRegiona‑
lizationofStructuralPolicy)に 至 る ま で 約30年 近 くの 歴 史 を 持 ち
,ド イ ッ に お け る州 政 府 主 導 の産 業 政 策 を リー ドして き た。NRW州 政 府 で は,産 業 政 策 の こ と は 公 式 に は"構 造 政 策"と 呼 ば れ て い る が,産 業 政 策 と構造 政 策 と い う用 語 を 同 義 語 と して 使 肌 て い る もの で あ3).NRW州 の産 業 聯 帥 心 的 な 関 心 は,各 地 域 に お い て 均 衡 あ る生 活 環 境 を 創 り出 し維 持 す る こ と に あ る
。 ル ー ル地 域 は,ド イ ッ の 産 業 革 命 以 来,ド イ ッ の 経 済 成 長 の 牽 引 車 の 役 割 を1世 紀 以 上 の 間 果 た して き た が ・1960年 代 に な っ て 過 去 に お い て ドイ ツ経 済 を 牽 引 し,経 済 的 な 成 長 を もた ら した 石 炭 産 業 と鉄 鋼 産 業 に依 存 す る と い う産 業 構 造 の あ り方 自 体 がNRW州 経 済 だ け で な く ドイ ツ経 済 に とっ て も重 い 負 担 に な って き た。
そ の 当 時,連 邦 政 府 は石 炭 産 業 や 鉄 鋼 産 業 の 産 業 競 争 力 の低 下 に 対 して 具 体 的 な政 策 対 応 を行 う こ とが で き な か っ た の で,州 政 府 に よ る積 極 的 な対 応 が 必 要 で あ る との 声 が 強 ま った 。 ドイ ッ の連 邦 制 度 の も とで はa連 邦 政 府 と 州 政 府
と の 間 に権 限,責 任,財 源 に っ い て の 比 較 的 明 確 な 役 割 分 担 が 存 在 して い る
。 ドイ ツ連 邦 共 和 国 基 本 法 第70条 第1項 で は,基 本 法 が 連 邦 に 立法 権 を 与 え て い な い 限 り州 政 府 が 立 法 上 の権 限 を 保 持 す る こ と
,第2項 で は,連 邦 と州 の管
(220) 経 済 の グロ ーバ ル化 と中 間政 府 の台 頭11
轄 権 の範 囲 は,専 属 的立 法 と競 合 的立 法 に関 す る規 定 に従 って,区 分 す る こ と が 明 らか に されて い る。言 い換 えれ ば,経 済 法 な どの競 合 的立 法 の領域 に お い て は,連 邦 が そ の立 法権 を行使 しな い限 り,基 本 的 な 立法権 は個 々 の州 政府 の 権 限 と考 え られ4).ド イ ッの政 治 形態 は,地 域 レベル(特 に州 レベル)に お1ナる 強 力 な参加 と 自己調 整 の手続 き とい うこ とに よ って特 徴 づ け られ る もので あ る {Heinze,etal.,1995)o
しか し,こ の こと は,州 政 府 が全 く独 立 した産 業 政策 を行 え る こ とを意 味 す るわ けで は ない。 特 に,ほ とん どの財 源 的 な問題 に関 して は・ 州政 府 は連 邦 政 府 やEUと 協 力 ・協調 しなが ら政 策 を進 め な けれ ば な らな い。 しか しな が ら,
NRW州 の よ うに1966年 以 来,社 会 民 主 党 の 単独 政 権 あ る い は連 立 政 権 が 続 いて きた州 に と って,キ リス ト教 民 主 同盟 と自由党 が多 数 派 で あ る連 邦 政府 と の関 係 は多 少 困難 を伴 う もので あ った。
NRW州 政 府 は連 邦 政 府 との長 い時 間 を要 す る困難 な交 渉 を経 て,1968年 に 現 実 的 な産 業 政策 と して評 価 の高 い 「ル ール開 発計 画」 を開始 した。1964年 ま で に発 表 され た同州 政 府 のい くつ か の報 告書 で も,新 規 の雇 用 や所 得 を創 出す るため に は基 盤 整 備事 業 を強化 し調 整 す る必要 が あ る こ とが明 らか にされ て い た。 同計 画 は,ド イ ツ連 邦 共 和 国 に お け る州 政 府 の手 に よ る産 業 構造 の転換 プ
ロセ スへ の初 めて の介 入 的 な政 策 とな った。
連邦 財 源,州 財 源,ECか らの財 源 に よ って 支 え られ た 「ル ー ル開発 計 画」を 通 じて,NRW州 政 府 は地 域 の産 業 基 盤 の 改 善}工 業 都 市 の再 開 発 職 業 訓 練 ・研 修 プ ロ グ ラムの資金 調 達,石 炭産 業 や鉄 鋼 産 業以 外 の新 規企 業 の誘 致 や 既 存 企業 の拡 大 に取 り組 んだ 。 同時 に,構 造 不況 業 種 で あ る石 炭産 業 や鉄 鋼 産 業 の 失 業 対 策 な ど も実 施 した。 同計 画 の基 本 的 な枠 組 み は,1970年 代 以 後 の
の
様 々な計 画 の 中 で も本 質 的 に引 き継 が れ る こ とに な った。
1970年 代 にお け るNRW州 の産 業 政 策 は,州 内 の 中 小 企 業 の競 争 力 を強 化 す るた め に技 術 革新 を促進 す る ことを そ の最 重 点 課題 に して,戦 略 的 な近代 化 に よ って伝統 的 な産業 の弱 点 を克 服 す るた め の取 り組 み を始 あ た。 っ ま り・技 術 革 新 を通 じた中小 企 業 の競 争力 強 化 が1970年 代 の産 業政 策 の 目標 とな った。
12商 経 論 叢 第33巻 第4号
0219) 1974年 か ら 「鉱 業 技 術 計 画 」(Techn。1。gyProgrammeMining)や 「エ ネ ル ギ ー 技 術 計 画 」(TechnologyProgrammeenergy)が 実 施 さ れ,一 方,1978年 に は, 中 小 企 業 を 支 援 す る た め に 「経 済 技 術 計 画 」(TechnologyProgramm、eEc。nomy) が 始 め られ た。 現 在 も続 け られ て い る 「経 済 技 術 計 画 」 は
,国 際 競 争 力 を維 持 す る た め に製 品 と製 造 工 程 を 革 新 す る こ と に よ っ て,中 小 企 業 の 体 力 を 強 化 す る こ と を意 図 して い る。
1970年 代 末 に な っ て,石 炭 産 業 や 鉄 鋼 産 業 の 産 業 遺 産 の保 存 へ の 取 り組 み や そ れ らの 産 業 活 動 の 結 果 と して生 じた 環 境 ・社 会 的 な 問 題 に対 処 す る必 要 が 生 ま れ,1979年 に州 政 府 の 主 催 で 「ル ー ル 問 題 協 議 会 」(theRuhrConference)が
開 催 さ れ た 。 同 協 議 会 の 目 的 は,地 域 に関 連 した す べ て の 問 題 を 認 識 して ,な す べ き こ と に つ い て 総 合 的 か っ 集 中 的 な 議 論 を 始 め る こ と で あ っ た
。 そ こ で は,石 炭 産 業 と鉄 鋼 産 業 の 状 況,労 働 市場 の 現 状,道 路 交 通 や 産 業 活 動 に よ っ て 生 み 出 され た環 境 問 題 イ ンナ ー シ テ ィ の再 開 発 技 術 革 新 の 促 進 な ど の 問 題 が 論 議 さ れ た 。
同 協 議 会 が 終 了 した 後,1980年 か ら職 業 訓 練,技 術 革 新 ,イ ンナ ー シ テ ィの 再 開 発 ・ 文 化 プ ロ ジ ェ ク トな ど の 促 進 を 目 的 と した 「ル ー ル 行 動 計 画 」(the ActionPr。grammeRuhr)カa開 始 さ れ,NRW州 政 府 は1980年 か ら1984年 ま で そ の 財 源 の2/3を 負 担 す る こ と に な っ た。 こ の 計 画 と と も に
,産 業 政 策 関 連 の 施 策 と して,J二 場 や 炭 鉱 跡 地 な どの 遊 休 地 再 開 発 事 業 が 行 わ れ た。 石 炭 産 業 と 鉄 鋼 産 業 の 衰 退 に よ って,ル ー ル 地 域 に は大 規 模 な遊 休 地 が 生 み 出 さ れ て い た が ・ これ らの 土 地 は環 境 汚 染 が ひ ど い た め に ほ と ん ど利 用 さ れ て い なか
っ た。
NRW州 政 府 は,地 方 政 府 の 手 に よ る未 利 用 の 遊 休 地 再 開 発 を 支 援 す る た あ に不 動 産 基 金 の 設 立を 行 っ た 。 こ の 事 業 は現 在 も続 け られ て い る が
,遊 休 地 再 開 発 事 業 が 始 あ られ た 後 で,技 術 問 題 自然 環 境 問 題 ,汚 染 さ れ た 工 場 跡 地 の 公 害 除 去 費 用 な ど の 点 で,当 初 予 想 して い た よ り も問 題 が 複 雑 で あ る こ と が 認 識 さ れ る よ うに な っ た。
「ル ー ル行 動 計 画 」は,1960年 代 の 政 策 の 基 本 理 念 を 踏 襲 して い た がa技 術 革 新 の促 進 に よ って 産 業 構 造 の 転 換 を 進 め る必 要 性 を す べ て の 関 係 者 が 認 識 して
(218) 経 済 の グ ロ ー バ ル 化 と 中 間 政 府 の 台 頭13
い る か ど うか と い う点 に大 き な 相 違 が あ っ た。 同 計 画 に よ って,ル ー ル 地 域 の 環 境 問 題 が 改 善 さ れ た こ と は 間 違 い な く,イ ンナ ー シ テ ィの再 開 発 や 地 域 の 労 働 力 の 職 業 訓 練 が 進 め られ た こ と も事 実 で あ る が,産 業 構 造 の転 換 と い う点 で
は依 然 と して 問 題 が 残 る こ と に な っ た。
しか しな が ら,1980年 代 に な って 策 定 さ れ た 「ル ー ル 行 動 計 画 」 は,本 質 的 な点 で1970年 代 ま で の産 業 政 策 関 連 の計 画 と は違 って い た 。1970年 代 に は, 州 政 府 に と って まだ 経 済 開 発 を 中 央 集 権 的 に計 画 す る こ とが 可能 で あ る と考 え
られ て い た が,1980年 代 に な る と,政 策 の 重 点 は産 業 構 造 の 転 換 を 誘 導 す る こ と に移 り,州 政 府 の 役 割 もそ の 変 化 を 調 整 し,モ ニ ター す る こ とへ と変 化 して き た 。 産 業 構 造 の 転 換 自 体 は上 か らで な く下 か ら行 わ れ な け れ ば な ら な い の で,す べ て の 関 係 者 の対 話 が 今 日 で は重 要 な要 因 と考 え られ る よ うに な った 。 対 話 を 重 視 し た協 調 的 な 産 業 政 府 を 進 あ る と い うNRW州 に お け る政 策 上 の パ ラ ダ イ ム転 換 は,こ の よ うな 変 化 の 中 で 生 ま れ て き た の で あ る。
③ 産 業 政 策 の パ ラ ダ イ ム 転 換
1980年 代 末 に な って,ル ー一ル地 域 の基 幹 産 業 で あ った 石 炭 産 業 と鉄 鋼 産 業 の 状 態 は さ らに 深 刻 に な って き た。NRW州 政 府 は 「石 炭 ・鉄 鋼 地 域 の 将 来 の た
め の イ ニ シ ア チ ブ」(FutureInitiativeforCoalandSteelRegions)を 策 定 し,構 造 不 況 地 域 の 産 業 構 造 の 転 換 へ の 新 た な 取 り組 み を始 め た 。 そ の イ ニ シ ア チ ブ の 主 な対 象 活 動 領 域 は,1)技 術 革 新 と技 術 の 奨 励,2)労 働 力 の質 的 向 上,3) 雇 用 の 創 出 と保 護,4)基 盤 の整 備 と近 代 化,5)環 境 問 題 と エ ネ ル ギ ー 問 題 の 改 善 で あ る(HugginsandThomalla,1995)。
イ ニ シ ア チ ブの 基 本 的 な 考 え 方 は,そ れ 以 前 の 計 画 と そ れ ほ ど違 って い る訳 で は な か った が,決 定 的 な 違 い は イ ニ シ ア チ ブの 実 施 に 当 た っ て 地 方 分 権 化 を 提 案 し た こ と で あ っ た 。 こ の よ う な 政 策 の 目 新 し い 点 は,そ れ 以 前 の 計 画 に 色 濃 くあ った 厳 格 な 中 央 集 権 的 な雰 囲 気 を 全 く持 た な い と い う こ とで あ った 。 っ ま り,そ の基 本 的 な理 念 は,既 存 の 計 画 の 調 整 を 行 い 整 合 性 を 持 た せ る こ と で あ る。NRW州 政 府 は,1987年 か らル ー ル地 域 の再 生 を 賭 け て 州 の 産 業 政 策 を
14商 経 論 叢 第33巻 第4号
{217}
分 権 化 さ せ る と い う政 策 に着 手 した。NRW州 で 提 起 さ れ た 産 業 政 策 の 分 権 化 は,公 式 に は 「産 業 構 造 政 策 の 分 権 化 」(decentralizationofstructuralpolicy)と 呼 ば れ て い る が,そ の 主 た る 目 的 は地 域 レベ ル の 開 発 戦 略 を ま と め る こ と で あ
る。
産 業 政 策 の分 権 化 を 具 体 化 す る た あ に,NRW州 政 府 は州 内 の地 域 を 各 地 域 の 産 業 政 策 の 担 い 手 とな る15の 地 域(region)に 区 分 して
,各 々 の 地 域 ご と に 政 府 機 関,民 間 企 業,大 学 ・研 究 所,政 党}労 働 組 合 ,経 営 者 団 体 な ど の 関 係 団 体 に よ っ て 構 成 さ れ る地 域 協 議 会 を 設 立 した(図3参 照) 。 地 域 協 議 会 の役 割 は,地 域 開 発 計 画 を っ く り,そ れ を 全 体 の 合 意 に よ っ て 推 進 さ せ る こ と で あ る
。 地 域 協 議 会 の 関 連 した 組 織 ・団 体 の積 極 的 な参 加 に よ っ て 作 り出 さ れ た 協 調 や 対 話 を 重 視 す る産 業 政 策 は,今 日 のNRW州 の 産 業 政 策 の 主 要 な特 徴 と な って
い る(図4,図5参 照)。
NRW州 の産 業 政 策 に見 られ る よ うな 協 調 や 対 話 を 重 視 す る州 政 府 段 階 に お け る政 策 の 展 開 は,州 レベ ル に お け る コ ー ポ ラ テ ィ ズ ム(中 間 的 な コーポ ラテ ィ ズム=MesoCorporatism)と して 説 明 さ れ て い る
。 中 間 的 な コ ー ポ ラ テ ィ ズ ム に 関 す る事 例 研 究 の 巾 で は,BW州 の 大 企 業 に よ る 自治 を 重 視 す る コ ー ポ ラ テ ィ ズ ム をcorporatecorporatism ,NRW州 の 対 話 や 合 意 形 成 を 重 視 した コ ー ポ ラテ ィズ ム をstagedcorporatism ,ザ クセ ン州 の 東 西 ドイ ッ統 一 に よ る経 済 的 危 機 へ の 対 応 と して の 臨 時 的 な コ ー一ポ ラテ ィ ズ ム をCOntingentcorporat ‑ ismと し て 分 析 が 行 わ れ て い る(Heinze&Schmid ,19臨 政 治}こ お け る 雅 的
な傾 向 が拡 大 した こ と と相 ま って,EUの も とで の統 合市 場 化 は ヨー ロ ッパ全 体 の規模 で の 自由 な投 資 に対 す る地 域 聞 の競 争 を拡大 させ て お りy投 資 を受 け 入 れ るた めの政 策 や制 度 を準備 す る こ とが で きた地 域 に比 較 優位 性 を もた ら し て い る。 ドイ ッで は伝 統 的 に国 家 レベ ル の政 治 と密 接 に結 合 した州 政府 が確立
されて お り,基 盤 整 備 研 究 開 発,技 術 移転 な どを含 む経 済 開 発 の分野 での州 政府 の活 動 が ます ます 強 ま って い る こ とが注 目 され て い る(Keating ,1993)。
NRW州 経 済 技 術 省 の報 告 書 「地 方 分 権 化:NRW州 にお け る産 業 政 策 へ の 新 しい ア プ ロー チ」の序 文 で,GuntherEinert経 済 技 術 大 臣 は対 話 と協 調 を 重
(216) 経 済 の グ ロ ーバ ル化 と中 間政 府 の台 頭 15
図3NRW州 の分権 的な産業政 策の ための地域 区分
Theregions 1:Arnsberg
2二CentralRuhrValley/Bochum 3:Dortmund/UnnaDistrict/Hamm 4:Hagen
5:Siegen
6:0stwestfalen‑Lippe 7:TownsoftheBergischesLand
8:Dusseldorf/CentralLowerRhine 出 典:
NIEDERSACHSEN
9:MulheimanderRnhr/Essen/
Oberhausen(M‑E‑0) 10:LowerRhine
11:Aachen 12:Bonn 13:Cologne
14:Emscher‑Lippe 15:Munsterland
MinistryofEconomicsandTechnologyofNordrhein‑Westfalen,1992.
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商 経 論 叢 第33巻 第4号
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経 済 の グ ロ ーバ ル化 と中 間 政 府 の 台頭
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18商 経 論 叢 第33巻 第4号0
213) 視 した産 業 政 策 に関 す る新 しい ア プ ロ ー チ の論 理 に っ い て 次 の よ うに 述 べ て い
る・「NRW州 の 分 権 的 な産 業 政 策 は,対 話 と協 調 の 新 しい 理 念 に 基 づ い て 作 ら れ て い る。 … 州 民,高 等 教 育 機 関 ,産 業,労 働 団 体,政 治 家,公 務 員 の 関 与 が な くて は,分 権 的 な産 業 政 策 の実 現 は想 像 もで き な い こ とで あ
っ た。 … 分 権 的 な産 業 政 策 は髄 転 換 に 関 わ るす べ て の 関 係 者 の 一 致 し燗 与 が な くて は成 功 で き な か っ た だ ろ う。 社 会 市場 経 済 に お け る州 政 府 の コ ン トロー ル の 範 囲 は 限 定 さ れ て い る た め に・ 州 政 府 だ け の 力 で 持 続 的 な構 造 転 換 を 引 き起 こ す こ と は 不 可 能 で あ る」(MinistryofEconomicsandTechnology
,1992)。
石 炭 産 業 や 鉄 鋼 産 業 に長 鯛 依 存 して き た ル ー ル 地 域 の構 造 的 な 問 題 は深 刻 で あ っ た が ・ 州 内 の 他 地 域 も産 業 鰹 の 悪 化 な ど の 問 題 碗 え て い た の で
,時 間 が 経 過 す る に つ れ て,ル ー ル地 域 の 特 権 的 な 地 位 に 対 す る批 判 が 強 ま
って き た 。 そ の 結 果,「 石 炭 ・鉄 鋼 地 域 の 将 来 の た あ の イ ニ シ ア チ ブ」の 対 象 範 囲 が す べ て の 地 域 に 拡 大 され,1989年 に は州 内 の全 地 域 を対 象 と した 総 合 産 業 政 策 で あ る 「NRW州 の 全 地 域 の将 来 の た め の イ ニ シ ア チ ブ」(Futurelniti
ativef。rthe Regi。nsofNorth‑RhineWestphalia)と して 実 施 され る こ とが 決 定 さ れ た
。 1950年 代 に は ル ー ル 地 域 の 経 済 の80%が 石 炭 産 業 や 鉄 鋼 産 業 に 依 存 して い た が,1990年 代 に な っ て そ の 割 合 は30%に ま で 低 下 した
。産 業 構 造 の 多 様 化 は NRW州 の 長 期 的 な戦 略 で あ り,エ ネ ル ギ ー,化 学,環 境 保 全 ,貿 易,サ ー ビ ス 部 門 な ど の 売 上 高 の 占 め る割 合 も次 第 に 大 き くな って き た
。 今 日 で は 自動 車 生 産 や プ ラ ス チ ッ ク加 工 もNRW州 繍 の 聾 な 部 分 を 占 め て い る
.こ れ ら の産 業 以 外 に も・ デ ュ ッセ ル ドル フ の フ ァ ッ シ ョ ン産 業,金 融 関 連 産 業,展 示 ビ ジ
ネ ス}ケ ル ンの テ レ ビ関 連 な ど の情 報 通 信 産 業,あ る い は観 光 や 芸 術 ・文 化 な ど も経 済 の 重 要 な構 成 要 素 に な っ て い る。 第 三 次 産 業 に お け る就 業 者 は 労 働 力 全 体 の 約58%を 占 め て お り・ これ は ドイ ツ全 体 の 平 均 を や や上 回
っ て い る割 合 で あ る。
NRW州 の30年 間 近 くに わ た る産 業 政 策 を 見 て み る と
,政 策 的 な パ ラ ダ イ ム の 転 換 が あ っ た こ とが よ く分 か る
。1968年 の 「ル ・一ル 開 発 計 画 」 に代 表 さ れ る初 期 の 産 業 政 策 で は,中 央 集 権 的 な計 画 の も とで の経 済 開 発 が 考 え られ て い
(212)繍 のグ・一バル化と中間政府の台頭19
た.197・ 年 代 に は,石 炭 産業 や 鰯 産 業 な どの伝統 的 な産業 か ら離 れ て・ 産業 政 策 の重 点 的 な施 策 と して中小 企 業 の技 術 革新 の促 進 が取 り上 げ られ る よ うに
な って きた0
1980年 代 にな る とs技 術 革新 が 引 き続 き産業 政 策 の重 点 と して取 り上 げ られ る と と もに,産 業 政策 の対 象 地域 と して ルー ル地域 以 外 の地 域 も含 まれ るよ う に な った。 一方,州 政府 の役割 も見 直 されて,経 済 開発 を推 進 す るた めの政 策 は州 政 府 か ら地 域 に分 権 化 され た。 逆 に,開 発概 念 の策 定 や そ の実施 に 当 た っ て,地 域 の関 係 団体 を含 む必 要 性 が 広 く認 識 さ れ る よ うに な った。 そ して, 1990年 代 に入 って,産 業 政 策 の分 権化 が本 格 的 に進 あ られ る ことに な った。産 業 政策 の分 権化 の主 要 な 目標 の一 っ は,協 調 や地 域 の主体 性 を強化 す る こ とに
よ って地 域 の意 思決 定 の効果 を改善 す る ことで あ る。
産業 政 策 の分 権 化 に よ って もた らされ た州 政府 に とって の積極 的 な意義 と し て は,1)協 調 的 な環 境 の改善,2)地 域 の主 体性 の強 化・3)地 域段 階 に お け る 関 係者 間 の接 触 の増加,4)欄 的 な手続 きの確立 ・5)紛 争 の轍 と合意 の程 度 の増 大,6)共 通 資源 の活::)地 域 レベ ル1こお け る個 別 政策 の統 合・8)相
互 の 政治 的 な支 援,な どが挙 げ られ て い る(HeinzeandHilbert,1994)。
NRW州 の産 業政 策 は二重 の課 題 と対決 せ ざ る を得 な い。 す なわ ち,近 代 化 を推 進 す る こ とがで きな けれ ば,地 域 全 体 の持 続 的 な成 長 が 長期 的 に は危 険 に さ らされ る。 一 方 で,時 代 遅 れ の産 業構 造 を一 時 的 に保存 で きな けれ ば,社 会 的 な結 合 力 は弱 ま り,近 代 的 な経済 構 造 の基盤 が解体 して しま う,と い う こ と で あ る。NRW州 の産 業政 策 の歴 史 に は この ジ レ ンマが常 に反 映 されて い る。
州政 府 の産 業 政策 に対 して はy早 め に ス ク ラ ップ化 され るべ きで あ った産 業 を 保 護 したた め に多 くの資 源 が浪費 され て しま った とい う批 判 や,産 業 政策 の あ る要 素 は少 な くと も変 化 を促 進 す る よ り も構 造 的 な硬 直性 を生 み出 す こ とに貢 献 した ので はな いか とい う疑 問 が 出 され て い る。 これ らの見 解 に対 して,産 業 政策 の擁 護者 は,産 業政 策 関連 の様 々 な施 策 が段 階 的 かっ進 行 中 の変 化 に と っ
て重 要 な推 進 力 を与 え たの で,余 り大 きな社会 的 な苦難 を 引 き起 こさな か った ので はな いか と指摘 して い る。
20商 経 論 叢 第33巻 第4号
X211) しか しな が ら,こ の よ うな 積 極 的 な観 点 と は 著 し く違 って
,NRW州 政 府 の ..的., な 政 策 ア イ デ ア の 中 に は失 望 させ られ る も の もあ る
こ と に注 意 す る必 要 が あ る。NRW州 の現 状 を考 慮 す る と,州 政 府 と州 議 会 は産 業 政 策 の 分 権 化 に 伴 っ て 権 限 や 情 報 を 地 域 に 提 供 す る必 要 が あ る こ と は 明 らか で あ る(H
einze andHilbert,1994)が ,産 業 構 造 の 転 換 が ど の よ う に進 め られ た の か と い う疑 問 に つ い て は,第3章 で テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー や 技 術 移 転 に 関 す る 問 題 を 議 論 す る際 に検 討 す る こ と に した い。
(4)地 域 産 業 政 策 と産 業 遺 産 の 保 存
NRW州 の 産 業 構 造 の転 換 を 検 討 す る上 で 忘 れ て は な らな い こ と は
,州 政 府 が 産 業 政 策 の一 環 と して 主 に ル ー ル 地 域 に存 在 して い る産 業 遺 産 の 保 存 に熱
J、
に取 り組 ん で い る こ と で あ る。 産 業 遺 産 の 保 存 は
,IBAエ ム シ ャ1¥° 一 ク と呼 ば れ る産 業 遺 産 の 保 存 再 生 に 重 点 を 置 い た事 業 と閉 鎖 さ れ た 工 場 や 炭 鉱 跡 地 な ど を 産 業 博 物 館 と し て 残 す 事 業 に よ っ て 進 め ら れ て い る
。 特 に,IBAエ ム シ ャー パ ー ク 事業 の 特 徴 は,地 域 の 広 域 的 な連 携 と産 業 遺 産 な ど地 域 の 持 っ 歴 史 ・文 化 を継 承 す る こ と に あ る。
IBAエ ム シ ャ ー パ ー ク は 構 造 的 不 況 地 域 で あ る ル ー ル 地 域 の 再 生 を 主 た る 目 的 に して,NRW州 と エ ッセ ン,ド ル トム ン ト,デ ュ イ ス ブ ル ク な ど17の 市 が1989年 か ら10年 計 画 で 取 り組 ん で き た 事 業 で あ る
。IBAは 国 際 建 築 展 覧 会 (lnternationaleBauausstellung)の 略 称 で ,建 築 ・都 市 計 画 の分 野 で そ の 時 々 の 縫 的 な テ ー マ を取 り上 げ・ そ れ を プ ・ ジ ェ ク トと して恒 久 展 示 す る と い う事 業 手 法 の こ とで あ る・ エ ム シ ャ ー パ ー ク の 文橡 地 域 は ル ー ル 地 域 の 北 部
,人 工 河 川 で あ る エ ム シ ャ ー川 を 中 心 に 東 西 に 延 び る 約8万 ヘ ク タ ー ル の 丘 陵 地 で (図6参 照),石 炭 ・鉄 鋼 の 構 造 的 不 況 ,高 失 業 率,工 業 化 の 結 果 と して の 水 質 汚 濁 ・ 土 壌 汚 染 緑 の 破 壊 な どの 様 々 な 問 題 を抱 え て い る
。
同 事 業 の 実 質 的 な 推 進 役 と な っ て い る 州 政 府 の 全 額 出 資 会 社 「IBAエ ム シ ャ ー一パ ー ク計 画 会 社 」 は事 業 の基 本 方 針 と して
,① 緑 地 公 園 の 整 備 な ど 自然 景 観 の 復 旧,② エ ム シ ャー 川 の 自然 生 態 の 改 善 ,③ 運 河 周 辺 を レ ク リエ ー シ ョ
経済のグローバル化と中間政府の台頭21(210)
ンの 場 と して 整 備 ④ 伝 統 的 建 築 物 を 産 業 文 化 財 と して 保 存 再 生 ⑤ 公 園 内 の オ フ ィ ス整 備,⑥ エ コ ・ ジ ー に配 慮 した住 宅 開 発 ・ ⑦ 福 祉 ・文 化 ・ス ポ ー ッ施 設 の 整 備,な ど を 掲 げ て い る(IBAEmscherPark,1996)・
こ れ らの 方 針 に 基 づ い て92近 くの プ ・ ジ ェ ク トカ弍働 られ て い る が ・ 産 業 遺 産 の 保 存 再 生 に重 点 を 置 い て い る と こ ろ が旧 本 で よ くあ る 「ス ク ラ ップ'
ア ン ド.ビ ル ド」 方 式 と違 う点 で あ る。 か つ て ヨ ー ロ ッパ 有 数 の炭 坑 で あ り, 1974年 に 閉 山 し た ボ ー フ ム納 の オ ラ ン ダ炭 鉱 跡 地 の 炭 鉱 用 巻 き上 げ 櫓 は歴 史 的 建 築 物 と して そ の ま ま保 存 さ れ て,跡 地1こ鍛 さ れ る予 定 の諜 団 地 の ラ
ン ドマ ー ク に な っ て い る.ま た 一 ユ ネ ン市 の 旧 賃 金 ホ ー ル もそ の一 つ で あ る・
炭 鉱 労 瀦 が 給 料Rけ 取 る場 所 と して 使 わ れ て き た 赤 茶 レ ン ガ 造 り の 建 物
は,内 部 が吹 き抜 け構造の表現犠 様式 を伝 え る髄 な産業遺産で勢 内部
の基 本 的 な 部 分 を残 しな が ら,会 議 場 に改 造 さ れ る こ と に な っ て い る。
こ の よ う なIBAエ ム シ ャ ー一パ ー ク の プ ロ ジ ェ ク トに 対 して は 当 初 か ら様 々 な 批 判 が あ り現 在 もな くな って い るわ けで は な い が ・IBAエ ム シ ャー ノぐ一 ク は古 い 工 業 地 域 の産 業 構 造 転 換 に 向 け た 公 共 部 門 主 導 の 注 目す べ き事 例 と して
図6.,エ ム シャーパ ー クの地域範 囲
[コIBAエ ムシャー ・・一ク地 域 市町 村の 境 界線
〜 河川 ・運河
高速道 路
出 典:Kilp・ ・andW・ ・d,1995,210頁 ・
22商 経 論 叢 第33巻 第4号
0209) 急 速 に 認 め られ る よ うに な って き た(KilperandW。 。d
,1995)。
一 方・ エ ム シ ャ 咽 一 ク の よ う に 限 定 した 地 域 だ け を 対 象 と す るの で な く , ル ー ル繊 全 域 の 閉 鎖 され た 鰍 所 高 炉
・ 織 物 工 場 炭 鉱 鍛 な ど 纏 業 博 物 館 と して 保 存 す る事 業 も198・ 年 代 後 半 か ら別 に 実 施 さ れ て お り
,199sま で に8ヵ 所 の 施 設 が 産 業 博 物 館 と して 非旨定 さ れ 諺 復 工 郵 行 わ れ
て一 般 に 公 開 さ れ て い る。
た とえ ば,ド ル トム ン ト ・ボ ー ビ ン グハ ウゼ ンの 炭 鉱(th
eZ。11ern皿/Ncol‑
lie「y)は ・1898年 か ら19・4年 に か け て ゲ ル ゼ ンキ ル
ヘ ン炭 鉱 会 社 に よ って 開 発 され た ・最 先 端 の設 備 を 備 え た炭 鉱 で あ っ た
.同 炭 鉱 は1966年 に 閉 鎖 され た が ・ 当 時 の 建 物 や 設 備 は ほ とん ど完 全 な ま ま で 残
っ た.そ の 後 ,'̀‑rと し て 保 存 さ れ る こ とが 決 定 され 諺 復 を 経 て199・ 年 か ら一 般 に 公 開 さ れ て い る
。 現 在 も建 物 の 修 復 作 業 が 続 け られ て い る(写 真 参照)
。 この よ う に過 去 の 遺 産 を捨 て 去 る の で は な く
,歴 史 ・文 化 の継 承 が 新 た な 発 駒 土 台 で あ る と す る考 訪 は・IBAエ ム シ ャ 咽 一 ク や産 業 博 物 齢 業 唖 要 な哲 学 で あ る・ 地 域 醗 は眠 に支 持 さ れ る腰 が あ る と い う理 念 に基 づ し
、 て滴 の 顯 轍 壊 す る よ う な や り方 は極 力 避 け て 過 去 の
wを 新 た な 発 展 の 基 礎 づ け に す る とい う考 え 方 は
・ 歴 史 的 遺 産 と開 発 と の 敵 に悩 む わ が 国 の ま ち づ く りや 京 浜 工 業 地 帯 の よ うな 醐 発 の腰 な 場 所 に と
っ て学 ぶ べ き と こ ろ が 多 くあ る。
3.NRW州 の 科 学 技 術 政 策 と テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー
(1)NRW州 の 科 学 技 術 政 策
ドイ ツ の 科 学 技 術 政 策 の 目標 の 一 つ は技 術 移 転 を 強 化 す る こ と
で あ る カfド イ ツ は他 の 先 進 工 業 国 と比 較 して ・・イ テ ク産 業 の 育 成 に 立 ち遅 れ た
.し か しな が ら・1980年 代 に な って 州 政 府 の 政 策 的 な主 導 で ・・イ テ ク蝶 育 成 の た め
の テ ク 加 ジ ー セ ン タ ー(テ クノ ・ ジーパ ー ク)の 鮪 が 本 格 的 に 始 あ られ た
.輌 ドイ ツ のBW州 はハ イ テ ク産 業 の 集 積 が 進 ん だ 地 域 で あ り
,技 術 移 転 や テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ 吻 整 備 を穂 的 に働 て き た が
,テ ク ノ ・ ジ 地 ン タ ー の 難
0208) 経 済 の グ ロ ーバ ル 化 と中 間政 府 の台 頭23
保存される歴史的遺産の事例
TheZollemII/IVColliery Do詫 欄nd鱒8δvlngha㈱n
η 解8π 鰹'η回 〜ρ粥 ぞ,1》納 顔̀ノ'で戦 ノ蘭 ノ置̀ノ醜 〃4加 紹19ρOl
TheHenrichshutteironworks Ha伽gen
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出 典:ThyWestphalianIndustrialMuseum
24商 経 論 叢 第33巻 第4号C2Q7)
を も っ と も広 範 囲 に進 め た の はNRW州 で あ った
。 連 邦 政 府 か ら の補 助 金 が 極 め て少 な い ドイ ツで は
,地 域 的 な テ ク ノ ロ ジ̲セ ン タ ー(イ ノベ ーシ ョンセ ンター)の 分 布 が 連 邦 制 度 の も と で の 州 政 府
の 科 学 技 術 政 策 を よ り密 接 に 反 映 した もの と な っ て い る
.特 に,NRW,BW,ニ ー ダ ー ザ クセ ンの 各 州 で は・ テ ク ノ ・ ジ磁 ン タ ー1ま科 学 技 術 や経 済 を 振 興 し
,地 域 的 な 不 均 働 軽 減 と い う地 域 政 策 の 腰 を 達 成 す る た め の 政 策 手 段 と して 重 視 され て い る。 そ の 中 で もNRW州 とBW州 に お け る科 学 技 術 政 策 の 展 開 は
,他 の 州 と比 べ て 注 目 す べ き もの で あ る
。 しか し,ド イ ツ の 州 政 府 主 導 に よ る テ ク ノ ロ ジー セ ン ター 事 業 は経 済 成 長 や 技 術 競 争 力 の 明 らか な 象 徴 で も な く
,そ の 地 域 の後 進 性 の 明 白 橡 徴 で もな い(Sternberg ,1995)と い う点 に は 留 意 す る必 要 が あ る。
州 政 府 の 産 業 政 策 蠣 成 要 素 と して の 禾斗学 技 術 政 策 は詩 に 中 小 蝶 の 基 盤 的 技 術 を 強 化 す る た め の 前 グ ル ー プ へ の 支 援 を 行 っ て い る
.NRW州 政 府 は汰 学 や 研 究 鞭 と中 小nを ネ ッ トワ ー クす る上 で の セ ン ター と し磯 能 す る 仲 織 関 を 特 に勧 して 産 業 に多 様 な サ ー ビ ス を 提 供 す る よ う な
,科 学 技 術 関 醜 設 の 公 的 な 基 盤 を創 出 す る こ と で 介 入 的 な ア ブ ・一 チ を 取 り入 れ て し、
る。 これ らの 仲 介 機 関 や 施 策 の 中 はNRW州 の 技 術 革 新 ・科 学 技 術 ネ ッ トワ ー ク の 中 心 勢 力 で あ る4つ の 支 援 組 織 に よ っ て 構 成 され て い る 【1)産 業 界 に あ る 31の 研 究 開 発 セ ン タ ー,2)科 学 技 術 と民 間 企 業 の 間 の 協 力 を 促 進 す る た め の 技 術 移 轍 フ ィ ス・3).,..的 なnを 支 援 す る 働 の テ ク 加 ジ ー セ ン タ ー
, 4)技 術 や僕 鞠 に 関 し縛 門 的 な 企 業 間 の 協 力 を 灘 す る科 学 技 徽 関 や 関 連 施 策 】(HugginsandTh・malla199) 。
科 学 技 術 ネ ッ トワ ー ク に関 す る こ れ らの4っ の 櫻 な 政 策 手 段 は ,NRW州 の 企 業,な か で も製 造 業 の約95%を 構 成 し
,技 術 関 連 部 門 の 労 働 力 の60%以 上 を 占 め て い る 中 小 企 業 の 競 争 力 を維 持 し強 化 す る こ と を 目標 と して い る
。 NRW州 で は・1980年 代 半 ば か ら産 業 政 策 の 重 要 な 戦 略 と して テ ク ノ
ロ ジ̲
セ ン タ ー事 業 の 支 援 に よ る ハ イ テ ク産 業 の 育 成 を 始 め た
。 テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ}はNRW州 の 技 術 革 新 ネ ッ トワ ー クの 重 要 な 部 分 を 構 成 して い るの で
,タ寸・1
0206) 経 済 の グ ローバ ル化 と中間 政 府 の 台 頭25
政 府 は科 学 技 術 計 画 の 一 環 と して テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー の 設 立 へ の 支 援 を 行 っ て い る。 しか しな が ら,す べ て の テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー 事 業 は地 域 の 政 策 主 導
に よ っ て推 進 さ れ な け れ ば な らな い。 テ ク ノ ロ ジー セ ン ター は0般 に 地 域 の 商 工 会 議 所,労 働 組 合,高 等 教 育 機 関,研 究 所,銀 行,民 間 企 業,地 域 協 議 会 な ど が参 加 した 共 同 事 業 と して 設 立 さ れ運 営 さ れ て い る。
② テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー事 業 の 動 向
テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー の 建 設 に は,中 小 企 業 を 支 援 す る た め の 経 済 技 術 計 画 を 通 じて 財 政 的 な 支 援 が 行 わ れ て お り,NRW州 の テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー は 1996年 半 ば ま で に計 画 中 の もの も含 め て64ヶ 所 に な っ た。1994年 ま で に 完 成 した テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー は48ヶ 所 で あ っ た の で,い か に急 激 に 増 加 して い る の か と い う こ とが 分 か る(表3参 照)。 そ れ らの 中 で も,オ ラ ン ダ とベ ル ギ ー の 国 境 に近 い歴 史 上 有 名 な 都 市 ア ー ヘ ン と ル ー ル地 域 の 中 心 都 市 ドル トム ン ト の2つ の テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー は産 業 構 造 転 換 の シ ンボ ル と見 られ て い る。
ドル トム ン ト ・テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー は1985年 に 作 ら れ た ドイ ツ の 中 で も っ と も古 くか らあ る テ ク ノ ロ ジー セ ン タ ー の 一 っ で,も っ と も成 功 した もの で あ る と い う評 価 を 得 て い る。1994年 現 在,59の 事 業 所 が 立地 し,従 業 員 総 数 は879名 で あ る。 同 テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー は ドル トム ン ト大 学 に 隣 接 した 約 150の ハ イ テ ク関 連 企 業 が 進 出 して い る ドル トム ン ト ・テ ク ノ ロ ジ ー パ ー ク の 中 に あ り,そ の パ ー クの 中 に は フ ラ ウ ンホ フ ァー物 流 研 究 所 や ロ ボ ッ ト工 学 研 究 所 な ど の様 々 な 研 究 所 も立 地 して い る。 テ ク ノ ロ ジ ー セ ン ター は ドル トム ン
ト大 学 な ど の 研 究 施 設 と 協 力 す る こ と に よ って 科 学 技 術 関 連 の基 盤 や サ ー ビス な ど を 提 供 して い る。
ドル トム ン ト ・テ ク ノ ロ ジ ー セ ン ター は技 術 移 転 研 究 所 と して 当 初 設 立 さ れ た が,現 在 で は ソ フ ト ウ ェ ア と コ ン ピ ュ ー タ 工 学 の た め の 重 要 な 集 積 地 で あ る。 同 テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー に は イ ンキ ュ ベ ー ター と して の 機 能 よ り も,研 究 開 発 機 関 と既 存 企 業 の 間 の イ ン タ ー フ ェ ー ス と して 機 能 す る こ とが 求 め られ て い る。 ドル トム ン トの研 究 開 発 は 毛 と して コ ン ピ ュ ー タ工 学,電 気 」二学,機 械
26 商 経 論 叢 第33巻 第4号
0205)
表3NRW州 の テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー(1994年 現 在)
都 市 名
Aachen Alsdorf Ascheberg BadQeynhausen Baesweiler Bochum Bonn Bottrop Castrop‑Rauxel Detmold Dortmund Duisburg Eschweiler Essen Geilenkirchen Gelsenkirchen Gladbeck Gronau Hagen Hamm Herne
Herten‑Westerholt HerzOgenrath Huckelhoven Iserlohn Iserlohn iJ田ich
Kevelaer Kleve Koln Korschenbroich Liidenscheid Lunen Marl Menden Meschede Moers Munster Oberhausen Paderharn Remscheid Rheine Schwerte(HTC}
Schwerte(T7) Siegen‑Ueisweid Solingen Unna Wuppertal
ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー
設立 され た年 ま た は 設
見込 み の年 事 業 所 数 従 業 員
198 56 約415
1991 27 約253
199 8 20
1991 8 52
1990 26 iii
1991 20 168
1984 so 674
1993 } 2
1992 17 74
1993 ㎜‑". 3
19$5 59 879
1987 26 310
1989 21 85
198.5 82 71.1
199.3 一一} 一
1994 } 一
1993
畿 ㎜ 畿 躍 器 ㎜ 聯 器 躍 膿 欝 器 翻 器 欝 器 灘
4291626一一一‑一18104320167122123i7
1092815221542017306
出 典Technologie‑HandbuchNordrhein‑Westfalen ,1995,409頁 。
53 4?
89 約100
417 104 41 57
43 354 15
27 85 126
QりΩUにり;﹂ΩりQぱ3・4
121 93 137
床 面 積
約10,000 ia,aaa l,250 1,300 x,400 6,:1!約9,000 28,000 2,000 1,35 5,700 21,700 7,5pO 3,756 19,300 1,800
約3,000 4,900 1,894 2,800 正,923 3,UOO
::1 約7,000
6UU 3,400 5,Q80.28
Sao 2,000 5,500 sass 1,363 約3,100 2,600 約1,fiOO 約1,100
2,6QO 14,696 約17,500 2,060 7,goo 1,340 1,350 7,aaa 7,000 6,000 5,000 3,40Q‑5,444
(204) 経 済 の グ ローバ ル化 と中間 政 府 の 台頭27
工 学,化 学 の分 野 に集 中 して い る。 さ らに,環 境 保 全 技 術 や特 殊 素 材 の 分 野 で 多 くの プ ロ ジ ェ ク トが 実 施 され て い る。 こ の よ うな研 究 開 発 機 関 の 集 積 に よ っ
て,ド ル トム ン トは技 術 的 な 共 同 研 究,協 力,ネ ッ トワ ー キ ン グ な ど の 点 に 関 して ドイ ッで も っ と も成 功 した 地 域 の一 っ とな って い る(HugginsandThoma‑
11a,1995)0
ア ー ヘ ン ・テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー は,ア メ リカ の 経 済 雑 誌 「ビ ジ ネ ス ウ ィ ー ク」 に よ って ハ イ テ ク産 業 育 成 に よ る ドイ ッ経 済 再 生 の旗 手 と して 取 り上 げ ら れ,「 ア ー ヘ ンは シ リコ ンバ レー で は な い が,そ の 政 策 は明 らか に地 域 経 済 を 再 活 性 化 させ,技 術 移 転 を経 済 成 長 の た あ の重 要 な構 成 要 素 に した」 と して 高 く
評 価 さ れ て い る(Schares,1994)。
同 テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー は1984年6月 に ア ー ヘ ン工 科 大 学 キ ャ ンパ ス の 古 くな っ た工 場 を 改 造 した 建 物 か ら始 ま っ た。 ア ー ヘ ン地 域 で は炭 鉱 の 閉 山 に よ り石 炭 産 業 や 関 連 産 業 な ど で 大 量 の 失 業 が 発 生 す る こ と が 懸 念 さ れ る よ う に な っ た 。 そ こで,産 業 構 造 の 転 換 を 進 め る た め に は地 域 が 一 体 と な った 政 策 的 な行 動 が 必 要 で あ る と い う認 識 が 広 ま り,活 発 な投 資 の促 進 を通 じて産 業 構 造 の 転 換 を 奨 励 して い く こ とが 提 案 され た 。 ア ー ヘ ン地 域 は,就 業 人 口 に 占 め る 科 学 者 ・技 術 者 の 割 合 が ドイ ッで も っ と も大 き く,ヨ ー ロ ッパ で も っ と も大 規 模 な 工 科 大 学 で あ る ア ー ヘ ン工 科 大 学,情 報 通 信 関 連 企 業 の 約400あ る研 究 開 発 セ ン ター な ど も立 地 して お り,科 学 技 術 の 集 積 が ヨ ー ロ ッパ で も っ と も進 ん
で い る地 域 で あ る。
1984年 に 創 設 さ れ た ドイ ツ で2番 目 に 占 い ア ー ヘ ン ・テ ク ノ ロ ジ ー セ ン タ ー は,「 革 新 的 な ア イ デ ア を 市場 性 の 高 い製 品 に転 換 す る」と い う こ と を モ ッ トー に,ア ー ヘ ン地 域 の 科 学 技 術 の 集 積 と い う 立地 上 の条 件 を生 か して 新 規 企 業 の ス タ ー トア ップ に取 り組 ん で きた 。 テ ク ノ ロ ジ ー セ ン ター 事 業 を推 進 す る
た め の マ ネ ー ジ ャ ー 役 と し て 設 立 さ れ た ア ー ヘ ン 技 術 革 新 ・技 術 移 転 協 会 (AGIT)は,ア ー ヘ ン商 工 会 議 所,ア ー ヘ ン市,周 辺4つ の郡,ア ー ヘ ン工 科 大 学,地 域 の 産 業 界 代 表 な どが 株 式 を 保 有 す る ア ー ヘ ン地 域 の 経 済 開 発 公 社 で あ
る(図7参 照)。 そ の 中心 的 な 機 能 は,ス ター トア ップ企 業 に対 して 広 範 な 支 援
28 商 経 論 叢 第33巻 第4号
図7ア ー ヘ ン 技 術 革 新 ・技 術 移 転 協 会(AGIT)の 組 織 構 成
会員協議会
CitycafAachen
AachenDistrict andWFGofthe AachenDist童ict
HeinsbergUi4trirl andWFGofthe HeinsbergDistrict
Chanber{〕f
Handicrafts RHEGITe.V. LARc.V.
0203)
Aachenerund Miinchenee VersichenmglAG
Savin鼠banks ofthe AachenRegiorr
第1部 門 第2部 門 第3部 門
出 典:A・ ・h・ne・Ges・Usch・ftfir・lnn・v・ti・nundTechn。1。gi。t,an、f。,
,1994