長崎県における人工高齢化の一断面
谷 村 賢 治
長崎大学教育学部家庭科教室
The Aging Society in Nagasaki Prefecture by National Censuses
Kenji TANIMURA
1 はじめに
人為50年下天のうちにくらぶれば……とうたいながら信長は「敦盛」を舞ったが,実は 庶民の平均寿命が50年忌なるのは,それから四百年近くも後の第二次世界大戦直後のこと。
だが平均寿命が80年になるのには,そう時を要しなかった。女子では昭和59(1984)年に 早くも超え,男子でも昭和61(1986)年には75年を超えたのである。
ところで「不老長寿」は「かぐや姫」の昔から人類の夢であったはずである。そうだと すれば,「人生80年時代」に生きるわれわれはなんと「夢の国の住人」ということになる 筈だが,さて「夢の国」の棲み心地はいかがですか,と老人達に尋ねたら,少々心許ない 答が返って来そうである。おそらくそれは,あまりにも高齢化が急速にすぎて現下の社会 システムがいまのところそれを十分に受け容れられる体勢にはなく,そのギャップが心の 動揺を招いているからであろう。したがって人生80年時代に適合的な長寿社会システムへ の速やかなソフトランディングが要請される訳であるが,事はそう簡単にはいかないのが 実状で,現在各方面で様々な試行錯誤が行われていることは周知のところである。われわ れもそのための手がかりを求めるべく若干の考察を進めており,小稿はその第一次的接近 とでもいうべき試みで,基礎統計に基づいて人口高齢化の先進県のひとつ長崎県の現状を 概観したものにすぎない。なおここで基礎資料として利用したのは『国勢調査』と『国民 生活基礎調査』で,以下とくに資料名の明記がないものは『国勢調査』であることを予め 断っておく。
2 県人口の年齢構成とその推移
わが国の人口構i造の著しい変化は昭和30(1955)年頃から始まった。以降,40年足らず の間に老年人口の割合は少しずつ上昇し,生産年齢人口割合も上昇していたが,逆に年少 人口の割合は急激に落ち込んだω。このような人口構造上の変化は一般には「人口高齢 化」の始まりと言われているがω,さて長崎県ではいかなる有り様なのだろうか。
16 長崎県における入口高齢化の一断面
単位・百万
1.8
1.7
1.6
1.5
1.4
1.3
1・↑1361寵ピ
L1
174鯉1
1645492
137四63 耳i318589
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1233362 牙 U63945
1641245
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図1 長崎県の総人口の推移
%
2.1 総人口の推移
人口構造の観察に入る前に総人口の動きを抑えておこう。総人口は図1によれば,
①大正9年の1,136,!82人から昭和15年の1,370,063人へと漸増し,昭和20年にかけて 一時減少するものの,その後の10年間は大きな伸びを示しており,第2次世界大戦の影 響がなければ昭和35年まで一貫して人口成長を見せていた公算が高い。
②ところが,高度経済成長期に入り減少し転じた。(県外の)大都市への転出は,そ の要因のひとつである。それ以降,安定成長期をむかえてからは総人口の動きに大きな 変動はなく,現在に至っている。
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一〇一14歳一15−64歳…65歳以上 一一全国65歳以上
図2 年齢3区分別人口の推移
2.2 年齢構成とその推移 2.2、1 年齢構造係数の推移
図2は年齢3区分別人口の推移を示したものである。これから
①昭和35年以前にはいずれの年齢階層にも変化がみられないが,以降,目立った動き が出てきた。
②その動きは対照的で,高齢人口は昭和30年代の6%弱から平成2年には15%弱に急 増,ちなみに全国平均は同時期6%弱から12%。また同時期に生産年齢人口も58%前後 から65%へと増え始めたのに対し,幼少人口は30%台後半から20%にまで大幅に減り始 めている。
指 数
今
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5日
4日
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□長崎県 +全国平均
図3 老年化指数の推移2.2.2 老年化指数の推移
その結果,老年化指数は昭和30年の14.1%から平成2年には72.3%にまで上昇してい る:図3。これを全国平均と比べれば,昭和50年まではむしろ低いが,その後,長崎県 の人口高齢化は,前者をはるかに上回るスピードでもって進行している。
3 高齢人口の基本構造
わずか30年余りで6%弱からユ5%足らずにまで大幅な伸びをみせる高齢人口階層に若干 立ち入ってその現状を観察してみよう。その際,県全体の観察のみならず,それに加えて,
市部・郡部別ならびに男女別に分けて観察していきたい。また場合によっては,人口5区 分階級に細分しての観察も有用となろう。
18 長崎県における人口高齢化の一断面
表1 市部・郡部別および男女別65歳以上人口割合の推移
総 数 男 女 65歳以上 男 女
比率
男 女1950年 1,645,492 812079 , 833413 , 82,749 33,807 48,942
市部 598,457 292,474 305,983 24,304 9,514 14,790 4.06 3.25 4.83
郡部 1,047,035 519,605 527,430 58,445 24,293 34,152 5.58 4.68 6.48
1955年 1,747,596 859,689 887,907 90,998 37856 , 53,142
市部 852,587 418,437 434150 , 38,350 15,672 22,678 4.50 3.75 5.22
郡部 895,009 441,252 453,757 52,648 22184 , 30,464 5.88 5.03 6.71
1960年 1,760,421 860,623 899,798 102,042 43,431 58,611
市部 899,642 437,874 461,768 45,667 19,239 26,428 5.08 4.39 5.72
郡部 860,779 422,749 438,030 56,375 24,192 32,183 6.55 5.72 7.35
1965年 1,641,245 788,667 852,578 l14,819 49,609 65,210
市部 923,371 441,243 482,128 56,756 24,271 32,485 6.15 5.50 6.74
郡部 717,874 347,424 370,450 58,063 25,338 32,725 8.09 7.29 8.83
1970年 1,570,245 747,971 822274 , 128,531 55,335 73,196
市部 927,394 439,247 488147 , 66,467 28,304 38,163 7.17 6.44 7.82
郡部 642,851 308,724 334127 , 62,064 27,031 35,033 9.65 8.76 10.48
1975年 1,571,912 750,418 821,494 148,708 62,684 86,024
市部 968086 , 460,288 507,798 81,036 34,076 46,960 8.37 7.40 9.25
郡部 603,826 290,130 313,696 67,672 28,608 39,064 ll.21 9.86 12.45
1980年 1,590,564 758,374 832,190 169,753 69,675 100,078
市部 980799 , 464,298 516,501 95,280 39283 , 55,997 9.71 8.46 10.84
郡部 609765 , 294076 , 315689 , 74,473 30,392 44,081 12.21 10.33 13.96
1985年 1,593,968 757,617 836,351 193,605 76,494 l17,lll
市部 988,038 466,172 521,866 110,886 44111 , 66,775 ll.22 9.46 12.80
郡部 605,930 291,445 314,485 82,719 32,383 50,336 13.65 11.ll 16.01
1990年 1,562,959 736,729 826,230 228,991 88,805 140,186
市部 978,979 458,933 520,046 133,0!3 5!,734 81,279 13.59 11.27 15.63
郡部 583,980 277,796 306,184 95,978 37141 , 58,837 16.44 13.37 19.22
3.1 年齢別高齢人ロ
表1は市部・郡部別および男女別に65歳以上人口割合の推移を示したもので,それを 基に製図したものが図4である。観察時期は先に人口構造の推移をみた際,動きの出始 めた昭和35年の5年前の昭和30年からにした。図4から,
①郡部女性の上昇振りが気にかかる。昭和30年代前半から増え始め,7%前後から平 成2年には19%だから,5人にひとりの割合に達している。
②他方,勾配が最もゆるやかなのは,市部の男性。その平成2年の数値はll%強だか ら,10人にひとりの割合。郡部の女性との差は極めて大きいものがある。
③両者の中間に位置しているのが,市部の女性と郡部の男性。この二者の間には,昭 和45年頃から市部の女性は伸びが増したのに対して,郡部の男性の伸びは止まったため
%
2図 ユ8
ユ6
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6.5
19.2
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5.5 4.4
3.8
3.3
ユ95@ ユ955 ユ96臼 ユ965 ユ97図 1975 198〔iう 1985 199〔〕
一①市部の男 ・・…②市部の女 一・③郡部の男 一④郡部の女
図4 市郡・男女別65歳以上人口割合推移
乖離が始まり,平成2年現在では2ポイントの差が付いている。
④その結果,男女別にみれば,女性が上位グループ,男性が下位グループを形作って いることが観察できる。
3.2 配偶関係別高齢人口
次に高齢者の配偶関係を示した表2に眼を移すと,
①まず未婚率については,一般に言われている市部が郡部よりも高いという傾向が長 崎では見られず,市・郡部間には大差がない。
②次に有配賃率はエイジングにつれて男女ともに下降気味で,この傾向は市部・郡部 を問わない。
③また有配偶率は,この20年間に男女とも増加しつつある。ただ男性の場合,65〜69 歳でこの20年間に5%,同期間に70〜74歳では10%,75歳以上12.5%とエイジングにつ れて伸びが大きくなるのに対して,女性ではそれぞれ14,10,3%と,逆に伸びが鈍く なっている。したがって,男性では前期高齢者と後期高齢者との有配偶率の差は圧縮さ れ,他方,女性のそれは開き気味になっている。その結果,後期高齢でも男性は4人に
3人が配偶者を有するのに対して,後期高齢の女性は5人に1人しか配偶者がいない点 が目につく。
④死別率は,男は昭和45年20.9%から平成2年13.3%,女は同期間に65.8%から56.5
%へと同じように減っているが,男女でその数値に決定的な差がある。
⑤(中)高齢者の離別率に関しては近年増加しつつあると言われているが,長崎県の 男性の場合,この20年間1%台で推移し,大きな変化はみられない。強いて言えば,市 部において前期高齢者が0.5ポイント程度後期高齢者よりも高いという点である。女性
20 長崎県における人口高齢化の一断面
表2 65歳以上の配偶関係別割合
未 婚 有
配偶
死 別 離 別1970 1980 1990 1970 1980 1990 1970 198Q 199Q 1970 1980 1990 全県男
65歳以上 1.1 O.9 1.2一 76.6 80.7 83.9 20.9 17.1 13.3
L4
1.4L6
65〜69歳 1.1 1.0 1.5 85.5 89.7 90.6 ll.8 7.8 6.1 1.6 1.5 1.8
70〜74歳 1.3 1.0
L2
77.9 82.1 87.9 19.4 15.3 9.3 1.4 1.6L6
75歳以上 0.8 0.7 1.0 61.8 67.9 74.3 36.2 30.1 23.4 1.1 1.2 1.3 全県女
65歳以上 1.6 2.3 2.7 30.8 45.2 37.9 65.8 48.3 56.5 1.9 4.2 2.9
65〜69歳
L6
2.2 3.7 45.1 48.6 59.0 51.1 46.4 33.5 2.2 2.8 3.770〜74歳 1.7 1.7 2.8 31.9 36.6 42.3 64.6 59.5 51.7 1.8 2.3 3.1 75歳以上 1.5 1.2 1.8 14.2 17.O 18.9 82.9 80.1 77.1
L5
1.7 2.1市部/男
65歳以上 !.1 0.8 1.2 77.5 81.7 84.5 19.8 16.0 12.5 1.6 1.5 1.8 65〜69歳 1.0 1.0 1.5 85.7 89.8 90.6 ll.4 7.6 5.9 1.9 1.7 2.0
70〜74歳 1.3 0.9
Ll
78.18L6
87.9 18.9 15.6 9.2L7
1.9 1.975歳以上 0.9 0.7 0.9 63.4 68.7 75.8 34.5 29.4 21.9 1.2 1.2 1.4 市部/女
65歳以上 1.6 2.3 2.8 28.9 43.5 37.6 67.3 48.5 56.1 2.2 5.7 3.5
65〜69歳 1.6 2.1 4.1 42.3 47.8 57.7 53.3 46.7 33.7 2.7 3.4一 4.6
70〜74歳 1.6 1.8 2.7 29.4 35.4 41.6 66.8 60.1 51.9 2.2 2.7 3.8 75歳以上 1.5 1.3 1.9 12.7 15.6 18.7 84.0 81.1 77.0 1.7 1.9 2.4
■一曹曹■■幽一一一一 冒曹■冒.曹曹幽一一一胃,冒一曹曹曽 ・幽幽 F胃,■曹,… 曽一一一一,曹曹匿ρ.一 ・幽一一一一F,胃胃, 曹・
郡部/男
65歳以上 1.1 1.0 1.3 75.7 79.4 83.0 22.1 18.4 14.4
L2
1.2 1.365〜69歳 1.2 1.2 1.5 85.3 89.6 90.5 12.2 8.1 6.5 1.3 1.! 1.4 70〜74歳 1.3 1.1
L2
77.6 82.6 87.9 20.0 15.0 9.6 1ユ 1.3 1.375歳以上 0.7 0.7 1.1 60.2 67.1 72.3 37.9 31.0 25.4 1.1 1.2 1.2 郡部/女
65歳以上 1.6 2.3 2.6 32.9 47.5 38.3 64.1 47.9 57.0 1.4 2.3 2.1 65〜69歳 1.6 2.3 3.3 48.3 49.6 61.0 48.5 46.0 33.3 1.6 2.0 2.5 70〜74歳 1.7 1.6 2.9 34.7 38.1 43.3 62.1 58.7 51.5 1.5 1.7 2.7 75歳以上 1.5 1.1 1.9 15.6 18.5 19ユ 81.7 79.O 77.3 1.2 1.4 1.7
に関しては,昭和45年の1.9%から平成2年には2.9%と1ポイントも上昇している。こ の趨勢は市部において,また後期高齢者よりも前期高齢者において目立つ。
ところで男女でなぜこのような数字差が生じるのであろうか。おそらく5年という調 査問隔の長さが把捉率を低下させているからであろう。例えば離別を確認した国勢調査
の後,5年以内に死亡した場合などを想定すれば理解可能で,このようなケースは女性 よりも男性が多く,上で見たような数字の差になって表れたとすれば,離別の実態は女 性の数字に近いはずである。とすれば,これは風評をある程度裏づける結果になったと いえよつ。
4 高齢者のいる世帯構造
上で見てきた高齢人口の基本構造を踏まえて,高齢者のいる世帯の状況を観察していく。
表3A 65歳以上の親族のいる一般世帯の家族類型別の推移
実 数 構 成 比
世帯の種類,世帯の家族類型
1970 1980 1990 1970 1980 1990 一 般 世 帯 100,764 126,151 161,720 100.0 100.0 100.0 A親族世帯 89886 , 107,228 129369 , 89.2 85.0 80.0 1核家族世帯 26,373 40,788 61,105 26.2 32.3 37.8
(1)夫婦のみ 13,638 23,547 37,393 13.5 18.7 23.1
(2)夫婦と子供 7,776 9,899 12279 , 7.7 7.9 7.6
(3)男親と子供 1,037 1,226 1,495 1.0 1.0 0.9
(4)女親と子供 3,922 6,116 9,938 3.9 4.9 6.2
Hその他の親族世帯 63,513 66,440 68,264 63.0 52.7 42.2
(5)夫婦と両親 734 1,155 1,444 0.7 0.9 0.9
(6)夫婦と片親 2,433 4,844 7,148 2.4 3.8 4.4
(7)夫婦、子供と両親 11828 , 13,244 14,858 11.7 10.5 9.2
(8)夫婦、子供と片親 27,297 28,876 26590 , 27.1 22.9 16.4
(9)夫婦と他の親族 1,416 1,192 1,445 1.4 0.9 0.9
(1◎夫婦、子供と他の親族 3,806 2,723 3,068 3.8 2.2 1.9
ω夫婦、親と他の親族 1,503 1,203 1,037 1.5 1.0 0.6
⑫夫婦、子供、親と他の親族 8,797 7,552 6,445 8.7 6.0 4.0
(14他に分類されない親族世帯 5,699 5,651 6,229 5.7 4.5 3.9
B非親族世帯 200 192 136 0.2 0.2 0.1
C単独世帯 一 10678 , 18,731 32,215 10.6 14.9 19.9
注:圓には「圃兄弟姉妹のみから成る世帯」を含む。
表3B 家族類型別65歳以上の親族のいる世帯の対一般世帯の割合(%)
世帯の種類,世帯の家族類型 1970 1980 1990 一 般 世 帯 25.8 28.0 32.2
A親族世帯 25.3 27.7 32.4
1核家族世帯 10.3 13.9 19.7
(1)夫婦のみ 30.3 34.6 40.8
(2)夫婦と子供 4.3 5.2 6.9
(3)男親と子供 25.2 28.7 29.7
(4)女親と子供 14.2 21.1 28.8
Hその他の親族世帯 64.3 69.9 76.4
(5)夫婦と両親 56.2 57.8 65.9
(6)夫婦と片親 73.6 87.6 93.3
(7)夫婦、子供と両親 74.2 69.2 71.4
(8)夫婦、子供と片親 75.0 80.4 85.3
(9)夫婦と他の親族 51.9 54.4 67.2
⑩夫婦、子供と他の親族 37.4 43.8 56.1
(11)美心、親と他の親族 50.5 58.3 73.4
働夫婦、子供、親と他の親族 58.7 63.7 74.8
㈹他に分類されない親族世帯 52.1 56.1 62.6 B非親族世帯 18.8 28.8 21.1
C単独世帯 30.5 30.0 31.5
注:(④には「(13兄弟姉妹のみから成る世帯」を含む。
22 長崎県における人口高齢化の一断面
4.1 高齢世帯の家族類型別割合とその推移
表3は65歳以上の親族のいる世帯の家族類型別の実数と構成比(a)ならびにそれが 一般世帯に占める割合の推移(b)を示したものである。これによると
①本県における65歳以上の親族のいる高齢世帯数は平成2年162千世帯,これは一般 世帯の32.2%を占め,3世帯に1世帯は高齢者のいる世帯という状況になっている。
②しかも,一般世帯に占める高齢世帯の割合は昭和45年の25.8%から昭和55年忌28.0
%,さらに平成2年の先ほどの数字へと,その伸びを増しながら増加している (2.2%
から4.2%へ)。
ところで高齢者はいったい誰と一緒に暮らしているのだろうか。その一端が同じく表 3によって観察できる。
①いま家族類型別に上位3類型をみると,「(1)夫婦のみ」,「(C)単独世帯」と続き,
昭和45年にはその構成比が27%と卓越しており,同55年にも23%を占めて第1位を維持 していた「(8)夫婦と子供と片親世帯」が第3位に落ちている。ちなみに平成2年現在,
高齢一般世帯の中に占める割合は各々23.1,19.9,16.4%である。
②ということは,高齢者のいる世帯の43%は夫あるいは妻と向かい合ってか,あるい はそれもいなぐて一人で暮らしていることがわかる。ここで注目すべきは,かかる世帯 の伸びで,「(1)夫婦のみ」の増加率は昭和45年の!3.5%から昭和55年の18.7%,さら に平成2年の23.1%と急進している。ことに「(C)単独世帯」の増加率は,昭和45年忌 10.6%から昭和55年の14.8%,さらに平成2年の19.9%へと顕著である。
③一方,これと対照的な動きを見せたのが,先に第3位に位置を落としていた「(8)
夫婦と子供と片親世帯」を含む「(H)その他の親族世帯」で,その減り方には激しい ものがある。その構1成比は昭和45年の65%から10年ごとに10%ずつ減少し,平成2年に は過半数を割り込み,4勃然となっている。ただこの家族類型は一般世帯数も伸びをみ せていないから,表3bの対一般世帯の割合は,その他の家族類型と比べて群を抜いて 高い。今なお一般的には高齢者は夫婦以外の親族と一緒に暮らしていると思われがちで
あるが,あるいはこのような状況が,かかる虚像を産み出す要因のひとつなのかもしれ
ない。
4.2 高齢単身者の状況
そこでもう一歩,彼(実はその多くは彼女)らの実態に接近しよう。先の表3によれ
ば,
①高齢単身者は平成2年で65歳以上人口の14.!%(32,215/228,991)を占め,これは
全国平均を3.2ポイント上回る。高齢単身者の割合とその伸びを示した表4から,そ
のうち男性は5.5%,他方女性は19.5%で,3.5倍も女性が多い。実数では5,6(27,297/4,918)倍もの相違がみられる。
②年齢階級別にみると,男性は65〜69歳では4.6%だったのがエイジングにつれて徐々 に増加し,85歳以上になると7.6%になっている。それに対して女性は,70歳代がもっ とも高く23%前後,その前後は下がり,とくに85歳以上は9.7%に落ち込んでいる。と はいえ,その水準は男性からみると高い。
なお平成2年現在で70歳代の女性がなぜかくも高いのか,については,彼女らは昭和
表4 年齢(5区分),男女,市子別高齢単身者の割合と伸び率
高齢単身者(人) 割 合(%)ω
伸 び率
1980 1990 1980 1990 実 数 割 合 全県/男
U5歳以上
65〜69歳 1,038 1,516 4.03 4.60 1.46 1.14 70〜74歳 1,037 1,198 5,05 5.19 1.16 1.03 75〜79歳 779 1,050 5.82 6.11 1.35 1.05 80〜84歳 380 744 5.40 7.31 1.96 1.35 85歳以上 173 410 5.85 7.58 2.37 1.30 全県/女
U5歳以上 !6,194 27,297 16.18 19.47 L69 1.20 65〜69歳 5,979 8,391 17.57 18.31 1.40 1.04 70〜74歳 5,040 8,080 18.12 23.03 1.60 1.27 75〜79歳 3,203 6,219 16.12 22.58 1.94 !.40 80〜84歳 1,491 3,316 12.40 17.96 2.22 1.45 85歳以上 481 1,291 7.59 9.71 2.68 L28 市部/男
U5歳以上 !,883 2,988 4.79 5.78 1.59 1.20
,一, 一 一一 一・■曹■ 匿■● 一 ・■曹虚匿●●
65〜69歳 619 935 4.06 4.82 1.5ユ 1,19 70〜74歳 560 763 4.77 5.62 L36 1。18 75〜79歳 427 646 5.97 6.40 1.51 1ボ07 80〜84歳 195 416 5.37 7.15 2.13 1.33 85歳以上 82 224 5.40 7.89 2.73 1.46 市部/女
U5歳以上 9,074 15,734 16.20 19.36 1,73 1.19 65〜69歳 3,522 5,303 17。94 19.41 1.51 1.08 70〜74歳 2,838 4,859 18.13 23.74 1.71 1.31 75〜79歳 1,745 3,638 16.00 22.90 2,08 L43 80〜84歳 755 1882 , 11.66 18.16 2.49 1.56 85歳以上 214 652 6.42 9.00 3.05 1.40 郡部/男
U5歳以上 1,524 1,930 5.01 5.20 1.27 1.04 65〜69歳 419 581 3.98 4.29 1.39 1.08 70〜74歳 477 435 5.42 4,58 0.91 0.84 75〜79歳 352 404 5.66 5.71 1.15 1.O1 80〜84歳 185 328 5.44 7.51 1.77 1.38 85歳以上 91 ユ86 6.32 7.03 2.04 1」1 郡部/女
U5歳以上 7,120 11,563 16.15 19.65 1.62 1.22
一 一 冒 一 一 ・ 一 一 匿 曹 匿 冒 冒 一 , 一 一 一 , 一
65〜69歳 2,457 3,088 17.07 16.69 1.26 0.98 70〜74歳 2,202 3,221 18」0 22.03 1.46 1.22 75〜79歳 1,458 2,581 16.26 22.15 1.77 1.36 80〜84歳 736 1,434 13.27 17.72 1.95 1.34 85歳以上 267 639 8.89 10.70 2.39 1,20
注1:各階級年齢別人口=100
24 長崎県における人口高齢化の一断面
20年には25から34歳で,戦争によって最も多く夫を失なったコーホートであることを思 い出せば容易に理解できよう。
③このような年齢階級別の差異は市・郡部別の観察においても,ほぼ同様に表れてい
る。
表5 65歳以上の者の家族形態:平成元年(単位%)
長崎県 全 国
総 十
独 世 帯 v婦のみの世帯
q と 同 居
100.O lOO.0 P5.O ll.2 Q9.9 25.5 T1.0 60.0 子供夫婦と同居
z偶者のいない子と同居
34.1 42.2 P6.9 17.7
その他の親族と同居
親族と同居
4.0 3.1 O.1 0.2
資料:『国民生活基礎調査・第3巻』p.302
4.3 高齢者の家族形態と子との同別居状況
それでは高齢者の家族形態と子との同便居状況を全国的に見た場合,いかなる水準に あるのだろうか。平成元年『国民生活基礎調査』第3巻に基づいて作成した表5から,
①長崎県では全国水準より「高齢夫婦のみ」の世帯が4.4%,「高齢単独世帯」では3.
8%高い。
表6 65歳以上の者の子との同別居状況:平成元年(単位%)
長崎県 全 国
総 数 100.O lOO.0 q 供 あ り 90.5 91.6
子 と 同 居 51.0 60.0 子 と 別 居 39.4 31.7
同一家屋,同一敷地 3.0 3.8 ゚ 隣 地 域 7.5 6.8
ッ一市区町村 13.6 8.4 サの他の地域 15.3 12.6 子 供 な し 8.7 7.3 q供有無不 詳 0.8 1.0
資料:『国民生活基;礎調査・第3巻』p.303
②他方,「子と同居」世帯のうち,「子供夫婦と同居」の世帯が9.0%も低い。
そこで同・別居の状況をみてみると:表6,
③同一家屋,同一敷地や近隣地域一いわゆるスープの冷めない地域一を除く「同
一市区町村」で全国水準よりも7.2%,「その他の地域」でも2.7%も高いことが知れる。今後の老齢福祉を考えるとき,この数字の示す観察事実の意味するところは大きい。
5 小 括
地域福祉に対する実施権限が今年4月の老人福祉法などの改正で国から市町村に委譲さ れはじめ,老人福祉の充実が地方自治体の取り組み方の差異に相当左右されるようになり つつあるという(3)。だとすれば,見てきたように市部・郡部で,あるいは前期高齢者と 後期高齢者との間で,また男女間で相当程度高齢者の置かれている位置が異なる本県にお いては,それぞれの状況に見合った各自治体の取り組み方,姿勢が一層重要になってくる はずである。かかる観点からの地域福祉への接近が次の課題となろう。
注
1)岡崎陽一編(1993) 『女性のライフスタイルが社会を変える』東洋経済新報社,P.55 2)国連流に言えば,先進国では高齢人口比率が7%以上になると高齢化社会,14%以上になると 「化」が取れて高齢社会という。この用語法でいくと,わが国は1970年に高齢化社会に入ったこと になる。
3)日本経済新聞 1993年9月21日朝刊
*小稿は,第40回日本家政学会九州支部大会(1993年10月9日,佐賀大学)での報告論稿に加筆修正 を加えたものである。