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不登校児童に対するスクールカウンセラーによる教育相談的介入の検討

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不登校児童に対するスクールカウンセラーによる教育相談的介入の検討 

−家庭訪問から教室復帰に向けたサポートの実践事例研究− 

岩瀧  大樹・山崎  洋史 

1.はじめに 

いじめや不登校,非行など,学校教育におい ては数多くの「学校不適応」に関わる問題が,

常にその質や様相を変化させ,存在し続けてい る。しかし,それぞれの問題に対するサポート や指導の方法も常に研究・改善され,次第に成 果が示されつつある。例えば,不登校の問題に ついて振り返ってみる。文部科学省(2010)の 学校基本調査は,この問題を抱える子どもたち の数がやや減少傾向にあることを指摘する。子 どもの数自体の減少も否めないが,教員や保護 者の協力,子どもたち自身の努力,スクールカ ウンセラー(以下 SC)制度の浸透と充実などが,

有効に機能していることも読み取れよう。同時 に,近年では適応指導教室などの外部機関との 連携,教育課程弾力化事業の広がりなどの影響 もうかがえる。以上のことから,不登校の問題 に対し,今日では多くの援助サービスメニュー が構築されつつあるといえる。しかし,依然と して 12 万人以上の子どもたちが,不登校の問題 を抱えていることも,上記により明らかにされ ている。引き続き,より有機的な支援の方向性 を模索・構築することは必要不可欠だと判断で きる。 

さて,SC の不登校問題への関わりについては,

多くの場合,相談室などにおける直接的なサポ ートが想像されよう。様々な実践事例により,

学校や教室,他の友人や教員との「橋渡し役」

としての機能が指摘されている(福丸,2005 な ど)。不登校の問題を抱える子どもたちへの直接 的支援の重要性は言うまでもないが,SC の職務 としては,より多様なものが期待されている。

例えば,不登校の子どもに関わる教員や保護者 へのカウンセリング,コンサルテーションも重 要な業務であり,子どもに直接関わらなくても,

間接的支援を行うことは可能である。実際,SC の勤務は多くの場合が週に 1 日程度であり,介 入できる子どもたちに限度があるのも厳しい現 実である。欠席・不登校の子どもに関しては,

なおさら介入が困難な場合も予想される。しか し,それらの子どもと最も関わる教員や保護者 の支援により,問題解決をサポートすることは 十分に可能である。SC 活用事業の黎明期,鵜 養・鵜養(1997)は,SC の役割として,校内と 外部機関との連携の促進(リファーなども含む) 校内の援助者同士の連携の促進(コンサルテー ションなども含む)などの重要性を指摘してい る。今日では,より学校や子どもたちの現状に 即した適切な関わりをアセスメントし,援助サ ービスを提供することが SC には求められると いえよう。重ねて山崎(2007)は,SC の位置づ けとして,配置日数や時間数の増加も見られつ つあることから,子どもたち,保護者,教員な どにおいて,こころへの援助の必要性に対する 認識が高まっていることを明らかにしている。

引き続き,更なる有機的な援助サービスの提供 立教大学教職課程 2014 年 4 月 

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が望まれているのである。 

以上のことから,近年の SC には,相談室や 校内に留まりカウンセリングのオーダーを待つ だけではなく,相談室外,校外,家庭,地域に 足を踏み出し,ネットワークを構築させ,より 質の高い援助サービスを提供することが求めら れているといえよう。つまり,より積極的に家 庭や保護者,地域に関わることが必要なのであ る。例えば,田嶌(2001)は,援助者による家 庭訪問が不登校への有効な手段であることを示 し,十分に検討して取り入れる可能性を提言し ている。従来,問題を抱えている子どもの家庭 訪問などは,教員が中心となり実施することが 多かっただろう。しかし,近年では,張替(2008),

稲永(2009)などのように,SC による家庭訪問 を主軸にとらえた先行事例研究も進められてい る。以上のことから,更に広がりをもった SC のアプローチとして,家庭訪問などの介入は検 討されるべきだといえよう。 

これらの SC への期待要因を踏まえ,本事例 では SC が家庭訪問などを積極的に取り入れた,

不登校児童へのサポートを振り返っていく。な お,事例に関しては個人の特定を避けるべく,

適宜情報の修正加工を施したことを加筆する。 

 

2.事例の概要 

(1)対象 

A(小学校 4 年生男子)。小柄かつ体重過多傾 向。髪はやや伸び放題。 

(2)家族と生育歴 

母親と母方の祖母,A の 3 人家族(きょうだ いはなし)。小学校 1 年生までは,両親とともに 隣市で育つが,小学校 2 年生の時に,両親が離

婚。その後,母親の実家に転居し,祖母と 3 人 の生活となる。転校に際し,特に A は嫌がる雰 囲気は見せなかったとのことである。2 年生当 初は他の児童と些細なトラブルを散発させるこ ともあったが,後半になると次第に落ち着きを 見せた。しかし,休み時間は一人で,図書室な どで過ごす姿が多く見られた。なお,A 宅の周 囲は地域で代々商業や農業を営む家が多く,近 所づきあいは現在でも非常に濃密である。特に A 宅は,歴史のある旧家で,「格式のある家」

とされている。 

3 年生の前半までは上記のように過ごしてい たが,3 年生後半から欠席が目立つ。数日の欠 席後に当時の学級担任が家庭訪問を行うと,2 学期中は一時的に登校可能になった。しかし継 続は困難であり,3 学期は全く登校できなかっ た。この年の欠席日数は 52 日間であった。 

(3)主訴および来談の経緯 

全く登校しなくなった 3 年生の 3 学期ではあ ったが,A 自身は「4 年生になったら行く」と 母親に伝えていた。しかし,4 年生に進級して も,状況に変化は見られなかった。そのため,

管理職および新学級担任(以下学級担任),A の母親より SC(第一筆者)への面談の希望が伝 えられ,継続的な介入が開始された。 

(4)面接方法 

昨年度の取り組みの中で,家庭訪問がある程 度奏効する様子が見受けられた。そこで,A に 関しては,まず電話連絡,家庭訪問などを中心 とした介入を取り入れることとした。母親に関 しては,適宜公立小学校教育相談室における面 談を設定した(50 分)。 

 

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(5)アセスメント 

①  3 年生までの学級担任からの情報 

学業に関しては,中程度の成績であり,算数 は高得点を取ることも少なくない。ただ,答案 やノートテイクなどは雑になる傾向が伝えられ た。運動能力に関しては,肥満傾向ゆえに走る ことは不得手だが,ボールゲームなどについて は,器用な面も見せるとのことであった。 

休み時間などの過ごし方は,外で遊んだり,

他の児童と話をしたりすることは少ないとのこ とであった。数名の男児が A をからかった際に は激しい口調で言い返すとともに,相手に掴み かかって反撃した。それ以来,学級内で A をか らかう,意地悪をする児童はいないとのことで ある。 

②  学級担任からの情報 

中堅の男性教諭で,当校勤務は 5 年目である。

A に関しては 2 年生の頃からその様子をある程 度知っていたが,学級担任として関わるのは初 めてである。始業式から A が欠席をしていたた め,家庭訪問を行う。当初は週に 2 回程度,家 庭訪問を行っていたが,A は淡々と学級担任の 訪問を受け入れ,話を聞いていたという。 

③  母親からの情報 

今まで登校渋りなどはなかったが,3 年生の 後半からは家でテレビを見たり,ゲームをした りして,学校に行かなくなったことを話す。理 由は不明であるが,身体症状を訴えることはな いとのことである。 

(6)介入の方針 

学校との積極的な関係が現在のところは少な くなっている。そのため,学校とはやや離れた SC のような立場のサポーターが関わっていく

必要性を感じた。加えて,ネガティブな身体反 応が見られていないこと,不安や落ち込みなど が多く語られていないこと,理由が不明である ことなどから,認知行動療法的なアセスメント をもとに,行動面への介入を中心とし,変容を 促すことが最適と判断した。そのため,具体的 には電話面接などの間接的なアプローチから開 始し,次第に家庭訪問,相談室登校に向けた「登 校」という行動の形成を図る介入につなげるこ ととした。以下,「  」は対象,<  >は SC の 発言を示す。 

また介入経過を5期に分けて報告する。 

 

【第 1 期】:電話面接によるラポールの構築(X 年 4 月〜5 月) 

#1〜#4(電話面接) 

母親と面接アポイントをとるべく,A 宅に電 話をかける。母親と面接の日程を調整し,電話 を切ろうとすると,母親より,A が電話の近く におり,「誰?(学級担任の)B 先生?」としつ こく尋ねているとのことであった。母親が SC と話している,と答えると,「誰?」とさらに知 りたがっているとのことであった。母親より少 し話をさせてやりたい,とのリクエストがあっ たため,SC は A と電話で話すこととなった。

A の,「SC って?」という様子がうかがえたた め,相談室の場所や SC の風貌などを伝えると,

何となく SC の顔が浮かんだようであった。次 回も,電話で話したい旨を伝えると,快諾。し ばらくは電話でコンタクトをとることとした。 

翌週,A 宅のスケジュールなどを踏まえ,昼 過ぎが落ち着いて話のできる時間帯であったた め,その時刻に電話をかける。数回のコールで

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A が出る。簡単に挨拶をして,今日やったこと,

これからしようと思っていることなどを尋ねる と,ペットのウサギの世話をしたこと,好きな アニメの録画を見る予定であることなどを 10 分程度話す。しばらくは電話面談でラポールを 構築していった。この時期の電話面接は,あま り長時間にならないように,短時間(10 分程度)

で切り上げるように心がけていった。 

<母親との面接> 

時間通りに来室。小柄で,誠実な印象。簡単 な挨拶の後に,ゆっくり話を始めた。登校渋り の段階から,家庭でも登校を促してきていたが,

A の反応は要領を得ないものであること,また 頭痛や腹痛も全く訴えないこと,落ち込んだり ふさぎ込んだりしている様子もないことなどか ら,どう対応していったらよいのか困惑してい る内容が話された。 

 

【第 2 期】:家庭訪問による面接の開始(X 年 6 月〜8 月) 

#5〜#9(家庭訪問) 

電話での会話は可能で,ある程度ラポールが 構築されたと判断した。そこで,次の段階とし て,SC による家庭訪問を試みた。先に母親に持 ち掛けたところ,了承が得られたため,再度 A に電話にて,会っていろいろ話をしたい旨を伝 えると,快諾が得られた。 

電話面接と同時刻に最初の家庭訪問を行った。

A は自ら紅茶を淹れ,SC を接待した。笑顔は 見られたが,やや全体的に硬い表情が見られた。

電話と同様に,好きなアニメやゲーム,ペット の話を積極的にする。この頃は,学校の話題に は触れられなかった。 

また,次第に家庭訪問を進めると,「先生,こ れやろう」と,テレビゲームなどをもちかけて きた。対戦型のゲームの場合もあるが,A が「先 生,見ててね」と言い,好きなロールプレイン グゲームである X などの経過を説明したり,ゲ ーム中の仲間の取捨選択,行きたい方向などに 関して,意見を求めたりする場合も多かった。

ほとんど A の視線はモニターに向いていたが,

常に SC に様々な話題をもちかけてきた。 

<母親との面接> 

A が SC の家庭訪問をポジティブにとらえて いる様子が伝えられた。家庭ではテレビゲーム を中心に過ごしているが,ペットの世話だけは,

自分でしっかりやっているとのことであった。

ただ,あまりにもテレビゲームに費やす時間が 多いため,今後は,減少させる方向性について も話し合った。 

#10(家庭訪問) 

この日はテレビゲームではなく,A の好きな ロボットアニメ(Y)のジオラマ作成をもちか けてくる。スプレー塗料で発泡スチロールなど に着色をしつつ,A は「お父さんが Y 好きだか ら,俺にプラモデルとか買ってくれる。だから 俺も好きになってきた」など,作成の背景など を話してきた。「それはもっと濃く塗って」,「こ こ持ってて」など,積極的に SC に指示を出し,

ジオラマを作成していった。 

#11〜#12(夏季休業中の家庭訪問) 

2 回,家庭訪問を実施したが,雑談をしたり,

ゲームをしたりして過ごす。話の途中で,「先生,

夏休みの宿題とか,みんなやっている?」と尋 ねてきた。そこで,気になるのかを聞いたとこ ろ,「(夏季休業直前に B 先生が)届けてくれた

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んだけど…」と言葉を濁していた。<(A くん は)気になっている?>と尋ねると,「宿題がな いのが一番いいけど,でも…」<でも?>「小 学 生 な んだ か らや ら なく ち ゃい け ない の か な?」と話すが,ワークブックや作文のお知ら せなどを見ると,気が滅入るのことであった。

そこで,いきなり全てに取り組むと厳しいかも しれないが,何とかできそうな優先順位をつけ,

簡単なものを1つ,やってみることを提案する と,動物愛護関連のポスターだったら描けるか もしれない,とのことであった。そこで,まず はそのポスター作製に取り組んでみることを確 認していった。 

<母親との面接> 

1 学期までは学校の内容は全く話さなかった。

学級担任が家庭訪問をし,夏季休業中の宿題を 説明し,置いて行った。リビングの床の上にそ のままになっていたが,どうするかと思い,敢 えて片づけず,そのままにしていたとのことで あった。数日後,A は宿題を床の上からサイド ボード上に移動をさせたが,手は付けなかった とのことであった。しかし,気になっていたら しく,ポスター作製のお知らせを読みつつ,画 用紙に絵を描き始めたが,途中で断念してしま ったとのことであった。 

 

【第 3 期】:家庭訪問から次のステップへ(X 年 9 月〜12 月) 

#13〜#16(家庭訪問) 

午後に SC が A の家庭訪問をするのがルーテ ィンになりつつあった。#10 で作成したジオラ マは A が完成させており,「あの後,一人でや ったんだよ」と言いつつ,Y のプラモデルを配

置した写真なども見せてくれた。この頃は,対 戦型のポータブルゲームをしたり,ペットのウ サギを見たりして,過ごすことが多かった。ウ サギの話になり,学校と A 宅の中間地点にある 公民館(C 会館)においても,地域の人たちが 飼っているウサギが数匹いることを話す。A の ウサギとは,種類が異なるらしく,その話を丁 寧にしていた。大きさや毛の色などを説明して いたが,若干,SC が理解のできない部分があっ た。<C 会館でもウサギを飼っているんだ…>

と呟くと,「C 会館,すぐ近くだから,見に行こ うか。先生が帰るときに一緒に行けば,場所も 分かるし,教えてあげられる」と答えた。その 後,一緒に公民館に行き,ウサギを見る。A は 詳細にウサギの特徴などを SC に伝えてきた。

そのため,#15〜16 は SC が家庭訪問をし,SC が A 宅を辞する際に A も外出し,そのまま公 民館に行き,ウサギを見たり,周辺施設を巡っ たりしていた。その後,A は自宅へ,SC は学 校に戻るという流れになっていた。 

<母親との面接> 

家庭訪問の後,公民館に行くことは,楽しん でいるように感じられるとのことであった。た だ,祖母が「学校に行っていないのに,外をフ ラフラしているなんて」と文句を言うこともあ るが,学校に行けるためのステップであること を説明し,渋々納得してもらっているとのこと であった。また,家庭でも学校の話題を A から 振る様子もあることが話された。 

#17〜#19(家庭訪問+公民館での時間) 

SC が学校に戻る際,A とともに公民館に向 かい,15 分程度ともに行動していた。公民館に は図書室や作業室,ロビーなどが設置されてお

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り,A は,しばしば本(漫画)を図書室に借り に来ること,祖母が民謡をやっているので,時 折練習や発表を見に来ることなどを話す。また,

ロビーには地域のミニチュアや特産物などが展 示されていた。<面白そうなものがたくさんあ るね。A くんは説明が丁寧だね>と伝えると,

「じゃあ,もう少し C 会館にいようよ。屋上も あるよ」と答える。<ただ,これから学校にお 客さんが来たり,仕事があったりするんだよな あ…>と返すと,「そしたら,(次回から)C 会 館に来ることにしようよ」と答えた。そのため,

家庭訪問ではなく,公民館での待ち合わせで大 丈夫かを確認すると,「そうしようよ。じゃあ,

次は屋上に連れて行ってあげる」と話した。 

#20〜#23(公民館にて) 

公民館に約束の時間に向かうと,既に A はロ ビーでペットボトルのジュースを飲みながら SC を待っており,SC の顔を見かけると笑顔で 手を振ってきた。ロビーの地域模型図を見つつ,

「この辺りが俺の家,昔は畑もたくさんあった っておばあちゃんが言ってた」「こっちは俺が 1 年生の時にいた小学校」などと説明をしてくれ た。その後,一緒に屋上の展望台に向かう。や や長い階段であったため,苦しそうな息遣いを 見せたが,「先生,早く!」と言い,アクティブ に昇って行った。屋上では,A が SC に地域模 型図を想起させつつ,周囲の様子を説明してく れた。地域の主要な建物は,ほとんど一望でき るロケーションであった。なお,小学校もほぼ 同じ高さで見ることができ,チャイムや放送の 音が聞こえたり,窓に映る人物のシルエットが 見えたりする距離であった。<学校も見えるん だね>と A に伝えたが,反応はなく,屋上から

見えるウサギ小屋の様子を話していた。 

公民館のロビーで話をしたり,屋上の展望台 に昇って A が地域の建物の説明をしたりする ことが続いていた。特に屋上は A のお気に入り であり,開放されている日は,必ず昇るように もちかけてきた。当初は小学校の様子には触れ ていなかったが,ある時,A は「廊下を通って いる人たちが見えるよ」と言い,学校の方向を 指さし,SC に確認を求めた。しばらく一緒に学 校の建物,廊下に映る人影を見ていたが,特に ネガティブなイメージを示すことはなく,ある 程度の距離を取りつつ,学校の様子を眺めてい たように感じられた。ただ,この頃になるとだ いぶ空気も冷え込み,風も強くなってきたため,

展望台での時間は短いものになっていった。 

 

【第 4 期】相談室登校へのモチベーション(X+1 年 1 月〜2 月) 

#24(相談室登校) 

年明け最初の勤務日になり,A と公民館での 待ち合わせ時間を確認すべく,A 宅に電話をか ける。すると,A は,「(学校の)先生の部屋に 行ってもいい?」と尋ねてきた。SC は,<来て くれるのはうれしいけど,場所はわかる?無理 はしていない?>と尋ねると,「行けるから。無 理じゃないです」と答えた。そこで,相談室の 場所を確認したところ,ややあやふやであった。

<校門まで(SC が)行こうか?どうする?>と 尋ねると,それは大丈夫であるとのことであっ た。「3 年生まで使っていた玄関は分かる」との ことであった。また,「みんなには会いたくない」

とのことであったため,その玄関に,他の児童 と顔を合わせぬよう,授業中の時間帯に待ち合

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わせをすることとなった。約束の時間になり,

SC は玄関で A を待っていたが,姿を見せなか った。15 分ほど経過したところで,ようやく姿 を見せる。無事に学校に来てくれたことを称賛 すると,A は,途中まで祖母が付き添っており,

学校に入るところまで見届ける,とのことであ ったため,それを振り切るのに時間がかかって しまったと遅くなった理由を説明した。その後,

相談室に移動し,室内の漫画を読んだり,ボー ドゲームなどに興じたりして過ごした。途中,

学級担任も姿を見せる。来週の話になると,「こ の部屋に来ていい?」と尋ね,相談室登校が可 能であると答えた。そこで,他の児童の移動や 授業と重複しない時間帯を設定し,相談室で会 うこととした。 

#25(相談室登校) 

約束の時間の 5 分ほど前,相談室の電話が鳴 る。A からであった。内容を尋ねると,校門に は問題なく入れたが,廊下や校庭などに思いの ほか,他の児童たちがいるために,足がすくん でしまったとのことであった。どこにいるかを 尋ねると,校門近くの大きな石碑の陰に隠れて いるとのことであった。取り急ぎ,SC が向かう まで,そこにいるように指示をし,その場所に 向かう。A は携帯電話を手にしており,「誰に も会わないと思っていたんだけど,〇年生の人 たちが結構通るんだよなあ…」と言い,行くこ とも退くこともできなくなってしまったことを SC に伝えた。SC は,頑張って学校内まで足を 運んでくれたこと,帰らずに SC に連絡をくれ たことなどに感謝の意を伝えた。そして,<ど うする?A くんの無理のない感じでいいんだけ ど…>と尋ねると,突然「一瞬だったら平気だ」

と言い,石碑の陰から飛び出し,一目散に昇降 口に向かっていった。SC もすぐに後を追いかけ た。すると,A は途中で砂に足を取られ,激し く転倒した。SC が急いで駆け寄ると,左足の腿 から脛にかけて,パンツが破けてしまっており,

広い範囲で擦り傷を作っていた。その後,昇降 口隣の用務主事室で傷口を洗い,養護教諭に手 当をしてもらった。<大丈夫?>と尋ねると,

「何でだろう?」と答えた。その点を重ねて尋 ねると,「(石碑の陰にいるとき)何かイライラ したんだよなあ。別に俺,悪いことをしていな いのに,何で隠れるのかなあ,とか,でもせっ かく来たんだから帰るのは嫌だよなあ,とか」

と答える。<イライラって何だろうね?>と再度 尋ねると,「学校に行けてない自分のことなのか なあ…。別に嫌な奴とかはいないんだけど」と 答える。そこで,学校に行こうと頑張っている 姿を尊重するとともに,早く今までと同じ学校 生活を送りたい気持ちも理解していること,し かし,A にとって,無理のないペースで教室に 戻ればいいのでは,といった内容を伝えると,

黙って頷いていた。 

#26〜#29(相談室登校) 

管理職から,若干遠回りになってしまうが,

教職員用玄関であれば,他の児童たちの目に触 れることは少ないのでは,という提案があった。

A に,<例えば,他の玄関を使えたら,そっち の方がいい?>と尋ねると,他の児童の往来が 少ない方が来やすい,とのことであったため,

しばらくは教職員用玄関を使用することとした。

それ以降は,校門や昇降口付近で足がすくんで しまうことは見られなかった。また,昼過ぎの 時間を設定していたが,体調を崩してしまった

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日以外は,コンスタントに時間差の相談室登校 が可能になってきていた。このころは,漫画を 読んだり,話をしたりすることよりも,SC と一 緒に人生ゲームに取り組むことが多くなってい った。 

 

【第5期】:教室復帰に向けて(X+1年3月〜6月) 

#30〜#34(相談室登校) 

3 月には正午前から相談室登校をして,昼食

(弁当)をとったあと,SC と人生ゲームななど を行っていた。ある時,「先に行っても,何が起 こるか分からないんだ」とつぶやく。何か考え ることがあったのかを尋ねると,現在は,相談 室登校をしているが,そもそも自分がどうして 休むようになったのかを考えたという。<何か 分かった?>と尋ねたが,「何でだろうなあ…。

でもその時は学校に行きたくなかったんだよな あ…」と独り言のようにつぶやいていた。そこ で,現在の気持ちを尋ねてみると,早く戻りた い気持ちはあるものの,行ったところで友達は いるのか,浮いてしまうのではないかという点 を懸念していた。また,人生ゲームで,自分の コマ(自動車)に,友達やパートナーを乗せる イベントがあることに着目し,「味方を増やして いくのって,X みたいだね」と話していた。な お,この時期には,SC の勤務日以外にも相談室 登校や保健室登校が可能になりつつあった。 

#35(相談室にて) 

「小学校って落第ってないんだよね」と言い,

進級の様子を心配していることを語る。A 自身 は,「5 年生になったら,(教室に)戻るんだよ なあ」とやや他人事のようにぼそぼそと話して いた。「5 年生になるから,クラス替えをするん

だよね。(学級担任の)先生も変わるの?」と尋 ねてきたため,クラス替えはあると聞いている が,担任の先生は分からない,と返答した。新 学期になり,5 年生に進級。母親から始業式よ り新しい学級での活動に参加している旨を聞く

(春休みや SC の勤務曜日が学校の振替休業日 に該当したため,新年度の SC の出勤は 4 月中 旬からとなった)。5 年生の教室の前を通ると,

授業中であり,A は名簿順の座席に着席し,静 かに授業を受けていた。表情は無表情であった。 

<母親との面接> 

4 月からいきなり「学校に行く」と言うため に驚いたことを話す。また,B 教諭が転出とな ったため,学級担任はこの年度より着任したベ テランの女性教員に代わったが,特に戸惑う様 子は見せず,淡々としていたとのことであった。

しかし,4 月中旬より体調を崩す場面が見られ たため,通院させつつ,時折欠席させていたと のことであった。 

#36(相談室にて) 

4 月下旬の午後,SC が相談室で書類作成を行 っていると,A が顔を出した。部屋に招き入れ ると,「教室に行ってるんだよ」と話す。<どん な気持ちだった?>と尋ねると,母親が喜んで くれたこと,褒められて自分もうれしくなった ことを伝えた。また,学級内の人間関係が知っ ている者同士で固まっているために,なかなか 入りにくいこと,することがないことなどを語 る。しかし,クラスのリーダー格の男子児童が 声をかけてくれること,外でサッカーなどをす る場合に誘ってくれることなどを嬉しそうに伝 えた。本人の教室復帰へのモチベーションも尊 重しつつ,頑張っている様子を称賛していった。 

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#37(相談室にて) 

体調不良による欠席は数日あったものの,多 少の遅刻をしながらほぼ教室で過ごしている様 子であった。SC が校内を巡回していると手を振 ってきたり,相談室開放の際には同じクラスの メンバーと数人で訪れ,人生ゲームなどに興じ たりしていた。適度に,SC や相談室から離れ,

教室での生活に適応しつつあるように感じられ た。6 月中旬の放課後,相談室に A が顔を出す。

招き入れ,話をしていると,「だいぶ味方が増え てきたと思う。(前言った)X みたいに」と自 ら新しいクラスでの人間関係の話題に振ってき た。そこで,人生ゲームと同じように,A 自身 が味方を受け入れたり,はたらきかけたりして いることをフィードバックすると,「味方がいな いと厳しいなあ。今は少し増えてきたけど」と やや笑みを浮かべつつ話していた。これからも 必要であれば SC も母親も A を支えていくこと を伝えると,「分かった」と言い,「じゃあね」

と手を振りながら相談室を後にしていった。 

その後は,相談室開放で新たな友達と来室す ることはたびたびあったが,一人で来室するこ とはなかった。なお,新学級担任から学級にお ける様子が適宜報告され,友達は多いとは言え ないが,数名の行動を共にする男子児童がいる こと,数名の女子児童ともゲームやアニメの話 で盛り上がっている様子が見られることなどが 話された。 

  3.考察 

不登校の要因として,かつては心理的理由(怠 学傾向,精神障害など),身体的理由などのよう に分類され,対応がなされていたこともあった。

しかし,この問題に関しては,複合的であった り,理由が不明であったりするケースも少なく ないことが予想される。つまり場合によっては 原因の究明よりも,可能な対応に目を向けてい くことが,効果的であると推測される。A の場 合,本人の不登校の理由は自覚できていなかっ た可能性があげられる。最後に「味方」という フレーズで振り返っている部分もあるが,特定 は難しいのが現状であろう。また,電話面接な どには抵抗を見せなかった点,家庭訪問などは 比較的受容できていた点などから総合的に判断 すると,周囲のサポーターからの関わりを拒否 するのではなく,必要としていた可能性もうか がえる。ただ,援助要請をなかなか適切に示す ことが困難であったために,「学校に行かない」

という行動に至ったものと推測される。しかし,

そのきっかけは本人にも把握できず,自覚も少 なかったと考えらえる。そのため,理由を特定 したり,追究したりするのではなく,この段階 で「A 自身が実行可能な取り組み」に着眼して いったことは,ある程度効果的な介入であった と判断できよう。 

だが,原因不明とはいえ,A が気持ちを学校 になかなか向けることができなかったのは,事 実である。家庭訪問を受け入れつつも,A は夏 季休業までは学校の話題には一切触れなかった。

しかし,学校に所属しながらも教員とはスタン スの異なる SC との関わりは,少しずつではあ るが,段階的に学校を意識することにつながっ たと予想される。家庭訪問での SC との面接→

外部(公民館)での面接→相談室登校といった 介入を継続したことは,A の「学校に行く(登 校する)」という行動の形成につながったと推測

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される(なお,電話相談から相談室登校まで,

A が SC と話をしたり,一緒に遊んだりしたこ とに関しては,感謝の気持ちを伝えるとともに,

適宜称賛(コンプリメント)を伝えていた)。竹 田(2006)は,不登校の発生を行動理論の見地 から,①不登校を登校刺激に関連させる刺激に よって誘発される不安や恐怖などの不快状態か らの回避行動ととらえるモデル,②不登校を対 人関係における不適応行動の学習や,社会的技 能の未学習ととらえるモデル,の 2 つを指摘し ている。本事例に関しては,判断の難しい部分 もあるが,「学校に行く」という適切な行動を形 づくるべく,電話面接から教室復帰にいたるま で,サポートを実施してきた。もちろん,その プロセスにおいては,学校を回避しつつも,気 になっている様子が散見されている。そのため,

A のペースで物理的にも心理的にも学校との距 離を縮めていくことを心がけていった。途中,

教室復帰までは A のモチベーションがやや走 りすぎている感も否めない場面もあったが,相 談室登校までのプロセスが,自信や自己効力感 の向上につながったと判断できる。また,#37 では,身近なソーシャルサポートを知覚できる ようになりつつあり,この点でも同様のことが 推察される。 

家庭訪問に関しては,様々な先行研究がある が,留意すべきこととして,長坂(2006)では,

「治療構造」の問題を指摘するとともに,特に 外的構造に関しては,「週に 1 回 1 時間,固定し た部屋で,対象は子ども」という設定を原則と することを主張している。また,米田(2012)

においても,心理職の家庭訪問の有効性や柔軟 な対応の重要性を示しつつも,外的構造は確立

されるべきであることが提言されている。以上 のことから,SC などの家庭訪問は有効であると 同時に,「治療構造」を保つべく,外的構造の遵 守はおろそかにされてはならない要因であるこ とが読み取れる。本事例においては,時間など,

ほぼその内容は保たれていたが,途中から場が

「家庭」から「公民館」にシフトしていった。

しかし,これは本事例における必要なシフトチ ェンジであったととらえている。つまり,A 自 身の適応に向けた行動として理解すると,いき なり「学校」ではなく,中間地点としての「公 民館」に向かったことは,必要なステップであ ったと判断できる。加えて,本事例では,SC による「家庭訪問」の後,「A と SC がともに公 民館に向かう」「A と公民館で待ち合わせをす る」というプロセスも経ている。これは,第1 段階として,A の空間に SC が電話面接から家 庭訪問のようにフェイドインし,ともに外部に 出る,第2段階として,主体的に A が学校(相 談室・教室)にフェイドインしていく,という 流れになっている。以上のことから,本事例で は A のペースでフレキシブルに治療構造を変 容させたととらえている。また,早川(2010)

は,家庭訪問が子どもにとってかなり侵入性の 高いはたらきかけである点を指摘し,短時間で 切り上げたり,予告をしたりする必要性を述べ ている。本事例では,SC が事前に本人や母親に 提言をしたり,結果を委ねたりすることによっ て,その配慮はある程度できていたものととら えている。なお,時間に関しては,#19 におい て A は時間を長くすることを提案してきた。SC はその時間の枠を守ることを伝えたが,結果的 に A が時間の枠を守りつつ,面接の場を「家庭」

(11)

から「外部(公民館)」にシフトすることにつな がった。A が大きく 1 歩進んだ時期であった。 

A の教室復帰まではある程度のサポート提供 がなされたが,今後の課題として,A のコミュ ニケーションスキル習得があげられる。「別に嫌 な奴はいない」と A が話していたように,侵害 行為を加えられたり,被害を受けたりしている 様子は見当たらなかった。しかし,A 自身から 他者にはたらきかけるスキルへのアプローチも 考えられただろう。もともと,A 自身も苦手意 識を抱いていた様子がうかがえるが,今後に向 けては不可欠な能力になってくる。この点に関 しては,SC などの A への個別介入とともに,

学級担任と協働することにより,A が教室復帰 しやすい学級風土づくりや,子ども相互の人間 関係の醸造を目指す必要もあろう。また,校内 の援助リソースの更なる活用も挙げられる。SC による学級担任,子どもなど,包括的なソーシ ャルサポートのコーディネーションも,検討さ れるべき課題である。 

 

〔引用文献〕 

福丸由佳(2005) 「中学校における不登校女子 とのかかわり  スクールカウンセラーの橋 渡し機能に注目して」  心理臨床学研究,

23-3,327-337,2005 

張替裕子  「スクールカウンセリングにおける 家庭訪問を活用した不登校支援  :「支援を 求めない保護者」への支援という観点から」

目白大学心理学研究,4,125-135,2008  早川すみ江  「不登校生徒への支援活動−スク

ールカウンセラーの関係をつなぐ役割−」

日本福祉大学子ども発達学論集,2,13-21,

2010 

稲永努  「スクールカウンセラーによる家庭訪 問から教室復帰後までの支援過程−関係性 の変容過程と不登校支援ネットワークの変 遷−」  山口大学心理臨床研究  9,31-43, 

2009 

文部科学省  「平成 22 年度学校基本調査の速報 について」  2010 

長坂正文  「不登校の訪問面接の構造に関する 検討  近年の事例と自験例の比較を通し て」  心理臨床学研究,23-6,660-670,2006  竹田伸也  「不登校中学生に対する認知行動療

法を用いた自律的行動の形成」  心理臨床 学研究,24-3,323-334,2006 

田嶌誠一  「不登校・引きこもり生徒への家庭 訪問の実際と留意点」  臨床心理学,1-2,

202-214 

鵜養美昭・鵜養啓子  『学校と臨床心理士−心 育ての教育をささえる』  ミネルヴァ書房  1997 

山崎洋史  「スクールカウンセラーの活用」『教 職研修』教育開発研究所,36-3,124-127,

2007 

米田薫  「家庭内暴力を伴う不登校生徒への訪 問教育相談」  選択理論心理学研究,12-1,

1-8,2012 

参照

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