国際教育協力長期派遣専門家に関する 一考察
-イ ン ド ネシア での経験から -
黒 田 則 博 ( 広島大学教育開発国際協力研究セン タ ー)はじ めに
平成12 年 6 月の外務省の「 政府開発援助 に関する 中期計画」にも 盛り 込ま れている よ う に、日本の国際開発協力において近年“ 顔 の見え る 援助”の重要性が指摘さ れる よ う に な っ て いる 。 日本と いう 抽象的な 概念よ り も 、個々の日本人が汗を かいている 様子がみ え る 国際協力と いう こ と と 理解すれば、国際 協力が途上国の人々にと っ ても ま た日本の国 民にと っ て も よ り 具体的で身近な も のと な り 、その意味では歓迎さ れる べき こ と であ ろ う 。 し かし 、 ま さ に現地での日本の“ 顔” たる べき 、専門家やその他の国際協力に従事し て いる 日本人がはた し て ど のよ う な “ 顔” を も っ て活動を 行っ ている のかは必ずし も 明ら かではない。筆者ら が行っ た調査1)によ れば、 専門家は少なから ず問題を 抱えている こ と が 明ら かになっ ている 。それは単に専門家個人 の資質の問題に止ま ら ず、専門家に実際に期 待さ れている こ と と 額面上の職務内容と の乖 離、 専門家の養成・ 募集シス テム 、 事前の準 備、サポート シス テム など 多岐にわたっ てい る 。 さ ら には、専門家の役割も 多様化し つつあ り 、従来の技術移転型専門家に加え 、政策ア ド ヴァ イ ザーや調整型専門家など と 呼ばれる 専門家も 増加し ている 。 そこ で本論では、派遣専門家の数が年々増 加し つつあ る 教育分野を 事例と し て、自ら の 1 年間のイ ン ド ネ シ ア での国際協力事業団 (JICA
) 派遣長期専門家の経験を も 踏ま え 、 長期専門家の活動の一端を 紹介し その問題点 や課題を 指摘する と と も に、“ 顔の見え る ”専 門家に向け て の若干の提言を 行おう と 試み る 。 なお長期専門家には、プロ ジェ ク ト に携わ る 専門家と 途上国の省庁等に単独で派遣さ れ ている いわゆる 個別専門家と があ り 、それぞ れに事情が異なる ため、こ こ では筆者の経験 し た後者に焦点を 絞っ て論ずる 。1 .
何が期待さ れたか―専門家業務内容
(
Terms of Reference = TOR)
派遣前にま ず個別専門家と し てど のよ う な 職務の遂行が期待さ れている かを 知る 手立て が、TOR
と いわれる も のであ る 。 私のTOR
によ れば、私はイ ン ド ネシア 共和国の国民教 育省高等教育総局に配属さ れ、高等教育行政 について何ら かの“ 指導” を 行う こ と になっ ている 。こ こ で“ 指導” と いう 言葉を 使っ た のは、 こ のTOR
において高等教育行政が私 の“ 指導科目” と さ れている ためであ る 。明 ら かにこ れは典型的な技術移転型専門家の発 想で、高等教育行政について優れた知識・ 技 能を 有する 私が、 そ のよ う な 知識や技能を 持っ ていないイ ン ド ネシア 側( 以下イ 側と 呼 ぶ)カ ウ ン タ ーパート に対し てこ れを 移転す る と いう 姿が想定さ れている 。し かし 、 先に 述べたよ う に専門家に期待さ れる 役割が多様 1) 黒田則博、澤村信英、西原直美「 国際教育協力長期派遣専門家に関する 一考察―JICA教育専門家に対する ア ン ケ ー ト 調査の分析から 」 広島大学教育開発国際協力研究セン タ ー『 国際教育協力論集』 1999 年 Vol. 2 No. 2 pp. 155-170.て議論でき る こ と を 楽し みにし ていた。 し かし 私が初めて総局長に会っ た時の彼の 第一声は、「 黒田さ んはこ こ でいっ たい何を し たいのか」 と いう も のであ っ た。私は一瞬 耳を 疑っ たが、黒田と いう 人間がイ ン ド ネシ ア の高等教育について何ができ 、何を し てく れる のかと いう 、いわば私に対する 値踏みで あ る と 理解し た。プラ イ ド の高いイ ン ド ネシ ア 人、し かも 高等教育総局長と いう 高い地位 にあ る 人なら ではの言い回し であ っ た。決し てこ れを し て欲し いと か、あ れが必要だと い う よ う な“ 懇願” はし ない。 それにし ても 、 イ ン ド ネシアの高等教育政策策定への私から の何ら かの貢献について、彼が一切言及し な かっ たのはなぜだっ たのか。 実はイ ン ド ネシア は、高等教育政策につい てはすでに既定の路線を 歩み始めており 、い ま さ ら 高等教育政策について特にアド ヴァ イ ス を 必要と し ていなかっ たのである 。つま り 、 規制緩和、 独立法人化、 ア カ ウ ン タ ビ リ ティ ー、公的部門への市場原理の導入等々に 特徴づけら れる 、いわゆる 新自由主義に基づ く 高等教育の構造改革路線が進行し つつあっ たのであ る 。こ の路線については、1996年に 総局が作成し た 「 高等教育長期発展計画 1996 - 2005」2)の中にそ の萌芽的な ア イ ディ ア が散見さ れ、 さ ら には、2000 年 7 月 の「 高等教育戦略: ニュ ー・ パラ ダイ ム の実 施」3)において 一層鮮明な 形で提示さ れて い る 。 それでは、こ れら の政策形成について誰が 助言し ど のよ う な 影響を 与え た のであ ろ う か。少なく と も 、日本から こ れま でにこ のポ ス ト に派遣さ れたア ド ヴ ァ イ ザー4)ではなさ そう であ る 。日本において構造改革の流れの 中で、国立大学の独立法人化が本格化し てき 化し つつあ る のみなら ず、オーナーシッ プや パート ナーシッ プが強調さ れ、“ 援助する 側” と“ 援助さ れる 側” と の関係が再考さ れつつ あ る 中、そも そも こ のよ う な技術移転型の専 門家のみを 念頭においた
TOR
自体が改訂さ れる 必要があ る よ う に思われる 。 さ て 、 も っ と 具体的に何が期待さ れた の か。第一に、「 政策策定に際し ての情報提供、 助言」 を 行い、 イ 側の「 高等教育に関する 適 切な政策決定」 に貢献し 、 第二に、「 高等教 育機関の運営に関する 調査研究、指導、助言」 を 行い、「 高等教育機関の運営の改善と 教育 研究の活性化」 を 促し 、 さ ら には「JICA
教 育関係諸プロ ジェ ク ト 及び各支援機関事業と の連絡調整」 を 行い、 も っ て「 各高等教育支 援事業の効果的実施」に資する こ と と さ れて いる 。 明ら かにこ のTOR
は、 いわゆる 政策 ア ド ヴ ァ イ ス 型と 調整型、両方の専門家の役 割を 期待し ている 。 はたし てこ のよ う なTOR
に書かれている 役割が、 実際にイ 側の期待し て いる も ので あ っ たのか。2 . 何を し よ う と し たのか
( 1 ) TOR は正確だっ たか 1 )政策ア ド ヴ ァ イ ス が必要と いう のは本 当? 赴任する ま では、当然カ ウ ン タ ーパート で ある 高等教育総局長に対し て政策アド ヴァ イ ス を 行う こ と が、私の主たる 職務であ る と 固 く 信じ ていた。実際私自身、 高等教育の国際 化やグロ ーバル化と 呼ばれる 現象についてこ こ 数年資料も 収集し 、わずかではあ る が研究 も し てき たつも り であ っ たので、あ る 意味で 総局長と イ ン ド ネシアの高等教育政策につい2) Ministry of Education and Culture, Directorate General of Higher Education, Framework for Long-Term Higher Education
Development 1996-2005, pp. 1-299, 1996.
3) Ministry of National Education & National Development Planning Agency, the Republic of Indonesia and the World Bank,
“New Paradigm in Higher Education”, Education Reform in the Context of Regional Autonomy: the Case of Indonesia, pp. 164-281, 2001 と し て再録。
たのはこ こ2 ~ 3 年のこ と であ り 、 よ ほど の 構造改革推進論者でないかぎ り 、こ のよ う な 政策の助言を 行う 日本の大学関係者や教育行 政官はいないであ ろ う 。むし ろ 、 世界銀行の 影響が ち ら ほ ら 窺え る 。 例え ば先に 述べた 「 高等教育戦略」 は、1999年に世銀の支援を 得て 国民教育省等が組織し た 、 教育タ ス ク フ ォ ース 報告書の高等教育に関する 部分であ る 。ま た1990 年代の中頃から 、 イ ギリ ス や オース ト ラ リ アなど の高等教育の独立法人化 や民営化の最先端を 行く 国の専門家が世銀の コ ン サルタ ン ト と し てイ ン ド ネシア に入り 、 セミ ナー等を 通じ 影響を 与えたも のと 思われ る 。 し かし こ こ で強調し ておき たいこ と は、ア フ リ カ 諸国など でし ばし ば見ら れる よ う に、 世銀等の援助機関が政策文書を 作成し それが そのま ま 当該国の政府文書と なる と いっ た直 接的な影響あ る いは介入は、イ ン ド ネシア に 限っ てはあ り え ないと いう こ と であ る 。途上 国と はいえ 、高等教育行政については一応有 能な 人材を 有し て いる5 )。 事実先のタ ス ク フ ォ ース のメ ン バーはすべてイ ン ド ネシア人 であ る し 、「 高等教育戦略」 の執筆者も 同様 であ る 。 要する に、イ 側に政策立案能力も あ り 、さ ら には既に高等教育政策が策定さ れている こ と から 、そも そも 最初から こ のポス ト に政策 立案へのアド ヴァ イ ス など 求めていなかっ た のであ る 。 な お、
TOR
の第二に掲げら れて いる 「 高 等教育機関の運営に関する 調査研究、 指導、 助言」 は、上記の高等教育の構造改革の実施 に関わる こ と と 理解さ れる が、こ れについて も 調査研究を 除いては、イ 側と し ては、それ は自分たち自身の仕事であ っ て、外部の人間 が関与すべき こ と ではな いと の態度であ っ た。 2 ) JICA 等と の連絡調整が仕事?TOR
の最後に書かれている「JICA
教育関 係諸プロ ジェ ク ト 及び各支援機関事業と の連 絡調整」 が、ま さ に連絡調整型専門家に期待 さ れている 重要な役割であ る 。こ の職務内容 の前段は、赴任当時実施さ れていた高等教育 分野での3 つのプロ ジェ ク ト を 中心と する 、JICA
の高等教育関連事業全体についてア ド ヴ ァ イ ス を 行う と と も に、 実際に連絡調整 ( 事業間及びJICA
と 高等教育総局と の) に当 たる こ と であ り 、後段は高等教育分野で協力 を 行っ ているJICA
を 含む援助機関の間の連 携を 図る こ と 、すなわちド ナー間協調を 促進 する こ と であ る 。 こ れら は教育協力を 進めていく 上で確かに 重要なこ と ではあ り 、後述する よ う に、実際 に私の仕事の少な から ぬ部分を 占めて いた が、イ 側と の話し 合いの中でこ のよ う な役割 を 私が積極的に果たすよ う 明確に要望さ れた こ と はなく 、 むし ろ 直接的にはJICA
がこ の よ う な役割を 担う 人材を 必要と し たと いう こ と であ ろ う 。 さ ら に、そも そも イ 側にオーナーシッ プ意 識と それを 行使でき る だけの能力があ れば、 事業間やド ナー間の調整や協調は、外部の者 ではなく イ 側自身が行う べき 性格のも のであ ろ う 。 3 ) イ 側に代わっ て案件の発掘・ 形成を 行 う こ と が重要? 案件の発掘・ 形成はTOR
にこ そ書かれて いないが、 イ 側にと っ てもJICA
側にと っ て も 暗黙裡に期待し ている も のである こ と は確 かであ っ た。事実前任の方々は、 新し いプロ ジェ ク ト を 作ろ う と 努力さ れたよ う であ り 、 それが実を 結んで実施に移さ れたプロ ジェ ク ト も 現にあ る 。 し かし 自助努力と それに基づく 要請主義を 重要な原則と する 日本のODA
において、 日 5) 局長ク ラ ス の人材は、 多く は大学の教官( 大半が外国で博士号を 取得)と の併任、 あ る いはそれから の転職 (引抜 き)であ る 。本から 専門家を 送り 当該国への援助事業案を その国に代わっ て作成する と いう のは、いか にも 奇妙であ る 。技術援助の本質は、例え ば、 魚の捕り 方を 教え る こ と であ っ て、永久に魚 そのも のを 援助し 続ける こ と ではないと 、誰 し も が指摘する 。と する なら ばこ こ での本旨 は、いつま でも 途上国のためにプロ ジェ ク ト の発掘・ 形成を 行う こ と ではなく 、そのこ と ができ る よ う に能力の形成を 支援する こ と で あ ろ う 。 4 ) 結論 以上のと おり 、最も 専門性が必要と 思われ る 高等教育政策策定へのアド ヴァ イ ス につい ては、実はその要望はなく 、実際にイ 側あ る いは
JICA
側が求めていたも のは、 連絡調整 的機能と 案件形成と いう 役務提供である と い う こ と が徐々に明ら かになっ てき た。し かも こ れら の役割は本来的にはイ 側が果たすべき も のであ る 、 と の認識を 持つよ う になっ た。 そ こ で1ヶ 月ほど いろ いろ 考え あ ぐ ねた 末、 本来のあ る べき 方向に私のTOR を 変更 すべく 、その提案を 高等教育総局長に提出す る こ と と し た。 ( 2 ) TORの変更 上述のよ う にイ 側は、高等教育政策の策定 について はそ の能力も あ り 大いにオーナー シッ プを 発揮し ている こ と は確かであ る が、 こ と その政策実施のためにいかに国際的な協 力を 活用する かについては、主体的な取組み も 十分ではなく その能力にも 欠けている こ と が明ら かになっ てき た。 こ の国の高等教育における 開発予算( 事業 費) は、 毎年40 ~ 60%も の多く を 外国から の援助( その大半が借款) に依存し ている に も かかわら ず、それら 外国から の支援が必ず し も 戦略的、計画的に活用さ れていないのが 実情であ る 。こ れだけ政策立案についてオー ナーシッ プの強いイ 側であ っ てみれば、自ら が高等教育計画の一環と し て 外国から の支 援・ 協力の必要性( ど の政策の実施にあ たっ て、ど の分野において、ど のよ う な外国から の協力が必要か)を 明確にし ておく こ と が不 可欠であ ろ う 。すなわちよ り 戦略的な援助メ ニュ ーの作成が必要であ ろ う 。 政策アド ヴァ イ ス と いう 本来の役割が期待 さ れていないと いう のであ れば、こ こ にこ そ その職務の意義があ る と 認識し 、高等教育総 局自身に“ 国際教育協力を 活用する 力”( 案 件形成力、 調整・ 交渉力等々) を つけても ら う と と も に、それを 推進する 制度やシス テム を 形成する こ と を 目指すこ と と し た。 そこ で、「 国民教育省高等教育総局が、 高 等教育発展計画にマッ チし た国際協力事業を 発掘し 企画立案でき る よ う になる こ と 」 を 、 私の業務において達成すべき 上位の目標と し て業務実施計画書において明記し た。こ れは 当初のTOR
を 変更する こ と になる も のであ り 、カ ウ ン タ ーパート であ る 同総局長と の協 議・ 合意の上で設定し たも のであ る 。 本専門家の場合、1 年間と いう 短い任期で も あ り 、ま た国民教育省高等教育総局のア ド ヴ ァ イ ザーと いう 本来の立場から 考え て、従 来し ばし ばそ う であ っ た よ う に、 イ 側に代 わっ て個々のプロ ジェ ク ト の発掘・ 形成を 行 う と いう のではなく 、でき ればイ 側自体にこ のよ う な意識や能力が形成さ れる こ と を 最終 的な目標と し たも のであ る 。理想的には私の よ う なア ド ヴ ァ イ ザーがこ こ にいなく ても 、 イ 側自身がその政策にマッ チし たプロ ジェ ク ト を 形成・ 提案でき る よ う になる こ と が望ま れる のであ る 。いずれにし ても 、一貫し て持 続可能性(sustainability
) を 展望し つつ、 イ 側のオーナーシッ プを 重視・ 鼓舞し 、能力形 成を 促すと いう 態度で臨むこ と と し た。3 . 何を し たか
私が実際に行っ た活動は、2 種類に大別さ れる 。 ひと つは、 新たにTOR
に盛り 込んだ 上記の“ 国際教育協力を 活用する 力” の形成 に関わる 活動であ り 、他方は旧来型の連絡調整的な業務であ る 。以下に、 それぞれの主な 活動を 記述し た。 ( 1 )“ 国際教育協力を 活用する 力” の形成 に向けて 1 ) 現行の高等教育政策・ 施策及び国際協 力事業のマッ ピ ン グ イ 側が主体的に、組織的、体系的で調整の と れたプロ ジェ ク ト 形成ができ る よ う に、ま ず現下の高等教育戦略・ 政策と こ れま での国 際的な協力・ 援助が対応し ている のか、それ と も 相互の関係が十分意識さ れてこ なかっ た のかについて、いわば見取り 図を 作る 作業を 提案し 高等教育総局の合意と 協力を 得て、い わゆる
Review Table
作り を 行っ た。 総局長 や各局長と の数回にわたる イ ン タ ヴュ ーや提 供さ れた資料を 基に、2002 年 1 月中旬に一 応の完成を みた6)。 本来イ 側のオーナーシッ プや自主性を 重視する と いう こ と であ れば、JICA
専門家であ る 私の協力を 得て、 総局自 身が本作業に取り 組むべき と こ ろ であ る が、 何分総局長を 含め6人の局長は極めて多忙な 上、こ れら 局長以外に高等教育政策について 十分理解し ている 人材がいないこ と から 、総 局の協力を 得て私が取り ま と める こ と と なっ た。 し かし 、各局長は極めて協力的で、Review
Table
自体の内容についても 大いに関心を 示 し 、ま た、こ の作成過程でイ ン ド ネシア の高 等教育政策について意見交換を 行う こ と がで き 、実質的にイ ン ド ネシア の高等教育政策に ついてのアド ヴァ イ ス を も なし 得たと 考えて いる 。 こ のTable
に基づき 、 今後のこ の国におけ る 高等教育プ ロ ジ ェ ク ト を 考え る 上で のIssues
についてのメ モ7)を 作成し 、JICA
及び 高等教育総局に提出し 、それぞれにおいて検 討会( 総局については、各局長と 個別に議論) を 行っ た。 上記の資料は今後プロ ジェ ク ト を 発掘・ 形 成し ていく 上での基本情報と し て活用が期待 さ れる も のであ る が、さ ら に、こ のよ う な作 業を 総局長はじ め各局長と と も に行う こ と を 通じ て、プロ ジェ ク ト 形成プロ セス の一つを 関係者がと も に経験する こ と になり 、高等教 育総局内における 国際協力に対する 主体的取 組みへの学習プロ セス の第一歩と 位置付けら れる 。 2 )「 連携・ パート ナーシッ プ国際ネッ ト ワ ーキ ン グ ・ セン タ ー」(Center for
I n t e r n a t i o n a l N e t w o r k i n g f o r
Collaboration and Partnership
) の設置 上記1 ) の作業を 進める 過程で、私が高等 教育政策を 有効に実施し て いく には国際協 力・ 援助を も っ と 組織的・ 体系的に活用すべ き で あ る と 再 三 指 摘 し た こ と も あ っ て 、 2002 年 1 月に標記セン タ ーが高等教育総局 内に設置さ れる こ と と なっ た。私がこ のよ う なセン タ ーの設置を 直接提案し たわけではな いが、高等教育総局側において国際協力の組 織的な推進の必要性が十分理解さ れたこ と か ら 、 こ のセン タ ーの設置に至っ た も のであ る 。それにし ても 、率直にいっ てイ 側の積極 的なオーナーシッ プと イ ニシャ ティ ヴに驚く と と も に、改めてでき る 限り イ 側のオーナー シッ プを 鼓舞し よ う と いう 私のアプロ ーチが 誤り ではなかっ たこ と を 認識し た。 セン タ ーの設置に当たっ て、2001年11月 7 日、 高等教育総局はJICA
その他の関係の ド ナー等を 招いて設置準備会合を 開催し た。 その際、今後のセン タ ーの在り 方、特に日本 と の協力の進め方について発表を 行っ た。さ ら に再三にわたり 部内の会議に招かれ、セン タ ーの事業について助言を 行っ た。 こ のセン タ ーは、基本的には高等教育の国 際交流・ 協力について高等教育総局における6) "Review Table of the Implementation of the New Paradigm" (January 17, 2002)
7) “ イ ン ド ネシ ア における 今後の高等教育プロ ジ ェ ク ト ( 検討メ モ)”( 2002 年 1 月 21 日) 及び “Toward the Formulation of New Projects for Higher Education (Memo for Discussion)”( 2002 年 2 月 5 日))
窓口・ 調整機関であ り 、現在
JICA
のシルバー エキ ス パート 、オース ト ラ リ ア 、オラ ン ダへ の留学生の派遣等の事業に関わっ ている 。同 セン タ ーはま だ設置初年度であ る が、し ばし ば見ら れがちな名前はあっ ても 実態がないと いう こ と はなく 、現在積極的にその活動範囲 を 広げつつあ り 、 本専門家も 日常的にア ド ヴ ァ イ ス を 求めら れた。3 )
Silver Experts Package Request
方式 の実現オーナーシッ プを 持っ たよ り 組織的かつ調 整のと れた国際開発援助の活用と いう 観点か ら 直接提案し たのが、
JICA
のsilver expert
( 日本ではsenior volunteer
) へのパッ ケ ージ申請と いう ア イ ディ ア であ る 。
イ ン ド ネシア には2002年8月当時で 80人 ほど の
silver expert
が派遣さ れて いる が、JICA
側のsilver expert
への需要の発掘や要 請の審査は、個々の機関等から 出さ れる も の を 受けてその都度調査し 検討する と いう のが 実情で、必ずし も 戦略的あ る いは先方の政策 ニ ーズ に応じ て 決定さ れて いる わけ ではな い。JICA
と し てもsilver expert
を よ り 戦略 的に活用する こ と を 模索し ていた。 高等教育関係( 日本語教育、 工学等) の派 遣は20 人ほど であ る が、 こ れら への申請は 事実上ま っ たく 高等教育総局を 通すこ と なく 行われていた。正式には高等教育総局の承認 が必要であ る が、こ れはま っ たく の事後の形 式的手続き に過ぎ な かっ た。 そこ で、JICA
にと っ ても ま た高等教育総局にと っ ても 利益 があ る と 思われる 方式と し て こ のpackage
request
を 提案し た。 こ の要請方式においてはま ず、高等教育総 局側がJICA
の重点領域( 日本語教育、 工学 等) を 考慮し て5年程度の受入れ要請計画をJICA
に提出する 。 も ちろ んこ の際、 各機関 の要望を ど う 勘案する か、ど のよ う な政策的 配慮を する かなど は総局の責任においてなさ れる 。次に双方がこ の計画について基本合意 を する ( むろ ん計画の修正も あ り う る )。 そ し てこ の計画に基づき 、毎年正式申請を 提出 する 。 ま たこ の計画はいわゆるrolling plan
であ り 毎年協議の上改定が行われる 。こ の方 式は、若干初年度は手間や時間がかかる かも し れないが、2 年目以降労力と 時間の節約に なり 、 何よ り もJICA
の戦略的意図と 総局側 の政策が反映さ れやすいやり 方と 思われる 。 途中様々な紆余曲折があ っ たが、年二回の シルバーボラ ン ティ ア 募集のう ち、2002 年 度の前期分については試行的にこ の方式を 実 施し 、後期の募集分から 本格的に実施する こ と で総局とJICA
双方の合意を みた。 こ の事 業は総局側では上記のセン タ ーが担当する こ と と な り 、 そ の初めて の事業だっ た こ と も あ っ てセン タ ー側は極めて熱心で、詳細な募 集要項や応募の評価基準を 作成し 、積極的に こ の事業に取り 組んでいる 。 募集する シ ル バーエ キ ス パート はわ ずか 数名で あ る が 、 オーナーシッ プ意識を 高め積極的な主体的取 組みを 鼓舞する 一つのプロ セス と し て位置付 けら れる も のであ る 。 4 )「 イ -日教育協力連絡会」 の開催 さ ら に、国際開発協力に対する イ 側の組織 的・ 主体的対応を 促すためのも う 一つの活動 と し て計画さ れたのが、 こ の「 連絡会」 の開 催であ る 。こ のよ う な会合の開催を 思い立っ たのにはいく つかの理由があ る 。第一は、イ 側のオーナーシッ プを 高める ためのひと つの 学習プロ セス であ る と の位置付けであ る 。教 育分野に限っ ていえ ば、現在、世界銀行やア ジア開発銀行のイ ニシャ ティ ヴによ る 初等中 等教育に関する ド ナー会合( こ れには国民教 育省初等中等教育総局も 出席し ている )が不 定期に開かれている 。本専門家は直接の担当 ではないのでこ れに出席し たこ と はないが、 出席者( 大使館担当官、 初中等担当JICA
専 門家等) から の報告を 聞く と 、 イ 側は、 自ら 主体性を も っ てド ナー間の援助を 調整する と いう よ り は、いつも 援助プロ ジェ ク ト の実施 等についてド ナー側から 注文や要望を 受ける 立場で、いわば“ 宿題を 忘れてばかり いる 出来の悪い生徒” のよ う な立場だと いう 。 率直に言っ て、こ れだけの被援助大国、し かも 一方では
ASEAN
の盟主のひと つた ら んと する 気概を 有し てき た国が、こ のこ と に ついてこ れほど オーナーシッ プ意識を 欠いて いる のには驚いた。ス ハルト 体制崩壊後少し ずつではあ る が、新たな国づく り を し ていか ねばな ら な いと いう 意識が芽生え つつあ る 中、形だけでも 国民教育省側のイ ニシャ ティ ヴ でこ のよ う な会合を 設ける こ と によ っ て、 オーナーシッ プ意識を 高める のに役立つので はと 考え たわけであ る 。当初は国民教育省とJICA
を 中心と する 日本側だけの会合であ る が、ゆく ゆく は、国民教育省が教育分野の関 係ド ナーを 招集し て調整会議を 開ける よ う に なればと いう 思いであ っ た。 第二に国民教育省自身における 縦割り 行政 の弊害の問題があ る 。日本でも 縦割り 行政の 弊害はつと に指摘さ れている と こ ろ ではある が、 極端に言え ば、“ 局( 総局) あ っ て省な し ”と いう のが少なく と も こ こ 国民教育省の 実情であ る 。 着任早々の2001 年 9 月中旬、JICA
イ ン ド ネシア事務所の教育担当が事務次官に呼ば れた のに同行し た 。 用件は要する に、 ノ ン フ ォ ーマル教育に情報技術(IT
) を 活用する と いう 同次官が個人的に担ぐ プロ ジェ ク ト の “ 売り 込み” であ っ た。し かしIT
については、 当時非公式ではある が高等教育総局長から 既 に4 件の提案がなさ れており 、 ま た、 教育分 野では高等教育分野の事業に重点を 置く と い う 合意が日-イ でなさ れている にも かかわら ず、こ のよ う な提案が次官から 直々になさ れ る と いう こ と は、こ の省全体を 統括する 立場 である 次官ですら 教育分野での国際援助につ いて 充分把握し て おら ず、 省内での調整が ま っ たく 欠如し ている こ と を 如実に示すも の であ っ た。 そこ で、こ のよ う な「 イ -日教育協力連絡 会」 は少なく と もJICA
の教育協力に関する 限り 、全省的に情報を 共有でき る 場を 提供す る も のであ り 、縦割り の弊害を 少し でも 除去 する 第一歩になればと 考え た。 も ちろ ん、従来主と し て個別の事業を 通じ てのみ話し 合いが行われてき たJICA
等の日 本側と イ 側と が、よ り 広く 意見や情報を 交換 する 場を 設ける こ と 自体、両者の意思疎通を 一層図る 上で有益だと 考え た。 その実現には、 国民教育省側及びJICA
側 に解決すべき 問題が幾多あ っ た が、 結局は 2002 年 4 月 26 日になっ て、JICA
の( プロ ジェ ク ト 等の)ニーズ調査説明会と いう 形で 実現する こ と と なっ た。事務次官の招集でほ と んど の総局長が出席し たほか、主任視学官 など 国民教育省直属機関の長の出席も 得ら れ た。 こ れだけの幹部を 揃え たJICA
と 国民教 育省と の対話は初めてのこ と であ り 、国民教 育省内においてJICA
及びJICA
へのプロ ジェ ク ト 等の要請について共通の理解が得ら れたこ と 、ま た次官から 、今後国民教育省全 体 と し て 取 り ま と め 、 国 家 開 発 企 画 庁 (BAPPENAS
)8)に要望を 提出する 態勢を 整 え る 旨の発言があ っ た こ と は、 今後のオー ナーシッ プの発揮にと っ て大き な意義を 有す る も のであ っ た。 ( 2 ) 連絡調整的業務 1 ) 平成14 年度( 前年度) プロ ジェ ク ト 要請案件の処理 平成14 年度の高等教育関係プロ ジェ ク ト 案件の形成プロ セス( ちょ う ど 筆者が着任す る 直前の2001 年 8 月にそのプロ セス はほぼ 終了) において、 イ 側とJICA
側と の間に十 分意思疎通がと ら れておら ず若干の行き 違い が生じ 、 高等教育総局とJICA
の間に位置す る 私が両者の関係修復に尽力せざ る を 得な かっ た。ま さ に典型的な連絡調整業務である 。 次のよ う な事態が生じ たのであ る 。 8) JICA に対し イ ン ド ネシア 側の要請を 集約・ 調整する 機能を 有し ている 。こ の年は、たま たま 事前の要望調査説明会 に多く の大学関係者が出席し て いた こ と も あ っ て、多く の高等教育機関から 数十件にも 上る 案件が直接
JICA
事務所に寄せら れた 。 こ れら の案件は、一応高等教育総局がと り ま と めた形で( そし て形式的にはBAPPENAS
を 通じ )提出さ れたこ と になっ ている よ う で あ る が、 実際は何ら 精査さ れた も のではな く 、 高等教育機関か ら の 案件が そ の ま まJICA
に提出さ れたも のであ る 。 そのよ う な 事情も あ っ てJICA
側が採択する に足る 良質 な案件は皆無であ っ た。 し かしJICA
イ ン ド ネ シ ア 事務所と し て は、何と か優良案件を 東京に提案する 必要に 迫ら れ、高等教育分野の在イ 日本人専門家の 協力を 得て7案件を 作成し 、“ イ 側の要望” と し て2001 年 8 月に東京に提出し た。 時間的 な制約も あ っ て、残念ながら こ れら の案件に ついて高等教育総局側と の事前の協議はほと んど 行われていなかっ た。総局側がこ のよ う な提案がなさ れている こ と を 知る のは、翌年 の1 月になっ てから であ る 。 一方高等教育総局側では、2000 年 7 月の 沖縄サミ ッ ト における 日本のIT
支援表明後、 2001 年には相次ぎ プロ ジ ェ ク ト 発掘ミ ッ シ ョ ン が来イ し たこ と から 、 日本のIT
支援 への期待が高ま っ ていた。そし て、2001年 4 月にミ ッ シ ョ ン に対し 教育分野におけるIT
関連プロ ジェ ク ト の提案を4件提出し た。同 総局長と し てはこ れら の提案は非公式なも の であ る が、その後日本側から 何ら かの反応が あ り 、それを 受けて正式なルート に乗せる こ と を 考え ていたよ う であ る 。し かし 、 日本側 にいかなる 事情が生じ たのか不明であ る が、 その年の末になっ ても 何ら のフ ォ ロ ーアッ プ はなかっ た。 こ れら の行き 違いの結果、イ 側に何がし か の誤解や不信感を 生み出し たこ と は間違いな い。実際総局長も あ る 種の苛立ちを 募ら せて いる と の情報が、直接、間接に私にも 伝え ら れた。こ の間双方の間に立っ て関係修復に向 けいろ いろ 尽力し たが、 結局2002 年 2 月に 入っ て、私の方から 総局長に対し こ れま での 事態を 率直に説明し 、「IT
について日本から のミ ッ ショ ン が何度も 来て、局長自ら が国民 教育省の取り ま と め役と なっ て具体的な提案 ま で作成・ 提出し ていながら 、東京から 何ら 反応も ないこ と に同情する と と も に、こ のこ と について、日本に成り 代わっ て私から お詫 び申し 上げる 。現段階では次年度の要望調査 に正式に載せる こ と を 考える こ と が建設的で あ り 、 私も ア ド ヴ ァ イ ザーと し て尽力する 」 旨述べた。私がこ のよ う なこ と を 発言する 立 場にあ っ たがど う か、いま だに釈然と し ない が、し かし こ の問題についてど こ かで区切り を つけておかなければ、こ れま で極めて良好 であ っ たJICA
と 高等教育総局と の関係を 損 ねる こ と にも なり かねないと 思い、こ のよ う な発言を 行っ た。こ れで事態は一応収拾する こ と と なっ た。 以上、昨年度のプロ ジェ ク ト 形成過程につ いて縷々述べてき たが、こ れは、ス ハルト の “ 開発独裁” 体制の崩壊以降、 援助に対する 従来の“ 物乞い” 的態度から“ オーナーシッ プを 持っ て援助を 活用する ”と いう 態度へと 少し ずつではある が意識変革が起こ り つつあ る 中で、今、イ 日双方で合意を 得ながら プロ ジェ ク ト を 形成し ていく 過程そのも のが重要 であ る こ と を 強調し たかっ たに過ぎ ない。 2 ) 平成15年度のプロ ジェ ク ト の発掘・ 形 成 上記のよ う な前年度の経験を 踏ま え 、連絡 調整を 密にし て高等教育総局とJICA
と の意 思疎通を 図る 一方、“ 国際教育協力を 活用す る 力” の形成と いう 観点から 、イ 側が主体的 にこ の作業に取り 組むべき である と の方針で 臨んだ。 ま ず従来の専門家が行っ てき たこ と を 踏襲 し て、 先に行っ たReview Table
作り や前任 者が行っ た大学の管理運営に関する 調査研究 の成果を 踏ま え 、2002 年 2 月の下旬から 私 の方で3 つのプロ ジ ェ ク ト 案作り を 開始した。こ れと 平行し て、こ れら の案について関 係の局長やイ 側大学関係者、さ ら には日本人 専門家と の意見交換を 行っ た。こ の結果3案 のう ち、特にイ 側が関心を 示し 、ま たこ れま でも イ 側独自に小規模ながら パイ ロ ッ ト 事業 が実施さ れてき た、 産学地9)の連携について のプロ ジェ ク ト 案作成を 本格的に進める こ と と し た。 し かし プロ ジェ ク ト の形成過程にでき る だ けイ 側が主体的に関わる よ う にする と の観点 から 、本専門家がすべてプロ ジェ ク ト 案を 書 く こ と はぜず、 こ のテ ーマについて ワ ーク ショ ッ プを 主催する など 積極的な姿勢を 示し ている ガジャ マダ大学に対し 、私の当初案を 示し プロ ジェ ク ト 案作成の意志を 打診し た。 同大学はこ れを 歓迎し 、当初案を さ ら に発展 さ せた総合的な産学地連携計画を 作成し こ れ を 高等教育総局に提出し た。 一方2002 年 4 月に
JICA
の要望調査が始 ま っ た段階で、昨年の轍を 踏ま ないため、総 局長に対し こ の調査の趣旨や手順、さ ら にはJICA
の優先課題やそこ における 高等教育の 位置付けなど を 説明し 、その準備を 行う よ う ア ド ヴ ァ イ ス を 行っ た。 同局長は、2002 年 4 月 26 日に行われた「 イ -日教育情報交換 会」(Need Survey
説明会) において、 同総 局から の要望と し てBAPPENAS
に提出を 希望する6つのプロ ジェ ク ト 案を 明ら かにし た。こ れら の提案は、基本的には昨年正式な ルート に乗ら な かっ たIT
関連プロ ジ ェ ク ト 等“ 積み残し ” 案件を 正規のルート に乗せる と いう も のであ っ た。と にかく パイ プラ イ ン に詰ま っ ている も のを 正規のルート に乗せ、 日本側の正式な判断を 求めたいと いう 気持ち は理解でき る も のであ っ た。こ れで前年度の 若干の行き 違いが一掃さ れる こ と を 期待し た。 その後5月に入り 、提案さ れたプロ ジェ ク ト の詳細の詰めについてアド ヴァ イ ス する と と も に、こ れら プロ ジェ ク ト の提案に対する 本専門家なり のコ メ ン ト を 総局長に伝えてお いた。 こ の過程でのJICA
に対する 作業と し て は、JICA
事務所でのス ク リ ーニン グ のため の要請案件調査書( 和文) の作成と 、JICA
事 務所内でのス ク リ ーニン グを 経た要請案件に ついて英文の正式要請書作成があ っ た。本年 はいずれも 私が他の日本人専門家の協力を 得 て行っ たが、後者については、本来高等教育 総局のし かる べき 部署が行う べき こ と であ り 、こ の点について、担当局長に申し 入れを 行い次年度から こ の局で行う 旨合意を 得た。 3 ) その他の連絡調整等の業務 上記の高等教育総局のために行う 活動以外 に、 直接的にはJICA
自体の業務に関わっ て 本専門家が協力する も のも 少なく なかっ た。 ま ずJICA
が2002 年度の国別事業実施計画 策定を 進める 中、こ れに協力し て2001年12 月高等教育関係部分の案を 執筆し 提出し た。 加え て 、2002 年度に入っ てJICA
内におい てプロ グラ ム 協力が本格的に進めら れる こ と になり 、その作業への協力と し てプロ グ ラ ム 協力における 高等教育の位置付けについて、 2002 年 4 月、 本専門家の私案10)を 作成し 提 出し た。 ま たあ わせて、JICA
が行っ た高等 教育関係事業の“ プロ グ ラ ム 協力マト リ ッ ク ス ” 作り の作業に対し 、 同年5 月データ の提 供を 行っ た 。 さ ら に要望調査が本格化する 中、同月、プロ ジェ ク ト 等のス ク リ ーニン グ の基準や観点について本専門家なり の案11)を 作成し 提出し た。 こ れら の協力については、高等教育総局の アド ヴァ イ ザーはイ 側と 日本側の橋渡し の立 場にあ る と 考え 、直接に協力が求めら れてい ない場合にも 積極的に取り 組んだつも り であ る 。 9)「 地」 は地域社会。 10) 「 イ ン ド ネシ ア における 今後の高等教育分野の支援の在り 方( 私案メ モ)」 pp.1-7、 2002 年 4 月 17 日 11)「 プロ ジ ェ ク ト 等の提案に対する 評価( 選考) 基準いついて( メ モ)」pp. 1-2、 2002 年 5 月 21 日その他、在任期間中に実施さ れていた、高 等教育開発(
HED
) プロ ジェ ク ト 等の関係者 と 折に触れ情報・ 意見交換を 行い、高等教育 総局アド ヴァ イ ザーと いう 立場から の率直な 助言も 行っ た。 ま た、 国際協力銀行(JBIC
) が2002 年 6 月から 実施し ている 高等教育セ ク タ ー調査について 、 高等教育総局のア ド ヴァ イ ザーと し てその実施態勢の構築と 調査 内容の確定等に協力を 行っ た。4 . 若干の教訓と 提案
( 1 ) TOR 先に案件形成の一つの苦い経験について述 べたが、専門家の派遣も こ のよ う な案件の一 つであ り 、TOR
が実際の途上国のニーズ を 反映し ている かど う かは、案件形成の過程で 当該国側と いかに良好な意思疎通が図ら れて いる かにかかっ ている と いっ ても 過言ではな かろ う 。 ま た途上国側受入れ省庁の能力形成の度合 によ っ ても 、専門家に何が期待さ れる かが異 なっ てこ よ う 。ま っ たく 能力を 欠いている 場 合には、当該国政府に代わっ てすべてのこ と を 行う と いう 、 いわば“ 完全役務提供型” の 専門家が必要なこ と も あ ろ う 。 いずれにし て も 、 し ばし ば同じ ポ ス ト に 10 年あ る いはそれ以上にわたり 、 専門家が 派遣さ れる と いう 現象も 見ら れ、途上国側の ニーズの変化、能力の発展の度合等を 考慮し たえ ずTOR
を 改訂する と と も に、 ポス ト そ のも のについても 見直し を 行う 必要があ る 。 ( 2 ) 役務提供から 持続可能な能力形成へ 1 ) 能力形成型専門家 こ れま で縷々述べてき たよ う に、本論の一 つの明確な メ ッ セージ は、 政策ア ド ヴ ァ イ ザーと いい調整型専門家と いい、いつも 日本 から 人材を 提供し 日本の開発協力事業の円滑 な実施を 図る と いう 発想はそろ そろ 止めにし てはど う かと いう こ と であ る 。むろ ん、 外国 から の支援を 有効に組織・ 活用でき る 能力を 十分有し ていない国の方が多いこ と は事実で あ ろ う 。 し た がっ て 、 短期的には政策ア ド ヴ ァ イ ス や援助調整への支援が必要であ ろ う 。し かし それは永続する も のではなく 、 持 続可能性と いう こ と を 考え る と 、当該国側に そのよ う な能力が身につく よ う なプロ セス が 必要であ る 。単なる 役務提供であ っ てはなら ない。今こ そ、 役務提供型専門家から 能力形 成型専門家へと さ ら なる 発想の展開が必要と 思われる 。 2 ) プロ ジェ ク ト と し ての“ 国際教育協力 を 活用する 力” の形成 こ のよ う に個別派遣専門家の役割を 捉えな おすなら ば、“ 国際教育協力を 活用する 力”の 形成と いう ひと つのプロ ジェ ク ト を 構想し 得 る 。現在のJICA
のス キ ーム では必要に応じ 様々な投入を 柔軟に活用でき 、長期専門家の 派遣のみな ら ず、 日本そ の他の国々での研 修、複数の短期専門家の派遣など 多く の組み 合わせが考え ら れる 。 こ の際留意すべき 点は、単に個々人に能力 が身につく と いう だけでなく 、私が試みたよ う に、こ のよ う な能力の形成と は、組織の中 に国際協力のための仕組みやシス テム を 作っ ていく と いう 過程でも あ る 。し たがっ て、い わば組織と し ての学習プロ セス と いう こ と も でき る 。 ま たこ のよ う な“ プロ ジェ ク ト ” に求めら れる 専門家は、個々の分野のス ペシャ リ ス ト と いう よ り は、制度や仕組み作り と その運営 に長けたマネージャ ータ イ プのど ちら かと い え ばジェ ネラ リ ス ト が求めら れる であ ろ う 。 3 ) 目標設定と 評価 こ れま では、個別専門家については、雑多 な役務提供が求めら れている ためかプロ ジェ ク ト について行われている よ う な評価は行わ れていない。し かし 上記のよ う に能力形成と いう 一つのプロ ジェ ク ト と し て捉え る と 、他 のプロ ジェ ク ト と 同様上位目標、目的、成果、 活動などPDM(Project Design Matrix)
を 定め、それに照ら し て評価を 行う こ と も でき よ う 。さ ら にプロ ジェ ク ト と 同じ よ う に扱う と すれば、3年と か 5年と かの期限付き であ り 、 たえ ず見直し が行われる こ と にも なる 。