序
その他のタイトル Vorwort
著者 中村 恒雄
雑誌名 独逸文学
巻 16
発行年 1971‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00017862
序
本号は上道直夫教授の定年退識記念号であります.
上道教授は関西大学の独逸文学科を創設された方であります.創設とい うことにはいかなる創設にも必ず困難が伴うものであります.私がたまた ま上道教授から独逸文学科創設のことをおききしましたのは昭和二十三年 の一月だったかと思います.昭和二十三年と申しても今の学生諸君には生 れる前の単なる年号にすぎないかも知れませんが,敗戦後まだ何年も経っ てない時であります.戦争の余燒は消えやらず,食うということ自体が大 変な頃であります.上道教授からおききした時の事,その情況等から今も って私の脳裡に焼きつけられておりますのは,今考えてみますと,物質的 崩潰のさなかの精神文化の確保,という対比の強さからもきているといえ ましょうか.それはともかく,上道教授はわれわれの知りえぬ色々の困難 に打ち克たれたことでありましょう.更に上道教授は本学に早く大学院文 学研究科独逸文学専攻(修士課程,博士課程)を創られました.又阪神トキ イツ文学会会長,日本独逸文学会阪神支部長としての教授の功績はよく知 られているところであります.
さて上道教授は昭和四十五年三月末日をもって定年退職され,定年延長 も固辞されましたので,われわれは教授の,奥に繊細なものを秘めたあの 厳しさに接する機会がすくなくなってしまいましたが,劇職を去られ,ゲ ーテも珍重した,,MuBe"を得られた今,長年来の自然主義,殊にハウフ゜
トマン研究を完成されることを心から願い,待ち望む次第であります.
昭和四十六年一月
関西大学独逸文学会会長中 村 恒 雄