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アメリカ法におけるストック・オプション

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(1)

アメリカ法におけるストック・オプション

その他のタイトル Stock options in the United States of America

著者 溝渕 彰

雑誌名 關西大學法學論集

巻 50

号 4

ページ 770‑813

発行年 2000‑11‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00023598

(2)

4  3  2 

ストック・オプションの沿革 ストック・オプションの導入についての法的規制 取締役会及び報酬委員会の決定について ストック・オプションの付与と自己取引規制 ストック・オプションの付与に対する対価の相当性 ストック・オプションの付与に関する事項についての規制 株主総会による承認 自己株式取得・保有規制について 新株の発行規制について 結びに代えて

アメリカ法におけるストック

溝 渕

オプション

0)

(3)

オプション一般的に予め定められた価額︵権利行使価額︶で︑特定の権利行使期間内に会社

( 1 )  

から所定の株式を取得することができる選択権のことをいう︒アメリカにおいてはこの権利は

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  , 

( 2 )  

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  : 最高執行役員︶をはじめとする役員

( 0

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等に対して付与されるわけであるが︑株価が権利行使価

額よりも高い時にストック・オプションを行使して株式を取得して︑これを売却することによってオプションの行使

( 3 )  

者は差額の資本利得

( c a p

i t a l

g ai n

)

を得ることができるものである︒このようにストック・オプションは︑株価が

上昇すると︑利益が上昇した分だけ得られるためにオプションを付与された者は通常︑会社の業績と連動している株

( 4 )  

価を上昇させるために日々努力することになり︑これは付与された者の勤労意欲を高めることになる︒また株価を上

( 5 )  

昇させるために会社の財産的価値を高めることは株主の利益にもなって株主重視の経営を促すことにもなる︒そして

( 6 )  

その結果︑証券市場が活性化されるのである︒また場合によってはストック・オプションは多額の利益をもたらすも

( 7 ) ( 8 )  

のであるため︑有能な経営者の引き抜きや有能な経営者を留めておく手段として用いられる︒このストック・オプ

( 9 )  

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) 

ションは最初アメリカでその産声をあげ︑長期インセンティヴ

( 1 0 )

1 1 )

 

して普及し︑その後各国へと広がりを見せた︒そして一九九七年︵平成九年︶

のである︒本論文においてはアメリカにおけるストック・オプションに関する法的な規制について考察し︑その際︑

( 1 2 )  

株主の利益をどのようにして保護するかについて特に検討を行ったものである︒その上で︑アメリカ法における株主

( st o

c k  o

p ti o

n )

の商法改正によって日本において︑

の一っと ストック・オプションが導入された︒このストック・

の商法改正により日本に導入されたも

(4)

0巻第四号

︵ 七 七 ︱

‑ ︶ の保護のあり方について︑長所と思われる点︑短所と思われる点とを分析し︑最終的に︑長所についてはこれを活か しつつ︑いかにして日本のストック・オプションに参考にしていくか︑そして短所についてはいかにしてこれを克服 しつつ日本のストック・オプションに参考にしていくかを結論付けた︒その構成であるが︑二においてストック・オ

(c or po ra te   go ve rn an ce ) 

プションの沿革についてみていき︑三においてストック・オプションを︑概ね会社法を中心にその法的な規制につい

( 1 3 )  

て検討し︑そして最後に四において総括を行った︒その際︑近年特にアメリカにおいて議論となったコーポレート・

( 1 4 )  

についての最終報告書である﹃コーポレート・ガバナンスご分析と勧告﹄

(1

) 

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( 1 9 9 9 )

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考え方﹂企業会計五0巻五号八八・八九頁(‑九九八年︶︑吉原和志﹁自己株式取得規制の緩和に関する論点︵ニ・完︶﹂民

0八巻三号三四七頁(‑九九三年︶︑森本滋﹁議員立法によるストック・オプション制度﹂商事法務一四五九号二頁(‑九九七年︶︑古川浩一・今井潤一﹁わが国におけるストック・オプション価値の試算﹂企業会計四九巻︱二号︱二

一頁(‑九九七年︶︑伊藤靖史﹁業績連動型報酬と取締役の報酬規制(‑)﹂民商法雑誌︱一六巻二号二四0

(5

)

(2

)

なお︑この役員については︑後述三・2(

(3)具体例を用いて説明してみよう︒例えば︑行使期間が五年で︑A社の株式を一万株︑一株あたり五ドル︵これが行使価額

である︶で︑取得し得るストック・オプションをA社の役員Xが付与されたとする︒この時︑A

その後︑行使期間内にXの努力によって株価が上昇し︑二0ドルとなったところで︑Xは権利行使し︑A社の株式を取得した︒更にその後A社の株式は二五ドルまで値を上げ︑その時点で︑Xは株式を二五ドルで売却した︒この時にXは︑二0ドルの利益を得ることができたことになるのである︒また株価が行使価額である五ドル以上にならなかった場合︑Xはオプションを行使しないであろうから損失はゼロということになる︒ 下︑﹃分析と勧告﹂として引用︶についても検討を行った︒ ガバナンス

︵ 以

(5)

アメリカ法におけるストック・オプション

(4

)

吉原・前掲注

(1

)文献・民商法雑誌一0八巻三号三四七頁参照︒

(5

)

このようにストック・オプションは株主︵本人︶と経営者︵代理人︶の利害が相反するが故に生じるいわゆるエージェン

シー・コスト

( ag e

n cy

c o s t

)

を減じるから︑経営者に報酬を与える最も効果的な方法であるとされる︵例えば︑若杉敬明

﹁ 第

3章アメリカのストック・オプションの変遷﹂日本コーポレート・ガヴァナンス・フォーラム編﹃ストック・オプ

ションのマネジメント﹄七四ー七六頁(‑九九八年︶参照︶︒

(6

)

森本・前掲注

(1

)文献・商事法務一四五九号二頁

(7

) 

18B 

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J u r  

2d§1957 

( 1 9 8 5  

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0 . ) .

 

また︑ストック・オプションはベンチャー企業

等報酬として多額の現金を与えることが困難な会社において︑現金報酬の補完手段として用いられることもある︵江頭憲治

郎﹁ストック・オプションのコスト﹂﹃商事法の展望

1

新しい企業法を求めてー﹂一六二頁︵平成一0

年 ︶ ︶ ︒

( 8 )

また︑ストック・オプションについては種々の問題点が指摘されている︒ストック・オプションは業績連動型報酬といわ

れるが株価は様々な要因によって形成されるとすれば︑オプションを付与された者の貢献以外による株価の変動も存在する

ことになり︑必ずしも貢献度を反映したものとはなりがたいのではないかという主張もある︵吉原・前掲注

(1

)文献・民商

法雑誌一〇八巻三号三四八頁︶︒また︑株価重視の結果として場合によっては非常に短期的な視点での経営が行われ︑最終

的に会社によい結果をもたらさない可能性があるともいわれる︵並木俊守﹃ストック・オプションの実務﹂五七頁︵平成九

年︶︑酒巻俊雄﹁商法の一部を改正する法律等の概要Iストック・オプション制度の導入︑株式消却手続の特例について

No

.

3 8 6

一四頁(‑九九七年︶︑吉原・前掲注

(1

)文献・民商法雑誌一〇八巻三号三四八頁︶︒そしてこ

れらの問題点は最終的に会社の実質的な所有者である株主に重大な不利益をもたらすものといえる︒

(9

)

長期インセンティヴ報酬はストック・オプションに限られるものではない︒ストック・オプション以外の長期インセン

ティヴ報酬について主要なものについてここで若干触れておく︒主要なものとしては︑ファントム・ストック︑株式評価権︑

リストリクティッド・ストック︑パフォーマンス・シェアー︑パフォーマンス・ユニットがある︵この箇所については︑園田成晃「米国の長期インセンティヴ報酬制度〔上〕」商事法務一三八五号一九ーニ0頁(-九九五年)、伊藤•前掲注

(1)

献・民商法雑誌︱一六巻二号二四0

5

KP MG

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吉原寛章・メイ椋田編著﹃ストック・オプショ

ン導入・成功の実際新しい成功報酬制度のすべて﹄四三ー五四頁(‑九九七年︶︑アーサーアンダーセン編﹃実務家のた

(6)

関法第五0

めのストック・オプション

1

Th e  S ub co mm it te e  o

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pe ns at io n  o f  th e  Co mm it te e  o n  E mp lo ye e  B e ne f i ts   an d  E xe cu ti ve  Compensation,

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§§ 19 85

  , 1

98 7  (1985 

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g朋インセンティヴ碑

t

酬とは一般に︑数年にわたる業績と報酬額とを連動させる報酬をいう︵伊藤・前掲注

(1

0頁注 )文献・民商法雑誌︱一六巻二号ニ

(5

)

①ファントム・ストック

(p ha nt om s to c k )

ファントム・ストックとは︑現実には支給しないが︑あたかも将来の特定

の時期まで売却できない会社の株式を特定数︑役員等に対して支給したかのように扱うものである︒実際の株式につい

て支払われる配当金や実際の株式の値上がり益の相当額が役員等に現金で支給されることになる︒これはストック・オ

プションと違って︑会社側にとっては︑現実に株式を譲渡したり︑発行したりするコストがかからないが︑その代わり︑

現金で報酬を支払うことになるためこれを準備しておく必要がある︒また権利を与えられた者は︑払い込むべき資金を

調達する必要がない︵ファントム・ストックについて研究したものとして︑例えば︑牛丸輿志夫﹃役員報酬規制の現代

的課題﹄六九頁以下︵昭和五七年︶参照︶︒

( st o c ka p p re c i at i o n  r i gh t

以下では

S A

R

S A

Rはその権利の被付与者が権利行使時点において

権利行使価額を市場価額が上回る部分について金銭もしくは株式︵あるいはその組み合わせ︶で受領する権利である︒

ストック・オプションのようにオプションを行使し︑株式を購入するための資金を調達する必要がない︒またこの

S A

Rはストック・オプションと抱き合わせで発行されることが多い︒

③リストリクティッド・ストック

( re s t ri c t ed s to c k )

譲渡制限付株式とも訳される︒一定期間︑譲渡が制限される株式

を支給するものである︒これは︑任期満了や死亡︑障害以外の理由で︑この一定の期間内に雇用関係が終了した場合に

は会社に対して支給された株式を返還しなければならない︒

(p er fo rm an ce s ha r e )

・パフォーマンス・ユニット

(p er fo rm an ce u ni t )

パフォーマン

ス・シェアーとは一定期間における会社の業績目標に応じて株式を役員等へ支給するものである︒またパフォーマン

ス・ユニットとは一定期間における会社の業績目標に応じて金銭を役員等に支給するものである︒多くの会社は︑この

(7)

アメリカ法におけるストック・オプション

パフォーマンス・シェアー及びパフォーマンス・ユニットをストック・オプションの補完あるいは代用として用いてい

る ︒

(10) 古川他•前掲注 (1) 文献・企業会計四九巻―二号―ニ―頁

( 1 1 )

ここで︑日本以外の主要な国におけるストック・オプションの導入状況について述べることにする︒フランスでは一九七0年にストック・オプションが導入された︵中村利平﹁フランスの株式選択権制度﹂商事法務七四七号二六頁参照︒なおフ

ランスにおけるストック・オプションについては︑例えば︑

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570  ( 1 9 9 8 ) ‑ R   昭~)。ドイツでは、一九九八年にストック・オプションが「企業領域における管理と透明性についての

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いて導入された︵ドイツにおけるストック・オプションについては︑例えば︑

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53 

 

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353 

( 1 9 9 9 )

参照︶︒またこの他にもイギリス︑カナダ︑スウェーデンにおいてもストック・オ

プションは導入されている︵黒田敦子﹃アメリカ合衆国における自己株報酬・年金の法と税制﹄三二頁︵平成︱一年︶︶︒ま

た欧米以外でも︑例えば韓国においてストック・オプションは導入されている︵韓国におけるストック・オプションについ

ては︑李範燦﹁韓国法上のストック・オプション﹂立命館法学二五六号一四八二頁以下(‑九九七年︶参照︶︒

( 1 2 )

なお︑特にストック・オプションを中心に報酬規制について検討したものとして︑阿部一正他﹃役員報酬の現状と課題﹄

別冊商事法務一九二号︵平成九年︶参照︒また英米における報酬規制について検討したものとして︑例えば︑山田威﹁取締

役の報酬規制について①ー④﹂金沢経済大学論集二六巻一・ニ号ニ︱七頁以下︵平成四年︶︑二七巻一号五七頁以下︵平成五年)、二九巻二号五三頁以下(平成七年)、三0

巻三号一

011

一頁以下(平成九年)、伊藤•前掲注(1)文献・民商法雑誌一

一六巻二号ニニニ頁以下︑同﹁業績連動型報酬制度と取締役の報酬規制︵ニ・完︶﹂民商法雑誌︱一六巻三号四0

( 1 3 )

アメリカにおいては︑特に会社法の分野については制定法が重要視され︑これについてはデラウェア︑ニューヨーク︑カ

リフォルニアの各州会社法と改正模範事業会社法

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が代表的か

つ重要と思われるので特にこれを中心に扱うこととした︵それぞれの条文の翻訳については︑北沢正啓・浜田道代﹃新版デ

ラウェア一般会社法﹄︵平成六年︶︑長浜洋一﹃ニューヨーク事業会社法﹄︵平成︱一年︶︑北沢正啓・戸川成弘﹃カリフォルニ

(8)

ア会社法』(平成二年)、北沢正啓•平出慶道『アメリカ模範会社法」(昭和六三年)を参考にした)。また本論文においては主として州会社法を中心に検討していくこととするが︑これ以外にもストック・オプションと特に関連を有する法制度は証券取引法及び税法といえるであろう︒例えば︑証券取引法はストック・オプションを含む役員の報酬について詳細な情報開示を株主に対して要求することがあり︑それが一っのストック・オプションのコントロール手段となっている︒また︑税法

は︑以下の﹁ニストック・オプションの沿革﹂においてみるようにストック・オプションの普及に大きな役割を果たしたといえ︑ストック・オプションと証券取引法及び税法との関係を考察することは特にアメリカ法については重要なことと考えられるので︑これについても必要に応じて適宜触れた︒

( 1 4 )

 

T h e   A m e r i c a n   L a w   I n s t i t u t e ,   P r i n c i p l e s   o f   C o r p o r a t e

o   G v e r n a n c e :   A n a l y s i s

n   a d   R e c o m m e n d a t i o

n   (

1 9 9 4 ) .

ナンスの原理ご分析と勧告」の研究—|'」(平成六年)を参考にした。

訳等については︑証券取引法研究会国際部会訳編﹃コーポレート・ガバナンスー│'アメリカ法律協会﹁コーポレート・ガバ

 

冬企入の翻1

( 1 5 )   ストック・オプションは長期インセンティヴ報酬として知られているが︑アメリカにおいては経営者にオプション

( 1 6 )  

を与えることは一九二

0

年代から行われていることであった︒制定法が設けられる前においては︑会社は特別の授権 のない状態で何年もの間︑契約をしたり︑株式を発行する一般的権能

( g e n e r a l a u t h o r i t y )

の下で︑オプションの発

( 1 7 )  

行を行っていた︒明示的にオプションを発行する権限を定めた最初の制定法はデラウェア州で︑一九二九年に定めら

( 1 8 )  

れ︑その他の州もその後すぐにこれに追従した︒これらの制定法はインセンティヴ報酬として︑第二次世界大戦以後︑

( 1 9 )  

取締役や役員に付与される株式を取得する選択権︑即ちストック・オプションの利用の根拠となった︒これらのデラ ウェア州をはじめとする制定法は概ね︑取締役会がストック・オプションに関して自由に決定を行うことができると

第五

0

巻 第 四 号

沿

一 五

(9)

アメリカ法におけるストック・オプション 一九六四年の同法の改正まで︑優遇課税を受けるオ

( 2 0 )  

するものであった︒これについて︑ストック・オプションは︑行使されると株主の地位の希薄化をもたらすものであ

( 2 1 )

2 2

)  

り︑株主に対する情報開示及び株主総会の承認が為されるべきであると主張する者もあった︒しかしながら︑このよ

うな主張にも拘わらずストック・オプションの付与の濫用については裁判所の裁量や証券取引委員会

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( 2 3 )  

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の蒜沓軍によって規制されただけであった︒このストック・オプションについては自己取引規

( 2 4 )  

制と対価の相当性の二つの観点から問題とされた︒まず第一の自己取引規制の問題であるが︑これはストック・オプ

ションを付与される者とこの付与を承認する者とが同一又は利害関係を有する者である場合には公正な判断を下せな

( 2 5 )  

いのではないかという問題である︒これに対しては︑予防的措置として特に公開会社において社外取締役からなる報

( 2 6 )  

酬委員会を設置し︑そこで役員・取締役のストック・オプションを含む報酬について決定している︒このような利害

関係を有しない社外取締役の経営判断を従来から裁判所は尊重し︑報酬委員会の決定については簡単な吟味しか行っ

( 2 7 )  

ていない︒また第二の対価の相当性についてであるが︑これについては一九五

0

年代以降のいくつかの事件で争われ

( 2 8 )  

そしてストック・オプションの付与については相当な対価が必要であるが︑かかる対価の相当性を欠くストッ

( 2 9 )  

ク・オプションは会社資産の浪費又は単なる贈与として無効とされると判示された︒また︑特にこのストック・オプ

ションは税法と非常に密接な関係を有している︒というのもストック・オプションについては︑

0

年以降︑税

( 3 0 )  

制上の優遇措置がとられることもあり︑このことがストック・オプションの普及に貢献したといえるからである︒

国歳入法典

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0

年以降は年代別にこの税制上の措置を基準にしてストック・オプションは四つの種類に分類され︑以下のよう

( 3 1 )  

な変遷をたどる︒第一は︑制限付ストック・オプション

の改正により認められ︑ である︒これは︑

0

年の内

(10)

利用されなくなっていった︒そして︑優遇課税は︑

んら課税されることなく︑ただ譲渡する時にのみ資本利得課税がなされると定めるものであった︒なお︑会社法の判

例でストック・オプションについてのリーディング・ケースはこのタイプのストック・オプションに関するものであ

るとされ板︒第二は︑適格ストック・オプション

法典の改正によって優遇課税を受けるストック・オプションとして認められたものである︒これは︑優遇課税を受け

る要件として株主総会における承認等を要求するものであり︑制限付ストック・オプションと比べて︑その要件が厳

格になった︒また要件が厳格となったのは主として報酬制度の濫用から株主を保護することにあった︒優遇課税の取

扱いそのものについては︑本質的に制限付ストック・オプションと同じである︒この要件の厳格化と優遇課税を受け

た場合と受けなかった場合の差が非常に狭まってきたことによって︑適格ストック・オプションの魅力は少なくなり︑

プション

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  である︒これは︑優遇課税が受けられない通常の課税原則

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2

宰心田 m

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たストック・オプションのことをいう︒このストック・オプションが付与されたときに

は課税所得が生じたとは考えられないが︑行使したときに市場価額と行使価額との差額が課税所得とみなされる︒ま

た︑株式を譲渡した時には資本利得課税がなされる︒第四は︑奨励型ストック・オプション

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 である︒これは一九七六年に優遇税制が廃止された後︑一九八一年の経済再建税法

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により︑内国歳入法四二二条Aによって認められたものである︒ 第五0

( 3 2 )  

プションとして大いに利用された︒

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一九七六年まで適格ストック

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である︒これは︑一九六四年の内国歳入

0

年の改正は︑会社のストック・オプション計画が一定の要件を満たすも

ストック・オプションを受領する経営者は︑オプションを行使して取得した株式を譲渡するまでは︑な

一九七六年五月二

0

日に廃止された︒第三は非適格ストック・オ

(11)

アメリカ法におけるストック・オプション

オプションとして優遇課税をしてきたものと本質的に同じであるが︑それより要件が寛大である︒この要件の一っと してもやはり株主総会による承認が要求されている︒この要件を満たした場合︑優遇税制の適用を受け︑

ストック・

オプションの行使時に取得した株式の市場価額と行使価額との差額である未実現利益が発生してもこれには通常の所

( 3 5 )   得課税が行われず︑その株式を譲渡したときに資本利得課税が行われる︒このような税制上の優遇措置によって︑ス

( 3 6 )  

トック・オプションは広く普及し︑現在大部分の会社において採用されており︑これが現在のアメリカの業績好調な

( 3 7 )  

会社の原動力となっているようである︒

( 1 5 )

取締役や役員に対する長期インセンティヴ報酬として付与される以外にもストック・オプションは投資銀行

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に対して︑その役務に報いるために付与されたり︑社債の消化を容易にするために︑オプションが社債に伴って付与されたりした︒また︑更生中の会社の債権者に対してオプションが付与されたりもした

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1 9 8 6   &1987 

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400 、長浜•前掲注

(1)

文献·企業会

計五0巻五号九0

頁 ︶

( 1 6 )

 

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( 2 1 )

 

I d   a t  

5 1 5 .  

( 2 2 )

 

Ge

or

ge

  S .

  H i

l l s ,

  M OD EL   CO

RP

OR

AT

IO

N  A

CT

, 

48 

H a r v

.   L .  

R e v .

 

1

3 3 4 ,   1

3 5 8   (

1 9 3 5 ) .  

( 2 3 )

 

B a l l

a n t i

n e ,  

s u p r

n o a  

t e  

(

2  

0 )  

a t  

5 1 6 .  

( 2 4 )

近藤光男﹁米国における経営者の報酬をめぐる法的問題点

1

ストック・オプション制度を中心ー﹂代行リポート︱︱

(12)

関法0

( 2 5 )

(2

6)

( 2 7 )

 

D o u g l a s  

M .  

B r a n s o n

C

o r p o r a t e G o v e r n a n c e J  

44 

0 ( 1 9 9 3 ) .

(28) 近藤•前掲注

(24)

文献·代行リポート――四号七ー八頁   なおこの第一の問題については後述三

•3

参照。

( 2 9 )

K e r b s v .   C a l i f o r n i a   E a s t e r n   A i r w a y s ,

n c   I .   A  90 

2 d  652 

( D e l .   1 9 5 2 ) .  

この第二の問題ついては後述三

•4

参照。

( 3 0 )

(1)0八巻三号三五二頁注

( 1 3 0 ) ( 3 1 )

以下の分類方法及びその内容については︑

C l a r k , s u p r a   n o t e   ( 9 )   a t 田・前掲注 (11) 文献、川端康之「新規事業と税制

1

ストック・オプション税制の基礎構造'~」租税法研究二五号三 0

木•前掲注 (8)

文献・九ー一八頁を参至口にした。また、ストック・オプションと税法を考察したものとして、例えば、黒

202    若杉•前掲注 (5) 文献•六一ー六四頁、並 , 2 0  6; 

以下(‑九九七年︶参照︒日本におけるストック・オプションに関する税制上の優遇措置については例えば︑鍋谷彰男﹁平

0年度税制改正による新しいストック・オプション税制の概要︹上︺.︹下︺﹂商事法務一四九四号︱二貝以下(‑九九

八年︶︑一四九六号一六頁以下(‑九九八年︶参照︒

( 3 2 )

この優遇課税の導入に伴い︑多くの会社がストック・オプションを導入した︒このような変化を数値データによって裏付

けるものとして︑生駒道弘﹃ストック・オプションの研究﹄二八ー=︱0頁︵昭和四二年︶参照︒

(33) 近藤•前掲注 (24) 文献・代行リポート――四号五頁

( 3 4 )

ただし︑現在においてはこの奨励型ストック・オプションの規定は四二二条に規定されている︒

( 3 5 )

また︑奨励型ストック・オプションの要件を満たさない場合︑即ち優遇課税を受けられないストック・オプションの課税

については︑オプションの行使時に株式の市場価額と行使価額の差額について通常の所得課税が行われ︑その後︑その株式

を売却した時に︑売却価格と行使時の株式の市場価額の差額について資本利得課税が行われる︵並木・前掲注

( 8 )

(3

6)

AC

A

︵全米報酬協会︶によると︑アメリカの二六0二社を対象にしたオプション利用度調査では︑経営トップ向けで普

及率は九三%︑管理職や専門職向けで六

0

%︑工場労働者ら一般従業員向けで二0%であるとされる︵日本経済新聞社編

0)

(13)

アメリカ法におけるストック・オプション 1

Q&A

(

IBMやコカコーラ等の上場企業一九社に対するアンケート調査によれば︑これら一九社全社がストック・オプションを採用していた

(K PM PG ea t  M ar wi ck   LL

著•前掲注 (9) 文献・三五ー_―-六頁)。更にアメリカを代表する「フォーチュン一 000 社」の九 0

%以上がストック・オ P吉原寛章他編

プションを導入しているとする調査もある︵大和総研/トーマツ編﹃すぐわかるストック・オプションのすべて﹄一七0

( 3 7 )

インテルはストック・オプションを積極的に採用して成功した草分け的存在であると言われている︵日本経済新聞社編・

前掲注 (36) 文献•

10

‑10

ストック・オプションとは予め定められた価額︵権利行使価額︶で︑特定の権利行使期間内に会社から所定の株式

( 3 8 )  

を取得することができる選択権のことである︒アメリカにおいてこのストック・オプションの付与については︑多く

( 3 9 )  

の州会社法上は︑取締役会

(b oa rd of   directors)

において決定するべきものとされる︒また特に公開会社

(p ub li cl y he ld   corporatio

n)

 では︑取締役会が報酬委員会に決定権限を委譲して︑報酬委員会でストック・オプションの付与

についての決定を行うことが多い︒また一部の州会社法等で株主総会の承認が必要とされるが︑このような場合には

れた場合︑会社は保有する自己株式︵金庫株︵日

ea su ry sh ar es ) 

それも為されなければならず︑ここでストック・オプションの付与について定めたストック・オプション計画が株主

( 4 0 )  

に提示され︑承認されることになる︒ストック・オプションを付与された者によってストック・オプションが行使さ

( 4 1 )  

という︶を譲渡するか︑新株を発行することによっ

(14)

的規制についてみた︒

( 4 2 )  

て︑当該行使者に対して株式を付与することになる︒以下においては︑

的にいかにして規制しているのかについてみていくこととした︒具体的には︑2においてストック・オプションの付

与と取締役会及び報酬委員会の決定について吟味した︒またストック・オプションの付与について︑自己取引規制及

( 4 3 )  

び対価の相当性について問題となるが︑3においてはストック・オプションの付与と自己取引規制について︑4

0巻第四号

アメリカにおいてストック・オプションを法

ストック・オプションの付与に対する対価の相当性について考察した︒またストック・オプションの付与に

関する事項については︑5において検討した︒そして株主総会による承認が必要となる場合があるが︑6においては

これを︑またストック・オプションが行使された場合において︑自己株式を譲渡する場合と新株を発行する場合とが

7においては自己株式を譲渡する場合についての法的規制について︑8においては新株を発行する場合の法

( 3 8 )

アメリカにおけるストック・オプションは付与対象者を限定していない︒例えば︑ストック・オプションが企業の設立や株式公開や企業間提携などに際して法律問題を扱う弁護士や市場調査あるいは経営指導を行うコンサルティング会社に対して付与されることもある(東伸之•松古樹美『ストック・オプション入門」二九頁(-九九七年))。日本におけるストック・オプションについては︑商法上︑付与対象者は取締役または使用人に限定されている︵商法ニ︱0条の二第一項︑二項0条の一九第一項︑二項︶︒従って︑監査役にはストック・オプションは付与し得ないことになる︵保岡興治監

修﹁改正商法に基づくストック・オプション

Q&A

﹂商事法務一四七0

(

の取締役会の構成員としての取締役も会社を監督する業務に従事するものであり︑両者の業務に差異がないにもかかわらず︑

後者にだけストック・オプション制度を付与でき︑前者にはできないとするのは問題があるとされる︵上村達男﹁ストック・オプション制度の法的評価﹂企業会計四九巻九号二八頁(‑九九七年︶︶︒また監査役も間接的にであれ︑会社の業績向上に貢献する者である以上︑これにストック・オプションを付与し得ないとするのは妥当でないとも考え得る︵上村・同・

参照

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