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ナサニエル・ホーソーンの南北戦争 ── “

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Academic year: 2021

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藤 村   希

ナサニエル・ホーソーンの南北戦争

── “Chiefl y about War-Matters” を読む

本発表では、ナサニエル・ホーソーンの「主に戦事について」(“Chiefl y about War-Matters. By a Peaceable Man,” 1862)を取り上げた。この作品は、

南北戦争さなかの 1862 年 3 月から 4 月にかけて、首都ワシントンとその近郊 を訪れた作家の経験をもとに書かれた旅行記風のエッセイだが、オハイオ州立 大学出版によるホーソーン全集のコメンタリーが述べるように、作家の作品の なかでも最も解釈の難しいものの一つと言える。「主に戦事について」には顕 著な特徴として、本文が削除されたかのような省略記号や、作品が最初に発表 された『アトランティック・マンスリー』誌編集者によるものと見える注が付 いている。それらが実のところ、作品のタイトルに付けられた語り手「平和を 好む男」と、その見解を批判し削除する編集者の一人二役をホーソーン自身が 演じたものであることは、すでに先行研究によって明らかにされている。しか し、そのような作品に仕上げた作家の意図についての疑問は残り、近年もさま ざまな議論がなされている。この作品と、他の作品や手紙等で表明されたホー ソーンの見解との間には大きく異なるところもあり、それが作品の解釈を一層 難しくする原因ともなっている。開戦から 150 年を迎え、南北戦争やホーソー ンの政治的態度について新たな研究が発表されてきており、それらの新しい知 見をもとに、「主に戦事について」という作品をあらためて読み直してみたい

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と考えた。

以上のような観点から、本発表では、同時期のホーソーンの作品で南北戦争 への言及を含む「北部義勇兵」(“Northern Volunteers,”1862)と『われらが故国』

Our Old Home, 1863)、および作家の手紙も参照しながら、「主に戦事につい て」が示すホーソーン独自の南北戦争への参加のありかたを探った。大統領リ ンカーンの人身保護令状の停止に代表される戦時政策や、作家の周囲の人々、

特にリンカーン率いる共和党を支持する北部の奴隷解放論者たちの善と悪、敵 と味方を単純に二項対立化する言説といった同時代のコンテクストを確認した うえで、特に以下の点に注目して作品を検討した。第一に「主に戦事につい て」における本文と注の関係、第二に北軍総司令官ジョージ・マクレランにつ いてのこの作品での描写と他の場所での作家による言及との間の相違、第三に ピューリタン革命(English Civil War)への作中の言及と南北戦争(American Civil War)当時にオリヴァー・クロムウェルになぞらえられ崇拝された奴隷解 放論者ジョン・ブラウンとの関係である。その結果、浮かび上がってきたのは、

南北戦争中の人々が陥った単眼思考にあえて抵抗する作家の姿である。「主に 戦事について」は、本文削除と抑圧的な注によって同時代の言論・思想統制を 目に見える形で提示し、そうすることによってそのような統制を批判するのみ ならず、本文と注を併置することによって複数の視点とそれらが可能にする討 論、すなわち民主主義の要諦を守る実践にもなっていると結論づけた。

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