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算数・数学科における表現力を育む授業づくり 高度学校教育実践専攻

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Academic year: 2021

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算数・数学科における表現力を育む授業づくり

高度学校教育実践専攻 教員養成特別コース 藤 川 奈 都 美

実習責任教員 川 上 綾 子 実習指導教員 中 妻 佳 代

キーワード:表現力,算数・数学科,授業づくり 1.課題設定の理由

筆者は,算数・数学科の授業を通して,児 童や生徒に,考えを相手に伝えることができ るような表現力を育成したいと考える。筆者 が大学生のときに,新聞に出た全国学力学習 状況調査(平成 25 年度)の結果で,特に,数 学【B 問題】における「一定の事柄が成り立 つ理由や予想した事柄を数学的な表現を用 いて説明すること」の正答率が低く,その要 因として無回答率が高いことが目を引いた。

それをきっかけに,学部卒業研究でも表現力 について扱い,三角形の合同に関する証明問 題を対象として調査を行った。その調査では,

学習内容の理解と,証明問題や理由を説明す る問題での無回答率は必ずしも対応してい るものではないことが明らかになった。

筆者は,算数・数学科を通して身についた 表現力は,日常生活でも相手や状況に応じて 考えたことを適切に伝えることにつながる と考える。また,自分の考えを表現すること への苦手意識が軽減すると,他者とのコミュ ニケーションの充実が図れるようになり,児 童・生徒の自信にも寄与できると思い,本テ ーマを設定した。

2.1 年次の実践研究

1 年次の前期授業科目の「授業づくりのチ ーム演習」で行った模擬授業,及び,小学 校での基礎インターンシップで実践した授 業内容は下表の通りである。

実施日と場面 教科・学年・単元

①2018.6.1 授業づくりのチーム演習

数学科・中学校第 3 学年 三平方の定理

②2018.11.20 基礎インターンシップ

算数科・小学校第 3 学年 1 けたをかけるかけ算の筆算

(1)「授業づくりのチーム演習」の振り返り 当該授業では,曖昧な言葉選びが課題とな った。また,実際の子どもを対象として同じ 活動を行ったとしても,同様の結果を得るこ とは難しいと意見があった。日頃から,表現 する機会を設定し,表現することへの抵抗を 減らすことが重要であることを学んだ。

(2)基礎インターンシップの振り返り 課題として,20×3 の計算を考えさせた場 面が挙げられる。そこでは,お金の図を使っ て考え方をノートにかくときに,【Fig.1】の ように 50 円玉のまとまりをつくるなどの考 え方を記述する児童がいた。このような表現 はかけ算の便利さを理解し,20×3 を数理的 に解釈できているものとは言えない。単元を 通した導入として,買い物場面で同じ商品を いくつか買う代金の計算に取り組んだこと により,児童が 20×3 の計算そのものではな くお金の使い方に終始してしまっていたよ うに思う。すなわち,事象を数理的に捉える 過程で,「既習の数学を活用する手順を順序 よく的確に説明したりする場面」(文部科学 省,2017)を設定できなかったことが原因で あると考えられる。

(2)

【Fig.1】 児童 A のノート

(20 円が3つのまとまりから,50 円玉をつ くり,残りの 10 円玉を合わせて,代金は 60 円としている様子がわかる。お金の使い方 に着目する計算の考え方になっている。)

3.2 年次の実践研究

総合インターンシップⅠ・Ⅱは中学校で実 習を行った。その際の授業実践内容は以下の 通りである。

実施日と場面 教科・学年・単元

③2019.5.27 総合インターンシップⅠ

数学科・中学校第 3 学年 式の展開と因数分解

④2019.11.27 総合インターンシップⅡ

数学科・中学校第 3 学年 二次方程式

(1)総合インターンシップⅠの振り返り 成果として,基礎インターンシップでの課 題をうけて,本時の目標を「計算のきまりを 相手にわかるように説明しよう」とし,学級 全体で説明したいことを共有してから班で の活動に取り組むことにより,全員が本時の 活動に集中して取り組む様子が見受けられ た。また,班の中で【Fig.2】や【Fig.3】に 示したように発表に向けてわかりやすく表 現しようと試行錯誤する様子が見えた。

課題としては,表現様式の選択に関する場 面が挙げられる。生徒に表現することの必要

【Fig.2】 2 班のホワイトボード

(下線で等しいところを示していることが わかる。この班は後の活動で学級全体に発 表することを考え,発表者を決め,班内の 生徒に説明の練習をしていた。)

【Fig.3】 4 班のホワイトボード

(筆者が授業の際に,積の千の位と百の位 には波線を,十の位と一の位の数には二重 線をひいて考えさせたことから,それに対 応して説明していることがわかる。)

性を感じ取らせ,主体的に数学的な表現様式 を選択する場面の設定を意識したにも関わ らず,文字を用いて表すことを教師主導で選 択させてしまった。これは,筆者自身が,本 時の核と考える箇所を逸れてしまうと授業 の展開に不安があると恐れていたことに原 因があると考える。

また,意見の共有のための時間が十分に取 れていなかったことも課題として挙げられ

(3)

る。生徒のワークシートを見てみると,書き かけの生徒も数名いた。このことを踏まえて,

班や学級全体で学習を展開していくときに は,生徒一人一人が十分に考えることができ る時間を確保する必要があると考える。

(2)総合インターンシップⅡの振り返り 活 用 し た ワ ー ク シ ー ト ( 活 動 内 容 は

【Table.1】参照)の【自分の考え】の欄から,

【Fig.4】【Fig.5】に事例を示す。

【Table.1】ワークシートにおける活動の説明

○課題に対する成果

(i)「数学的な表現様式を目的に応じて選択 し,表現する機会を設定する」課題について 自分の考えたことを表現するには,考えた ことに対応した言葉や文字,表現方法などの 知識が必要になる。そのために,考えたこと を表現する活動の前に生徒から重要になる 言葉(ここでは数学的用語)を引き出した。

このことにより,自分の考えを構成し表現す るために必要な材料をそろえることができ たと考える。

(ii)「表現することが苦手な子どもへの支援 をする」課題について

総合インターンシップⅠのときと比べ,生 徒一人一人の数学に対する意識や表現する ことへの苦手意識の様子を把握したうえで 授業実践に臨んだ。学級全体に対して,二次

【Fig.4】 生徒 A のワークシート

(この生徒は「係数」や「絶対値」など数学 的な用語を用いて説明しているとともに,

Ⅲの方法はⅠ・Ⅱの方法がやりにくいとき に用いる,という解法の優先順位を自身の 考えをもって示していることがわかる。)

【Fig.5】 生徒 B のワークシート

(この生徒においては,自分の考えを,強調 して書いていることがわかる。この生徒は 数学に対し苦手意識をもっていたので,自 分の考えを大切にするとともに,必ずしも 他の生徒と違う考え方をもったからといっ て劣等感を抱くことなく学習が進められる ように意識した問いかけを行った。)

方程式の解法に関する解きやすさのことな ど,生徒の考えを尊重する発話を意図して行 うことで,発表しやすい雰囲気づくりを心掛 けた。また,表現することへの苦手意識をも つ生徒に対しては,表現する場の設定を留意 し,自分の考えをまとめる活動のときは班で 意見交換を行うことができるようにした。こ のような場を設けることにより,自分の考え に自信がなくても他者の意見を取り入れつ

二次方程式の解き方の使い分けを説明しよう。

Ⅰ.因数分解を使う方法

Ⅱ.解の公式を使う方法

Ⅲ. (𝑥 + 𝑚)2=n を使う方法

について,どのような二次方程式(𝑎𝑥2+ 𝑏𝑥 + 𝑐 = 0)の解を求めるときに,上の 3 つの方法のうちどの 方法を選ぶか,あなたの考えをまとめてください。

・選んだ理由を他の人にわかるように書く。

・振り返ったときにわかるように丁寧な字で書く。

(4)

つ自分の意見をより確かにしていくことが できると考え,実践した。

○新たな課題

(i)表現するうえでの簡潔・明瞭・的確さを指 導する。

数学的に表現するうえで,簡潔・明瞭・的 確さを求めるばかりではなく,必要に応じた 表現様式の選択をすることが相手に自分の 考えたことをより伝わりやすくするという ことを踏まえて授業実践を行なった。また,

筆者は,簡潔・明瞭・的確な説明の書き方を 生徒に押し付けてしまうと,表現様式を選択 するという観点において生徒自身の発想が 反映されてにくくなり,生徒の表現力を高め ることに繋がらなくなるのではと考えてい た。そのため,今回の授業実践では,本時の 内容に関わる数学的用語の周知を徹底した うえで,自分の考えたことを表現するという 活動の展開とした。しかし,筆者はその説明 の妥当性や的確さについて指導せずに,ただ 生徒に考えを説明させることに留まってし まった。生徒が互いの説明を,表現様式を含 め,考える時間を十分に設定したうえで,教 師がそれらの妥当性についても指導を加え ることで,簡潔・明瞭・的確という条件も備 えたより良い表現へ繋がっていくと考える。

(ii)まとめの時間で「何を学んだか」をつか ませる。

本時は特に〔数学的活動〕における「数学 的な表現を用いて論理的に説明し伝え合う 活動」を意識した。しかし,筆者は,本時の 授業実践を通して「数学的な表現を用いて,

場合に応じた二次方程式の解き方を説明す ること」が十分にできていなかったように感 じた。十分にまとめの時間を割けなかったこ とや,生徒自身に本時の学びを振り返らせる

活動の設定が不十分だったことが要因とな ったと考える。

本時では,「数学的に表現されたものにつ いて話し合って解釈したりする学習活動」

(文部科学省,2018a)が必要だったと考える。

生徒に他の人の考えや本時のまとめが表現 されたものの解釈を促すことにより,生徒自 身で「何を学んだか」をつかませることがで きたと推察する。その際,数学的な見方や考 え方のよさを生徒に押し付けてしまうと,生 徒はそれとは異なる答えだったら言いにく いと感じるために,表現することへの抵抗が 増幅する可能性が考えられる。そのため,ま とめの時間には,数学に関する知識を正確に まとめるとともに,学習内容に対する意欲を 大切にすることを指導していきたい。

4.今後の展望

本研究を通して,表現力を育む授業の在り 方として,以下のことが挙げられると考える。

また,これらに加えて,児童・生徒にとっ て自分の考えを伝えるということは,相手と の信頼関係が大きく関わってくることも学 んだ。授業の手だてを講じることに加え,教 師としての安定感をもち,児童・生徒が安心 して自分の考えを表現できる学級づくりに も励んでいきたい。

①表現することの目的に対応した本時の めあてを設定すること

②表現することに必要な知識,数学的用語 や表現様式の理解が十分なされている こと

③表現することが苦手な児童・生徒に対し ては,自分の考えたことを伝えやすい授 業形態を整えること

参照

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