無水マレイン酸系共重合体の赤外線吸収スペクトル
著者 相田 博, 漆崎 美智遠, 竹内 寿一
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 18
号 1
ページ 173‑181
発行年 1970‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/4789
無水マレイン酸系共重合体の赤外線吸収スペクトル
相 田 博 ・ 漆 崎 美 智 遠 ・ 竹 内 寿 一 Infrared Spectra of Maleic Anhydride Copolyrners
H i r o s h i AIDA , Michio
URUSHlZAKIand Hisakazu T
AKEUCHI( R e c e i v e d S e p .
29, 1969)I n f r a r e d s p e c t r a o f copolymers o f m a l e i c anhydride (MAn) w i t h v i n y l a c e t a t e (VAc) , methylmethacrylate (MMA) , m e t h y l a c r y l a t e (MA) and s t y r e n e ( 8 t ) were measured. Absorption f r e q u e n c i e s o f MAn 一 MMAand MAn‑MA do n o t show a s h i f t w i t h c o m p o s i t i o n , but t h e r e l a t i v e i n t e n s i t i e s o f s k e l e t a l v i b r a t i o n s c h a r a c t e r i s t i c t o MMA and M A are s u b j e c t t o c o n s i d e r a b l e v a r i a t i o n with com‑
p o s i t i o n .
I n copelymers with a l t e r n a t i n g s t r u c t u r e r e l a t i v e i n t e n s i t i e s o f c a r b o n y l bands o f m a l e i c anhydride are dependent on t h e nature o f t h e n e i g h b o r i n g comono‑
mers.
Absorption i n t e n s i t i e s o f copolymers d e c r e a s e d i s c o n t i n u e o u s l y near t h e g l a s s t r a n s i t i o n t e m p e r a t u r e s .
I t i s l i k e l y t h a t t h e s e phenomena are r e l a t e d w i t h t h e change o f d i p o l e moment with s t e r i c c o n f i g u r a t i o n .
1
" ま じ め に無水マレイン酸は単独重合しがたし、けれども種々の ピニルモノマーと容易に共重合し多くの高分子物が合 成されている九これら高分子の物性については多く の研究が発表されているが幻系統的な研究はすくない ように思われるO そこでわれわれは無水マレイン酸と アクリル酸メチル,メタクリル酸メチル,スチレンお よび酢酸ピニルの各共重合体について赤外線吸収スベ クトルを測定し,酸無水物基およびコモノマーの特性 吸収と組成との関係およびスベクトルの温度変化を検 討して共重合体の特異性を明らかにしようとしたD
5倍量のベンゼンにとかし,アゾピスイソブチロニト リル(AIBNと略す〉を開始剤として窒素気流中700C で 3時間反応させた。ゲル状生成物よりベンゼンおよ び未反応モノマーを除去したのち, 1 %アセトン溶液 を作り石油エーテルを滴下して逐次分別を行なって 3 区分の試料を得た口
2 実 験 方 法
2 ・ 1
試 料無水マレイン酸一酢酸ピニル共重合体 (MAn‑VAc と略す):等モルの無水マレイン酸と酢酸ビニルを約
普 工 業 化 学 科 糊 学 生
無水マレイン酸一アクリル酸メチル共重合体 (MA n‑MAと略す) :無水マレイン酸とアクリル酸メチル の仕込モル比を 12/1より 1/6.5まで 6種かえ,ベ ンゼンを溶媒とし AIBNを開始剤として窒素気流中 70'"'‑'750Cで30分""3時間反応させた。生成物より溶 媒および、未反応物を除去したのち, 1""3%アセトン 溶液を作り石油エーテルを滴下して逐次分別を行ない
6種の各々について2...3区分の試料を得た。
無水マレイン酸ーメタクリル酸メチル共重合体 (M An‑MMAと略す) :無水マレイン酸とメタクリル酸
メチルの仕込モル比を1/3から20/1まで6種かえベン
174
ゼンを溶媒とし AIBNを開始剤として,窒素気流中 70"‑'750Cで1"‑'1.5時間反応させた口生成物よりベン ゼンおよび未反応モノマーを除去したのち 6種の未 分別物についてそれぞれ
3%
アセトン溶液を作り,石 油エーテルを滴下して逐次分別を行ない,それぞれに ついて2‑‑‑‑‑3区分の試料を得た。無水マレイン酸ースチレン共重合体 (MAn‑Stと略 す) :等モルの無水マレイン酸とスチレンを約5倍 量 のベンゼンに溶かし AIBNを開始剤として窒素気流 中700Cで1時間反応させた。生成物よりベンゼンお よび未反応モノマーを除去したのち.
3%
アセトン溶 液を作り,石油エーテルを滴下して逐次分別を行ない3区分の試料を得た。
次に各分別試料についてウベローデ粘度計を用し、,
300Cで粕度を測定し, 濃度零への外挿より極限粘度 を求めた。
溶媒は MAn‑VAc の場合アセトン MAn‑MA,
M A叫一MMAおよび MAn‑Stの場合テトラヒドロフ ランである口次に試料を水とピリジンの混合溶液にと かしカセイカリで滴定して酸価を求めたヘ試料の性 状を表1に示す。ここに共重合体の組成は酸価より算 出した。表より MAn‑MAおよび MAn‑MMAは, 仕込モル比に相当した組成をもち, MAn‑Stおよび MAn‑VAcは交互共重合体である。
2
・
2 実 験 方 法目立製EPI‑2型赤外分光器を用い, 酸無水物基 の多い試料は KBr錠剤として,酸無水物基のすくな い試料はフィルムとして赤外線吸収スベクトルを測定 した。フィルムは共重合体のアセトン溶液を岩塩板上 に塗布しアセトンを蒸発させて作成した。温度変化は 加熱セルを用いて行ない高温より低温へと変化させ,
各温度で10‑‑‑‑‑20分間放置したのちスベクトルを測定し た。降温操作は徴量溶媒の蒸発による誤差をさけるた
表1 無水マレイン酸系共重合体の性状 MAn‑VAc
仕込モル比
M A叫 VAc 区 分 酸 価 M共A重叫合:体V組A成c 無水マレモル
9
イ6
ン酸 〔ηJ300C 595 1 :1.05 48.8 0.598 599 1 : 1.03 49.3 0.407 603 1 :1.02 49.5 0.293 606 1 : 1.01 49.8 0.222MAn‑MA
酸 価 M共A重叫合:体M組A成 無 水 マ レ %モルイン酸 〔ηJ300C 547 1 : 1.29 43.7 0.067 583 1 :1.15 46.5 0.066 411 1 :2.04 32.9 0.265 418 1 :1.99 33.4 0.216 256 1 :3.88 20.5 0.405 276 1 :3.52 22.1 0.305 260 1 :3.79 20.9 0.196 170 1 :6.30 13.7 0.805 186 1 :5.68 14.9 0.345 150 1 :7.31 12.0 0.940 159 1 :6.81 12.8 0.474 99 1 :11.55 8.0 0.742 123 1 :9.03 10.0 0.248 1: 1 1
o h q O A
せ
仕込モル比
MAn‑MA 区 分
ーi q
︐ 白 唱 i q
‑ t i q
︐b q G 1 i q L 1 i q h t i q L
1 1 5 5 5 5
・・・・
1 i q o a
告PO
ロ
3 : : :
圃 白 唱
︐ . 噌
EA噌E
ム 噌
EA
MAn‑MMA
M仕A込nモ:ルM比M A 区 分 酸 価 M共A重叫合・体M組M成A 無水マレイン酸モ ル % 〔η]300C 1: 3 1 120 1 :8.3 10.7 0.445
2 114 1 :8.8 10.2 0.244 1: 2 1 160 1 :6.0 14.3 0.485 2 147 1 :6.7 13.1 0.293 1 : 1 1 231 1 :3.9 20.6 0.470 2 213 1 :4.3 19.0 0.255 3: 1 1 382 1 :2.0 33.9 0.340 2 345 1 :2.3 30.6 0.270 6: 1 1 395 1 : 1.9 35.0 0.400 2 434 1 : 1.6 38.5 0.195 20: 1 1 531 1 : 1.1 46.9 0.329 2 562 1 :1.0 49.8 0.164
MAn‑St
仕M A込叫モ:ルs比t 区 分 酸 価 b共1A重n合:体S組t成 無水マレイ%ン酸斗Eレノ 〔η]300C 1 : 1 1 536 1 : 1.05 48.8 2.12
2 547 1 :1.03 49.2 1.31 3 562 1 : 1.00 50.0 0.64
めであるO
3
実 験 結 果3 ・ 1
組 成 の 影 響M A叫一M M Aのスベクトルの一例を図 1に示す口共 重合体中の M M A単位の数が増加すると,波数(cm‑1)
3000, 2960, 1730, 1480, 1440, 1390, 1240, 1190,
訳 時 四 哨 制 川
3(J(刃 Z
∞
ω 1 6 0 0 1400 1200波 数 cm‑1 (1) 無水マレイン酸 49.8モノレ%
白)無水マレイン酸 10.7モノレ%
図 1 MAn‑MMA共重合体の赤外線吸収スベク トル
1140, 984, 840, 745の吸収帯の強度が増加し,他方 酸無水物基の増加とともに,波数1855,1780, 1220, 1080, 1020, 935, 770の吸収帯の強度が増加する。し かし,いずれの吸収帯も組成を変えても吸収波数にず れをほとんど生じなし、。 ポリメタクリル酸メチルペ ポリアクリル酸メチルペ MAn‑MAおよび無水コハ ク酸5)などのスベクトルと比較すると, MMAのαーメ チル基に関するのは, 3000 (伸縮), 1480 (逆対称変 角), 1390 (対称変角), 1280, 980であり,エステル 基に関するのは 2960(伸縮), 1730 (C = 0伸縮),
1440
C
変角), 1240C
C ‑0 ‑C伸縮〉である。 1190お よび1140はMMAの骨格に関するものと思われる。他方酸無水物基に個有なのは1855(C = 0伸縮)1780 (C=o伸縮)1220 (C ‑O‑C伸縮)1080 C C ‑O‑C 伸縮)1020 CC‑O‑C伸縮〉で935は5員環の骨格振 動と思われる。
次に同一試料のスベクトルについて MMAに個有 な吸収帯を二つ選び光学密度の比を算出した。もしも
L a m b e r t ‑B e e r
の法則が成立し吸収帯が互いに独立 であるとすると,光学密度の比は組成に関係せず一定にならなければならなし、。 これに対してr メチルの吸収(1470,1390)は赤外 二,三の吸収帯について得られた光学密度の比と組 的には組成の影響をうけないように恩われる。次に酸 成との関係を図2""‑'図4に示す。これより 1190,840 無水物基に関する場合を図5に示す。これより酸無水 の吸収が酸無水物基の増加とともに減少し,とくに, 物基の
c=o
は組成の影響をうけない。なお, 1220, 1190は酸無水物基30モノレ%以上の試料で消失する。こ 930は組成によってシフトしM M Aの吸収と重なるの れは平均値にみて共重合体中に乱仏1Aの三連鎖がな で,比の算出は行なわなかった。くなる場合に相当する。 次に
MAn‑MA
のスベクトルを図6に示す。共重合 したがって1190は三連鎖に個有な吸収と思われる。 体のM A単位の数が増すにつれ, 波数2950,1730,1440, 1160, 825の吸収強度が増加し,他方酸無水物 基の増加とともに1850,1785, 1220, 1080, 950""‑'920 の吸収強度が増加するo
MAn‑MMA
の場合と同様 に, M Aに個有な吸収は2950(CHsおよび CHzの伸 縮), 1730 (C = 0の伸縮入 1440(CHsおよびCH2の 変角), 1160 (骨格〉で,酸無水物基に個有なのは,1850, 1785, 1220 (C ‑O‑C伸縮), 950""‑'920 (骨格〉
であるo二,三の吸収帯の光学密度の比と組成との関 係を図 7~ 図 10に示す。図 7""-' 図 9 はMA に関するも
〉ハ
¥ g ロ
Q 0o3A[ 自。。L
。
l o l 。i .
〆cr
。
申【、.、
o10 20 30 40 50 無水マレイン酸モル%
呂毛書 O田.4
ト │ r
。 oーすa 。
。 L
6 。
白 Q2 o 10 20 30 40 50 無水マレイン酸モノレ%
D (1470) 1470cm‑1の光学密度 D (1430) 1430cm‑1 タ D (1390) 1390cm‑1 タ
図2 M A叫 一MMA共重合体
0.6
0.5ト
言FF」・J4 4 M
三 8
日H H)
03白0.2
0.1
o
o 10 20 30 40 無水マレイン酸モル%D (1190) 1190cm‑1の光学密度 D (1140) 1140cm‑1 ~
図3 MAn‑MMA共重合体 50
足
。
0,6¥ J
、白h、
言 、
0.4J
Q
nu J J o n u n u (凶
∞口 )白
¥( 回目
∞ロ ロ
1.0
0.8
0.2
o P 1 o 2 0 3 0 4 o 50 無水マレイン酸モル%
D (840) : 840cm‑1の光学密』度 D(740) 740cm‑1 ~
図4 MAn‑MMA共重合体
。
o。
ー田園田司P o
。
o
。
無水マレイン酸モル%
D (1855) 1855cm‑1の光学密度 D(1785) 1785cm‑1 ~
図5 MAn‑MMA共重合体
の,図10は酸無水物基に関するものであるO これより,
2950. 1160の吸収は酸無水物基の増加とともに減少 し,とくに1160の強度減少が著しし、。これに対L酸無 水物基の吸収は組成の影響をあまりうけなし、。なお,
825の吸収帯は無水マレイン酸が30モル%以上になる と非常に強度が小さくなるので, M Aの三連鎖に関係 していると思われるo
3‑2 交互性の影響
無水マレイン酸は本報で行なった重合条件で、は単独 重合しないのでベ 無水マレイン酸50モル%付近の共 重合体は交互性の構造をもっている口この場合の酸無 水物基の吸収波数および光学密度の比を表2に示す。
これより5員環酸無水物基の
c=o
の吸収は隣接コモ ノマーの種類によって吸収位置は変らないが,強度が 変化する。またc‑o‑c
の仲縮振動も多少ずれる口し たがって,共重合体構造が交互性になると隣接コモノ マーの作用があるものと思われる。時 摺
1
型1780
3000 20∞ 18∞ 1600 14∞ 1200 1000 800
波 数 cm‑1 (1) 無水マレイン酸 8.4モノレ%
白) 無水マレイン酸46.5モノレ%
図6 MAn‑MA共重合体の赤外線吸収スベ クトノレ
0.7
宕 0.6
~ .‑4
ぞ
〆『、ω 塁
。五
司 0.4。
。
0.3
o
10 20 30 40 50 無水マレイン酸モル%D (2960) : 2960cm‑1の光学密度 D (1440) 1440cm‑1 ク
図7 MAn‑MA共重合体
1,4
1.2
言
1.0.‑4
¥ωノ
ぞ
0.8 r。
‑‑.c.c
.‑4 F吋
戸 m
0.4
02 o 10 20 30 40 50 無水マレイン酸モル%
D (1160) 1160cm‑1の光学密度 D(1440) : 1叫Ocm‑1 ~
0.3
" g
0̲2p・4 ・
.‑4
、ーノ
¥
ロ
、、.f、目
器
0.1¥,../
白
o o
図8 MAn‑MA共重合体
。 。
Q o O
。。
10 20 30 無水マレイン酸モル%
D (825) 825cm‑1の光学密度 D (1160) 1160cm‑1 タ
図9 MAn‑MA共重合体 0.3
自 白 富
0.2 ト。
0,1
白
o
O 10 20無水マレイγ酸 モ ル % D (1850) 1850cm‑1の光学密度 D(1780) 1780cm‑1 ‑'/
図10MAn‑MA共重合体
。
40
表2 交互共重合体の酸無水物基の吸収 (波数cm‑1)
MAn‑VAc MAn‑St MAn‑MMA MAn‑MA
1855 1855 1780 1780 1220 1220 1080 1080 D(1855)
0.11~0.14 0.16'"'‑'0.17 D(1780)
1860 1855 1785 1780 1225 1220 1095 1075 0.20'"'‑'0.27 0.15~0.17
3 ・ 3
温 度 の 罷 響温度を変えてスベクトルを測定すると,一般的に温 度の上昇とともに吸収帯のずれは生ぜ、ず強度が減少す るO 図11に MAn‑MMAの吸収帯の光学密度と温度と の関係を示す。無水マレイン酸 20.6モル%の場合で、
2950, 1855, 940の吸収強度は小さいので省略した。
1785, 1730, 1140 の吸収強度は 100~1200C 付近で不 連続的に減少する。この試料のカガ守ラス転移
7lでで、あるのでで、, この付近で振動運動に変化が生ずるこ とを示している MAn‑MMAで、は, 酸無水物基と MMAの両方が温度の影響をうける。
次に,MAn‑MAの一例を図12および図13に示す。
図12ほ無水マレイン酸35.3モノレ%の試料で、カPラス転移 点は1070C円 図13は無水マレイン酸22.1モノレ%の試 料、でガラス転移点は65.70Cであるわ。いずれもガラ ス転移点付近で 1730,1160, 1430の吸収強度に不連 続的な減少がみられるoMAn‑MAでは,酸無水物基
︑ . ︐ 1
(
脳 0.3 臨
0.2
2
ら ' 持そ .L..‑.y一宇
(4) (5)
0.1
.
』O 60 80 100 nO 140
温 度oC
(1) 1730cm‑1 但)1785cm‑1 (3) 1140cm‑1 (4) 1190cm‑1 (5) 1430cm‑1
図11 MAn‑MMAの吸収の温度変化 (MA四20.6モル%)
より M Aの方が温度の影響をうけ易いように思われ るO
次に MAn‑VAcの場合を図14に示す。試料のガラ ス転移点は1000Cであって¥この付近で1785,1210. 925に変化がみられ酸無水物基とVAcの両方が温度の 影響をうける。
次に MAn‑Stの場合を図15および図16に示す。ガ ラス転移点は1590Cであって円 この付近で1780, 950, 920, 700の吸収強度が変化する。酸無水物基お
よびStの両方が温度の影響をうける。
4
考 察Lambert‑Beerの法則を仮定し波数AおよびBに おける光学密度を D(A),D(B)として両者の比をと
0.6
0.5
0.4 生
自 ( 2) 臨 0.3
朴 県 0.2
( 5)
o
L‑.J.(6 )
60 80 100 120 140 温 度 。
c
(1) 1730cm‑1 (2) 1780cm‑1 (3) 1160cm‑1 (4) 1430cm‑1 (5) 2950cm‑1 (6) 1850cm‑1
図12 MAn‑MAの吸収の温度変化 (MAn 35.5モル%)
0.4
住 品
0.3
臨 え 作
0.2
呼 そ‑
0 . 7
(1)
(2) 0 . 5
生
H 0 . 4
臨
: 0 3 トヱ
O .
(5)
0,1 • ・ ・ .
‑ー‑‑...
( 6 )
。 60 80
温 度 。
c
(1) 1730cm‑1 (2) 1780cm‑1 (3) 1l60cm‑1 (4) 1435cm‑1 (5) 2950cm‑1 (6) 1850cllc1
1 0 0 1 2 0
図13 MAn‑MAの吸収の温度変化 (MA叫22.1モル%)
0.3
日0.2 餌
介0.1 県
(5)
O
100 120 140 160 180 温 度 。
c
(5) 950cm‑1 (6) 1220cm‑1 (7) 700cm‑1 図16 MAn‑Stの吸収の温度変化
(MA叫 50モル%)
0 . 5
︑ ︐ ︐ ︐4
・ ・
︐ ︐ ︐ ︑ ︑
一『宮‑‑‑‑‑
( 2 )
ー一一曹
( 3 )
(4)
( 5 ) ‑‑‑‑
ー‑
( G )
‑ ー ー .
G 60 8 0 100 120
温 度 。
c
(1) 1785cm‑1 (2) 1740cm‑1 (3) 1210cm‑1 (4) 925cm‑1 (5) 1850cm‑1 (6) 1085cm‑1
図14MAn‑VAcの吸収の温度変化 (MA叫 50モル%) 0.6
0.5
制 0.4
司
4
0,3
' hr t
d川q
県 0.2
0.1
O 100 120 140 160 180 温 度
OC
( 1 )
1780cm‑1 (2) 920cm‑1 (3) 1851cm‑1 (4) 1075cm‑1図15 MAn‑Stの吸収の温度変化 (MA叫50モル%)
ると,
D(A) ~kAiCi D(B) ‑~kBiCi
ここにCiはi成分の濃度, kAi, kBiは吸光係数で ある。 Aおよび Bの吸収が成分 1のみに原因するとす ると, D(A)/D(B)は濃度に無関係に一定となる。 A およびBの吸収に成分I以外の他の成分の作用が加わ ると, D(A)/D(B)は濃度の関数となるO濃度が増加 すると (1)式の右辺の分子も分母ともに増加するので,
D(A)/D(B)はそれ程増加あるいは減少しないもの と思われるoMAn‑MMAあるL、は MAn‑MAにおい て無水マレイン酸単位が増加すると,酸無水物基の特 性吸収の光学密度の比は変らないが M M A あるいは M A骨格振動に関する光学密度の比に著しい変化が生 ずる。これは濃度以外に原因があるものと考えられ るo吸収強度は双極子モーメントの座標変化(8μ/8Q) の二乗に比例するので8),組成によって,骨格振動の 伽/8Qが変ることが考えられる。無水マレイン酸単 位は5員環を形成し平面構造をとっているわ。 このた め無水マレイン酸単位にコモノマーが付加するとき立 体障害によって図17に示すように平面の両側で結合す
︑ . ︐ ︐
噌i
︐ ︐ ︐ ︑
•
•
るようになるO
この結果図17の結合2‑3および6‑1は無水マレ イン酸単位に固定されるoしたがって,無水マレイγ 酸単位が増加するにつれて M M Aあるいは M Aは制 約された空間配置をとるようになる。低分子の回転異 性体では双極子モーメント,吸収波数,強度などが異 なることが知られている10)。したがって,高分子鎖の 場合に内部回転の制約に伴なって θμ/θQが変化する
ことは充分考えられる。
他方酸無水物基の
c=o
の吸収は組成を変えても吸図17 無水マレイン酸系共重合体の分子モデ、/レ
収位置および光学密度の比〈対称,逆対称伸縮の比〉
は変らなし、。これは酸無水物基の平面構造が組成によ って歪められず。μ/θQに変化が生じないためと考え られるO しかし,交互共重合体では
c=o
の吸収強度 比が隣接コモノマーの種類によって異なっているD こ れは隣接コモノマーの影響によってc=o
の双極子モーメントとくに双極子の電荷に相違が生ず、るためと思 われる。
次に温度を上昇させると吸収の位置はずれずに強度 は減少の傾向を示し,ガラス転移点で不連続的に変化 する。
ガラス転移点に達すると高分子鎖のミクロブラウン 運動が開始されて内部回転の制約が弱められよりラン ダムな配置をとるようになるD このため 0μ:/8Qに変 化が生ずるものと考えられるD
以上のように共重合体鎖の空間配置が組成および温 度によって変化し,それが赤外線吸収スベクトルに反 映されていると考えられる。本報では二,三の実験結 果を主として述べそれらの定性的な推察を試みたが,
内部回転と双極子モーメント,双極子の電荷,。μ/8Q などとの定量的な相互関係が今後明らかにされねばな らなL。、
5
む す び i無水マレイン酸ーメタクリル酸メチノレおよび、無水マ レイン酸ーアクリル酸メチル共重合体で、は酸無水物基 の振動は組成の影響をあまりうけないが,メタクりル 酸メチルあるいはアクリ/レ酸メチル単位の骨格振動が 組成の影響をうけるO交互共重合体では酸無水物基の 吸収波数はコモノマーの種類によって変らないが,強 度が変化し隣接コモノマーの影響があらわれるD
温度を変えるとガラス転移点付近で吸収強度が不連 続的に変化するo
文 献
1) G. E. Ham Copolymerization" Interscience Pub‑
lishers (1964)
F. R. Mayo et. al. J. Am. Chem. Soc., 70, 1529 (948)
2) J. D. Ferry et. a ,l J. Collo.d Sci., 6. 429 (1951) E. L. Saier et. al. J. Appl. Polymer Sc ,.i12. 2191 (1963)
J. Schaefer et. al. J. Am. Chem. Soc., 90, 2476 (1968)
R. Endo, T. Hinokuma, M. Takeda J. Polymer Sc ,.iA2, 665 (1968)
3) L. M. Minsk et. al. J. Am. Chem. Soc., 72,2648 (19叩)
4) U. Bauman et. al. Makromol. Chem., 36, 81 (1960)
A. Kawasaki et. al. Makromol. Chem., 36,26009(0) 5) L.]. Bellamy Infrared Spectra of Complex MoI‑
ecules" John Wiley & Sons, (960)
C, N, R. Rao ChemicaI Applications of Infrared Spectroscopy" Academic Press, (1930)
6) J. L. Lang et. al. J. Polymer Sc, .i55. 31 (961) R. M. Joshi Makromol. Chem.. 53. 33 (1962)
7)未 発 表
8) 水島三一郎,島内武彦 "赤外線吸収とラマγ効果" 共立社,
09')8)
9) Le Fevre, A. Sunda
,
an J. Chem.Soc., 4009 (1662) 10) 島内武彦"分子内部凶転11(岩波現代化学¥lC)岩波. (1956)(昭和44年9月29日受埋)