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高校英語教科書のコミュニケーション活動のタスクらしさ

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高校英語教科書のコミュニケーション活動の

タスクらしさ

How Task-like are the Communication Activities

in the High School English Textbooks?

藤田 恵里子

江戸川大学

FUJITA Eriko

Edogawa University

Abstract

Since the revision of MEXT's curriculum guidelines in 1989, the importance of

"communication" has been emphasized for English subject. In an attempt to improve the learners'

communication skills, PPP (Presentation, Practice, Production) has been employed in English

classes at Japanese high schools. However, in recent years, TBLT has been gaining more attention

because it gives the learners chances to communicate using a similar cognitive process to that of

real-world communication. Since most classes are conducted based on the particular textbook they

are using, the communication activities in the books are likely to affect the learners'

communication abilities. In this paper, adopting the concept of "task-like" (Willis and Willis,

2017), the "task-likeness" of the communication activities found in the high school textbooks will

be examined. Based on the results, some ideas to enhance the "task-likeness" of class activities are

suggested.

キーワード: 高校教科書 タスク TBLT コミュニケーション活動 授業方法

1. はじめに

平成元年の学習指導要領改訂時に高等学校の英語教育において「実践的コミュニケーション能力」 の育成が目標に掲げられて以来、その重要性はますます高まっている。 コミュニケーション能力、特に言語産出能力の育成には、従来型の文法訳読式や意味を度外視した ドリル中心の学習は十分ではない。そこで、コミュニケーション能力育成への貢献が期待されている のが、タスクの活用である。本稿では、現行の学習指導要領に基づいて作成された、高等学校の「コ ミュニケーション英語 I」の文部科学省検定済教科書に含まれるコミュニケーション活動が、どの程 87

(2)

度「タスクらしい」のかを検証し、活動をより実際の言語活動に近づけるために授業内でできる工夫 を考察したい。

2. 研究の背景

2.1 日本の英語教育

平成元年の学習指導要領改訂以降、英語教育において「実践的コミュニケーション能力」の育成が 目標に掲げられ、平成21 年度告知の学習指導要領では、「コミュニケーション英語 I」が必修化され た。コミュニケ―ションできる英語運用能力育成を目指して、日本の英語教育では、教科書及び授業 の両方において、PPP(Presentation, Practice, Production)が多く採用されている(米山, 2011)。PPP は、習慣形成によるバランスの取れた4技能の育成を目指し、教師が新しい項目のモデルを与えて理 解を図り(Presentation)、ドリル活動などの練習(Practice)を経て、実際に運用する(Production)とい う順番で活動が行われる。このように繰り返し練習することで、宣言的知識を手続き的知識に円滑に 移行することを目指している。しかしながら、PPP は第二言語習得の過程に沿っていない、形に意識 を取られ過ぎる(Ellis, 2003)、意味を度外視した活動である(White, 1988)等の批判も見られる。 学習者の産出活動を観察すると、ドリル活動を通して文法や語彙知識を身につけたとしても、実際 にコミュニケーションをはかる際、適切な文法や語彙を想起できない様子が散見される。特に、語彙 は比較的容易に想起できたとしても、文の構成に苦労する学習者は少なくない。つまり、文法や語彙 を知識として知っているが、産出が難しいという学習者にとって必要な練習は、使用する文法を想起 する練習であると考えられる。PPP では、この使用文法の選定作業を教員が事前に行ってしまうため、 学習者は十分な練習の機会が得られない。さらに、与えられた型に語彙を当てはめて繰り返すパター ンプラクティスでは、学習者にとって意味のある発話とは言えず、その行為に興味を維持し続けるの は難しい。それに対して、TBLT(Task-based Language Teaching)は、伝えたいメッセージや必要な文 法を考えるという工程も学習者自身が担うため、実際の言語使用場面に近い認知プロセスを提供でき、 より有効な練習になると考えられる。

2.2 TBLT(Task-based Language Teaching)

TBLT は、教室外の現実世界で学習者が目標言語を使用して、物事を成し遂げることができるよう になることを目標とし、そのための機会を与えることを目指している(松村, 2017)。

タスクの定義は研究者によって異なるが、Ellis (2003)は「タスク」の真髄を見極めるべく、9人の 研究者の定義をまとめて以下のように定義づけている。

1. A task is a workplan.

2. A task involves a primary focus on meaning. 3. A task involves real-world processes of language use. 4. A task can involve any of the four language skills. 5. A task engages cognitive processes.

6. A task has a clearly defined communicative outcome.

88 高校英語教科書のコミュニケーション活動のタスクらしさ

(3)

さらに、Ellis and Shintani (2014)は、タスクが満たすべき条件を4つに絞り、これらの要素を満たす ことで、学習者は言語をコミュニケーション達成のための道具としてみなすようになるという。

1. The primary focus should be on 'meaning'. 2. There should be some kind of 'gap'.

3. Learners should largely rely on their own resources (linguistic and non-linguistic) in order to complete the activity.

4. There is a clearly defined outcome other than the use of language (the language serves as the means for achieving the outcome, not as an end in its own right).

Nunan (2004)もまた 4 名の研究者の先行研究を基に、タスクを以下のように定義づけている。

My own definition is that a pedagogical task is a piece of classroom work that involves learners in comprehending, manipulating, producing or interacting in the target language while their attention is focused on mobilizing their grammatical knowledge in order to express meaning, and in which the intention is to convey meaning rather than to manipulate form. The task should also have a sense of completeness, being able to stand alone as a communicative act in its own right with a beginning, a middle and an end. (Nunan, 2004, p. 4) 以上の複数の研究者の特徴を踏まえると、タスクは意味に焦点を当て、何らかの成果が達成される ことを目指し、現実の言語活動に近い認知プロセスを体験する機会を与えるものであるといえる。し かしながら、Ellis and Shintani (2014)が挙げるタスクの特徴の中でも特に「3. Learners should largely rely on their own resources (linguistic and non-linguistic) in order to complete the activity.」に関しては、日本のよ うな EFL 環境下では学習者が教室外で目標言語に接する機会も少ないため十分なインプットが見込 めず、この要件を満たすのは難しいことが予測され、導入が容易とは言えない。

そこで、より柔軟なタスクの捉え方して、Willis and Willis (2007, p. 19)は、「タスクらしさ(task-like)」 という表現を用い、以下の質問の答えとして「Yes」が多ければ多いほど、より「タスクらしい」とす る考え方を提案した。

1. Does the activity engage learners' interest? 2. Is there a primary focus on meaning? 3. Is there an outcome?

4. Is success judged in terms of outcome? 5. Is completion a priority?

6. Does the activity relate to real world activities?

Willis and Willis (2007)は、各コミュニケーション活動のタスクらしさを測る指標を示しているため、 本格的なタスクを実現するのが難しいEFL 環境下でも適用しやすい考え方だといえるだろう。

89

(4)

2.3 教科書内タスク分析に関する先行研究

現行の指導要領では実践的コミュニケーション能力の育成を目標として掲げているものの、英語授 業における生徒の言語活動の時間に関する実態調査によると、2018 年現在、授業内での英語使用が 「50%以上ある」と「75%以上ある」という回答の合計が、中学 1 年生では 78.5%だが、学年を追う ごとに低くなり、高校では50.6%まで下がる(旺文社, 2019)。一般的な授業が教科書の内容に基づい て実施されていると仮定すると、特に高校の英語教科書に十分なコミュニケーション活動が含まれて いない、もしくは含まれていたとしても学生の自由な言語表現を促すような活動にはなっていない可 能性がある。 コミュニケーション能力育成に対するタスクの有効性に期待し、中学校・高等学校における検定教 科書内のタスクを分析・検証した研究は複数見られる(荒金, 2014;臼田・志村・田村・白鳥, 2008; 臼田・志村・中村・横山・山下・竹内他, 2014;臼田・志村・横山・山下・中村, 2009;江草・横山, 2007; 河合・平田・新井・横山・大場, 2002;山下・志村・臼田・竹内・河上・照山他, 2017)。これらの先行 研究は、タスクの種類を分析した研究(荒金, 2014;江草他, 2007;河合他, 2002)と「タスクらしさ」 を検証した一連の研究(臼田他, 2008;2009;2014;山下他, 2017)に分けることができる。 河合他(2002)は、Skehan (1998)が提示したタスクの特徴や性質を3つの区分(情報、作業、目標)、 さらにそれらの下位区分に分類し、教科書に見られるタスクの種類を分類しアクションリサーチを行 う方法を提案した。河合他(2002)が提案したタスクの種類の分類方法を使用して、江草他(2007) は、高校の「オーラル・コミュニケーション」と市販の教科書内に見られるタスクを分類し、これら のタスクを使用することで得られる教育的効果を考察した。その結果、いずれの教科書でも、流暢さ、 正確さ、複雑さという3種類の教育的効果の中で、特に流暢さに効果があるタスクが多いという結果 を示した。荒金(2014)は、高島(2000, 2005)を基に、各教科書に含まれるタスクを、「タスクを志 向した活動(TOA)」、「タスク活動(TA)」、「タスク(task)」、「コミュニケーション活動(CA)」に分 類し、新旧の学習指導要領による高校英語教科書を比較し、新旧いずれもTA 及び Task は少なく、創 造性の少ないCA が多いが、旧教科書のほうがむしろ TOA、TA 及び Task の割合が多く見られたとい う結果を示している。 臼田他(2008, 2009, 2014)及び山下他(2017)では、一貫して、中学校の英語教科書に見られるコ ミュニケーション活動をWillis and Willis (2007)の「タスクらしさ」に当てはめて検証している。彼ら の一つ目の研究、臼田他(2008)では、中学校の Speaking Task の多くは TBLT の考えに基づいたタス クを志向していないと結論づけている。次に臼田他(2009)では平成 10 年告示の指導要領に則った教 科書を、臼田他(2014)では平成 24 年度改定の教科書を、山下他(2017)では平成 28 年度改訂の教 科書をそれぞれ分析対象とし、教科書間、学年間、レッスン内外に見られるタスク性の違いを分析し た。その結果、いずれの研究でも、教科書によって違いが見られ、学年が上がるにつれてタスク性が 上がるように設計されているわけではないという結果を示している。彼らが教科書分析の基準として 採用した、Willis and Willis の「タスクらしさ」という考え方は、EFL 環境で教室外のインプットが担 保できない日本の英語教育にも適用しやすいだろう。しかしながら、一連の先行研究で「タスクらし さ」の分析対象となっていたのは、中学校の教科書のみで、高校の教科書は対象となっていなかった。 高校授業内での言語活動の割合が中学校に比べて低かったことから、高校教科書内に見られるコミュ ニケーション活動の検証も必要と考えられる。 90 高校英語教科書のコミュニケーション活動のタスクらしさ

(5)

以上を踏まえ、高校教科書に見られるコミュニケーション活動の「タスクらしさ」を検証し、授業 内で、より現実の言語活動に近い言語使用を増やす授業実践方法を考察したい。

3. 研究方法

3.1 研究目的

本稿では、第一に、平成21 年告知の学習指導要領に従って採択された、高等学校の「コミュニケー ション英語 I」の教科書に含まれるコミュニケーション活動が、どの程度「タスクらしい」のかを検 証することを目的としている。次に、より「タスクらしさ」を高め、授業内で現実の言語活動に近い 言語使用をする機会を増やすための授業実践方法を考察する。

3.2 分析対象

現行の学習指導要領では、「コミュニケーション英語 I」が必修化されている。これを踏まえ、「コ ミュニケーション英語 I」の教科書の中から、千葉県内の公立高校における採用数上位3位までの4 冊を選抜した。分析対象とした教科書は、採用数が多い順から『All Aboard!(東京書籍)』(採用数 25 校)、『VISTA(三省堂)』(採用数 16 校)、『Revised COMET(数研出版)』(採用数 12 校)、『Revised ELEMENT(新興出版社啓林館)』(採用数 12 校)であった。

全ての教科書に関して、各レッスンの最後に「コミュニケーション活動」となる活動項目が用意さ れていた(表1)。またレッスン外に単発的に特別なコミュニケーション活動も用意されていた。なお、 いずれも学習者の言語産出を想定している活動のみを分析の対象とした。

表1 各教科書のコミュニケーション活動

『All Aboard』 Lesson 毎(10) Let's Try! (L T) 特別(3) Communication (Com)

『VISTA』 Lesson 毎(9) USE ENGLISH! (U EN) ※L1~3 には含まれない 特別(4) ENJOY COMMUNICATION! (E C)

Revised COMET』 Lesson 毎(10) Useful Expression (U Ex)

特別(3) Activity (Act) ※1は音読のみのため、除外 特別(2) Challenge (Cha)

『Revised ELEMENT』 Lesson 毎(10) Communication Activity – B (CA – B)

Lesson 毎(10) Communication Activity – In Your Words (CA – IYW) 特別(3) Communication Builder – Speaking (CB – S)

特別(3) Communication Builder – Writing (CB – W) ( )内は数

3.3 分析方法

本調査では、Willis and Willis (2007)の提案に基づいて、「タスクらしさ」という考え方を採用し、「タ スクらしさ」を調査した一連の先行研究の中から特に、臼田他(2009)及び山下他(2017)のタスク

91

(6)

性の基準を参考に、変更を加えて分析項目を定めた(表2)。 先行研究(臼田他, 2009;山下他, 2017)からの変更点は以下のとおりである。Interaction に関して、 先行研究ではコミュニケーションを口頭でのやり取りに限定していたが、Ellis (2003)もタスクは口頭 のコミュニケーションに限らないとしていること、受け取る他者を想定していれば、手紙などの文書 でもコミュニケーションが成立することから、本稿では口頭でのやり取りには限定しなかった。ただ し、書く、話すのいずれかの形でのアウトプットを求める活動のみを調査の対象とした。Outcome に 関しても、先行研究では形に残るものがある場合を主に成果があるとみなしていたが、ウィリス(1996) に基づき、単純な情報のやり取りで終わらずに、得られた情報に基づいて何らかの結論を導き出した り、達成すべき目的があったりする場合も成果があるとみなした。Completion(活動の完了や目標が 何かが明示されているか)という項目が先行研究にはあったが、目標を達成することで得られるもの がOutcome、達成することを Completion と考えると両者には重なる部分が大きいため Outcome と統一 した。さらに、Interest は臼田他(2009)および山下他(2017)では、削除されていたが、Willis and Willis (2017)では「学習者の積極的な関与(engagement)、つまり興味なしには、意味及び成果を重視するこ とはあり得ない」としており、タスクの根底にあるものと位置付けられている。このことから、学習 者の積極的関与を促す上で「興味深い」ことが大前提であると考え、この項目を追加した。「興味深い」 というのは主観による部分が大きく、汎用性の高い判断基準を特定するのは難しいが、特に「個人的 (Personal)」であることに重点を置き、学習対象となる表現の実生活での有用性も加味した。各タス クらしさの判断基準の詳細は、臼田他(2009)で提示された条件を参考に数値を付与し、各4段階(1 ~4点)で評価した。なお、評価は筆者一人で2度行った。 表2 各タスクらしさの判断基準 Interaction : ペアやグループの活動としてふさわしいか 1:複数者間でやり取りすることが想定されていない(「書いてみよう」「言ってみよう」だけで、 書いたものを教員以外の他者に見せることは想定していない) 2:(一方的)単に伝えることしか求められていない(相手の発話を聞いて、反応する必要がない、 双方向ではない、プレゼンテーションや作文) 3:(双方向)情報ギャップがあるなど、メッセージの受け手を想定しており、相互の情報のやり とりの必然性が高い(会話や手紙、メール) 4:(双方向)情報のやり取りだけでなく、相手の発話内容を受けて柔軟に発話を調整し、交渉す ることが求められている Meaning: 言語形式ではなく、意味の理解や伝達に焦点が当てられているか 1:答えが一つに限定されており(選択肢がある場合もある)、パターンに倣って産出することし か求められていない 2:答えは決まっていないが、決められた選択肢から語彙を選んでパターンに当てはめて産出す ることしか求められていない 3:語彙は与えられておらず、伝える内容は完全にタスク従事者にゆだねられているが、パター ンが決められている 4:語彙も使うべきパターンも与えられておらず、完全に自由に発話できる 92 高校英語教科書のコミュニケーション活動のタスクらしさ

(7)

Outcome: 活動の終わりに何らかの目的を達成することが想定されているか 1:思考活動を必要とせず、語彙を入れ替えるような単純な産出のみが求められる 2:(一方向)何らかの思考活動を要し、それに基づく言語表出が求められる 3:(双方向)コミュニケーションを取り、目標を達成、もしくは結論(結果)を出す 4:思考活動の結果、形に残るものがある Authenticity : 実生活の活動と関連性があるか 1:話題及び活動が実生活と遊離している 2:話題及び活動が自主的に発生することは想定しがたいが、学習活動の一環としては想定でき る 3:話題もしくは活動の一方が実生活と明らかに密接であると考えられる 4:話題及び活動が実生活と密接であると考えられる Interest: 活動もしくは内容がタスク従事者の興味を引くか 1:興味があるとは想定できない話題で、学習表現の使用場面が想定しづらい 2:個人的ではないが、有益な情報として知りたい内容、もしくは学習表現の使用が多少想定で きる 3:特定の状況下(相手が外国人など)では、興味を持って話す可能性がある話題である、多少 個人に関する情報が含まれている、もしくは学習表現の現実での使用が想定できる 4:興味を持ってぜひ知りたい相手個人の情報や意見を含む、もしくは学習表現が現実に必要と なることがかなり想定できる

4. 結果と考察

4.1 コミュニケーション活動ごとのタスクらしさ

各教科書内で、レッスン毎のコミュニケーション活動の特徴はかなり類似していたが、全て別個に 評価した。特に、U Ex はタスクらしさの全項目において、全 Lesson が全く同じ結果になった。これ は、全てが同様に会話形式で、与えられている情報の種類も統一されていることが理由であった。 設定した4尺度の基準は具体的な描写に基づいており、等間隔である根拠がないことから、間隔尺 度ではなく順序尺度と判断した。このことから、各項目の尺度の加減乗除はできないため、平均や標 準偏差は産出せず、項目ごとに各尺度の出現度数を示した(表3)。また、タスクらしさの5項目に関 して尺度の分布を比較し、図1に示した。Interaction、Outcome、Authenticity は、「3」が最も出現頻 度が高かったのに対して、Interest は4尺度の中で最高値の「4」が最も多く出現していた。つまり、 全体としてInterest は比較的高い傾向にあったといえよう。それに対して、Meaning は他の項目よりも 低い、「2」が最も多く出現していた。このことから、Meaning は比較的低い傾向にあるといえるだろ う。 タスクらしさの要因同士の間に何らかの相関があるかを検証するため、ノン・パラメトリック検定 であるSpearman の相関係数を求めた(表4)。その結果、Meaning と Interaction、Interest の間には相 関が見られなかったが、それ以外の要因同士の間には相関が見られ、特にInterest と Interaction (rs = .507)、

Authenticity (rs = .607)及び Outcome (rs = .572)、Interaction と Authenticity (rs = .506)の間にはそれぞれ中程

度の相関が見られた。

93

(8)

表 3 教 科 書 、 活 動 別 の タ ス ク ら し さ の 各 尺 度 の 出 現 度 数 注 L T = Le t's T ry !; Co m = Co m m un ic at io n; U EN = US E E NG LIS H !; E C = ENJO Y CO M M U NIC ATIO N! ; U Ex = Us ef ul E xp re ss io n; A ct = A ct iv ity ; C ha = C ha lle ng e; C A – B = C om m un ic at io n A ct iv ity – B ; C A – IY W = C om m un ic at io n A ct iv ity – In Y our W or ds ; C B – S = C om m un ic at io n B ui ld er – S pe ak in g; C B – W = C om m un ic at io n B ui ld er – W rit ing

Interaction

Meaning

Outc

om

e Authenticity

Interest

1

2 3 4

1 2

3 4 1

2 3

4 1

2 3 4

1 2

3 4

All Aboard

L

T

0

9 1 0

1 9

0 0 4

5 1

0 5

5 0 0

4 6

0 0

Co

m

0

1 2 0

0 3

0 0 1

0 2

0 0

0 3 0

0 1

0 2

科書全

0

10

3 0

1 12

0 0 5

5 3

0 5

5 3 0

4 7

0 2

VIST

A

U

EN

2

6 1 0

4 0

5 0 6

2 0

1 1

6 1 0

2 4

1 2

EC

0

0 4 0

0 3

1 0 0

0 4

0 0

0 4 0

1 0

0 3

科書全

2

6 5 0

4 3

6 0 6

2 4

1 1

6 5 0

3 4

1 5

Revised CO

M

ET

U

Ex

0

0 10

0

0 10

0 0 0

0 10

0 0

0 10

0

0 0

0 10

Act

1

1 1 0

0 1

2 0 0

2 1

0 0

2 1 0

0 2

0 1

Cha

0

2 0 0

1 0

1 0 0

0 0

2 1

1 0 0

0 1

0 1

科書全

1

3 11

0

1 11

3 0 0

2 11

2 1

3 11

0

0 3

0 12

Revised ELE

ME

NT

CA

B

0

0 10

0

0 0

0 10

0

3 7

0 0

4 6 0

0 2

3 5

CA

IY

W

7

1 2 0

0 0

0 0 0

2 6

2 0

6 2 2

0 2

6 2

CB

S

0

2 0 1

0 0

0 3 0

1 2

0 0

0 0 3

0 0

1 2

CB

W

0

2 1 0

0 0

0 3 0

0 0

3 0

0 0 3

0 0

2 1

科書全

7

5 13

1

0 0

0 16

0

6 15

5 0

10

8 8

0 4

12

10

4

の教科

10

24

32

1

6

26

9

16

11

15

33

8

7

24

27

8

7

18

13

29

表 3 教 科 書 、 活 動 別 の タ ス ク ら し さ の 各 尺 度 の 出 現 度 数 注 L T = Le t's T ry !; Co m = Co m m un ic at io n; U EN = US E E NG LIS H !; E C = ENJO Y CO M M U NIC ATIO N! ; U Ex = Us ef ul E xp re ss io n; A ct = A ct iv ity ; C ha = C ha lle ng e; C A – B = C om m un ic at io n A ct iv ity – B ; C A – IY W = C om m un ic at io n A ct iv ity – In Y our W or ds ; C B – S = C om m un ic at io n B ui ld er – S pe ak in g; C B – W = C om m un ic at io n B ui ld er – W rit ing 94 高校英語教科書のコミュニケーション活動のタスクらしさ

(9)

図1 タスクらしさの項目ごとの尺度の分布 表4 タスクらしさの要因同士の相関関係

1. Interaction 2. Meaning 3. Outcome 4.Authenticity 5. Interest 1. Interaction 2. Meaning -.035 3. Outcome .359** .351** 4.Authenticity .506** .295* .465** 5. Interest .507** .131 .572** .607**

4.2 タスクらしさが低い原因とタスクらしさを高めるための応用方法

上記の分析の結果から、コミュニケーション活動によってタスクらしさに差があるということ、タ スクらしさの5つの評価項目の中でも、Meaning が低い傾向にあるのに対し、Interest は高い傾向に あることがわかった。また、Interest は Interaction、Authenticity 及び Outcome と相関が見られ、InteractionAuthenticity の間にも相関が見られることがわかった。タスクらしさが低かった活動と高かった活動 の間には、数値だけでは見えない特徴の違いが見られた。タスクらしさが低かった場合の原因を項目 ごとに検証した上で、その点を補強し、より現実の言語活動に近い認知プロセスを経るよう、授業内 での実施方法を考察したい。

4.2.1 Interaction が低い場合

Interaction の評価が低かった場合の主な要因は、「発表」の形式を取っているために、その性質上、 95 藤田 恵里子

(10)

双方向のやり取りが想定されておらず、一方的な情報の伝達になってしまうことであった。他者に伝 えることを意図していない活動として1点を付与するケースは、ほとんどなかった。 発表という形式を踏襲しつつ、Interaction 度を高めるためには、例えば、発表後に質疑応答を入れ るという方法が考えられる。双方向のInteraction にすることで、相手の発話を聞いて理解し、即興 的に自分の応答を考えなくてはならないため、より実際の会話に近くなり、Authenticity も高くなる だろう。このことは、先の検証においてInteraction と Authenticity の間に相関が見られたこととも 一致する。仮に学習者の英語力が十分に担保されておらず、学習者自身で一から質問や答えを作成す ることが難しい場合は、教科書に与えられている発表スクリプトをもとに、質問や答えを事前に考え させる時間を取った上で質疑応答をするという方法も考えられる。事前に話す内容を考えるという行 為は、自然な認知プロセスにはそぐわないが、メモなどを見ずに発話することを求めれば、ある程度 自然なプロセスに近づけることができるだろう。このように、発表で終わらずに質疑応答を入れるこ とで、学習者自身で使用表現を考える機会が得られ、より英語運用能力育成に役立つ練習となるので はないだろうか。

4.2.2 Meaning が低い場合

Meaning は全体的に低い結果となった項目であるが、その原因は与えられた語群から任意の1語を 選んで用意されたパターンの下線部に入れる、いわゆるパターンプラクティスが多かったことである。 場合によっては、語群の中から特定の「正答」を探すだけの活動も見受けられた。それに対して、全 てのタスクにおいてMeaning が最高値の「4」であった、CA – B では、発話の冒頭部分(I think... やBecause...程度)が与えられているだけで、語群も、パターンも与えられておらず、その後に続く、 自分の意見や考え、自分の知っている情報を述べる部分は完全に自分自身の持っている英語力を駆使 して文を構成するような課題になっていた。この方法ならば、学習者が苦手とする、使用文法項目の 想起を練習できるという点で、大変有益であると考えられる。このように、語彙のみを与えパターン (使用文法項目)を与えない、もしくは語彙もパターンも与えなければ、より現実の言語活動に近づ き、タスクらしさは高くなるだろう。 以上を踏まえ、Meaning が低かった活動実施時の工夫としては、教科書に既に語群が与えられてい る場合でも、それをあえて参照しない、もしくはヒントのみとし、学習者自身が言いたいことに基づ いて単語を考えたり、調べたりするよう指示するという方法が考えられる。英語力の高い学生に対し ては、例えば、「将来の夢について発表しましょう。その際、理由も書きましょう。」というようにト ピックと含めるべき情報のみを与え、パターンも語群も与えないことでタスクらしさを高めることが できるだろう。さらに、トピックを与える際もあえて日本語で与えることで、英語のヒントを与えな いことになり、学習者自身の能力を活かす活用性が高まる。

4.2.3 Outcome が低い場合

Outcome が低かった活動は、「読みなさい」や「書きなさい」といった指示により産出のみが目的 となっていたり、与えられた英文の要約を求めたりしているものが多かった。このような指示では、 「成果」と呼べるような学習者自身の思考活動を十分に経た結果はなく、意味のあるやり取りに基づ いて何らかの目的の達成を目指す活動とは言い難い。何の目的もなく、「読む」だけや「書く」だけの 96 高校英語教科書のコミュニケーション活動のタスクらしさ

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行為というのは現実世界では想定しづらいことから、このことはAuthenticity にも影響を与えている と考えられる。 このような場合に、Outcome を高めるために有益と考えられる方法を、分析対象とした活動の中か ら1つ例にとって考えたい。例えば、学校のシンボルマークを決めるために、3つの絵の中から1つ を選び、理由を含めて提案書を書くことが求められる活動があった。書いただけで活動を終了してし まっては、「学校のシンボルマークを決める」という元来の目的を達成できない。各自の提案書をクラ ス内で発表、もしくは互いの書いた提案書を読み合って、最終的にどのマークにするかを投票で決め るという最終課題を追加すれば、他学生を説得するという目的も生まれる。情報のやりとりの後に思 考活動が要され、伝える目的意識も高まり、Outcome だけでなく Interest も高くなるだろう。これ はOutcome と Interest の相関が中程度あったことからも推察できる。さらに、他の学生の提案理由 を聞いた上で、自身の考えはどう変わったか、その理由を伝えるという活動も追加できる。このよう に、伝えるだけで終わらず、それを基に何らかの結論を出す必然性を与えるとOutcome は高くなる だろう。

4.2.4 Authenticity が低い場合

Authenticity が低かった原因としては、発表という活動そのものが、学習活動としては想定できる が、学習者が自主的に行うことが想定しづらいこと、また日本語で話す場合でも自然発生的に話題に なりにくいと考えられるトピックであったこと、そのトピックについて話す必然性が見られなかった ことが考えられる。しかし、学習者が話題にすることが想像しづらいトピックでも、何らかの設定を 与えることでその話題について話す必然性が生じ、より現実的になる可能性がある。また、設定をで きるだけ細かくすることで、話すべき内容や立場がより想像しやすくなり、使うべき表現や語彙も選 出しやすくなるだろう。 以上を踏まえて、Authenticity を高めるためには、情報のやり取りをする目的となる細かい場面設 定をすることが有益であると考える。例えば、自分の家にある家具や部屋をペアになってお互いに紹 介しあうという活動があった。学習者の家には様々なものがあるため、どれを選んで伝えるべきか迷 うのではないだろうか。そこで、例えば、Home Exchange(見ず知らずの人と家を期間限定で交換 する)のプロフィールを書く、もしくはExchange をする相手と直接電話等で話し、交渉するという 場面を設定する。そうすれば、伝える目的も明白になるし、自分の家にあるいわばアピ―ルポイント となるようなアイテムを選んで相手に伝えることができる。このようにその情報をやり取りする目的 もできるだけ細かく設定することで、Authenticity のみならず Interest も高くなるだろう。これは先 の検証において、これら2要素に相関関係が認められたことからも明らかであろう。さらに、数名と 情報をやり取りしあい、誰と部屋を交換したいかを決めるという課題を追加すれば、Outcome も高め ることができるだろう。

4.2.5 Interest が低い場合

Interest を判定する上で重視したのが、学習者が興味を持つであろう2観点、すなわち、個人的 (Personal)な情報、意見が含まれるかどうか、もしくは学習表現が現実世界で有用であるかであっ た。与えられた語群から語彙を選ぶパターンプラクティスの場合、発話者自身に関する情報も意見も 97 藤田 恵里子

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含まず、聞き手側も興味を持ちにくいということが原因で、Interest が低くなるケースが多く見られ た。そこで、Meaning を高める方法と同様に、与えられた語彙やパターンのみを使うのではなく、発 話者自身について述べるように指示することでInterest も上がることが予測される。2つ目の観点、 学習表現の現実世界での有用性が高い活動は、いずれの教科書でも特にレッスン外で単発的に用意さ れた活動に多く見られた。これは、「買い物」や「道案内」といった旅行中にも使えるような会話場面 が設定されていたからであった。さらに、先述のAuthenticity に述べたように、場面設定を細かくす ることは、なぜその話をするのかという目的意識、Interest も高まり、話す目的がはっきりすること で同時にInteraction も増えるだろう。このように、Interest は他のタスクらしさの項目と相互に関 与しあっており、学習者がその活動に取り組むモチベーションにもかかわってくるため、大変重要な 要素であると考えられる。

5. まとめ

本稿では、平成 21 年度に告知された学習指導要領に基づいて作成された必修科目「コミュニケー ション英語 I」検定教科書の中から、千葉県内の公立高等学校の採用数上位4冊のコミュニケーショ ン活動のタスクらしさを検証した。さらに、タスクらしさを高めるための授業内での活用方法を考察 した。本調査の対象となった教科書内のコミュニケーション活動は、多くの教師によって採用されて いる PPP に基づいていた。そのため、パターンプラクティスに依拠するものが多かったこと、情報 のやり取りのみで、その先の目的(その言語活動を通して、何を成し遂げたいのか)を明示している 活動も少なかったことが、Meaning、Authenticity、Interest に影響を与えた。以上を踏まえ、与え る言語情報は最小限にし、場面を細かく設定し、やり取りした情報に基づいて果たすべき目標設定を するようアレンジを加えることが、タスクらしさを高めると考えられる。PPP に基づく活動は、EFL 環境で教室外のインプットが少ない初習者に適しているが、タスクらしさを高めるバリエーションを 加えることで、学習段階に合わせることができ、よりコミュニケーション能力の育成に寄与するよう になるだろう。もしくは、学習者にとってよりチャレンジングな内容にするために、あえて各レッス ン末にあるコミュニケーション活動を先に実施し、教科書に提示されているのとは逆の順番で実施し てみるだけでもタスクらしさは高まるのではないだろうか。 今後の課題としては、本調査では筆者1名でタスクらしさの評価を行ったため、今後は複数名で評 価を行い、より信頼できる評価にすることである。また、今回提案した方法で実際に授業を実施し、 学習者への効果を測り、検証したい。

謝辞

本稿の修正にあたり、査読委員の先生方には有益かつ丁寧なご助言を賜りましたこと、ここに御礼 申し上げます。誠にありがとうございました。 98 高校英語教科書のコミュニケーション活動のタスクらしさ

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参照

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