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農業用水路のパイプライン化と管理制御の自動化の

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 久 保 七 郎

学 位 論 文 題 名

農業用水路のパイプライン化と管理制御の自動化の      計画・設計に関する研究

学位論文内容の要旨

  農業用 水の 円滑な 運用に は,安 定した 水源 ,計画 的に整 備され た幹 ・支線 水路網,用水の自在 な調整 を可能 とする 量・ 分水施 設及び 緊急時 の安 全施設 ,並び にこれ らの施 設を 用水の利用目的

・利用 方法に 応じて 適切 に運用 操作す る人的 組織 体制が 必要で ある。 しかし ,近 年における農業

・農村 をめぐ る社会 経済 的環境 の変化 から, 水利 施設の 計画並 びにそ の運用 にっ いて,在来の技 術・手 法の抜 本的革 新が 必要に なって きた。

  本論文 は, 畑地灌 漑を主 体とす るパイ プラ イン施 設及び その管 理制 御にっ いて,室内実験や現 場試験 ・調査 等にも とづ き,施 設の計 画・設計上の問題点の解明とその対応方策を追求している。

特に, これま で対応 が必 ずしも 十分で なかっ た農 業水利 施設計 画への 通信制 御技 術の適用の問題 にっき ,水利 施設と その 操作用 機器・ 装置の 体系 的な整 備によ る「水 管理シ ステ ム」の構築をめ ざした 。

  農業水 利事 業等で 整備さ れた比 較的新 しい 構想を 導入し た地区 を, 全国か ら98地区抽出し,計 画設計 担当者 ・施設 管理 担当者 ・受益 農家代 表者 を対象 とする アンケ ート調 査, 及び現地試験等 による 精密な 機能調 査を 行って 問題点 を明ら かに した。 例えば ,@水 利用の 集中 による水不足対 策,◎ 用水中 の砂・ ごみ 等の夾 雑物対 策,◎落雷・誘導雷等の外乱対策,@フェイルセーフ・フェ イルソ フトの システ ム, ◎人の 判断と 処理の 余地 を残し たシス テム, ◎自動 化の 範囲と程度,◎

事故の 早期発 見・警 報と 安全側 への誘 導方式 ,◎ 過酷な 野外環 境での 使用の ため の漏電及び劣化 対策 , ◎ ヒ ュ ーマ ン イ ン タ フ ェース の整 備,◎ 統制を 乱す異 常な 水使用 に対す る強制 遮断方 策

(ヒュ ーズ方 式の導 入等 ),◎ 幹線系 ・末端 系の 管理シ ステム の連携 (異な るメ ーカー間の仕様 統一) ,◎工 ネルギ ーコ ストの 軽減方 策,等 であ る。

  農業用 水路 へのパ イプラ インの 導入に 当た っては ,開水 路を主 体と して蓄 積された伝統的な計 画手法 を基礎 に,上 水道 等の他 分野の パイプ ライ ン技術 の応用 で設計 ・施工 がな されたため,運 用管理 に入っ てから 予測 もしナ ょかっ た問題が多発した。農業用のパイプラインは,比較的安定し

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た路 線選定 のでき る都市 用水 用のパ イプラ インと は異な り, 地形・ 地盤の 条件を 含めて問題が多 く, 管の破 裂等の 事故が 発生 して初 めて問 題が顕 在化す る。 このた め,現 場試験 並びに透明パイ プに よる模 型実験 よって 水理 特性を 解明し ,農業 水利に 特有 の条件 に適合 したパ イプラインシス テム を提案 し設計 基準等 に反 映させ た。

  また ,上水 道や工 業用 水道で は従量 制の料 金体 系によ って安 定供給 の義務 と水使用の自由度の 保証 が成り 立って いるの に対 し,農 業用水 では水 の供給 者と 使用者 の区分 が明確 でなく,末端圃 場に おける 農家の 要求を 重視 した管 理運営 が強く 求めら れる 。特に ,最近 は田畑 輪換や導入作物 の多 様化, 兼業に よる日 曜や 朝夕へ の作業 集中等 のため に, 計画時 点と実 際の水 利用との不一致 が一 般化し ている 。

  本論 文では ,この よう な現場 の実態 から,農業用水の管理運用体制に階層管理の概念を適用し,

導 入 すべ き新し い水 管理シ ステム との関 係を考 慮し て8っ のタ イプに 類型区 分した 。こ こでは , 親機 (中央 管理所 )から 全体 を統合 管理す る中央 集中制 御方 式,親 ・子・ 孫がそ れぞれ独自性を 保ち っつ相 互間に 必要最 低限 の連携 を確保 する分 散制御 方式 など, 想定さ れる水 管理システムの 全体 構成を メニュ ー化し ,運 用主体 である 「人」 の組織 との マッチ ングを 考慮し て最適の方式を 選択 できる ように した。

  畑地 灌漑で は,用 水の 節減, 水管理 労カの 軽減 を主な 目的に ,整然 とした ブロック構成の計画 方式 が確立 され, 管理制 御の システ ム構成 にこの 計画方 式を 活用す ること により ,水管理施設が 大幅 に簡素 化され 運用操 作の 仕組み ともよ く整合 するこ とを 明らか にした 。また ,圃場における 自動 化の必 要項目 を整理 し, 整備す べき必 要最低 限の基 本機 能をべ ースと する自 動制御装置のレ ベル 区分を 行い, 併せて ,電 気・通 信分野 等で定 着した 詳細 な基準 ・規則 を参考 に部品・部財の 性能 やその 検査方 法にっ いて も細部 にわた ってル ール化 を行 った。 また, 水利施 設の階層構造と 運営 管理組 織の構 成とを 一致 させ, かっこ れをべ ースに 水管 理シス テムの ネット ワークを構築す る考 え方を 提案し た。

  多目 的畑地 灌漑の 管理 制御自 動化の 適用と 評価 のため ,対象 に選定 した笛 吹川地区は,ぶどう

・も も・桑 の混在 する樹 園地5,800haに 新たに 用水を 導入し ,畑 地灌漑 をはじ め,防除・施肥・

凍 霜 害 防 止 な ど の 多 目 的 利 用 に よ り 安 定 し た 樹 園 地 農 業 の 展 開 を め ざ す 計 画 で あ る 。   水管 理には ,@用 水の 節減, ◎水管 理労カ の節 減,◎ 水管理 工ネル ギ―費 の節減,@水利施設

・水 管理施 設のコ スト低 減, ◎水利 用の自 由度の 確保, ◎適 性・公 平な水 配分等 の条件をバラン スよ く充足 するこ とをシ ステ ムの基 本とし ,水源 から末 端ま で,統 一され た意思 のもとに水管理 が行 えるよ う,集 中管理 シス テムを 採用す ること とした が, 末端で の個別 農家の 水利用をすべて

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中央で監視・制御することは困難で,また水利用の実態にも適合しないため,供給側に立った中 央 制 御 と 需 要 側 に 立 っ た 末 端 制 御 を 組 み 合 わ せ た 階 層 管 理 シ ス テ ム と し た 。   システムを構成する装置・機器及び運用ソフトにっいては,当面の水管理目標に限定し,情勢 の変化に柔軟に対応できる計画とした。すなわち,@信頼性・確実性と経済性との調和,◎省力 化の重視,データの集積・処理は必要最小限に,◎操作・管理は現場優先,システムの暴走等へ の対応,@将来の計画変更や増設に対するシステムとの拡張性・融通性の確保,◎保守管理・操 作運用の簡素化等を基本とした。

  本地区に採用した水管理システムは,@水源及び左右幹線の監視・制御を主体とする中央管理 システム,◎分水工からファームポンドに至る支線の監視・制御を分担する地区管理システム,

及び◎ファームポンドから加圧機場等を経て末端圃場までを管理する末端システムの3層構造の システムで,これらが独立に機能するとともに通信網を介して中央システムに結合し,全体とし ても統制のとれた運用ができる仕組みになっている。情報通信系は,農家の負担となるランニン グコストの軽減を主眼に,私設線を主体とする回線構成で,ケーブルの先行敷設(管路の施工と の同時敷設)方式を選定した。

  本論文では,新しい水管理システムの基本型を策定し,情報通信技術との結合により水利用の 目標に適合した新しいシステムを具体例への適用によって実証した。特に,在来の人力中心で培 われてきた水管理の伝統的ルールと新しいシステムとの調和,水利施設の構成・配置と監視制御 設備の構成・機能との調和,水管理主体である水利組合等の組織構成・役割分担と水管理システ ムとの調和を強調し,また,技術の進歩による計画の陳腐化を避けるため,情勢の変化に柔軟に 追従できるシステムの構築を提案した。

学位論文審査の要旨

本 論文は和文で記され,図44,表32,引用文献80を含み,総頁数172よりなる。内容は5章を も って構成され,参考文献28編が添えられている。

治 隆

安  

  郁

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

  本 論文は ,農業 水利施 設とし て整 備され たパイ プライ ンに 関する 全国実 態調査及び現地試験・

室内 模型実 験を 通じて 収集し た広範 ・多 量のデ ータを 分析・ 整理し て技 術上の 問題点を明らかに する ととも に, 農業用 パイプ ライン の計 画・設 計法を 提示し ている 。ま た,こ れらの水利施設の 合理 的かつ 省力 的な運 用管理 をめざ す水 管理シ ステム の計画 手法を 提案 し,具 体的な事業実施地 区へ の適用 によ って手 法の有 効性を 実証 してい る。

  わ が国の 農業水 利の技 術は稲 作農 業の長 い歴史 の中で 培わ れ,独 自の技 術体系を編み出してき た。 また近 年は ,新規 水源の 開発や 取水 施設の 統廃合 による 施設の 大規 模化・ 広域化が進み,施 設の 装備内 容も 関連周 辺技術 の進歩 を背 景とし て抜本 的な改 善が図 られ ,水資 源利用の合理化・

効率 化に大 きく 貢献し ている 。その 反面 ,新し い水利 施設の 利用と 伝統 的な水 利慣行・水管理秩 序と の整合 性に 問題が ある事 例も生 じ, 技術革 新に対 応した 農業水 利の 新たな 技術の体系化が求 めら れてき た。 特に, 農村に おける 深刻 な労働 力不足 から, 旧来の 人為 操作を 主体とする水管理 に代 えて, 通信 ・制御 技術の 枠を集 めた 新しい 水管理 システ ムの導 入が 始まり ,農業水利に特有 の 使 用 環 境 ・ 使 用 条 件 に 合 致し た シ ス テ ム の計 画 ・ 設 計 手法 の 確 立 が 必要 に な っ て きた 。   本 論文で は,農 業用水 用のパ イプ ライン と上・ 工水用 のパ イプラ インと の共通点及び相違点を 摘出 ・整理 し, @施設 計画容 量の柔 軟性 ,◎季 節変動 ・日変 動等, 特有 の水使 用形態,◎管内へ の空 気吸入 によ る障害 ,@砂 ・ごみ 等の 異物混 入,◎ 保守管 理体制 ,等 にみら れる特有の問題点 を明 らかに する ととも に,計 画・設 計・ 管理に 当たっ ての具 体的方 策を 提案し ている。水管理シ ステ ムにっ いて は,農 業用水 管理に おけ る制御 施設と 「人」の役割を整理して8種に類型区分し,

それ ぞれの 適用 条件を 示した 。特に ,畑 地灌漑 の自動 化シス テムに っい ては, 畑地における水利 用の 特徴・ 施設 計画の 一般的 方法・ 運用 操作組 織の実 態等を 踏まえ て, 自動化 の範囲と程度,水 利施 設構成 と水 管理シ ステム の構成 ,野 外での 過酷な 使用環 境にお ける 外乱・ 劣化対策,異常時 にお ける安 全側 への回 避と通 報方策 等を 整理し た。ま た,こ れらの 検討 結果に 基づき,自動化の 標 準 仕 様の 策 定 を 試 み, 手 動 に 近 いご く 簡 易 な も のから ,CPUを備え た高度 なシ ステム まで,

自動 化の内 容と 程度に 応じて レベル 設定 し,経 済性に 関連す る機器 構成 モデル をも含めて技術指 針と して提 案し た。

  以 上の結 果を国 営の畑 地灌漑 事業 計画地 区(笛 吹川地 区) に適用 し,具 体的な場面での適用性 の評 価を行 った 。本地 区の水 管理シ ステムは,@水源及び左右幹線の監視・制御を主体とする「中 央管 理シス テム 」,◎ 分水工 からフ ァー ムポン ドにい たる支 線の監 視・ 制御を 分担する「地区管 理シ ステム 」, ◎ファ ームポ ンドか ら加 圧機場 を経て 末端圃 場の水 使用 までを 管理する「末端管 理 シ ステ 厶」の3層 構造を 基本と し, これら 各階層 が独立 に機 能する ととも に,通 信網を 介し て

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相互 に結合 し,中 央管理 シス テムで全体として統制のとれた運用ができる仕組みとした。管理は,

人間 介在を 前提の システ ムと し,人 による 対応が 困難な 突発 事故, 日常的な定型業務等の自動化 に よ る省 力 化 を 図 った 。 情 報 通 信系 に は , 無線 ,自営 線,NTT線 等を比 較検討 し,維 持管 理経 費の 低減を 主眼に 自営線 を主 体とする回線構成で,ケーブルの先行敷施(管路工事との同時敷設)

方式 を選定 した。

  本論 文は, 農業用 パイ プライ ン並び に水管 理シ ステム の計画 ・設計 に関わる技術の体系化・総 合化 をめざ すもの で,研 究の 成果は 事例地 区での 検証を 経て 修正さ れ,その一部は技術指針等と して 関連事 業の推 進に活 用さ れてい る。

  よ っ て 審 査 員一 同 は ,別に 行っ た学力 確認試 験の結 果と 合わせ て,本 論文の 提出者 久保 七郎 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

参照

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