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石灰 質被 膜の 成長 機構

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 水 産 科 学 ) 赤 嶺 健 一

学 位 論 文 題 名

海洋鋼構造物への石灰質被膜による防食技術の研究 学位論文内容の要旨

  近 年 、 人 類 活 動 に 海 洋 空 間 を 利 用 す る 傾 向 が 強 ま っ て い る 。 そ れ に 伴 い 、 海 水 中 ま た は 臨 海 地 域 で 種 々 の 海 洋 構 造 物 の 構 築 が 必 要 と な っ てい る。 しか しな がら 、 海 洋 環 境 は 非 常 に 過 酷 な 腐 食 環 境 で も あ る た め 、 構 造 物 を 維 持 管 理 す る 上 で 、 そ れ に 対 す る 優 れ た 防 食 技 術 の 開 発 は 陸 上 構 造 物 に 比 べ て 、 より 重要 な課 題で ある 。 海 洋 鋼 構 造 物 の 有 カ な 維 持 法 の ー っ と し て 、 石 灰 質 電 着 を 伴 う カ ソ ー ド 防 食 法 が あ り 、 一 般 的 に は 電 着 法 と し て 知 ら れ て い る 。 本 研 究 で は 、 海 水 中 に 溶 存 し て い る カ ル シ ウ ム イ オ ン お よ び マ グ ネ シ ウ ム イ オ ン を 、 海 水 に 接 す る 鋼 板 表 面 に 電 気     I

化 学 的 に そ れ ぞ れ 炭 酸 お よ び 水 酸 化 化 合 物 と し て 沈 着 さ せ 、 防 食 被 膜 を 形 成 さ せ る 電 着 法 に 関 し て 基 礎 的 な 研 究 を 行 っ た 結 果 、 以 下 の 知 見 を 得 る こ と が で き た 。

1) 海 水 中 に お け る 石 灰 質 被 膜 の 電 着 機 構

  海 水 中 に お け る 鋼 材 の カ ソ ー ド 防 食 法 に お い て 、 鋼 材 表 面 上 に 電 着 す る 石 灰 質 被 膜 に 対 し 、 そ の 生 成 機 構 の 解 明 を コ ロ イ ド 化 学 的 観 点 か ら 試 み た 。 総 通 電 量 を 一 定 に し て 、 陰 極 電 流 密 度 を 増 加 さ せ る と 、 鋼 板 上 に 電 着 し て く る 炭 酸 カ ル シ ウ ム お よ び 水 酸 化 マ グ ネ シ ウ ム の 量 は い ず れ も 、 各 々 所 定 の 電 流 密 度 で 最 大 値 と な り そ の 後 、 次 第 に0に 漸 近 す る 。 こ の 現 象 を 解 明 す る た め に 、 海 水 中 に 懸 濁 す る CaC03Mg (OH)zコ 口 イ ド 粒 子 の 表 面 電 荷 をpHの 関 数 と し て 測 定 し た 。pHが 増 加 す る に っ れ て 、 生 成 す る 固 体 粒 子 は 増 加 し た が 、 各 固 体 の 表 面 電 荷 は 減 少 し た 。 こ の 結 果 か ら こ れ ら の 互 い に 相 反 す る 要 因 が 同 時 に 起 き る こ と に よ っ て 石 灰 質

(2)

電 着物 量対 カソ ード 電流 密度 の曲 線に おいて最大値が生起することを明らかに し た。

(2)

石灰 質被 膜の 成長 機構

  

海 水中 での カソ ード 防食の際、鋼材表面に生じる石灰質電着物の成長機構の解 明を 試み た。 定電 流下 で、 電着 物は

Ca/Mg

比を ほば 一定に保持したまま、電着時 間に 比例 して 成長 した 。走査電子顕微鏡による観察の結果、その電着物は内側が マグ ネシ ウム を、 外側 がカルシウムを豊富に含む明確な境界を有する二重層より 成る こと がわ かっ た。 さら に、 カル シウ ム同 位体

(45Ca)

を海 水に 添加 した 実験 から 、電 着物 中の

CaC03

粒子 およ びMg (OH)2 粒 子は 電着が成長している間は、カ ソー ド近 傍に 形成 され るpH 勾配 およ び各 粒子 の表 面電荷 特性 に依 存し た可 動性 を示 し、 その 結果 、電 着物中に明確な境界を有する二重層が形成されることを明 らか にし た。

(3)

石灰質被膜生成に対する海水希釈の影響

  

石 灰 質電 着を伴 うカ ソー ド防 食の 汽水 域に おけ る鋼 構造 物へ の適 用性を 検討 する ため に、 海水 希釈 が電 着量、電着物組成および電着物構造に与える影響につ いて研究を行った。

  

希 釈 によ って塩 分濃 度が 標準 的海 水の

1/10

に減 ぜら れる まで は、 電着物 量は 海水 希釈 によ る影 響を 受け なか った 。一 方、 電着物 中の

Mg/Ca

比率は、希釈によ っ て 大 き な 影 響 を 受 け た。 す な わ ち 、 希 釈 を 増 加 さ せ て い く と 、 電着物 中の

Mg (OH)

:含有量は増加したが、CaCO ヨ含有量は逆に減少した。この電着物組成の変 化はCaC03 の遅い結晶生成速度によ ることが示唆された。また、電着物構造につ い て は 、海 水希釈 が標 準的 海水 の塩 分濃 度の

1/10

に減 ずる と、 電着 物の厚 みが 急激 に増 大し た。 この 電着 物の 厚み の急 激な 増加は 、主 として電着物中のMg/Ca 比の増加に由来すると考えた。

    ‑ 157

(3)

  

以上の結果から、石灰質電着を伴うカソード防食法は、本研究が採用した条件 下であれば、標準的海水の1/10 以上の塩濃度を有していれば、汽水域において

    

も 鋼 構 造 物 に 十 分 適 用 可 能 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。

(4)

石灰質被膜生成における適切な陽極配置

  

大型海洋鋼構造物に対し、カソード防食を行う際の適正なアノード配置を見積 もる 簡 潔な 方 法を 提 案し 、 その 正 当性 お よ び適 用 性に つ いて 検討 した。

  

海水中において鋼構造物のカソード防食を行う際、アノードと構造物間の電気 抵抗は、主として海水部分の抵抗に依存するとの仮定を設定し、その正当性を定 電流条件においてアノードとカソードの電位を種々の塩濃度に希釈した海水を 用いて測定する実験によって検討した、。その結果、本研究が提案した希釈法が 大型海洋構造物のカソード防食に際して、適切な陽極配置を見積もることに非常 に有効であることが明らかになった。

  

この希釈法を大型海洋鋼構造物のカソード防食における具体的な設計に適用 する方法を示すために、カソード防食中のカソード上の電位分布をイオン交換水 で1/10 に希釈された海水中で測定し、その電位分布からカソード電流密度分布 を得た。このカソード電流密度分布と石灰質電着物量の分布の間には密接な関係 があった。カソード電流密度分布のデータを統計的に処理し、石灰質電着物量の 分布の不均等性を定量的に評価する無次元数を導入した。この無次元数は石灰質 電着を伴う大型海洋鋼構造物に対し、カソード防食ためのアノード配置を設計す るのに有効であることがわかった。

(5)

石灰質被膜における二層構造の解析法

  

海水中でカソード分極された鋼材表面に生成する石灰質電着被膜の二重層構

造を、被膜内の間隙水は電着物の親水性の差に従って、両層に分配されるという

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仮定に基づくモデルによって解析する新しい方法を提案した。この方法によっ て、二重層に関する様々な構造因子が導かれた。このモデルの正当性を検証する ために、定電流密度および定温度下でカソード周辺の海水の流動状態あるいは海 水の希釈率を変化させることによって種々のCa/Mg 比を有する石灰質電着被膜 を作製し、これらに上記のモデルを適用した結果、本モデルが二重層構造を解析 するために有効であることが明らかになった。

(6)

石灰質被膜の防食性能

  

海洋鋼構造物の電気防食に付随する石灰質電着物の防食効果を評価するため、

様々な電着物量(

WT)

で被覆された鋼材の海水中での暴露時間(〇)と防食効 果の関係について研究を行った。低いレ咋では、電着物の構造物に対する防食効 果はe と共にいずれも減少した。いずれのe にっいても、レルと防食効果の間に は直線関係が存在し、本研究の範囲内で全通電量が一定の場合、DK 2 A/n12 で生成した電着物が最大のWT を有し、したがって最良の防食効果を発揮するこ とが明らかになった。DK =

2A/rri2

で生成した、比較的高い

WT

値をもつ電着物 は、海水中に長期間暴露した鋼材試料に対して十分な防食効果を発揮した。この 石灰質電着被膜による鋼材への防食効果は、鋼材の酸化反応に関与するH20 や02 分子に対し、電着被膜自体による拡散阻害と電着被膜内の海水のアルカリ化に起 因した水酸化鉄被膜による拡散阻害から成る

2

っの効果によるものと考えた。

  

本研究で得られた知見を基礎として行われた開発研究によって、塗装に替わる 新たな防食工法として、船舶バラストタンク内面に対する電着法の適用がすでに 実用化され、さらに鋼矢板、鋼管杭などの港湾鋼構造物や橋梁・水門・発電設備 等の海水に接する鋼構造物全般に対しても防食メンテナンス法として有望視され ている。本研究が今後の海洋鋼構造物の防食分野に韜いて積極的に利用されるこ とが期待される。

    

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(5)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 講師

鈴木 板橋 芳村 樫木 関

学 位 論 文 題 名

        豊 康男     勇 秀司

海洋 鋼構造物への石 灰質被膜による防食技術の研究

  増大する海洋鋼構造物を維持・管理していく上で,省力・省資源・省エネルギー的で.かつ,環境 負荷の少ない,優れた腐食防止技術の開発は重要な課題である。本論文は,海水に溶存している金 属イオンを利用して,構造物表面に石灰質被膜を形成させる電気化学的方法によって,上述した課 題を解決しようとしたものであり,この新技術に関して,本論文は理論および実験の両面から総合 的に検討を行ったものである。

  本論文 は8章 から構成されており,はじめに,第2章において,電気防食に伴う海洋鋼構造物上 への石灰質(すなわち,炭酸カルシウムまたは水酸化マグネシウム)の沈着機構にっいて論述して いる。第3章では,電子顕微鏡による断層観察に基づき,石灰質沈着物の構造と成長機構にっいて 検討を行い,被膜の内側に水酸化マグネシウム層,外側に炭酸カルシウム層をもつ二重層膜がその 構造であることを論述している。第4章では,臨海地帯での海洋鋼構造物建造が急増する現況に対 応して,汽水域での石灰質被膜を伴う電気防食法の適用性,すなわち,海水希釈が石灰質電着に及 ぼす影響にっいて検討している。第5章は,近年の相次ぐ巨大海洋鋼構造物の建造計画に対応して,

海洋鋼構造物の電気防食における対極(陽極)の必要本数とそれらの適切な幾何学的配置を扱って いる。第6章では,二重層膜の構造を各々個別に解析する方法を提案し,それに基づいてその構造 解析を行っている。

  本 論 文 で 得 ら れ た 成 果 に 対 し , 審 査 員 が 特 に 評 価 し た 点 は 以 下 の と お り で あ る 。 (1)石灰質被膜が生成する機構にっいては,従来,鋼構造物の陰極分極化による構造物周辺でのア ルカリ化が原因とされてきたが,これだけでは石灰質沈着の全過程を説明し得ないことを指摘し,

構造物近 傍でのpH勾配によって異なる荷電状態にある炭酸カルシウムまたは水酸化マグネシウム のコ口イド粒子と,負極である鋼構造物の間の静電的相互作用が石灰質膜形成の駆動カであること を実験的に解明した点。

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(6)

(2)電子顕微鏡による石灰質被膜断層の観察に基づいて,被膜の構造は,内側が水酸化マグネシウ ム層,外側が炭酸カルシウム層から成る二重層であり,両眉間には明確な境界があることを初めて 指摘し,その生成機構をコロイド化学的な観点から検討した結果,コ口イド粒子の順次堆積によっ て石灰質沈着物が成長するとする従来の学説では,この二重層の生成が説明し得ないことを指摘し,

pH勾配をもつ電場においては,炭酸カルシウムまたは水酸化マグネシウムコロイド粒子は可動性を 有し,粒子表面の正・負の荷電状態によって両コ口イド粒子は絶えず分別されることが二重層生成 の原因であることを解明した点。

(3)汽水域において海水は希釈状態にあるが,希釈によって炭酸カルシウム粒子の生成速度が遅く なり ,その 結果,形 成され る石灰質 被膜のCa[Mg比が 大きな影響を受けるが,海水塩濃度が1/10 に希釈されるまでは,総量としての石灰質電着量はほば一定であることを解明し,原則的には,石 灰質 被膜に よる防食 は1/10にまで希釈された海水においても適用可能であることを明らかにした 点。

(4)従来の電気防食法において,陽極の配置は現場の技術者の経験的な勘に頼らざるを得なかった が,本研究は,外部直流電源を含む回路中の電気抵抗は,海水の電気抵抗のみで近似できるという 仮定に基づくモデルを提案し,海水希釈は系の空間的拡大と等価であることを理論的に示し,この モデルを実験によって確認した点。

(5)上述した電気抵抗モデルに基づいて,室内実験のデータの数学的取り扱いから電極配置のため の手続き関数を導出し,この関数によって所定の防食効果を得るために必要な陽極の理論的本数と それらの幾何学的な配置を予め決定することが初めて可能となり,その結果,巨大海洋鋼構造物の 電 気 防 食 法 に お い て も , 容 易 に 電 極 配 置 を 決 定 す る こ と を 可 能 に し た 点 。 (6)本研究が提案した解析法によって,石灰質被膜中の間隙水は親水性に応じて両層に分配される こ と , お よ び そ の 結 果 両 層 と も か な り 多 孔 性 の 構 造 で あ る こ と を 見 出 し た 点 。 (7)種々の条件で石灰質被膜を形成させた海洋鋼構造物の海水中での腐食速度を重量減法および交 流インピーダンス法で測定し,石灰質被膜厚み(沈着物量)と防食効果の間には密接な関係がある こと,および十分な厚みのある石灰質被膜は,鋼構造物の長期の防食にも十分に耐えることを明ら かにした点。

  以上を要約すると,本研究は,理論的な取り扱いがほとんどなかった海洋鋼構造物の防食分野にお いて,石灰質被膜の形成メカニズムを理論的に明らかにし,併せて実際の操作に対して明解な指針 を提示した。

  本研究で得たこれらの成果は多くの有用な知見を含み,基礎および応用の両面で海洋環境工学およ び海洋建設工学などの関連分野に対し重要な貢献をしたものと高く評価できる。よって審査員一同 は , 本 論 文 が 博 土 ( 水 産 科 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 の あ る も の と 判 定 し た 。

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