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分子構造的特性解析による

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 重 村 雅 彦

学 位 論 文 題 名

分子構造的特性解析による

Krebs von de Lungen‑67Mucin‑lcD 肺胞ー血液間動態に関する研究

学位論文内容の要旨

【背景と目的】

  IくrebsvondeLungen・6(KL−6)は、1985年にKohn0らによって発見された抗KL―6抗 体が 認識す るシアル 化糖鎖抗 原で、Inucm―1(MUC1) のー部で ある。MUC1の細胞外ド メインにはアミノ酸の繰り返し配列の領域が存在し、この領域には糖鎖が多数存在する。

抗KLー6抗体はこの糖鎖のシアル酸部位を認識しており、KL―6はこうしたシアル化糖鎖抗 原の量を反映している。肺ではu型肺胞上皮細胞や気管支腺細胞などで産生され、気管支 肺胞洗浄液(bron出oalveolarlavagenuid,BALF)中にも高濃度で存在する。また移行機 序は 不明で あるがKL−6の一部は血中を循環しており、再生H型肺胞上皮細胞が増加する ような問質性肺疾患では血清中KL−6値が上昇する。そのため、血清中KL−6の測定は問質 性肺疾患の診断と病勢の評価に広く使われている。しかし、血清中KL−6値が臨床経過と 乖離したり、他の問質性肺疾患の血清マーカーと異なる動きをする症例が報告されている。

肺胞上皮由来タンパク質の肺胞一血液間動態はそのタンパク質の分子サイズや荷電状態と 関係 がある ことから 、こうした現象の要因のーっにKLー6/MUC1の分子構造的特性の関与 が 考 えら れ る 。MUC1の 分子サイ ズはMUC1遺 伝子多型 (rs4072037冫と関連 があり 、ま たMUC1の 糖 鎖 修 飾 は高 分 子 サイ ズ のMUC1の方 が 低 分子 サ イ ズ のMUC1よ り も 多い と 報告されている。これらの報告に加えて、最近、サルコイドーシスにおいてrs4072037と 血清中1くL‐6値との関係が報告されている。

  本研 究の目 的は、KL−6MUC1の 分子構造 的特性 を解析し てKL―6/MUC1の分 子構造的 特性と肺胞―血液間動態との関係を明らかにすることである。

【対 象と方法 】

    対象 は、北 海道大学 病院第一内科の研究においてBALFと血清の両方が保存されてい た問質性肺疾患患者125例と健常者22例である。問質性肺疾患患者の内訳は、特発性肺線 維症13名、非 特異性問 質性肺炎15名、薬 剤性肺炎10名、器 質化肺炎12名、好 酸球性肺 炎10名、過敏性肺臓炎2名:サルコイドーシス63名である。これらの対象を用いて、BALF と血 清の両方 のウエ スタンブロットからKL―6/MUC1の肺胞―血液間動態を推定し、また サル コイドー シス患 者におい てはKLー6/MUC1の分子 構造的特性とrs4072037遺伝子型と の関 係にっい ても検 討した。

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(2)

【結果】

    BAI」F中KL―6/MUC1は、抗KL−6抗体を用いた ウエスタンブロットにより,分子量の 大 き さ か らL,M,Hの3種類 の バン ドの ひと っも しく はい ずれ かの 組み 合わ せ(LIL, L/M,L[H,H/H,M/H)で 検 出 さ れ た 。BALF中KLー6/MUC1バ ン ド パ タ ー ンがL/Lの対 象 者で は、 健常 者および問質性肺疾患患者と もに血清中KL−6/MUC1はLバ ンドのみ検出 さ れた が、BALF中の バン ドパ ター ンがnon‑L/Lの対象者の血清では、健常者ではLバン ド のみ 検出 され たが 、問 質性 肺疾 患患 者で は48例中18例の症例でLバンドに加えてMバ ン ドあ るい はHバ ンド のニ つの バン ドが 検出 され た。 サル コイ ドー シス 患者における KL−6 fMUC1バンドパターンとrs4072037遺伝子型との関係を検討したところ、遺伝子型 AA症 例 は38例 中36例 がL/Lで あ っ た の に 対 し 、AG症 例 で は23例 中3例 がL/M、19 例 がL/H、1例がM/Hで すべ てnon. ―L皿 パタ ーンであった。またGG症例では2例全例が H/Hで あ っ た 。以 上の 結果 か らAアレ ルはLバン ドとGア レ ルはHバ ンド と関 係が ある と推定された。次に、KL―6mmC1バンドパターンとKL‐6値との関係を検討したところ、

健 常者 と問 質性 肺疾 患患 者の &乢Fと血 清中KL‐6値は&乢F中のバンドパターンがL几 よりもL/Hのほうが有意に高値を示した。これに加えて、問質性肺疾患患者の血清中KL―6 値は健常者と比較してBALF中のバンドパターンが同じパターン同士の比較においても有 意 に高 値を 示し た。 次にBALF中の バン ドパ ターンがnon一L皿の症例を対 象に、BALFと 血清中のバンドパター ンが一致する症例と一致しない症例に分けて両者のBALF中アルブ ミ ン値 を検 討し たところ、BALFと血清のパタ ーンが一致した症例の&乢F中アルブミン 値は一致しない症例と 比較して有意に高値を示した。

【考察】

  本研 究で は、 健常者と問質性肺疾患におけるKL‑6/MUC1の肺胞―血液間動態が異なっ て いた 。こ れは 、高分子サイズのKL‑6[MUC1が健常者では肺胞腔から血中へ移行しづら い動態にあるのに対し、 問質性肺疾患では肺胞血液関門での移行動態が破綻するような障 害をうけた場合に移行しやすくなるためと考えられた。一方、血清中KL―6値はKL−6[MUC1 の分子サイズと関係があ り、さらに肺胞血液関門におけるKLー6/MUC1の移行動態も血清 中KL‑6値 に 影 響を 与え てい た。 この 現象 は、 特にBALF中KL−6/MUC1の 分子 サイ ズが 高分子サイズのKLー6/MUC1を有する症例で顕著に認められた。

  問質性肺疾患の血清マ ーカーについては、その疾患特異性、感度、病勢に伴う推移など さ まざ まぬ 検討 がを され てい る。 血清 中KL−6は 問質 性肺 疾患 の血 清マーカーである surfactantProte血(SP)―AやSP‐Dと同時に検査するとその濃度上昇の程度や時間経過に 乖離がみられる症例が報 告されているが、その原因は明らかにされていない。しかし、本 研究で得られた知見はこ うした乖離原因を説明できる可能性がある。LemILarsenらは、

SP・D遺伝子多型が分子構造上のオリゴマー形成(分子サイズ)に関係しており、このこと が血清中SP一D値にも影響を与えていると報告している。したがって、SPlDの肺胞一血液 間動態も、KL―6瓜fUC1と同様に、遺伝的に規定された分子サイズの違いで異なり、その 異なった肺胞ー血液間動 態が血清中SP一D値にも影響を与えている可能性が示唆される。

このように、マーカータ ンパク質の肺胞―血液間動態をその分子サイズとの関係で推定す ることは、それぞれの血 清マーカーの異なった挙動を説明する上で有用な手段になりえる と考えられる。

【結論】

  BALF中KL−6/MUC1の 分子 サイ ズ に基 づく バン ドパ ター ンはMUC1遺伝 子多 型に よっ て 規定 され て韜 り、 血清 中KL―6/MUC1の バン ドパ ター ンは 、そ れに加えてKL‑6/MUC1 の肺胞−血液 間動態の影響を受けていた。さらに、血清中KL−6値も、KL−6/MUC1のバン

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ドパターン、肺胞血液関門におけるKL−6/MUC1の移行 動態双方の影響を受けていた。本 研究によって得られた知見は、KL―6/MUC1の肺胞―血液間動態の理解や血清KL−6値の解 釈に留まらず、あらゆる肺胞上皮由来タンパク質の肺胞一血液問動態の理解あるいは血中 濃 度 を 解 釈 す る 上 で も 重 要 、 か つ 臨 床 的 に 有 用 な 知 見 と な りう ると 考え られ た。

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(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

分子構造的特性解析による

Krebs von de Lungen‑6/Mucin‑1 の 肺胞―血液間動態に関する研究

  Krebs von de Lungen‑6 (KL―6)は、1985年にKohnoらによ って発見された抗KL‑6抗体が認 識 する シ ア ル化 糖 鎖 抗原 で 、muan―1(MUCl)の 一部 と されて いる。 肺ではH型肺胞 上皮細 胞 や気管支腺細胞などで産生され、気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid,BALF)中に も高濃 度で存 在する。また、移行機序は不明であるがKL‑6/MUC1の一部は血中を循環しており、

再生u型肺胞上皮細胞が増加するような問質性肺疾患では血清中KLー6値が上昇する。このため、

本邦では血清中KL‑6の測定が問質性肺疾患の診断や病勢の評価に広く用いられている。しかし、

検査上の問題点として、一部の症例では血清中KL―6値の動態が臨床経過や他の問質性肺疾患の血 清マーカーと異なる挙動を示す症例が報告されている。肺胞上皮由来タンパク質の肺胞―血液間動 態はタンパク質の分子サイズや荷電状態と関連が・あることから、こうした現象の要因のーっに KL‑6/MUC1の分子構 造的特性 の関与 が考えら れる。 本研究の 目的は 、KL‑6/MUC1の 分子構 造的 特性を 解析し てKL‑6/MUC1の分子構造的特性と肺胞−血液間動態との関係を明らかにすることで ある。

    対象は 、北海 道大学病 院第一 内科の研究においてBALFと血清の両方が保存されていた問質 性肺疾 患患者125例と 健常者22例である 。問質性 肺疾患 患者の内 訳は、特発性肺線維症13名、

非特異 性問質 性肺炎15名 、薬剤 性肺炎10名 、器質 化肺炎12名 、好酸 球性肺炎10名、過 敏性肺 臓炎2名、サ ルコイ ドーシス63名であ る。これ らの対 象を用い て、BALFと血清の両方のウエス タンブロットからKLー6/MUC1の肺胞一血液間動態を推定し、また本研究と併せて遺伝子解析が可 能であ ったサ ルコイド ーシス患 者にお いてはKLー6/MUC1の分子 構造的 特性とMUC1遺 伝子多 型 (exon2,rs4072037)との関係にっいても検討した。

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明 治

哲 之

秀 正

   

裕 吉

西

(5)

  健常 者と 問質 性 肺疾 患のBALF中KL―6/M【.JC1は、 抗KL‑6抗 体 を用 いた ウエ ス タン ブロ ット に お い て , 分 子 量 の 大 き さ か らL,M,Hの3種 類 の バ ン ド の ひ と っ も し く は い ず れ か の 組 み 合 わ せ(LIL,L/M,L/H,H/H,M/H)で 検 出 さ れ た 。 サ ル コ イ ド ー シ ス 患 者 に お け るBLAF中KL‑6/MUC1 バ ン ド パ タ ー ン とrs4072037遺 伝 子 型 と の 関 係 を 検 討 し た と こ ろ 、Aア レ ル はLバ ン ド とGア レ ル はHバ ン ド と 関 係 が あ る と 推 定 さ れ た 。BALF中KL−6/MUC1バ ン ド パ タ ー ン がL/Lの 対 象 者 で は 、 健 常 者 お よ び 問 質 性 肺 疾 患 患 者 と も に 血 清 中KLー6/MUC1はLバ ン ド の み 検 出 さ れ た が 、 BALF中 の バ ン ド パ タ ー ン がnon‑L/Lの 対 象 者 の 血 清 で は 、 健 常 者 で はLバ ン ド の み 検 出 さ れ た が 、 問 質 性 肺 疾 患 患 者 で は 一 部 の 対 象 者 、 特 にBALF中 ア ル ブ ミ ン 値 が 上 昇 す る よう な対 象者 で は 、 Lバ ン ド に 加 え て Mバ ン ド あ る い はHバ ン ド の ニ つ の バ ン ド が 検 出 さ れ た 。   審 査 にあ たり 、副 査丸 藤 教授からKL―6/MUC1の肺胞 から血中への移行機序に関す る質問があった。

次 に、 副査 松野 教 授よ りMUC1の 分子 サ イズ とKL‑6/MUCIのバ ンド パ ター ンと の関 係 につ いて のコ メ ントとKL‑ 6/MUC1の 分子サイズに影響を与える 因子についての質問があった 。さらに、副査筒井教授か らは 肺 胞障 害の 程度 と血 清 中KL‑6/MUC1のバ ンド パタ ーンとの関係に関する質問が あった。また主査 の川 口 教授 よル サル コイ ド ーシス患者の遺伝子多型性 と血清中KL―6/MUC1のバンド パターンとの関係 にっいての質問があ った。最後に、聶IJ査西村教授から本研究の位置づけや将来の展望に対するコメント があった。いずれの 質問に対しても申請者は自 験デニタや過去の文献を引用 し、概ね適切に回答した。

質疑応答の時間は約30分であった。

  こ の 論 文 は 、1)BALF中KLー6/MUC1の 分 子 サ イ ズ に 基 づ く バ ン ド パ タ ー ン がMUC1遺 伝 子 多 型 に よ っ て 規 定 さ れ て い る こ と 、2) 血 清 中KL‑6/MUC1の バ ン ド パ タ ー ン がKL‑6/MUC1の 肺 胞 ‐ 血 液 間 動 態 の 影 響 を 受 け て い る こ と 、3) 血 清 中KL‑6値 はKL‑6/MUC1の 分 子 サ イ ズ と 肺 胞 血 液 関 門 に お け る 移 行 動 態 の 双 方 の影 響を 受け て いる こと を初 めて 示 した 点で 高く 評 価さ れ、 今後 は KLー6/MUC1を 含 む あ ら ゆ る 肺 胞 上 皮 由 来 タ ン パ ク 質 に 対 す る 肺 胞 血 液 聞 動 態 の 理解 や臨 床検 査 へのさらなる応用が 期待される。

  審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果を 高く 評価 し 、大 学院 課程 にお け る研 鑽や 取得 単 位な ども 併せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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