博士(薬学)八谷俊一・亅郎
学 位 論 文 題 名
抗 腫 瘍 活 性 を 有す る海 洋 性天 然物 ハ リコ ンド リ ンB の全 合 成研 究
‑ Cl‑C15 フラグメン卜及びポリエーテル部分の立体選択的合成一 学 位 論 文 内 容 の 要 旨
ハリコンドリンB(1)は1985年、クロイソカイメンから単離、構造決定されポル エーテルマク口ルド化合物で非常に高い坑腫瘍活性を示し、その構造は高度に官能 基化された大変複雑なものである。これ以後炭素鎖の位置番号及び環の名称はハリ コンドリンBの位置番号及び環の名称に従わせていただく。1はCl−C36位マク口ラ クトン部分(2)とC27−C54位ポリェーテル部分(3)の2つの化合物がF環部分で重ね 合わせた構造と考え、1の全合成を達成するために先ず2.3の効率の良い合成ルー トを確立できるならば、2を合成した後に3の合成法に従しミ1を、あるいは3を合 成した後に2の合成法に従うことができ柔軟で効率的な合成ルートに成り得ると考 えた。実際の合成では1をCl―C15位部分(4)、C16ーC26位部分(5)、C27−C36位部分 (6)、C37―C54位部分(7)の4つのフラグメントに分け合成を進めることにした。既に 4つのフラグメント並びにマク口ラクトン部分(2)の合成は完了してる。今回筆者は 2の特徴的構造であるCl―C15位部分(4)及びC27−C54位部分からなるポリエーテル 部分(3)の効率的かつ立体選択的合成研究を行った。
先ずCl―C15位部分の合成を行った。最初にC環を構築し次にhydroxya,p・不飽和 工ステルを用いて分子内Michael付加反応により2,6一trans型のTHP環であるB環と 2,6‑cis型のTHP環であるA環を立体選択的に作り分けた。D−グルコースを出発原料 にC環構築後、C6.C7,C14位の増炭、Cll位水酸基の反転及び保護基の変換を行い B環構築前駆体へと導いた。B環は速度論的条件下に環化反応が進行し望みの立体配 置で構築された。A環については予想に反しC3位についてジアステレオマー混合物 を与えがC14位一級水酸基をTr基で保護した後、再度TBAFで処理すると平衡が完 全にcis体側に寄り望み高い立体選択性で構築することに成功した。最後にp.ケトホ スホネートヘ変換し合成が完了した。筆者が合成した4を用いて、堀田らにより2 の合成が既に完了している。
次に6と7の効率的な新規合成ルートの開発を行った。初めに7の改良合成につ いて述べる。先の合成ルー卜ではL,K,J環の順に合成を進めていたが今回はC38位 からC50位までに存在するC2対称性に着目し先ず最初にJ,K環を構築した後にL 環を構築することにした。この合成ルート上次の三点が問題となる。(1) C42位,C46 位への立体選択的メチル基の導入、(2)J,K環構築後いかにしてC対称性を崩すか、
(3)L環を構築するためのC47位MPM基の選択的除去である。一番目の問題点は有 機銅試薬による計二回のMichael付加反応により解決された。種々条件を検討した結
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果、Hanessianら の手法に よるTMSC1存在下MezCuLiを 用いる条 件にて 高い選択 性で 最初 のメチル 基を導 入するこ とができ 、二度 目のメチ ル基の 導入はMe2CuLiだけ で 反応 が進行し高い選択性で導入することができた。二番目の問題点はJ,K環構築後、
TBS基 に よ り2つ の 一級 水 酸基 のうち 一方のみ を選択的 に保護 すること により 解決 された。最後の問題点はアリルアルコール体へ誘導後、Bartlettらの手法に従ったヨー ドェ ーテル化 反応を 用いるこ とによっ て解決 された。 すなわちヨードエーテル化反 応 に よ りC47位MPM基 の 除 去 と 同 時 にL環 が 立 体 選 択 的 に 構 築 さ れ、 さ ら にC51 位不 斉中心導 入に非 常に都合 の良いヨ ードヒ ドリン体 を高選択的かつ効率良く得る こと ができた 。最後 にC53ーC54位部分の合成を行いp.ケトホスホネートヘ変換し合 成が完了した。
6は2と3の 重 複 部分 で あ り、1の全合 成研究を 進めて いく上で その大量 供給は 切 実な 問題であ った。 今回D・グルコ ースを 出発原料 に用いることにし、(1)1のC31位 に相 当するメ チル基 の導入、(2) C33位 立体配置 の反転 のニ点が問題となった。C31 位メ チル基は 末端オ レフィン に対する 面選択 的な接触 還元により導入することにし たが 、このと きC33位酸素官 能基の立 体配置 が接触還 元の選 択性に大 きな影 響を与 える ことが分 かった 。すなわ ちC33位 の立体 配置が天 然物と 同じ場合 、水素 添加を 行 う と高 い 選 択性 で1と同 じ立 体配置 を有するC31位ヌ チル基 が導入さ れるの に対 して 、その逆 のでは 還元反応 の選択性 は無くC31位に ついて ジアステ レオマ ー混合 物 が 得ら れ る のみ で あ った 。C31位メチ ル基導入 後今回 は3の 合成を考 慮しべ ンジ ルアセタール体として合成した。
最後 にポリエ ーテル 部分(3)の合成 について 述べる。 筆者は当初C29位にアリル基 を 有 する 化 合 物を 用 い て3の合 成を検 討してい た。しか しなが らC29位 アリル 体で はH,I環 は 全く 構 築 され な か った 。 そ の原 因 に つい て 検討し たところG環 部分の C36位の 立 体 配置 が1とは 逆 で あり 、 さ らに ま たF/G環 部 分の 立 体 配座 も1のそ れ とは 異なって おり、 これら二 点がH,I環を構築 できない 最大の理由と推定した。そ こでC27,C38位部 分のモデ ル化合物 を用い て分子力 場計算 によりG環形成 のため の 基 質 を分 子 設 計す る こ とに した。 その結 果F環 の5つ の置換 基の内4っがaxial配置 の立 体配座と る化合 物を基質 として用 いる時 に望みと するC環が構 築できる のでは ない かと予想 された 。筆者が 合成して きた関 連化合物 の立体配座を再度調ベ直した と こ ろC29位に ア ル ル基 を 導入す る前のC29位が アノマ 一炭素で ある化合 物がそ れ に 該 当し た 。 実際 にC29位 にアノ マー炭 素を有す る基質 と7を 縮合させ た後、 分子 内Michael付 加 反 応を 行 っ たと こ ろC36位 が1と 同 じ 立体 配 置 を有 す るG環 を 構 築 する ことがで きた。G環の 構築に成 功した ので次にH,I環の 構築を行 なった ところ スピ 口ケター ル化は スムーズ に進行しH,I環が 形成され がC38位につい て約lニlの ジ ア ステ レ オ マ一 混 合 物で あ っ た。 し か しな が らC29位ベ ンジル基 を除去 した後 Wittig反応によりa.p.不飽和工ステル導いた後酸処理すると今度は完全に異性化し、
単一 生成物で スピ口 ケタール 体が得られてきた。続いて分子内Michael付加反応によ るF環の 構 築 を行 な っ たと こ ろCヨ 位 が 天然 物 と 同じ 立 体配置 を有するF環 が61% の 収 率で 構 築 され た 。 最後 に脱保 護しポ リエーテ ル部分(3)の合成 が完了 した。
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学 位論文審査の要旨 主 査 教 授 森 美和子 副 査 教 授 橋 本 俊 一 副 査 助 教授 浜田辰夫 副 査 助 教授 堀田 清
学 位 論 文 題 名
抗腫瘍活性を有する海洋性天然物ハリコンドリンB の全合成研究
―ciーC15フ ラ グ メ ン 卜 及 び ポ リ エ ― テ ル 部 分 の 立 体 選 択 的 合 成 一
本 論 文 は ハ . リ コ ン ド リ ンBの 全 合 成 研 究 に お い てCl‑C15位 部 分(4)及 び ポ リエ ー テ ル部 分 (3) の 効 率 的か つ 立 体選択 的合成研 究を行 ったもの である 。 ハ リ コ ン ド リ ンB(1) は1985年 、 ク ロ イ ソ カ イ メ ン か ら 単 離 、 構 造 決 定 さ れ ポ リ エ ー テ ル マ ク ロ リ ド 化 合 物 で 非 常 に 高 い 坑 腫 瘍活 性 を 示 しく そ の 構造 は 高 度 に 官 能 基 化 さ れ た 大 変 複 雑 な も の で あ る 。1をCl−C15位 部 分(4)、 C16―C26位 部 分(5)、C27−C36位 部 分(6)、C37―C54位 部 分(7)の4つ の フ ラ グ メ ン ト に 分 け 合 成 を 進 め る こ と に し た 。 既 に4つ の フ ラ グ メ ン ト 並 び に マ ク ロ ラ ク ト ン 部 分(2)の 合 成 は 完 了 し て る 。 今 回 申 請 者 は2の 特 徴 的 構 造 で あ るClーC15位 部 分(4)及 ぴC27‑C54位 部 分 か ら な る ポ リ エ ー テ ル 部 分(3) の 効率 的 か つ立 体 選 択的 合 成 研 究を 行 っ た。
先 ずCl‑C15位 部 分 の 合 成 を 行 っ た 。 最 初 に C環 を 構 築 し 次 にhydroxy 鹹p‐ 不 飽 和 工 ス テル を 用 いて 分 子 内Michael付加 反 応 に より2,6一trans型 の THP環 で あ るB環 と2,6−CIS型 のTHP環 で あ るA環 を 立 体 選 択 的 に 作 り 分 け た 。I冫 一 グ ル コ ー ス を 出 発 原 料 にC環 構 築 後 、C6,C7,C14位 の増 炭 、Cll位 水 酸 基 の 反 転 及 び 保 護 基 の 変 換 を 行 いB環 構 築 前 駆 体 へ と 導 い た 。B環 は 速 度 論 的 条 件 下 に 環 化 反 応 が 進 行 し 望 み の 立 体 配 置 で 構 築 さ れ た 。A環 に つ い て は 予 想 に 反 しC3位 に つ い て ジ ア ス テ レ オ マ ー 混 合 物 を 与 え がC14位 ー 級 水 酸 基 をTr基 で 保 護 し た 後 、 再 度TBAFで 処 理 す る と 平 衡 が 完 全 に ぬ 体 側 に 寄 り 望 み 高 い立 体 選 択性 で 構 築す る こ とに 成 功 した 。 最 後 にp― ケ トホ ス ホ ネ ー ト ヘ 変 換 し 合 成 が 完 了 し た 。 著 者 が 合 成 し た4を 用 い て 、 米 光 、 堀 田ら に よ り2の 合 成が 既 に 完 了し て い る。
次 に 著 者 は6と 7の 効 率 的 な 新 規 合 成 ル ー ト の 開 発 を 行 っ た 。 初 め に7 の 改 良 合 成 に つ い て 述 べ る 。 先 の 合 成 ル ー ト で はL,K,J環 の 順 に 合 成 を 進