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「高圧水素の最近の技術開発動向」(3) HYDROGENIUSプロジェクトにおける水素材料強度特性チームの成果:水素脆化の基本原理の解明:松岡三郎

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(1)

水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 特 集

D

R

O

G

E

N

I

U

S

プロジェクトにおける水素材料

強度特性チームの成果:水素脆化の基本原理の解明

松岡三郎

独立行政j去人産業総合煽情研究所水素材料先端科学研究センター 九州大学大学院工学研究院

4

紛戒工学部門 干819-0395 福岡県指岡市西区元岡744

R

e

s

e

a

r

c

h

o

f

H

y

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r

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g

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n

E

m

b

r

i

t

t

l

e

m

e

n

t

i

n

HYDROGENIUS

Saburo 1¥在ATSUOKA

Research Center for Hydrogen lndustrial U se and Storage, Advanced lndustrial Science and Technology (AIST)

Department of Mechanical Engineering Science

Graduate School of Engineering

Kyushu University 744 Motooka

Nishi-ku

Fukuoka City819回0395

Japan

Research and development of hydrogen energy systems such as fuel cell vehicles and hydrogen energy infrastructures such as hydrogen stations are advanced as one of the strong means to solve global environmental concerns. ln 2006‘HYDROG , ENIUS (the Research Center for Hvdrogen Industrial U se and

.

s

.

torage)' was founded in AIST to investigate the basic mechanism of hydrogen embrittlement and to establish the guideline of safe utilization of materials with hydrogen. ln this report

the results obtained by the Hydrogen Fatigue and Fracture Team in HYDROG ENIUS in three years between 2006 and 2008

especially the hydrogen entry properties

tensile properties and fatigue crack growth properties are reported

taking account to the clarification of the basic mechanism of hydrogen embrittlement.

Keywords: Hydrogen embrittlement

Hydrogen entry

Tensile strength

Fatigue crack growth

1

.

はじめに 地球環境問題を解決する有力な手段のーっとして、燃 料電池自動車

(

F

α

T)などの水素エネルギーシステム、 水素ステーションなどの水素エネルギーインフラの研 究開発が進められている。水素エネルギーシステム・イ ンフラに使用される構造材料は水素に曝されるため、水 素脆化が重要な課題となっている。水素脆化あるいは遅 れ泊皮壊は古くから研究されており、いまだに解決されて いない一方で、それらに関する著書凶や解説 [2-5]は多 くある。これらの中では多くの水素脆化モデルが紹介さ れているが、最近では、水素脆化メカニズムは主として 格子脆化説と局所変形助長説で説明されている

μ

6・

8

。 格子脆化説は、水素の侵入により原子問結合力が低下し、 胎性破壊が起きやすくなると考える説である

μ

6]。局部 変形助長説は、水素が塑性変形を容易にし、局所的な変 形が生じるため、結果としてマクロ的には小さい変形で 破壊すると考える説である

μ

7

8]。しかし、どちらの説 が正しし1かについては、現在でも決着がついていなし¥0 そこで、水素脆化の基本メカニズム解明と使用材料の実 用的な安全

f

旨針の確立を目的に、 (独)産業技術総合研 究 所 に2

6年 、 水 素 材 料 先 端 科 学 研 究 セ ン タ ー (Re配紅ch

C

e

nter伽 H吋m配n

I

n

du組目1Use and sωm伊;HYDROGENIUS)が設立された[1]。

材高では、水素脆化の基本メカニズムの解明を念頭に 置いて、 HYDROGENIUSの水素材料強度特性チームで

(2)

-11-水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 集 SUS316Lに関する結果を示す。文献[9]に記載されてい る

H

2

ガス曝露条件は、圧力が11.3'"'"'45MPa、温度が358K 及び'473K、時間が240h及び1

αXlhである。試験片は直 径4 m mの丸棒で、あるが、直径2mmと3mmの丸棒も一 部イ吏用している。 熱平衡状態にあるときの固溶水素量

α

は、次式の Sieverts

f

J

.

jlで、表される。 特 ここで、

P

H

2

ガス圧力、戸はO.lMPa(1気圧)、

i

J

H

s

は 溶解熱、iJSは溶解のエントロビーである。式(1)のよう な関係(Arrheniusフ。ロット)を調べる場合、多くの研究 では、

.

r

P'e却(-1αYJlT)を使用する。そこで、図1では横 軸に

.

r

P'e柄:""1αYJlT)を採用した。低合金銅SCM.必0及 びオーステナイト系ステンレス鋼SUS304L、 SUS316、 SUS316LにおけるQ と

.

r

P・叫(-l(XX)IT)の開系は、どち らも畠線となっている。

.

r

P・0

1αYJlT)の同じ値に対 しては、侵入する水素量は、低合金鋼よりオーステナイ ト系ステンレス鋼の方が1桁以上多い。

J

ーP・臼申(-1αX'JIT) のパラメーターの採用は熱平衡状態を前提としている。 上述の曝露温度と曝露時間、試験片直径から判断して、 オーステナイト系ステンレス鋼と比べて水素拡散係数 が3'"'"'4桁大きいSCM必O鋼は熱平衡状態にある。一方、 水素拡散係数が低いオーステナイト系ステンレス鋼は 熱平衡状態にあるか否かは不明であるが、熱平衡伏態に 達していないと考えると、図1(b)に示すものより更に多 くの水素が侵入するO 、l / 噌 E よ / ・ 1 CH=

押 戸 吋

:

-

(

i

J

HjR

)

+

(

J

i

S

j

R

)

]

2C附年度から2

8年度の3ヶ年で、得た成果の一端を、侵 入水素、引張強度及ひ液労き裂進展に分けて紹介する。 前章で述べたように、水素脆化メカニズムは現在で、も 解明されていない。この原因の一端は、水素が元素の中 で最も軽くて小さいため、今まで材料中の水素の定量が で、きなかったこと、そして材料中の水素の前主位置が観 察で、きなかったことによる。最近、昇温脱離分析法の進 歩により材料中の水素量が測定で、きるようになった。 図1は、材料中の侵入水素量について、新エネルギー・ 産業技術総合開発機構 (NEDO)の報告書酬に記載さ れている数値データをSieverts

f

J

.

jlにしたがって図示した ものである[10]。この報告書には、 35MPaの圧力を中心 とした高圧

H

2

ガス中において、オーステナイト系ステン レス鋼 (SUS304、SUS304L、 SUS316、SUS316L、 SUS316LN、SUS310S、SU

S

6

30) 、アルミニウム合金 (側1叩)、銅合金 (C771) 、低合金鋼 (SCM必0) の引張特性、疲労特性及ひ泳素侵入特性を調べた結果が 記載されている。図 1(a)~こ低合金鋼 SCM必O、図 1(b)~こオ ーステナイト系ステンレス鋼 SUS加4L、 SUS316、 侵入水素量

2

.

1.0 5 トTempered-martensiticsteels ~ 0.8~ 0 SCM440 u Ji0.6 ロ <u 504 ロ <u ~ 0.2 4ヨ 〉、 出 。 HYDROGENIUSでは、最高

H

2

圧力が1

MPa、最高 温度が573Kと393KIの仕様で、ある2台の高圧

H

2

ガス曝露 容器、ならびに四重極質量分析方式 (τDS) とガスクロ マトグラフィ一方式 (τDA) の2台の昇温脱離分析装置 を配備し、高圧

H

2

ガス中で侵入する水素量を測定してい 。 0 o 0 CrO.539( 〆~PX 田p(ー 1000/ 7))+0.100 0.2 0.4 0.6 0.8 〆rpXexp(ー1000/1) ωSCM必O 併 0 る。 図2は、新たに開発した材料中の水素測定法の結果で、 ある[11]。板厚hを変えた直径7mmの円盤を高圧

H

2

ガス に曝露し、水素量を測定する。図2には、縦軸に水素量 命、横軸に板厚の逆数1Jhをとり、 SUS316Lについて示 している。

ν

h

が小さい、すなわち、板が厚いときには材 料内部まで水素が侵入しないので

C

Hは小さい。

ν

h

が大 きくなり、材料表面から内部まで水素がほぼ均一に侵入 すると、。fは飽和する。図2の勾配部分から水素拡散係 数、飽和値から水素回溶度が求まる。現在は、オーステ 侵入水素量とSievertsパラメーターの関係 -一 8 い ﹂ 0 η 一 m -一

6

m

h ﹂ 仏 M M A ﹂

m

, q 一 4 m T . H ﹂ 、 J 日 し V C 一 ( × D / 司 4 n U 80Sω4、808316、8OS316L

Austenitic stainless steels o SUS304L ロSUS316 o SUS316L

0

工 (b) 60 E

_

e

:

50 U^. 40 ιn 530 口

~ 20 <u

2

1

0

〉、 出 図1.

(3)

水素エネルギーシステムVo1.34,No.4 (2009) ナイト系ステンレス鋼、低合錨岡、炭素鋼における固溶 水素量と水素拡散速度のH2ガス圧力と温度に対する依 存性(Arrheniusフ。ロット、図1参照)を系統的に集積し ている。すなわち、固溶水素量と水素拡散速度のデータ ベースを構築している。 Sllecimen thickn総事,1I(m叫 2 1 0.8 0.6 OA 02 120 言 │皇盟主L c:. Q. '100 Hvdroaen elQJOSU問conditions 78 tvPat110ocハ00h 2 3 4 5 6 7 l/h 図2. 侵入水素量と制斗板厚の関係

3

.

引張強度 3.1. NASAデータベース

NASAのSa島全yS旬n白 川 ofHydrogen and Hydrogen Systems [12]には、 69

:

M

P

a、295KIのfuガス中で求めた 種々の材料の引張特性が2つの表 (TableA5.8とA5.9)に まとめられている。 TableA5.8においては、 H2ガス中と Heガス中の切欠き試験片の引張強度と平滑試験片の絞 りを判断基準とし、材料の脆化の度合いについて、極端 に脆化する"島由-emelyembrittlOO'、脆化する"Seve

J

y

embri凶ed"、少し脆化する"Slightlyembri凶00'、脆化 しない"Ne

g

1

i

g

i

b

lyembri枕100'への分類を行ってし、る。" Ne

g

1

i

g

i

b

lyembrittlOO'グループ。

l

こは、 H2ガス中で切欠き 試験片の引張強度と平滑試験片の絞りがどちらも低下 しない材料を分類している。 図3及び図4は、このNASAのTablesA5.8とA5.9の元に なった文献 [13・15]に掲載されている数値データを元に 作図されたもの[10]である。文献[13・15]に記載されてい る引張詐験条件において、H2とHeのガス圧力と温度はい ずれも69

:

M

P

aと295Kである。歪み速度は、平滑詞験片 の場合には、弾性変形域でO.

12mirピ1(3.3X 10'58-1) 、 塑性変形域で0.04

n

r

i

n

.

-

1 (6.7X1048-1)である。図3は 平滑試験片に関して得られた引張強度を示す。縦軸には Heガス中の引張強度に対するH2ガス中の引張強度の比 σ,B回'/O"B,He、横軸にはHeガス中の引張強度O"B品を採用し 特 集 ている。以後、 σB.H2/O"B.民を相対引張強度と呼ぶ。図3 によると、平滑試験片の場合、 Heガス中の引張強度が 1

2

Mぬまで、は、相対引張強度O"BH2/σB胎は水素と材 料の影響を受けない。すなわち、 σB.H2/σE胎=1である。 Heガス中の引張強度が1

2

∞:MP

aを超えると、相対引張 強度は水素の影響を受け、低下する。一方、図4は、 He ガス中の絞りに対するH2ガス中の絞りの比めa/加島につ いて、図3の引張強度の場合と同様にまとめたものであ る。以後、

o

m /伊崎を相対絞りと呼ぶ。図4によると、絞 りに及ぼす水素の影響は引張強度の場合と異なる。オー ステナイト系ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金 の相対絞り

O

H2/神品は水素の影響を受けず、

O

H2/神崎 =1 である。一方、炭素鋼、低合金鋼、チタン合金、ニッケ ル合金の相対絞りは水素の影響を受け、

O

H2/

O

l

をく1とな る。そして、相対絞りは、 Heガス中の引張強度が増加す るにしたがって低下する。相対引張強度(図3) 及び相 対絞り(図4) がともに低下しないオーステナイト系ス テンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金は、NASAのTable A5.8では、"Ne

g

1

i

g

i

b

lyembrittled"グループに属する。 上述のNASA,の高圧H2ガス中引張試験で、は、 H2ガス中 における試験片装着から試験開始までの保持時間をほ ぼゼ、ロとしている。この時開設定の根拠は、オーステナ イト系ステンレス鋼飢JS310、炭素鋼A-302Gr.C、チタ ン合金Ti-6Al-4Vの焼鈍材と時効材を用いて保持時間を ほぼ0、1、8及び24hとした引張試験を行い、保持時間は 引 張 強 度 と 絞 り に 影 響 を 及 ぼ さ な か っ た と の 報 告 [13・15]による。しかし、 295K,の下で保持時間をゼ、ロと した場合、試験片表面と内部の水素量は異なる。特に、 水素拡散速度が遅いオーステナイト系ステンレス鋼で は、295K下では24hを経過しでも水素は詞験片表面から 数四nまで、しか侵入していない。このように、前験片中の 水素分布が均一で、ない状態では、引張特性に及ぼす水素 の影響がバルク特性として評価できるか否かは不明で ある。そこで、 HYDROGENIUSでは、試験片中の水素 分布をほぼ均一にするため、試験片に予め水素をチャー ジする方法(高圧H2ガス曝露、浸漬水素チャージ、電解 水素チャージ)を採用した。特に、オーステナイト系ス テンレス鋼に対しては、水素拡散係数を大きくするため にH2ガス曝露温度を673K付近に設定し、水素チャージ 後、室温大気中で、引張試験を行っている。この引張試験 と並行して、水素量測定用の試験片を作製し、

τDS

また は

τDA

を用いて侵入水素量を測定している。また、引張

(4)

-13-水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 集 で、放出される水素は拡散'↑!

7

k

素で、あり、水素脆化を引き 起こす原因となる。図 5~こ示されるプロファイルの下側 の面積は、

NH4SCN

水 溶j夜浸演で吉岡中に侵入した拡散性 水素量に相当する。図

m

こ、侵入した拡散d↑生水素量

C

I-Iと

NH4SCN

水樹夜浸演時間tの関係を示す [10]。侵入水素 量は多少ぱらついているが、 12hの浸演でほぼ飽和して いるように見える。このことは、直径5mmの丸棒を12h 以上浸漬すると水素量は丸棒表面と中心で同じになり、 ほぼ均一な分布になることを意味している。そこで、直 径5mmの14A号丸棒引張詞験片に対して、48hの浸演の 後、大気中で、引張試験を行った。試験片中の水素量を変 えるため、 48hの浸演を経た試験片を、大気中に1hか ら3

h放置した。引張試験後の全ての試験片に関して、

TDA

より測定された残留水素量を

C

,RH とする。 特 破壊した全ての試験片における残留水素量も測定して 2500 d主 1500 2000 σB,He orCJB,Air[MPa] @ 本ト V A @ u× d邑 一 上 1000 -ガス用鋼管 O炭素鋼 @ 低 合 金 銅 !:,.A系ステンレスj;[il

z

F系ステンレス釧 M系ステンレス銅 口 銅 合 金 銅 く〉アルミ合金銅 +チタン合金銅 ×ニッケル合金銅 よ 500 いる。 h b ?10

令。匂位向

0.5ト

が 。

0 0 0

同 0.02

E

0.. 0.. ω ro 1-< Q) お0.01 Q) ω L・4 ロQ) bl)

4

〉、 出 相対引張強度と

He

中または大気中引張強度の関係 -ガス)fJJf,IIi' O炭表制 @ f氏合金銅 ムA系ステンレス銅 マF系ステンレス銅 企M系ステンレスWI 口 銅 合 金 銅 一 <>アルミ合金制 +チタン合金i1lI ×ニッケル合金銅 十 -b. 図3. -9 @ @

w

AAa'LVV4 氷 川 v x i γ 目 。 柑 × c ト I L l - ﹁ L l L l L I L -- ﹁ │ ﹁ │

戸 、

d ハ U

戸 、

d 1 1 A U

L

Q

R

S

¥

R

S

H

¥ h

0 0 0

2500 ×

× @ . ι 1500 2000 CJB,He orσI3,Air[MPa] ーよ-500 が 。 100 200 300 400 500 600 700 800 Tempera加re/K

SCM435鋼の水素放出温度プロファイル ー ー

E

0.. 0..0.8卜

C

J

~

0 ぜ 0.6ト ω 口

0.4ト ロQ) bl)

担 0.2ト 〉、 出 図5. 相対絞りと

He

中または大気中引張強度の関係 水素ステーション蓄圧器用低合金鋼

S

4

3

5

水素ステーション蓄圧器で使用されている低合金鋼 SCM435 (引張強度Os

=

927l¥1Pa、焼き戻しマルテンサ イト系@織)における侵入水素量を

τDA

で、測定した[10]。 水素量測定に供した丸棒(直径5mm、長さ5Omm)は、 実際の蓄圧器(外径315m m、厚さ35m mの中空円筒) から切り出し、 313K~こ保持した20mass%チオシアン酸 アンモニウム

(

N

H

4

S

C

N

)

水樹夜に浸潰し、水素をチャ 24及び:48hで 図4. 3.2. ー ある。 図5は、 48h浸漬した丸棒より得られた、温度と放出水 素量の関係を示すプロファイルで、ある。放出水素量は温 度が測定開始の室温 (298K)から上昇するとともに増 加し、ほぼ350Kでピークを迎えた後、ほぼ'450Kでゼロ となる。 T:泊四とWatanuki[16]によると、 60 10 20 30 40 50

C

h

a

r

g

i

n

g

t

i

m

e

t /

h

ージしたものである。浸漬時間は6、12、 図6.SCM435鋼の侵入水素量と水素チャージ時間の関係 図7に、 SCM435鋼の相対引張強度σB.H2/のと相対絞 り伽〆/加。の残留水素量

C

,HRに対する関係を示す[10]。 この温度範囲

(5)

水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 特 集 C,HRは0.14""'"'0.93ppm の間で、変化しているが、内沼/の 両材ともに垂直応力破壊域(図9)であるか努断応力破 = 1.0で一定である。したがって、引張強度が930l¥t1Paで、 壊域であるかに関わらず、破面は直径約1凶nの小さなデ ある SCM435鋼においては、 0.14""'"'0.93ppmの拡散'↑生水 ィンフ。ルで、覆われていた。 素量は引張強度に影響を与えない。一方、相対絞りは最 小のC,R=0.14ppmH で、も

o

HY

=1とならず、C,HRが増え るにしたがって瓦線的に低下している。したがって、引 張強度930l¥t1PaのSCM435鋼の絞りは、 0.14""'"'0.93ppm の拡散↑封ぇ素量によって低下する。 c ! コ b 1 .2 σi3,H/uB=1 1 .0トーす一一---"Q)--一三5---0-&-喝ー 0.8 :r:_ 0.6 f司 b

lLmin

J

0.4 0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 Residual hydrogen content, CH.R / ppm (a) 相対引張強度 1 .2

th= I h 1.0ト

1

0

V= I mmlmin 0.8

0.6 0.4 0.2

o

0.2 0.4 0.6 0.8 I Residual hydrogen c

tent, C,R / H ppm (b) 相対絞り 図7. SCM435鋼の相対強度または相対絞りと残留拡 散↑生水素の闘系 図8に、 SCM435鋼の未チャージ材と水素チャージ材 の引張破壊破面の

S

El¥1像を示す[10]。両材ともに、カッ プ0・アンド・コーン破壊している。すなわち、破壊した試 験片の中央部には試験片軸に対して全体的にほぼgooを なす面からなる垂直応力破壊域が形成され、周辺部には 試験片軸に対してほぼ450の勇断応力破壊域が形成され ている。図8で最も特徴的なことは、両材の垂直応力破 壊域はほぼ同じ広さであるが、水素チャージ材の勢断応 力破壊域の方が未チャージ材より広いことである。また、 (a) 未チャー刈オ (b) 水素チャー刈オ 白R=Oppm 白R=0.73ppm 図8. SCM435鋼の引張破面 (a) 未チャ一対オ (b)水素チャージ材 白R=Oppm 白R=0.73ppm 図9. SCM435鋼の引蹄皮面垂直応力破壊域のデ、インフ。 ル(クロスヘッド速度

V

=

1 mmlmin. ) 図10に、図7(b)の絞りと図8と図9のSEl¥1像を基に作成 した、引張破壊した未チャージ材と水素チャージ材の縦 割り断面の模式図をそれぞれ示す。両材はともにカップ・ アンド・コーン破壊し、垂直応力破壊域と勢断応力破壊域 にはともに小さなディンフ。ルが形成される。しかし、垂 直応力破壊域は両材とも同じ広さであるが、勇断応力破 壊域は水素チャージ材の方が広い。このことは、水素は 英断破壊域の形成に影響することを示唆している。勢断 応力破壊域が広くなるためには、試験片がくびれる過程 において勇断応力によるすべり変形が水素により助長 され、勇断応力破壊が起こりやすくなることが必要とな る。したがって、水素を事前にチャージしたSCM435鋼 に対しての室温大気中での引張試験において、水素で 一

(6)

15-集 特 水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 図

1

2

に、相対絞り

o

J-12/令。と残留拡散性水素量

C

,HRの関 係を示す。水素は引張強度には影響を及ぼさないが、絞 りを低下させる。Sαω5鋼とSGP鋼の組織を比べると、 SCM,必5鋼は焼き戻しマルテンサイト、SGP鋼はフェラ イト・パーライ トより構成されている。引張強度はSGP 鋼の方が低く、約四である。SCM,必5鋼では、焼き戻し 状態で水素トラップサイトになる転位と炭化物が多く 存在するので、焼き戻しのままでも水素量は約0.9ppm であり(図

6

)

、このときの

o

ν

み。は約

0

.

7

となっている (図7(b))。一方、 SG践岡においては、熱間圧延焼鈍) のままでは転位が少ないので、予歪みを与えて転位を増 やし、水素量を多くしている。 20%>の予歪みで水素量は 約1ppmになり(図11)、このときのめ

a/

o

。比約0.8とな っている(図

1

2

)

。このような水素侵入特性や相対絞り の違いに加え、引蹄皮面のディンプルにもSCM,必5鋼と SGP鋼で違いがある。 りが低下する現象、すなわち水素脆化は、格子脆化説で なく局所変形助長説で説明できる。換言すると、水素脆 化は格子脆化による胎性破壊でなく、局所変形助長によ るミクロ延性破壊で、ある。 Shear st問S5 fracture (a)未チャー刈オ (b) 水素チャージ材 SCM必5鋼の引張破面縦断面の模式図

'

a

'

1

0

.

o

0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 Residual hydrogencor州 立C臥(ppm) SGP鋼の相対絞りと残留水素量の関係

.

u

nch省 酔d

-

..

12

e

-

c

l

l 0: 伺

ι. ご08 0 c g06 2 ・0 :04 b

=

02 凶 SGP鋼の未チャージ材と水素チャージ材の引張破壊 も、

s

α

4

5

鋼の場合と同様、カップ・アンド・コーン破 壊で、あった。図13に、 SGP鋼の垂直応力破壊域でのディ ンプルを示す。SCM435鋼では、直径約1凶nの小さなデ インプルが形成されていたが(図9)、SGP鋼では直径 約

10μn

の大きなデ、インプルが介在物を起点として形成 されている。また、関

P

鋼のディンプル直径は未チャー ジ材より水素チャ一対オで、大きくなっている。この原因 を調べるため、引関皮壊試験片の縦断面を観察した。 図14に、SGP鋼の引張破壊試験片縦新面で観察された ボイドを示す。引張荷重軸方向は上下方向である。未チ ャージ材では、荷重軸方向に伸張した通常のボイドが形 成されている。一方、水素チャ一、対オで、は、ボイドが荷 図

1

2

.

3.3. 水素パイプライン用炭素鍋

W

図11から図15に、水素パイプライン候補許オ料の配管用 炭素鋼鋼管SGP

(

0

.

0

7

8C

-

{

)

.

0

1

S

i

-

{

)

.

3

4

M

n

-

D

.

0

1

7P-O

α

.

勝 ma部%、何=416MPa)より得られた水素分析結果とヲ│ 張試験結果を示す[1寸。上述の飲

M

必5鋼の場合と同様 に、 313Kに保持した20mass%のNRsCN水翻夜に春敬 片を48h浸漬することによる水素チャージを行った。 SGP鋼では更に、鋼中の水素量を増やすため、試験片に 予歪みを与えた。水素量は昇温

1

瓶佐分析装置 (TDS) に より測定した。 図11は、SGP鋼における引張試験後の試験片中の残留 拡散性水素量と予歪みの関係である。ここで拡散性水素 量は、昇温水素放出プロファイルで、室温から673Kまで の水素量とした。残留水素量は予歪みが大きくなるほど 多くなる。この現象は、予歪みによって増加した転位が 水素をトラップするために起こる。 25 SGP鋼の残留水素量と予歪みの関係 ロ 10 15 20 Prestrain(%) ロ 旺 4 2 0

4

ト 叶

ト 沖

昔 ,

t i t -2 1 A U A U A U A U

( g m

丘 一 ) 吉 ω 吉

8

5

-M 玄 ﹄ -S 2 8 凶 5

1

1

.

(7)

集 特 水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 図15に、ボイドの発生、成長及び合体を模式的に示す。 図左に示す未チャージ材では、ボイドは介在物を起点と して発生する。引張歪みが大きくなるにつれて、ボイド は荷重軸方向に成長する。最終的にボイド間のネッキン グでボイドは合体する。一方、水素チャージ材のボイド の発生、成長及び合体を考える上でのキーポイントは、 水素が応力集中部ハ集中すること、集中した水素が局所 すべりを助長することである。図15の右に示すように、 介在物周辺の応力集中部に拡散してきた水素は局所す べり変形を助長し、ボイド発生を速める。実際、引張破 壊試験片縦断面で単位面積当たりのボイド個数と真歪 みの関係を調べることによって、水素はボ、イド発生を速 めることを確認している[17]。次に、ボイド先端に集中 した水素はボ、イド先端での局所すべり変形を助長し、ボ イドは荷重軸に垂直方向に成長する。更に、水素はボイ ド聞の努断変形(すべり)を助長し、合体を容易にする。 その結果、絞りは水素チャージ材で、悪化する(図12)。 重軸に垂直な方向に成長するという、驚くべき現象が観 察された。 (a)未チャージ材,CIiR

=

0.01 ppm 10μm H : H : H Nucleltion lUnch叩 dl

1

Jlx

10μm H (b) 水素チャージ材,CIiR=0.71ppm H H}~詩H H

惨§コ議

H h , //ぶ H

H

会 H 吋 H H H Growth

/

X

SGP鋼の引蹄皮面垂直応力破壊域のデ、インプル ' f S 轟 * a ・

図13. COllescence

SGP

鋼のボイド成長の模式図 以上で述べたように、低合金鋼SCM435と炭素鋼SGP において、絞りが低下する現象、すなわち水素脆化は格 子脆化説でなく、局所変形助長説で説明できる。換言す ると、水素脆化は格子脆化による脆性破壊で、なく、局所 変形助長によるミクロ延性破壊で、あると結論できる。も う1つの水素パイプライン候補材料である配管用炭素鋼 鋼管STPG370[18]と水素エネルギーシステム・インフラ で多く使用されているオーステナイト系ステンレス鋼 -17-図15. (a)未チャ一対オ,CIiR=O.Olppm (b) 水素チャージ材,CIiR = 0.71 ppm 関P鋼の引開皮面総折面のボイド 図14.

(8)

水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 集 平滑試験片(図16(心)では、水素チャージ材の疲労寿命 は試験速度に関係無く未チャージ材-の結果とほぼ一致 し、水素の影響はみられない。一方、切欠き材(図16(b)) では、未チャ一対yjと比較して水素チャージ材の疲労寿 命は試験l速度

f

が30Hzから0.2Hzと遅くなるほど短く なり、最大1桁程度の低下で飽和している。切欠き試験 片では平滑試験片に比べてき裂発生寿命が短くなるた め、水素による疲労寿命低下はき裂進展寿命の差に関連 していることになる。 図17は、同じS45C鋼焼き戻し材における、 R=-lで の疲労き裂進展速度

da/

めfと応力拡大係数範囲 A (の 関係である [32]。未チャージ材に比べ、水素チャージ材 のき裂進展速度は加速している。したがって、水素エネ ルギーシステム・インフラの安全性を確保するためには、 まず水素による疲労き裂進展の加速メカニズムの解明 が必要といえる。 特 SUS316L [19]においても、同様な結論が得られている。 しかし、絞りを低下させる要因は、 sτPG370鋼で、はパー ライト割れ、 SUS316Lではボイドシートで、あったO 疲労き裂進展メカニズム 疲労き裂発生と疲労き裂進展 破壊事故の

80%

は疲労破壊に関係すると言われてい る。したがって、水素エネルギーシステム・インフラの 安全性・信頼性を確保するためには、疲労に及ぼす水素 の影響を明らかにしなければならない。しかしながら、 水素環境下で、の疲労に関する研究例は少ない包0・32]0 図16は、炭素鋼S45Cの823K焼き戻し材の平滑試験片 と切欠き言九験片で、応力比R=Oj,rW

llIn=-lの下に得ら れたS-N特性である白2]。水素チャージは313K~こ保つ m部s%のNH4SCN水溶j夜中lこ48h浸漬することに このときの飽和水素量は約1.2ppmで、あったO

4

.

4

.

1

た20 より行し¥ ー ー

V 0

4 s O d z p H 川 、 O N 3 d -1 0 T ω F R 崎 川 町 山 r z h 口 町 M d 沢 川 ボ U M E @ L O k l F E L l L E ﹂ t b -d 細川 守 F コ r O 司 f n U A U A U n u n U ( u -u h υ E E ) Z 雪国℃ I -Iydrogen. charged ();2I-1z &;0.2I-1z マ;0.02I-1z S45C Sl1100thed specil11en Uniaxalload, R=目l 1.

0

@

3 0.71 (ma岱ppm) 0.42 軍)L 0.91 0.56 司 丘4

6

700 吋 b (l) ] 600 a喝 呂 田 ~ 500 ~ I Ur凶arg巴d r / l ← 0;51-1z 800 ー 5 10 s K (MPa・111112) 10-8

104 105 Number of cycles to failure, Nf 400、 10J 図17. 823Kで焼き戻した炭素鋼S45Cの疲労き裂進 展特性

(

R=

-

1

)

(a) 丸棒平滑試験片 水素パイプライン用炭素鋼 SGP 図18に、 10%の予歪みを与えた回PG鋼の疲労き裂試 験 (R=O)で得られたき裂先端のすべりをレプリカ法で 観察した結果を示す[31]。水素チャージは、 20m部妙。の NH4SCN水溶液への浸漬により行った。図 10において、 水素チャー汚れこおけるボ、イドの発生、成長及び合体を 4.2. 500, S45C Notched specil11en(Kt=3.7) Uniaxalload, R=ーl Uncharged

;301-lz

0.

.

95 (mass目ppm)

• 0 0.99

0.89 国 企4 5400 b 3300 p , ~ ~ I-Iydrogen伽 ged ~ 200~ ・ ;30Hz 出 ( );L口Z め l 企・0.2Hz │ マ:0.02Hz 100'内 IOJ 0.92

'

"

() 0.23 0.70

"

'

"

0.71 考える上でのキーポイントは、水素が応力集中奇十集中 すること、集中した水素が局所すべり変形を助長するこ とであると述べたが、ここでも未チャー冷オにおいては 疲労き裂周辺の広い範囲ですべりが観察されるが、水素 チャージ材おいては試験周波数0.01Hzで、はほとんど観 察されていなし¥すなわち、疲労き裂先端においては水 止 104 105 NUl11ber ofcycles to fai1ure, Nf (b) 丸棒切欠き試験片的=3.7) 図16. 823Kで焼き戻した炭素鋼S45Cの未チャージ 材と水素チャ一、河オのS-N特J性 (R=-l)

(9)

集 特 水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 図20に、 SGP鋼における基準化された疲労き裂進展速 度と試験周波数の関係を示す。き裂進展速度

d

a

/

dNに は、レプリカ法で求めた速度とストライエーション幅の 両方が含まれている。未チャージ材では基準化されたき 裂進展速度は試験周波数に依存せず、 一定である。未チ ャージ材に比べ、水素チャージ材で、はき裂進展速度は/ 豆1U'JHzで加速し、約1備で飽和しているこのことは、 水素による疲労き裂進展の加速には上限値が存在する ことを意味している。 素の存在によりすべりが局在化していることがわかる。 図19に、SGP鋼の疲労破面のストライエーションを示 す。未チャージ材で、は、典型的な延性ストライエーショ ンが形成されている。一方、水素チャージ材で、は、スト ライエーションは平坦で、境界が不鮮明である。更に、 ストライエーション幅は未チャージ材に比べて水素チ ャージ材で、約10倍広い。 ' 10-1

I

O

Z

10・11 10・q (a) 未チャージ材 図20.SGP鋼における基準化された疲労き裂進展速 度と試験周波数の関係 (b)水素チャージ材 ~= 45.5 MPa, R = 0,α= 12.65 m m, CH = 1.1 ppm SGP銅の疲労き裂周辺のすべり 水素による疲労き裂進展加速メカニズ、ムを調べるた め、疲労き裂進展試験後に1.5倍の過大荷重を負荷してス トレッチゾーンを形成する試験を行い、試験後に破面を 少しずつ傾けて、き裂先端のストレッチゾーンを観察し た。図21に、ストレッチゾーン幅

SZW

rと破面の傾け角度 θの関係を示す。傾け角度が00のとき、破面を真上から 観察していることになる。未チャージ材のストレッチゾ ーン幅は傾け角度250で最大になるのに対し、水素チャー ジ材のストレッチゾーン幅は00で、最大になっている のことは、未チャージで、はき裂先端は開口しているのに 対し、水素チャージ材のき裂先端は開口せず、鋭いまま であることを示している。 図22~ こ、き裂先端のすべり、ストライエーション、ス トレッチゾーンの観察結果を基に作成した疲労き裂進 展の模式図を示す。図(心の未チャージ材で、は、今までに 提案されているモデ、ル[33]に示されているように、応力 図18. (a) 未チャージ材 LlK=87MPa・m1f2R=O

f

=

0.1 HzC H =Oppm 、~降 、ーー Striation

10-9 r

:

=-~,宝

田ー圃.L

5

3

通出

10・310-1 10・1 100 101 Test frequency, f (Hz) Hydrogen charged /::, Replica(LlK=80-81 M Pa.Jin) o Striation(LlK=45-97M Pa. 1"111) ー丑 .-SZWT.max (Klllax= 138M Pa' ..[ill) Uncharged 企 Replica(LlK=79・80MPa.Jill)

Striation(LlK=44・9IMPa..fnl)

-

"-SZWT.lllax(Klllax= 137M Pa. ..[in) -19 -(b)水素チャージ材

L

l

K

=

85MPa.m,2f1R= O

f

=

O.

1

H

z

CH = 0.98 ppm SG時岡のストライエーション 図19.

(10)

集 特 水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 水素ステーション蓄圧器用低合金銅8CM435でも、水 素によって疲労き裂先端で、すべりが局在化し、水素によ る疲労き裂進展加速に上限値が存在する包9]。オーステ ナイト系ステンレス鋼

8

U

8

3

0

4

S

U

8

3

1

6

、飢

J

8

3

1

6

L

で も、水素によって疲労き裂先端で、すべりが局在化し、水 素によって疲労き裂進展速度は加速する包7

30]。オース テナイト系ステンレス鋼の水素による疲労き裂進展加 速では、き裂先端での加工誘起マルテンサイト変態が重 要な役割を果たす包7,30]。 負荷過程でき裂先端は開口し、最大応力のときにストレ ッチゾーン幅 5ZWFが形成される。除荷過程においては 逆すべりが起こり、き裂は閉口していき、最終的にスト ライエーションが形成される。その結果、ストライエー ション幅 s~主SZWFよりも小さくなる。一方、図(b)の水素 チャージ材では、き裂先端で集中した水素によってすべ りが局在化するため、応力負荷過程においてもき裂先端 は大きく開口せず、き裂協継続的に前に進展する。最大 応力においてもき裂は関口していないので、除荷過程で 逆すべり量はほとんど起こらない。この結果、 sは5ZWF とほぼ等しくなり、水素によって疲労き裂進展は約

1

0

1

音 加速する(図20) と考えられる。我々は、このような水 素による疲労き裂進展挙動を「水素助長疲労き裂進展継

続前進 (H)Ti也ugenEr伽Jad8uα悶 veFa匂ueαack

Gro吋~ HESFCG)機構」と名付けている刷 。本樹蕎 は、引張破壊の場合と同様に、水素脆化が格子脆化によ る脆性破壊でなく、すべりの局在化によるミクロ延性破 壊であることを示している。 中村ら[43]は種々の材料に関してストライエーション 幅sとストレッチゾーン幅5ZWrの関係を調べ、材料によ らず5ZWrはsの約1

0

1

音になると報告している。この値は 水素による疲労き裂進展加速の上限値(水素チャ一、対オ の

da/

dNは未チャージ材の約10倍(図20))と一致して いる。すなわち、水素による疲労き裂進展加速の上限値 はs値と一致する。この上関直が相生することは、強度 設計上極めて重要である。また、このことは民雰閤気に 曝される機械・構造物でのいわゆる水素脆化に対して、 安全な疲労強度設計指針を確立する根拠となり得る。 (b) 水素チャージ材 疲労き裂進展モデル

図22. ① ⑤ (a) 未チャージ材 〉 吟

-

J

② ③ ④

4

.

3

.

内部水素と外部水素 今まで述べた引張試験と疲労試験は、試験片を 20 ma鎚%のNILSCN水協夜に浸潰するなどして、寺境倹片に 予め水素をチャージして行った。予めチャージされ、特 性に影響を与える水素を内部水素と呼ぶ。一方、水素ス テーション蓄圧器や水素パイプラインは直接民ガスに 曝されるので、民ガスから材料中に水素が侵入する。部 品や部材の使用中に民ガスのような周辺の環境から材 料中に侵入し、特性に影響を与える水素を外部水素と呼ぶ。 Striation /、台S.ZWT._mÞ~ ・~~charg~ld . ~ ~~. ~ r-

J

l

θ

ト.

.

.

.

.

.

.

.

.

j

(Oppm,らu=137MPa'Jm) . I寸 V Y """"'_I OHydrogen charged (1.1ppm, K~lax=138M P

~10

0 10 20 30 40 50 Inc:lination anglc offradurcIiUrfa~c

e

[0]

SGP

鋼のストレッチゾーン幅と破面傾斜角の 関係 40

0

.

0

u

.

30

2

20 N ~ 10 図21.

(11)

水素エネルギーシステムVo1.34,No.4(2009) 図23に、

fu

ガス中で、得た溶接構造用炭素鋼鈷在490Bの 疲労き裂進展速度の加速比(お/叫n/I(伽/制zを試験 周波数/に対して示す[35]0(daI/ dN

k

H2

ガス中のき裂 進展速度、

(

d

a

/

dN)置は大気中のき裂進展速度である。 実験条件は

f

u

ガス圧力p=O.l、0

0.7:MPa(絶対圧)、 LlK= 24"'31:MPa. m四で、ある。SM490Bの絶織はフェライ ト・パーライト、引張強度は530:MPaで、ある。SGP鋼の 系邸哉はフェライト・パーライト、引張強度は416:MPa、で ある。したがって、白.1490とSGPは同等の炭素鋼とみな すことができる。 図23に示すように

fu

ガス中で得られたSM490Bの疲 労き裂進展速度はf=5Hzで、はやや低いが、f=O.lHzと1 Hzで、はほぼ等しい。すなわち、外部水素による疲労き裂 進展加速の上限値は

f

豆 1Hzで、得られ、大気中のき裂進 展速度に比べ約加倍である。これに対して、 SG践岡にお ける水素チャージ、すなわち内部水素の場合、上限値は

f

豆O.OlHzで、達成され(図20) 、約10'"初倍である。し たがって、炭素鋼の場合、内部水素と外部水素よる疲労 き裂進展加速の上限値は等しし、が、上限値が達成される 試験周波数は大きく異なり、外部水素の方が1∞倍も速 いといえる。 102LI T E I I I V I I I V F T『 ~ SM490B, Inhydroge,nR = 0.1

t

r

i

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.

101ト

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8

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e

ー ー !!J(= 24""-'31MPa • m1/2

^

I

Symbols are shown in Fig.5

10U ト一一一一一-10-1 100 Frequency ,f[Hz] ム υ 1 i Ina汀atroom temperature +:R= 0.1,/= 5 Hz 図23.SM490B鋼の

fu

ガス中の疲労き裂進展加速と試験 周波数の関係 図24は0.7:MPaの

fu

ガス中で、 f=0.1 Hzで、得られた SM490B鋼のストライエーションである。ストライエー 特 集 ションは平坦で、その境界は不鮮明であり、図19のSGP 鋼の水素チャージ材のストライエーションとほとんど 同じ鞘教を有している。言い換えると、水素による疲労 き裂進展加速が上限値に達している場合、ストライエー ションの鞘敷は外部水素と内部水素で同じである。 ロ 。 2 0 ω ・ ロ 甘 岡 山 で β 。 ﹄ 凶 u -Q M H H υ 企

T

I

t

t

i

-図24. SM490B鋼の

fu

ガス中のストライエーション f= 0.1 Hz

L

1

K

=

32:MPa. m四 図

2

5

に、疲労き裂先端における外部水素と内部水素の 拡散モデ、ルを示す。図(誠に示すように、民ガス中におい ては、常にき裂先端のすべり帯の近傍に昆ガスが相生し、 次々と誕生する新生面を通って水素が材料内部に侵入 し、水素によるすべりの活性化(局所変形助長)が起こ るものと考えられる。これに対して、図(b)に示すように、 材料中の転位や格子聞に予め存在している内部水素は 応力誘起拡散によってき裂先端の塑性域に集まってく る。10'2Hz<f<1伊Hzにおいては、材料中に相生する水 素はき裂先端のすべり帯に到着するのに時間がかかる ため、到着前に疲労き裂が進展してしまうと考えること ができる。これらは品1490B鋼と SGP鋼の異なる炭素鋼 で得られた結果であるので更に確認の必要があるが、こ のような水素の拡散メカニズムの相違によって内部水 素による加速の上限値が得られる試験周波数は10'2Hz 程度であることから、外部水素では1Hz程度で、あること はほぼ間違いの無いことと考えられる。 Oxide 1ayer Oxide laver 十 、

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H

Baresurfac 匂) 外部水素 ら) 内部水素 図25.疲労き裂先端での外部水素と内部水素の挺激モデル

(12)

-21-水素エネノレギーシステム Vo1.34,No.4(2009)

5

.

おわりに 水素は、ボイドを荷重軸に対して垂直方向に成長させ たり、疲労き裂進展を約10倍加速させたりする。このよ うな挙動を説明するキーポイントは2つあり、 1つは水素 がボイド縁やき裂先端に集中すること、もう1つは集中 した水素がボイド縁やき裂先端でのすべりを局在化す ることである。このような考えは、格子脆化説(脆性破 壊)でなく、局所変形助長説健性破壊)と一致する考 えである。 HYDROGENIUSの水素材料強度特性チームで、は、設 立から3年間は基礎研究に中心を置いていた。最近では、 得られた基礎研究成果を実用化研究に活かす取り組み に移行している。表1はその取り組みの1つで、ある。実証 試験に用いられた蓄圧器や車載タンクなどの健全性評 価を冴昔、C、JARIや関連民間企業の研究者と協同して行 い、蓄圧器に関する調査報告書2件が既に公開されてい る[36,3寸。霞ヶ関ステーション蓄圧器の調査報告書は Web上に公開されている [36]。これらの報告書には、 HYDR

∞町

USで得られた最新の研究成果の活用方法、 並びに製造、開発、品質保証lこ役立つj情報が含まれてい る。もう1つの取り組みは、水素侵入特性、引張や疲労 の強度特性、破面様相をデータベースとしてまとめ、出 版することである。これらのデータベースは水新鋭号の 設言十や不具合対策に有効である。 表 1. HYDR

∞町

USにおける健全性評価件数 項目 数 量 蓄圧器 5 * 車載用水素タンク 3 水素ローリ一、コンテナ等 3 ステンレス製ノ号イプ 3 ステンレス製フレキパイプ 3 会 合 士=霞が関、鶴見、大黒、 70MPa蓄圧器(新設)、民間(昭和田年鈎 対=愛地球博を含む。 燃料電池自動車の部品(パイプ、バルブ、ライナーな ど)には、水素脆化に対して優れた特性を示すオーステ ナイト系ステンレス鋼 SUS316Lとアルミ合金 6061-T6 の使用が認められている [38]。しかし、燃料電池自動車 などの水素エネルギーシステムや水素エネルギーイン フラの実用化に向けては、 SUS316Lは高コストであるた 特 集 め、炭素鋼のような低コスト材料の使用の可能性が期待 されている。本解説で紹介した炭素鋼 SGPやSM490B~こ 対する研究成果は、このような期待に対して貢献し得る ものと考えている。 謝 辞 本報告で使用されている HYDROGEr沼USの成果の一 部は、 NEDO技術開発機構の水素材料先端科学基礎研究 事業の一環として得られたものである。 参考文献 1.独立行政法人産業技術総合研究所 HYDRI

∞町

US

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r

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(13)

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o

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@

∞3

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参照

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