ORIGINAL PAPER
徳島県那賀川河口域のワンド部に造成された代償干潟における
カニ類,ハゼ類相の変遷
小山 彰彦
1)*・乾 隆帝
2)*・大田 直友
3)・東 和之
4)・梶本 泰司
5) 1)熊本大学大学院 先端科学研究部 〒860-8555 熊本市中央区黒髪 2-39-1
2)山口大学大学院 創成科学研究科 〒755-8611 山口県宇部市常盤台 2-16-1
3)阿南工業高等専門学校 創造技術工学科 〒774-0017 徳島県阿南市見能林町青木 265
4)阿南工業高等専門学校 技術部 〒774-0017 徳島県阿南市見能林町青木 265
5)国土交通省 四国地方整備局 河川部河川管理課 〒760-8554 香川県高松市サンポート 3-33
Akihiko KOYAMA1)*, Ryutei INUI2)*, Naotomo OTA3), Kazuyuki HIGASHI4),
Yasushi KAJIMOTO5): Change of crab and goby fauna in the mitigation tidal
flats in the Naka River estuary. Ecol. Civil Eng. 21(2), 113-133, 2019
1) 2-39-1 860-8555 2) 2-16-1 755-8611 3) 265 774-0017 4) 265 774-0017 5) 3-33 760-8554
Abstract: In the mouth of the Naka River in Tokushima Prefecture, approximately 24% of the estuarine environment has been altered because of heightening of the embankment as a countermeasure for the earthquake and tsunami in 2012. Artificial tidal flats, aimed at con-serving the habitat of endangered benthic species, were created for mitigation of negative impact due to the construction. To assess the effectiveness of the mitigation, we set nine survey sites in the area, and conducted monitoring the sites 10 times between 2013 and 2017. Thirty three species of crabs and 27 species of gobies were found in the surveys. All threatened and near threatened crabs and gobies found during the first survey were col-lected during the subsequent surveys as well, suggesting that the habitat of these species has not disappeared due to the construction. We confirmed a decrease in the mean mud content in most of the survey sites in winter 2015, due to a large flush in summer 2014. Contrarily, the mean mud content increased at the mitigation sites due to the introduction of silt dredged from a neighboring river after the large flush. Nine survey sites were ana-lyzed separately in the high (four sites) and low compartments (five sites) according to the range of elevation. The results of the high compartment sites, including two mitigation sites, suggested that the sites had fauna similar to that of the reference sites, after about
原著論文
2018 年 6 月 14 日受付,2018 年 8 月 20 日受理
*共筆頭著者
責任著者の氏名(連絡先)Corresponding author:小山彰彦
して,約 28,000 m2の汽水環境のうち,堤防の法勾配の 変更によって改変面積は 2/3 程度に低減されたものの, 約 24%が改変された(那賀川河川事務所 2017).一方, この堤防のかさ上げ工事の環境保全対策として,絶滅危 惧種であるシオマネキ を筆頭とする希少 底生生物の生息場の保全を目的としたミティゲーション が行われた.具体的には,一般的に根固めブロックは河 床面に露出するように設置されるが,本施工では堤防沿 いの根固めブロック(約 2,100 m2)に現地のシルトを 覆土することで,干潟の復元が試みられた他,ワンド上 流部に約 700 m2,下流部に約 1,400 m2の代償地が造成 された.これらのミティゲーションの結果,汽水環境の 純消失率は 10%まで抑えられた.また,代償地の造成後, 順応的管理の一環として,それぞれの代償地で環境修復 が行われた. 本研究では,上述した那賀川左岸のワンド域において, 地震津波対策事業に伴う堤防のかさ上げ工事前から工事 後にわたる 5 年間,カニ類とハゼ類,および底質のモニ タリングを実施した.そして,堤防のかさ上げ工事の影 響を受けた場所と受けていない場所の両者において,地 震津波対策事業および環境保全対策が,カニ類とハゼ類 の生物相に与える影響を明らかにすることを目的とした.
材料と方法
調査期間・対象地 モニタリング調査は,2013 年の 8 月 5~ 9 日にかけて 1 回,2014 年 の 6 月 30 日 ~7 月 2 日 に か け て 1 回, 2015 年の 2 月 21~23 日,7 月 3~ 4 日,10 月 11~12 日 にかけて 3 回,2016 年の 6 月 23~24 日,10 月 1~ 3 日 にかけて 2 回,2017 年の 3 月 13~14 日,7 月 9~10 日, 10 月 4~ 5 日にかけて 3 回,計 10 回実施した.それぞ れ の 調 査 名 を 順 に 13S,14S,15W,15S,15A,16S, 16A,17W,17S,および 17A とした(Table 1). 対象とするワンドは,那賀川河口の左岸部から約 2 km 上流に位置する(Fig. 1).ワンドは縦断方向に約はじめに
汽水域を含めた沿岸環境は,生態系サービスとしての 高い機能を有するが,水質汚染,開発,および乱獲な どの人間活動によって劣化,消失の一途を辿っている (Lotze et al. 2006;Barbier et al. 2011).日本の場合,20 世紀後半において,40%以上の干潟などの汽水環境が消 失し(Sato 2010),汽水域を利用する多くの生物が絶滅 の危機に瀕している(日本ベントス学会 2012;環境省 2017a, 2017b).そのため,汽水域生態系の保全と再生が 重要な課題となっている. 日本の汽水域では,人為的開発の影響を緩和するため に,人工干潟や塩性湿地などの汽水環境の造成が各地で 行われている(寺脇ほか 2005).効果的な生態系の回復 を目指す上で,このような代償環境の造成地,あるいは 自然再生地では,環境の変遷を適宜モニタリングするこ と,さらに,得られた結果を科学的に評価し,場合によ ってはさらなる環境改善を提案していくことが非常に重 要である(松田・西川 2007).しかしながら,日本にお いて造成した汽水環境の生態系を評価した事例は少なく (花輪・古南 2002;桑江ほか 2003;東ほか 2012;田中 ほか 2016),特に河川汽水域に関しては非常に少ないの が現状である(中島ほか 2008).また,河川汽水域は河 川水の流入,潮汐,波浪などの日常的な外力,および出 水や台風などの短期的かつ大規模な自然かく乱の影響に よって底質などの物理特性が変化しやすい環境である (鎌田・小倉 2006;楠田・山本 2008).そのため,河川 汽水域の造成地では,人為的な環境改変に対する影響の 評価に加えて,自然かく乱に対する物理環境の変遷,そ れに伴う生物の質的,あるいは量的な変遷を評価する必 要がある. 徳島県の一級河川那賀川の汽水域は,瀬戸内海に生息 する希少ハゼ類の種多様性を保全する上で重要な役割を 担っている(乾ほか 2016).本河口から約 2 km 上流の 左岸に位置するワンド部は,2012 年から地震津波対策 事業により堤防がかさ上げされることになった.結果とtwo and a half years from the construction. On the contrary, the results of the low compart-ment sites suggested that the sedicompart-ment condition and fauna changed in most of the sites due to the large flush. However, the dredged silt was supplied around the mitigation sites. Therefore, the fauna similar to that of before the embankment construction was formed around the mitigation sites after its construction.
Key words: Before After Control Impact (BACI) design, restoration, riverine estuary, saltmarsh, wando-pool
本工事は 2012 年 12 月に着工し,2016 年 2 月まで行わ れたが,干潟の直接的な改変は 2013 年 11 月から 2014 年 6 月の期間に行われた.上流の代償地(1-H)は,干 潟の直接的改変が開始される前の 2013 年 5 月に,高水 敷を掘削することにより造成された.下流の代償地 (4-H)は,2013 年 12 月に,潮上帯であった砂州のワン ド側を切り下げ,さらに堤防の根固めブロックに覆土す ることで造成された. 2013 年 1 月から 2017 年 12 月までの期間における那 賀川最下流の水位観測所(古庄)の流量を Fig. 2 に示し た.本研究の調査期間中に 2 度の大規模出水が観測され た.まず,下流の代償地の造成から約 8 ヶ月後の 2014 年 8 月 10 日に,台風 11 号に伴う豪雨が発生し,同水位 観測所で観測開始以来最大の流量が観測された(日平均 流量約 5,000 m3/s,ピーク流量約 9,500 m3/s).また, 翌年の 7 月 17 日にも,台風により平年の最大流量を大 幅に上回る値(日平均流量約 3,500 m3/s,ピーク流量 8,200 m3/s)が記録された. 上流代償地(1-H),下流代償地(4-H)の地盤高のコ ンターの時系列変化を Fig. 3 に,景観の変化を Fig. 4 に 示 し た. 上 流 代 償 地 は,2013 年 5 月 に, 高 水 敷 約 700 m2を T.P.-1.0 から+0.0 m の範囲で切り下げた後, 900 m,幅は約 30 m 程度である.また,本河口域にお ける朔望平均満潮位は T.P.+0.914 m,年平均潮位は T.P.+0.066 m,朔望平均干潮位は T.P.-0.891 m である (那賀川河川事務所 2017). 筆者らは,ワンド内に 6 つのエリア(Area 1 ~ Area 6)を設定した(Fig. 1).Area 1 と Area 4 は干潟を造成 した代償地(インパクト区),Area 2 と Area 3 は地震津 波対策事業に伴う堤防のかさ上げ工事の影響を受けてい ない対照区,Area 5 と Area 6 は堤防のかさ上げ工事の ため干潟域が縮小したインパクト区である. また,河川汽水域においては,地盤の高さによって生 物相が大きく異なるため,本研究では,+1.0 m>T. P.>-0.2 m の区間を地盤の高い区画として,Area 1, Area 2,Area 3,および Area 4 の 4 ヶ所に調査地点を 設け,それぞれ順に 1-H,2-H,3-H,および 4-H とした. また,-0.2 m>T.P.>-1.0 m の区間を地盤の低い区 画 と し て,Area 1,Area 2,Area 3,Area 5, お よ び Area 6 の 5 ヶ所に調査地点を設け,それぞれ順に 1-L, 2-L,3-L,5-L,および 6-L とした.計 9 ヶ所のモニタリ ング地点を設定した.
調査期間中における人為的環境改変と自然かく乱
堤防のかさ上げ工事の行程の概略を Table 1 に示した. Year Month Direct development
of tidal flat Mitigation areas Survey Area 1 Area 4 2013 May Excavation Aug. 13S Nov. Start Dec. Excavation 2014 May Improvement* June End 14S July 2015 Feb. 15W May Improvement* June Improvement** July Improvement*** 15S Oct. 15A 2016 June 16S Oct. 16A 2017 Mar. 17W July 17S Oct. 17A
*: Improvement of elevation and sediment, **: Transplant of , ***: Transplant of and setting of sandbag.
Table 1. Summary of the construction process of the mitigation tidal flat and survey period. 代償干潟の造成過程と調査時期の概要.
48 707
Figure 1.
708 709
Fig. 1. Map of the survey areas and sites in the Naka River. 調査対象地である那賀川のワンド河口部.
Fig. 2. Daily river flow observed at a gauging station in Furushou from January 2013 to December 2017. 2013 年 1 月から 2017 年 12 月までの古庄で観測された日平均流量.
49
710
Figure 2.
711
712
Fig. 3. Contour figures of elevation in the: upper compensating area before construction in 2013 (a), after construction in 2013 (b), 2014 (c), and 2017 (d); and down compensating area before construction in 2013 (e), and after construc-tion in 2014 (f), 2015 (g), and 2017 (h). Red broken line indicates survey area.
代償地の標高コンター図:上流代償地(a)造成前(2013 年),(b)掘削後(2013 年),(c)かさ上げ後(2014 年),(d)2017 年,下流代償地:(e)造成前(2013 年),(f)造成後(2014 年),(g)2015 年,(h)2017 年.赤 色の破線は調査地を示している. 50 713
Figure 3.
714 715Fig. 4. Landscapes of Area 1 (1-H; a, b, c, and d) and Area 4(4-H; e, f, g, and h): after construction in 2013 (a and e), July 2014 (b and f), 2015 (c and g); and 2017 (d and h). Arrows indicate channels aimed to facilitate exchange of tidal wa-ter.
代償地 Area1 (1-H; a ~ d)と Area 4(4-H; e ~ h)における景観の変化:造成後(a と e),2014 年 7 月(b と f), 2015 年 7 月(c と g),2017 年 7 月(d と h).矢印は切欠きによる水道を示す.
51
716
Figure 4.
717
718
719
以上の背景を踏まえて,各調査の位置づけを整理する と,13S は 1-H の造成直後の調査であり,残る 8 地点の 事前調査に該当する.14S は,1-H の 1 度目の環境改修 後の調査であり,残る 8 地点の事後調査という位置づけ になる.14 年 8 月の大規模出水後に 15W,1-H と 4-H の環境改修後に 15S,15 年の大規模出水の後に 15A の 調査をそれぞれ実施した.15A 以降 5 回の調査を行った が, こ の 期 間 中 に は 大 規 模 出 水 は 発 生 し て お ら ず (Fig. 2),環境改修も実施されていない. 生物採集 本研究では,造成地の再生目標種であるカニ類と,那 賀川の汽水域に多くの希少種が生息するハゼ類(乾ほか 2016)を調査対象種とした.ほとんどの地点において事 前調査に該当する 13S の調査は,1 地点当たり地盤の高 い区画で 55~140 分,地盤の低い区画で 35~90 分の採 集時間を設け,3 ~ 4 名で採集作業を実施した.また, 1-H については,13S の時点で調査地点の境界が不明瞭 であったため(Figs. 3b and 4a),掘削によって創出した 造成地以外の範囲も含めて調査を行った.14S 以降の 9 回の調査は,1 地点当たり 2 名で約 40 分間,4-H は他の 調査地点よりも範囲が広いため調査地を 4 等分し,それ ぞれ 20 分間の採集時間を設けた.また,これら 9 回の 調査では,1-H については,袋詰め玉石が 1-H と 1-L の 間に設置され,地盤高を改修したことによって明瞭な境 界ができたため(Figs. 3c and 4b),造成地内のみを調査 範囲とした. 採集道具はタモ網とスコップを用いた.地盤の高い区 画の調査地点は,5 分~10 分程度,地表面で活動するカ ニ類を目視によって確認した後に,残りの時間で転石下 やタイドプールに潜む生物を採集した.底質の掘り返し による採集方法は,効率よく居穴性の生物を採集できる が,掘り返しに伴う底質のかく乱によって生物相が人為 的に変遷する可能性が危惧されたため,スコップによる 底質の掘り返しは,深さ約 30 cm とし,1 地点につき 2 ヶ所(4-H では 8 ヶ所)程度に留めた.また,調査後に 掘り返した場所は埋め戻した.調査はいずれも大潮の日 中に設定し,地盤の高い区画は平均潮位よりも水位が低 下してから調査し,地盤の低い区画は最干潮の前後 2 時 間で調査した.採集後,各地点のハゼ類・カニ類各種の 在・不在情報を整理し,採集した生物は調査地点に放流 した.なお,カニ類の種同定には,三宅(1983),三浦 (2008),日本ベントス学会(2012),豊田・関(2014) に従った.また,ハゼ類の種同定は明仁ほか(2013)に 従った.
シルトを 50 cm 敷くことにより造成し(Figs. 3b and 4a), その後,順応的管理の一環として,3 度の環境改修が実 施された(Table 1).まず,造成から 1 年後の 2014 年 5 月に,地盤高を平均 T.P.+0.8 m にかさ上げし(Fig. 3c), かさ上げ前のシルトを表土にすることで,地盤高と底質 環境が改修された.地盤高を平均 T.P. +0.8 m に設定し た理由は,堤防のかさ上げ工事により消失するシオマネ キ等の希少カニ類の好適な生息環境である T.P.+0.2~ +1.0 m の標高帯を確保するためである.その後,同年 8 月の大規模出水の影響によって流木と砂が堆積した他, 砂嘴の一部が消失した.この出水の影響を踏まえて, 2015 年 5 月に,流木の除去,堆積した砂の掘削,およ び砂嘴の復元が行われた.さらに,堆砂の掘削と同時に, 地盤高を平均 T.P.+0.6 m に調整した他,満潮時の水の 交換を促進するために,境界部に設置した袋詰め玉石の 袋と袋の間に干潟の地盤高に合わせた切欠箇所(水道) を作成した(Fig. 4c).加えて,近隣河川(桑野川; Fig. 1)で発生したシルト質の浚渫土砂が投入され,1-H は T.P.+0.6 m,シルト堆積厚 50 cm に改修された.ま た,同年 6 月には高潮帯付近にヨシ の移植作業が行われた.最終的な上流代償地の地盤高は Fig. 3d のとおりで 2017 年 10 月の調査(17A)まで安定 していた. 下流代償地(4-H)は,シオマネキ等の希少カニ類の 好適な生息環境であるが,堤防のかさ上げ工事により消 失する面積が多い地盤高 T.P.+0.2~+1.0 m の干潟面 積を確保することを目的に,2013 年 12 月に潮上帯であ った砂州のワンド側を掘削することによって T.P.+0.6 ~+1.0 m の干潟を 190 m2,および T.P.+0.2~+0.6 m の干潟を 630 m2造成し,さらに,堤防側の根固めブロ ックに元の地盤線にすりつけるように覆土することで, T.P.+0.6~+1.0 m の干潟を 430 m2,T.P.+0.2~+0.6 mの干潟を 190 m2造成した(Fig. 4e).なお,当初は全 体的にシルト層を 50 cm で造成したが(Fig. 3f),2014 年 8 月の大規模出水によって表土が流出したため,2015 年の 7 月に,4-H の一部において,表土流失防止を目的 としたシルトを詰めた土嚢の設置と,ヨシの移植が行わ れた(Fig. 4g).下流代償地では 2014 年以降,2017 年 10 月 ま で に 大 規 模 な 地 盤 高 の 変 化 は 生 じ て い な い (Fig. 3g and h). インパクト区である 5-L と 6-L は,2013 年 11 月から 行われた干潟の直接的改変によって干潟面積が減少した 地点である.この 2 地点では,根固めブロックの覆土以 外に特別な環境改修は行われていない.
で用いた各分類群の種数,および平均泥分含有率との関 係を Kendall の順位相関によって解析した.この際,第 一種の過誤を回避するため,Bonferroni の有意水準補正 を行った. nMDS の座標軸のスコアを指標としてクラスター分析 を行った.各座標軸のスコアを標準化し,ユークリッド 距離に基づいた Ward 法によって地点を類型化した.本 研究では類型群の数は 3 つとした.調査地点を類型化す ることによって,各類型群の生物相の特徴,および底質 の特徴を把握することができる.nMDS とクラスター分 析は PC-ORD version 5(MjM Software Design, Oregon) を使用した.
クラスター分析によって区分された類型群の生物相の 特徴を把握するために,解析対象種について,Dufrêne & Legendre(1997)によって提唱された Indicator Value (IndVal)を算出した.IndVal は 0 ~100%の値で示され,
それぞれの類型群に対して特徴的な種を見出すことがで きる.本研究では,Dufrêne & Legendre(1997)に従い, IndVal>25%の種を,その類型群の代表種とみなした. 加えて,各類型群の平均泥分含有率とハゼ類,カニ類の 確認種数について,Kruskal‒Wallis 検定を行い,有意性 が認められた場合,Steel‒Dwass 検定を実施した.上述 した 2 つの検定はエクセル統計 2012(SSRI, 東京)を使 用した.なお,これら 2 つの検定は,各類型群で統計的 に検討が可能な標本数を満たした地盤の低い区画のみで 行った.
結 果
調査の結果,カニ類 33 種,ハゼ類 27 種が確認された. なお,ケフサイソガニ とタカノ ケフサイソガニ はイソガニ類 spp.として,ヒメヤマトオサガニ とヤマトオサガニ はオサガニ類 spp.として,チワラスボ 属 sp. B とチワラスボ属 sp. C(Kurita & Yoshino 2012) はチワラスボ類 spp.として,2 種を区別しな かった(Table 2;Table 3).これらを区別しなかった理 由は,いずれも種間の形態が非常に類似しているため, 現場での種同定が困難であったためである.確認された 種のうち,カニ類の 14 種,ハゼ類の 11 種が環境省のレ ッドリスト(環境省 2017b),海洋生物のレッドリスト (環境省 2017a),あるいは徳島県レッドリスト(徳島県 2017)において絶滅危惧種,あるいは準絶滅危惧種とし 底質採集 13S の調査では,地盤高に沿って地盤の高い区画を 3 区 分(T.P.-0.2~+0.2 m,+0.2~+0.6 m,+0.6~ +1.0 m),地盤の低い区画を 2 区分(T.P.-1.0~-0.6 m,-0.6~-0.2 m)し,各区分で 3 ヶ所ずつ底質を採 集した.この際,2L と 3L では,T.P.-1.0~-0.6 m の 範囲が狭く,T.P.-0.6~-0.2 m の範囲でのみ底質を採 集した.14S 以降の調査では各調査地点で 3 ヶ所ずつ, 4H は他の調査地点よりも範囲が広いため調査地を 4 等 分し,それぞれ 3 ヶ所ずつ底質を採集した.底質の採集 場所をランダムに決め,表層から深さ 3 cm,直径 8 cm 程度の底質を,円筒形容器を用いて採集した.底質は乾 燥した後,0.063 mm の篩を用いて,底質の乾燥重量に 対する 0.063 mm 未満の重量の割合を泥分含有率(%) とした.各地点で採取した底質のサンプル数で除して, 平均泥分含有率(%)とした.なお,底質は調査ごとに 採集した. 解析 地盤の高い区画(+1.0 m>T.P.>-0.2 m)は代償地 造成の効果を評価することを目的に,地盤の低い区画 (-0.2 m>T.P.>-1.0 m)は堤防のかさ上げ工事,およ び代償地造成による人為的な影響を評価することを目的 に,それぞれ解析を行った.シオマネキ,アシハラガニ ,およびハマガニ などの居穴性のカニ類は,巣穴内で越冬するため(合田 ほか 2006;大野ほか 2006),本研究で行った目視によ る確認,および底質の掘り返しでは,これらの主要生息 地に関して冬季の生物相を把握する上で十分な努力量を 満たしていない可能性がある.したがって,居穴性のカ ニ類が多く生息する地盤の高い区画については,冬季の 調査である 15W と 17W のデータを除外し,8 回の調査 で実施した計 32 地点について,カニ類のみの生物相情 報を用いて解析を行った.地盤の低い区画については, 10 回の調査で実施した計 50 地点のカニ類とハゼ類の生 物相情報を用いた.また,解析に使用した地点数に対し て出現地点数が 10%未満の種は,偶来種とみなして解 析から除外した. 各種の在・不在(1・0)情報を用いた非計量的多次元 尺度構成法(non-metric multidimensional scaling: nMDS) によって,調査地点の座標付けを行った.Jaccard の距 離を各調査地点間の非類似度を表す指標として,50 回 の反復計算を行うことにより座標付けを行った.また, 座標軸の数は最終的なストレス値が 20 を下回るまで構 築した.nMDS によって得られた座標軸のスコアと解析均泥分含有率が 40%を超えていた.工事後の調査(14S) では,7 地点のうち 2-H と 4-H の 2 地点が平均泥分含有 率 40%を下回った.さらに,15W の調査の際には 4-H と 6-L を除く 7 地点で平均泥分含有率が低下し,特に, て記載されている希少種だった. 各調査地点の底質状況とカニ類,ハゼ類の確認種数の 変遷を Fig. 5 に整理した.底質の変化に着目すると,初 回の調査である 13S では,1-H と 6-L を除く 7 地点の平
Red list category Survey code
Species name MoE Tokushima Pre. 13S 14S 15W 15S 15A 16S 16A 17W 17S 17A Leucosiidae NT P P P P P P P P Portunidae P P P P P P P P Sesarmidae P P P P P P P P P P NT P P P P P P P P P P VU P P P P P P P P P P NT NT P P P P P P P P P P P P P P P NT NT P P P P P P P P P P NT P P P P P P P P P P NT NT P P P P P P P Varunidae NT NT P P P P P P P P P P P P P P P P NT NT P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P spp. P P P P P P P P P P P P P NT P P P P P P P P NT NT P P P P P P P P P P Camptandriidae NT P P P P P P P P P P P P P Dotillidae P P P P P P P P P P P P P P P P P Macrophthalmidae P P P P P P P P P NT P P P P P P spp. P P P P P P P P P P Ocypodidae VU NT P P P P P P P P P P VU EN P P P P P P P P P P Number of species 21 19 18 26 23 26 27 20 24 26 MoE and Tokushima Pre. represent the abbreviation of the Ministry of the Environment (2017a, 2017b) and Tokushima Prefecture (2017), respectively. EN, VU, and NT represent Endangered, Vulnerable, and Near Threatened, respectively.
Table 2. Crab fauna found in each survey. P indicates the presence of each species in the surveys. 各調査で確認されたカニ類相.表中の P は出現を表す.
各種の出現地点数から解析対象種の精査を行い,地盤 の高い区画は 19 種のカニ類,地盤の低い区画は 12 種の カニ類と 19 種のハゼ類,計 31 種の在・不在情報を用い て nMDS を行った.その結果,地盤の高い区画では 2 軸によって最終的なストレスが 18.66 を示し,地盤の低 い区画では 3 軸によって最終的なストレスが 16.04 を示 した.地盤の高い区画と低い区画それぞれの相関解析の 結果を Table 4 に示した.地盤の高い区画では,第 2 軸 とカニ類の確認種数が有意な正の相関を示した(Table 4).地盤の低い区画では,第 1 軸と平均泥分含有率に有 1-L(85.3 から 33.8%)2-L(67.9 から 19.0%),および 3-L(80.4 から 14.6%)などの地盤の低い区画における 底質変化が顕著であった.生物の出現種数に着目すると, 調査ごと,地点ごとにそれぞれの確認種数は様々であっ た(Fig. 5).地盤の高い区画である 1-H のカニ類の確認 種数は,初回の調査(13S)から 2 回目の調査(15W) にかけて 7 種減少した.その後,1-H では徐々にカニ類 の確認種数が増加し,16A では 13 種まで増加した.ま た,地盤の高い区画は,低い区画よりもハゼ類の確認種 数が少なかった.
Red list category Survey code
Species name MoE Tokushima Pre. 13S 14S 15W 15S 15A 16S 16A 17W 17S 17A Gobiidae P P P P P P P P P P P P P P P P P sp. 2 NT P P P P P P P P P P VU EN P P P P P P NT P P P P P NT NT P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P NT P P P P VU CR P EN VU P P P P P P P P P P VU EN P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P P NT EN P P P P P P P P P P VU VU P P P P P P P P P P P P P spp. EN* VU* P P P P P P P P P P P P P P P P Ptereleotridae P Number of species 15 15 15 13 15 15 19 14 17 20 Table 3. Goby fauna found in each survey. P indicates the presence of each species in the surveys.
各調査で確認されたハゼ類相.表中の P は出現を表す.
MoE and Tokushima Pre. represent the abbreviation of the Ministry of the Environment (2017b) and Tokushima Prefec-ture (2017), respectively. CR, EN, VU, and NT represent Critically Endangered, Endangered, Vulnerable, and Near Threat-ened, respectively.
* Red list category of spp. is based on that of (Ministry of the Environment 2017b) and that of sp. B (Tokushima Prefecture 2017).
Fig. 5. Mean mud content (gray bar), and the number of crab (●) and goby (■) species in the nine survey sites during each survey.
9 地点の各調査における平均泥分含有率(棒グラフ),カニ類の確認種数(●),およびハゼ類の確認 種数(■).
52
720
Figure 5.
721
722
Variables High compartment Low compartment
Axis 1 Axis 2 Axis 1 Axis 2 Axis 3 Mean mud content (%) -0.287 -0.202 -0.463 0.153 -0.203 Crab richness 0.292 0.433 -0.051 -0.081 0.393 Goby richness na* na* 0.035 -0.340 -0.090 Table 4. Correlation coefficient between three variables and the non-metric
multidi-mensional scaling (nMDS) axes of each compartment.
それぞれの区画における 3 つの変数と各軸のスコアとの相関係数.
Boldface means significant correlation * na indicates no analysis
16 地点のグループ D,15 地点のグループ E,および 19 地点のグループ F に区分された Fig. 6b).これらクラス ター分析の結果を踏まえて,地盤の高い区画は Fig. 7 に, 地盤の低い区画は Fig. 8 に nMDS のスコアの散布図を可 視化した. 地盤の高い区画の 3 群について,解析対象種の IndVal の値を Table 5 に示した.解析に使用した 19 種のカニ 類はいずれもグループ A のみで高い値(>25%)を示 した.地盤の低い区画の 3 群について,解析対象種の 意な負の相関,第 2 軸とハゼ類の確認種数に有意な負の 相関,および第 3 軸とカニ類の確認種数に有意な正の相 関が認められた(Table 4). nMDS の結果に基づき,地盤の高い区画は 2 つの軸の スコアを指標に,地盤の低い区画は 3 つの軸のスコアを 指標にクラスター分析を行った.それぞれ 3 群に類型化 した結果,地盤の高い区画の 32 地点は,30 地点のグル ープ A,1 地点のグループ B,および 1 地点のグループ Cに区分された(Fig. 6a).地盤の低い区画の 50 地点は,
Fig. 6. Dendrograms of the high compartment (a) and low compartment (b) using the cluster analysis. クラスター分析によって得られた地盤の高い区画(a)と低い区画(b)のデンドログラム.
,およびチワラスボ類の 4 種が グループ D の代表種として,モクズガニ ,ヒメヒライソモドキ ,アシシロハゼ ,タネハゼ ,ヒナハゼ ,お よびチチブ の 6 種がグループ E の 代表種として,マメコブシガニ ,トリウ ミアカイソモドキ ,チゴイワガニ , ビ リ ン ゴ IndValの値を Table 6 に示した.その結果,31 種中 21 種が代表種(>25%)に選定された.21 種のうち,イ ソガニ類,オサガニ類,マハゼ , ヒ モ ハ ゼ , ヒ メ ハ ゼ ,ウロハゼ ,およびク ボハゼ の 7 種は複数のグルー プで代表種に選定された.残る 14 種のうち,ムツハア リアケガニ ,ツマグロスジ ハ ゼ sp. 2(明 仁 ほ か 2013), ト ビ ハ ゼ
Fig. 7. Plots based on the non-metric multidimensional scaling (nMDS) scores of 32 sites categorized into four survey sites (a)
and three groups using the cluster analysis (b).
nMDSの結果に基づく 32 地点の可視化.プロットは地点ごと に区分した結果(a)とクラスター分析で得られた 3 グループ で区分した結果(b)をそれぞれ示した.
54
726
Figure 7.
727
728
意に高かった. クラスター分析によって区分された地盤の高い区画と 低い区画それぞれの生物相グループの変遷を Table 7 に 示した.地盤の高い区画では,1-H を除く 3 地点の生物 相はグループ A から変化しなかった.地盤の低い区画は, 調査ごとに各地点の生物相グループは様々であった.
考 察
ワンド内で確認された生物 宮崎県北川の感潮域の人工ワンドで行われた調査では, 希少種を含む多種多様な魚類,カニ類,および甲虫類が 生息していたことが報告されている(中島ほか 2008). の 4 種がグループ F の代表種選定された. 地盤の高い区画の 3 群について,グループ A の平均 泥分含有率とカニ類の確認種数の中央値はそれぞれ順に 32.9%,14 種だった.グループ B とグループ C の平均 泥分含有率はそれぞれ順に 35.1%,29.2%であり,カ ニ類の確認種数は 7 種,5 種だった.地盤の低い区画の 3 群の平均泥分率,カニ類,ハゼ類の確認種数について Kruskal‒Wallis検定を行った結果,平均泥分含有率とハ ゼ類の確認種数で有意な差が認められた( <0.05).そ れぞれの変数の箱ひげ図と Steel‒Dwass 検定の結果を Fig. 9 に示した.平均泥分含有率については,グループ Dが他の 2 つのグループよりも有意に高く,ハゼ類の確 認種数については,グループ E がグループ F よりも有Fig. 8. Plots based on the non-metric multidimensional scaling (nMDS) scores of 50 sites categorized into five survey sites (a) and three groups using the cluster analysis (b). nMDSの結果に基づく 50 地点の可視化.プロットは地点ごとに区分した結果(a) とクラスター分析で得られた 3 グループで区分した結果(b)をそれぞれ示した.
スボ類の 8 種は,初回の調査(13S)で確認されたもの の,後続する複数回の調査で確認されなかった希少種で ある.これらの種に対して共通する生態的な特徴は見い だせないものの,15W で多くの種が確認できていない ことから,2014 年 8 月の大規模出水の影響を受けて, 生息環境が不安定化した可能性がある.いずれにせよ, 13S の調査で確認されたカニ類とハゼ類は,いずれも後 続の調査で確認されていることから,少なくとも両分類 群において,堤防のかさ上げ工事によって生息地が消失 した種はいないと推察される.対照的に,カクベンケイ ガニ ,およびチチブが 14S 以降の調 査において高頻度で確認された.さらに,15W 以降の 調査からトリウミアカイソモドキ,ヒメヒライソモドキ, アシシロハゼ,およびヒナハゼが高頻度で確認された (Table 2;Table 3).この調査結果を踏まえると,ワン ド内にこれらの種が安定して生息できる環境が堤防のか さ上げ工事,あるいは大規模出水によって創出されたと 示唆される. 底質環境の変遷 初回の調査である 13S では,9 地点中 7 地点の平均泥 本調査の結果,過去の研究(中島ほか 2008)と同様に, 那賀川河口のワンド部に多くの希少種が生息しているこ とが明らかになった.那賀川の汽水域は,瀬戸内海に流 入する河川の中でも特に希少ハゼ類の種多様性が高いこ とが知られているが(乾ほか 2016),これらの希少ハゼ 類の多くがワンド内で確認された.また,カニ類につい ても多様な希少種が生息していることが明らかになり, 本調査によって,汽水域のワンドが希少種の生息場とし て重要な環境であることが再認識された. 確認された希少カニ類 14 種,希少ハゼ類 11 種のうち, アカテガニ ,ウモレベンケイ ガニ ,ユビアカベンケイガニ ,ハマガニ,ヒメアシハラガニ ,ハクセンシオマネキ ,シ オマネキ,ツマグロスジハゼ,ヒモハゼ,クボハゼ,ト ビハゼの 11 種は 10 回の調査全てで確認された(Table 2;Table 3). 一 方, マ メ コ ブ シ ガ ニ, ク シ テ ガ ニ ,ベンケイガニ , ムツハアリアケガニ,タビラクチ , タネハゼ,チクゼンハゼ ,チワラ
Family name Species name
IndVal (%)
group A group B group C
Portunidae 26.7 0 0 Sesarmidae 70.1 4.3 0 83.3 0 0 73.3 0 0 43.3 0 0 26.7 0 0 87.1 3.3 3.3 86.8 3.6 0 40.2 7.1 0 Varunidae 96.7 0 0 63.5 0 4.8 93.8 3.1 3.1 spp. 83.5 3.7 0 Camptandriidae 33.3 0 0 Dotillidae 96.8 0 3.2 33.3 0 0 Macrophthalmidae spp. 90.0 0 0 Ocypodidae 76.8 4 0 96.8 0 3.2 Table 5. Summary of the Indicator Value (IndVal) in each group at the high
compartment sites.
地盤の高い区画において区分された 3 群に対する各種の IndVal(%).
を人為的に改修した影響が大きいと考えられる.初回の 調査(13S)では,対照区である Area 2(2-H と 2-L)と Area 3(3-H と 3-L)がワンド内において平均泥分含有 率が特に高かったが,大規模出水によってこれらの対照 区では泥分が流失した.結果的に,最後の調査(17A) では,代償地である Area 1(1-H と 1-L)が,全地点中 最も泥質の底質環境を有するエリアとなった.また,下 流の代償地である 4-H は,14S から 15W の調査にかけ て平均泥分含有率が大きく減少しなかったことから,か さ上げ工事の影響を受けたものの,大規模出水の影響に ついては強く受けなかったと考えられる. 分含有率が 40%を超えていたが,続く 14S の調査では, それら 7 地点のうち,2-H と 4-H の 2 地点で平均泥分含 有率が 40%を下回った.対照区である 2-H について泥 分が減少した理由は不明であるが,4-H は下流の代償地 造成に伴って泥分が減少したと考えられる.15W では, さらに泥分が減少した地点が確認された(Fig. 5).これ は,2014 年 8 月の大規模の出水を経て泥分が流失,あ るいは砂礫が堆積したことに起因すると考えられる.一 方,15W 以降の調査において,1-H と 1-L の平均泥分含 有率が増加した.これは,順応的管理の一環として 1-H にシルト質の浚渫土を投入したことによって,底質環境
Table 6. Summary of the Indicator Value (IndVal) in each group at the low compartment sites. 地盤の低い区画において区分された 3 群に対する各種の IndVal(%).
Boldface means IndVal>25%
Common name Family name Species name
IndVal (%)
group D group E group F
Crab Leucosiidae 4.5 10.9 34.4 Portunidae 11.1 0.7 9.4 Varunidae 0 33.3 0 16.1 8.8 13.6 spp. 30.6 32.6 29.3 0 75.1 1.4 4.2 22.5 26.5 Camptandriidae 28.6 11.9 0.4 Dotillidae 7.0 0 16.4 Macrophthalmidae 5.6 23.8 31.8 6.3 0 21.1 spp. 37.2 9.9 44.2 Goby Gobiidae 37.2 15.5 35.4 0.4 57.6 1.5 sp. 2 48.5 16.4 10.2 22.3 1.0 0.8 3.1 30.0 0 14.9 31.1 40.6 7.9 33.5 43.7 36.0 33.1 7.6 6.8 7.2 38.7 10.0 16.7 0.5 0.8 35.2 47.5 1.9 8.2 19.8 8.3 5.0 11.0 22.3 0 3.0 39.1 10.4 5.7 1.3 12.0 1.1 5.9 66.3 0 spp. 41.7 4.0 1.4 0.4 47.6 3.4
あるにも関わらず,理想的な生物相であるグループ A に属した(Table 7).13S の調査の時点では,1-H の調 査範囲の境界となった袋詰め玉石が設置されておらず, 14S 以降の調査よりも広範囲で生物採集が行われたため, その結果として種数を過大に評価した可能性がある.ま た,その他の理由として,代償地造成後から 13S まで の間に大規模出水がなかったことに加え,カニ類の繁殖, および分散期を挟んでいることから,既に多くの種のカ ニ類が代償地に加入してきていた可能性が挙げられる. 造成後 1 年以上が経過した 14S において,代償地に範 囲を限定して調査した結果,最もカニ類の種数が少ない グループ C の生物相に変遷し,次の調査(15S)では, グループ B の生物相へと変遷した.この結果は,代償 地造成の影響,大規模出水の影響,あるいは順応的管理 に基づいた環境改修の影響を受けて,カニ類の種数が大 きく減少したことを示している.そして,14S 以降の調 査では徐々にカニ類の確認種数が増加し(Fig. 5),15A 以降の生物相はグループ A に変遷したことから(Table 7),上流の代償地は造成から約 2 年半程度の期間を経て, 希少種を含むカニ類が定着し,対照区に類似した生物相 が形成されたと考えられる. 対照区である 2-H と 3-H は,2014 年 8 月の大規模出 水の影響を受けて泥分が減少し(Fig. 5),コメツキガニ が生息する砂質環境が一部で創出された(Table 2).し かし,調査期間を通して生物相の類似性は高く,これら の対照区において劇的な生物相の変遷は確認されなかっ た(Table 7). 4-H は 2013 年 12 月に下流の代償地として造成された 地点である.事前調査である 13S 以降の底質は,工事 地盤の高い区画における生物相の変遷 nMDS の結果,地盤の高い区画の生物相は 2 軸によっ て構成され,第 2 軸とカニ類の確認種数に有意な正の相 関が認められた(Table 4).この結果から地盤の高い区 画の nMDS の散布図(Fig. 7)には,カニ類の種数の相 違が反映されていると考えられる. クラスター分析によって調査地点を 3 群に類型化した 結果,32 地点中 30 地点がグループ A,15S の 1-H がグ ループ B,14S の 1-H がグループ C に区分された(Fig. 6a).グループ A の特徴として,他の 2 つのグループよ りもカニ類の種数が多く,シオマネキ,ハクセンシオマ ネキ,ウモレベンケイガニなどの希少種を含めて,解析 に使用した全ての種が代表種(IndVal>25%)として選 定されていることが挙げられる(Table 5).さらに,グ ループ A には,対照区である 2-H と 3-H の生物相が含 まれている.これらの結果から,グループ A は,那賀 川の汽水ワンド部の潮間帯上部に形成される理想的な生 物相であると解釈できる.一方,グループ B(15S の 1-H)とグループ C(14S の 1-H)のプロットは,グルー プ A からそれぞれ離れて分布しており(Fig. 7),グル ープ間で生物相が異なることを示している.これら 3 つ のグループ間で平均泥分含有率に大きな相違はないが, カニ類の確認種数はグループ A と比べて他の 2 つのグ ループは少なかった.つまり,グループ B とグループ C は,人為的な環境改変,あるいは大規模出水の影響を受 けてカニ類の種数が減少したグループであると解釈でき る. 1-H について,13S の調査は代償地造成後 1 回目の調 査に該当する.この調査では,造成後わずか 3 ヶ月後で
Table 7. Faunal change at each site during the survey period. 調査期間中における 9 地点の生物相グループの変遷.
A, B, C, D, E, and F represent groups A, B, C, D, E, and F, respectively Site 13S 14S 15W 15S 15A 16S 16A 17W 17S 17A High compartment sites
1-H A C B A A A A A
2-H A A A A A A A A
3-H A A A A A A A A
4-H A A A A A A A A
Low compartment sites
1-L D D E F D D D D D D
2-L D D E F E E E E E E
3-L D D F F E E E E E E
5-L D F F D F F F E D D
の生態学的特性と一致した.また,グループ E とグル ー プ F の 間 に 底 質 の 有 意 性 は 認 め ら れ な か っ た が (Fig. 9),グループ E はグループ F とよりもハゼ類の確 認種数が多いことが同検定の結果から明らかとなった (Fig. 9).これらの結果と代表種の生態学的特性を踏ま えると,グループ E の底質は転石を含んだ砂質・砂泥 質であり,転石を利用する生物と砂泥底に生息する生物 が共存する生物相グループであると解釈できる.そして, グループ F は砂泥質の環境であり,砂泥底に生息する に伴い平均泥分含有率が大幅に減少している(Fig. 5). しかしながら,生物相に着目すると,調査期間中に生物 相の変遷が生じなかった(Table 7).上流の代償地であ る 1-H の相違点として,4-H は 1-H よりも面積が大きい こと,また,造成(2013 年 12 月)から 2015 年 7 月ま での約 1 年 7 ヶ月の間,順応的管理による環境改修を行 っていないことが挙げられる.つまり,1-H よりも広い 空間が提供されていることに加え,人為的なかく乱を受 けなかったことで,1-H よりも短期間でカニ類が定着し, 安定した生物相を形成できたと考えられる. 以上の結果を踏まえて,地盤の高い区画の 2 つの代償 地は,堤防のかさ上げ工事,あるいは大規模出水の影響 を受けながらも,遅くとも約 2 年半程度の期間を経て, 対照区に類似した生物相が形成されたと判断できる. 地盤の低い区画における生物相の変遷 nMDS の結果,地盤の低い区画の生物相は 3 軸によっ て構成され,第 1 軸と平均泥分含有率,第 2 軸とハゼ類 の確認種数,および第 3 軸とカニ類の確認種数に有意な 相関が認められた(Table 4).この結果から,地盤の低 い区画の散布図(Fig. 8)は,底質環境の相違,カニ類 とハゼ類の種数の相違が反映されていると考えられる. クラスター分析によって調査地点を 3 群に類型化した結 果,50 地点中 16 地点がグループ D,15 地点がグループ E,19 地点がグループ F に区分された(Fig. 6b).IndVal を算出した結果(Table 6),各グループに特徴的な代表 種を見出すことができた.グループ D では,ムツハア リアケガニ,ツマグロスジハゼ,トビハゼ,およびチワ ラスボ類といった泥質環境に生息するカニ類とハゼ類が 代表種に選定された(日本ベントス学会 2012;Koyama et al. 2016, 2017).グループ E の代表種のうち,モクズ ガニとヒメヒライソモドキは,砂礫底や転石に生息する カニ類であり(小林 2000;日本ベントス学会 2012), アシシロハゼ,ヒナハゼおよびチチブは,転石や転石に 付着したカキ殻に産卵する生態をもつハゼ類である(鬼 倉ほか 2009;Inui et al 2010).グループ F では,マメ コブシガニ,トリウミアカイソモドキ,チゴイワガニ, ビリンゴの 4 種が特徴的な代表種として選定された.い ずれの種も砂質から砂泥質の干潟域に生息する生物であ る(瀬能ほか 2004;日本ベントス学会 2012).これら の結果から,グループごとに生態学的特性が類似する種 が代表種として選定されていることが明らかになった. Steel‒Dwass 検定の結果,グループ D は他の 2 つのグ ループよりも平均泥分含有率の高い環境であることが明 らかとなった(Fig. 9).この結果は,選定された代表種
Fig. 9. Box plots of mean mud content, and the number of crabs and gobies in the three groups. group D (n= 16); group E (n=15); and group F (n=19). The let-ter above each box plot indicates the statistical result of the Steel-Dwass test (a>b, <0.05). The box plots represent 25 % , median, and 75 % , values; and the vertical lines represent the minimal and maximal val-ues. 平均泥分含有率,カニ類の確認種数,およびハゼ類 の確認種数の箱ひげ図.グループ D(n=16),グル ープ E(n=15),グループ F(n=19).グラフ上の 文字は Steel‒Dwass 検定の結果を示している(a>b, <0.05).箱ひげ図は最大値,75%値,中央値,25 %値,および最小値を示している. 56 732 Figure 9. 733 734
査(17S と 17A)では,工事前の生物相であるグループ Dに変遷した. 6-L は 5-L と同様に堤防のかさ上げ工事によって干潟 面積が減少したインパクト区である.この地点は,他の 4 地点と異なり,13S では砂泥質生物相であるグループ Fに属した.堤防造成後(14S)に両分類群の種数が減 少したが(Fig. 5),6-L は全ての調査において生物相は グループ F のまま安定していた(Table 7).堤防のかさ 上げ工事,および大規模出水によって泥分の堆積,流出 が繰り返し生じつつも,生物相を変遷させるほどの影響 はなかったと考えられる. 各地点の生物相の変遷の結果を踏まえると,事前調査 (13S)と事後調査(14S)の生物相グループを比較する ことで,3 地点のインパクト区のうち,5-L の 1 地点に ついて,堤防のかさ上げ工事による生物相への影響が示 唆された.また,14S と 15W の底質環境の変化,およ び生物相の変化から,5 地点のうち,対照区を含めた 4 地点が 2014 年 8 月の大規模出水の影響を強く受けたこ とが示唆された.大規模出水によって泥質生物相である グループ D は消失した後,対照区(2-L と 3-L)ではい ずれも泥質環境が形成されなかった.一方,代償地の下 流部である 1-L と 5-L では泥が堆積し,1-L では 1 年 3 ヶ月程度の期間を経て泥質生物相が形成された.堤防の かさ上げ工事の影響を受けた 5-L の生物相は,大規模出 水の影響もあり不安定であったが,17S と 17A の 2 回 の調査では泥質生物相が形成されたことから,順応的管 理の一環として行った代償地へのシルトの投入,および シルトを詰めた土嚢の設置が,潮間帯下部の泥質環境の 形成,維持に寄与したと考えられる.
おわりに
本研究では,地震津波対策事業に伴う堤防のかさ上げ 工事の前後 5 年間においてカニ類,ハゼ類,および底質 のモニタリングを実施することにより,地震津波対策事 業および環境保全対策がカニ類やハゼ類の生物相に与え る影響を明らかにすることを試みた.地盤の高い区画の 解析結果から,造成した 2 つの代償地は,早い場合は造 成直後から,遅くとも約 2 年半程度の期間を経て,希少 種を含む底生生物の生息場としての機能を果たしている ことが示唆された.また,地盤の低い区画の解析から, 直接的な環境改変のあった地点は,改変前と類似した生 物相が形成されるまでに,遅い場合(5-L)では 4 年以 上の期間がかかることが明らかになった.直接的な改変 生物のみで形成された生物相グループであると推察でき る. 地盤の低い区画における生物相の変遷に着目すると (Table 7),事前調査である 13S では,5 地点中 1-L,2-L, 3-L,および 5-L の 4 地点が泥質生物相であるグループ Dに属し,最下流部の 6-L のみが砂泥質生物相のグルー プ F に属した.この結果から,堤防のかさ上げ工事の 前には,ワンド部の水際の大部分で泥質生物相が形成さ れていたことが理解できる. 1-L は上流の代償地(1-H)の下流部に位置する.この 地点は 13S では泥質生物相のグループ D に属した.そ して,代償地造成後の調査(14S)ではカニ類とハゼ類 の種数がやや減少しつつもグループ D の生物相が維持 されていることから,代償地造成の影響を強く受けなか ったと示唆される.その後,15W では転石を利用する 生物が多様なグループ E の生物相に変遷した(Table 7). これは 2014 年 8 月の大規模出水によって砂礫が水際部 に供給され,底質環境が劇的に変化したことを示してい る.そして,次の調査(15S)では砂泥生物相のグルー プ F に変遷した.この変遷は 2015 年 5 月に 1-H に導入 されたシルト質の浚渫土の一部が下流部である 1-L に流 出し,泥分が堆積されたことに起因すると考えられる. 15A 以降の調査では,1-L の底質は平均泥分含有率 30% を超過した状態を維持し(Fig. 5),工事前の生物相であ るグループ D に変遷し,安定した. 2-L と 3-L は対照区であり,工事の影響を受けていな い地点である.そのため,工事後の調査(14S)では, 13S と同様に泥質生物相のグループ D に属した.しかし ながら,これらの 2 地点についても 1-L と同様に 2014 年 8 月の大規模出水の影響によって泥分が大幅に減少し, 2-L は砂礫質生物相のグループ E,3-L は砂泥質生物相の グループ F に変遷した(Table 7).その後,これらの 2 地点には泥分が供給されず,2015 年 7 月の大規模出水 を経て,15A 以降の調査では両地点ともに砂礫質生物相 のグループ E の生物相が形成された後,安定した. 5-L は堤防のかさ上げ工事によって干潟面積が減少し たインパクト区である.この地点も事前調査(13S)で は泥質生物相であるグループ D に属した.堤防のかさ 上げ工事後の調査(14S)では,平均泥分含有率は高い 状態が維持されていたにも関わらず(Fig. 5),生物相グ ループ F に変遷した(Table 7).この結果は,工事によ って干潟面積が減少した影響を受けて,底質環境にそぐ わない生物相が形成されていた可能性を示唆している. その後,5-L の生物相は変遷し続け,2017 年の 2 回の調の間に実施された 10 回のモニタリングによって得られ た情報を解析した.まず,4 年間の調査によって,カニ 類 33 種,ハゼ類 27 種が確認された.調査期間における 希少種の出現パターンから,少なくとも両分類群におい て,堤防のかさ上げ工事によって生息地が消失した種は いないと推察される.2014 年冬季に多くの調査地点で 平均泥分含有率の減少が確認されたが,これは 2014 年 8 月の大規模の出水により泥分が流出,あるいは砂礫が 堆積したことに起因すると考えられる.一方,順応的管 理の一環として代償地にシルト質の浚渫土を投入したこ とによって,大規模出水以降に代償地とその付近の調査 地点では平均泥分含有率が増加した. 9 ヶ所の調査地点は地盤の高い区画(4 地点)と低い 区画(5 地点)に分けて解析を行った.地盤の高い区画 について解析した結果,2 ヶ所の造成地は,堤防のかさ 上げ工事,あるいは大規模出水の影響を受けながらも, 遅くとも約 2 年半程度の期間を経て,対照地に類似した 生物相が形成されたことが示唆された.地盤の低い区画 の場合, 多くの地点で 2014 年 8 月の大規模出水の影響 を強く受けて底質環境と生物相が変遷したことが示唆さ れる結果が得られた.また,順応的管理の一環として行 った代償地へのシルトの投入,およびシルトを詰めた土 嚢の設置が,潮間帯下部の泥質環境の形成,維持に寄与 し,結果として代償地付近では工事前と類似した生物相 が形成された. 引用文献 明仁・坂本勝一・池田祐二・藍澤正広 (2013) ハゼ亜目.「日 本産魚類検索 全種の同定 第三版」(中坊徹次編),pp. 1347 1608.東海大出版会,秦野市.
Barbier E.B., Hacker S.D., Kennedy C., Koch E.W., Stier A.C., & Silliman B.R. (2011) The value of estuarine and coastal eco-system services. Ecological monographs 81: 169 193.
Dufrêne M., & Legendre P. (1997) Species assemblages and in-dicator species: the need for a flexible asymmetrical approach. Ecological monographs 67: 345 366. 合田幸子・大森浩二・柳沢康信 (2006) アシハラガニおよび ハマガニにおける巣穴外活動の季節変化と日周変化.日本 ベントス学会誌 61: 26 39. 花輪伸一・古南幸弘 (2002) 人工干潟の問題点と課題 . 海洋 開発論文集 18: 43 48. 東和之・大田直友・河井崇・山本龍兵・丸岡篤史・橋本温・ 上月康則 (2012) 人工干潟と自然干潟におけるマクロベン トス相の比較.土木学会論文集 B3(海洋開発) 68: I_1091‒ I_1096.
Inui R., Onikura N., Kawagishi M., Nakatani M., Tomiyama Y., & Oikawa S. (2010) Selection of spawning habitat by several gobiid fishes in the subtidal zone of a small temperate estu-ary. Fisheries Science 76: 83 91.
のなかった対照地(2-L と 3-L)では,2014 年と 2015 年 の大規模出水の影響によって底質環境および生物相が劇 的に変化し,2017 年時点でも砂礫質の生物相が形成さ れていることから,本研究の対象地である那賀川におい ては,出水による底質環境と生物相に対する影響は,地 盤の高い区画よりも,地盤の低い区画が強く受けること が示唆された.これらの結果から,河川汽水域において 自然再生を試みる際は,出水による攪乱の影響を加味し た再生・維持管理計画を提案することが望ましい.例え ば,出水によって自然再生地やその周辺の未改変の生息 地が消失するリスクを低減するために,それらの生息地 を複数ヶ所確保する計画が求められる.また,本研究対 象地のように,やむなく干潟を改変せざるを得ない場合 においても,代償地の造成を干潟の改変前に行うことが 重要である.本研究結果の結果から,地盤の高い代償地 を造成する場合は,少なくとも改変より 2 年半以上前に, 地盤の低い代償地を造成する場合は,出水の影響を受け ることを加味して 4 年以上前に創出する必要がある.そ の上で,定期的にモニタリングを実施し,改変予定地と 同等の生物相が形成されるか,保全対象種が定着した後 に改変を行うことが望ましい.
謝 辞
本研究は,公益財団法人河川財団の河川基金助成事業 「徳島県阿南市那賀川河口干潟における代償干潟のモニ タリング調査」(研究代表者:大田直友),および「那賀 川河口代償干潟における底生生物加入・回復過程の中期 モニタリング調査」(研究代表者:大田直友)の一環と して行った.徳島大学理工学研究部の河口洋一准教授に は研究当初から多くのご助言をいただいた.徳島県立博 物館の佐藤陽一博士には標本作成および登録に関してご 協力いただき,また貴重な情報を提供していただいた. ここに記して厚くお礼申し上げる.摘 要
徳島県の一級河川那賀川の河口部は,2012 年から地 震津波対策事業により堤防がかさ上げされることになり, 約 28,000 m2の汽水環境のうち,約 24%が改変された. この堤防のかさ上げ工事の環境保全対策として,希少底 生生物の生息場の保全を目的としたミティゲーションが 行われ,2 ヶ所の代償地が造成された.本研究では,対 象地に 9 ヶ所の調査地点を設置し,2013 年から 2017 年と八つの戒め.日本ベントス学会誌 62: 93 97. 三浦知之 (2008) 干潟の生きもの図鑑.南方新社,鹿児島市. 三宅貞祥 (1983) 原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅱ).保育社,大 阪市. 那賀川河川事務所 (2017) 那賀川左岸堤防地震・津波対策事 業環境回復モニタリング委員会(http://www.skr.mlit.go.jp/ nakagawa/committee/eq-tsunami-moni.html, 2018 年 3 月 30 日確認). 中島淳・江口勝久・乾隆帝・西田高志・中谷祐也・鬼倉徳 雄・及川信 (2008) 宮崎県北川の河川感潮域に造成した人 工ワンドにおける魚類,カニ類,甲虫類の定着状況.応用 生態工学 11: 183 193. 日本ベントス学会 (2012) 干潟の絶滅危惧動物図鑑―海岸ベ ントスのレッドデータブック.東海大出版会,秦野市. 鬼倉徳雄・西田高志・乾隆帝・中島淳・江口勝久・及川信 (2009) 宮崎県北川の汽水域ワンドに見られるハゼ亜目魚 類の産卵場と横断分布.日本生物地理学会会報 64: 29 39. 大野恭子・和田恵次・鎌田磨人 (2006) 河口域塩性湿地に生 息する稀少カニ類シオマネキの生息場所利用.日本ベント ス学会誌 61: 8 15.
Sato M. (2010) Anthropogenic decline of the peculiar fauna of estuarine mudflats in Japan. Plankton and Benthos Research 5: 202 213. 瀬能宏・矢野維幾・鈴木寿之・渋川浩一 (2004) 決定版日本 のハゼ.平凡社,文京区. 田中ゆう子・増田龍哉・倉原義之介・矢北孝一・滝川清 (2016) 八代港内の人工干潟における環境変化とベントス 群集構造.土木学会論文集 B2 (海岸工学) 72: I_1411‒ I_1416. 寺脇利信・吉田吾郎・内田基晴・浜口昌巳 (2005) 瀬戸内海 の干潟・藻場の現状と順応的管理.海洋開発論文集 21: 83 88. 徳島県 (2017) 徳島県版レッドデータブック(レッドリスト) (http://www.pref.tokushima.jp/kankyo/kankoubutu/red_date. html, 2018 年 3 月 30 日確認). 豊田幸詞・関 慎太郎 (2014) 日本の淡水性エビ・カニ:日本 産淡水性・汽水性甲殻類 102 種.誠文堂新光社,文京区. 乾隆帝・竹川有哉・赤松良久 (2016) 汽水性希少ハゼ類から 見た瀬戸内海における保全上重要な汽水域の抽出 . 土木学 会論文集 B2 (海岸工学) 72: I_1417‒I_1422.
Lotze H.K., Lenihan H.S., Bourque B.J., Bradbury R.H., Cooke R.G., Kay M.C., Kidwell S.M., Kirby M.X., Peterson C.H., & Jackson J.B.C. (2006) Depletion, degradation, and recovery potential of estuaries and coastal seas. Science 312: 1806 1809. 鎌田磨人・小倉洋平 (2006) 那賀川汽水域における塩性湿地 植物群落のハビタット評価.応用生態工学 8: 245 261. 環境省 (2017a) 環境省版海洋生物レッドリストの公表につい て(http://www.env.go.jp/press/103813.html, 2018 年 3 月 30 日確認). 環境省 (2017b) 環境省レッドリスト 2017 の公表について (http://www.env.go.jp/press/103881.html, 2018 年 3 月 30 日 確認). 小林 哲 (2000) 河川環境におけるカニ類の分布様式と生態 生態系における役割と現状.応用生態工学 3: 113 130. Koyama A., Inui R., Iyooka H., Akamatsu Y., & Onikura N.
(2016) Habitat suitability of eight threatened gobies inhabit-ing tidal flats in temperate estuaries: model developments in the estuary of the Kuma River in Kyushu Island, Japan. Ich-thyological research 63: 307 314.
Koyama A., Inui R., Sawa K., & Onikura N. (2017) Symbiotic partner specificity and dependency of two gobies (
and sp. A) and four alpheid
shrimps inhabiting the temperate estuary of southern Japan. Ichthyological Research 64: 131 138.
Kurita T., & Yoshino T. (2012) Cryptic diversity of the eel
goby, genus (Gobiidae: Amblyopinae), in Japan.
Zoological Science 8: 538 545. 楠田哲也・山本晃一 (2008) 河川汽水域―その環境特性と生 態系の保全・再生.技報堂出版,千代田区. 桑江朝比呂・河合尚男・赤石正廣・山口良永 (2003) 三河湾 の造成干潟および自然干潟に飛来する鳥類群集の観測とシ ギ・チドリ類が果たす役割.海岸工学論文集 50: 1256 1260. 松田裕之・西川伸吾 (2007) 自然再生事業における十の助言