〈
研 究ノ ー ト〉
『
ド
イ
ツ
伝
説
集
』
に
お
け
る
〈
人
間
が
生
る
木
〉
伝承
と
神 話 的樹
木
植
朗
子
0
. は じめ に 神話 ,伝 説,メ ル ヒ ェ ン で は, しばしば 人間の動植 物へ の転生が語 られ る。 今生 を終 えた後 ,我々 は再び人聞 と なる こ とを望むの か,動物 となる か,植 物と なるか,そ れ と も死者の ま ま ひ た す ら安ら か な 眠 り を求め続け るの か.その願いは様々なか たちをと る。 人間の死後の物語に は,植物モ テ ィーフと 連関する ものが あ り,そ れ は あ らゆ る地 域の 伝 承に見ら れ, 共通する話 型 も少 な くない。 神話 を源 流に もつ 伝 説とメル ヒェ ンは,構 造 的に重 な り合 う部分 が多 く,本 来ジ ャ ン ル的にも類縁関係に あた る。 しか し,伝 説と い うもの の存 在は, 〈実際に起 こ っ た 出来事と して語 ら れる こ と〉に意 味 が あ り,メル ヒェ ンと は その点におい て異な る性質を持つ とい えよう。本論で は,伝 説の 語 りにおける 「真 実性」1)に注 目 し,人 間の生 と死 に関連する、 ある ひとつ の伝説 を取 り上 げる。 そ れは
19
世紀に公刊 されたグ リム兄 弟BrUdcr
Gri
皿 m の 『ドイ ツ伝 説集』DentscheSagen2
)の 第408
話目で,「樹 木か ら生 まれる人 間」 が登 場す る奇妙な話で ある。 この話の 「木」 の モ テ ィーフは 神 話 的 な 要素を多分 に含み,古 代の 植物礼 拝と死 生観との 関連が示 されてい る。 本論の 目的は,この 〈人間が 生 る 木〉伝 承の 神話性につ い て 論じ,『ドイツ伝 説集 』 の構 成の 中で,なぜ こ の話がこ の場所に収め ら れ たのか,とい う点につ いて明らか にすること で あ る。 『ドイツ伝説集 』 に収 録さ れて い る579
話に は,他に も樹 木 ・植 物の モテ ィーフが描か れて い る が,この話は く人 間の 肉体 を生み出す物 質〉と魂の 循 環を 主題とするとい う点におい て特 別な 意 味 が あ る。 なぜ グ リム兄弟は,この神話的樹 木の モ テ ィーフを歴史伝 説集に収録 したの か。 本 論で は 兄 ヤー1
) 例 えば グ リム兄弟は 『ドイツ伝説 集 』 に おい て,「メ ル ヒェ ンとの境 界が瞹味な 伝 説」 につ い て言 及して い る が,その瞹眛なもの をあ えて伝 説 集に組み入れ たこ とに, グ リム兄 弟の伝 説集 編纂意 図が含ま れてい る と 思 わ れ る。 伝承の語 りの 目的と,内容の 「真実性 」 は,グ リム兄弟に とっ て看過で き ない ものであっ た。2
)Briider
Grimm
(hrsg. von Heinz R611eke):DeutscheSagen
. Nachdruck der 1. Auflageユ
816
・und 1818. Frankfurt a.M
.(Deutscher
lqassiker
Verlag), 1994.伝 説集の作 品番号はDS
の後に表記する こ と とする。 邦 訳は論 者が 作 成 し た。
また以下 も参 照 した。 Deutsche
Sagen
.Vollsthndige
Ausgabe
, nachdem
Text
der
dritten
Auflage von 1891, mit
der
Vorrede
der
BrUder
Grimm
zur erstenAuflage
1816und l818und
mit einer Vorbemerkung von HcrmanGrimm
,Minchen
(Wklkler
Welthteratur
),1956『ドイッ伝 説 集 』 にお け る〈人 間 が 生 る 木〉伝承 と神 話的樹 木
297
コ プ ・グ リム の研究書で あ る 『ドイツ神話 (学 )』D8
嬬 珈 琢伽 嬢珍3)の 「樹 木」 の項 目 と, その他の樹 木信仰に関する項 目 も適宜参照 する こ と とする。1
. 『ドイツ伝 説集 』 の 〈人間の生る木〉伝 承 『ド イツ伝 説集』 の第408
話 目の く人 間が生る木 〉伝 承は, ゲルマ ン人Germane
とい う言 葉の 由 来に も まつ わ る話で あ る。 短い 話なので,こ こに全 文 を引用する。 古い民間伝承に よる と, ザク セ ン人は彼らの初 代の 王であるア スカ ネスAschanes
(=アス カニ ウスAskanius
)と共に,ハ ール ツ山地の巨岩か ら 生 まれ出た4) とい う。 その 岩は緑の森の 中心 部にあ り, 甘 味の ある鉱泉水5)が湧 き出る小さ な泉の 傍にあ る。 職 人の 間で は, 今 日 で もこの ような唄が残っ てい る。 そうして俺は ザク セ ンへ 向かっ たんだ 美 しい乙女が木に実るっ てい うザクセ ンにさ も し も俺 が その こ とを 思い 出 して いた ら ひ と り く らいは連れ て帰っ て きたっ ての に さ そ して,歴 史家の ア ヴェ ンテ ィヌ ス は ド イツ人 が木に 生っ た とい う話か ら,ゲル マ ン とい う名前が, ラ テ ン語のgerminare
(=発 芽する,成長 する)とい う語か ら派 生 し た もの であ る とい う珍しい 説 を導き出し た。一 『ザク セ ン人の起源』
Ursprung
der
Sachsen6
)こ の 〈人 間の生る木〉伝承は短い 話で ある が ゆえに, 様々 な解釈と疑 問が浮か び 上 がっ て
3)
Jacob
Grimm :Deutsche Mythologie.Ausgabe
wiesbaden
2003
,der
die
4
.Auflage
Berlin 1875−78 zugrunde liegt. Neu
gesetzte
,korrigiette
und Uberarbeitete Ausgabe flir marix − verlagGmbH
,Wiesbaden
,2007 .Deutsche
Mythologie
に つ い て は,先行研究に おい て も『ドイ ッ神 話 学』,『ドイツ神話 (学)』,『ドイッ神話』 など邦題が さま ざまで ある が,本 論 文に おい て は 『ドイッ神 話 (学) 』 と し た。
4
) ヴィル ヘ ル ム ・グレ ン ベ ッ ク (山室静 訳 ): 北 欧神 話と伝 説 (講 談社 学術 文庫 ),2009
,33
頁参照。 北欧神話に おい て も,人 間が岩か ら誕 生する様子が描か れて い る。 霜 か ら滴 り落ち る 雫 か ら生ま れた牝牛ア ウ ドウ ムブ ラが 巨人ユ ーミ ル に乳を与えて育て て い た。 その授乳 中,牝 牛が岩に含 まれる塩 分 を舐め てい た とこ ろ, 岩の中か ら人間の髪 が生 まれ, 頭, や がて 肉体全てが形成 された。 その後 ,体 躯た くましい 男の姿と なっ て, 岩か ら飛 び出し た。 北 欧神話におい て も, 岩 か ら誕生するの は男性となっ てい る。 牝牛 の唾液 と乳が 「水 」 のモ テ ィーフ と し て 示 さ れ てい る。 5) 聖書におい ては,祝福の こ と ば と 呪い の こ とば が泉の甘い水 と苦い 水に譬 え られ る こと がある。 ま た,塩水は甘い 水を作るこ と がで き ない と も述べ ら れてい る。 (ヤコ ブ3
,10− 12)この聖 書の内容は,口 を泉 ,こと ば を水に譬えて表現 して い る もの であ る が, 象徴的 に 「甘い水 」 が隠喩 的に使 用さ れて い る。 なお,注 4 に示 し た北欧神 話における 「岩か ら生ま れ る 人 間 」 の話で は, 味覚の 表現 と して 塩分の 表記が あ り対照 的である。 本 論における聖書の引 用には, 『聖 書 一 新 共 同訳 ・旧約 聖書続 編つ き 』 (日本聖書協 会,1993
)を使用する。6
)Deutsche
Sagen
:S
.450f
.くる。 まず,グ リ ムが
15
〜16
世 紀の歴 史家である ア ヴェ ンティヌ ス の 説と して紹介 し た話に よ る と. 〈木に生る〉の は ドイツ人で,性別 は 限定さ れ てい ない。 しか し,この 伝 説の 前 半部分では ザ クセ ン人の,そ れ も 「若い 美 女 」 だけが,まる で果実の ように 〈木 に生る〉,とい う。 ま た,ザク セ ン人の男性は岩か ら生 まれ る と され てい る が ,この男性 と女性の誕生の違い は何を意味す るのか。 次に,木 に 実っ た 人 間の魂 は どこか ら く るの か とい う不思議と,彼 女たちの 肉体は普通の人 間と同じ構 造を持っ て い るのか とい う疑 問が残る。 兄のヤーコ プ は 「ド イツ神 話 (学)』 で, 自然界のエ レ メ ン トを 四大 (土 ・火 ・水 ・気) に 分 け,そ れ ぞ れの エ レ メン トの 性 質を 帯 び た 精 霊の存在7)につ いて 「人 間 と神の 中 間 にあた る存在」 として 論じた。 こ の 「四 大精霊 」 に 関 す る 指 摘 は,16
世 紀 スイス の 医 師 で あ るパ ラケル ス ス の 『水の精, 気の精,地の 精 ,そ して火の精と その他の精霊 た ちの 書』働 8励 戳砂鋤 鍾嫣 鰓 微 諮 8な 励 脚 傭 鎚 励 耀 舷 ∫ρ認 距伽 S}が もとで あ り,彼 らは魂 を もたない超 自然的 な存在 ,つ ま り 〈デーモ ンDamon
>であるとい う。 そ れ で は, 木か ら誕 生 す る 入 間 は,四 大 精 霊の ような 〈デ ーモ ン〉の一種 と理解するべ き なの か。 人 間 が木に生る,人間の 身体の一部が木や 木で で き た物 質に生 えるの は, ドイツ語 圏 の伝 説に 限定さ れる もの で は ない 。 例 えば, イス ラム教美 術におい て 11 −・−12 世紀によ く使 用さ れた 図案に,「〈ワクワク〉の 木モ テ ィーフ ‘waq waq ’tree motifs 」 が あ り,こ
れ は 「入間あるい は動 物の形を し た果実が成 長する木で あ り, その 果 実は常に叫び続 け る」9} もの だ とい う。 また わが 国で は 『今昔物語 集 』 の巻第27 に収 録さ れて い る 「桃薗 の 柱の穴より児の 手を指し出で て人を招 く語第三 」1e )とい う話で, 木の節 穴か ら小 さな 子どもの手が 生えて,ひ らひ ら と 人を招き呼ぶ怪 異が あっ た こ とが伝 えら れてい る。 こ の ように, 語 り継 が れてい る 地 域 は 異 な る が, これ らの伝 承 11> は 人 間の身体が木に生 え る とい う点で共 通 してい る。 『ドイツ伝 説 集』 の第
408
話目の 木か ら 生 ま れる彼 女らの 肉体は,どの ように魂を その身に宿 したのか。7)
Deutschc Mythologie:S.617.
8
)Theophrastus Paracelsus:BUcher und
Schriften
Bd .4. Teil 9.田 desheim 1972.(Nach
−druck der Ausgabe Basel l
590
)
9
) ユ ネス コ の ホームペ ージに は,11
世紀の イス ラム教美術の紹介 と し て,アフ ガニ ス タン の ガズニ ー博物館に保存さ れて い る 「ワ ク ワ ク」 の木の図案が載せ ら れ, 引用
の解説が付さ れて い る。 た だ し,このペ ージの説 明に よる と,こ のモ テ ィーフが広 く使
用さ れる ようになっ たの は, 12〜13 世紀の ことである。
“Marble
transenna With ‘waq waq ’
tree motifs ” (Museum of Ghazni )参照
。 http://www .unesco .org /culture /mus 一fbr−dialogUe/
ite皿 /en /209/marble −transenna −With−waq −waq .tree−motifs
10) 国東 文磨 ,馬 淵和男 ,今野達 校 註 ・’訳: 今 昔物 語集 第 4 巻 (小 学館 /日本古 典 文 学全集 24 )1976 ,30− 31 頁。 11) 旧約 聖書の 「創 世記」 第 2 章 第 9 節で 描か れて い る 「生命の木」 は,人 間に永遠 の命を与えるもの で はあっ た が, 〈人間が生 える木〉で はない だろ う。 それは土と塵か ら 創ら れ たア ダム と,ア ダムの肋 骨か ら創ら れ たエ ヴァ の誕 生の場面 か ら考えて も , 生命の 木の果実を 「食べ る こと 」 に よっ て永遠の命が得ら れ る とい うこ と か ら も明ら かである。
『ドイツ伝 説 集』 にお ける く人 間 が 生 る木〉伝 承と神話 的樹 木
299
2
. 伝承に お け る樹木 信仰 宗教 社 会学 者の ミル チャ ・エ リ アーデ は,「樹 木 ,植 物.植 物 的象徴 などの宗 教的 機 能」 に着目 し,「樹木の シ ンボリズム」ω を解 明するた め に,植物礼 拝 の事例 を7
つ の群 に分 類し た。 その群は, 石 ≡ 木= 祭壇の型, 宇 宙像と して の木, 宇 宙における 神の顕現と しての木,生命,無尽蔵の 豊饒 ・絶対的実在の象徴 としての木 , 世界の 中心で ,宇 宙を支える木, 木と人間との神 秘 的 な絆, 植物の再生,春, 年の 「再 生」 の象徴 と して の 木,と論じ ら れてお り 13) ,こ の
7
つ の 分類 は,いずれ も樹 木が 「た えず再 生 してい る生きた宇宙 を表現してい る」 14) こ とに帰結 する とい う。 こ こ で, 第408
話 目の内容と樹 木モ テ ィーフの解 釈の ため に,『ドイツ神 話 (学) 』 を 参 照する。 ヤ ーコ ブ は, ドイツ語 圏の古 代信 仰の場であ る寺院Tempel
につ い て,以 下 の ように定義 した。 寺 院は森と共に存 在する。 寺 院は人 間の手に拠る加工 が施さ れ てい ない もの である。 寺 院 とは聖域 を指す。 それは自然の まま生長し た 生け垣に囲ま れ た部分で あ る。 15 ) 神々 は自然の 中に数多 く存 在 し,山頂や 洞穴 や河の 中 を 本 来の 棲家と して い る。 祭儀の 日 には一同が 聖域である森に集い t6), これ らの 神々 の 姿は,聖森Hain17
) に生い 茂る 木々 の枝葉に隠さ れてい る とい う。 そし て, 時代が下る に と も なっ て,かつ て い た る とこ ろ で見ら れた聖森に は,キリス ト教式の教会が隣接 し て建造 されるIB)ようになっ た。 こ の ように異 教世界の体現であっ た はずの 聖森は, 儀 礼 風 習の 変化とキ リス ト教 との融 合 を余儀 な くされ て い っ た が, ド イ ツ語 圏の人々の心の深 層において, 森の 聖 性 が 完全に失わ れ るこ と はな かっ た。 「聖森 に対 する崇 拝は,ザク セ ン人とフ リース 人の もとで ずい ぶ ん長 く継続さ れて い た。」 19) と い い , 第408
話 目の 〈人 間 が生る木〉伝 承の モ ティーフ には,聖森 と古 代の神々 との 関 連が示されてい る こ とが わ かる。 ザク セ ン族は ゲル マ ン系 諸民 族の中で も,独 自の祭祀 を保 持し続けた民族で あ り,キ リス ト教 受容 も比較的遅かっ た。 『ドイツ伝 説 集』 や 『グ リム童話集』 に は,魔 術的 な力 を秘め た樹木の モ テ ィーフや ,異界と して の森が描か れ てい る が,これ らには 『ドイツ神 話 (学) 』 で指摘さ れてい る汎神 論的 な 自然観 と,森深 12) ミルチ ャ ・エ リアーデ (久米博訳): 豊饒と再生 (宗教学概論2
) , (せ りか書房, エ リアーデ著 作集 第 2 巻 ),1985, 177 頁。 13 )14
) 15) 16) 17) エ リ アーデ前掲 書: 178 頁。 エ リアーデ前掲 書: ユ79 頁。Deutsche
MytholQgic
:S
,86
. ebd .S
,86
. Hain につ い て は,筆者が 「聖森 」 と訳し た。 本来は祭祀場となっ て い る森の 一 区画 を指 す語であるが,聖域と して の特性を示すた めに 「聖森」 とい う造語を用い た。 18 ) ebd .S
.90. 19 ) ebd ,S
.89.くに位 置する 霊 域へ の記 憶 が 混在して い る もの と 思 わ れる。 前述のエ リアーデ に よる植 物 礼 拝の
7
区分と,ヤーコ プに よ る神 話 的な 「樹 木」 モ テ ィーフ に関する記述 を第408
話 目の 〈人 間 が 生 る木 〉伝 承の 内容と 比べ れ ば,この 木 が存在す るの は,古代の宗 教意識が反映さ れ た 空間である こ とは間違い ない。 エ リアー デ は,木 は 自然の ま まに存在 するだけで 「再生 とい う発展 法則 」 を示し, 木は 〈世 界〉で ある20〕と 述べ た。 エ リアーデ の 7 区分は,いずれ もこ の 〈人間の 生る木〉伝承の宗教 的 な内実を指摘 する もので あるが,とくに6
番 目の 「木と人間との神 秘 的な絆 」 は 「大 女 神や水の シ ン ボ リズム と関係 を持つ 」 と さ れ,7
番 目の 「再 生の象徴 と しての木」 は, 「人 類 を 産 む 木 , 祖 霊の容器 と して の木,加入儀 礼に木が存在 する こ と」 であるため,こ れ に 注 目 したい。 以 下,人間を産み出す 「木」, その近 くに存 在する 「水」 の モティーフ の聖性 ,「木 」 の再生の力と祖霊の 関係につ い て 論 じ る。3
. 〈人 間 が 生 る 木〉伝承の 「木 」 と 「水」 の モ テ ィーフ ドイツ語 圏の神話の 中で,「木 」 と 「水」 を体現 するモ ティーフ と して 「世 界 樹 」 が あ る。 北 欧神 話に登場 する世 界樹 ・ユ グ ドラ シル z1) は,人 間 世界の 中 央に位 置する 〈神々 の住処 〉に生 えてい る トネリコ の 巨木で,地底まで続 く その根の 傍には, 神々 が集まる ウル ドの泉が存在 す る。 ウ ル ドの泉で は 「運命の3
女神ノ ル ン Norne 」 22) が 人 間の 運命 を司っ てい るが, この 「運 命を覗 き見る 呪術 的な力」 は, ドイツ語 圏の古代社 会におい て は女性性と結びつ くもの であ り,水のモテ ィーフ と関連の 深い もの で もあっ た。 北欧 神話に おい て,女神ノ ル ン たちはユ グ ド ラ シル に ウル ドの泉の水を か け,この大木の根 や 枝 が 枯 れ ない ように潤い を与え続 けてい る。 聖 地 に湛 え ら れ た水は命の根 源であ り,生命の循環は水を無 くし て は語れ ない 。 似た 例 と して,J
・G
・フ レイザーの 『金枝 篇 』 に, ド イツで慣 習化さ れてい る雨乞い の儀 式 が記さ れてい る。 豊作祈願と関連する この儀 式で は木の葉 を身につ けた人 間 に水を浴び せ か けるの だ が,この人 間の姿は 「植 物 を 擬 人化 」23 ) し た もの だ とフ レイ ザーは指摘 し てい る。 この ように水が内包してい る発芽と生長の イメージ は祭祀や風 習とも深 く関わっ てい る。 こ こ で第 408 話目の 〈人 間の生る木〉伝 承に 登 場 してい るモ テ ィーフを確認 す る と,以 下の4
つ の要素か ら内容が構成 さ れて い る。 20 ) エ リ アーデ前掲書: ユ80
−181
頁。 「木が世 界であるのは,木が世 界 を くりかえし, 世 界 をく象徴 する〉と同時に,そ れを要約 して い る か ら で あ る。 これ は 〈象徴〉とい うも の の 最初の概念で あり,これの お かげで,象徴の 有 効性は そ れ が象徴する 現実 と合体し て い る こ とか ら発 して い る。」 と書か れてい る。 21) グレ ンベ ッ ク前 掲書:35
−36
頁参照。22)
Manfred Lurker:Lexikon
der
G6tter und D2monen .(Namen /Funktionen /Sym
−bole
/Attribute
)Zweite
, erweiterteAuflage
.Stuttgart
(Kr6ner
Verlag
)1989
,S
.300
.23 )
J
・G
・フ レイザー (M ・ダ グ ラ ス監修 ,s
・マ コ ーレッ ク編 吉 岡晶子 訳): 図説『ドイツ伝 説 集 』 に お ける 〈人 間が生る木〉伝 承と神 話 的 樹木
301
〈人間の生 る木〉は,寺院 とし て存 在する 「聖 なる森 」 の 中央 部に位 置する。 〈人 間の生る木 〉は 鉱石が採れ るハ ール ツ山 地の 「巨岩」 の傍にある。 〈人間の生 る木〉の近 くに鉱泉水の 湧 き出る 「泉 」 が あ る。 〈人 間の生る木〉に は 「美しい 乙女 」 が実る。『ドイッ伝 説 集 』 における 〈人間の 生る木〉の傍らに も湧 き水が流れ,泉,女性, 中央 とい う場所 ,神々 のモ テ ィーフが,ユ グドラシ ル の伝承と共通して い る。 グ リ ム兄 弟の 収録 した こ の話で は,歴史家ア ヴェ ンティヌ ス の 説と は異な り,女性だけが木に実る。 ザ クセ ン人の男が 生 まれ る巨岩の 〈男性 性〉に 対 して, 女だ け が 誕 生する木と泉の モ テ ィ ーフは 〈女性性〉を 強 く示 す もの である。 それ は,こ の第
408
話 が 民 族の起 源 説話 で ある とい う側 面を持つ こ と,そ し て,この話で示さ れてい る樹 木の聖性 と は, すな わ ち 「出産 」 と 「生 命の誕生」 に まつ わ る 超 自然 的 な 力の啓示 に他な ら ない か らで ある。 ド イツ語 圏の民 間伝承に おい て, 「魂」 の転生に は,魂が死者か ら切 り離さ れ た 生者の領 域へ と渡っ てい く過 程 が 必 要 と なる。 こ の 過程に は.河 ・湖 ・海な どある水域 を 通 過 し なくて はな らない 24)。 これ は 人間が 地 上 に 生 ま れ るた めには, 母体を通過 する こ とが 必 要で ある ことと, 母胎内の羊水の イメ ージによる もの と 思 わ れ る。 『ドイツ伝 説 集 』 で は,ゲル マ ン神話の大地母 神ヘ ル タ Hertha か ら派生 し た女神ホッラ
Holla
(ホレさんFrau
Holle
)が,山頂の 泉の 底を棲家と し, 泉か ら赤ん坊を取 り上げ て女 た ち に 子宝を授け る25) とい うが,
ag
408
話 目の泉 (湧 き水)の モ テ ィーフ は, ホ ッ ラ さん伝承 と同じく,生命の誕 生 と 魂の循 環 を意味して い る。4
. 変 化す る 「魂 」 の 表象と 「魂の容れ物」『ドイツ神話 (学) 』 の 第
21
章 「樹 木と動物」 には,「自然は生命を持つ 」26 )とい う 「異教 的見 解 (
lie
Ansicht
des
Heidenthums
」 が 示 さ れ て お り, あ る種の動 植 物 27 ) を神々 の ように崇 敬してい た とい う。 そ れ は, 崇拝の対象で あ る 動植物が,極め て神々 や精 霊と 近い もの と して考えられて い た た め で, トーテ ミズム と関連して い る。 人 聞 ・動物 ・植 物がそれ ぞ れの形象に変身するこ とも 自然なこ と28) である とされてい た。 『ドイ ッ伝説 集』 には,人 間が眠っ てい る問,あ るいは昏倒 中 に,魂が動物の 形 をとっ て抜 け出す伝説が収録さ れてい る。 『ドイツ神話 (学 ) 』 の第26
章 「魂」 にはt 薔薇の つ ぼ み は死んだ若者の魂で あ る とい う話が載せ ら れ,緑の 菩提樹が青年男子 , 赤い 薔薇が 乙女の 魂の象徴である と述べ ら れてい る。 そ して,これ らの発想の底流 にある もの と し 24 )Deutsche Mythologie:
S
.443 . 25> DS4 〜8 参 照。 女に赤ん坊を授け る 話 はDS4
,女の 仕事 を助ける話は DS4 ・5,子 どもに贈 り物をする話は DS7 で紹介さ れて い る。26
)27
) 28 ) は猫 ,Deutsche
Mythologie:S. 489 . 植物で は, は し ば み, 胡桃 薔薇 ,柳 など。 動物で は,馬,蜂 鼠 蛇 な ど。Deutsche
Mythol
。gie
;S
.491
.例えば, DS247 で は下女の魂が赤い 小 鼠,DS249
でて,ギ リ シア神話や ローマ 神 話における人聞か ら植 物へ の変身譚29 )が紹介さ れ,キ リス ト教 的な伝 承におい て もこの流れ が受け継が れて い る こ とが示され てい る。
生きて い る 人 間の魂 が一時的に肉体か ら抜け出 す場合は, 自ら動 くこ とが で きる動物 の 形象3 ω を取るこ と がほ とん どであるの に対して,植物の 形象と なるの は,死後の 魂か 転生後である。 肉体が別の 生物へ 転化 する 31 )の は,どうい う場合なのか。 同 じ く 『ドイ ツ神話 (学)』 め 「魂」 の章で は,以 下の ような 説 明 が あ る。
肉体か ら逃 れ 出 る 魂 を花と して咲か せ. 鳥として飛び立 たせ るとい うの は,
2
つ の 優美な表象である。 どちらの イ メージも総 じて,植物 と動 物へ の変 身Verwandlung
に 関 連 し て お り,太古か ら信 仰 さ れて い た 輪 廻Seelenwanderung
の説に基づ い て い る。 こ の意 味において,魂は 現 世 に留ま る が,肉体につ い て は新 しい もの で満足 しな くて はな ら ない ,とい う不死性Unsterblichkeit
が想 定さ れ る ように なっ た。 32 ) 神 話 的 な 意味におい て 「不 死性 」 が動植 物の モ テ ィーフに結びつ い た場合,そ れ ら は魂 の永 久性 を示 しこそ す れ,肉体の永遠性を示 す もの で はない とい うこ とが, こ こ で述べ ら れ てい る。 肉体 も自然の 一部で,万物 流転か ら逃れる ことはで き ない 。『ドイ ツ伝 説集』 に おい て, 肉体が朽ち ること な く魂も離脱 しない 人物は,歴 史伝説集 で は洞窟で眠 り続ける聖者で あ り,土地伝説集に登 場 するカール大 帝な どの眠 る 王 た ち で ある。 通常で は民 衆が不 死となる こ とはあ りえない。 し か も, 不 朽遺体の伝 説は植 物 モ テ ィーフで はなく,土の モ テ ィーフ との 関連 が深い。 どこ に で もい る普 通の人物が神 の加 護に よっ て一時的に 「死 な な くな る」 伝 説は存在 する が,『ド イツ伝説 集』 に おい て は第
1
巻の1
話 目の 「ク ッ テ ンベ ル ク山の3
人の鉱夫 」 が唯一の もの で あ る。 このDSi
を含む冒頭3
話は鉱 山 を舞台 とし た伝説で,落盤事故で 生 き埋 め になっ た3
人の鉱夫た ちが,彼らの信 仰する 山の神 に よっ て救わ れる伝説で ある。 助か っ た鉱夫た ちは,生還 後 , 自らが 望 ん だ 生の期 限の 日 に静かに息を引 き取る。 この 伝説 はいわ ば往 生譚であ る。 伝 説集における命の永遠性はt 石 や鉱 物な どの無 生物の力を借 りて不 滅の肉体を手に 入 れ る か, ひ とつ の 魂を新 しい肉体に注 入する ことによっ て魂 をこの 世に留め続け る 以 外で は 表 現 さ れ得ない。 な ら ば 「植 物」 へ の転生譚は , あ るい は植物か ら誕 生する 人間 の 肉体と は,まぎれもな く <魂の新 しい肉体の獲 得〉に他な ら ない 。 『ドイツ伝 説集』 に おける死後の 肉体と魂との 関係につ い て は,以 下の ように区 分する こ と が可 能であろ う。29
) ebd .S
.615f
.30
) も ち ろ ん転生後に,人間が動物となる こ ともある。 31 ) 人間の 生命に植物の循 環性 を求める話が ある と同時に,植物を 人間に見立て る例 がある。 文学 者マ リ オ ・プ ラーッは, 花や植物の モ テ ィ ーフを 装飾のデ ザ イ ン の 取 り込 ん だアール ヌ ーヴォー様式につ い て, 「こ の幻の ひ とつ の起源は 『変 身物 語 』 の オ ウ ィ デ ィウス 」 で あ る と 語っ た。 マ リ オ ・プラーツ (浦一章 訳): 蛇との契約一 ロ マ ン主義 の 感 性 と 美 意 識 (あ り な 書 房),2002
,738
− 739 頁。32
)Deutsche
Mythologie
:S
.615
.『ドイツ伝 説 集 』 における 〈人 間 が 生 る 木〉伝 承と神 話 的 樹 木
303
図 1: 『ドイツ伝 説集』 にお け る 転 生 図2
: 『ドイツ伝説 集』 における 死者 と魂の変化 魂 転 生 譚 (魂の再生) 霊体 (肉体か らの離 脱 )囲
人 間 植物 動 物 小 動 物※蛇,鼠 猫 人 間 ※ 幽 霊人間の植物へ の 転生譚に のみ注目する と, 魂の表象と して植物の形象がとら れる こ と, 輪廻 (転生)に よっ て 肉体が植物へ 変 化すること,とい う
2
種 類の概念がある。 窮 地 に追い 込 まれ た人 間が植物へ 姿を変える話は, ギリ シ ア神話,ロ ーマ 神 話,北 欧神 話 などで見ら れ, この 場合 たい てい は植物の 名称が指定 34) される。 そして,人間が あ る 特 定の植 物へ 「変 身」 すること は,冬に 眠 り,春に 目覚め るとい う久遠の 生命のサ イ ク ル を得る とい うこ とで ある。こ こ で注 目すべ き は,人間の生 死 が植物に表象さ れ た場合 , それ は肉体の永遠性を捨 て るこ と を意味する点である。 ギリ シ ア神 話で は, 近 親相姦の 罪 を犯 して逃亡の 末に ミ ル ラ (没 薬)の木に 変身させ ら れた フェ ニ キ ア の王女 ミュ ラーと, その木から誕 生 したア ドニ スがい るが,死 後,ア ドニ ス の 肉体か ら流れ出た 血 はアネモ ネの花35> と なっ てい る。 ミュ ラーとア ドニ ス は植物へ 変 身
Verwandlung
を 果 た し,その魂は輪廻Seclenwande
g
のサイク ル の 中で救 済さ れてい る。 し か し,聖書に おい て は,イエ スは死か ら3
日後に 肉 体 を持っ て復活Auferstehung
する。 イエ ス の遺体に香料 と香油 を塗ろ うと し た女た ち は,岩の中の 墓で イエ ス の 肉体を見つ ける こ とが叶わ な かっ た。 女た ちが呼びか けら れ た 「な ぜ 生 きてお ら れ る方を死者の 中に探 すの か」 (ル カ24
,5
)とい う言葉や, 「私の 手 33) 魂が動物の 形を とっ て 肉体か ら 離 脱 す る伝 説とは異なる。34
) 牧 羊神パ ーン に追 わ れ,葦へ と姿を 変えた アルテ ミス の侍 女シュ リンクス に まつ わ る話がギリシ ア神 話にある。 北 欧神話に 登場 する女 神イ ドゥ ン は, 巨人に さ ら わ れ た 際に一時 的に で はある が, 胡桃の実 に変 身してい る。35
) Manfted Lurker:S
,6
,足 を見な さい。 ま さ しくわ た しだ。 触っ て よ く見 な さい。 亡霊に は肉 も骨 もないが,あ な た が たに見 える と お り,わ た しには そ れ がある。」 (ル カ
24
,39
)とい うイエ ス 自身の 言 葉か ら,イエ ス の復活は遺体が蘇っ たもの と判 断 せ ざ る を え ない 。新 しい 肉体を得る とい うこ とは,家族 や友人 との別 離を意味する と 同 時 に, 古い 肉体 の苦痛か らの 軽 や か な 脱却を意 味する。 人聞は本 当に 現 世の苦痛 を 乗 り越 えて,不 死の 肉体を手に 入 れるこ と を 望 むの だろ うか。 少な く と も 『ドイツ伝説 集』 にお ける永 遠の 命は,使命や願望 を果たすまで の一時 的 な もの と して描か れて い る。
5
. 『ドイツ伝説 集 』 の構 成と 〈人間が生る木〉伝承の意 味第
408
目につ い て,『ド イツ 伝説集 』 の構成か ら伝 説配置を確認 し たい。 以 下, 伝 説 配列 と構成につ い て論じる部分で は,『ドイツ伝 説 集』 に付 与さ れて い る伝 説の番号をDS
+ 数字 (話の収録の順番)で示す。DS408
が収録さ れてい る 『ドイツ伝 説集』 の第 2 巻 (歴 史伝 説 集)に は, ドイツ語 圏の多様な民族の起 源に まつ わる伝 説が収め ら れてい る。 こ れら民族の起 源に は奇譚と呼べ る ものが多 く, 内容 も神 話的で あ る。 歴史伝説 集 の伝 説配 列 に おい て,DS363
〜417
の 内容は民 族 伝 説で,DS408
もこ こ に含 まれる 。 ヤー コ プ に よる編纂メ モに よ ると,民 族名称 と そ れに対応 する伝説番号は 以 下の通 りである。 ゲルマ ン人 (族)DS363
〜367
ゴー ト族DS368
〜386
ロ ンバ ル デ ィア族DS387
〜407
ザクセ ン族 DS408 〜415 シュ ヴ ァ ーベ ン族DS41536
)〜41637
)歴 史伝説集の 連 続する冒頭
3
話 (DS363
〜365)は, いずれもゲル マ ン人と その聖地に 関する伝説でt 神に選ば れ た 「天に近い土地 」 としての 「河と森」 (DS363
).ゲルマ ン 人の信仰の対象である 「大 地母神ヘ ル タ 」 とその棲 家である 「河 と森」 (DS364
),「聖地 としての森」 (DS365
)につ い て述べ ら れ て お り,「神へ の供犠」 と 「森」 とい う共通テー マ に よっ て連関 してい る。 この冒頭の ゲ ルマ ン人に関する伝説 群 を 除 く と, 民族伝 説で は ゴ ー ト族 ロ ンバ ル デ ィ ア族 ,ザク セ ン族38 )t シュ ヴ ァーベ ン族 が 主に取 り上げら れ てい る。 そ して, 〈人間が木に生る〉とい うDS408
の伝説 は,伝 説グ ル ープ 「ザ ク セン 」 の 第1
話 目に位 置するが,他の民 族の出 自や 由来,起 源の伝 説と 比較 する と,ザ クセ ン族 だ けが,聖地で あ る森の 中央部に位置 する岩と木か ら誕 生 してい る。 ゴー ト族 とロ ンバ ル ディ ア族 とシ ュ ヴァ ーベ ン族につ い て は, 他の 地 域 か ら移動して き た部族で ある こ とが 強調さ れ て お り,ゲル マ ン諸民族の聖 域に存在 する 「聖 なる物 質 」 か ら誕生し た ザ クセ 36) DS415 は両 民族の伝承 を含む た め番 号が 重複してい る。 37) DS417 はバ イエ ル ン族の 民 族伝 説であるが, DS418 以降の伝説グル ープ との連 結 要素で もある。38) ザクセ ン族に敗 戦し たテ ユ ーリン ゲ ン族の 伝説は 「ザ クセ ン 」伝説 グル ープ に 含 まれて い る。
「ドイツ伝 説 集 』 に お ける く人 間 が 生る木 〉伝 承と神 話 的 樹 木
305
ン族は,別部族の出 自と その意味する とこ ろ が異 なる。 他の部族にも異界の存在と交わっ た 人間の話が収録されてい るが, 王の 血族や追放された異能 者 な ど, 一部の特殊な 人物 に 限 ら れてい る。 伝説グル ープの区分となっ たこ れ らの民 族 以外で も , 『ドイツ伝 説 集 』 に収録さ れて い る 別の部族に 目 を向ける と,DS377
「フ ン族の起源Ursprung
der
Hunnen
」39 )で,フ ン 族 が 「森に棲む民との子 孫で ある 」 と紹介さ れ てい る。 ゴー ト人 た ち は,ゴー ト語で 「ア リル ーネAlirunen
」 と呼ば れ る女 占い 師 た ち を 追放し た。 部 族か ら追われた彼女たちは 「牧羊神Faune
」 や 「イ チ ジ クの葉の男Feigenblattmanner
」 と呼ば れ る 「森の民VC
「aldleute1
と交わっ て子を 生 した。 その子 孫たちがフ ン族と なっ た とい う。 この伝説 も,牧羊神フ ァ ウン の名称が出て来る な ど神話的で あ り奇譚である こ とに は間違い ないが,岩や木か ら 生 ま れ た とい うザ ク セ ン 人と比べ る と, 聖性に関する表現が欠落して い る。6
. お わりに こ こ までの 〈人 間の生る木〉伝承の モ テ ィーフ解釈お よ び,配列上の意味 を 踏 ま える と, 一つ の 解釈と して提 案すれば,第 408 話 目の 内容 は 次の ようになる。 「聖森」 の 「聖 な る木」 が 人間の 肉体 を生 み育て,その魂は 近 く に あ る 「泉」 を通 り 「果 実」 である 人 間の 肉体に宿る。 天 に近いハ ール ツ山脈の緑の森は,神に選ばれた聖 地で あり, 大地母 神の恵み を受 けて い る。 木か ら生 まれた美しい乙女た ち は,英雄的 な力を象徴 する巨岩 か ら生 まれ た男性 とともに ひ とつ の民族の成 員となる。 こ の話は聖の シ ンボル で あ る木 か ら与え ら れ た命の恩恵を伝 える もので,祖霊信仰が 樹木信仰の形 を とっ たもの で ある。グリ ム兄 弟が編纂した 『ド イ ツ伝説集』 の 第
2
巻は 「歴史伝説 集」 である が,本 来 歴 史に おい て 死 は個 人 的なもの で な く,人間の死は記録の ひ とつ に過 ぎ ない 。 しか し伝説 の 「真実 性」 は,自 然の生命のサ イクル を伝え, 終わりある 肉体に 聖 な る自然の祝 福 と なぐさ め が存在するこ と を我々 に教える。39
)Dcutsche
Sagen:S
.413f
.306
reme
]
Die
Motive
der
mythologischenBliume
in
den
Deutschen
5bgen
der
BrUder
Grimm
-
Die
alte
Sage,
dass
die
Menschen
ausden
Btiumen
kamen
Akiko
UE
In
diesem
Aufsatz
versucheich,
die
Symbolik
der
Btiume
in
den
,,DeutschenSagen"
zu erkliiren.Von
der
Antike
angab
es eine engeBeziehung
zwischenMensch
undBaum.
Der
Baum
diente
als
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fur
Seelenwanderung
undVerwandlung,
urnihn
ranken sich zahlreicheSagen,
Mythen
undMljrchen.
Die
Deutscben
.S27gender
Gebnider
Grimm
bestehen
aus zweiTeilen.
Im
erstenBand
(1816)
befinden
sichSagen
zubestimmten
Orten.
Det
zweite(1818)
ent-halt
historische
Sagen.
Die
Sage
willWirklichkeit
vemitteln,ihre
Stoffe
beziehen
sich auf tatsachliche
Geschehnisse.
Zu
ihnen
geh6rt
die
Annahme,
dass
siebestimmte
Ereignisse
undBegebenheiten
widerspiegeln.Der
Inhalt
einerSage
selbstist
jedoch
manchmal nur unrvollsttindig und mussim
Zusammenhang
mitdem
Gesamtkonzept
der
Deulsthen
5}rgen
gelesen
werden.Auch
die
handschriftlichen
Notizen
Jaceb
Grimms
weisen aufdic
Bedeutung
einzelnerMotive
hin.
Dadurch
kann
man zu einembesseren
Verstlindnis
der
Sagen
gelangen.
VCJas
fUr
eineBedeutung
erkanntendie
Bnidet
Grimm
nunim
Motiv
der
Btiume?
Dieses
Motiv
basiert
aufAnsichten
des
Heidentums,
esist
Ausdruck
flir
Unsterblichkeit
undWachstum.
Das
Reisig
wird alsSymbol
des
Kosmos
gesehen.
So
gibt
es zumBeispiel
die
Erztihlung
,,U}sp,z{,rgder
.SLiabsen"(J])S408)
in
den
historischen
Sagen,
wo erztihlt wird,d2ss
die
Menschen
ausden
B2umen
kamen.
Auch
die
DutSvhe
Mlthol21gt'e
vonJacob
Grimm
liefert
zusatzliches Mate-rial,beispielsweise
den
Baum
des
Lebens
odefWeltbaum
(Yggdrasib
undden
heiligen
Hain.
Der
Baum
als
Motiv
findet
sich oftin
der
Nihe
vonBrunnen,
wei1Brunnen
und
Quellen
in
der
Mythologie
in
Zusammenhang
mitdem
Reich
der
Toten
gesetzt
waren unddie
Seele
des
bebens
beinhalteten.
Vor
nochlilterem
mythi-schem