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インターネット・テレビ電話【Skype】を活用した重症心身障害児(者)の終日医療相談と家族間交流

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Academic year: 2021

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(1)在宅医療助成 勇美記念財団. 2015 年度(前期)一般公募. 完 了 報 告 書. インターネット・テレビ電話【Skype】を活用した 重症心身障害児(者)の終日医療相談と家族間交流. 研究代表者 共同研究者 研究協力者. 研究代表者所属機関. 提出年月日. 目次. 三田勝己 林 時仲 赤滝久美 平元 東 岡田喜篤. (社会福祉法人北海道療育園・園長付) ( 同 上 ・園長) (大阪電気通信大学医療福祉工学部・教授) (社会福祉法人北海道療育園・副理事長) (社会福祉法人北海道療育園・理事長). 社会福祉法人 北海道療育園 〒071-8144 北海道旭川市春光台 4 条 10 丁目. 2016 年 8 月 15 日. 1.研究の背景 2.研究の目的 3.研究のフィールドと個別課題の設定 4.ICT 機器システムの構築 5.在宅重症児(者)の終日医療・生活相談 6.在宅重症児(者)の家族間交流:お喋り広場 7.おわりに 8.引用文献 付録1 Skype の使い方:ノート型パソコン 付録2 Skype の使い方:タブレット型パソコン 付録3 Skype の使い方:Skype 内臓 Web カメラ. 1. 2 4 5 6 9 11 13 14 15 19 27.

(2) 1.研究の背景 (1) 重症心身障害児(者)と地域生活の現状 改正児童福祉法第 7 条の 2 によれば,重症心身障害児(以下,重症児と略す) は,重度の知的障害(知能指数:35 以下)と重度の肢体不自由(運動能力:座位以 下)が重複した 18 歳未満の障害児と定義されている。図1の大島の分類では区分 1 ~4 に該当する人たちである。重症心身障害は脳起因性の重篤な疾病によって生じた 障害であり,その主要な病因は,出生時・新生児期の低酸素症又は仮死(20%),出 生前の不明の原因(11%),周生期以降の髄膜炎・脳炎(9%)であり,これら上位 3 病因が 40%を占めている 1)。また,重症児は多くの場合,脳性まひ,てんかん,知 的障害,行動障害が重複した病態を呈し,さらに,呼吸器疾患を始め全身諸器官に わたる重篤な合併症を有する 2)(図2)。そのため,日常的な生活介護のみならず, 常に医療的な管理が不可欠である。18 歳以上の同様な障害をもつ成人に対しては行 政上定義されていないが,障害者総合支援法による療養介護の対象者として重症児 と同様な医療・福祉サービスが提供されている。このような背景から,ここでは成 人を含めて重症児(者)と総称する。. 図1. 大島の分類. 2.

(3) 図2. 重症児(者)の全身諸器官に及ぶ合併症. 重症児(者)数は約 43,000 名と推計されており,約 14,000 名が重症児施設の入所者 である。重症児施設は,福祉施設としての「医療型障害児入所施設」かつ「療養介 護事業所」であるとともに,医療法に基づく病院でもある。すなわち,重症児施設 においては高度に専門的な医療と日常的な介護・介助サービスが渾然一体となっ て,他のいかなる施設や病院にもない幅広いサービスが提供されている。一方,そ の 2 倍の約 29,000 名は居宅で主に家族によってケアされている。重症児(者)の在宅 ケア傾向は以前から指摘されており,かっては重症児施設による定期的な医療管理 や緊急時の対応などによって支えられてきた。現在は在宅支援制度が充実して,多 くの看護・介護の居宅サービス事業者も重症児(者)支援に関わるようになってきてい る。しかし,居宅での医療を含めたケアの水準は,地域によって重症児施設でのそ れと比べてまだまだ格差があるのが現実であり,地域生活を続けている家族の中に は限界を訴えるケースが増えている。 (2) これまでの研究経緯 20 世紀後半に始まった IT 革命は 18 世紀の産業革命にも比肩するといわれ,急速 に発展したコンピュータや情報通信技術(ICT)が社会や生活のあり方に劇的な変化 をもたらしてきた。障害者対策においても ICT の活用が始まっており,肢体不自由 や視覚・聴覚障害など身体障害者の日常生活活動や社会参加の支援に一定の成果が 3.

(4) みられる。一方,在宅重症児(者)の医療や生活を支援するための系統的な事業は未だ 皆無といっても過言ではない。我々は,上述したような在宅重症児(者)と家族の実態 を鑑み,15 年前に ICT を利用した地域生活支援の実証研究を開始した。その研究経 緯は以下の 3 つの段階に大別される。 第 1 段階(2001 年)3, 4):遠隔医療支援の研究をスタートした。そこでは,ISDN 通信回線(64kbps)を使って音声・映像・バイタル信号(7 項目)を双方向に通信す る ICT システムを開発し,1 居宅 1~2 年間を目途に 12 居宅で実証運用を行った。 その結果,ICT を利用した遠隔医療が極めて有用であることが確認され,家族に大 きな安心感をもたらした。一方,技術的には十分な通信速度を確保できなかったこ とや,7 項目のバイタル信号に必ずしも必要でない項目が含まれていた。そのため, 重症児(者)に特化した改良の必要性が指摘された。 第 2 段階(2005 年):重症児(者)に特化した医療支援型の ICT システムの開発に着 手した。すなわち,重症児(者)の最も重大な合併症は呼吸器疾患であり,バイタルモ ニターは血中酸素飽和度や炭酸ガス分圧など呼吸器機能 2 項目を中心とした。しか し,重症児(者)は呼吸量が少ないことから,当時の技術では炭酸ガス分圧の測定がで きなかった。また,ICT システムのユビキタス化を図るために,通信回線に携帯電 話網を使ったが,当時の通信速度は十分でなく,実用に至らなかった。 第 3 段階(2010 年)5):高速の光通信回線の利用が可能となり,ICT システムにこ の通信回線に対応した市販のテレビ電話を導入した。そして,地域での共同生活, 特別支援学校の訪問学級など重症児(者)の地域生活を幅広く支援する情報ネットワー クの実証研究を行った。その結果,これまでの医療支援のみならず,福祉・教育を 含めた包括的な地域生活支援の重要性と ICT の有用性を明らかにできた。なお,こ れらは支援提供機関から利用者への【縦型情報ネットワーク】と位置づけられるか もしれない。 2.研究の目的 重症児(者)の最大の問題は日常的な医療管理や急変時の適切な対応であり,重症児 (者)の高度な医療を担うことができる重症児施設は全国約 150 箇所ある。しかし, 26,000 名の在宅重症児(者)にきめ細かく対応することは困難であり,地域の基幹病院 や福祉施設との連携が極めて重要となる。また,重症児(者)の重度重複障害,特別な 病態や,それに起因する生活の困難さを地域の中で理解されることは難しく,家族 のストレスや孤独感は測り知れない。 我々は,これまで,ICT を利用して重症児施設から在宅重症児(者)とその家族,つ まり,支援提供機関から利用者を支えるという主として一方向縦割りの【縦型情報 4.

(5) ネットワーク】を対象としてきた。こうした縦型支援に加えて,支援提供機関や利 用者が互いに横方向に連携したネットワークが構築できれば,より充実した支援が できることを期待し,【横型情報ネットワーク】という概念を着想した。 そこで,本研究では,重症児(者)の地域生活の支援を充実する新しい方策の第一歩 として,ICT を活用した,(1)重症児施設による終日医療相談,(2)家族間の交流とい う 2 つの情報支援モデルの実証研究に取り組むこととした。前者は支援提供機関か ら利用者への【縦型情報ネットワーク】,後者は利用者同士の【横型情報ネットワー ク】に位置づけられるが,これらの情報ネットワークの実証運用と評価を行い,実 用化への可能性と課題を追究した。 なお,こうした情報支援では,パソコンや通信回線機器などの ICT 機器システム を一般家庭に導入することになるが,ICT 機器の取り扱いに不慣れな家族も少なく ない。そのため,現段階での利用可能な通信回線環境や ICT 機器の調査を行うとと もに,誰でも ICT を利用できるように,分かりやすいマニュアルを開発することも 本研究の必須の課題とした。 3.研究のフィールドと個別課題の設定 (1) 研究フィールドと対象者 本研究では,社会福祉法人「北海道療育園」が担っている在宅重症児(者)の支援域 を研究フィールドとした。北海道療育園は道北地域,北・中空知地域,オホーツク 地域の医療支援を行っており,その地域は北海道の 1/3 に相当する(図3)。その一 部である道北地域を取り上げても,総面積約が約 20,000 ㎞ 2 と東京都の 8.5 倍あり, 都市間距離も旭川市と稚内市が約 250km と東京~浜松間に匹敵する広大な地域であ る。一方,地域人口は約 65 万人と東京都の 1/20 に過ぎず,人口密度では全国平均と 比較しても 1/10 の過疎地域である。加えて,冬季は膨大な降積雪による影響で近隣 の移動さえ困難となり,特に緊急時を考えると重症児(者)家族の不安は限界に達す る。本研究は,こうした支援ニーズの高い地域に居住する 7 名の在宅重症児(者)とそ の家族(稚内市,紋別市,紋別郡,芦別市),そして,重症児施設「北海道療育園」 (旭川)の協力を得て実施した。. 5.

(6) 図3. 北海道療育園の在宅重症児(者)の支援域. (2) 個別課題 本研究の目的は縦型および横型情報ネットワークによる重症児(者)とその家族の地 域生活支援の充実を目指すものであり,以下の 3 つ個別課題を設定して研究を遂行 した。次節以降,これらの 3 つの個別課題について,その方法と実証研究の成果を 述べる。なお,課題 2 は,本研究のタイトルで「終日医療相談」と表記したが,重 症児(者)にとって疾病への対応と生活支援は不即不離の関係にあり,この個別課題で は,生活相談を含めて「終日医療・生活相談」とした。 課題 1:ICT 機器システムの構築 課題 2:在宅重症児(者)の終日医療・生活相談 課題 3:在宅重症児(者)の家族間交流 4.ICT 機器システムの構築 (1) 方法 ICT を利用した地域生活支援では,音声と映像が双方向に通信できるテレビ電話 機能が中心となる。こうした ICT 機器システムは当初独自に開発を行ってきたが, 6.

(7) 技術的にも価格的にも日進月歩目覚しい進歩がみられ,市販のパソコンやアプリケ ーションソフトを援用しても十分対応できるまでになった。 そこで,本研究ではインターネットテレビ電話「Skype」を使用することにした。 Skype はパソコンに Web カメラを付加し,専用アプリケーションをインストールす れば比較的簡便に利用できる(図4)。また,デスクトップ型やノート型のパソコン だけでなく,タブレット型パソコンやスマートフォンにも対応しており,必要に応 じてユビキタスに活用できる。しかし,パソコンの性能や通信回線の通信速度を一 定以上に確保する必要があり,参加人数が多いグループ通話ほどより速い通信速度 を必要とする。これが ICT システムを安定して稼動させる必須要件であり,高性能 のパソコンや光通信回線を導入するなどの対応と確認を行った。また,Skype は解り やすく簡便に入手できるマニュアルが提供されておらず,一般の利用者が容易に理 解できるマニュアルを準備しておくことが不可欠である。そのため,本研究では, Windows の OS を搭載したノート型パソコン Acer Iconia W510 と,Apple の OS (iOS)を搭載したタブレット型パソコン iPad を対象として,独自のマニュアルを 新たに作成した。これらは関係者が幅広く利用したり,参考となると考え,本報告 書末にそれぞれ付録1および2として添付した。. 図4. パソコンを使った Skype システム. しかし,一般の人たちが誰でもパソコンの操作に慣れているわけではなく,本研 究の対象者 7 名の重症児(者)家族の半数がパソコンに馴染みがなかった。そのため,. 7.

(8) Skype アプリケーションが内蔵された特別な Web カメラ(Logicool TV Cam HD)も 導入することにした(図5)。この Skype 内蔵 Web カメラは,音声・映像出力端子 を家庭用のテレビの HDMI 端子に接続すれば,パソコンを使うことなく,臨場感の ある大きな画面で利用できる。操作も付属のリモコンでテレビのチャンネル操作の ようにできるので,パソコンに不慣れな人たちでも比較的馴染みやすく簡単であ る。しかし,Skype 内蔵 Web カメラについても操作マニュアルがなく,一般利用者 でも分かりやすいマニュアルを新規に作成した。このマニュアルも付録3として本 報告書末に添付した。. 図5. Skype 内蔵 Web カメラを使った Skype システム. (2) 技術的検証結果 支援提供機関の重症児施設「北海道療育園」では,ノート型パソコンに Web カメ ラを付加する構成をとり,安定した稼働を確認できた。 利用者(在宅重症児(者))7 居宅の ICT 機器システムみると,比較的パソコン操作 に慣れている 1 居宅では,普段使用しているノート型パソコンに Web カメラを付加 した構成であった。普段からスマートフォンやタブレット型パソコンを使っている 2 居宅では,Web カメラが内臓されたタブレット型パソコン(iPad)を利用した。パ ソコン操作が不慣れな 3 居宅と大きな画面の利用を希望した 1 居宅では,Skype 内蔵 Web カメラを家庭用テレビに接続する構成をとった。また,パソコン用および 8.

(9) Skype 内蔵 Web カメラ用の操作マニュアルを独自に開発したが,実際に利用者に使 用してもらい,概ね理解できたとの好評を得ることができた。 Wi-Fi 環境は半数の居宅に整っていたが,未整備の居宅には新規に無線ルータを設 置して Wi-Fi 環境を構築した。実証研究を通して,パソコン(ノート型,タブレッ ト型)や通信回線の速度には大きな問題はなく,安定した通話を確認することがで きた。また,Skype 内蔵 Web カメラも安定した通話を確認できた。 ところで,Skype 内蔵 Web カメラによるビデオ通話機能は 1 対 1 の通話に限ら れ,3 箇所以上のグループ通話では音声通話のみに限られた。Skype のホームページ によれば,近日中にビデオ通話機能がグループ通話にも拡張されることが掲載され ていた。しかし,研究途上で Skype 内蔵 Web カメラ Logicool TV Cam HD の販売が 終了してしまい,その後の新規購入ができなくなった。また,Skype 内蔵 Web カメ ラからインターネットへ接続する際に機器内部で不具合が発生したようであり,使 用していた全ての Skype 内蔵 Web カメラが稼働しなくなった。製造元の Logicool に 問い合わせたところ,同じ機器の不具合が各地で発生しており,そのことは把握し ているものの,適切な回答や対策が示されず,実証研究を途中で中止せざるを得な くなった。現時点で,不具合の対策やグループビデオ通話への改良など課題の先行 きが不明な状態であり,パソコン操作に馴染みのない不慣れな人たちへの ICT 支援 の普及が懸念されるところである。 5.在宅重症児(者)の終日医療・生活相談 (1) 方法 この「終日医療・生活相談」は,北海道療育園が支援提供機関になり,在宅重症 児(者)とその家族を利用者とした【縦型情報ネットワーク】と位置付けられる。この 医療・生活相談は祝祭日,昼夜を問わないことを前提とし,そのための ICT 機器の 設置および人的配置を行った。すなわち,ICT 機器は,ノート型パソコンに Web カ メラを付加する構成をとり,(1)平日昼間の窓口を行う北海道療育園の支援事業部 (地域サービス事業の担当部署)と(2)祝祭日や夜間の窓口を行う事務部(日直ある いは当直者が常駐)の 2 箇所に設置し,年中 24 時間途切れることない通信環境を整 えた(図6)。北海道療育園の関係スタッフは全員がパソコンや Skype の操作を習 得した。 相談の通話が入った際には,まず昼間あるいは夜間の何れかの窓口でその内容を 聞き,専門医や専門職員へ連絡して相談に対応した。また,利用者がテレビ電話で 相談をすることに不慣れなことも想定されたので,必要に応じて北海道療育園から も居宅へ通話をするようにした。お互いに顔を見ながらコミュニケーションを深め るとともに,健康状態の確認や生活上の問題などをたずねるように努めた。. 9.

(10) 図6. 終日医療・生活相談の情報ネットワーク構成. (2) 実証運用の成果 この課題の対象者(利用者)は 7 名の在宅重症児(者)とその家族(稚内市,紋別 市,紋別郡,芦別市)であった。実証運用は約 1 年間行われたが,この間に利用者 から発信された通話は限られた回数であり,7 居宅中 4 居宅からのそれぞれ 1 回にす ぎなかった。一方,支援提供機関の北海道療育園からの発信は 3 居宅に 25 回行われ た。 医療相談の内容は,喀痰,鼻炎,肺炎後の回復状態などの健康状態のチェック, 北海道療育園への外来受診日の調整,外来受診での検査結果の説明,担当医による 遠隔診察,母親の健康状態や疾病の相談などであった。生活相談の内容は,地域の 通所施設の相談,介護者への精神的支援,認定区分の書類の書き方などの福祉制度 の相談,特別児童扶養手当のための診断書の作成依頼,巡回療育相談の日程調整な どであった。 ところで,前述したように,ICT が発展途上にあった 15 年前に,問診や視診のた めのテレビ電話機能に加えてバイタル信号をモニタリングする機能を装備した遠隔 診療 ICT システムを開発し,在宅重症児(者)12 居宅で約 3 年間にわたって実証研究 を行ってきた 5)。当時は高速の光通信回線がなく,64kbps の ISDN 通信回線のみで通 信状態が常に安定しているとは言い難い状態であった。遠隔診療は,北海道療育園 から居宅へ発信する形式をとり,医師(実証研究の研究者)が 10 日から 2 週間に 1 10.

(11) 度定期的に通話を行った。逆に,利用者から北海道療育園へ発信することは,特別 な場合を除いて行われなかった。このような限られた条件下での実証運用であった が,家族からは,ICT によって専門医と常につながっている,相談できる相手がい るという安心感があり,さらに映像によって顔が見えることがその安心感をより大 きくしたとの感想が得られた。また,こうした機会は介護者の精神的な負担や孤独 感をかなり軽減できたようであった。 一方,今回の「終日医療・生活相談」の実証研究では,この ICT システムはほと んど利用されなかったという結果になった。その理由としては,15 年前と比べて地 域の基幹病院で在宅重症児(者)の日常的な医療管理ができていること,生活支援に関 しても地域の社会資源が充実してきたことが推察された。確かに,風邪などの一般 的な内科的な疾患であれば地域の病院の方が便利であるかもしれない。また,普段 関わりの少ない重症児施設に改めて医療や生活の相談をすることは敷居が高く,戸 惑いをもつことも推察される。しかし,重症児(者)固有の疾患や合併症への対応には 専門医療機関でもある重症児施設が必要とされ,また,生活面でも同様なことが考 えられる。この情報支援システムが有効に活用されるには,支援提供機関から定期 的な ICT 家庭訪問を行い,普段から家族との親密なコミュニケーションを築いてお くことが重要な要件であると考える。その意味において,今回の実証研究はサクセ スな結果とはならなかったが,今後の取り組みに向けた貴重な示唆を得ることがで きた。 6.在宅重症児(者)の家族間交流:お喋り広場 (1) 方法 在宅重症児(者)の家族は,我が子の重度重複した特別な障害ゆえに,地域の人たち の理解を得たり,気楽に相談したりすることは容易ではなく,孤立しやすい傾向に あり,そのストレスや孤独感は測り知れない。とりわけ,本研究の対象者である北 海道に在住する在宅重症児(者)居宅は過疎遠隔地に点在し,互いに数 10km から 50km 程度離れていることは特別なことではない。在宅重症児(者)の家族同士が気軽 に交流でき,苦悩や喜びを分かち合うことができれば,精神的に大きな支えや活力 となることが期待される。しかしながら,重症児(者)を同行した家族間の交流は距離 的にも時間的にも困難である。本課題は,ICT のグループ通話機能を活用して複数 の重症児(者)家族がインターネット上で交流できる場を構築し,実証することであ り,利用者(重症児(者)と家族)同士の【横型情報ネットワーク】と位置付けられる (図7)。ここではこの ICT を使った家族間交流を「お喋り広場」と呼ぶことにし た。 実証研究の協力者は北海道オホーツク地域 3 個所に在住する重症児(者)と家族であ. 11.

(12) った。介護者(母親)は年齢が 60 歳前後であり,パソコンやインターネットに馴染 みが少なかった。そのため,3 家族とも Skype 内蔵 Web カメラを使用し,家庭用テ レビに接続する方式をとった。. 図7. 家族間交流の情報ネットワーク構成. (2) 実証運用の成果 本課題の実施に先立って約 1 年間,ノート型パソコンを使った Skype による「お 喋り広場」の予備研究を行った。しかしながら,パソコンや Skype の操作が複雑で あったり,予めパソコンの立ち上げが必要であったりしたために,通常の電話より 使いづらいことが指摘された。また,「お喋り広場」の開催日程や頻度は家族の意向 に委ねたため,機器操作の煩雑さも重なって,「お喋り広場」が継続的に開催される ことは無かった。 こうした予備研究の課題を踏まえて,本研究では Skype 内蔵 Web カメラを優先的 に利用することにしたのである。その結果,Skype の立ち上げは短時間でスムースに 行われ,また,操作もテレビと類似したリモコンを使ってできることから,介護者 にとっても好評であった。しかし,Skype 内蔵 Web カメラを使ったビデオ通話は 1 対 1 対応に限られ,今回のような 3 拠点以上では音声通話のみとなった。Skype アプ リケーションの提供者 Microsoft は近日中に 3 拠点以上のグループビデオ通話機能を 提供する予定を示していたが,今回の実証研究には間に合わなかった。結果とし 12.

(13) て,「お喋り広場」は音声通話のみのコミュニケーション広場となった。 また,この「お喋り広場」の実施状況を把握し,的確に評価するために,北海道 療育園支援事業部のスタッフ(看護師)や工学を専門とする研究代表者(大学兼 務)が随時参加するように努めた。その結果,「お喋り広場」の話題が専門的な医 療・生活相談や ICT の技術的な問題になった時には,その役割を果たすこともでき た。結果的に,この「お喋り広場」は,複数の利用者と複数の支援提供機関が同時 に参加するという,縦型と横型情報ネットワークを統合した【格子型情報ネットワ ーク】となった(図7)。 「お喋り広場」の実施期間は概ね 1 年間,開催頻度は月に 1 回とし,研究代表者 が予め日程調整を行って,継続的に開催するようにコントロールした。また,時間 は当初 30 分程度で家族の負担にならないようにしたが,会話が盛り上がり 1 時間以 上続くこともまれではなかった。 会話の内容は,北海道道北地域の半年にも及ぶ冬期の厳しさ,夏期の快適さなど の気候の話題や日々の出来事の話題に始まり,40 歳前後の我が子の健康状態や合併 症の実態や遠隔地ならではの医療の問題や悩み,介護者の高齢化とそれに伴う体調 不良や病気への対応,レスパイトのためのデイサービスや短期入所などの社会資 源,先を見据えた重症児施設への入所の可能性など,重症児(者)固有の医療・生活に わたった。「お喋り広場」を通して,お互いの状況を気楽に語りあい共有できたこと で,気持ちが休まり,癒しにつながったとの感想が聞かれた。また,重症児(者)本人 にとっては,様々な人たちの会話が経験のない非日常的な場面であったことから, 筋緊張が高まったり,時には「お喋り広場」が終わった後も興奮状態が続いた。し かし,回数を重ねるに伴って緊張状態が低減し,会話に耳を傾けたり,自分なりの 表現で参加する様子がうかがわれた。この「お喋り広場」は重症児(者)当人に対して もコミュニケーション環境を広げ,ICF(国際生活機能分類)が提唱する「参加」を 促す可能性を検証できたと考える。 7.おわりに 在宅重症児(者)の特徴の一つとして,死亡年齢が重症児施設の入所者より低いこと があげられる。重症児(者)は固有の原疾患や重篤な合併症を有することから,専門的 で日常的な医療管理が必要であるが,在宅重症児(者)はその生活環境からその制限が 大きい。また,重症児施設への入所年齢は二極化しており,一方は超重症児とよば れる人工呼吸管理を必要とする乳幼児期の入所者であり,他方は介護者が高齢化し て居宅での介護が困難となった在宅重症児(者)である。今日,重症児施設は入所者の 医療・介護のみならず,在宅重症児(者)への支援の充実が喫緊の課題となっている。 本研究では,ICT を活用した在宅重症児(者)への縦型,横型の支援モデルを展開して きたが,ICT が在宅重症児(者)と家族を支える手段の一つとして重要な役割を果たす. 13.

(14) ことができることを確信した。本研究では引き続きこれらの成果を広く報告し,在 宅重症児(者)の地域生活を包括的に支援する格子型情報ネットワークの実用化を図り たいと考えている。 末尾ながら,本研究遂行に多大な協力をいただいた北海道療育園支援事業部の関 係各位に深謝致します。本研究は公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成 に浴して行われた研究であり,謝意を表します。 8.引用文献 1) 三上史哲,三田勝己,平元. 東,岡田喜篤,末光. 茂,江草安彦:公法人立重症. 心身障害児施設入所児(者)の実態調査の分析-病因別発生原因とその経年的変化 -.重症心身障害学会誌 33: 311-326, 2008. 2) 平元. 東:重症心身障害児(者)の状態像の診断と評価.岡田喜篤(監修)新版. 重症心身障害療育マニュアル,医歯薬出版,34-41, 2015. 3) 平元. 東,三田勝己,岡田喜篤,赤滝久美,宮治. (IT)を活用した重症心身障害児(者)の在宅支援. 眞,早川富博:情報技術 Ⅰ.生活実態とIT支援シス. テムに関する調査.重症心身障害学会誌 32 (1): 91-98, 2007. 4) 平元. 東,三田勝己,岡田喜篤,赤滝久美,宮治. (IT)を活用した重症心身障害児(者)の在宅支援. 眞,早川富博:情報技術 Ⅱ.ITシステムの開発と実. 証運用.重症心身障害学会誌 32 (1): 99-105, 2007. 5) 三田勝己,平元. 東,赤滝久美,花岡知之,渡壁. 誠,岡田喜篤:重症心身障害. 児(者)の在宅生活を支援する ICT(情報通信技術)システム-3 つの情報ネットワー クモデルによる実証研究-.重症心身障害学会誌 37 (1): 125-132, 2012.. 14.

(15) 付録1. Skype の使い方:ノート型パソコン(Acer Iconia W510). 15.

(16) 16.

(17) 17.

(18) 18.

(19) 付録2. Skype の使い方:タブレット型パソコン(iPad mini 3). 19.

(20) 20.

(21) 21.

(22) 22.

(23) 23.

(24) 24.

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(26) 26.

(27) 付録3. Skype の使い方:Skype 内臓 Web カメラ(Logicool TV Cam). 27.

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(30) 30.

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参照

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