CA法による広域道路交通シミュレータを用いた経路案内方式の評価
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(2) 案したCAによる多速度モデルを用いる[12]。こ. や空腹など. れは、道路を多数のセルをつないだ帯として表. ③. し、道路の状態を各セルに車が存在するか否か. 目的情報. 旅行の目的、目的地の設備、目的地の天候、. で表現するものである。. 立ち寄り地など. 以下では、まずNagel等の多速度モデルを広域 道路網に適用するための交差点モデルと車線変. これらの情報が変化した場合カーナビが新た. 更モデル、ならびに、ナビ研S規格地図を利用. な経路を探索するためには次の情報が必要とな. した交通シミュレータの構成方法を示す。つぎ. る。. に、遺伝的アルゴリズム(GA)[3]を用いた実. (a) 車の現在位置. 用的な渋滞迂回路の生成手順を示す。最後に、. (b) 目的地. このシミュレータをもちいて、非平衡環境にお. (c) 交通状況. けるダイクストラ法[13]とGAの探索性能を比. ここで、①~③と(a)~(c)は、表2のような関係. 較検討する。. にある。 表2は、 例えば環境情報が変化すると、 経路探索において現在地と交通状況が変化する. 2. 研究分野の概要. という意味である。. 2.1 非平衡環境における経路案内. 表1 経路探索に必要な情報(○:変化あり). 運転手がカーナビを用いて経路探索を行うと. 環境情報. 移動体情報. 目的情報. きは、まず運転手がカーナビに目的地を入力す. 現在地. ○. ○. ○. る。つぎに、カーナビが現在地から目的地まで. 目的地. ×. ×. ○. の最適経路を探索し表示する。 そして運転中は、. 交通状況. ○. ×. ×. 運転手の意志決定をサポートするため、交通状 況やレストランのメニュー、 駐車場の空き状況、. 2.2 CAを用いた交通シミュレーション. 目的地の設備などをリアルタイムに表示する。. 本節では Nagel らの方法[11,12]を示す。道路. さらに、交通状況の変化に対応した渋滞迂回路. は多数のセルが1次元につながっているとし、. 等を再探索する。このように、カーナビは、車. 各セルの長さは車の最小車間距離とする。1つ. のおかれている環境変化に応じてリアルタイム. のセルには速度 v を持つ車が1台入ることが. に運転手に情報を提供する。本稿では、上記の. できるとする。速度は整数化し、実際の速度と. ような意志決定支援を含む経路探索を経路案内. 対応させる。車は前方向に障害物がなければ、. と呼ぶ。経路案内においては、運転手とカーナ. 1ステップで v 個前方のセルまで進む。. ビの関係が重要な要素になってくる。. 速度の上限を v max 、先行車との車間距離を. 運転手が経路を選択するときに必要な情報は 次の3つに分類できる。本稿では、これらの情. gap とすると、車は各時間ステップごとに次 の規則で決まる新しい速度で進む。. 報が時々刻々変化する状況を非平衡環境と呼ぶ。 ①. 環境情報. 減速: v > gap なら v → gap. 交通渋滞、事故、規制、天候、近景など ②. 加速: v < gap & v < v max なら v → v + 1. 揺らぎ:確率 p で v → v − 1. 移動体情報. 自動車の位置、燃料、故障、旅行者の疲労. −38−.
(3) 3 提案する方法. step2:その差の絶対値が16に最も近いもの を選択. 3.1 広域道路交通シミュレーション. step3:その2本をひとつの組とし、残りの1本. ここでは、実際のカーナビで使用されている. をもうひとつの組とする. ナビ研 S 規格地図を対象として道路交通シミュ レーションを行う方法を述べる。. step4:同じ組の道路は同じ信号の状態で動作 するものとする。. S規格地図では、道路の特性として、制限速度、. (ⅱ) 4叉路. 距離、道路種別、車線数、方位、信号の有無などの. step1:道路の方位を小さい順にソート. データが格納してある。道路種別には国道や都. step2:1番目と3番目をひとつの組とする. 道府県道、高速道などの 8 段階で区別されてい. step3:2番目と4番目をひとつの組とする. る。また、方位はその道路の進行方位を示して. step4:同じ組の道路は同じ信号の状態で動作. おり、32 段階で区別されている。本稿では国道、. するものとする。. 都道府県道、地方主要道をまとめて主要道と呼 ぶことにする。. 交叉する道路の数が奇数の場合は、3叉路の アルゴリズムを拡張したアルゴリズムを用いて 信号を制御する。また、偶数の場合は4叉路の. (1). 交差点モデル. アルゴリズムを拡張する。. 交差点での車の振る舞いを決定するアルゴリズ. また、信号のない交叉点を通過するときには、. ムを図1に示す。図1において gapfacing は信号. 自分のいる道路が優先的に進行できる道路なの. に向かってきている車と信号との距離、vfacing は. かを判断する必要がある。そこではじめに道路. 向かってくる車の速度である。. 種別を用いて優先度を判定する。もし道路種別 が同じで優先道路かどうか判定できなければ、. if(信号あり) 信号の状態により進行か停止. 車線数を用いて優先道路かどうかを判定する。. if(信号なし) (2) 進行方向の決定. if(優先道路&(左折 || 直進)). 交差点内の道路のうち、主要道である道路の. そのまま進行 else if((優先道路&右折) || 非優先道路). 行する。進行しなかった場合、もしくは主要道. if(一時停止していた車) if(gapfacing-vfacing >0) else else. 本数を数え、それらの道路には 30%の確率で進 が存在しない場合はランダムに進行方向を決定. 進行. する。これにより主要道を走る車が多くなり、. そのまま停止. 実際の交通に近づけることができる。. 一時停止. 図1 交差点での車の振る舞いを決定する手順 ナビ研 S 規格地図には各交差点の信号の有無. (3) 車線変更ルール •. 走る。. が登録されている。ここでは、交叉点の信号の 組合せを決定するアルゴリズムを 3 叉路と4叉. 次の信号で左折する車は一番左のレーンを. •. 次の信号で右折する車は一番右のレーンを 走る。. 路の場合に分けてアルゴリズムを示す。 (ⅰ) 3叉路 step1:2本の道路の方位の差をそれぞれ計算. −39−. •. 直進する車はどのレーンを走ってもよい。. •. 前の車の速度が遅いときは 20%の確率で車.
(4) 線変更をする。ただし曲がる車は信号の手. 3.3 動的経路案内方式. 前では車線変更できない。 •. 提案する手法のアルゴリズムを図3に示す。. 車線変更する際には移る先のレーンにいる. 以下では、集団の再生成手順について述べる。. 車との距離と速度を確認し、追いつかれそ. 図4は、 車が走行中に渋滞が発生した場合に、. うなら車線変更はしない。また移る先のレ. GA集団中の別の個体を用いて迂回路を生成す. ーンの前方にいる車が遅いときも車線変更. る方法を示している。Rk は集団中の k 番目の個. をしない。. 体、Re は車が出発前にカーナビが探索した推奨 経路(集団中のエリート個体)である。また、 Vt は、あらかじめ知識として登録しておいた走. 3.2 動的経路探索手法の評価システム. システムの構成を図2に示す。また、受け渡さ れるデータ(D1~D5)の概要を表2に表す。. procedure main ( ){. 本システムでは、まずスタートとゴールを設. 地図データの読み込み;. 定し、ダイクストラ法で推奨経路を求め、スター. 出発地と目的地を入力;. トからゴールまで仮想の車を進めていく。5分. 走りやすい経路を地図から抽出;. おきに交通情報を更新し、渋滞が発生した場合. 初期集団の生成;. にダイクストラ法とGAで渋滞回避を行うもの. genetic operation ( );. である。. 目的地に到着するまでループ { 経路探索部 GA. 表示部 D3. if ( 環境情報が変化 ) {. 渋滞発生部 CA. 集団の再生成;. ダイクストラ法. genetic operation ( ); } if ( 移動体情報が変化 ) {. D1 D1 ナビ研S規格地図. D5. 現在地を出発地とする; D4. genetic operation ( ) ;}. D3 D2. if ( 目的情報が変化 ) { 新しい目的地を入力;. システム制御部. 現在地を出発地とする; 図2 システムの構成. 集団を初期化; genetic operation ( ); }}. 表2 システムで受け渡されるデータ. } procedure genetic operation ( ){. D1. ノード番号・隣接ノ-ド番号・距離 道路種別・車線数・方位・信号・座標. D2. 距離・道路種別・車線数・座標. D3. ノード番号列・座標. D4. 渋滞数ノード数・渋滞ノード番号・座標. D5. 現在地・渋滞の位置・現在時間. 制限時間までループ { 経路の適応度の評価; 選択と交叉; 走りやすい道路の適用; }} }. 図3 本手法のアルゴリズム. −40−.
(5) りやすい道路を示している[3]。図4で車が現在. 250. 地点にさしかかったとき、推奨経路上の破線部. 200 Traffic. で渋滞が発生したと仮定する。このとき渋滞回 避経路を次のように求める。. 150 100 50 0. [step1] k=1,…, kmax まで step2 と step3 を繰り返す. 0. 。 (kmax は集団サイズ) [step2] Rk と Re が渋滞の手前で交叉していると. 0.5 Density. 1. 図5 密度と交通量の関係(つくば市). きは、現在地から Rk を経由して目的地に至る経 路を迂回路の候補として登録する。 [step3] Vt が渋滞の手前で Re と Rk の両方と交叉 しているときは、現在地から Vt と Rk を経由し て目的地に至る経路を迂回路の候補として登録 する。 [step4] 登録された経路を新たなGA集団とす る。 Rk. 現在地. 目的地. 目的地. Vt. Rk Re. Re 出発地. 出発地. 現在地. 図6 シミュレーション開始前の 図4 渋滞回避経路の生成. 地図(つくば市). 4 評価実験 4.1 交通量 本手法を評価するため、ナビ研S規格地図 を用いて、つくば市と東京都で道路交通シミュ レーションを行った。1 つのセルは 5.5m、1 タイ ムステップは 2 秒とし、速度の上限はそれぞれ の道路の制限速度とした。 つくば市の地図を対象として、特定の道路を t=0~1000 に通過した車の台数(交通量)を計 測した。t=0 のときの基本道の密度を 0.1 に固定 し、主要道の密度を0 から1 まで変化させたとき の交通量を図5に示す。ここで密度とは、 その道 路の全セルに対する車の存在するセルの割合で. 図7 5分後の渋滞状況 ある。主要道の密度が 0.2 以上のとき、渋滞が 発生していることがわかる。. −41−.
(6) ては、車の所要時間の他に、信号数、曲がる回数、 道路の広さ、車線数、道路種別等が含まれている [3]。比較のため、ダイクストラ法のコスト関数は、 車の所要時間のみとした。また、ダイクストラ法 の計算範囲は、出発地と目的地を含む長方形の内 部に限定した。所要時間の見積もりは、探索を開 始した時刻に各道路を通過している車の速度を用 いた。 探索結果を図10と表3に示す。ダイクストラ 法は厳密解法であるため、所要時間最小の経路を 選定している。これに対して本手法は、所要時間 は 2.6 分長くなっているものの、走りやすい経路. 図8 10分後の渋滞状況. (曲がる回数と信号が少ない)を選定している。 特に計算時間はダイクストラ法の70倍以上高速 であり、リアルタイム性に優れているといえる。 ダイクストラ法において、本手法と同じコスト関 数を用いることも可能であるが、計算時間が大幅 に増加することになる。. 表3 経路探索結果. 図9 15分後の渋滞状況. 評価項目. 本手法. ダイクストラ法. 所要時間(分). 31.6. 29. 曲がる回数. 2. 6. 信号数. 23. 29. 計算時間(秒). 0.06. 4.34. 図6から8は、t=0 において全道路密度を 0.1 としたときの5分ごとのシミュレーション結果. 出発地. を示している。t=0 のときは、地図上の車の台 数は 11980 台であった。また、図中の太線は、 車の速度が制限速度の 1/3 以下になった道路を 表している。交通流が時々刻々と変化している 様子がわかる。 目的地 ダイクストラ. 4.2 経路案内 東京都の地図を用いて、本手法とダイクストラ. 本手法. 図10 経路案内の例(東京都). 法で経路探索を行った。本手法のコスト関数とし. −42−.
(7) 5. おわりに. [4] ブイ,柏崎,高橋,狩野:集団の再利用に基づくG Aによるカーナビゲーションのための動的経 路探索,計測自動制御学会論文集, Vol.36, NO.9,. 本稿では、ナビ研S規格地図を用いた広域道路. pp.789-796(2000).. 交通シミュレータの開発事例を紹介した。また、 このシミュレータを用いた実験により、遺伝的ア. [5] H. Kanoh, H. Kozuka: Evaluation of GA-Based. ルゴリズムは、ダイクストラ法に比べてほぼ同程. Dynamic Route Guidance for Car Navigation. 度の経路をリアルタイムに計算できることを確認. Using Cellular Automata, IEEE Intelligent. した。都市部における経路探索においては、渋滞. Vehicle Symposium , (2002).. 情報を加味することが必須と考えられるので、本. [6] H. Kozuka, Y. Matsui, H. Kanoh: Traffic Flow. Simulation. シミュレータの有用性は高いと考えている。. using. Non-equilibrium. 今後、本シミュレーションと実際の交通との比較. Cell. Automata. Environment,. under IEEE. 検討が必要である。またここでは車の進行方向をラ. International Conference on Systems, Man, and. ンダムに決定しているが、何割かの車に目的地を持. Cybernetics, pp.1341-1345 (2001). [7] ナビゲーションシステム研究会:Format Guide. たせた場合の検討も重要であると考える。. Book S 規格(Version2.2),(1997).. 現在、規制緩和により、(財)日本道路交通セン ターが提供する道路交通情報を利用して民間企業 が交通情報サービスを提供できるようになること も決定している。都市部の交通量は、社会生活と密 接な関係にあり、今後、交通量予測がいろいろな面 で重要な課題となってくることが予想される。. 謝辞. [8] 土木学会:交通ネットワークの均衡分析,丸善, (2000). [9] 森津:国内外の交通シミュレーションモデル, 第37回土木計画学シンポジウム論文集, pp.99-106,(2001). [10] 久井:交通流のモデリングと信号制御,計測と 制御,Vol.41, No.3, pp.193-198 (2002). [11] 加藤:セルオートマトン法による道路交通シミ ュレーション,人工知能学会誌,15巻2 号,pp.242-250 (2000).. ナビ研 S 規格地図の CD-ROM フォーマットに 関する資料をご提供いただいた IT ナビゲーショ. [12] Kai Nagel and steel Rasmussen: Traffic at the edge of chaos, ARTIFICIAL LIFE. ンシステム研究会殿に感謝の意を表します。. , pp.222-235. (1994).. 参考文献 [1] 山崎敏夫:ナビゲーションシステム体系と今後 の展開,人工知能学会誌,Vol.15,No.2,pp.226-231 (2000).. [13] 上川,梅津:車載ナビゲーションシステムの経 路探索技術, 計測と制御, 第36巻 第11 号,pp.790-792(1997).. [2] 狩野:高度道路交通システムとAI, 人工知能学 会誌、 Vol.15, No.2, pp.222-225 (2000). [3] 狩野,中村信昭,中村友洋: 知識の集団を用いた GA による不特定な立ち寄り地を含む経路探 索, 人工知能学会論文誌, Vol.17, No.2 D, pp.145-152 (2002).. −43−.
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