− 105 − 学習に困難さがある子どもの母親が子どもの学習に向き合う気持ち 一家庭で宿題をみる場面に着目してー 人間教育専攻 臨床心理士養成コース 小 谷 美 沙 希 1. 問題と目的 障害の有無にかかわらず宿題が困難な子ども がおり,また,学力的な困難さのある子どもに とっては,宿題はかなりの負担になることや宿 題が困難な子どもはそうではない子どもに比べ て宿題の負担が大きく,学校以外の生活にも大 きな影響を与えており,深刻な問題として捉え る必要がある(竹田・丸山, 2013)。さらに, 丸山 (2013)は,教員養成学部学生の小学生の 宿題に関する意識として,宿題の内容は努力す れば誰でもできるものである,子どもの宿題に ついて家庭に責任があると考えている学生が少 なくなく,保護者等の協力が必要だと考えてい る学生が多いことを報告している。阿久津 (2017)は,小学生の宿題に関しての親の負担 として,子どもの学年が上がるにつれて,親が 教えることが難しくなってくる能力的負担感が あると語られたことを報告している。石山 (2009)は, ADHDを伴う LD児の母親が子 どもと宿題を行う過程で,母親の中に,より適 切とされる宿題場面での子どもへのアプローチ が形成され,それを受けるかたちで,子ども自 身にも課題に取り組む意欲ヤ姿勢に変化が見ら れるようになってきたと報告している。また母 親が自分の子どもへの態度を見直している発言 もみられ,母親が客観的に状況をみることがで きるようになったことも示唆している。そこで 指導教員 小 倉 正 義 本研究では,学習に困難さがある子どもの母親 が家庭で宿題をみるなかで,どういった気持ち を抱えており,母親の気持ちの変化は,環境の 変化や子どもの成長とともにどのように変化し ているのかを検討する。そしてモデルを提示し, 学習に困難さがある子どもの母親の気持ちの理 解とその支援を行うための方向性を示すことを 目的とする。
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方法 2017年8月'"'-'10月に,学習に困難さがある 子どもの母親2名に半構造化面接を用いてイン タビ、ュー調査を行った。得られたデータから逐 語録を作り,それを元にコードを作成した。分 析の手順は,西条 (2007)のSCQRMを参考 にし,概念の作成は,木下位007)が提示した 修E
張グラウンテッド・セオリー・アプローチ の分析ワークシートを参考にして行ったO 3. 結果 概念名を日,カテゴリー名を<>で示す。ま ず,母親からみた本人の姿について着目して述 べる。子どもの学習面の苦手さ等から<宿題の しんどさ>が生まれ,それが<宿題への抵協議 と義務感>に影響していた。そして,本人の< 学校でのしんどさ>が強まっていた。さらに< 本人のありたい姿>が現在の状態と矛盾し,よ− 106 − り<学校でのしんどさ>を高めていた。しかし ながら,環境の変化等により,子どもの<勉強 に対する意識・姿勢の変化>があり,それが子 どもの<学習ができる姿勢の形成>に影響して いた。 次に,母親の気持ちに着目して述べる。母親 は,子どもの<宿題のしんどさ><宿題への抵 抑惑と義務感><特性の理論干の難しさ>から< 関わりでの難しさ>を感じており,子どもの< 特性の理解の難しさ>から子どもができない部 分に対して<受け入れることの難しさ>を感じ ていた。このような<関わりでの難しさ>や< 特性の瑚卒の難しさ>は,母親のく助けて欲し い>といった気持ちゃ<子どもへのネガティプ な思い>に影響している。また<受け入れるこ との難しさ>も,子どもの状況を理解したりす ることを妨げ<子どもへのネガティブな思い> を増幅させている。本人の変化や周囲の援助が あるなかで,子どもと一緒に宿題を行うことで, 母親が<本人の瑚卒>を進めてして。<関わり での難しさ>を感じながらも母親が関わり方や 教え方についてく母親の工夫>を行っていくこ とで<本人の理解>をより深めていき,<母親 の工夫>が増えるといった相互の影響があるO そして母親はく本人のためにできることをした い>という思いがあり,<本人の理解>を深め, それによって<母報の工夫>を行っていること から相互に影響している。また子どもと一緒に 宿題を行うなかで<本人の将来を考える>こと が<本人のためにできることをしたい>という 思いに影響している。しかしながら,母親の< 本人の理解>は一定に進んでいくのではなく, <受け入れることの難しさ>を繰り返し感じな がら,<本人の理解>を深めている。 4.考察と今後の展望 本研究の結果から『葛藤』や『期待と落月困 から母親の肯定と否定の気持ちを両方抱えてい ることが示唆されている。インタビューの中で は<本人の瑚平>と<受け入れることの難しさ >について語られており,母親は『本人の特性 の理解』や『教え方の気づき』など<本人の理 解>といった肯定的な面と『できないはずがな いという思い』や『受容することの難しさ』な ど<受け入れることの難しさ>としりた否定的 な面を繰り返しながら<本人の理解>を深めて いた。この過程は中田 (1995)が提唱した親の 障害受容の過程として段階説や樹蛸悲哀の概 念を包括した螺説盟モデルに倣った結果となっ た。 学習に困難さがある子どもの母親の気持ちに 関して,母親にとっては学習に困難さがある子 どもの特性を理解することの難しさがあること, 環境の変化や子どもの成長,宿題を子どもと一 緒に行う中で,徐々に子どもについての瑚卒や 気づきが深まり,子どもを瑚卒したり,子ども の特性を受け入れたりすること,しかしながら, それは一定に進んでいくのではなく,期待と落 胆を繰り返し,葛藤を抱えながら,少しずつ進 んでいくというプロセスを踏まえておくことが 必要であることが考えられる。 今後の研究では,学習に困難さがある子ども の母親に関して,支援者側が母親の気持ちの理 解を行っていくことが重要であり,母親を取り 巻く環境が異なっているなかで,母親の気持ち の理解を促進できるようなモデ、ノレ構築の検討が 必要である。