てのわが国産業の国際的位置づけ
著者
山崎 清
著者別名
Yamazaki Kiyoshi
雑誌名
経営論集
巻
13
ページ
83-104
発行年
1979-12-20
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005852/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja1. 資の立地 企 業 の 国 際 化 と 技 術 進 歩 フ ォロワーとしてのわが国産業 の国際的位置づけ 山 崎 清 現代的意味合いにおけ る 直接 投 技術 進歩 の二面 性− バーノン・モデルへの批判-思 わ れ る。 た とえ ば 多 国 籍 企 業 あ る。しか きわめて長 ’ / ○ も い い 周知 の とお り,わ が国 は 明治以 来 最近 に 至 る まで ,経 済発 展 の上 で欧米 諸 国に対 し常に フ ォロ ワー(追従国)と して の道を 歩 ん でき た。 もちろ ん, か つ て大 英帝 国に 対 して ぱ アタリカや ドイ ツもフ ォロ ワー とし てそ の経 済発展 を遂げ て きた わけ で,そ うい う意味 ではわ が国 は近 代 産業 国家 の形成 の上 で はこ れ ら諸 国 の先 例を 学 ぶこ とがで きた。 こ こでい う企業 の国 際化 の点で もフ ォロ ワーの道 を 歩 んで き てい る ように の発展に お いても,アメリカの場合,1950年代から60年代にそ の発展期を 迎えたが,わ が国の場合は本格的発展段階に入ったとみられるのは1970年に入ってからで ア タ リ カ の 場 合 に は 現 代 多 国 籍 企 業 の 前 史 と も い うべ き期 間 は 日本に対 し国 際的経 済関 係におい て,フ ォ1==・ワー と して の位置づけを 行 な ってい る も のに レイ モン ト 。バ ーノン の プロ ダ クト・ ライフ ・ サイ クルかお る。 この仮 説 は右 の1950 年 代 から60 年代に かけ て の ア メリ カ企業 の多 国籍 化 を 説 明す る上 ではき わ めて有効 であ ったこ とは よ く知 られ てい る。 そ のモデ ル の な か で , 製 品 の ラ イ フ ・ サ イ ク ル に 対 応 す る 多 国 籍 化 の 段 階 のフ ト リ ックスに おい て, ヨ ー=t ツ・`゛と と もに 日本は アメリ カ につぐ二次的立地地点に位置づけされてい るが,このことは アメリカ側から みて日本 のフ ォロワーとしての地位が確認されてい ることを示す も の で あ る。 「製品が需要 の高い所得弾力性をもち,高 コスト労働に対する満足すべき 代替品である場合には,需要はやがて西欧の ような相対的な先進国で急速に 増大 しはじめるであろ う。ひとたびそうした先進国で市場が拡大すれば, ア
メ リ カ の 企 業 家 は 現 地 生 産 設 備 を 建 設 す る 危 険 を 冒 し て も よ い 時 期 が 到 来 し 2 )・ だ の で は な い か と 自 問 を は じ め る こ と だ ろ う 。」 づ い い か え れ ば , ア メ リ カ の 企 業 は 新 製 品 を 導 入 す る 場 合 , そ れ が 技 術 集 約 的 製 品 で あ っ て , 「 高 い 所 得 弾 力 性 と 高 コ ス ト 労 働 に 対 す る 代 替 品 」 で あ る か ぎ り , ま ず 本 国 で 市 場 を 開 拓 す る 。 製 品 の ラ イ フ ・ サ イ ク ル の 初 期 ( 導 入 期 ) に お い て は 技 術 優 位 に 守 ら れ , し か も 超 過 利 潤 を 得 た 企 業 は そ の 製 品 の 輸 出 で も 海 外 市 場 を 拡 大 す る 機 会 を つ か む 。 し か し , 製 品 が ラ イ フ ・ サ イ ク ル の 成 熟 段 階 に 入 る と , 西 欧 の よ う な ア メ リ カ の 所 得 水 準 に も っ と も 接 近 し て い る 先 進 国 市 場 で は 市 場 の 拡 大 と と も に 比 較 優 位 が 働 き は し め る の で , そ ・ こ に 輸 出 先 の 先 進 国 で 輸 入 規 制, 関 税 引 上 げ の よ う な 保 護 措 置 が 加 わ れ ば , ア メ リ カ 企 業 の 現 地 生 産 へ の 動 機 が に わ か に つ よ ま る こ と は も は や 自 明 と かJ るo ■ ■ ■ い い か え れ ば , ア メ リ カ 企 業 の 多 国 籍 化 は フ ォ ロ ワ ー で あ る 日 本 や ∃ −pi- ツ づ の 政 府 や 企 業 の 行 動 に 対 す る リ ー ダ ー と し て の 対 応 で あ る と い う こ と が 強 調 さ れ て い る わ け で あ る 。 し か か リ ー ダ ー と フ ヶオ ロ ワ ー の 間 に は 企 業 の 多 国 籍 化 の 面 で も 後 者 が 前 者 に 追 い つ く た め に は 越 え る こ と も 困 難 な 格 差 の 存 在 す る こ と が 指 摘 さ れ て い る 。 「 欧 州 今 日 本 の 企 業 が ア メ リ カ の ホ ー :ム ダ ラ ウ ン ド で ア メ リ カ の 企 業 に 強 い 挑 戦 を つ きT つ け る の で な い か ぎ り , 直 接 投 資 の 広 力 紡 は 米 国 と そ の 他 の 国 の 間 で 対 称 形 に な る と い う 現 象 は ま だ ま だ 見 当 万 ら な い の で あ る 。 将 来 は , 数 十 年 の こ れ ま で の 時 期 が そ う で あ っ た よ う に , 多 国 籍 企 業 を 眺 め る 場 合 に は , 米 国 の 形 態 が 厚 み や 幅 の 点 で 乱 ま だ 力 に お い て も 際 立 っ た も の で あ る 迪 い う: 非 対 称 形 の 現 象 恚 し て し ば ら く は 眺 め ら れ 。 3 ) 犬 る 犬こ と で あ ろ う 」.j と し て い 器 。 つ こ の こ と を 裏 返 せ ば ヨ ー いμI ツ パ や 日 本 が 起 点 と な っ て 展 開 さ れ る プ ロ ダ クO ト ・ ラ イ フ 。ニサ イ ク ル は ま っ た く 不 可 能 と は い え な い に し て も 当 分 実 現 し ぞ う に な い こ と が 示 唆 さ れ て い る こ と に な る 。 こ り よ う な 格 差 は 何 に 起 因 す る か に つ い で は バ ー ノ ツ は 古 典 派 国 際 経 済 学 が 拠 っ て 立 つ 比 較 優 位 論 の 代 り に 技 術 優 位 の 概 念 を 持 ち こ ん で い る 。 そ こ で そ の 技 術 優 位 は 何 に 根 ざ す も(7> で あ ろ う か 。 ノ バ ー ノ ペ / の 主 著 『 多 国 籍 企 業 の 新 展 開 』 (Sovereignty at Bay ) に お い て ま ず 第 ニ に 基 礎 科 学 に お げ る ア メ= リ カ の 優 位 性 が 指 摘 さ れ て い る 。/ 「 新 し い 産 業 ぱ お け 右 イ ブ ベ ごー シa ソ は イ ソ ノス 」じ レ こ シ トa ソ か 持 っ 大 個 聶(r>
発明家 の仕事 に もはや依 存す る もので はな かった。 い まや産 業 の発展 は ,モ れ以 前しと比べ て基 礎科 学 の性 質を 帯び た成 果に 根本的に しか も密接 に 依存 し 4) てい万た」 としてい る。 そ の結 果19 世紀 まで は発 明・発見 で は ヨ ーロ ッパ の下 位に 立 ってい た ア メ リカは,そ の数 の対世 界比に お いて19 世 紀最後 の20 年 の ・ono/から1930 年 代に54 % ,1940 年 代に88 % に上 昇し て,圧 倒的 な比重を 占め るに 至 った。I 第二 は技術 革 新に おけ る規模 の経 済性 との関連 が 強調 され てい る点 てあ る。 「工業的 イノ ベ ーシ ョ ンが ます ます 複雑に な った 結 果,モ の過程 は相当 の額 の資 金 と長 い 期間に わ た る プ ログ ラ ムを 持 った大 規 模で 複 雑な組 織 の存在 と 5) 結 び つけ られ る ように な った。。」 第 三は 技術 革新 と ア メ リカ市場 と の関連 であ る。 新しい 技術 の多 く が政 府 支 出に よっ て生 み 出さ れ てい るこ とは 誰 もが必 ず指 摘す る ところ だが, バ ー ノンはそ れ が同時 に新 しい 市場 の可能 性 と結 びつい てい るこ とを 主 張す る。 「した がっ て ここ で 強 調 され てい る のは,あ る特定 の種類 の イ ノベ ーシ ョン の分 野で米 国企業 に歴 史的に はi; ー ドを 与え た米 国 市場が 持つ 優位 性が , さ ∧らに大 きな リ ヤドを 与 え る ように 展 開 されてい た とい うこ とで6) 。」 \第 四は アタ リ方の 技術 優位 が企業 の寡 占的 優位 と結び つい てい るとい う点 であ る。「 ア メリカは , 技術 指向 の産業 分 野 の うち の幾 つ かで世 界を 文 句な くリードしつっ あ った が ,そ の他 の要 素を土 台 とし て 乱 ア メリ カは 産業 分 野 で世 界的 な リー ドを 確立 しつっ あ った」 と して, 「大 量 生産 の基 盤に立 づ 7」 て標準 品を 生 産す る 能力」と,「 商標を 売 り込む 能力 」を あげ てい る。し た が って,寡 占は 海外 進 出 のた めに 「十 分条 件」 では ない に して も「必 要条 件」 であ るこ とを 明らかに してい る。 , 最後 は技術 体系 に おい て も ア ハリ カが 優位に 立 っ てい る点 てあ る。伝 統的 に ア メリカが 労働節約 的 技術 体系 の上 に 立 ってい る のに対 し / 日本や ヨ 一 白 ッパの体系 は材料 節 約的 であ り,資 本 節約的 であ る と規定 し てい る。 後 者 の た めのノ製品 は国 際的 応用 性 で劣 るし, 製品 の伸び も期 待 で きない と述べ てい る○。 ・・
そ の後 バ ー ノンは1977 年に:「多 国籍 企業 を襲 う嵐」(Storm over the Multi・nationals )を 出し てい る が, この なか 七は 日本や3 ー= ツパの キ ャ ッチ・ア ッ
り返してい るだけ である。たしかに「あ る特定の製品群 の場合,しかもその すべてが1950年代から60年代初期にかけ ては『技術集約型』といわれた製品 群 の場合,アメリカの生 産量・輸出量が,ヨー 戸ッパお よび日本の生産量・ 輸出量に対するかつ て優位にあった地位を失っていることは, もはや疑 うべ くもない」 と述べてい る。 また「歴史的視野を もった人々は,このヨー1==tツ ゛と日本が秘 めた先導者に追いつく力の旺盛さを,以前から一度も疑ったこ 8) とはない」としてい る。 しかし,他方 では「それでも新製品の導入に際してアメリカの多 国籍企業 が早期に確保した優位な立場を支え る要因の一部は,今 日では変お っていな い。 アメリカは高額所得消費者の市場としては,依然 として世界最大 である し,そ のアメリカ市場と第二位の市場との差が縮小した とはい うものの,残 された格差は まだかなり巨大であ る。工業製品の場 合, コンピ ュータの一部。 工業用エレクトロニクス製品,合成材料の大半,発電用機器,さらには・…・・ 多業種に広 く用い られる大型産業 機械などの諸分野におけ るアメリカの主導 権は依然 として維持されている」 としてい る。 このような技術優位の上に立つ プロダクト・ライフ・サイ クル・モデルが。 前述のように 古典派国際経済学の比較優位論に対 し,現実的な立場 かも 修正 を加えた意義は今 日においても高く評価されるべきであろ う。しかし,他面 ではバーノソの技術優位や工業的 イノベーシa ンや アタリカに対する日欧O 技術体系 の相違な どについ ては,とくに以下で日本企業 の多 国籍化について 考察する場合,若干の疑義 もないわけではない。 そこで第一に技術や革新の概念から明らかにしておかねば ならないが,バ ーノソはその点余 り定義らしいものを下しているわけではない。しかし,ここ では技術をめぐる論争には立ち入らないで ,ある一つ の定義に従っておこ ‰ すなわち技術とは物資・サービスの生産方法に関する情報とい うことができ 10) … … ”  ̄ ”  ̄ ’  ̄  ̄ る 。 発 生 し て か ら 社 会 ・ 経 済 へ の 影 響 が 浸 透 し て ゆ く 過 程 で 技 術 を と ら え て み ると,「 第一 の段階 は, 情 報とし ての技術 の生産 過程 で あ り,一 般に 発明 とい わ れ る。 第二 の段階 は ,産業に おけ る新 技術 の最初 の適用 であ って, こ の 過程 は革新 と名づけ られ る。 第三 の段 階は, 新 技術 の多 くの企業 へ の,あ る 11) い は 外国 へ の伝達 で あ って, 技術 移転あ るい は革新 の普及 過程 と よば れる。』 バ ーノソが 述べ てい る工業 的 イ ノベ ーシ ョ ン(industrial innovation)は, こ
の第二 の段階 に 相当 す る とい うこ とが でき よ う。 しか し革新 に は二 つ のタイ プがあ って,一 方を 「資 本 と労働 の結 合 の態様」 の変化 とし て, 他方を 「産 出物 の種類 の変化 」 ととらえ ら れ る。 一方 を生 産工 程 の変 革 とす れば ,他方 は製 品(サービスをふくむ) の革新 であ る。 ハ ーバ'―ド大学 の ウィリ ア ム・J ・アバナシ ー 乱 後 述 の よ うに製 品 の革新 と工 程 の革新 とに 分け て,そ れぞ 12) れの発展段 階 と相関 関係 を 明 らかに してい る。 しか し, バ ーノ ソはそ の点 か らは明確 では ない が ,明 らか に製 品 のイ ノペ ーシa V のみを 強調 し てい る。 アバナシ ーはこ の点 か ら プ ロダ クト・ ライフ ・ サイ クルは一 面 の説 明原理 で 13) あるに とど まってい るこ とを 指 摘 し てい る。 こ の技術 革新 に おけ る二 つ の タイ プ の指 摘は と くに フ ォロ ワーとし ての 日 本におけ る技術 進 歩 につい て考察 す る場 合重要 であ る。 バ ー ノン のみな らず, 一般 に技術 革新 とい えば 製 品 の革新 のみを 指 してい るこ とが多 い。 しか し, 製品 の革新 の面 か ら のみ 技術 進歩 を み るとす れば片 手 落ち であ ろ う。 こ の点 から みる限 り, たし かに ア メリ カの技術 優位 は圧 倒的 とい え よ うが ,そ れは 現実 的 ではな い とい うべ き であ ろ う。現 在 日本が アメ リカ の産 業 と の競 争に おい てこれに キ ャッチ・ア ップ し, または これを 追い 越 しつつ あ る のは製 品 の 革新 とい う より工 程 の革 新 におけ る優位 とい っ て よい 。私 が後 述 の よ うに 日 本の「標準化 技術 の優位」と名づ け てい るも のも生 産 技術 の改 良を 指 し てい る。 第 二 は ライ フ ・ サイ クルに おい て成熟 期か ら標準化 期に 移行 した 製品 で , 比較 優位が失 わ れた とみ られ る場 合で も国際 競争力 が 維持 さ れるこ と もあ り うる点 であ る。 とくに企業 が量 産に より規模 の経 済性 を発 揮 でき る場 合に多 い。 そ うした 場 合, 標準 化 期に おい て も開発 途上 国 が必ず しも比 較 優位に よ って 日本に キ ャッチ・ ア ップ でき ない こ とがあ る。 そ れは 日本 の企 業 が製 品 の成 熟期 の比 較優 位を失 って も, そ れに代 って後 述 の ような「 標準化 技術 優 位」を 確 立す る こと がで き るか らであ る○・ た とえば, わ が国 の電 気 機械 メー カーは ア メリカ の カ デーテレ ビ の輸入制 限 の結果 ,現 地生 産を 余儀 な くさ れた が,そ の場 合 で も競 争上 の優位を か ち えてい る のが そ れであ る。 また わ が国 の対 米 自動 車輸 出が 円 高に もか かわ ら ず 高水準を保 ってい る の も同 様 の事 例 であ るといえ よう。 これら の事 例はい ず れ も標準化 技術 の 優位 に よっ て生産 性 の上 昇 とそ れに よる コス ト引下げ が 可能だ とい うこ とを反 映 してい る。
第三はぷーノソのモデルでは アメリカ企業 の多 国籍化は相手国政府の同社 製 品に対 する保護主義的措置や現地企業 のイ ミテーションなどに対 抗する防 衛的企業 行動として説明されている。 しかし製品革新がたえず 起り,その国 際的移転が急速であ る産業- たとえば半導体工業 の ように ,製品 が必 ずしも成熟化しない間に現地生産を開始しなけ ればならない場合もあ る。テ ィルトソやシ ベラスの研究においては半導体 の製品技術がた とえば一年以内 − 14) という速 さで国際的に移転されることがある。それどころかレ 同時的とか, 本国に先立つ現地生産すら実際に行われるのである。 バーノンも一応このよ うな場合の予 想はしてい るが,そ のモデルに はいうまでもなく組み入れるこ 15) とはできなかった。 しかもティルトソが指摘してい るように,半導体工業 では急速な製品イノ ペ ー シ ョ ン の た め に , 新 興 企 業 が 市 場 に 参 入 す る こ と が 可 能 で あ り , 寡 占 的 16) な既存大企業がその地位を失なっていることは注 目されよう。彼の研究によ れば1950∼1968年 までにフェアチャイルド,テキサ ス・イソストルメソツ,IBM の ような新規参入企業は製品革新の46 % を占めたが,他方工程革新で は\\%を占めてい るにすぎない。 これに対し,真空管 メーカーとして古ぐか ら独占的地占を占めていたGE, フィルコ,RCA の3 社 の製品革新におけ るシェアは25%で,他方工程革新では33%であった。後述のように,製品の 技術的発展段階の初期においては製品革新の方が競争上有 効なので,既存大 企業3 社の1966年におけ るシェアは18%で,新規参入3 社の42%にはるかに 引きはなされた のである。 ニ 第四は前述のようにバーノンは アメリカの労働節約的 技術体系に対し,日 本やヨー1==・ツパが資源節約・資本節約的七あるとし,前者の後者に対する優 位を強調してい る。しかし,最近ではアメリう の労働者自身 が在来の技術体 系に よる労働疎外感からこれを忌避する傾向が出てきているばかり七なく,1970 年代に入ってエ ネルギー危機や資源枯渇の懸念から アメリカの産業にお い ても資源節約的技術が見直されているのは周知のとお りであ る。前者の例 としてはGM がサブ コソパクトカーのベガを生産していたロ ―ズタウン工場 17) に おけ る労働者 の造反がそれであ り,後者 の例では同じ くGM の1976 年から の全車種につい ての小型化・軽量化計画の開始,あるい はボ¬インタの次期 機種767の開発計画があげられよう。 ‥
づ 他方 , 日本や ヨーロ ッパの メ ー カーは逆 に アメ リカ型 の労 働節約的 技術 体 系 を 伝統的 な 体系 に 加え てい る ので, バ ーノンが 強 調 してい る よ うな技術 体 系 の格差 は縮小 し, 両者 は収斂 しつつ あ る とい うべ きであ ろ う。 と くに 日本 の場 合には 標準化 技術に おい て示 され る よ うに,工 程技術 の導入 と ともに ア メリ カ管理 技術 も大 幅に 取入 れ てお り, しか もそ れ に 日本的 経営 の長 所 が有 効 に 働 い て,二 つ の技 術体系 が 融 合 してい る よ うに み られ るの であ る。 た と え ば トヨタ自動 車におけ る生 産方 式 はそ の典型 とい えそ うであ る。 注
1)Mira Wilkins, The Emergence of MuUinatioonal Enterprise, Harvard University Press,
1970 (江夏健一,米 倉昭夫 訳『多 国籍企業 の史的展開』 ミネ
ル ヴァ書房)及びThe Maturing of Multinational Enterprise, Harvard Uni- versity Press, 1974 (江夏健一,米 倉昭夫 訳『多 国籍 企業 の成 熟』 ミネル ヴァ書
房).2
)Raymond Vernon, “International Investment and International Trade in the Product Cycle," Quarterly Journal of Economics, May 1966, pp.197.3
)Raymond Vernon, Sovereignty at Bay, Basic Books, 1971, p. 112 (雪見芳 浩訳『多国籍企業 の新展開 』 ダイ ヤモン ド社,p. 131.)4
) 前 掲p. 84 (邦 訳p.94 ), ‥ ‥ 上 し5
) 前 掲p. 92 (邦訳p. 105). ,6
) 前掲pp. 91―92 (部訳p.104 ).7
) 前 掲p. 85 (邦訳p. 95).8
)Raymond Vernon, Storm over Multinationals: The Real Issues, Harvard University Press, 1977,
ppト46 ―47. (古川公成訳 『多国 籍企業を襲 う嵐』 ダ
イ ヤモン ド社,p. 62). 9 ) 前掲p. 48 (邦 訳p. 64).10
) 内田 星美,前 掲p. 11. 十11
) 前掲p. 12.12
)William J. Abernathy, The Productivity Dilemma : Roadblock to Innov- ation in the Automobile Industry, Johns Hopkins University Press, 1978, p , 48.13
) 前 掲p. 7.14
)John E. Tilton, International Diffusion of Technology : The Case of づ Semiconductors, Brookings Institution, 1971 ; Edmond Sciberras,
Multi-りI
り5 6
7
1 1 1
national Electronics Companies and National Economic Policies, JAI Press,1977. Vernon,
前 掲Sovereignty at Bay, pp. 96 ―98 (邦訳pp.Ul-113 ). Tilton, 。前掲p. 60. Emma Rothschild,
Paradise Lost : The Decline of the Auto-IndustrialAge, Random House, 1973 ; 下川 浩二 『米国自動 車産業経 営史研究 』東洋経済 新報 社, 1977, pp.307−336. 2. 「 標準化 技術 優位」 の展 開− フォロワーの国際化戦略一 つ ぎに , この技術 優位 の上に 立 って 展 開さ れた プ1==lダ ク ト・ ライ フ・サイ タル の仮 説を フ ォロ ワーであ る 日本の立場 から 見直 して み る とど うい うこと に な るで あろ うか。 バ ーノン 自身 が前述 の よ うに指 摘し てい る よ うに, 日本 や ヨ ーロ ッパの多 国籍 企業 が独 自 のプ ロダ クト・ ライフ ・ サ イ クルを展 開で き ない とす る と,むし ろ ア タリ カのそ れを 下敷 きに して 日本企業 の国 際化 の モデルを 画い てみ る こと がで き よ う。 第1 図 は アj リカの多 国 籍 企業 サイ ク ル のなかに 日本を 位置づ け て 日米そ して 東南 アジ ア諸国 と の関 連を 明ら かに し てみた も のであ る。 まず 日本企業 の多 国籍 化 のシ ナ リオにつ い ての枠組 みを 考え て ゆ く場 合, 大 枠 とし て, わ が国 企業 が歴 史的 に, かつ 政治的 ,経 済的 に お か れてい る状 況 につ い て触 れてお か なけ れば な る まい。 まず第二 次大 戦後 か ら1960 年 代末 まで の米 ソ冷戦下 にお い て, ヨ ー=t ツパ と 日本 とは, ア メリ カが主導 権を 握 る 自由世 界に位 置し てい た とい う世 界的 状 況を舎頭におく必要がある。 アメリカの国際政治学者 ロバート・ギルピソ に よると,いわゆる相互依存的国際経済システムとは一種 の階層的構造であ り,支配的「中枢」と従属的「 周辺」から構成される。中 枢は規模や技術優 位に よって周 辺から厳しく区別されるが,同時にそれは世界経 済において 三つの役割を演ずる。第一は国際銀行の役割,第二は国際貿易 メカニズムを 創設 し,組織する役割,第三は,資本の提供に より国際経 済シ ステ ムの発展 を 促す役割である。こ うした役割を演ずるために,中枢は力の行使に よって か,成長の恩恵に よってか,周辺にたいし一定のルールを守らせ る。 19 世紀におけ るイギリスは当時の国際経済体制の中枢であ り,自由貿易制 度のルールが確立された。広大な英帝国の周辺にたいしては,いわゆるパッ
クス・ブ リ タニカを 形成 し, 2世 紀の長 きに わた っ て君臨 す るこ とがで きた。 これに たい し, 第二 次大 戦後 は ブレ ド /ウ ッズ構 想を 背 景に ア メリカが 中 枢と なった。 こ の場 合 と くに指 摘 しなけ れ ばな らない のは,下 ルの国 際的 役割, 核優 位 とと もに ,多 国籍企業 が戦後 に おけ る ア タリ カの世 界的 主 導権を 支え てき た とい うと とであ る。 ヨ ― ロ ッパ も日本 も アメ リカの中 枢に たい し 周辺を 形成 し, そ め主 導権 のも とに お かれ た のであ る。 しか し, 1960年代 の後 半に な って , こ うし た中 枢 の支配的 地 位 と, 周辺 と の間 に結 ば れていた 相 互依存 的 国際 関係に 重大 な構 造 的変 化が 起 きてきた。 ギルピ ソの中 枢・ 周辺 モデルで はそ の変 動 に決 定的 な 影響を 与え る企業 の海 外投 資 (多国籍企業) の 役割 が重 視 され る。構 造的 変 化 は,中 枢の「力 の象 徴」 であ った 海外投 資に よって, 中 枢か ら周辺 へ の経 済お よび産業 活動 の, 立地 に おけ る逐次的 移動に, 強 く反映 されは じ めた。 いい かえ れば ア^ リ カ は多 国籍 企業 を通 じ て資本的 , 技術的 , 経営的 支 配を 維 持 しつ つ 乱 資 源 産 業や製 造業 はそ の中心を 周辺 (とりわけヨーロッパや日本) にシ フ トしてい た のであ る。 こ れ まで中 枢( アノリカ)に 富 と 権 力 の集 積を もた らす 上で, 中心的 役 割 を 演じた多 国籍 企業 は, 逆に 周 辺( ヨーロッパや日本) に 向か ってそ の再分配 を 促す。多 国籍 企業 は ア メ リカの相対 的 衰退を 支 えつっ あ るとはいえ, そ れ は同時に よ り一 層そ の過 程を 促進 す る働 きを し てい るの であ る。 ギルピ ソは この構 造的 変化 の「 分 岐点」 を1960 年 代 中期 後 のあ る時点 と みてい る。 つ ぎに , こ の ような世 界政治 ・経 済の枠 組 みのな か で, 日本 の多 国籍企 業 が形成 され る仮 説を 組 み立 て る場 合, 当然 考 えなけ れ ば なら ない のは, 前述 の ように アメ リカの多 国籍 企業 と の関 連であ り, そ の発 展 モデル であ るプI=・ダ クト・ライ フ サイ クルにおけ る 日本企業 の位 置づ け であ ろ う。 別 言す れば 日 本の多 国籍企業 の形成 は, そ の ア ノリ カのサ イ クル と 深 くかかお り合 ってお り,む しろ サイ クル の内部に 組 み 込 まれ ていた とい っ て も誇張 ではあ るまい。 ライ フサ イ クルの プロ セス か ら日本企 業 の多 国籍化 のフF3 ーチ ャートを 作 製 してみ ると, 第1 図 の ように なろ う。 こ こでわ が国 の海外 直接 投資につ い て一 言して お くと,そ のパ タ ーンは資 源確 保指 向,産 業 調整 指向, 輸出 促進 指向に大 別 され る。 戦 後 のわが 国 の経 済復興 は資 源の 安定 的 供給 の確保 を 目
第1 図 プ9 ダ クト・ライノフ サイ クルと日米企業 の多 国籍化
二 万
導 入 期 成 熟 期 標 準 化 期 ミ ニ , ア メ リ カ 厠 祠 国 内 投資→ 規 模経 済性it 壽si m ト 対 日投 資 輸 入増大 一| ↑ ↑ グロー バ ル戦略 体制│ → 輸入規 制 輸 入 現 地生 産 , 叩V 対 途 上T 投 資 ↑ 1 日 本 ぶ ↓ 関 税 政 府 産業 育成 企 業 技術 導入 l l l l 輸 出 拡 大 1 1 ∼ 需ぽ 資 ぷ 比 較 優位 | 外 資m 制 靴h 髪否 突 国内 投 資-゛規T やt 性 「 標準化 技術 優位 」 対 途上国 投 資 | 1 開 発 途 上 国( 東南 ア ジア) 1 輸 入 1 l | | ・ ・ l l I 1 1 | | | 比較 優 位 | =輪目 出 霞 生産∽ オフシ; ア台 土 1} 的 とす る海外投資からはじまった。 つ ぎに製品のライブサイクルでは早 くから標準化期にはいっていた伝統的 産業(軽工業や繊維工業)において海外投資 が促進された。 このな かにはいわ ゆ る「二重構造の海外投資」 とみられる中小企業 の アジ ア近隣諸国(韓国, 台湾,香港) への進出が目立っていた。 これらは本来ならば政府の産業政策 に ょって解決されるべきものが,高度成長の国内から否応な七に 押し出され, 海外で産業 調整め自己解決を余儀なくされた結果七あ 右。 /犬 これに対 し,海外投資の第3 のパターンである輸出促進指向投資は, わが 同 産業 の近代化,技術水準の高度化,重化学工業化を促進して,輸出を拡大 し,高度経済成長を もたらした もっとも重要な要因とな った。 との海外商業 投資のなかでは, もちろん総合商社の海外店や現地法人 の世界的 ネットワー クの開設 もあ った が,同時に ア九リカにおけるわが国製造業者の販売網の設 置 も重要な展開懲あった。たとえば, 1950年代に早く もアメリカに輸出を開 始 したトヨタ自動 車は,デトロイトのコンパクトカーの反撃にあっていった んは退いたものの, このアメリカでの苦い経験を生かし て販売網を全面的に 再 編,強化し 再上陸では もののみごとに成 功を収めている。 十 わが国産業 のめざましい輸出拡大が,このような商社 あるいは製造業者自 身 の輸出促進のた めの海外への商業 投資に負うてい るこ とはい うまでもない が,とりわけ アメリカやヨーロッパの ような高所得市場 で輸出に成功したの は ,基本的にはわが国産業 の技術レベルの上昇と輸 出競 争力による ものでもる。 第1 図 に つ い て説 明を 加 え れ ば , 政 府 が ト ラ ン ジ ス タ , カ ラ ー テ レ ビ , 自動 車 な ど の 戦 略 輸 出 産 業 に は 保 護 育 成 の 恩 恵 を 与 え た ば か りで な く, 企 業 も貪 欲 な ま で に 技 術 導 入 に 力 を 注 い でい 把。 こ れ ら 輸 出 で 成 功 し た 製 品 が ほ と ん ど例 外 な く ア ノ リ ガ で 開 発 さ れ た も の で , そ の ラ イ フ ・ サ イ クル の 成 熟 期 か ら 標 準 化 期 に かけ て わ が 国 に 取 り入 れ た も の で あ る こ とは 見 逃 して は た る まい 。 ‥ ‥ ‥ プl=,ダ ク ト ・ラ イ フ ・ サ イ ク ル の モ デ ル で も み ら れ た よ うに , ア メ リ カ ひ 多 国 籍 企 業 は そ の 製 品 の 導 入 期 に お げ る 技 術 優 位 に 基 づ い て , ま ず 国 内 市 場 で独 占 的 収 益 を あ げ る こ と が で き た 。 や が て 生 産 の 上 昇 と と もに 国 内 消費 を こえ て 輸 出 に 向 か う。 こ こ で も絶 大 な 競 争 力 を 発 揮 す る。 し か し , ほ か の 先 進 国 , こ の 場 合 日本 で は 前 述 の ご と く, 政 府 の 保 護 の循 とに 企 業 が製 品 技 術 を 何 ら か の形 で 導 入 し て , た ち ま ち こ れ を 戦 略 的 輸 出 商 品 に 仕 上 げ ,逆 に こ れを ア メ リ カ 市 場 に 向け る 。 も っ と 乱 こ の 段 階 で は 製 品 も成 熟 期 また は 標 準 化 斯 に は い っ て い る の で , 技 術 導 入 も比 較 的 に 容 易 で あ る 。 ま た 成 熟 期 に お い ては ア タ リ カ の 技 術 優 位 は 失 わ れ, 反 対 に 日 本 の 比 較 優 位 が そ の働 きを 顕 示 し は じ め る。 そ れ が 輸 出 の 一 層 の 拡 大 忙 つ な が っ て ゆ く の で あ る。 ア メ リ カ の製 造 業 者 は , もろ ち ん 手 を こ ま ね い で こ れ を み て い た わけ では な い 。 第1 図 の よ うに , 日本 へ の資 本 進 出 に 力 を 注 ぐ よ うに な る。 し か し , 通 産 省 と 業 界 の 防 禦 が 固 い の で , な か な か 日 本 上 陸 は 困難 で あ る 。 デ ト ロ イ トの ピ ッ ク ス リ ーで す ら アノ リ カ 政 府 の 手 ま で 借 りて:, 資 本 自 由化 に 圧 力 を かけ た に もか か わ ら ず , 結 局 はGM が い すy と , ク ラ イ ス ラ ー が 三 菱 と, い ず れ も 完 全 所 有 ど こ ろ か30 % 余 の 少 数 保 有 の 資 本 提 携 に 甘 ん じ な 廿 れ ば な ら な か っ た の で あ る。 し か も こ こ で 見 落 と し て は なち な い の は 。 日 本 の製 造 業 者 は い っ た ん導 入 した 技 術 を さ ら に 洗 練 に 洗 練 を 重 ね て そ の 層 の 開 発 や , 製 品 と 工 程 の 改 良ご 尽 力 す る 点 で あ る。 た と え ば 家 電J^. −ヵ − は 各 社 競 っ て 技 術 者 が 現 場 で 工 員, と 一 体 と な っ て生 産 工 程 の 合 理 化 を ぽ か り, 生 産 コ ス ト の 引 き下 げ に 総 力 を あ げ る。 他 方 先 発 の ア メ リ カ の寡 占 的 家 電 メ ー カ ー は 国 内 に お け る 競 争 激 化 に 加 え て , 日 本 か ら 輸 入 攻 勢 に あ って 製 品 差 別 化 に よ る対 応 で は 防 ぎ 切 れ ず , 経 営 の 破 綻 に す ら 追 い こ ま れ る。 た と え ば 松 下 電 器 が シ カ ゴで 買 収 し た シ カ ゴめ モ い==i− ラエ 場 七 み た も のは へ10 年 に わ た る 赤 字 経 営 口 荒 廃 と老 朽
化 した生産設備であった。 このように 日本のメーカーは,輸出拡大で国内工場は規 模の経済性を享受 す るばかりか,洛 社が競争して成熟期から標準化期にはい る製品の改良と工 程 の合理化を追い求める。 この結果は世界でももっとも洗練された高度のい わば「 標準化技術」が完成される。 ところがアメリカの寡占メーカーは新製品の開発には力を入れるが,い9 た ん製品が市場に 送り出されてしまうと,革新意欲は失わ れ,主としてマー ケティングに よる製品差別化に頼るようにな る。寡占体制 の上に アクラをか いて技術の改良のほ うはおろそかになりがちであ る。たとえば アメリカ自動 車業界では1930年代の自動変速機の量産化以後製品の技術革新はなかったと いわれる。しかも1950年代以来外国小型 車の侵入を受けな がらビ ッグスリー のそれへの対応はきわめて遅 々たるものがあったことは周知のとお りである。 たしかに日本の製造業者は独創性や技術革新や新製品開発では アメ リカの 企業に及ばない。しかし製品めライフ・サイクルが標準化期に達して,アj リカの製 造業者がもはや生産合理化以外技術開発に力を入れなくなり,マー ケティングに頼るころになって 乱 白本の製造業者は企業一体となって製品 や工程の改良に技術 の研撰を 怠らない。それどころ か,主要な既存製造業分 野において私がい う世界で も類い まれな標準化技術を確立して,アメリカの 技術に追いつき,追い越しつつあ る。 このような標準化技術 が単に より一 層の輸出競争力を高めるばかりでなく, 現地生産をしてもその優位を保つ ことが可能になる。た とえば ソニー製品が, アメリカでは高級製品として差別化されるのも,サソディエゴの工場でのこ うした国内で開発された標準化技術が,その優秀性を発揮するからであろ う。 製品は標準化期にはいるとともに,わが国の比較優位 も必然的に失われる ので,日本製品が海外で製品差別化できるのは,輸出促進指向投資で獲得し たマ Iケティツ グ技能や組織を別 とすれば,この標準化技術の優位以外に な い。しかし基本的にはマーケテ ィングもこの技術優位に依存しなければなら ないのである。 この段階になると,日本企業 もその多国籍化 の条件を 整えてくるわけで, アメリカのプロダクト・ ライフ・サイクルのなかで受動的に国際化を進めて きたのとは異なって,グローバル戦略への積極的展開が可能に もなり,また
必 要に もなっ て くる。 またそ うで なけ れば, す でに グa ーバ ル戦略を と りつ つあ る アy リカや, ヨ ーl==・ツパ の多 国籍 企業 に 伍 して1980 年 代に 競争 して ゆ くこと がで き な くな るであろ う。 アメリ カの多 国籍 企業 の なか で最近 グt2 − 2) バル戦 略に 転 換した典型 はGM であ る。 ところ で, わ が2000 年 の歴史を 振 りかえ って みる と, わが 国は アジ ア文化 のな かでけ っ して文 化発 祥地 とはな らなか っ た こと ,逆に 遠 来 の文化 のい わ ば終 着駅 とな って きた ことが しば しば 指摘 さ れ る。 そ れ だけに 発 祥地 の文化 は日本 に 到着 する までに も変 化を 重 ねて きたに ちが い ない だろ うが, も っと 重要 なの は到 着 した外国 の文 化 がわ が風土 の なかで い ち じ るし く変 容を 遂げ たこ とであ る。 しかし多 くの場 合, 日本 の風土 と同 化 す る ことに よって独特 の美 の世 界が 創られ た り, より包 容力 のあ る価 値観 に 生 まれ変 わ って, 日本 文化 の普 遍 注, 柔軟 性,総 合性 が形成 された 。 日本企 業 の多 国籍化 の場 合 も同 様で,け っ して 自 らの プ1==・ダ クト・ライ フ・ サイ クルを つ くる ことな く, 技術 な ど各 種 の経営 資 源を 取 り入 れつつ国 際化 し, 前 述 の ように 独 自の標準化 技術 の体系 を 築 き上げ て きた。 し かし, ど う や ら 日本企業 は アメリカの サイ クルか ら離脱 す る転 機 を 迎えつ つあ ることが 感 じら れ る。 あ るいは アタリ カのサイ クル 自体 が有 効 に 働 くことが できな く なった のか も しれない。 しか し他方 では アメ リ カの多 国籍企業 は グl==・− バル 戦略 で再 構築 されつつあ り, わが国企 業 もそ の脅 威 を 免 れる ことはで きない。 これに 対 抗す るた めには 輸出 依存 の体質を 改 め, 自 ら もグロ ーバル戦略を 打 ち 出し, 世 界経済 の枠組 みの なかに より深 く組 みこ まれる ことを 余儀な くさ れよ う。 注 上1
)Robert Gilpin ,U. S. Power ″and the Multinational Corporation, Basic Books,
Inc., 1975, pp. 44−59 ( 山崎清訳 『多 国籍企業没 落論』ダイヤモンド 社,pp. 42 −56 ).2 ) 拙稿,“歴史的転換期をむかえ る世界 の自動 車産業 ”, トヨ タジ ャーナル・自動 車 とその世界1978.12. 参照. 3 。 技術革新のダイナミックスー 生産性の神話-わが国産業における技術進歩の速さと高さがフ ォ1・ワーとしての立場とそ
の利 点 と聚巧 みに とち え て, 外国 か らの 技術を 選択的に 導 入す るこ とに よっ て 達成 さ れたわけ だ が,ヶモ の結 果 既 存の主 要製 造業 に おじヽて 創造的 な技術 本 新 で は欧米に 比べ 劣 る半面 ,生 産 技術 で はは じめ から 最高 度 の水 準 のも のか 導 入され,そ のため きわ めて 速 く世 界的 水準に 達 したば か りで な くし, む しろ 多 くの場 合これを 抜 くこ とす ら可 能に な った の ヤであ る。た とえば , 指摘 され てい る よ うに「 日本 の鉄 鋼業 は, 他 の先 進工業 国 が必ず通 過した パ ッ下ル炉 に 屯とづ く銑鋼分 離段 階を とび 越え ,官 営八 幡製 鉄所 とし て銑 鋼一 貫工場 を 建設 ,採 算を 度 外視 し て国 費をつ ぎこ みつつ 巨大化 さ せて ゆ く形 で育成 され たゴ が,「 こ うした 鉄 鋼一 貫工 場 の よ うな生 産単位 の成 立 は, 単 に 経 済 体 制に おけ る寡 占体 制へ の 移行を 区 切 るだけ で な く, 日本 の よ うに ち ょうどこ の時 期, 遅れ て工業 化に 乗 り だし た国 の工業 化 の早 さを 理 解す る上 で も重 要 1) ’ であ る。」 こ の 指 摘 は単に わ が国鉄 鋼業 発展 史だけ でな く,第 二 次大 戦 後に お い て 七前述 の ように。酸 素転 炉 の導 入 の場合に あ ては まる も のであ り, 他 の 産業 の場 合で も多 か れ 少な かれ 同 様で あ るご とはい うまで もない。 との ように 高度 の生産 技術 がき わ めて早 くわ が国に と り入 れら れ るこ とと 同:時に ,モ の生産 技術 の 高さ が製 品 標準化 の面 で きわ めて有 効に 働い てい る こ とも指摘 さ れねば な る まい 。 バゞ ノソの モデ ルで も明ら かな ように , わが 国に 技術 革新が 移転 され る のは ラ イフ ・サ イ ダルから みて 製品 そ の もの が成 熟化 した 段階であ るこ とは 明 らか であ る。 もちろ ん,前述 の ように 技術 革 新 の初期にあ る半 導体 の場 合に は製 品 の成 熟化 を 待たず そ の技術 が移転 され る こと もな いわけ では ない 。 し かし ,一 般に わ が国産業 が 戦後 の復 興 期 から 欧 米 に キ ャ ッチ ア ップす る過程 で はす でに 標 準化期に 入 った製 品 が多 か った の であっ て,技術 も安定 して い た し,市 場 も確 立さ れてい た。 た とえば テレビ の場 合 な どはそ の もっ と も よい 例 で, ア メリ カで 完全に 普 及さ れた あ と, 日 本で 普及 がはじ まった のであ る。 1 こ の点て アバ ナシ ーは 日米 の間に みら れ る技術 開発 の相 違に 触れ, 自国O 産業 につ ぎの ような警 告を与 え て い る。 「 技術研 究投 資 の果実 を 開 拓す るた めの メ カニズ ムとして ,あ まりに多 くの関 心 が画 期的 技術 革 新に注 がれ てき てし まった ようで あ る。 わ が国経 済 の主 流 と,主要 国際 市場に おけ る アメ リ カの地 位に とっ て必要 な の は既 存 の量産 製 品の競争に 打勝つこ とであ る。 わ が 国 の科 学的 ならびに 工学 的 能力 が最大 の優位性を 発揮 でき る のは こ の面 で
あ る。同 時に こ のこ とは 日本 の経 験 か らの教 訓で もあ ろ う。 す なわち彼 ら ぱ 自動 車, ヵ メラ, 民 生用電 子 製品 ,鉄 鋼 な どの ような既存産業 の主 要製 高 め 改 良に 技術を 応用す る ことに 成 功 してい る。 おそ ら く一 国の研 究開発投 資 は 既 存の主 要生 産単位に そ の大 き な利益 を 求む べ きな の であ ろ う。 もっと もこ の考 え方 は 議論を 呼びそ うだ。 と い うのは新 しい 産業 に おけ る技術 革新 の促 進に もっ と研究開 発投資を 行 うべ し とい うほか の人 々 の勧 告に反 す るか らで 2) あ る。」 彼が新 しい 産業 に こそ 研究 開 発投 資を 行 なっ て目 がましい 技術 革新を 起す べきであ るとい う通説に対 して 異議を 唱 え てい るの には 根拠 かお る。 こ こで 彼の 技術 革新 に対 す る考え方 とそ の産業(自動車)に おけ る技術 進 歩のモ デル を 紹介 す るのはそ れが私 か主 張す る 日本 の標 準化 技術 の優位を 説 明する上 で 重要 な示 唆を 与え て くれる か らであ る。 第2 図 技術的発展段階と製品・工程の革新 画 期 的 革 新 の 比 率 。〃 ” 流動・―"- ≫技術 的発展 の正 常 移行 方向 一一‘-- ・硬着
資 料William J. Abernathy ,The Productivity Dilemma, 1978, p. 72.
アバ ナシ ーに よれば産業 におけ る技術 進 歩は 第2 図 の ように二 つ の技 術革 新 製品と工程- を中心 として刺戟され,形成されるが,その変化の過 程はこの二つ の革新は単純に平行的に各種の生産単位 のなかで進行するもめ ではない。技術変化移行の初期においては製品の革新 が起り,やがて工程の 革新がこれに追随し,その変化はドラスチックなものから,工程の改良を中 心とする積み増し的なものへと鎮静化してゆく。 製品 の革新 の初期におい て は企業の新規参入がみられるが,競争の圧力に よ爆 生産性め上昇が要請され
るにしたがい,工程の革新に技術変化の重点が移行する。 この段階にな ると 製品が標準化 される。企業 は量産製品 ラインを確立するが,画期的な革新を ひき起す力は失われてゆく。 アバナシ ーはこのような技術 進歩の過程を アメ リカの自動車工業 の発展のなかで とらえ,これをモデルにしてい る。 彼のモデルが在来の研究に比べてユニークなのはまず生産性上昇は疑いも なく技術進歩の結果であり,またそ れを生み出す源泉とみ る通説 と異なって, 生産性上昇は技術革新に対しむしろ抑止力 として働くこ とを認 め,したがっ てそれはベネフ ィットであ るとともにコストを ともな う現象であ るとみてい る点てある。 また彼のモデルは企業内の生産単位を分析単位としてい るので, 製品だけ でなく,製造工程の両面をふくんでいる。したが ってそ れは単なる プ ロダクト・ライフ・サイクル・モデルと 乱 同様に単な る学習 曲線モデル ともたもとを分 かっている。 アバナシ ーは革 新をほかのマイナーな技術改良や修正 と区別するために つぎのように定義 している。「私 か『設計方式 』と呼んでいる ものにおけ る 3) 基 本的改良 または一連の改良」を 革新とみなしている。設計方式が長続きす る例としてV8 エ ンジンと鋳造 クラソダシ ャフトり 例をあげている。これら 設計方式におけ る革新は量産化技術の一連の開発を促した。1915年におけ る キャデ ィラックのV8 エンジ ンは1932年におけ る低コストV8 で,1934年に 開発された クランクシ ャフトはフ ォこドにおけ る冶金鋳造技術の革新に より1951 年に,それぞれ量産化段階に入った。またこのよりに 一つめ製品革新が 連続的に標準化まで長期にわたる一連の改良である場合に対し,単一 の製品 革新がいくつもの設計方式を進歩させる場合もあ る。薄板圧延製鋼法の開発 は 箱型ボデ ィーを可 能にし,さらに仕上げ法,塗装,電気 熔接な どの革新を 呼び起した。 こ のように 自動車工業において製品の革新は工程技術 の革新を生み出して ゆくが,そ の経路は通常新しい工程技術の導入,工程0 組織化,既存工程の 統合化,総体的工程 のシステム化の四段階に分れる。このようにして一連の 革新は初期の「筋肉組織」を,情報を利用する「神経組 織」に変えてゆくの である。 ところで,モデルをつ くるのには比較のため共通 の 枠 組 み一 分析の単 位- が必要であ ることはい りまで もない。 自動車工業 のみならず,電気機
械 工業 にお い て もわれ われの経 験上 から 容易 に共 通 の枠 組 みが見 出され よう。 技 術 進歩 の初 期に は製 品り 革新 に重 点がお かれ てい たた め, 製品 だけ が便利 な分 析単位 とみら れ てい た。 「 しかし, 高次 の発展 段 階 に 移行す るにつ れ て, 生 産 工 程 の 担 う 重 要 性 が 増 し , 極 端 な 場 合 に は 工 程 が 主 と し て 製 品 の 特 性 を _ 4) 決定す る」 ように な る。 したが っ て分析 の単 位と し 七は製 品だけ で な く, そ れを 生 産 する製造過 程 もふ くまれ るこ とが望 ましい。 アバ ナシ ニ がそ の分 析 単位 と し て 「生産 単 位」(productive unit) とい う概 念を導入 す るの もそ のため であ る。 彼は生 産 単位を 「 特定 製 品 ライ ンを生 産 するた めに共 通管 理 下に あ る一 つ の場所に 設 5 ) 置 され る 総 合 的 生 産 工 程 」 と規 定 し て い る。 彼 の モ デ ル で は エ ン ジ ン工 場 と 組立て工場 とが具体的な生産単位として選定されてい る。 つぎに モデル作成のためには技術進歩の過程において生起する諸現象のな かに正規性や特定のパターンを見出さなければならない。 前述のようにアバ ナシーは技術革新を二つ のパターン 製 品 と工 程 に分 類 し てい る。 革新の第一のパターンは現代産業の主流をな してい る鉄鋼,石油精製,電 球,自動車エンジンなどにおけ る技術進歩であ る。 製品は標準化され,需要 の価格弾力性は大きい。生産技術は効率的 で,機械設備は大型で,特定製品 に特化している。技術進歩は製品 より工程に よって決定 される。製品と工程 の革新がかた く結合され七いるので技術的転換に要する コストは極度に高い。 千 こ の よう な 環 境 で は , 革 新 は 性 質 上 典 型 的 に イ ソ ク リ タ ン タ ル で あ り,^ 6 ) − W〃 ス トと 生 産 性 に 累 積 的 効 果 を 及 ぼ す 。」 た と え ば , デ ュポ ンに お け る レ イ ヨ ン生 産り コス ト低 下 の 半 ば 以上 は 目に 見 え な い 生 産 工 程 の改 良 に よ る も の とい わ れ る 。 ま た コ ン ピ ュ ー タ の場 合 で も新 型 の中 枢 シ ス テ ムに よ る利 益 は 個 々 に は 周 辺 シ ス テ ムや マ イ ナ ーな 改 良 よりは るか に 大 き い が , 全 体 と し て み る と , こ うし た マ イ ナ ー な 部 分 に よ る 利 益 の方 が 大 き くな る。 こ れ に 対 し , 第 二 の 革 新 の パ タ ー ン の 特 徴 は 画 期 的 な 革 新 がっ く り 出 さ れ るこ と で あ る。 第 一 の づ タ ー ンに お け る よ うな 巨 大 企 業 の 場 合 に は こ うし た 革新 は 内 部 で は 発 生 せ ず , そ の 周 辺 で 起 き る 。 こ れ ら は 「 コ ス ト 最 低化 」 よ 夕むし ろ 。{:jほ誼と最 大 化 ユ……の革 新 で,‥需 要 の 価 格 弾 力 性 は 低 い の で 高利 潤 が え られ る。 「 こ の 場 合 , 革 新 は 企 業 家 的 行 動 であ り , 新 製 品 の 導 入 や しば し ば
.革 新を 利用 す るた めに 設 立 され た 新企業 を 意味す 名o」 ア タリ カ に おけ る勃 興 期 の 自動 車工業 はそ の 適例 で,中 小 ズー カーは新 しい 自動 車 の開発に より 既 存 メーカーに挑 戦 して市 場に 参 入す る こ とが で きた。最 近 では, 半 導体工 業 では 既 存大企業を 押 し のけ て,新 興企業 が参 入 してい るが ,技術 の変 化 が はげ しい ので規 模 の経 済性 はそ れ ほ ど重要 視 され ない 。極 端に い えば 他 の企 業 や 研究 機関 から の技 針 贋報を , 企業家 の決 意に より実 行に 移す だけ で,業 8) 界をi; ー ドす る こと も可 能 な のであ る。 しか し,実 際に は こ の二 つ の革新 の パタ ーンは 別々 のも のでは な く,企業 の な かでは同 時にあ らわ れ, 発展 段階 に し たが づて変化 しな がら移 行 する も の であ り,両 者は相 互に 作用 しあ ってい る。 アバ ナシ ー の モデル では 第二 の 革 新 パタ ーンが生産 単 位 のな かで 発展 段階 の初 期に ドラ ス テ ィ ックにあ らわ れ , 次第に 第一 のパ ター ンに 移行 する。 第 二 のパ ターンが つ よくあ らわれ る そ の初期 の状況を 「流 動的 極 限」(:fluid boundary)と呼び , 第一 の パタ ーンが 終 末期に 達す る と「 硬着的 極 限」(specific boundary)と され る。 こ の状 況で は 斬新な 革新 が数多 く発 生 し, 前述 の ように 製品 の性 能が 重視 さ れ, コ スト 指 向 とは な らない 。 これに 反 し, 硬 着段 階で は特定 製品 へ の特化 が不 動 の も の とな り,生 産技術 が高 度化 ,巨 大化 し,生 産 匪は上昇 す る力≒ 移行 の方 向 第!表 技術的発展段階の諸特性とそめ移行 諸特性 流動 的極限 → 移行 → 硬着的 極限 製 製A B 品特性(主 要 品 ライン) 製 品・工程改良 の態 様 C 工 程 の 配 列 注文 品,特殊市場 ……・・………総体的市場 向きの標準品 向けに特化 流 動 的 変 化 … … … イ ソ ク リ メ ン タ ル な 改 良 伸 縮 性 , 個 別 的 作 業 … … … 連 続 機 械 作 動 的 ラ イ ン フr-f ー D 作業・労働特 性 高 度の職人的熟練技能……・・・・管 理的技 能,シ ステム監 視, と手作業 保全技能 E 工 程機械設備 汎 用機械 F 納 入 資 材 源G 生 産 能 力 …………専門化総 合システ ム 部 品,原材料 の共通 的………特定 納入経路,資 材納入先 納入 経路を通 ず る入手 の後方統 合化( 吸収) 小規模,生産範囲 の不 ‥………特 殊製品に 特化された 明確, 明確な組立て作業 な工 程
1925 :1915 1905 年 1910 資料 Abernathy ( 第5 図 と同 じ),p. 154. 1930 年 1920 を逆転させ るコストは最終的には禁止的 な高さになるレ 生産単位におけ る技術的発展段階はこのように流動的極限から硬着的極限 まで五つの段階に刻 まれ,正常な技術変化の移行は この方向にしたが ‰ そ れぞれの段階におけ る技術水準はいろいろな側面から判定 される。 すなわち 製品特性,製品・工程 改良の態様,工程 の配列,作業・労 働特性,工程機械 設備,投入資材源,生産能力(第J-表)のそれぞれが流動→硬着までの各段階 で典型的に変化しつつ,それぞれ技術的発展段階を 移行してゆく。これらA からG に至る技術的発展段階における七つ の主要要素の側面は現実において は移行の過程で相違する匹 段階ごとに総合的に,技術水準の評価ができる。 長期的にみるかぎり,これら主要要素の側面は段階ごとに均一性を維持す るのであ るが,短期的にはその均衡はいちじるしく損われることがある。第1 表のA 欄の主要製品 ラインが標準化の段階に達した として 乱 それにとも な う機械設備(E )がそ の段階に達するのでなければ, 全体 としての生産単 位の技術水準は製品 ラインが示 すほど高度の段階に 到達したとは考えられな い6 いいかえれば,そ うした要素間の不均衡が存在す るかぎり,生産単位は 高度段階の経済的利益を全面的に享受しえない のであ る。 しかし,モの半面 第3 図 フォード工場におけるエンジン開発と製品・工程の関係 流動1 2 技 術 的 発 展 の 程 度 4 5 硬 着
で は生 産単 位 は革新に 対 しなお 伸縮性 を 維持 してい る ので , 製品 の 革新に よ っ て流動的 極限 の方 向へ の逆転 も可 能であ り, 逆 転のた め の コス ト も低 くて すむ のであ る。 こ のこ とは なお操業 が作業 者 の熟 練に 依存 しなけ ればな らな い とか(D ), 投入 さ れる資材 の品質 が 低位に あ る とか(F )とい った場 合に も 同 様 な不 均 衡が 存在 し うるわけ で ,「 移 行の ダイ ナ ミックス」 が保 たれ るわ け で あ る。 / フ ォード の初 期に おけ るエ ンジ ン工場 につい てみ る と(第3 図),「 移行 の
ダイナ ミ ック ス」 が 明らか であ る。 製 品 ライ-y (A )と機 械設備(E ) の二つ
の要 素を 比 較す れば よく分 る よ うにT 型 フ ォード,A 型 フ ォードのエ ンジン,V8 エ ンジ ンが革新 的製 品 として導 入 され るたびに ,製 品 ライ ンは発展 段階 第4 図 労働生産性と技術的発展段階(フォード工場) 35 0 5 0 5 0 LOCO (M CM t-H r-( 2 2 1 1 エ ン ジ ン 当 り 労 働 時 間 0 ( 注) 技 術 的 発 展 段 階 2 3 4 5 V-8 エ ン ジ ン1X ゝ11 亀 ゝX χ エ ン ジ ン 当 り 労 働 時 間 1 エ ン ジ ン当 り労1蛎時 間 ゛ / : X ゛' `、朝 鮮戦 争 ト ラッ ク・エ ン ジン \二 _− 。 二 二 之│ エ ン ジ ン部 門 の 発 展 段 階 1900 年1910 1920 1930 1940 X950 1960 1970 1980 年 技 術的 発 展 段 階 一一一一一 労 働生 産 性( エ ン ジ ン当 り労 働生 産 性) 資 料:Abernathy (号5 図 と同じ),p. 156,
に 対 し大 き く逆 転 してい る のに対 し, 機械 設備 め方 はっ ね に製 品 ライン の変 化に お くれ てお り,そ の逆転 を抑 制す るか の ように 動 き,逆 転 す る場 合で も そ の振 幅は小 さい 。「 機械設 備 の発 達は漸 進的 に上 昇 す る低い限 界線 の よう に行 動 し,生 産単 位全 体 の発 展を抑 圧 す る。 実 際に は こ のこ とは , コス ト構 造や 労働 の利 用方 法や 規模 の最低 限経 済 比率 機械設 備 の伸 縮性 自体,そ れぽ か りでな く組織 や経営管 理 へ の総 合的 効果 に対 す る 機械設 備進 歩 の広範 な 衝 ㈲ 撃を示 してい る。」 さらに 「概 念的にい え ば, こ の二 つ の 曲線 の共 通 の高度 発 展段階 へ の収 斂 は画 期的 製品 革新 の工 程 革新 と の結 びつ きを 明らか に 七てい る。両方 の局面 がどち らも 高度段階に 到 達 した ときには 製 品 と工 程 の革新は 高度に 相互 依存 10) 的 とな る のであ る。」 つ ぎに アバ ナシ ーは さきに 述べた ように 彼 のモ デルを 二つ の異なった生 産 単位 フ ォードのエ ンジ ン工 場 と組立 て工 場 に 適用 して,そ れぞれ の 点 発 展段階 におけ る革新 と生産 性 の関 係を 観 察 してい る。 まず 土ソジ ソ エ 場 (第4 図)におい て は第3 図 と同 じ ように 縦 軸に はA か らG に 至 る七 つの要 素 が平 均的 評点 の形 で五つ の段階 に刻 まれてい る。 縦 軸 の もう一 つ の線 線 で示 され てい る つ の時点 はこ ンジ ン当 りの労 働時 間で あ る。 こ の二つ の線 は二 に お い て技術 進 歩 の発展段 階 と生 産性 高度 初期のT 型 フォードの導入と,第二次大戦後 のトランスフ ァー ・ ライ ンに よ る生 産 設 備 の 統 合 化 い る。 第一 の波 は製 品 の革新 においてつ よい相関関係を示している。これに対し,二つ の発展段階の方向 逆転が1930年代に起っているが,一つはT 型フ ォードの, もう一つはV8 エ ンジンのそれぞれ導入に 起因するものであ る。 この場合に もそれは生産性に おけ る逆転と動きがきわめてよく一 致している。 しかし,波瀾ぶくみながら長期的には生産単位におけ る構造的変化に見合 つた生産性の上昇が観取されたわけ だが,1955年以降は硬着的極限 T 型 フ ォード の発展段階一 に到達するとともに生産性上昇のカーブも停滞するに至って が引 き起 した学 習 曲線 の 急速な下降に生産量 拡大にともな う生産性上昇が加わり,さらにこれにエン ジン工場におけ る革新と工程 の改良が加え られた結果である。 第二 の 波 は1952 年におけ るクリーブランドのエンジ ン工場のトランスファー・ラインに よる工程 の完全統合化をつ よく反映している。
第一 の波を動態的 といえば,第二は静態的とい うことができる。 第一にお い ては今日の半導体工業 の場 合のように 製品の革新がなげれば競争に 参加す ることが許されない。したがって既存製品ラインの競争で参入 する既存企業 より乱 企業がそ の初期の小企業時代に製品の革新で参入機会をつかむこと に 成功しているのは興味深い。 つぎに組立て工場において 乱 図は省略するが同じ ように生産性と発展段 階 の間に緊密な関係かおるこ とが明らかであ る。ただエ ンジン工場の場合に 比べ異なっているのは移行の進展がおくれているとい う点てあ る。 戦前にお い ては鋼製箱型 ボディーの採用,A 型フォード, V8 エンジン の導入でT 型 フ ォード登場以来の生産性上昇と技術進歩が三度び切断されてい る の に 対 し,戦後は乗用車の大型化やコンパクトカーなどの変化 があ ったに もかかわ らず,労働生産性は コンスタントで,技術的発展の移行もエンジン工場ほど 顕著ではない。 注 う I う1OJ CO 4 )5 )6 )7 )8 )9 )10 ) 中 岡哲 郎「 技術を 考える13 章」 日本評論社,1979, p. 190.Abernathy, 前掲。pp. 171−172 レ 前 掲p. 54・ 前掲p. 48・・ 前掲p. 48. 前掲p ・.69・ 前 掲p. 70.John E. Tilton,前掲pp. 73 −87・Abernathy ,前掲p. 154. 前 掲p.155. あとがき 本稿は未定稿で,近く刊行される山崎清編『国際的経営の構築』ビジネス教育出 版社(山城章責任編集 叢書・現代経営学の課題 第2 巻)の一部に入れられる予 定である。(1979年11月14日)