• 検索結果がありません。

本邦赤痢(疫痢を含む)罹患率に及ぼす諸要約の統計学的考察

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "本邦赤痢(疫痢を含む)罹患率に及ぼす諸要約の統計学的考察"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

13 (東京女医大門第28巻第12号頁873−876昭和33年12月)

本邦赤痢(疫痢を含む)罹患率に及ぼす

諸要約の続計学的考察

第一章 緒 東京女子医科大学衛生学教室一任 吉岡博人教授) 言 泉 イズ1 交 フミ 雄 島

(受付昭和33年9月25目)

本邦における赤痢(疫痢を含む)の発生状況を みると,同じ腸管系伝染病である「腸チフス」,「パ ラチフス」が文明の発達,医学の進歩とともに, 近年著しく減少してきているにもかかわらず,赤 痢は一向に減少する傾向を示さず,ますます猛威 を振っている。また他の文明諸国においては,今 日,赤痢ははなはだ稀有なる疾患とみられてお り1),ひとりわが国においてのみその発生が依然 として衰えないということは,:交明国として,恥ず べきことといわねばならない。それゆえ従来種々 な予防対’策が論ぜられ,また講ぜられてきたので あるが,今日にいたるまでなんらみるべき効果が 現われないのはいかなる理由であろうか。そこ で,本論丈において,赤痢の発生が,気象及び社 会的諸要約によりいかに影響されているかを検討 することとする。 戦前,吉岡2)は種々なる伝染病に対する社会生 物学的要約の影響について,部分相関法により研 究し,赤痢罹患率については,平均気温,一世帯 平均人員が,赤痢の発生に対し軍要な因子である と述べている。著者は当時とは異った戦後の社会 状i勢における赤痢罹患の状態について,同様の研 究を行い,吉岡の研究と比較し,若干の知見をえ ためで,ここに報告する次第である。 第=:章 資料及び研究方法 資料: 人ロ…………昭和80年国勢調査報告 (1%抽出推計人口) 赤痢患者数……未発表のため厚生大臣官房統計調 査部の原表より得た。 平均気温……中央気象台月報(昭31) 女子高目在学者数…文部統計速報74(日召30) 預金高一財政金融統計月報64(昭31) 研究方法: 本邦において都道府県別よりみた赤痢罹患率の高低 に対する気象及び社会的諸要約は,無数に考えられる が,これについては,戦前に吉岡2)の研究があるの で,これにならい以下の五種に限った。 1.赤痢(疫痢を含む)訂正罹患率の対数 2.平均気温

・・教育曙四一C髄膜館撒・・・…)

・・冨の分布一1・9(全金融機関の預金高 全人口) 5.一世帯平均人員 ・・人・の都篠中三一C市警筆。ロー×・・…) これらの諸要約は,最近の赤痢事情を研究するた め,国勢調査が行われた昭和30年度のものを用いた。 以上の諸要約中,赤痢羅患率は性,年令構成を考慮し て訂正罹患率を使用した。標準人口は昭和30’年全国 入口を用いた。赤痢粟田罹患率,富の分布に対数を用 いたのは,度数分布が一方に偏筒しているので,これ を正常に近づかしめるためである。 上記の如き諸要約と,赤痢罹患率との関係を部分相 関法を採用して,その相関係数を算出した。かくして いかなる要約が該罹患率に重要な影響を及ぼしている かを検討した。 部分三関の公式は次の如くである。 r 125… n== r12. 54一一(n−D−rn. s4… ( n 一1) r2n. s4,一 ( n 一1) 5 ) (1−rln.i4・・一(n−1))S(1−r2n, s4...(n−1))ifS

Fumio IZUMI (Department of Hygiene, Tokyo Women’s Medical College). ・: Studies on the factors influencing the morbidity rate of clysentery (including Ekiri) in Japan from the standpoint of public

health statistics.

(2)

14 零次の相関係数は次の公式によった。 rxy== 一一一N£sk一(XsY,)一一一 4) この公式においてrxyは,二つの変数XYの間の相 関係数で,Sx Syはそれぞれの標準偏差, xyはXYに おけるそれぞれの平均からの偏差で,Nは観察数であ るQ 相関係数rが有意であるか,有意でないかは,その 標準誤差の2倍以上ならば有意であり,それ以下なら ば有意でないとした。その公式は, 二次においてはS.E.、2一一_⊥_ VN−1 高次においてはS.E.、2.,、...n___≦!__.一 VN一(1十K) 上の公式中S.Er12, SE r12.54…nは標準誤差で, Nは 測定数Kは影響を除外した要i素の数である。 第三章 研究の結果 第一節 平均気温と赤痢罹患率 気象的要約には種々あるが,平均気温を気象要 約として研究してみることとする。 気温の高いほど腸管系の伝染病は発生しやすい であろうことは,想像にかたくないところであ る。よって平均気温(2)と,赤痢罹患率(1)との 學・洗ア(士R漠冒力.エ.あ2ギ 緯二一」ノ\)ノ’lP因‘ζ”ノ”もレV’th, r12:ニ 一0.038±0.149 であり,ほとんど相関はないといってよい。 これは予期にまったく反する。よって次に他の 諸要約を順次に一定にして,その影響をのぞけば ri2. s 一= 一 O. 035 ± O. 151

r12.4= 一〇.010=ヒ0.151 ri2.s = + Q. 14・7.:i: O.. lsl . ri2.6 .== 一 O. 092 ±. e. 151

すべて相関係数は小さく,ほとんど相関はない といってよい。 次に諸要約を同時に一定にしてみても, rユ2.、5456; 十〇.113=ヒ0.156 順相関ではあるが,有意ではない。すなわち, われわれの予期に反して,平均気温の高低は赤痢 罹患率に影響を及ぼす:璽要な因子ではないという ことができる。吉岡2はその研究において’、平均 気温の高い地方ほE’.赤痢罹患率は高く,平均気温 という純気象学的要素が赤痢罹患率を左右する重 要な要約であるといっている。しかし,松田1)は 近年にわけるわが国の赤痢の年間癸生状況をみ て,流行のすすむにつれて,発生季節の幅がひろ がっているといっている。すなわち,この点にお いて戦前L,戦後では著しい差異が認められる が,その原因については今後の研究にまたなけれ ばならない。 第二節 教育の普及度と赤痢罹患率 教育の高い地方が赤痢罹患率の低いであろうと いうことぽ想像にかたくないが,かかる事実を立 証すべき文献は見あたらない。 女子の高校教育普及度を一般教育普及度とみな し,赤痢罹患率との零次の相間をみれば, ris =一 十〇.019 ±O. 149 ほとんど相関はない。次に他の諸要約を順次に 一…閧ノしてみれば, r15.2=十〇.0ユ3=ヒ0.151

ris.4 == 一 O. OOI ± O. 151

rts, s =;一 一 O. 018 ± O. 151

ris.6 = 十 O. 106 ± O. 151

すべて相関はない。次にこれらの諸要約を全部 同時に一一一定にして,その影響をのぞいても, r17」.24s6 = 十 O. 254 ± O. 156 やはり有意ではない。すなわち,教育の普及度 は赤痢罹患率に影響を及ぼす因子ではないといえ 洛一害囲2)凄N7れについてはやはh同様iたど}存 いっており,ての点については戦前との差異は認 められない。 第三節 富の分布と赤痢罹患率 赤痢は貧民階級の著明な疾患であるといわれて いるが,全金融機関における一人当りの預金高を 富の程度としてその相閣をみれば, r14 =一〇.128=ヒ0.149 逆相関ではあるが有意ではない。珠に他の諸要 約を順次に一一にしてみれば,

ri4.2 一一 一 O. 123 ± O. 151 r14.s = 一 O. 127 ± O. 151 r14.5= 十〇.040=ヒ0.151 r14.6 :=一:一 一 O. 460 ± O. 151 都市集中率を一定にしたものだけが,有意の逆 相関を示している。次に諸要約を全部同時に一定 にしてその影響をのぞけば, r14.2556= 一〇.397=±二〇.156 これは有意の逆相関であり,予期のとおりであ る。零次の相関で有意でないようにみえたのは, 富の分布(4)と,都市集中率(6)の相関が,r46= 十〇.774十〇.149で,かなり高い順相関を示し, また後に示すように,都京集中率が,赤痢罹患率

一sw一

(3)

15 に対して,軍船な因子であるからである。すなわ ち,都市集中率の影響によって,零次においては 有意でないようにみえたのである。これを要する に,富の分布の大なるほど赤痢罹患率は小さいと いうことができる。吉岡2)は,富の分布は赤痢罹 患率に対して影響を与える重要な因子ではないと いっているが,ここにも戦前と,戦後における赤 痢発生状況の差異がみられ,今後における赤痢予 防対策の参考になるであろう。 第四節 一世帯平均人員と赤痢罹患率 人の密集しているところに伝染病の多発しやす いことは,容易に想像しうることである。そこで 赤痢罹患率と,一世帯平均人員との零次の相関を みれば, r15・= 十〇.319=ヒ0.149 有意の順相関であり,われわれの予期のとおり である。次に他の要約を順次一定にしてみれば,

ris.2 = 十 O. 347 ± O. 151 ris.s = 十 O. 319 ± O. 15i ris.4 =: 十 O. 297 ± O. 151 rls.6 = 十 O. 433 ± O. 151

富の分布を一定にしたものをのぞいて,他はす べて有意の順相関である,次にこれらの諸要約を 同時に一定にして,その影響をのぞいても,

ris. 2s46 = 十 O. 328 t O. 156

やはり有意の順相関である。すなわち,一世帯 平均人員の多い地方ほど赤痢罹患率は高いという ことができる。吉岡2)も同じく一世帯平均人員は 赤痢罹患率に対して影響を及ぼす重要な因子であ るといっており,赤痢が人から人への伝染力の強 いことを証明しているように思われる。 第五節 人9の都市集中率と赤痢罹患率 人口の都市集中率と,赤痢罹患率の零次の相関 をみれば,

ri6 = 十 O. 203± O. 149

順相関ではあるが有意ではない。次に他の要約

を順次に一・定にしてみれば,

ri6.2 == 十 O. 219 ± O. 151 r16. s == 十 O.227 ± O. 151

ri6.4 = + O. 481 ± O. 151

r16.5二 十〇.365=tO。151 すべて順相関であり,その中で富の分布と,一 世帯平均人員を一定にしたものは有意である。そ こでこれらの諸要約を全部同時に一定にして,そ の影響をのぞけば, r16.2s4s = 十 O. 530 ± O. 156 有意の順相関である。すなわち,都市集中率の 大小それ自身が赤痢罹患率の大小に重要な影響を 及ぼしているということができる。 零次の相関で有意でないようにみえたのは,都 市集中率と富の分布とが, r46 = 十 O. 774 ± O. 149 という高い順相関を示し,しかも前述のように, 赤痢罹患率と富の分布は有意の逆相関を示す。ま 1た一世帯平均人員と,都市集中率とが,有意の逆 湘関を示し,赤痢罹患率と,一世帯平均人員は有 意の順相関を示す,ゆえにこれ二つの要約の影響 肛よつて,零次においては,有意でないようにみ えたのである。 吉岡2は入口の都市集中率は赤痢罹患率に対し て影響を与える重要な因子ではないといっておる が,ここにも戦前と,戦後の赤痢発生状況の差異 がみられる。

第四章考 察

以上のことから,赤痢罹患率に対する本研究で 使用した諸要約の影響を,吉岡2)の研究による戦 前と比較検討することにする。 これを表で示せば,下記の通りである。

\罐

戦前 戦後 十〇. 375 十〇.113 教育の 富 の 普及度」分布 一〇.237 i十〇,033 E +・・2541−0・397 平均人員市集中率 e

一世帯1人・瑠

十〇.321 十〇.328 十〇. 104 十 O. 530 平均気温:戦前は平均気温の高いほど赤痢罹患 率は高く,平均気温は赤痢罹患率に対して,影響 を及ぼす重要な因子となっているが,戦後におい ては,重要な因子とはなっていない。 教育の普及度:戦前,戦後ともにわれわれの予 期に反して,赤痢罹患率に影響を及ぼす重要な因 子とはなっていない。将来の赤痢予防対策につい て考えなければならないことであろう。 富の分布:戦前は赤痢罹患率に影響を及ぼす重 要な因子とはなっていないが,戦後においては, 富の分布の低いほど赤痢罹患率は高くなってお り,赤痢罹患率に影響を及ばす重要な因子となっ ている。 一世帯平均人員:戦前,戦後を通じて赤痢罹患 率に影響を及ぼす因子となっており,赤痢が人の 一 st5 一

(4)

16 密集するところに多発するであろうという,われ われの予期のとおりである。 人口の都市葉中側:戦前においては都市集中毒 は,赤痢罹患率に影響を及ぼす因子とはなってい ないが,戦後においては,はなはだ高い順相関を 示し,都市集中率が赤痢罹患率に影響を及ぼす重 要な因子となっている。これは戦後における都市 集中率が,戦前のそれに比して,著しく増大した ためであろうと考えられる。’ これを要するに,戦前においては,自然的並に 唯一の社会的要因がジ赤痢罹患率に対して,影響 を及ぼしていたが,戦後においては,多くの社会 的要因が強く影響しているということができる。 第五章 総括及び結論 昭和30年度における都道府県別にみた赤痢訂 正罹軍勢の大小と,平均気温,教育の普及度,富 の分布,一世帯平均人員,人口の都市集中率の五 種の要約との部分相関を検し,戦前のそれと比較 してみたが,その結果を総括すれば,次のごとく である。 (1) 平均気温 平均気温と,赤痢罹患率の相 関は零次においては,ほとんど相関はない。 そこで他の諸要約を同時に一定にしてみれば, rn.34s6 ’== 十 O. 113 ± O. 156 順相関ではあるが,有意ではない。すなわち, 平均気温それ自身は赤痢罹患率の大小に影響を与 える因子とはい.えない。.吉岡2)は平均気温は,赤 痢罹患率に影響を及ぼす重要な因子であるといっ ておるが,この点において戦前ど戦後に差異がみ られる。 (il)教育の普及度 教育の普及度と,赤痢罹 患率の相関は唐芋においては,ほとんど相関はな い。他の諸要約を同時に一定して,その影響をの ぞいても, rls.24s6 = 十 O. 254 ± O. 156 有意ではない。すなわち,教育の普及度は赤痢 罹患率に影響を及ぼす重要な因子とはいえない。‘ 吉岡2)も同様にいっており,この点においては, 戦前と戦後に差異はない。 (皿) 富の分布,府県別の一i人当りの預金高’ と,赤痢罹患率の相関をみれば,零次では,’

riA = 一 O. 128 ± O. 149

逆相関ではあるが,有意ではない。他の諸要約を 全部同時1(一一・定にしてみれば, r14. 2ss6 = 一 O. 397 ± O. 156 有意の逆相関である。すなわち,富の分布の低 い地方ぽど赤痢罹患率は高いといえる。 吉岡2)は冨の分布は赤痢罹患率影響を与える重 要な因子ではないといっておるが,この点におい ても,戦前と戦後に差異がみられる。 (IV) 一世帯平均人員 一世帯平均人員と,赤 痢罹患率との相関をみれば,年次では,

ris = 十 O. 319 ± O. 149

有意の順相関である。他の諸要約を同時に一・定 にして,その影響をのぞいても, rユ5.2546 = 十 〇.328 =±二 〇.156 やはり有意の順相関である。すなわち,「世帯 平均入舎の多いほど赤痢罹患率は高いということ ができる。吉岡2)も一世帯平均人員は,赤痢罹患 率に影響を及ぼす重:要な因子であるといってい る。この点においては,戦前,戦後に差異はみら れない。 (V) 人口の都市集中率,都市集中率と,赤痢 罹患率の相関をみれば,零下では, rユ6= 十〇.203±0.149 順相関ではあるが,有意ではない。他の諸要約 を同時に一定してみれば r16. 2s4s = 十 Q. 530 ± O. 156 高い有意の順相関を示す。すなわち,都市集中 率も赤痢罹患率に影響を及ぼす重要な因子である といえる。吉岡2)は都市集中率は,赤痢罹患率に 影響を及ぼす因子ではないといっているが,この 点においても戦前と,戦後に差異がみられる。 以上を要約すれば,戦前においては,自然的並 に唯一の社会的要因が赤痢罹患率に影響していた が,戦後においては,多くの社会的要因がつよく 影響している。したがって予防対策についても, この点から老即きるべきであろう。 稿を終るに臨み,終了御懇切なる御指導,御校閲を 賜った吉岡博人教授に謹んで謝意を表する。 丈 献 1)松田心一:赤痢の疫学,公衆衛生,16,(2) 7∼9 (日野 29) 2)吉岡囚人:本邦赤痢(疫痢を含む)罹患率に及ぼ す諸要約の衛生統計的考察,民族衛生,3,253 .v273 (He 9

3) Pearl, R : 1ntroduction to Medical Biometry

and Statistics, 394tv406, W.B. Saunders Co.

(1930)

4)吉岡博人:衛生統計学,167,南山堂(昭29) 一 876 z−m

参照

関連したドキュメント

関係委員会のお力で次第に盛り上がりを見せ ているが,その時だけのお祭りで終わらせて

 第一の方法は、不安の原因を特定した上で、それを制御しようとするもので

スライド5頁では

市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本

その目的は,洛中各所にある寺社,武家,公家などの土地所有権を調査したうえ

このような環境要素は一っの土地の構成要素になるが︑同時に他の上地をも流動し︑又は他の上地にあるそれらと

真竹は約 120 年ごとに一斉に花を咲かせ、枯れてしまう そうです。昭和 40 年代にこの開花があり、必要な量の竹

これらの事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的