2.4 非臨床試験の概括評価の目次
2.4.1 非臨床試験計画概略 ... 4
2.4.2 薬理試験 ... 6
2.4.2.1 効力を裏付ける試験 ... 6
2.4.2.1.1 In vitroにおける VEGF Trap の作用... 6
2.4.2.1.2 In vivoにおける VEGF Trap の作用... 6
2.4.2.2 副次的薬理試験 ... 8 2.4.2.3 安全性薬理試験 ... 9 2.4.3 薬物動態試験 ... 9 2.4.3.1 有色ウサギにおける硝子体内投与後の分布 ... 10 2.4.3.2 サルにおける硝子体内投与後の分布 ... 10 2.4.3.3 マウス、ラット、及びサルにおける静脈内投与及び皮下投 与後の薬物動態 ... 14 2.4.3.4 ラットにおける静脈内投与後の分布 ... 15 2.4.4 毒性試験 ... 15 2.4.4.1 単回投与毒性 ... 17 2.4.4.2 反復投与毒性 ... 17 2.4.4.3 遺伝毒性 ... 19 2.4.4.4 がん原性 ... 19 2.4.4.5 生殖発生毒性 ... 19 2.4.4.6 若年動物における試験 ... 20 2.4.4.7 局所刺激性 ... 21 2.4.4.8 その他の毒性試験 ... 21 2.4.5 総括及び結論 ... 22 2.4.6 参考文献一覧 ... 26
略語一覧
略 語 英 語 名 称 日 本 語 名 称
ADCC Antibody dependent cell-mediated cytotoxicity
抗体依存性細胞傷害(作用) AMD Age-related macular degeneration 加齢黄斑変性
AUC Area under the concentration-time curve
濃度-時間曲線下面積 AUC0-∞ Area under the concentration-time
curve (from time 0 to infinity)
濃度-時間曲線下面積(0 から無限大時 間)
AUC(0-x) Area under the concentration-time curve over x h
濃度-時間曲線下面積(0 から x 時間) CDC Complement dependent cytotoxicity 補体依存性細胞傷害(作用)
CHO Chinese hamster ovary チャイニーズハムスター卵巣
CL Clearance クリアランス
Cmax Maximum serum or plasma (drug) concentration
最高血清/血漿中(薬物)濃度 CNV Choroidal neovascularization 脈絡膜新生血管
ELISA Enzyme-linked immunosorbent assay 酵素免疫測定法
F Bioavailability バイオアベイラビリティ FSH Follicle stimulating hormone 卵胞刺激ホルモン
GD Gestation day 妊娠日
GLP Good laboratory practice 医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施 の基準
HUVEC Human umbilical vein endothelial cells
ヒト臍帯静脈内皮細胞 ICH International conference on
harmonization of technical requirements for registration of pharmaceuticals for human use
日米 EU 医薬品規制調和国際会議 Ig Immunoglobulin 免疫グロブリン IM Intramuscular 筋肉内 IVT Intravitreal 硝子体内 IV Intravenous 静脈内 KD (Equilibrium) Dissociation constant 解離定数 LH Luteinizing hormone 黄体形成(化)ホルモン LOAEL Lowest observable adverse effect
level
最小毒性量 MRT Mean residence time 平均滞留時間 NOAEL No observed adverse effect level 無毒性量
OIR Oxygen-induced retinopathy 酸素誘発虚血性網膜症 PlGF Placental growth factor 胎盤増殖因子
SC Subcutaneous 皮下
SCID Severe combined immunodeficiency 重症複合免疫不全 S.D. Standard deviation 標準偏差
略 語 英 語 名 称 日 本 語 名 称 t1/2 Terminal elimination half-Life 終末相における消失半減期 TK Toxicokinetics トキシコキネティクス Tmax Time to reach maximum
(serum/plasma) concentration
最高(血清/血漿中)濃度到達時間 VEGF Vascular endothelial growth factor 血管内皮増殖因子
VEGFR Vascular endothelial growth factor receptor
血管内皮増殖因子受容体 Vss Volume of distribution at steady
state
2.4 非臨床試験の概括評価 2.4.1 非臨床試験計画概略 アフリベルセプト(以下、VEGF Trap)の硝子体内投与による臨床使用と脈絡膜新生血管を伴 う(滲出型)加齢黄斑変性(AMD)を効能・効果とする製造販売承認申請を目的に、VEGF Trap の薬理、薬物動態及び毒性学的プロファイルを評価するための非臨床開発プログラムが計画され た。このプログラムは、ICH S6 バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価 (1997)及び ICH M3(2009)に準拠した。 血管内皮増殖因子 A〔VEGF-A(単に「VEGF」と記される場合もある)〕は、生理的及び病的い ずれの血管新生にも深く関わっている1)。ある種の眼疾患においては、VEGF が病的血管新生や異 常な血管透過性の亢進を促進していることが知られている2)。VEGF Trap は二量体糖たん白質 (たん白質部分の分子量 97kD)であり、総分子量約 115kDa(ホモ二量体糖たん白質として)の 約 %は N 結合型糖鎖付加によるものである。VEGF Trap は、ヒト VEGF 受容体(VEGFR)-1 の 第 2 Ig ドメインとヒト VEGFR-2 の第 3 Ig ドメインをヒト IgG1 の定常領域に融合して作製した ものである3)。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)K1 細胞で発現させた組換え VEGF Trap たん 白質を、ろ過及びクロマトグラフィーにより精製し、硝子体内(IVT)投与用製剤として VEGF Trap-Eye が製造される。
薬理試験では、まず、VEGF-A 及びその関連分子に対する VEGF Trap の結合親和性及び特異性 について検討し、さらに VEGF Trap の作用を細胞アッセイで検討する in vitro 試験を実施した。 続いて、眼性血管疾患の動物モデルを用いて、病的血管新生及び血管透過性に対する VEGF Trap の効果を検討する in vivo 試験を実施した。In vitro 試験(2.6.2.2.1 参照)において、VEGF Trap の結合親和性は、マウス、ラット、ウサギ及びヒトの VEGF-A、ヒトの VEGF-B、関連血管新 生因子であるヒトの胎盤増殖因子(PlGF)-1、並びにマウス及びヒトの PlGF-2 に対して、いず れも pM レベルであったが、主としてリンパ管新生に関与する4)ヒト VEGF-C 及び VEGF-D に対する 結合は認められなかった。細胞系アッセイにおいて、VEGF Trap は VEGF 依存性受容体リン酸化 及びカルシウム動員を阻害したが、補体依存性細胞傷害(CDC)作用及び抗体依存性細胞傷害 (ADCC)作用は誘導しなかったことから、VEGF Trap は VEGF-A や VEGFR-1 リガンドである PlGF に結合し、それらの受容体結合を阻害することによって、機能を発揮するものと考えられた。
VEGF Trap は、ヒト VEGF-A に対する親和性と同程度の親和性で、ヒト以外の哺乳類の VEGF 及 び PlGF にも結合することから、VEGF Trap の in vivo における作用をげっ歯類及び霊長類の眼 性血管疾患モデルを用いて検討した(2.6.2.2.2 参照)。これらの試験において、VEGF Trap の投与経路は、予定臨床投与経路である硝子体内投与を主として用いたが、他の投与経路との相 対的な効果を検討するために、全身投与経路(皮下、静脈内など)も用いた。さらに、投与レジ メンや薬理作用が発揮される VEGF Trap の血中濃度を検討するため、また全身性の強い VEGF 阻 害によりもたらされる影響を検討するため、静脈内及び皮下投与による副次的薬理試験及び安全 性薬理試験を実施した(2.6.2.3 及び 2.6.2.4 参照)。薬理試験では、検討したすべての動物 モデルにおいて、病的血管新生や異常な血管漏出に対する VEGF Trap 硝子体内投与の効果が確認 された。VEGF Trap の硝子体内投与により眼で薬理効果が発揮されるときの眼外組織における VEGF Trap の曝露量はわずかであり、眼外組織で VEGF Trap の作用が発現する血中濃度とは大き な開きがあった。動物において VEGF Trap の全身作用がみられる用量及び血中遊離型 VEGF Trap 濃度は、ヒトに VEGF Trap-Eye を硝子体内投与した際の用量及び血中濃度を大きく上回る。した がって、VEGF Trap-Eye をヒトに硝子体内投与したとき、全身作用が現れるほどの遊離型 VEGF
Trap に全身が曝露される可能性は極めて低いと考えられる。以上の VEGF Trap の薬理作用につ いて検討した試験成績は、VEGF Trap の臨床使用を支持するものである。
VEGF Trap 硝子体内投与後の眼組織における分布、並びに硝子体と血漿における薬物動態を評 価するために、VEGF Trap を有色ウサギに単回投与及びサルに反復投与した。遊離型 VEGF Trap 及び VEGF Trap 複合体の血漿中濃度を測定して、硝子体内投与後の全身曝露量及び薬物動態プロ ファイルを評価した(2.6.4.4 参照)。 全身投与による毒性試験の妥当性を支持し、硝子体内投与後の薬物動態の理解を深めるために、 マウス、ラット、サルにおいて単回静脈内及び皮下投与による薬物動態試験を実施した。血清中 の遊離型 VEGF Trap 濃度を測定してノンコンパートメント解析によって薬物動態を評価した (2.6.4.3 参照)。 投与された VEGF Trap は、循環血中において 2 種類の存在形態をとった。すなわち、未変化の 遊離型 VEGF Trap と、標的リガンドの VEGF と結合した VEGF Trap 複合体である。VEGF は正常な 哺乳類組織に常に認められ、その産生速度はげっ歯類(約 6ng/g 組織/日)とヒト(約 2.5ng/g 組織/日)で同様と報告されており5)、持続的に産生される VEGF と結合することによって循環血 中の遊離型 VEGF Trap は速やかに複合体に変換される。VEGF Trap 複合体の血漿中濃度は、 VEGF Trap 用量に伴って増加し、遊離型の VEGF Trap がすべての VEGF に結合すると最高濃度に 到達する。VEGF Trap の用量がさらに増加すると、遊離型 VEGF Trap の血漿中濃度は用量に応じ て増加するが、VEGF Trap 複合体の血漿中濃度がさらに増加することはない。 毒性試験プログラムでは、VEGF Trap の硝子体内投与による臨床開発計画を支持するために、 異なる投与量(0.05~4mg/eye)、投与スケジュール(2~6 週毎の投与)、投与期間(最長 8 ヵ 月間の反復投与毒性試験)及び製剤(最大濃度 80mg/mL)による硝子体内投与試験を実施した (2.6.6.2 参照)。硝子体内投与毒性試験に適した動物種はカニクイザルのみであった。サル の眼はヒトの眼と構造的及び生理学的に最も類似している。特に、ヒトやサルの網膜には、中心 視及び視力を担う特殊な構造体である黄斑や中心窩が存在する。マウス、ラット及びウサギの網 膜には黄斑及び中心窩は存在しない。また、臨床における硝子体内投与を支持する曝露量の安全 域を検討するために、サルの眼は、臨床試験に相応する投与量、投与容量及び投与頻度で VEGF Trap を支障なく硝子体内投与できる十分な大きさを有している。 さらに、VEGF Trap が全身投与される適応症を対象とした臨床試験の実施を支持するために、 全身投与(静脈内投与、皮下投与)による毒性試験を行った(2.6.6.3 参照)。マウス、ラッ ト及びカニクイザルにおいて、静脈内投与又は皮下投与による広範な単回及び反復投与毒性試験 を行った。マウス及びラットは、抗 VEGF Trap 抗体産生に起因した糸球体腎炎を発症したことか ら、全身投与による慢性毒性の評価動物として不適切であると考えられた。したがって、全身投 与による安全性評価における主要な動物種としてカニクイザルを用いた。VEGF Trap は週 1~3 回の投与頻度で、4 週間~6 ヵ月間にわたり投与した。サルにおける 6 ヵ月間静脈内反復投与毒 性試験の一部として、妊孕性に関するパラメータについて評価した(2.6.6.6.1 参照)。生殖 発生毒性試験はウサギを用いて実施した(2.6.6.6.2 参照)。今回申請する適応症には関係し ない他の適応症に対する開発計画の一環として、若年サルにおける 3 ヵ月間静脈内投与毒性試験 を実施した(2.6.6.6.4 参照)。 VEGF Trap の非臨床薬理、薬物動態及び毒性試験成績、並びに動物及びヒトに臨床用量を硝子 体内投与したときの VEGF Trap の全身曝露量が極めて小さいことを総合的に考え、VEGF Trap は 脈絡膜新生血管を伴う(滲出型)AMD 患者に有効かつ安全に投与可能であると結論できる。
2.4.2 薬理試験
薬理試験では、VEGF Trap の結合特性及び薬理作用を明らかにする in vitro 試験(2.6.2.2.1 参照)、並びに眼性血管疾患の動物モデルを用いて病的な血管新生及び血管透過性に対する抑制 作用を検討するin vivo試験を実施した(2.6.2.2.2 参照)。
2.4.2.1 効力を裏付ける試験
2.4.2.1.1 In vitro における VEGF Trap の作用
In vitroにおいて、VEGF Trap はヒト VEGF-A、VEGF-B 及び PlGF-2(ホモ二量体)のいずれに も結合し、1:1 の複合体を形成する。その解離定数 (KD)はそれぞれ 0.497pM、1.92pM 及び 38.8pM であった。VEGF Trap はマウス、ラット及びウサギの VEGF、並びにマウス PlGF-2 にも結 合し、それぞれの該当するヒト由来のリガンドに対する結合親和性と同等の高い親和性を示した (表 2.6.2-1)。サルの各リガンドについては、単離し、結合親和性を測定することは実施して いないが、サルとヒトの VEGF-A 及び PlGF-2 の配列はほぼ同一であることから、親和性は同等で あると考えられる。VEGF Trap が PlGF や VEGF-B にも結合し薬理作用に寄与することが、VEGF Trap の臨床使用における VEGF を標的とした他の治療法との違いとなり得るかもしれない。この ことは、滲出型 AMD 患者の新生血管膜に PlGF が存在していること、また PlGF が脈絡膜新生血管 の動物モデルにおいて血管病変の形成に寄与していることや、VEGF-B を網膜に過剰発現させた 動物モデルにおいて網膜及び脈絡膜で血管新生が促進され、血液網膜関門の破綻が生じることか らも支持される6,7)。さらに、PlGF は VEGF-A と相乗的に血管透過性を亢進させることも知られて いる8,9)。
In vitro において、VEGF-A と等モル以上の VEGF Trap の存在下で、初代培養ヒト臍帯静脈内
皮細胞(HUVEC)の VEGF 誘発 VEGFR-2 受容体リン酸化及びカルシウム動員が阻害されることが示 された(表 2.6.2-2)。
HUVEC や各種腫瘍細胞を用いた試験において、VEGF Trap は CDC 作用及び ADCC 作用を示さない ことから、VEGF Trap は VEGF や関連 VEGFR-1 リガンドへの結合及びその受容体からの隔離を介 してのみ作用を発揮すると考えられる(表 2.6.2-2)。
2.4.2.1.2 In vivo における VEGF Trap の作用 眼性血管疾患動物モデルにおける VEGF Trap の作用の特性
動物モデルにおいて、VEGF Trap は網膜血管漏出、眼血管新生及び関連炎症を抑制することが 明らかになった。VEGF Trap は、VEGF 硝子体内投与又はトランスジェニックによる網膜での VEGF 過剰発現で誘発される網膜血管漏出を抑制した。特に、マウス、ラット及びカニクイザル を用いた滲出型 AMD、非増殖糖尿病網膜症、虚血性網膜症及び角膜血管新生の動物モデル試験に おいて、VEGF Trap が病的な眼血管新生や血管漏出を抑制することが示された(2.6.2.2.2 参 照)。
VEGF 誘発性網膜血管透過性及び脈絡膜新生血管動物モデルにおける VEGF Trap の作用 動物は滲出型 AMD を発症しないことから、ヒトの滲出型 AMD でみられる脈絡膜新生血管 (CNV)が同様にみられる 3 種の動物モデルを用いて、異常な血管透過性及び血管新生に対する VEGF Trap の抑制効果を検討した(2.6.2.2.2 参照)。 滲出型 AMD でみられる病変に類似した CNV 病変を、マウス及びサルのブルッフ膜と上層の網膜 色素上皮をレーザーで点状破壊することにより誘発した。
レーザー傷害直後に VEGF Trap を単回硝子体内 投与( 4.92μ g/eye)又は反復皮下投与 (25mg/kg)したマウス (C57BL/6)では、対照群の動物よりも CNV 面積が小さかった10 ) (2.6.3.2、[参考]4.2.1.1-5 J Cell Physiol 2003-195-241 参照)。VEGF 誘発性血液網膜 関門損傷による網膜の過剰に亢進した血管透過性に対する VEGF Trap の抑制効果について検討す るために、C57BL/6 マウスを用いて追加試験を実施した。組換えヒト VEGF を硝子体内投与する 1 日前に VEGF Trap 25mg/kg をマウス(C57BL/6)に皮下投与すると、血液網膜関門の損傷は軽 減された10)(2.6.3.2、4.2.1.1 J Cell Physiol 2003-195-241 参照)。網膜に導入した VEGF 遺伝子の過剰発現により血液網膜関門の損傷を誘発した別の試験においても、VEGF Trap の皮下 投与により、血液網膜関門の損傷が同様に軽減された10)(2.6.3.2、[参考]4.2.1.1-5 J Cell Physiol 2003-195-241 参照)。 カニクイザルにおいて、レーザー傷害 1 週間前から VEGF Trap を 2 週間に 1 回硝子体内投与 (50、250、500μg/eye)すると、溶媒対照と比較して全検討用量で臨床的に重度と判断される (グレード 4)レーザー誘発性 CNV 病変の発生が完全又はほぼ完全に抑制された(表 2.6.2-3)。 さらに、活動性 CNV 病変が形成された後に VEGF Trap を単回硝子体内投与(500μg/eye)した結 果、投与後 14 日以内にグレード 4 の病変は 44%から 0%に減少した。VEGF Trap 3 及び 10mg/kg の週 1 回静脈内投与でも同様の効果が認められたが、硝子体内投与後では遊離型 VEGF Trap が検 出されないか、又は極めて低濃度であったのに対し、静脈内投与後では全身曝露が明らかに高 かった(表 2.6.6-3)。 マトリゲルの網膜下投与により誘発したラットの脈絡膜新生血管モデルにおいて、マトリゲル 投与後 2 日目及び 6 日目に VEGF Trap 12.5mg/kg を皮下投与した結果、対照群の動物の網膜には、 CNV が一様に存在していたのに対し、VEGF Trap 投与群の動物では 10 日目における網膜性 CNV の発生が完全に抑制されていた11)(2.6.3.2、[参考]4.2.1.1-6 Invest Ophthalmol Vis Sci 2010-51-6009 参照)。続く試験において、マトリゲル投与後 10 日目に VEGF Trap を投与した 結果、20 日目の CNV 面積は 10 日目の対照群の動物より減少した(2.6.3.2、[参考]4.2.1.1-6 Invest Ophthalmol Vis Sci 2010-51-6009 参照)。以上の成績は、VEGF Trap が CNV の形成を 抑制するのみでなく、既に形成された CNV 病変を退縮させることを示している。さらに、VEGF Trap は筋線維芽細胞の浸潤や炎症細胞の病変部位への浸潤を阻害することが、平滑筋アクチン や CD45 の免疫染色によって明らかにされている。 その他の眼性血管疾患(糖尿病網膜症、虚血性網膜症及び角膜血管新生)動物モデルにおける VEGF Trap の作用 糖尿病網膜症でみられる 2 つの病的過程である網膜浮腫及び虚血性網膜血管新生を再現する動 物モデルにおいて、VEGF Trap の効果が検討された(2.6.2.2.2.4 及び 2.6.2.2.2.5 参照)。
ストレプトゾトシン投与により糖尿病を誘発した雄性 Sprague Dawley ラットに、VEGF Trap を単回硝子体内投与(3μg/eye)し、2 日後及び 1 週間後にエバンスブルー色素の血管外漏出を 指標として血管透過性を測定して、非糖尿病動物及び糖尿病動物の対照投与と比較した結果、
VEGF trap 硝子体内投与は網膜血管透過性を正常化することが確認された(2.6.3.2、4.2.1.1-8 VGT-NC-007 参照)。硝子体内投与 48 時間後の遊離型 VEGF Trap の血清中濃度は、検出下限未 満であった。 未熟児網膜症、増殖糖尿病網膜症及びその他の虚血性網膜症で認められる血管新生反応と類似 の病変を呈する酸素誘発虚血性網膜症(OIR)マウスモデルにおいて、VEGF Trap は単回硝子体 内投与(0.5 及び 0.24μg)で、病的な網膜血管新生を抑制した(2.6.3.2、4.2.1.1-9 VGT-NC-013 参照)。 角膜実質内に縫合糸を留置することで強い角膜血管新生反応を誘発したマウス(2.6.2.2.2.6 参照)に VEGF Trap を単回腹腔内投与(12.5mg/kg)すると、角膜血管新生が完全に抑制され、 関連する炎症反応も有意に抑制された12)(2.6.3.2、[参考]4.2.1.1-10 J Clin Invest 2004-113-1040 参照)。これは、炎症細胞の表面に存在する VEGFR-1 を介して白血球化学走化性因子 として働く VEGF-A や PlGF の発現の局所的な増加を抑えることで、VEGF Trap は傷害部位への白 血球の遊走を阻害していることが示唆される。 要約すると、マウス、ラット及びサルを用いた CNV 動物モデルを含め、検討した眼性血管疾患 動物モデルのいずれにおいても、VEGF Trap の硝子体内投与又は全身投与により、血管新生及び 異常な血管透過性亢進が効果的に抑制された。特に、VEGF Trap 単回硝子体内投与により、サル のレーザー誘発 CNV 病変の血管漏出が速やかに回復したことは重要である。これらの試験におい て、眼で薬理効果が発揮される用量を硝子体内投与したときの遊離型 VEGF Trap の全身曝露は、 検出されないか又は極めて低濃度であった。以上のことから、滲出型 AMD に対する治療薬として の VEGF Trap-Eye 硝子体内投与の有効性は臨床においても期待できると考えられる。 2.4.2.2 副次的薬理試験 硝子体内投与後、VEGF Trap は眼から循環血中に緩慢に移行する。ヒトに硝子体内投与後の遊 離型 VEGF Trap の全身曝露量は極めて小さいと予測されているが、全身性に作用が発現し得る遊 離型 VEGF Trap の血中濃度や用量を明らかにすることが重要であることから、副次的薬理試験を 計画した。腫瘍増殖及び血圧に対する VEGF Trap 全身投与の作用の用量反応性について検討した 結果、認められた作用は、VEGF Trap の血中濃度に相関していた(2.6.3.3、2.6.2.3 参照)。 正常及び担癌マウスにおける遊離型 VEGF Trap 及び VEGF Trap 複合体の濃度: 抗腫瘍効果との相 関性
病的血管新生(特に腫瘍増殖)に依存するいくつかの疾患において、VEGF Trap 全身投与の効 果が評価されている3,5)。担癌マウスと正常マウスの両方を用い、遊離型(非結合型)VEGF
Trap の血中濃度と VEGF に結合した VEGF Trap(VEGF Trap 複合体)濃度を比較し、濃度と腫瘍 増殖に対する効果の相関性を検討した5)(2.6.3.3、[参考]4.2.1.2-1 Proc Natl Acad Sci USA 2007-104-18363 参照)。
腫瘍を同種移植又は異種移植した SCID マウスにおいて、VEGF Trap 2.5mg/kg 以上(週 2 回) の皮下投与で、VEGF Trap 複合体濃度は最大濃度 1~2μg/mL に達した。これらの用量で腫瘍増 殖は有意に抑制され、遊離型 VEGF Trap 濃度は投与期間中、10μg/mL 以上に維持されていた (2.6.2.3.1 参照)。低用量の VEGF Trap では、VEGF Trap 複合体濃度は最大濃度(定常状態 濃度)に達せず、抗腫瘍効果にも一貫性がないか、若しくは効果が限定的であった。
2.4.2.3 安全性薬理試験
ICH ガイドライン S7A「安全性薬理試験ガイドライン」(平成 13 年 6 月 21 日付 医薬審発第 902 号)で定義されている in vitro 安全性薬理試験により融合たん白質などの高分子化合物を 評価する必要性は低いと考えられる。したがって、GLP に準拠した in vivo試験及び GLP 非準拠
のin vivo試験(げっ歯類の血圧に関する 1 試験)により VEGF Trap の安全性薬理評価を行った
(2.6.3.4、2.6.2.4 参照)。
血圧上昇は、VEGF 阻害剤を全身投与した際のクラスエフェクトとして知られている13)ことから、 VEGF Trap の血圧に及ぼす影響について、C57BL/6 マウス及び Wistar-Kyoto ラットを用いて、 テレメトリー法で評価した。
ラットでは 0.5mg/kg 以上の VEGF Trap 単回皮下投与により、一過性の用量依存的な収縮期血 圧と拡張期血圧の上昇がみられた。血圧上昇は投与後 2~4 日に最大になり、遊離型 VEGF Trap の血中濃度がおよそ 1μg/mL を下回るまで、投与前ベースライン値を上回る血圧上昇が持続した。 マウスにおいても同様の結果が得られた(2.6.3.3、4.2.1.3-9 VGFT-MX-08018 参照)。これら の試験成績から、血中の遊離型 VEGF Trap 濃度が VEGF Trap 複合体の定常状態濃度(約 1~2μ g/mL)を上回る場合に、血圧上昇が誘発、維持されることが示唆される。ヒトへの硝子体内投与 後に予測される遊離型 VEGF Trap の最大血漿中濃度は、VEGF Trap が眼外組織に作用を及ぼす濃 度を十分下回ると考えられる。 VEGF Trap の中枢神経系及び心血管系に及ぼす影響については、毒性試験で得られた成績から 一般症状、直腸温、及び心電図など安全性薬理のエンドポイントを評価した。VEGF Trap を全身 投与後、一部のカニクイザルに血圧上昇が認められた以外に、30mg/kg までの用量を週 2 回、 3 ヵ月間皮下投与した試験、又は週 1 回、15 週間、その後 27 週まで 1 週おきに静脈内投与した 試験において、中枢神経系又は心血管系への影響は認められなかった(2.6.7.7L、2.6.7.7J 参 照)。
New Zealand White ウサギの電気的傷害誘発血栓症モデルを用いて、静脈及び動脈の血栓形成 に対する VEGF Trap の影響を検討した。VEGF Trap は静脈及び動脈の血栓形成に影響を及ぼさな かった(2.6.3.4 参照)。
Sprague Dawley ラットに VEGF Trap の 250mg/kg までの用量を 30 分間単回持続静注し、VEGF Trap の呼吸機能パラメータに対する影響を全身プレチスモグラフィーにより覚醒・非拘束下で 検討した。VEGF Trap は、検討したいずれの用量でも呼吸機能パラメータに生物学的に問題とな る影響を及ぼさなかった(2.6.3.4 参照)。 ウサギの切開創治癒モデル(2.6.3.4、4.2.1.3-7 VGFT-TX-06010 参照)及び切除創治癒モデ ル(2.6.3.4、4.2.1.3-8 VGFT-TX-06011 参照)を用いて、VEGF Trap の 30mg/kg までの用量を 静脈内投与した結果、切開創治癒モデルにおいて、VEGF Trap は血管密度及び創傷の伸張強度を 低下させた。また、切除創治癒モデルにおいて、VEGF Trap は線維化反応、血管新生及び表皮過 形成を減少させ、創傷治癒を抑制した。いずれのモデルにおいても VEGF Trap の作用は用量依存 的で、遊離型 VEGF Trap の血漿中濃度及びその曝露時間に相関して増大した。 2.4.3 薬物動態試験 非臨床安全性試験及び効力薬理試験における硝子体内投与、すなわち予定臨床投与経路の妥当 性を支持するため、ウサギに VEGF Trap を単回硝子体内投与して遊離型 VEGF Trap の薬物動態を
明らかにした。サルにおける反復硝子体内投与毒性試験の一環として、全身曝露量の評価、遊離 型及び VEGF Trap 複合体のin vivoにおける分布を明らかにすることを目的に、血漿及び硝子体 中の遊離型濃度並びに血漿中の VEGF Trap 複合体濃度を測定した。血漿中の遊離型濃度の測定は バリデートした酵素免疫測定法(ELISA 法)を用いて測定した。また、VEGF Trap 全身投与時の 薬物動態を明らかにするため、マウス、ラット、及びカニクイザルに単回静脈内投与及び皮下投 与後の遊離型 VEGF Trap 濃度を測定した。 2.4.3.1 有色ウサギにおける硝子体内投与後の分布 雄性有色ウサギに VEGF Trap を片眼 0.5mg の用量で両眼に単回硝子体内投与したのち、遊離型 VEGF Trap の 脈 絡 膜 、 網 膜 、 硝 子 体 、 及 び 血 漿 へ の 分 布 を 検 討 し た( 2.6.5.5 、 4.2.2.3-2 VGFT-PK-03028 参照)。 眼球各組織における遊離型 VEGF Trap の消失半減期(t1/2)は同様で、115~132 時間(硝子体 ~網膜)であった。硝子体では投与 28 日後にも遊離型 VEGF Trap が検出された。最高濃度到達 時間(Tmax)は硝子体で 6 時間、網膜で 24 時間であった。遊離型の眼組織中濃度は硝子体では高 値であったが、そのほかの眼組織では低く、硝子体濃度と比較すると、脈絡膜で約 14 分の 1、 網膜で約 23 分の 1 であった。高分子の遊離型 VEGF Trap は主に硝子体に存在し、網膜及び脈絡 膜では細胞間隙のみに分布すると考えられる。
ウサギに硝子体内投与後、VEGF Trap は眼から循環血中に緩慢に移行する。血漿中遊離型 VEGF Trap の t1/2は 157 時間であり、投与後 28 日目の血漿中にも検出された。遊離型 VEGF Trap の最 高血漿中濃度は硝子体の 1000 分の 1、Tmaxは投与後 72 時間であったことから、VEGF Trap の循環 血中への緩慢な移行が循環血からの VEGF Trap 消失の律速過程になっていることが示唆された。 このときの血漿中遊離型濃度の AUC0-∞は、硝子体の 310 分の 1 であった。遊離型 VEGF Trap の血 漿及び眼組織における t1/2が同様であることからも、血中からの遊離型 VEGF Trap の消失は、眼 から血漿コンパートメントへの移行速度によってコントロールされることが示唆された。
2.4.3.2 サルにおける硝子体内投与後の分布
4 つの毒性試験において、VEGF Trap を雌雄カニクイザルの両眼に単回又は反復(毎月又は 6 週毎)硝子体内投与し、硝子体及び血漿中の遊離型 VEGF Trap 濃度、並びに血漿中の VEGF Trap 複合体濃度を測定した(4.2.3.2-8 VGFT-TX-04019、4.2.3.2-9 VGFT-TX-04025、4.2.3.2-11 VGFT-TX-05011、4.2.3.2-10 VGFT-TX-05015 参照)(表 2.4.3- 1)。さらに、硝子体中に残 存する遊離型 VEGF Trap 量を、硝子体中濃度に硝子体容積 1.5mL/片眼14)を乗じて求めた。VEGF Trap と同様に高分子である VEGF 阻害剤ラニビズマブは、硝子体からの消失が一次速度式に従う 15)。VEGF Trap についても硝子体からの消失に一次速度式を仮定して、硝子体中の初濃度(投与 量をサルの平均硝子体容積で除して算出)と剖検時の実測濃度から t1/2を推定した。
VEGF Trap の硝子体濃度はほぼ用量に比例し、t1/2に用量依存性は認められず、約 40~64 時間 であった。
遊離型 VEGF Trap の血漿中濃度は硝子体内投与量が 2mg/eye 以下では用量比を上回って増加し、 2mg/eye を超えるとほぼ用量に比例して増加した。低用量での遊離型 VEGF Trap の血漿中濃度は、 予測されるよりも低かったが、これは循環血中の内因性 VEGF への VEGF Trap の結合動態を反映 した結果かもしれない。
VEGF Trap 当量に換算した VEGF Trap 複合体の血漿中濃度は、VEGF Trap の用量にほぼ比例し て増加し、2mg/eye で約 2.5μg/mL、4mg/eye で 3.1μg/mL に到達したことから、この用量(サ ルの体重を 5kg とすると 0.8mg/kg、1.6mg/kg に相当)では、循環血中における相当量の内因性 VEGF が VEGF Trap と結合して存在することが示唆された。0.05mg/eye の用量では、投与後 7 日 目の循環血中 VEGF Trap は全てが複合体であったが、4mg/eye では複合体としての存在比が低下 し、総 VEGF Trap の 26~34%であった。
表 2.4.3- 1 サルにおける硝子体内投与後 7 日目の平均血漿/硝子体内遊離型 VEGF Trap 濃度及び VEGF Trap 複合体血漿中濃度
Study Identifier Plasma Eye (Vitreous Humor)
Dose (mg/eye each eye) No. of animals (M/F)
Free VEGF Trap Adjusted VEGF Trap Complexa) Free VEGF Trap
μg/mL μgb) μg/mL μgb) % of Total circulating amountc) % IVT Dose Remaining in circulationd) μg/mL μge) t1/2
(h) Remaining in Vitreous% Dose Humorf) VGFT-TX-04019 0.05 4/4 0 n.c. 0.126 39.1 100 39.1 5.32 16.0 63.4 16.0 0.25 6/6 0.0344 10.7 0.630 195 95 41.1 26.8 80.5 63.7 16.1 0.5 6/6 0.268 83.1 1.06 327 80 41.0 50.2 151 61.5 15.1 VGFT-TX-05011 0.5 6/6 0.384 119 1.12 347 74.5 46.6 42.0 126 56.2 12.6 VGFT-TX-04025 1 6/6 0.961 298 2.05 636 68.1 46.7 94.3 283 59.5 14.2 2 6/6 4.14 1283 2.54 787 38.0 51.8 181 543 58.3 13.6 VGFT-TX-05011 2 6/6 4.19 1300 2.74 849 39.5 53.7 148 444 53.0 11.1 2 6/6 2.15 667 2.41 747 52.8 35.3 129 387 49.8 9.68 VGFT-TX-05015 2 1/2 5.16g) 1600 2.20g) 682 29.9 57.1 138 414 51.3 10.4 2 1/2 4.21g) 1305 2.24g) 694 34.7 50.0 73.2 220 40.1 5.49 2 1/2 3.71g) 1150 1.50g) 465 28.8 40.4 126 378 49.3 9.45 VGFT-TX-04025 4h) 5/5 7.06 2189 2.52 781 26.3 37.1 304 912 53.6 11.4 VGFT-TX-05011 4 6/6 6.14 1900 3.13 970 33.8 35.9 265 795 50.4 9.93
a The VEGF Trap complex concentrations are reported as total complex weight per volume (e.g. µg/mL) and must be normalized for the VEGF Trap portion of the weight alone by multiplying by 0.717 to generate adjusted complex concentrations
b Total circulating amount estimated based on a 310 mL Vss for a 5 kg animal (see Module 2.6.4.3.5, Table 2.6.4-13).
c Circulating amount of VEGF Trap complex on Day 7, as a % of the total circulating amount (free VEGF Trap + adjusted VEGF Trap complex), as determined from [(μg adjusted VEGF Trap complex)/(μg free VEGF Trap + μg adjusted VEGF Trap complex)] x 100
d Percent of the total IVT dose remaining in the circulation, as determined from [(μg free VEGF Trap + μg adjusted VEGF Trap complex)/Total IVT dose] x 100 e Determined from [free VEGF Trap vitreal concentration (μg/mL) x 3.0 mL]; the mean monkey vitreal volume is 1.5 mL/eye.
f Percent of the total IVT dose (both eyes) remaining in the vitreous, as determined from [(free VEGF Trap vitreal concentration (μg/mL) x 3.0 mL)/VEGF Trap Dose] g Plasma samples collected at 3 days post dosing
滲出型 AMD 患者の片眼に VEGF Trap 2mg(体重 70kg とすると 0.03mg/kg)を単回硝子体内投与 すると(5.3.3.2-1 VGFT-OD-0702.PK 参照)、投与後 7 日目における VEGF Trap 当量に換算し た VEGF Trap 複合体の血漿中濃度は、遊離型の 18 倍であり、循環血中に存在する総 VEGF Trap の 94.6%を占めた(表 2.4.3- 2)。この結果は、体重当たりの用量に換算して比較した場合、 相当するサルの硝子体内投与時の結果と一致した。すなわち、VEGF Trap 0.05mg/eye(両眼で 0.1mg)を、体重当たりの用量に換算した約 0.02mg/kg を硝子体内投与したサルにおいて、投与 7 日目に循環血中に存在する VEGF Trap は 100%が複合体として存在した(2.6.4.3.2 参照)。 サル及びヒトについて、体重補正によりほぼ同用量となる VEGF Trap を硝子体内投与すると、 VEGF Trap 複合体の血漿中濃度は遊離型 VEGF Trap 濃度を大きく上回ったが、サルに最高用量を 硝子体内投与後に認められた複合体の最高血漿中濃度(約 2~3μg/mL)と比較すると、10 分の 1 未満であった。
表 2.4.3- 2 サル及びヒトに VEGF Trap 硝子体内投与後 7 日目の遊離型 VEGF Trap 及び VEGF Trap 複合体の血漿中濃度
Species Plasma
Study
No. (mg/eye)Dose weight Body Adjusted
Dose (mg/kg)
No. of
Subjects Free VEGF Trap Adjusted VEGF Trap Complexa) μg/mL μgb) μg/mL μgb) % of total circulating amountc) % Dose re-maining in circu-lationd) Monkeye) VGFT -TX-04019 0.050 0.02f) 8 0 NC 0.126 39.1 100 39.1 VGFT -TX-05011 0.50g) 0.20f) 12 0.384 119 1.12 347 74.5 46.6 2.0h) 0.80f) 12 4.19 1300 2.74 849 39.5 53.7 Humani) VGFT -OD-0702 2.0 (one eye only) 0.03j) 6 0.00933 60.5 0.164 1060 94.6 56.0
a The VEGF Trap complex concentrations are reported as total complex weight per volume (e.g. µg/mL) and must be normalized for the VEGF Trap portion of the weight alone by multiplying by 0.717 to generate adjusted complex concentrations
b Determined by multiplying the plasma concentration by the corresponding, mean VEGF Trap Vssof 310 mL (monkey;
refer to Module 2.6.4.3.5, Table 2.6.4-13) or 6480 mL (human, refer to Clinical Study Report PDY6656)
c Circulating amount of VEGF Trap complex on Day 7, as a % of the total circulating amount (free VEGF Trap + VEGF Trap complex), as determined from [(μg adjusted VEGF Trap complex)/(μg free VEGF Trap + μg adjusted VEGF Trap complex)] x 100
d Percent of the total IVT dose remaining in the circulation, as determined from [(μg free VEGF Trap + μg adjusted VEGF Trap complex)/Total IVT dose] x 100
e All vitreous and plasma concentrations in monkeys were determined 7 days following the last of 4 monthly IVT doses. f Based on 5 kg total body weight
g NOAEL in primates: this dose is approximately 7 fold higher than the body weight adjusted IVT dose of 2 mg in humans h Lowest dose at which systemic toxicity (nasal turbinate erosion) was observed in primates: this dose is approximately 28
fold higher than the body weight adjusted IVT dose of 2 mg in humans
i All plasma concentrations in humans were determined 7 days following a single IVT dose to one eye only j Based on 70 kg total body weight
2.4.3.3 マウス、ラット、及びサルにおける静脈内投与及び皮下投与後の薬物動態 マウス、ラット、及びサルに VEGF Trap を静脈内投与後、遊離型 VEGF Trap の血清中濃度は、 複数の消失相を示し、緩慢に消失した(2.6.4.3 参照)。終末相における消失半減期(t1/2)及 び平均滞留時間(MRT)は長く、定常状態の分布容積(Vss)は血漿コンパートメントの容積をや や上回った(表 2.4.3- 3)。 表 2.4.3- 3 VEGF Trap 1mg/kg(マウス、ラット)又は 5mg/kg (サル)を単回静脈内投与し たときの遊離型 VEGF Trap の薬物動態パラメータ Route Mouse (VGFT-PK-01007) (VGFT-PK-01001)Rat (VGFT-PK-01012)Monkey No. of animals (m/f) 9 (5/4) 10 (5/5) 6 (3/3) Dose 1 1 5 Cmax(μg/mL) 19.5 ± 2.57 20.8 ± 2.44 182 ± 46.4 AUC0-(μg・h/mL) 306 ± 39.6 463 ± 64.6 10200 ± 1530 t1/2 (h) 48 ± 7 54 ± 9 98 ± 31 CL (mL/h/kg) 3.31 ± 0.43 2.21 ± 0.34 0.50 ± 0.07 Vss (mL/kg) 77 ± 14 51 ± 7 62 ± 11 MRT (h) 23 ± 2 21 ± 3 99 ± 7
Values are means ± S.D.
VEGF Trap 皮下投与後のバイオアベイラビリティはマウス(94%)及びサル(85%)で高く、 ラット(33%)で中程度であった。ラット及びサルに VEGF Trap(0.75~15mg/kg)を皮下投与 したとき、みかけ上の消失過程の飽和及び/又は、吸収速度や吸収量の用量依存性によると考え られる非線形性を示し(サル:表 2.4.3- 4)、VEGF Trap 5mg/kg 以上の高用量域では低用量域 と比較すると遊離型 VEGF Trap の t1/2及び MRT の延長、用量比例性を上回る曝露量の増加が認め られた。
表 2.4.3- 4 サルに VEGF Trap 皮下投与後の遊離型 VEGF Trap の薬物動態パラメータ
Species Monkey No. of animals (M/F) 6 (3/3) 6 (3/3) 6 (3/3) 6 (3/3) Dose [mg/kg] 0.75 1.5 5 15 Cmax [µg/mL] 3.65 ± 1.95 6.50 ± 2.64 36.2 ± 13.0 101 ± 20.8 Tmax[h] 39 ± 25 64 ± 29 40 ± 28 32 ± 24 AUC0- [µg・ h/mL] 511 ± 217 1090 ± 389 8700 ± 2580 24400 ± 5210 AUC0-/Dose 681 726 1740 1630 t1/2 [h] 55 ± 18 45 ± 10 118 ± 19 101 ± 39 CL/F [mL/h/kg] 1.68 ± 0.64 1.61 ± 0.83 0.62 ± 0.17 0.64 ± 0.13 MRT [h] 98 ± 19 115 ± 17 137 ± 5 140 ± 10 F [%] n.c. n.c. 85 n.c.
Values are means ± S.D. n.c.: Not calculated
遊離型 VEGF Trap の消失過程には、循環血中の内因性 VEGF と結合し VEGF Trap 複合体を形成 する過程が含まれる。皮下投与後に認められた薬物動態の非線形性は、複合体形成がみかけ上飽
和した可能性を示唆する。哺乳類での持続的な内因性 VEGF の産生速度は、マウス(約 6ng/g 組 織/日)とヒト(約 2.5ng/g 組織/日)とで同様であり、サルの産生速度は不明だが、大きな差異 はないと考えられる5)。消失が飽和しない低用量の VEGF Trap 投与時の消失速度は、少なくとも 一部は、速いが飽和しやすい内因性 VEGF と遊離型 VEGF Trap との複合体生成速度を反映してい ると考えられる。
2.4.3.4 ラットにおける静脈内投与後の分布
雌性 Sprague-Dawley ラットに[125I]-VEGF Trap を静脈内投与後、臓器・組織における放射能の 分布を検討した(2.6.4.4.1 及び 4.2.2.3-1 VGFT-PK-01005 参照)。また、ELISA 法により遊 離型 VEGF Trap の血清中濃度を測定した。放射能の薬物動態プロファイルが非標識の VEGF Trap と一致しない点は、結果の解釈に注意を要する。投与 5 分後、投与した放射能の約 75%が血清 中に存在したが、 投与 24 時間後には 12.3%に減少し、168 時間後では 0.76%とごくわずかで あった。投与 5 分後における放射能濃度は排泄に関わる臓器及びそのほかの血流量が多い臓器で 高く、肝臓(11.4%)、腎臓(1.33%)、脾臓(0.42%)、肺(0.34%)、心臓(0.19%)の順 であった。小腸及び大腸、脂肪、筋肉、及び甲状腺組織では、投与した放射能の 0.05%未満が 認められた。組織中放射能濃度は血清中濃度に続いて減少し、投与 168 時間後には、肝臓で投与 量のわずか 0.16%が検出されたに過ぎなかった。この結果から、[125I]-VEGF Trap は主に循環血 中に局在し、組織中に残留する可能性は低いことが示唆された。 2.4.4 毒性試験
滲出型 AMD 患者における VEGF Trap の臨床使用を支持するために、広範な毒性試験を実施した (2.6.6 及び 2.6.7 参照)。実施した毒性試験を表 2.4.4- 1に示す。予定臨床投与経路に基づ き、毒性試験では VEGF Trap の単回/反復硝子体内投与後の毒性を検討した。さらに、VEGF Trap の全身投与による他の適応症に関する開発を支持するために、静脈内投与又は皮下投与経 路を用いた VEGF Trap の全身投与による試験を実施し、高い VEGF Trap 曝露後の全身毒性及び生 殖毒性について評価した。反復投与毒性試験では、トキシコキネティクス、並びに VEGF Trap に よる影響の可逆性、進行性及び遅発性についても評価した。
表 2.4.4- 1 VEGF Trap の毒性試験プログラム Study Type/Report Number Route of
Administration Species (strain)Test system GLP CTD Tabulated Summary
Single Dose Toxicity
Module 4.2.3.2-9, VGFT-TX-04025/ 1 day
IVT Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7D
Module 4.2.3.1-1, VGFT-TX-06007[参考]/ 1 day IV Rat (Sprague Dawley) No Module 2.6.7.5 Module 4.2.3.1-2, VGFT-TX-06008/ 1 day IV Rat (Sprague Dawley) Yes Module 2.6.7.5
Repeat Dose Toxicity (pivotal) Module 4.2.3.2-8, VGFT-TX-04019/ 13 weeks (+ 10-week recovery) with TK
IVT Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7C
Module 4.2.3.2-9, VGFT-TX-04025/ 1 day and 13 weeks (+ 4- or 10-week
recovery) with TK
IVT Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7D
Module 4.2.3.2-10, VGFT-TX-05015/ 13 weeks with TK
IVT Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7E
Module 4.2.3.2-11, VGFT-TX-05011/ 8 months (+ 4-month recovery) with TK
IVT Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7F
Module 4.2.3.2-12, VGFT-TX-02006/ 3 months (+ 6-week recovery) with TK
SC Rat
(Sprague Dawley)
Yes Module 2.6.7.7G
Module 4.2.3.2-13, VGFT-TX-02029/
4 weeks (+ 6-week recovery) with TK IV Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7H
Module 4.2.3.2-14, VGFT-TX-03048/
13 weeks (+ 13-week recovery) with TK IV Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7I
Module 4.2.3.2-15, VGFT-TX-05009/
6 months (+ 5-month recovery) with TK IV Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7J
Module 4.2.3.2-16, VGFT-TX-03004/ 4 weeks (+ 4-week recovery) with TK
SC Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7K
Module 4.2.3.2-17, VGFT-TX-02037/ 13 weeks (+ 6-week recovery) with TK
SC Monkey (Cynomolgus) Yes Module 2.6.7.7L
Reproductive Toxicity
Module 4.2.3.5.2-3, VGFT-TX-06002/ Embryo-fetal Development, TK
IV Rabbit
(New Zealand White)
Yes Module 2.6.7.13A
Module 4.2.3.5.2-5, PH-36888/ Early embryonic and embryo-fetal
Development, TK
SC Rabbit
(Himalayan)
Yes Module 2.6.7.13B
Studies in Juvenile Animals
Module 4.2.3.5.4-1, VGFT-TX-05010/ 13 weeks (5-month recovery) with TK
IV Monkey (Cynomolgus), juvenile Yes Module 2.6.7.15 Local Tolerance Module 4.2.3.6-1, VGFT-TX-05008/ 1 day
IV, IM, SC Rabbit
(New Zealand White)
表 2.4.4- 2 VEGF Trap の毒性試験プログラム(続き) Study Type/Report Number Route of
Administration Species (strain) Test system GLP CTD Tabulated Summary Other Studies Module 4.2.3.7.7-1, Hem#1[参考]/ Hemolysis and Flocculation
NA Monkey Blood No Module 2.6.7.17A
4.2.3.7.7-2, Hem#3[参考]/ Hemolysis and Flocculation
NA Human Blood No Module 2.6.7.17B
4.2.3.7.7-3, Hem#5[参考]/ Hemolysis and Flocculation
NA Human Blood No Module 2.6.7.17C
Module 4.2.3.7.7-4, 01-141/ Tissue cross reactivity
NA Human Yes Module 2.6.7.17D
IM = Intramuscular, IV = Intravenous, NA = Not applicable, SC = Subcutaneous, TK = Toxicokinetics.
VEGF Trap の有効性及び毒性に関する非臨床安全性評価に最も適切な動物種としてカニクイザ ルを選択した。サルの眼はヒトの眼と構造的及び生理学的に最も類似している。特に、ヒトとサ ルの網膜には、中心視及び視力を担う特殊な構造体である黄斑及び中心窩が存在する。マウス、 ラット及びウサギの網膜には黄斑及び中心窩は存在しない。また、サルの眼のみが、臨床試験に 相応する VEGF Trap の硝子体内投与における投与量、投与容量、投与頻度、及び臨床投与量の倍 数用量を支障なく投与できる十分な大きさを有している。 マウス及びラットと異なり、サルでは全身投与を繰り返しても顕著な抗 VEGF Trap 抗体産生は みられなかった。マウス及びラットは、顕著な抗 VEGF Trap 抗体産生に関連した糸球体腎炎を発 症したことから、VEGF Trap の慢性毒性の評価には使用しなかった。ウサギを用いて静脈内投与 により VEGF Trap の胚・胎児毒性を評価したが、この動物種では抗 VEGF Trap 抗体産生は一部の 動物に限定的であった。
2.4.4.1 単回投与毒性
13 週間硝子体内投与毒性試験の一部として、硝子体内投与による単回投与毒性をサルで評価 した(2.6.6.2.1 参照)。その結果、2mg/eye の用量で前房の軽度な炎症反応及び硝子体細胞の 軽度増加がみられたが、これらは自然に回復した(2.6.6.2.2.4 参照)。
Sprague Dawley ラットにおいて、単回静脈内投与後の VEGF Trap の急性全身毒性を評価した。 最大 500mg/kg まで死亡例や用量制限毒性は認められなかった。したがって、VEGF Trap の急激 な 過 量 投 与 に よ り 、 全 身 に 及 ぶ 重 篤 な 影 響 が 引 き 起 こ さ れ る 可 能 性 は 低 い と 考 え ら れ る (2.6.6.3.1 参照)。 2.4.4.2 反復投与毒性 VEGF Trap の亜慢性及び慢性毒性を、予定臨床投与経路である硝子体内投与により最も適切な 動物種であるカニクイザルを用いて評価した。VEGF Trap の硝子体内投与毒性試験として、探索 的 13 週間投与毒性試験、硝子体内投与用臨床製剤の最適化を検討するための 3 つの 13 週間投与 毒性試験及び申請製剤を用いた長期の硝子体内投与を支持するための 8 ヵ月間投与毒性試験を 行った。眼に対する局所的な影響(眼の臨床観察及び網膜電図検査による評価を含む)及び全身
毒性を、VEGF Trap の異なる製剤、異なる投与用量、投与スケジュール及び投与期間により評価 した。遊離型 VEGF Trap の血漿中及び硝子体中濃度、並びに VEGF Trap 複合体の血漿中濃度を測 定した。また、VEGF Trap 投与後の血清中の抗 VEGF Trap 抗体産生についても評価した。
全 般 的 に 、 実 施 し た 硝 子 体 内 投 与 毒 性 試 験 の す べ て に お い て 眼 の 所 見 は 一 致 し て お り (2.6.6.2 参照)、主として軽度で一過性の眼の炎症が認められた。VEGF Trap 投与による炎 症反応は、対照群に比し発現頻度及び重症度が高い傾向にあったが、用量や投与期間との関連性 は明確ではなかった。さらに、こうした眼の所見は次の投与前までに、あるいは回復期間中にほ ぼ、又は完全に回復した。 この眼の炎症は、血管造影、網膜電図検査、眼の画像及び病理組織 検査における異常所見を伴うものではなかった。対照群及びすべての投与群に認められた眼圧の 変化は、硝子体内投与処置及び投与された溶媒/被験物質の投与容量に起因したものと考えられ る。 病理組織検査で鼻甲介の呼吸上皮のびらん及び潰瘍が認められたことから、8 ヵ月間硝子体内 投与毒性試験における最小毒性量は 2mg/eye であった(2.6.6.2.2.6 参照)。鼻甲介の所見は 4 ヵ月間の休薬による回復期間終了後には認められなかった。この病変は、循環血中に移行した VEGF Trap の全身曝露(サルとヒトの体の大きさの違いに基づくと、ヒトと比べてサルの方がは るかに曝露量は高い)の結果生じた可能性も考えられるものの、より可能性の高い原因として、 眼静脈叢と鼻静脈叢の間の吻合部を介して、あるいは硝子体内投与部位から鼻涙管への VEGF Trap の漏出により、VEGF Trap が鼻腔上皮に局所的に曝露したことが考えられる。臨床観察、臨 床病理検査及び病理組織検査において、VEGF Trap の硝子体内投与に関連した変化は他の臓器に は認められなかった。8 ヵ月間硝子体内投与毒性試験における無毒性量は 0.5mg/eye であった。
VEGF Trap の硝子体内投与毒性試験において、遊離型 VEGF Trap の硝子体内濃度は、血漿中濃 度と同様に用量相関的であった。VEGF Trap 複合体の血漿中濃度は低用量域では用量依存的に増 加したが、高用量域での増加は緩徐で、全身循環血中に存在する内因性 VEGF のほとんどが VEGF Trap に結合していることが示唆された。1 例を除き(2.6.6.2.2.4 参照)、サルでは産生され た抗 VEGF Trap 抗体は毒性発現との関連はみられず、また測定された VEGF Trap の薬物動態にも 影響しなかった。 硝子体容積で補正すると、サルの眼(容積 1.5mL)に投与した最大用量 4mg/eye は、ヒトの眼 (容積 4~4.5mL)に 2mg を投与した場合の約 6 倍に相当する。これは眼に対して十分大きい安 全域があることを示しており、投与容量や投与回数の増加によって局所毒性増悪の懸念が高まる ことは実質的にはないと考えられる。さらに、サル(約 4kg)とヒト(約 70kg)との体重差によ り、VEGF Trap の全身曝露量はサルに比べヒトで少なくなる。 カニクイザルにおける 8 ヵ月間硝子体内投与毒性試験での無毒性量は 0.5mg/eye であった。こ の用量をサルに投与したときの遊離型 VEGF Trap の Cmax及び AUC0-28dに基づく全身曝露量は、ヒ トに 2mg/eye を硝子体内投与した場合よりそれぞれ 42 倍及び 56 倍高かった(表 2.4.5- 1)。 最小毒性量 2mg/eye 投与後の遊離型 VEGF Trap の Cmax及び AUC0-28dに基づく全身曝露量は、ヒト への 2mg/eye の硝子体内投与後のそれぞれ 231 倍及び 708 倍に相当した(表 2.4.5- 1)。 他の適応症に関する臨床試験の実施を支持するために、VEGF Trap の全身投与(静脈内投与又 は皮下投与)による毒性試験を実施した。マウス、ラット、ウサギ及びカニクイザルにおいて、 広範な単回/反復静脈内投与及び皮下投与毒性試験を実施した(2.6.6.3.2 参照)。マウス及 びラットは、反復投与により産生された抗 VEGF Trap 抗体反応が関与する糸球体腎炎を発症した ことから、全身投与による慢性毒性試験の評価動物種として不適切であった。このため、全身投 与による安全性評価ではカニクイザルを主な動物種として用いた。これらの毒性試験では、VEGF Trap を週 1~3 回の投与頻度で 4 週間~6 ヵ月間にわたり投与した。
全身投与による上記の試験では、硝子体内投与と比べて著しく高い遊離型 VEGF Trap への曝露 により、VEGF Trap と同じ経路を標的とする他の VEGF 阻害剤で知られている全身毒性が発現し、 変化のほとんどが VEGF Trap の作用機序に関連したものと考えられた。上記試験における標的臓 器は、骨(長骨の成長板成熟阻害及び椎骨の骨軟骨性外骨腫)、腎臓(高頻度の糸球体メサンギ ウム基質増加、時に壁側上皮の過形成及び糸球体周囲の線維化)、副腎(束状帯細胞における細 胞質の好酸性変化を伴う空胞形成減少)、精巣(精子運動性低下及び精子形態異常)、卵巣(成 熟卵胞、顆粒膜細胞及び/又は莢膜細胞の減少)及び鼻腔(鼻甲介の呼吸上皮の変性/壊死)で あった。6 ヵ月間静脈内投与毒性試験(2.6.6.3.2.2.3 参照)における他の病理組織所見は、 消化管の脈管変化、心臓などいくつかの組織での血管変性及び線維化、並びに肝門脈炎及び門脈 周囲壊死であった。 皮下投与又は静脈内投与毒性試験において、動脈圧や心電図に有意な影響 は認められなかった。しかしながら、ヒトにおいて、VEGF/VEGFR のシグナル伝達が血圧の恒常 性の調節に関与し、VEGF 阻害剤が、クラスエフェクトとして薬効用量の全身投与後に血圧を上 昇させることが知られている13,16)。テレメトリーを装着したげっ歯類において、検知可能な血圧 の変化を生じるのに必要な遊離型 VEGF Trap の用量及び血中濃度(2.6.3.3、4.2.1.3-9、VGFT-MX-08018 参照)は、ヒトへの VEGF Trap の硝子体内投与後に予期される値をはるかに上回る。 したがって、VEGF Trap の硝子体内投与によって、患者の心血管系パラメータに影響を及ぼすほ どの遊離型 VEGF Trap が全身に曝露される可能性は極めて低い。 全身投与(静脈内又は皮下投与)による無毒性量は求められなかった。しかしながら、臨床試 験における VEGF Trap 2mg の硝子体内投与後のヒトにおける曝露量に対する、動物において所見 がみられた最低用量での遊離型 VEGF Trap 濃度(Cmax)と全身曝露(AUC)から算出した曝露量比 の大きさは、VEGF Trap の硝子体内投与による臨床使用を支持するものと考えられる(表 2.4.5-1)。
2.4.4.3 遺伝毒性
ICH ガイドライン S6 aに従い、遺伝毒性試験は実施しなかった。VEGF Trap は高分子であるた め、DNA や他の染色体物質との直接相互作用は予期されない。
2.4.4.4 がん原性
これまでに実施された VEGF Trap 又は他の VEGF 阻害剤の試験において、成長促進作用や免疫 抑制作用を示す知見はなく、VEGF Trap のがん原性を疑わせる要因はない。したがって、がん原 性試験は実施しなかった。 2.4.4.5 生殖発生毒性 6 ヵ月間静脈内投与毒性試験の一部として、性成熟カニクイザルに 3、10 又は 30mg/kg を前半 の 15 週間は週 1 回、後半の 12 週間は 2 週間に 1 回の頻度で静脈内投与(30 分持続注入)を行 い、妊孕性を評価した(2.6.6.6.1 参照)。雌において雌性生殖ホルモン濃度の変化(卵巣ホ ルモン-エストラジオール、プロゲステロン及びインヒビン B-の顕著な減少及び FSH 濃度上 昇)に関連した無月経又は月経不順が全用量で認められた。さらに、VEGF Trap に起因した黄体 形成不全及び成熟卵胞の減少を伴う卵巣重量の減少が認められた。試験期間を通じて、雄の生殖 a ICH 日米 EU 調和ガイドライン S6 に基づく「バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価につ いて」平成 12 年 2 月 22 日医薬審第 326 号
ホルモン濃度(FSH、LH、テストステロン)への影響は、いずれの用量においても認められな かった。投与期間中、すべての用量で精子運動性低下及び精子形態異常が認められたが、5 ヵ月 間の休薬後には完全に回復した。妊孕性パラメータに関する VEGF Trap の無毒性量は求められな かった。最小毒性量である 3mg/kg を静脈内投与したときの遊離型 VEGF Trap の Cmax及び AUC0-168h は、2mg/eye をヒトに硝子体内投与したときの曝露量と比し、それぞれ 4902 倍及び 1546 倍高 かった(表 2.4.5- 1)。 ウサギにおける胚・胎児毒性試験では、交配後の雌性ニュージーランドホワイトウサギに妊娠 6、9、12、15 及び 18 日目に、VEGF Trap の 3、15 又は 60mg/kg を 1 日 1 回 30 分間静脈内注入し た。3mg/kg 以上で胎児奇形(外表、内臓及び骨格奇形)の用量依存的な増加、60mg/kg で流産及 び吸収胚数の増加が認められた。母動物に対する無毒性量は 3mg/kg と推定されたが、胚・胎児 発生に対する無毒性量は求められなかった。 ヒトに 2mg を硝子体内投与後の遊離型 VEGF Trap の曝露量に比べ、上記試験の低用量である 3mg/kg の静脈内投与における全身曝露量(AUC0.5-72h)は 678 倍高かった。 ウサギにおける妊娠初期及び胚・胎児毒性試験では、交配後の雌性ヒマラヤウサギに妊娠1、 7 及び 13 日目に、VEGF Trap の 0.1、0.3 又は 1mg/kg を 1 日 1 回皮下投与した。母体毒性、妊娠 率、着床後死亡数、胎盤重量、胎盤の肉眼所見、胎児性別、及び胎児体重にはいずれの用量にお いても被験物質の影響はみられなかった。明らかな用量相関性を欠くものの、時に大血管の奇形 を伴う心室中隔欠損及び骨格奇形の発現率が VEGF Trap 投与群で対照群に比べわずかに高いか、 又は VEGF Trap 投与群にのみ認められた。二分脊椎が 0.1mg/kg 群の 2 母動物のそれぞれ 1 胎児 に認められた。また、脳髄膜瘤が 1mg/kg 群の 1 胎児に認められた。以上の結果より、母動物に 対する無毒性量は 1mg/kg と推定されたが、胚・胎児発生に対する無毒性量は求められなかった。
低用量である 0.1mg/kg 皮下投与後の遊離型 VEGF Trap の全身曝露量(AUC)は、ヒトに 2mg を 硝子体内投与後の曝露量に比し約 10 倍高かった。 以上の結果より、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対する VEGF Trap の投与は推奨で きない。また、妊娠可能な女性への適用に際しては、適切な避妊措置を講じる必要がある。 2.4.4.6 若年動物における試験 骨格が未熟な(骨端軟骨が未閉鎖)若年カニクイザルにおける VEGF Trap の週 1 回 13 週間静 脈内投与毒性試験において、VEGF 阻害作用を有する化合物で予期される骨への影響が認められ た(2.6.6.6.4.1 及び 2.6.7.15 参照)。被験物質投与の影響として、骨(3mg/kg 以上で主に 椎弓の骨軟骨性外骨腫、椎弓に沿った軸性筋組織の筋線維萎縮又は外骨腫に隣接する微小血管の 増殖/変性)、腎臓(糸球体係蹄の好酸球性基質の増加、皮質及び髄質の尿細管の拡張及びたん 白円柱を伴う糸球体症)、卵巣(成熟卵胞、顆粒膜細胞及び莢膜細胞の減少)、副腎(束状帯細 胞における細胞質好酸性変化を伴う空胞形成減少)及び全身の様々な組織における血管増殖/変 性が認められた。いずれも 5 ヵ月間の休薬後に完全又は部分的に回復した。部分的に可逆的な変 化が鼻腔(破骨細胞による鼻甲介の骨吸収へと進展する鼻腔上皮の変性:全投与群)、脳(脈絡 叢における細胞質の泡沫状変性を伴うマクロファージ浸潤:3mg/kg 以上)に認められた。また、 肝臓において、高用量群の 1 例で門脈周囲の壊死及び炎症が認められ、これは 3mg/kg 以上の群 の数例にみられた肝臓の酵素レベルの上昇に関連する所見と考えられた。本試験では無毒性量は 求められなかった。しかしながら、上記の所見は、硝子体内投与後に予測される曝露量を大幅に 上回る高用量の VEGF Trap を全身投与した場合に認められた変化であった。毒性所見が認められ た最小用量である 0.5mg/kg を静脈内投与したときの遊離型 VEGF Trap の Cmax及び AUC0-168hに基づ
く曝露量は、ヒトに 2mg/eye を硝子体内投与後の全身曝露量のそれぞれ 503 倍及び 160 倍に相当 した(表 2.4.5- 1)。AMD を臨床適応とする場合、対象集団の年齢はより高いと予測されること から、若年動物における所見の予定適応症に対する意義は低いと考えられる。 2.4.4.7 局所刺激性 VEGF Trap を硝子体内投与したときの局所刺激性について、サルを用いた硝子体内反復投与試 験(2.4.4.2 参照)にて評価した。また、ウサギを用いて全身投与(静脈内、皮下又は筋肉 内)したときの局所刺激性について評価した。 サルを用いた 8 ヵ月間硝子体内投与毒性試験において、申請製剤(0.03%ポリソルベート 20、 塩化ナトリウム 40mM、5%精製白糖、リン酸ナトリウム 10mM)にて VEGF Trap 4mg/eye を月 1 回 硝子体内投与したときの忍容性は良好であった(2.6.6.2.2.6 参照)。前房及び硝子体に軽度 の炎症反応が認められ、前房の反応は各投与後 2 日目をピークとし、それ以降は自然に回復した。 これらの炎症は 17 週間の回復期間中、持続する徴候はみられなかった。
VEGF Trap をウサギの静脈内、筋肉内又は皮下に単回投与したときの局所刺激性を検討した結 果(2.6.6.7 参照)、VEGF Trap を静脈内、筋肉内又は皮下投与したときの投与部位に VEGF Trap 投与に関連する局所反応は認められなかった。
2.4.4.8 その他の毒性試験
溶血性試験
In vitro 試験の結果、サル及びヒトの血液に対し VEGF Trap 製剤は溶血性を示さず、また、
血清及び血漿共に凝集や沈殿物を形成しなかった。 組織交差反応性 患者への最初の投与に先立ち、ヒトの組織及び器官に対する VEGF Trap の毒性を予測するため、 35 種のヒト組織パネルへの結合性を評価した。予測されたように、VEGF Trap は 5 及び 25μ g/mL の濃度において、検討したヒト組織のいずれにも結合しなかった。 免疫原性 げっ歯類、ウサギ、及びサルで実施したすべての毒性試験で、VEGF Trap に対する特異的抗体 濃度を測定し、VEGF Trap の免疫原性を評価した。 硝子体内投与後、サルにおける抗 VEGF Trap 抗体の発現量は低かったが、試験期間が長期にな るにつれ増加する傾向にあった。サルにおける 8 ヵ月間硝子体内投与毒性試験における抗体反応 の発現率は投与例の約 21%に達した。産生された抗 VEGF Trap 抗体は、13 週間硝子体内投与試 験の 1 例を除き(2.6.6.2.2.4 参照)、毒性発現との関連はなく、また抗体陰性動物との比較 において VEGF Trap の消失速度や曝露に影響しなかった。 正常免疫を有するげっ歯類において、VEGF Trap を反復投与後に強い免疫反応がみられたこと により、げっ歯類を長期投与毒性試験での使用対象から除外した。妊娠ウサギの数例で、計 5 回 の静脈内投与により、遊離型 VEGF Trap 濃度の低下を伴う抗 VEGF Trap 抗体産生が認められた。
サルでは、VEGF Trap を 4 週間又は 13 週間、皮下又は静脈内投与したときに認められた VEGF Trap 抗体産生は軽微であったが、抗体反応を示す例数は投与期間が長期になるに従って増加し、 サルにおける 6 ヵ月間静脈内投与毒性試験においては、投与されたサルの約 39%に抗体が認め られた。しかしながら、この試験における抗体陽性例のうち、遊離型 VEGF Trap の曝露に明らか な影響を及ぼしたと判断された例は 2 例のみであった(2.6.6.3.2.2.3 参照)。ウサギ及びサ ルにおいて、抗 VEGF Trap 抗体産生に関連付けられる毒性発現は認められなかった。 新添加物の安全性評価 申請製剤に含有される添加物のうち、ポリソルベート 20、精製白糖及びリン酸二水素ナトリ ウム一水和物は、硝子体内適用において新添加物に該当する。これらの添加物については、申請 製剤の一日最大投与量を上回る量の静脈内投与における使用前例があることから、これら添加物 の全身に対する安全性は既に確認されていると考えられる。これら添加物の硝子体内投与による 局所に対する影響については、申請製剤を用いて実施されたサル 8 ヵ月間硝子体内投与毒性試験 (2.6.6.2.2.6 参照)におけるプラセボ製剤投与群の成績に基づき評価した。 プラセボ製剤の硝子体内投与により、前房及び硝子体に軽度で一過性かつ可逆性の細胞反応が 認められたが、眼圧検査、網膜電図検査、眼底検査、眼底蛍光造影及び病理組織検査では異常は なく、プラセボ製剤の硝子体内投与により問題となる影響はみられなかった。 以上より、静脈内投与による使用前例に加え、サル 8 ヵ月間硝子体内投与毒性試験の成績から、 申請製剤の用法・用量に従った臨床適用において、申請製剤に配合されるポリソルベート 20、 精製白糖及びリン酸二水素ナトリウム一水和物に安全性上の危惧はないと考えられる。 2.4.5 総括及び結論
臨床や疫学データ、並びに様々な試験研究により、VEGF Trap が滲出型 AMD など眼血管構造障 害の疾患に対する治療薬となる可能性が示唆されている。AMD や他の血管新生性眼疾患において は、VEGF 及び PlGF の発現が亢進しており、それらは上記疾患に特徴的な病的な網膜血管新生や 浮腫の形成に重要な役割を果たしていることが知られている。
VEGF Trap は組換え融合たん白質であり、ヒトの VEGF-A 及び PlGF-2 に対する結合親和性が高 く、それらリガンドとその受容体との相互作用を阻害する。マウス、ラット及びサルを用いた動 物モデルにおいて、VEGF Trap は局所投与(硝子体内投与)及び全身投与(静脈内及び皮下投 与)で、血管新生や異常な血管漏出を効果的に抑制した。さらに、VEGF Trap はこれらのモデル の多くで、関連する眼の炎症も軽減したが、これは VEGF-A や PlGF の白血球遊走作用を阻害する ことによる可能性が高い17)。
マウス、ラット、及びサルに VEGF Trap を単回静脈内投与後、遊離型 VEGF Trap の血清中濃度 の時間推移には複数の消失相が認められた。VEGF Trap の終末相における消失半減期(t1/2)はマ ウスで 48 時間、サルで 98 時間であり、Vssは血漿コンパートメントよりもやや大きかった。 VEGF Trap の消失に内因性 VEGF への結合に起因する飽和過程が存在することが示唆され、その 結果として t1/2が用量依存的であること、及び低用量での曝露量の増加が用量比を上回ることの 原因となっている。
ラットに[125I]-VEGF Trap 静脈内投与したとき、放射能の組織分布は、高分子たん白製剤に共 通する典型的な分布パターンを示し、VEGF Trap は主に血流量の多い臓器である肝臓、腎臓、及