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TOD 推進に向けた駅勢圏内の都市構成要素の現状と改善 [ PDF

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(1)TOD 推進に向けた駅勢圏内の都市構成要素の現状と改善 中井 康詞. 1. はじめに. 都市構成要素が鉄道利用者数に与える影響 (2 章 ) 4 つの観点から都市構成要素の指標を導出し 重回帰分析を用いて乗降客数と駅勢圏のハード面の関係を明らかにする. 1-1. 研究の背景と目的 近年、我が国において自動車依存型社会による環境. 鉄道駅の使われ方と都市構成要素の関係 (3 章 ). 問題や都市の郊外化などの問題が顕在化している。ま. 平日と休日における出発利用、到着利用の人々の数の変化と 周辺の都市構成要素とどのような関係があるか明らかにする。. た、高齢化がより進むと考えられる我が国にとって、. 駅勢圏内部における都市構成要素の適正配置 (4 章 ). 郊外部を中心とした交通弱者の増加等も危惧されてい. 平日と休日、また出発利用、到着利用の人々の割合が 周辺の都市構成要素とどのような関係があるか明らかにする。. る。これらの問題を解決するために鉄道駅の周辺に効 まとめ (5 章 ). 率的な土地利用を誘導していく政策が多くの自治体で. 図 1. 研究のフロー. なされており、本研究の対象地が含まれる福岡県にお いても 「 大型施設立地ビジョン 」1) を策定し、主に駅 勢圏を中心に居住地や郊外の大型集客施設規制を図っ ている。本研究ではそのような政策を実現するための 手法として TOD( 公共交通指向型開発 ) 2)に着目する。 TOD の概念に基づき駅勢圏の土地利用や都市構成要. 0. 素が鉄道利用者数に与える影響について明らかにし、 福岡市における TOD から見た駅勢圏の現状と改善点に ついて考察することを本研究の目的とする。. 2km 4km. 8km. 福岡市営地下鉄 七隈線 空港線 箱崎線. 12km. 西日本鉄道 天神大牟田線. 図 2. 研究の対象地. 駅勢圏(徒歩10分圏) 徒歩5分圏. 駅 半径600m. 図 3. 駅勢圏 ( 例 : 赤坂駅 ). 1-2. 研究の方法. 駅勢圏として、以後扱うものとする注 1( 図 3)。. 研究のフローを図 1 に示す。2 章では TOD 推進にお. 1-5. 鉄道の利用量に用いるデータについて. ける評価観点に基づき指標を導出し、重回帰分析を用. 本研究では鉄道の利用状況を知る手段として平成 22. いて都市構成要素が鉄道利用に及ぼす影響について明. 年度版福岡市統計書に記載されている市営地下鉄、私. らかにする。3 章では平日と休日の乗降客数による駅. 鉄各駅乗降客人員を用いて駅の 1 日当たりの乗降客数. の使われ方と都市構成要素の関係を分析する。4 章で. を計算した。また、各駅を利用する人々がその駅を出. は駅勢圏内における都市構成要素の適正配置について. 発、到着どちらの目的で利用しているかを調べるため. 明らかにし、最後にまとめを行う。. に、福岡市交通局から提供された平成 22 年地下鉄乗. 1-3. 研究の対象地. 降客人員の 11 月 15 日から 26 日迄の 15 分毎の乗降客. 本研究では福岡県福岡市の市営地下鉄、西鉄天神大. 数データを用いた。そのデータのうち、始発から 11. 牟田線の鉄道駅とその周辺を対象とする ( 図 2)。しか. 時までの改札の外から入場した人の数をその駅の出発. し、天神・博多エリアは福岡の都心として商業・業務. 利用者数、また、同時間帯の改札の内から外に出た人. が集積しており、他の鉄道駅とは明らかに都市的役割. の数を到着利用者数として扱う。. が異なっている。また、福岡空港駅についても同様の. 2. 都市構成要素が鉄道者数に与える影響. ことが言える。そこで、本研究では福岡市営地下鉄博. 2-1. 都市構成要素指標の導出. 多駅、天神駅、福岡空港駅、天神南駅、西鉄大牟田線. 本研究では、都市構成要素の種類によって鉄道利用. 西鉄福岡駅を除外した計 36 駅の分析を行った。. 者数に異なる影響を与えると想定して表 1 に示す 4 つ. 1-4. 駅勢圏の定義. の観点から都市構成要素の指標を導出する。表 2 は駅. TOD で用いられる駅勢圏は駅から 600m( 徒歩 10 分圏 ). 勢圏を乗降客数が多い順に並べた主な指標の一覧であ. の範囲となっている 。そこで、本研究では GIS を用. る。指標全体で見ると駅勢圏面積と非効果的土地利用. いて作成した経路距離 600m の範囲を本研究における. 面積が大きい駅は乗降客数に関わらず分布しており、. 2). 3-1.

(2) 表 1. 指標一覧 駅から徒歩で10分以内に到達可能な範囲の面積. 表 2. 研究対象駅勢圏の指標一覧 順位. 駅勢圏面積. 非効果. 駅名. (人). TODに効果的でない土地利用 (工業、駐車場、寺院、川など)の面積 道路線密度 駅勢圏における道路本数の多さ 平均道路幅員 駅勢圏における道路幅員の平均 駅勢圏と重なる250mメッシュ における人口密度の平均 戸建建築面積 戸建住宅の建築面積合計 集合住宅建築面積 集合住宅の建築面積合計. 到着駅促進性能. 業務系延床面積 業務系の延床面積の合計 大学学生数 大学、短期大学の学生数 大規模小売店集積度. 商業系延床面積 利便性能. 商業系の延床面積の合計 文教・厚生施設延床面積 文教・厚生施設の延床面積の合計 病院病床数集積度 病院(病床数20以上)の病床数と 駅からの距離の逆数との積. 薬院 西新 姪浜 大橋 中洲川端 赤坂 井尻 藤崎 高宮 東比恵 唐人町 雑餉隈 大濠公園 室見 祇園 平尾 福大前 貝塚. 下位. 大規模小売店(1000㎡以上)の売場面積と 駅からの距離の逆数との積. 中位. 出発駅促進性能. 人口密度. 48,222 40,910 37,693 34,310 25,775 25,548 21,241 19,921 18,490 16,559 16,515 15,126 15,003 13,614 11,786 11,364 11,332 10,005 馬出九大病院前 8,268 別府 7,436 箱崎九大前 6,784 七隈 6,638 千代県庁口 6,622 6,197 六本松 5,978 野芥 5,951 箱崎宮前 5,515 呉服町 4,978 橋本 4,734 渡辺通 4,633 金山 4,490 次郎丸 4,268 薬院大通 4,167 賀茂 3,392 茶山 2,551 桜坂 2,066 梅林. 上位. 基盤性能. 非効果的土地利用面積. 文教 病院 商店街 厚生 病床数 の 延床 面積 集積度 有無* (千m2) (床/m). 戸建 集合住 商業系 業務系 大学 大規模 平均 人口 建築 宅建築 延床 延床 の 小売店 道路 密度 面積 面積 面積 有無 集積度 2 2 (m/m ) 幅員(m) (人/km ) 面積 2 2 2 2 2. 乗降 駅勢圏 的土地 道路線 客数 面積 利用 密度 (千m2). 面積 (千m2). 788 669 675 654 693 690 718 685 693 687 714 589 561 652 708 642 252 435 497 716 554 710 662 747 727 682 704 615 681 677 756 755 672 645 608 531. 310 307 282 292 369 350 229 284 289 337 270 227 264 280 413 253 194 285 278 250 254 299 390 361 299 324 369 407 296 200 327 286 331 207 175 291. (千m ) (千m ). 56.8 25.5 26.8 26.8 42.3 22.9 28.0 28.8 28.9 24.7 26.8 29.3 25.8 28.9 34.4 30.5 34.7 18.9 31.6 32.4 29.8 36.6 31.5 32.2 34.7 35.0 43.6 23.8 60.1 39.5 31.2 39.5 33.0 33.3 29.2 33.0. 4.3 8.0 8.3 9.4 7.4 11.1 5.5 6.6 7.8 8.6 7.4 6.6 10.3 8.1 8.3 8.2 5.4 11.5 6.9 6.7 6.9 5.3 8.2 6.8 6.3 5.7 7.3 6.9 4.1 4.9 6.2 5.3 6.4 5.0 5.2 6.7. 20,439 15,705 15,757 14,316 7,257 11,520 14,549 17,687 14,186 7,164 16,028 13,246 15,647 14,769 7,536 20,666 7,012 7,246 8,339 18,622 8,916 8,114 10,252 16,469 8,013 10,503 9,710 4,077 17,042 11,452 7,833 20,053 8,491 11,928 11,715 5,930. 29 43 53 27 6 9 69 64 56 16 70 46 19 66 16 41 10 9 30 69 42 84 36 54 102 65 26 51 28 104 101 35 83 115 71 56. 117 88 71 101 42 91 90 99 92 47 100 74 73 74 48 101 15 25 41 109 45 59 46 102 31 56 53 1 89 54 28 133 28 50 61 19. (千m ). (千m ). 286 192 71 114 561 267 38 51 64 67 52 85 77 33 306 72 3 24 39 50 88 40 103 68 29 60 226 24 380 26 23 154 22 18 33 6. 419 69 79 70 656 758 19 130 51 253 40 48 157 39 725 94 6 13 113 36 32 11 193 83 16 52 487 2 419 9 11 187 14 6 20 3. (m /m). 107.2 ○ 549.0 157.0 ○ 400.2 601.7 0.0 31.0 2.8 50.5 ○ 6.2 12.1 17.7 0.0 0.0 32.7 5.9 0.0 ○ 7.1 4.5 ○ 0.0 ○ 15.2 ○ 0.0 78.0 0.0 55.1 19.7 143.8 150.9 219.8 8.0 18.3 43.3 97.6 48.6 0.0 0.0. *商店街の有無は福岡県商店街名簿における会員数 40 以上かつ大部分を駅勢圏内に含むものとする。. 67 1.54 ○ 167 0.98 ○ 45 0.31 ○ 77 1.78 ○ 50 0.15 118 1.81 ○ 19 0 ○ 44 0 ○ 72 1.14 57 0 ○ 78 0.56 ○ 23 0 39 0 13 0 72 0 ○ 44 0.29 69 4.73 79 0.44 85 4.50 87 0.91 84 0.20 86 0 ○ 142 1.05 ○ 115 0.16 26 1.96 55 0.37 88 1.21 3 0 76 2.26 10 0 28 0 108 1.58 32 0 59 0 22 0.13 37 0 は上位 10 項目を示す。. 鉄道利用者数への影響は小さいと思われる。また、指. 延床面積などは多重共線性が強くなっているため、一. 標の乗降客数順の上、中、下位で傾向が異なっている。. 部指標は合計値、または除外したデータを用いている。. 上位の駅を見ると薬院や西新、大橋などの都市機能が. 2-3. 出発・到着利用で異なる都市構成要素の影響. 集約している駅勢圏が集まっている。これらは人口密. 鉄道乗降客. 度が高いなど出発駅としての性能が高いだけでなく、. 数と各指標と. 大規模小売店舗の集積度や商業、業務、大学などの集. の重回帰分析. 客性の高い施設も多く存在している。中位の駅は上位. の結果を表 3. の駅とは異なり、井尻、東比恵など、出発・到着駅促. に示す。出発. 進性能のいずれかが高い駅勢圏が集まっている。中位. 利用者数から. の内、上の方は商店街が形成されている駅勢圏が多く、. 見ると、大規. 駅周辺の商業集積が進んでいる。また、下の方は大学. 模小売店集積度が 0.457、集合住宅建築面積が 0.389. や大学病院がある駅勢圏が集まっている。平均道路幅. となっており、高密度な住宅開発と大規模小売店が駅. 員が広い駅勢圏が多いため駅前の基盤整備が進んでい. に近いほど出発利用者数が増える要因であることがわ. ると考えられる。下位の駅は呉服町や渡辺通などの天. かった。到着利用者数を見ると学生数が 0.559、業務・. 神・博多に近接している駅勢圏や橋本、梅林をはじめ. 商業延床面積が 0.523 と非常に高くなっており、到着. とする七隈線の駅勢圏が集まっている。都心近接型の. 地の多さが駅勢圏の吸引性を高めているといえる。ま. 駅は人口密度が高くても、徒歩で移動するため乗降客. た、全体として見ると非効果的土地利用面積、戸建面. 数が少なくなっていると考えられる。七隈線の駅勢圏. 積、病院病床数集積度はどちらの利用客数に対しても. を見ると、戸建建築面積が高く駅周辺の商業集積も乏. 非常に影響が少なく、平均道路幅員はどちらの利用客. しいため、これからの開発が期待される。. 数に対しても優位に働いていることがわかった。. 2-2. 重回帰分析について. 3. 鉄道駅の使われ方と都市構成要素の関係. 本節では重回帰分析を用いて都市構成要素が鉄道利. 3-1. 駅の使われ方の平日から休日への変化. 用客数に与える影響の大きさを分析する。分析で求め. 平日と休日における駅の利用者数の違いを調べるこ. た標準化係数は鉄道利用者数への影響の大きさを表し. とで、駅周辺の都市構成要素がどのように構成されて. ている。ここでは出発、到着利用者数を従属変数とし. いるかを分析する。図 4 は横軸が出発、到着利用客数. て強制投入法により分析を行う。なお、業務と商業系. が全体に占める割合を、縦軸が一日の乗降客数割合を 3-2. 表 3. 重回帰分析 指標名 非効果的土地利用面積 平均道路幅員 戸建建築面積 集合住宅建築面積 大学学生数 大規模小売店集積度 病院病床数集積度 業務・商業合計延床面積 調整済みR2乗. 標準化係数 有意確率 出発利用 到着利用 出発利用 到着利用 -.107 * .514 .119. .021 ** .491 .021. .641 .023 .684. .891 .002 .914. *. .191 ** .559. .042 .982. .125 .001. .026 .563 .167. .871 .709 .011. .389 .005. *. .457 -.100 -.405 .226. -.021 .080 * .523 .657. 注)商業、業務、駅勢圏面積、道路線密度は多重共線 ** は1%有意水準(両側)を満たす。 性が高いため商業、業務は合計延床面積とし、それ * は5%有意水準(両側)を満たす。 以外は除外して分析を行った。.

(3) 表 4. 駅の類型化. 平日の乗降客. 乗降客多. 休日の乗降客. 姪浜. 姪浜. 乗降客並. 出発型. 西新. 藤崎 貝塚. 室見 野芥. 乗降客少 橋本 賀茂. 金山 次郎丸. 茶山 梅林. 乗降客多. 赤坂. 西新 中立型. 藤崎. 東比恵. 福大前. 乗降客並 大濠公園 唐人町. 薬院. 乗降客少. 貝塚 大濠公園 祇園. 箱崎九大前 七隈 六本松 箱崎宮前 桜坂 薬院大通. 室見. 唐人町. 乗降客多. 中洲川端. 着80%. 箱崎九大. 野芥 六本松. 箱崎宮前. 渡辺通. 薬院大通 着60%. 着40%. 赤坂. 別府. 七隈. 着20%. 次郎丸. 桜坂 0%. 出20%. 出40%. 出60%. 橋本 金山 賀茂 梅林 茶山 出80%. 図 4. 鉄道駅使われ方の変化 ( 平日から休日 ). 乗降客並. 到着型. 九大病院 千代県庁 呉服町. 着100%. 薬院 別府. 福大前 東比恵 中洲川端 祇園 乗降客少. 出100%. 馬出九大病院前 千代県庁口. 渡辺通 呉服町. 表 5. 路線ごとの都市構成要素比率. 示している。なお、平日と休日の乗降客数総数は大き. 路線名 空港線 七隈線. く異なっているため、縦軸には乗降客数ではなく全駅. 業務系延床面積(a) 53146 21037. 住宅系延床面積(a) 48452 (91.2%) 62585 (297.5%). 通勤出発利用者数(人) 33699 (63.4%) 8166 (38.8%). ()内は業務系面積に対する割合. の乗降客数合計に対する割合を用いている。出発、到. 降客数が伸びていることがわかる。このような駅は業. 着利用割合の分布を見ると表 4 に示すように出発型、. 務や住宅だけでなく商業やレジャーに使われる施設が. 中立型、到着型に分けられる。出発型、到着型の駅は. 駅勢圏に存在するため、人々にとって魅力的な駅勢圏. 休日になると大きく中央に移動するのがわかる。これ. を形成していると考えられる。また、2) 出発地型で乗. は土地利用が住宅か業務に大きく偏りがあるため、平. 降客数が少ない駅は七隈線の駅で占められている。七. 日では通勤通学などで利用されているが休日になると. 隈線は地下鉄開業に伴って広幅員道路が整備されたの. 利用されなくなっていると考えられる。. みで、大きく土地利用が変わっていないため、TOD 型. 3-2. 鉄道路線間における都市構成要素のバランス. 都市構造として様々な改善点が顕在していると思われ. 図 4 において、路線ごとに駅の使われ方を見ると七. る。最後に 3) 桜坂や呉服町などは、都市構成要素は. 隈線の駅は乗降客数が低く、また到着型より出発型の. 充実しているが乗降客数が低くなっている。天神や博. 数が多く存在するため路線間における都市構成要素の. 多に近く、バス路線が充実していることから徒歩かバ. バランスに問題がある可能性がある。そこで、乗降客. スによる移動が中心だと考えられる。. 数が多い空港線と乗降客数が低い七隈線の業務系、住. 4. 駅勢圏内部における都市構成要素の適正配置. 宅系延床面積割合を比較することで通勤出発利用者に. 4-1. 配置場所で異なる都市構成要素と鉄道利用の関係. 与える影響について分析する。表 5 は空港線、七隈線. 駅勢圏内の都市構成要素が駅からどの範囲に配置す. それぞれの業務系、住宅系延床面積と通勤出発利用者. るかでどのように鉄道利用者に影響が出るかを調べる. 数を示したものである。これを見ると業務面積と通勤. ために、ここでは単相関分析を用いて都市構成要素の. 出発者はどちらの路線も同じような比率だが、住宅面. 適正配置について分析する。表 6 は住宅、商業、業務、. 積を見ると、七隈線が非常に多いことがわかる。七隈. 文教・厚生の延床面積を徒歩 5 分圏とその外側 (5-10. 線の沿線は開発が進んでいないため集合住宅の割合は. 分圏 ) に分けて、駅勢圏内の配置が鉄道利用客数に与. 低いが、出発型の駅が多いために路線内での業務面積. える影響について分析したものである。住宅は駅勢圏. が足りず住宅供給過多となっている。このため、現在. 内のどちらに配置しても影響はなかった。商業と業務. 計画中の七隈線博多駅への延伸は非常に効果的である. はどの位置でも鉄道利用者数の増加につながるが、平. と言える。. 日では業務に、休日では商業施設が駅勢圏の内側に集. 3-3. 駅ごとに見る駅の使われ方と都市構成要素. 積する方が乗降客数が増えやすいことがわかる。また、. ここでは図 4 における特徴的な駅について考察する。. 文教・厚生施設は駅勢圏の内側では乗降客数が伸びに. 1) 両立型の駅で乗降客数が多い駅 ( 西新、大濠公園、. くく、外側に配置することで効果的に乗降客数が増え. 唐人町など ) は休日になると平日よりも他の駅より乗. ることがわかった。 3-3.

(4) 表 6. 駅勢圏内の土地利用単相関分析 総乗降客数. 延床面積項目 住宅 商業 業務 文教 ・ 厚生. (2) 梅林駅 ( 出発型 : 乗降客少タイプ ). 出発利用 平日 休日. 到着利用 平日 休日. 近(0-5分圏). .235. .225. .174. .004. .118. 遠(5-10分圏). .394. *. .205. .130. .120. .171. 近(0-5分圏). .371. *. -.049. .098. .291. .650. **. 遠(5-10分圏). *. -.129. -.103. .447. *. .417. *. 近(0-5分圏). .333 .246. -.097. -.074. .617. **. .358. *. 遠(5-10分圏). .289. -.184. -.127. **. .088. -.017. -.033. .446 .064. *. 近(0-5分圏). .559 .078. .224. -.002. .086. .565. **. .377. *. 遠(5-10分圏). **. は1%有意水準(両側)を満たす。* は5%有意水準(両側)を満たす。. 4-2. 鉄道利用客数の多少と都市構成施設立地の関係 本節では、3 章の分析で駅勢圏としての評価が高かっ 駅. た西新と、評価の低い七隈線の内、梅林に着目し、駅. 商業. 図 7. 梅林駅 : 商業分布. 駅. 戸建住宅. 集合住宅. 図 8. 梅林駅 : 住宅分布 ). 勢圏マップを用いた定性的な分析を通して、都市構成. 図 7、8 は梅林駅の商業、住宅分布である。梅林の. 要素の適正配置についての分析を行う。. 商業集積は駅から南に 500m ほど離れたところにあり、. (1) 西新駅 ( 中立型 : 乗降客多タイプ ). 駅周辺の商業施設が不足している。また、駅の東側は. 駅. 自動車しか通過できないトンネルになっており、徒歩. 大型収容施設. でのアクセス性が非常に悪い。そのため駅の吸引力が. 商業施設 店舗併用住宅. 非常に低く、駅勢圏の集中的な開発が必要であると考 大学. えられる。 5. まとめ. 大学. 本研究では TOD 推進における都市構成要素が鉄道利 高校. 用者数に与える影響について分析し、鉄道利用者数が. 至藤崎. 多い駅の都市構造の特徴を明らかにした。 2 章では、鉄道利用推進の 4 つの観点から指標を導 商店街. 出し、重回帰分析を用いて出発利用では平均道路幅員 の広さと集合住宅の多さと大規模小売店の集積が、ま た到着利用では平均道路幅員の広さ、大学学生数の多. 図 5. 西新駅 : 商業分布、大型集客施設立地 ). 西新は出発、到着利用. 駅. 集合住宅 戸建住宅. さ、商業・業務面積の多さが鉄道利用者数の多い駅勢. 数が共に多く、また平日. 圏の特徴として明らかになった。3 章では、平日と休. だけでなく休日の利用割. 日それぞれの駅の使われ方について分析を行い、土地. 合も高いことから、非常. 利用の偏りがある駅の使われ方や平日、休日ともに乗. に効率的な駅勢圏を形成. 降客数が多い駅の特徴を明らかにした。また駅勢圏内. し て い る と 考 え ら れ る。. の土地利用バランスだけでなく、路線内での土地利用. 図 5 は商業分布と大型収. バランスも重要であることを明らかにした。4 章では、. 図 6. 西新駅 : 住宅分布. 容施設の分布を表したものである。西新は大学や高校. 駅勢圏に都市構成要素を充実させるだけでなく、要素. が駅勢圏内の外側に配置されている。大学と駅の間に. によって駅勢圏内における適正配置が存在することを. 商店街が形成されており、大型収容施設が商店街の活. 明らかにした。. 性化に寄与していると考えられる。また、この商店街. 鉄道利用者数は駅が住居に近いだけでは増加を見込. は隣駅の藤崎駅まで連続しており、最寄駅が藤崎駅の. むことは難しく、駅と一体で駅勢圏の開発誘導を行う. 住民が帰宅時に西新駅で下車する等の寄り道を誘発し. ことが必要であるということが本研究の分析の結果か. やすい都市構造になっている。図 6 の住宅分布を見る. ら示唆された。通勤通学などの利便性が向上するだけ. と、駅勢圏の外側に住宅が密集しているが、商業分布. でなく、生活の質を高められる都市構造への開発手法. を見ると集合住宅密集地である駅の東側にも店舗併用. として、TOD の有効性が高まったと思われる。. 住宅が連続しており、TOD 型都市構造である複合的な 土地利用が形成されていると思われる。駅勢圏の外側 に集客性の高い施設を配置することで商業集積が進み やすく、鉄道利用者数が増加することがわかった。. 注 1 経路距離 600m を計測するための道路データは国土地理院発行の数値 地図 2500 を用いて現況にそぐわない部分を修正して使用した。 【参考文献】 1) 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画区域マスタープ ラン)について、http://www.pref.fukuoka.lg.jp/d11/toshikeikakukuikimasu-h23.html 2) ピーター・カルソープ著、倉田直道、倉田洋子訳:「次世代のアメリカ の都市づくり ニューアーバニズムの手法」、学芸出版社、2004. 3-4.

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