戦災復興期における八幡市住宅協会の試みとその計画史的評価 [ PDF
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(2) 織体制であったと考えられる。. ているが、特に建設資金計画において重要な役割を. 守田市長は、大学で建築を学び、その後も都市計画. 果たしている。当時は公営住宅法で併存住宅が認可. に携わってきた経歴の持ち主で、常に欧米の都市を理. されておらず、市営の店舗併用住宅を建設しようと. 想としていた。八幡市住宅協会の「都市型」集合住宅. しても国の融資を得ることができなかった。そこで. の建設は、守田市長が欧米の街並みを八幡で再現しよ. 八幡市は、外郭団体である協会に公庫融資で建設さ. うとした試みだったといえる。. せた後に建物を譲り受ける方法をとることで、市営. 3.八幡市住宅協会の「都市型」集合住宅. の店舗併用住宅建設を可能にしたのである。. 八幡市住宅協会が戦災復興期に建設した「都市型」. 第 3 ・4 棟が街路を挟んで互いに向き合っているな. 集合住宅には、協会住宅[平和ビル]と市営住宅[本. ど、平和ビル同様、街路を強く意識した計画であった。. 町アパート]・[白川町団地]の 3 事例ある(図2)。. ■事例 03[白川町団地]. ■事例 01[平和ビル]. 白川町団地は、昭和 32 年に第 1・2 棟、昭和 35 年に. 平和ビルは、八幡駅移転とそれに伴う駅前の整備計. 第 3 棟が建設された。協会は、ここでは設計業務のみ. 画と連動する形で、昭和 29 年に全 4 棟が建設された。. にアドバイザー的立場で関わっている。. 協会は、権利交渉・計画・建設・管理と全てのプロセ. 配置は、3 つの住棟が南面平行で並び、団地内に公. スに関わっている。. 園と集会所を有している。「都市型」集合住宅といえ. 配置は、平和通りの両脇に建物が並ぶ構成である。. るのは街路に面した第 3 棟のみであり、前述の 2 事例. いずれの住棟も敷地境界に接し、ファサードが街路の. とは異なる方向性の計画であった。. 景観を構成する要素となっている。また、第 1・2・4. 4.所有・管理に関する契約. 棟では、角部分が斜めに切られ、交差点に対してアー. ここでは、3 事例の所有・管理に関する契約内容に. バンデザイン上の配慮がなされている。この建物に. ついて考察する(図3)。. は、住宅としての機能はもちろん、そのデザインで新. ■事例 01[平和ビル]. しい街並みを形成し駅前を飾るという都市的な役割も. 協会は土地を所有せずに借地としている。しかも、. 強く期待されていたと考えられる。. 公共住宅でありながら、土地所有者に対して賃貸部分. ■事例 02[本町アパート]. の入居優先権などの権限を認めた特殊な契約である。. 本町アパートは、平和ビルと同じ昭和 29 年に第 1 ∼. 土地所有者は、八幡駅移転による地価高騰を期. 4 棟が建設されている(第 5 棟は昭和 40 年北九州市に. 待して戦後購入した人が多い。そのため彼らは、. よる建設)。協会はここでも全てのプロセスに関わっ. 自分達にとっては割に合わない平和ビル建設を受. 図 2 八幡市住宅協会の「都市型」集合住宅 3 事例. 11-2.
(3) け入れる条件として、それに見合うだけの権利を強. することに見出していたともいえるだろう。 「都市型」. く主張した。協会は建設実現のために、それを全面的. 集合住宅を建設する「場所」に対する協会の強い思い. に認めざるをえなかったのである。. が垣間見える。. ■事例 0 2 [本町アパート]. そして、予定地での建設を実現するため、その場そ. 平和ビルとほぼ同様の契約だが、土地所有者に特別. の場で交渉を行い独自の契約を結んでいる。3 事例の. な権限はない。. 契約内容が異なるのは、そのためと考えられる。. ここの土地所有者は、戦前から街路沿いに八幡製鐵. 5.ファサードと住戸の関係. の通勤者を相手とした商店・飲食店を経営していた人. ここでは、3 事例のファサードと住戸プランとの関. が多い。戦災でこれらを焼失した彼らにとって、土地. 係について考察する。. を手放すことなく再び店舗と家屋を手に入れることが. ■事例 01[平和ビル]. できる本町アパート建設の話は願ってもない話だっ. 平和ビルは、ほぼ同じプランの住戸(以下、基本住. たという。そのため、この話を持ちかけてきた市およ. 戸)が街路に沿って並ぶが、例外的に街区の角に当た. び協会に対して、彼らが自ら使う空間以上の所有権. る部分にはプランの異なる住戸(以下、角部屋)が存. を主張することはなかった。. 在する。ここでは、第 2 棟を例にみていく。. ■事例 03[白川町団地] ⴝౝㇱ. 白川団地のある一帯は、八幡市が戦後まもなく戦災 応急住宅(2 軒長屋)を建設するために土地を買収し. ₵㑐 ᶎቶ. ⇥ቶ บᚲ. ている。白川団地はその一角の建て替え事業であった ため、そのまま土地が市の所有になっている。. ⇥ቶ. ■小結. ᵗቶ. 協会は、時に平和ビルのように、不利な条件を飲ん. ᐢ✼. ででも建設を推し進めている。それは裏を返せば、多. 図4 平和ビル第 2 棟基本住戸(S= 1/200)とファサード. 少の不利に目をつぶるだけの価値を予定地に「建設」 ࡕ࠺࡞. 䵄 ᐔ ࡆ ࡞ 䵅. ਥߥᄾ⚂ⷐ. 㓏 ቛදળ 㓏. ቛ. 㓏 㓏. ᐫ⥩. ᚲ⠪. . Ԙ㧙ߩᚲᮭߪߘߩ߹߹ߢޔදળ ߇ߎࠇࠍ୫ߔࠆ ԙ㧙㓏ᐫ⥩ㇱಽߪޔᑪ⸳ᓟᚲ ⠪ߦಽ⼑ߔࠆ Ԛ㧙㓏ቛㇱಽߪޔᑪ⸳ᓟᚲ ⠪ߦಽ⼑ߔࠆ ԛ㧙㓏ㇱಽߪදળߩᚲ▤ℂߣ ߔࠆ߇ޔᚲ⠪ߩⷫᚘฬ⟵╬ ߦࠃࠅᚲ⠪ߦᚭዬߩఝ వᮭࠍਈ߃ࠆ Ԝ㧙㓏ㇱಽࠍᄁළߔࠆ㓙ߦߪޔᔅ ߕᚲ⠪ߦኻߒߡⴕ߁. ً╙ߩᐔ㕙⊛ߥࡈࠔࠨ࠼. ⴝ〝. 第 2 棟のファサードは、横方向に連続する窓がデザ インの特徴になっている(図4)。この窓は、外壁を構 造体から切り離し、カーテンウォールとすることで可 能にしたものである。基本住戸をみると、外壁と柱の 間に生じた空間を広縁にしていることが分かる。広縁 が都市との緩衝的役割を果たすことで、寝室として設 定されていたであろう 6 畳和室は、都市の喧騒から守 られた静かな空間になっている。 ファサードにおける窓の連続性を重視した結果、角. 䵄 ᧄ ↸ ࠕ ࡄ 䳦 ࠻ 䵅. 㓏 ᐈᏒ 㓏. ቛ. 㓏 㓏. ᐫ⥩. ᚲ⠪. Ԙ㧙ߩᚲᮭߪߘߩ߹߹ߢޔᐈ Ꮢ߇ߎࠇࠍ୫ߔࠆ ԙ㧙㓏ᐫ⥩ㇱಽߪޔᑪ⸳ᓟᚲ ⠪ߦಽ⼑ߔࠆ Ԛ㧙㓏ቛㇱಽߪޔᑪ⸳ᓟᚲ ⠪ߦಽ⼑ߔࠆ ԛ㧙㓏ㇱಽߪᐈᏒߩᚲ▤ℂ ߣߔࠆ. 部屋には窓の位置と住戸プランが対応せず、押入に窓 ԙ Ԙ. ԙ. ⇥ቶ. . ًⷺㇱደ߆ࠄߩ⌑ᦸ. 䵄 ⊕ Ꮉ ↸ ࿅ 䵅. 㓏. ᐈᏒ. ԙ㧙㓏ᐫ⥩ㇱಽ㓏ቛㇱಽߪޔᑪ ⸳ᓟಽ⼑ߔࠆ Ԛ㧙㓏ቛㇱಽߪޔᑪ⸳ᓟᚲ ⠪ߦಽ⼑ߔࠆ. ᐫ⥩ᚲ⠪. ԛ㧙㓏ㇱಽߪᐈᏒߩᚲ▤ℂ ߣߔࠆ Ԝ㧙ᢝౝߩ߅ࠃ߮㓸ળᚲߪޔዬ ⠪ߩห▤ℂߣߔࠆ. ቛ. 㓏 㓏 . ᐫ⥩ ᐈᏒ. ᵗቶ. Ԙ. Ԙ㧙ߩᚲᮭߪߘߩ߹߹ߢޔᐈ Ꮢ߇ߔࠆ. 㓏. บᚲ. ₵㑐 ⇥ቶ ᶎቶ. ᐢ ✼. ⴝౝㇱ. ًࡈࠔࠨ࠼ߣ㑆ขࠅߩߕࠇ. 図3 3 事例の所有・管理に関する契約. 図5 平和ビル第 2 棟角部屋(S= 1/200)とその特徴. 11-3. ⴝ〝.
(4) が食い込んでいる箇所がある( 図5) 。当時は採光確. 7)。このバルコニー部分のファサードには、目隠し. 保など住戸の環境向上が叫ばれていた時代であるが、. として装飾的なデザインが施されている。. ここではその優先されるべき住戸内部がファサード. また、第3棟はカーテンウォールを採用しているが、. デザインのあおりを食っている訳である。平和ビル. 外壁・柱間の半間分の奥行きが、第 3 棟 6 畳和室と第. という計画において「ファサード」がいかに重要とさ. 1 棟 4.5 畳和室の違いになっていることが分かる。第. れていたかが窺い知れる。. 3 棟の住戸プランは、ごく普通の南面平行配置住棟で. 角部屋は、以上のようなファサードと住戸のズレを. あった第 1 棟プランを変形させたものと考えられる。. 調整する役割を担う一方で、「住戸」としても魅力的 ⴝౝㇱ. な設計がされていた。直角二等辺三角形の洋室に設け. ₵㑐. られた横長の窓からは、駅前広場など、広がりのある. Ԙ. ⇥ቶ. 独自の眺望が得られる。この洋室を中心に、都市の風 景を楽しみながらの生活が展開されることを期待して いたと考えられる。. บᚲ ⇥ቶ. ■事例 02[本町アパート]. ࡃ࡞ࠦ࠾. 基本住戸の居室配置をみると、公営住宅 51C 型や公 ⴝ〝. 団初期の標準設計 2DK と酷似している(図6)。その中. 㧺. ً╙ߩࡈࠔࠨ࠼ ً╙ߩၮᧄᚭ. Ԙ. 図7 白川町団地第 3 棟基本住戸(S= 1/200:左)と第 1 棟基本住戸. で、51C 型や 2DK ではバルコニーが DK 側にあるのに対 して、本町アパートでは反対側にある点が、注目され. ■小結. る。これは、バルコニーが街路側に表われないように. 住戸プランをみると、独自の住戸を設計していた平. との配慮と考えられる。また、そのことによって出窓. 和ビルから徐々に、標準設計・南面平行配置という住. が街路に直接面し、ファサードに凹凸によるリズム. 宅「供給」を優先した住宅の要素を取り入れる方向へ. 感が生まれている。. 移行していったことが分かる。. 2DK が登場する昭和 30 年以前に、このような「都市. しかし、完全に「都市型」集合住宅建設を放棄する. 型」集合住宅仕様の「標準設計」を作り出していたこ. わけではなく、ファサードを上手く処理することで. とは大変興味深い。. 標準設計・南面平行配置の住宅を「都市型」集合住宅 に仕立てている。住戸プランが規格化する中で、協会. ⴝౝㇱ. はファサードを「都市型」集合住宅の最も重要な要素. ࡃ࡞ࠦ࠾. と考え、こだわり続けていたのではないだろうか。 6.八幡市住宅協会の功績. ⇥ቶ. 八幡市住宅協会は、戦災復興を進める守田市長自ら. ₵㑐. が理事長に就き、都市と住宅とを一体的に計画できる ⇥ቶ. ᵗቶ. 組織体制にあったといえる。. ًᧄ↸ࠕࡄ࠻ߩࡈࠔࠨ࠼. 実際の「都市型」集合住宅建設にあたって、協会は、. ً. บᚲ. ˴ᧄ↸ࠕࡄ࠻ၮᧄᚭ ⴝ〝. ٕ༡%ဳߩᮡḰ⸳⸘ . 土地所有者との権利交渉、標準設計導入など、多くの. ٕ࿅ဳ&-ߩᮡḰ⸳⸘ . 現実的問題に直面し、それに対し柔軟な対応をしてい る。その対応とはある意味妥協点を探るものであり、 協会メンバーの本意ではなかったかもしれない。しか し、彼らが何よりも優先したかったものは、 「都市型」 集合住宅を理想論で終わらせず、実際に「建設」する 図6 本町アパート基本住戸(S= 1/200:左上)と 51C 型・2DK. ことだったのだろう。だからこそ、最終的に「建設」. ■事例 0 3 [白川町団地]. に至った 3 事例の実現の意味は大きいと考える。. 白川町団地は 3 棟が南面平行配置で並び、いずれの. 最後に、本研究で知り得た八幡市住宅協会の意欲的. 住棟もバルコニーは南側に設けられている。そのた. な試みとそこに払われたひたむきな努力が今後に受け. め、南に街路を持つ第 3 棟では、本町アパートと異な. 継がれ、新たな「都市型」集合住宅の試みが取り組ま. り、バルコニーが街路に面する形になっている( 図. れていくことを切に望んでいる。. 11-4.
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