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SOHOの立地と事業主の就労・生活実態に関する研究 [ PDF

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(1)SOHO の立地と事業主の就労・生活実態に関する研究. 長野 匡利 1. はじめに. 統計情報による SOHO の立地分布. 1-1. 研究の背景と目的. 事業所・企業統計調査、電子電話帳 における企業情報の収集. SOHO 及び SOHO グループに関する情報の収集. 情報通信技術(以下 ICT)は情報入手方法や娯楽等. SOHO と企業との立地における違い SOHO と事業所・企業統計調査、電子電話帳における企業との立地の比較. に変化を与え、時間や場所に捉われない活動を可能に. SOHO の立地分布の特徴. する 1)。ICT を積極的に活用し、ワーク・ライフ・バ. アンケート調査. ランスや業務効率の向上が期待される「テレワーク注 1)」. 立地に関する項目. 就労・生活に関する項目. SOHO の立地選択要因・移転最適地域など. SOHO の利点・欠点や ICT 利用による利点など. が徐々に普及している。それにより就労や生活に影響 を与え、活動拠点が変化、多様化すると考えられる。. SOHO の立地の詳細な分析. SOHO の実態. 立地選択の要因. SOHO とテレワークの相違点. 現住所による分類と立地選択要因との関係. SOHO とテレワークの利点・欠点に関する比較. 移転最適地域と立地の関係. 事業主の就労・生活実態 アンケート調査・電話によるヒアリング を用いた就労・生活実態の把握. テレワークは就労形態により、被雇用者による「雇. 現住所による分類と移転最適地域との関係. 用型テレワーク(以下テレワーク)」と SOHO(Small Office Home Office) 注 2) による「自営型テレワーク」. まとめ. に大きく分類される 2)。テレワークは、テレワークへ. 図 1 研究のフロー. の期待と効果や企業や勤務者の課題等、数多くの研究. する分析を行う。一方で、テレワークと SOHO の利点・. がある. 2)3)4). 。一方、SOHO は実態を掴み辛く、都道府. 欠点の共通点や相違点を探ると共に、ヒアリングを行. 県別の SOHO 人口を推計し、比較を行った研究や SOHO 実態調査等、全体を捉える研究に留まっている. い、事業主の就労・生活実態を把握する。. 5)6). 。. 2. 統計情報から見る SOHO の立地分布. そこで本研究は、SOHO の立地を都市的な視点により. 本章は、サポートセンターに登録されている SOHO. 分類を行い、立地に関する特徴を明らかにする。また、. 及び SOHO グループ、1019 件のデータを用いた。. SOHO の効果と課題の特徴を明らかにし、事業主の就労. 2-1. SOHO と事業所との立地分布の違い. や生活の実態を明らかにすることを目的とする。. SOHO と事業所・企業統計調査注 3) による市町村別の. 1-2. 研究対象. 立地分布を表 1 に示す。SOHO は事業所・企業統計調査. 研究対象は、福岡 SOHO サポートセンター(以下サポー. と比較すると、福岡市への極端な集積を見せると共に、. トセンター)に登録されている SOHO 及び SOHO グルー. 春日市、筑紫野市、宗像市など、福岡市周辺地域への. プとする。SOHO をサポートする自治体は沖縄県や静岡. 偏りが存在する。また、SOHO は北九州市、久留米市な. 県など存在するが、サポートセンターは SOHO とクラ. ど、福岡県の中核となる市町村への集積が少ない。. イアントの両者が登録しており、約 1,100 件(2009 年. SOHO と電子電話帳注 4)による市町村別の立地分布を. 10 月時点)と多くの SOHO が登録している。登録情報は、. 表 2 に示す。表 2 において、SOHO の業種をデザイン・. 屋号、職種、連絡先、所在地、実績等が記載されている。. ライティング等(デザイン / ライティング・編集・デー. 1-3. 研究の方法. タ入力 / 講師・インストラクター / その他)とシステ. 研究のフローを図 1 に示す。まず、サポートセンター. ム・コンサルタント等(システム・ソフトウェア / 企画・. に登録している SOHO 及び SOHO グループに関する情報. 広告・コンサルタント / 設計・製図)に分類し、電子. を収集し、事業所・企業統計調査や電子電話帳におけ. 電話帳の類似業種はシステム・コンサルタント等と類. る企業との立地の比較を行 い、相違点を把握すると共 に、SOHO の 立 地 の 特 徴 を 明らかにする。その後、ア ンケート調査を行い、その 結 果 を 用 い て、 立 地 に 関. 表 1 SOHO と全事業所の比較 表 2 業種別の SOHO と電子電話帳の比較 デザイン・ライティング等 システム・コンサルタント等 電子電話帳の類似業種. SOHO 事業所・企業統計調査 54.7%. 31.3%. 福岡市. 56.0%. 57.0%. 53.6%. 北九州市. 8.0%. 21.0%. 北九州市. 8.1%. 7.9%. 18.2%. 春日市. 4.3%. 1.5%. 春日市. 3.9%. 4.7%. 1.2%. 久留米市. 2.9%. 6.6%. 久留米市. 2.9%. 3.3%. 6.1%. 筑紫野市. 2.6%. 1.3%. 筑紫野市. 2.6%. 1.8%. 1.1%. 宗像市. 2.6%. 1.2%. 宗像市. 2.3%. 2.3%. 0.8%. その他. 24.8%. 37.1%. その他. 24.3%. 23.1%. 19.1%. 福岡市. 5-.

(2) «. 似する業種(情報サービ ス / 宣伝・広告 / 調査・. «. コンサルタント / 住宅 / 設計事務所)を抽出し た。SOHO は 業 種 に よ る 立地分布に大きな違いは ない。また電子電話帳の 類似業種と比較すると、 SOHO は 福 岡 市 へ の 極 端 SOHO所在地. な集積を見せる点で同様. 0. 鉄道路線. の特徴を持つが、福岡市. SOHO所在地. 50(km). 25. 0. 鉄道路線. 5. 10. 15(km). 図 2 福岡県の SOHO の立地分布. 周辺地域への偏りや北九州市のような福岡県における. 図 3 福岡市周辺の SOHO の立地分布 3. アンケート調査. 中核となる市町村への立地は少ない。. 3-1. アンケート調査の概要. 以上のことより、SOHO の立地分布は事業所とは異な. アンケート調査の目的は、SOHO の立地に関する更な. る独自の特徴を持っていることが明らかになった。. る分析や立地選択要因を把握し、特徴を明らかにする. 2-2. SOHO の立地分布. ことである。また、SOHO の就労・生活に関する利点・. 福岡県における SOHO の立地分布を見ると、福岡市. 欠点を把握し、実態を明らかにすることを目的とする。. 周辺への極端な集積が見て取れる(図 2)。また、鉄道. アンケート調査は、前章で収集した、サポートセン. 沿線を中心に分布し、福岡市周辺以外の地域において. ターに登録している 1019 件の事業主を対象とした。調. 鉄道沿線から離れて立地する SOHO は少ない。. 査方法は、メールにより調査への協力を依頼し、2009. 極端な集積が見られる福岡市周辺の立地分布を見る. 年 12 月 16 日~ 27 日の 12 日間、Web 上で実施した。. と、全体的には天神周辺に最も集積し、福岡市の T 字. 3-2. アンケート回答者の基本情報. 構造に合わせて集積している(図 3)。しかし、姪浜周. 有効回答は 54 件(回収率 5.3%)であった。事業主. 辺や六本松周辺など福岡市中心部以外の地域における. の属性として、20 代と 60 代は少なく、30 代~ 50 代. 集積も高くなっていることが見てとれ、様々な地域に. が大半を占める(表 3)。また、起業後 5 年以上経過し. 分散して立地していることがわかる。. た SOHO が 70%を超えている。個人事業主は 68.9%で. 2-3. SOHO の立地による分類と特徴. あり、自宅を事務所として活用する SOHO が多い(表 4)。. SOHO の立地を福岡市都心(以下都心). 注 5). 、都心を. 除く福岡市、福岡市以外の市街地(以下市街地). 専業の SOHO が大半であり、クライアントとの対面頻. 注 6). 、. 度は 2 週間に 1 日以下が半数以上を占める(表 5)。ク. その他の地域(以下郊外)に分類した。その立地によ. ライアントとの対面頻度が低い理由として、受注した. る分類と SOHO の業種、電子電話帳の類似業種との関. 仕事の打ち合わせが中心であるためと考えられる。. 係を図 4 に示す。電子電話帳の類似業種と SOHO を比. 表 3 事業主の年齢と起業後の経過年数. 較すると、SOHO は都心への集積が極端に少なく、都心. 1年以内 1~2年 2~3年 3~5年 5~10年 10年以上 総件数(%) 20代. 0 (0.0) 1 (100.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0). 0 (0.0). 30代. 2 (14.3) 0. (0.0) 3 (21.4) 3 (21.4) 6 (42.9). 0 (0.0) 14 (100.0). 40代. 1 (5.3) 0. (0.0) 0 (0.0) 2 (10.5) 8 (42.1). 8 (42.1) 19 (100.0). 50代. 1 (6.7) 1. (6.7) 0 (0.0) 1 (6.7) 3 (20.0). 9 (60.0) 15 (100.0). 立地分布は同程度の割合となっている。. 60代. 0 (0.0) 0. (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (33.3). 2 (66.7). つまり SOHO の立地は、都心への集積が極端に少なく、. 総件数(%). 4 (7.7) 2. (3.8) 3 (5.8) 6 (11.5) 18 (34.6) 19 (36.5) 52 (100.0). を除く福岡市への集積が極端に高いことがわかる。ま た、SOHO と電子電話帳の類似業種の市街地や郊外への. いう特徴が明らかになった。. 1人 2人 3人 4人 5人 24 (82.8) 3 (10.3) 2 (6.9) 0 (0.0) 0 (0.0) 7 (43.8) 4 (25.0) 1 (6.3) 2 (12.5) 2 (12.5) 31 (68.9) 7 (15.6) 3 (6..7) 2 (4..4) 2 (4..4). 自宅兼事務所. SOHOの総計 13.2%. 43.3%. 30.7%. 12.9%. 専用オフィス. デザイン・ライティング等 12.8%. 42.9%. 30.3%. 14.1%. 総件数(%). 電子電話帳の類似業種 都心. 26.9%. 43.9% 26.7%. 0% 20% 40% 都心を除く福岡市. 31.4% 32.8% 60% 市街地. (100.0). 総件数(%) 29 (100.0) 16 (100.0) 45 (100.0). 表 5 事業形態とクライアントとの対面頻度. 10.8% 13.5%. 80%. 3. (100.0). 表 4 事務所の形態と従業員数. 都心を除く福岡市への集積が極端に高くなっていると. システム・コンサルタント等 13.9%. 1. 毎日. 100% 郊外. 専業 副業 その他 総件数(%). 図 4 SOHO の業種・電子電話帳から見た立地分布 5-. 4 0 1 5. (9.3) (0.0) (25.0) (9.6). 週2~3日 週1日程度 程度 5 (11.6) 8 (18.6) 1 (20.0) 0 (0.0) 1 (25.0) 0 (0.0) 7 (13.5) 8 (15.4). 2週間に 月1日以下 総件数(%) 1日程度 10 (23.3) 16 (37.2) 43 (100.0) 2 (40.0) 2 (40.0) 5 (100.0) 0 (0.0) 2 (50.0) 4 (100.0) 12 (23.1) 20 (38.5) 52 (100.0).

(3) 表 6 事務所の形態と立地分類 都心 自宅兼事務所. 心に立地する SOHO のうち 83.3%はクライアントとの. 都心を除く福岡市. 市街地. 郊外. 総計. 3.1%. 53.1%. 34.4%. 9.4%. 100.0%. 専用オフィス. 26.3%. 36.8%. 26.3%. 10.5%. 100.0%. 総計. 11.8%. 47.1%. 31.4%. 9.8%. 100.0%. アクセス性を重視しており、クライアントとの関係が いかに重要であるかを示している。一方、都心を除く 福岡市に立地する SOHO は都心へのアクセス性や賃貸. 表 7 立地選択要因(複数回答)と立地分類 都心. 都心を除く福岡市. 郊外. 市街地. 料を重視している。また、クライアントとのアクセス. 総計. 性や既所有、自宅、利便性を重視している。. 都心へのアクセス性 自宅との距離. 33.3% 50.0%. 37.5% 16.7%. 0.0% 6.3%. 20.0% 0.0%. 23.5% 15.7%. 既所有. 33.3% 83.3%. 29.2% 20.8%. 43.8% 18.8%. 0.0% 0.0%. 31.4% 25.5%. 0.0%. 8.3%. 0.0%. 0.0%. 3.9%. 利便性. 16.7%. 20.8%. 18.8%. 0.0%. 17.6%. 賃貸料. 0.0%. 37.5%. 18.8%. 60.0%. 29.4%. 自宅. 0.0%. 20.8%. 50.0%. 60.0%. 31.4%. 心や都心を除く福岡市に立地する SOHO は福岡市業務. 33.3%. 12.5%. 18.8%. 20.0%. 17.6%. 集積地を最適な地域とする回答が多い。また、都心を. クライアントとのアクセス性. 交通環境. その他. 移転する際の最適な地域に関する回答を福岡市業務 集積地(天神・博多周辺)、福岡市内、福岡市近郊、 北九州市内に分類を行った。表 8 を見ると、現在、都. 表 8 立地分類と移転最適地域. 除く福岡市に立地する事業主の約 40%が福岡市業務集. 福岡市 福岡市 北九州 福岡市内 どこでも可 わからない 総計 業務集積地 近郊 市内 都心. 66.7%. 0.0%. 都心を除く福岡市. 40.9%. 45.5%. 7.1%. 14.3%. 郊外. 20.0%. 0.0%. 総計. 31.9%. 25.5%. 市街地. 0.0%. 0.0%. 16.7%. 16.7% 100.0%. 9.1%. 0.0%. 4.5%. 0.0% 100.0%. 42.9%. 21.4%. 7.1%. 7.1% 100.0%. 40.0%. 20.0%. 20.0%. 0.0% 100.0%. 21.3%. 8.5%. 8.5%. 4.3% 100.0%. 積地を最適と考えており、現状との差が大きい。 場所に捉われないと言われる SOHO であるが、事務 所の形態に関わらず、最適と考える地域は都心に偏り を見せる。それは、事業を行う上でクライアントの集. 3-3. 立地分布と立地選択要因. 積する都心との関係は重要であり、立地の選定にはそ. アンケート調査による立地を前章と同様に分類した. の観点による影響を受けている。しかし、既所有であ. ものと事務所形態との関係を表 6 に示す。専用オフィ. ることや自宅を事務所とすること、賃貸料、利便性な. スで活動している SOHO は都心、市街地に 26.3%、都. どの要因により、最適な地域と考える都心とは異なり、. 心を除く福岡市に 36.8%と 30%前後で分散して立地. 都心を除く福岡市への立地が多くなる傾向にある。. している。この結果は都心を除く福岡市への集積が若. 3-4. テレワークの効果と課題との比較と考察. 干高いという違いを持つが、図 4 に示す電子電話帳の. 一般的にテレワークの期待と効果として、ライフス. 類似業種の立地分布とほぼ同様の傾向が見て取れる。. タイルの充実、仕事効率の向上等の利点や公私切り替. その理由は、自由記述におけるクライアントは都心に. えが困難、長時間労働になりやすい等の欠点への指. 集積するため、打合せに便利な場所だからという回答. 摘がある 2)。しかし、様々な点でテレワークと異なる. のためだと考えられる。一方、自宅兼事務所で活動し. SOHO において同様であるか定かではない。. ている SOHO の都心への立地は 3.1%と極端に少ないが、. そこで、アンケート調査の結果とすでに指摘されて. 都心を除く福岡市では 53.1%、市街地では 34.4%と. いるテレワークの効果や課題との比較を図 5 に示す。. なっており、高い集積を見せている。これは、自宅と. SOHO の効果では、個性が生かされ、個人の自律性が高. いう性質上、都心への集積が少ないと考えられる。. まると感じる事業主が多いが、テレワークより心にゆ. 立地分類と立地選択要因との関係を表 7 に示す。都. とりを持てる事業主は少ない。一方、SOHO の課題は、. 58.6% 52.8%. 通勤に関する 肉体的・精神的負担が少ない. 44.9% 45.3%. 仕事の生産性・効率性が 向上する ストレスがなくなり、 心のゆとりが持てる. 自宅で勤務する際、 家族が話しかけたり、 家事を頼んでくる. 28.9% 24.5%. 23.8%. 個性が生かされ、 個人の自律性が高まる. 孤独感や疎外感を感じる. 10%. 20%. 11.0%. 26.4%. 仕事の成果を出す責任を 10.4% 重荷に感じるようになっている 18.9%. 18.2% 15.1% 14.9% 顧客サービスが向上する 13.2% 地域活動やボランティア活動の 7.7% 時間が持てる 7.5% 家事・家庭生活に対する 興味や関心が高ま る. 0%. 17.3% 22.6%. 14.6% 情報セキュリティ対策が難しい 11.3%. 41.5%. 20.2% 15.1%. 居住場所の選択肢が広がる. 23.2% 32.1%. 健康管理が難しい. 25.9% 18.9%. タイムマネジメント(時間管理) に対する意識が高まる. 23.2% 17.0%. 生活雑音が仕事の邪魔になる. 34.2% 37.7%. 家族との コミュニケーションがとり やすい 趣味や自己啓発など、 自分の時間が持てる. 77.4%. 38.7% 41.5%. 長時間労働になりやすい. 42.9%. 26.4%. 49.1%. 仕事と仕事以外の 時間の切り分けが難しい. スキルアップや能力開発が 難しい. 40%. 50%. 60%. 0%. SOHO. テレワーク. 28.3%. 2.1% 15.1%. その他 30%. 9.8%. 10%. 20%. 30%. 図 5 テレワークと SOHO の効果(左)と課題(右)(複数回答) 5-. 40%. 50%. 60%. 70%. 80%. 出典:参考文献 3)(テレワークの効果と課題).

(4) 77.4%の事業主が仕事とプライベートの切り替えが困. な仕事を行うために SOHO を選択しており、その他の. 難であると回答している。また、スキルアップが難し. 利点は付加価値として存在していた。. く、孤独感や疎外感を感じる人が多い。. 5. まとめ. 効果と課題共に大きな違いが存在する理由として、. 本研究では、SOHO の立地分布を分類し、特徴を明ら. 個人事業主が多く、事業の全てを個人で管理すること. かにしたと共に、アンケート調査とヒアリングを通し. による影響が大きいと推測できる。. て、SOHO の就労・生活の実態を明らかにした。. 3-5. SOHO の就労・生活に関する意識. 福岡県における中核をなす北九州市や久留米市への. 一方ライフスタイルに着目すると、充実していると. 立地は少なく、福岡市に集積する。そして、福岡市内. いう回答が 63.5% であり、充実していない、どちらと. では天神や博多周辺の都心以外の地域に立地する傾向. も言えないという回答がそれぞれ 13.5%、23.1%と. がある。それは、都心へのアクセスやクライアントと. なっている。充実していると回答した事業主が多い理. の関係が事業を行う上で重要であり、都心を最適な地. 由は、自由記述を参照すると、大きく二つに分類でき. 域と考える事業主が多くなっている一方で、既所有や. る。一つはテレワーク白書に示されている効果と同様. 事務所が自宅であるという理由や賃貸料、利便性とい. である、ワーク・ライフ・バランスの向上が挙げられ. うその他の要因を考慮するためである。つまり、場所. る。もう一つは仕事に対する責任や充実を感じている. に捉われないと言われているが、立地的制約を受けて. ことであり、テレワーク白書に見られない効果である。. いる実態が明らかとなった。. すなわち、後者は SOHO 独自の効果であると言える。. SOHO は個人事業主が多く、自宅での活動が多い。そ. 4. ヒアリングによる就労・生活の実態. して、全てを自身で管理するため、自律性を高めるこ. 9 人の事業主に電話によるヒアリングを行った。調. とや自由に時間を調整できる利点を持つ。そして、自. 査内容は、SOHO という就労形態による変化をテーマと. 由に時間を調整し、個々に合わせて時間を使うため、. し、家族や人とのつながりの変化、事業主自身の変化、. 公私の境界があいまいとなる。それに起因し、家族や. 仕事に関する変化の 3 点に関する調査を実施した。. 人との関係が変化し、充実した生活へとつながる一方. ヒアリングにより様々な回答が得られた。「仕事の. で、精神的な自律ができない場合、公私を適切に切り. 時間を調整して、平日の昼間に妻とランチに行くこと. 替えることができず、常に仕事であるという意識を持. もある」、「妻の休日に合わせて休みを取り、家族で映. ち、心が休まらないという欠点へとつながる。. 画を見に行くなどの家族サービスができる」という回. 一般的に、時間や場所に捉われない新たな就労形態. 答は、一日単位での時間調整や週単位で調整し、自由. と言われ、良い面ばかり強調されている SOHO であるが、. に時間を活用することによる変化を示す。また、 「様々. 本研究において、時間に捉われず働くことが可能な点. なことに参加していく必要がある。私の場合は、SOHO. に伴うデメリットが存在すると共に、クライアントと. グループや NPO 団体として活動を行っている」という. の関係が活動拠点を制限する形になっているという悪. 事業主もおり、SOHO 同士のつながりやコミュニティへ. い面を含めた実態を明らかにすることができた。. の参加などの自主的な活動を通して、ネットワークを. 注 1)テレワークはテレワーク白書 2008 において「IT を活用した場所や 時間を自由に使った柔軟な働き方」と定義されている。 注 2)本研究において、SOHO は福岡県における定義である「自宅または自 宅近在の事務所等において、パソコン等の情報通信機器を活用し、事業を 営む個人または小規模法人」という定義を用いる。 注 3)事業所・企業統計調査は平成 18 年事業所・企業統計調査における 全事業所数及び男女別従業者数-都道府県,市区町村を用いた。 注 4)電子電話帳は電子電話帳 2009Ver.14 を用いた。 注 5)本研究において、都心を那の津通り、国道 3 号、百年橋通り、大正 通りに囲まれる地区と定義する。 注 6)本研究において、市街地は福岡市を除く人口集中地区として定義し ている。. 形成するという人付き合いの変化を示している。 一方では、「土日とか、平日休日の境界線がなくな る」、「自由度が高い分メリハリをつけにくく、常に追 われているような気がする」という回答もあり、常に 「仕事」という意識を持つことになり、心休まる時間 がなくなっている事業主もいた。このように変化した. 参考文献. ことによるデメリットを乗り越えるための精神面での 自律ということが重要と指摘する事業主もいた。 こうした変化は、 「仕事がプライベートにつながり、 プライベートが仕事につながることもある」という回 答や時間を自由に調整できることにより、公私の境界 があいまいになる。それに起因し、利点や欠点に通じ る変化を生み出している。また事業主の大半は、好き. 1)総務省 , 「平成 20 年度版情報通信白書」, 2009, http://www.soumu. go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h20/pdf/20honpen.pdf(2010 年 1 月 20 日確認) 2)社団法人日本テレワーク協会 ,「テレワーク白書 2008」, 2008 3)国土交通省 , 「平成 17 年度テレワーク実態調査」, 2006, http:// www.mlit.go.jp/crd/daisei/telework/17telework_jittaichosa1.pdf (2010 年 1 月 20 日確認) 4)木下巌 , 比嘉邦彦 , 「企業 BPR 戦略としてのテレワークに関する一考 察 - 日本企業の例 -」, 日本テレワーク学会誌 , Vol.6 No.1, pp33.pp.45, 2008 5)福岡 SOHO サポートセンター ,「SOHO 実態調査報告書」, 2008 6)柴田郁夫 ,「SOHO はどこにいるのか? - 地域別 SOHO 分布把握の試み -」, 日本テレワーク学会誌 , Vol.4 No.1, pp.35-pp.41, 2005. 5-.

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参照

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