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残像法を用いた日常空間における視覚的距離知覚 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)残像法を用いた日常空間における視覚的距離知覚 キーワード:距離知覚,残像法,異方性,現実(日常)空間,仮想空間 行動システム専攻 今村. 真理子. 結果と比較することによって妥当性を調べることができる.. 1.は じ め に 人間の知覚空間は,ユークリッド空間である物理空間とは 異なり,非ユークリッド空間であるとされる.そのため,実 際の物理量と知覚量との間にはズレが生じる.空間特性の1. 3.実 験 1 日常空間における正面方向において残像法とマグニチュー. つである“距離”についても同様のことが言える.本研究は,. ド推定(ME)法を用いて知覚距離を測定し,測定値の確度. 視覚的手がかりの豊富な日常空間において 「残像法」 を用い,. と精度を2つの方法間で比較することにより残像法の妥当性. 異なる方向について視覚的距離知覚を調べる.. を調べた.. 本研究の目標は以下の3つである.1)知覚距離の測定法. 方法 19 名(男性 9 名,女性 10 名). としての「残像法」の理論的,実験的基礎を確立すること, 2)距離知覚の異方性を検討すること,3)現実空間と仮想. 刺激の残像は視角1°の円形であった.ストロボ. 空間における距離知覚を比較することである.これらの目標. (National NE-5651)の発光面を直径3.49 cm の円が切り抜か. を達成するために,4つの実験を行なった.実験1では残像. れた黒紙で覆い,2m の観察距離で被験者の眼に照射した.. 法の妥当性をマグニチュード推定法と比較することにより検. 被験者はストロボの発光面上にある円の中央(凝視点)を注. 討した.実験2では0.5∼2.5m,実験3では3∼10m の知覚距. 視するように教示された.. 離およびその異方性を残像法により検討した.実験4では没. 残像の知覚された大きさと知覚距離を8つの異なる. 入型仮想空間提示装置(CAVE)を用いて,仮想空間における. 観察距離(1, 3, 5.73, 8.59, 11.46, 13.75, 18.33, 22.91 m)で測定し. 知覚距離およびその異方性を残像法とマグニチュード推定法. た.実験は十分に明るい廊下(26.83×2.06 m)で行ない,そ. により検討した.. の一方の端の壁に残像を投影した.残像の知覚された大きさ は再生法で測定した.被験者は残像の見かけの直径を両手の 人差し指間の距離で再生し,実験者はその距離を測定した.. 2.残 像 法 残像法とは「エンメルトの法則」に基づき,残像の知覚さ れた大きさから知覚距離を推定する方法である. エンメルトの法則によれば,残像の知覚された大きさ(s). 一方,知覚距離をME 法でも測定した.被験者は1m の棒を 1として,目から投影面までの距離を数値で判断した.知覚 された大きさと知覚距離はそれぞれの観察距離条件で3回ず. は残像の投影面までの知覚距離(d)に比例する.残像の視角. つ測定した.. 的大きさ(網膜像の大きさ)をθとすると,この関係を次式. 結果と考察(実験1) 残像法による知覚距離(各被験者について知覚された大き. で表すことができる.. s = d ⋅ tan θ. ‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1). (1)式を知覚距離d について解くと次のようになる.. d =. s tan θ. ‥‥‥‥‥‥‥‥‥(2). さの3試行の平均値から算出)とME 法による知覚距離の3 試行の平均値を分析の単位とし,2要因分散分析(2測定方 法×8観察距離)を行なった.その結果,観察距離の主効果 が統計的に有意であり[F(7,126)= 251.934, p<.001] ,測定方法. (2)式は,残像の知覚された大きさs とその視角的大きさθか. の主効果[F(1,18)=0.324, n.s.]と交互作用[F(7,126)= 1.443, n.s.]. ら知覚距離 d が決まることを意味する.残像の視角的大きさ. は統計的に有意ではなかった.残像法とME 法による知覚距. は常に一定なので,残像の知覚された大きさ s を測定すれば. 離の平均値を観察距離の関数としてそれぞれ図1に示す.ま. 知覚距離d を推定することができる.. た95%信頼区間を算出した結果,残像法による知覚距離は観. 以上の考えに基づき,残像法では各観察距離で知覚された. 察距離3m で過大視,18.33, 22.91mで過小視,ME 法による. 残像の大きさを再生法等で測定し,その値を(2)式に代入して. 知覚距離は観察距離 8.59,13.75,18.33mで過小視されてい. 知覚距離を推定する.同一観察条件で他の知覚距離測定法の. た..

(2) 変動係数を指標として残像法とME 法における精度を比較. であった.知覚距離の平均値を観察方向の関数として観察距. した.その結果,5m 以上の観察距離においては残像法の方. 離別にそれぞれ図2に示す.多重比較の結果,知覚距離は観. がME 法に比べて精度が高かった.ME 法の方が近距離で精. 察距離1∼2.5mにおいて正面方向に比べ上下方向(±90°). 度が高い理由として,標準刺激の長さが距離判断に影響を与. で大きく知覚されることが明らかとなり,斜め上下方向(±. えたことが考えられる.. 45°)も観察距離が2m前後では正面方向に比べて大きく知. 以上の結果は,残像法が従来の測定法と比べて遜色ないこ とを意味し,残像法の妥当性及び信頼性が確認されたと言え る.. 覚されることが明らかとなった. 以上の結果から, 0.5∼2.5m までの比較的近距離において距 離知覚の異方性があることが明らかとなった. 3.5. PHYSICAL AFTERIMAGE. ESTIMATED DISTANCE (m). PERCEIVED DISTANCE (m). 30. ME 20. 10 N=19 0. 0. 5 10 15 20 VIEWING DISTANCE (m). 2.5 2.0 1.5. 3.0 2.5. 1.0 0.5. 2.0. (VIEWING DISTANCE). 1.5. PREDICT. 1.0 0.5 0.0. 25. N=10. -90 -45. 0. 45. 90. ORIENTATION (DEGREE) ORENTATION (DEGREE). 図1.残像法とME 法による知覚距離. 図2.比較的近距離における知覚距離 4.実 験 2 日常空間において残像法を用い, 0.5∼2.5mの比較的近距離 における距離知覚とその異方性について,観察距離と観察方 向を実験変数にして調べた.. 5.実 験 3 日常空間において残像法を用い, 3∼10mの比較的遠距離に おける距離知覚とその異方性について,観察距離と観察方向 を実験変数にして調べた.. 方法 10 名(男性 5 名,女性 5 名) 実験1と同じ装置で形成した視角1°の円形の残像 であった. 知覚距離を5つの異なる観察方向について5つの異 なる観察距離(0.5, 1.0, 1.5, 2.0, 2.5 m)で測定した.観察方向 は,直立姿勢をとった時の正面方向における水平面を 0°と して仰角をプラス(+) ,俯角をマイナス(−)とした±0°, ±45°,±90°の5 方向であった.実験は十分に明るいロの 字型の階段で行なった.残像の投影面は,階段の壁(白色) を利用した正面方向(±0°)を除き,64×64 ㎝の発砲スチ ロール製スクリーン(白色)を用いた.残像の知覚された大 きさは,被験者がノギスを使って残像の見かけの直径を再生 する以外は実験1と同じであった.知覚された大きさは各観 察方向の各観察距離で3回ずつ測定した. 結果と考察(実験2) 各被験者について残像法による知覚距離の平均値を分析の 単位とし,2要因分散分析(5観察方向×5観察距離)を行 なった. その結果, 観察方向の主効果 [F(4,36)=7.723, p<.001] , 観察距離の主効果[F(4,36)=112.325, p<.001] ,観察方向と観 察距離の交互作用[F(16,144)=2.128, p<.01]が統計的に有意. 方法 11 名(男性 6 名,女性 5 名) 実験1と同じ装置で形成した視角1°の円形の残像 であった. 知覚距離を3つの異なる観察方向(±0°,±90°) について8つの異なる観察距離(3, 4, 5, 6, 7 , 8, 9, 10 m)で測 定した.上下方向の実験は4階の建物の各階窓を含む半屋外 で行ない,正面方向の実験は屋上で行なった.残像の投影面 は,64×64 ㎝の発砲スチロール製スクリーン(白色)を用い た.残像の知覚された大きさは,被験者がスチール製のメジ ャーを使って残像の見かけの直径を再生する以外はこれまで の実験と同じであった.知覚された大きさは各観察方向の各 観察距離で3回ずつ測定した. 結果と考察(実験3) 各被験者について残像法による知覚距離の平均値を分析の 単位とし,2要因分散分析(5観察方向×5観察距離)を行 なった.その結果,観察方向の主効果が統計的に有意傾向 [F(2,20)=2.956, p<.10]で下方向と正面方向との間に傾向差 が見られた.また,観察距離の主効果[F(7,70)=113.421, p<.001]が統計的に有意,観察方向と観察距離の交互作用は.

(3) 見られなかった[F(14,140)=1.508, n.s.] .また,95%信頼区間. 報が与えられた.また,観察者の頭の動きがモニターされる. を算出した結果,全ての観察方向及び観察距離で過大視が認. ことによって仮想空間内での頭の位置変化に応じて画像も変. められた.知覚距離の平均値を観察距離の関数として観察方. 化するため,視点位置に応じた画像が常に与えられた.図5. 向別にそれぞれ図3に示す.. にCAVE 内で再現された情景を示す(本実験で用いた条件と. 正面方向の結果が,実験1と異なり過大視されているが,. は異なる) .. これは,実験1が廊下の壁を残像の投影面として被験者が各. 2つの観察条件において2つの異なる観察方向(正. 観察距離へ移動する実験であったのに対して,本実験が被験. 面方向,90°下方向)について7つの異なる観察距離(1, 2, 4,. 者は動かずに残像の投影面であるスクリーンを移動させる実. 10, 14, 20, 24 m)で ME 法と残像法により知覚距離を測定した.. 験であったためと考えられる. ここでは述べられていないが,. 観察条件は「両眼視差+(観察面のテクスチャの)大きさ変. 著者は被験者移動の場合とスクリーン移動の場合の結果を比. 化(以後,サイズ条件) 」と「サイズ条件+全ての壁にテクス. 較する実験を行なっており,その結果,スクリーン移動の場. チャ(以後,テクスチャ条件) 」の2つであった.用いたテク. 合の方が被験者移動の場合よりも統計的に有意に距離を大き. スチャはチェック模様で,一辺2m の壁を構成するようにサ. く判断することがわかっている.本実験では上方向,下方向. イズ条件の場合は観察面のみ,テクスチャ条件の場合は左右. ともスクリーン移動により投影面を提示したため,正面方向. 下の壁面と観察面の4面にテクスチャをつけた.残像の知覚. においても同様にスクリーン移動により投影面を提示した.. された大きさは,実験3と同じくスチール製のメジャーを使. 以上の結果から,3∼10mの比較的遠距離において,知覚. って再生した.ME 法による知覚距離の測定は,実験1と同. 距離は正面方向に比べて下方向が大きく知覚される傾向があ. じく,1m の棒を1として眼から投影面までの距離を数値で. ることが示唆された.. 判断した.知覚された大きさ及び知覚距離は,各観察条件に おいて各観察方向の観察距離ごとに3回ずつ測定した. また,立体眼鏡の残像法への影響および現実空間における. PERCEIVED DISTANCE (m). 20. N=11. 知覚距離を調べるため,十分に明るい廊下(31.49×2.03m). 15. にて対照実験を行なった.観察条件は立体眼鏡の装着・非装 着の2水準,観察距離は仮想空間における実験と同じ7水準. 10. (1, 2, 4, 10, 14, 20, 24 m) ,観察方向は正面方向のみであった. PREDICT DOWNWARD. 5. UPWARD FORWARD. 0. 2. 4. 6. 8. 10. 12. VIEWING DISTANCE (m). 図3.比較的遠距離における知覚距離. 6.実 験 4 仮想空間において残像法とマグニチュード推定(ME)法 を用い,1∼24m の観察距離における距離知覚とその異方性 について,観察条件,観察距離,観察方向を実験変数にして. 図4.没入型仮想空間提示装置(CAVE) (梅村・渡邊・松岡,2000). 調べた 方法 6 名(男性 5 名,女性 1 名) 実験1と同じ装置で形成した視角1°の円形の残像 であった. 本実験で利用したCAVE(図4)は,3×3m のスク リーンが前面及び左右側面に配置され,これに加えて底面の 計4画面に画像を提示することができた.観察者がシャッタ ー式立体眼鏡をかけて画面を観察することにより両眼視差情. 図5.CAVE 内で再現された情景(下方向) (梅村・渡邊・松岡,2000).

(4) 結果と考察(実験4) 立体眼鏡の影響を調べた対照実験において,各被験者につ いて条件ごとの残像法による知覚距離の測定値を分析の単位. 果は,現実空間と仮想空間における知覚距離を調べた各先行 研究の結果(梅村ら,2000;Witmer & Sadowski,1998)と一 致する.. とし,2要因分散分析(2観察条件×7観察距離)を行なっ [F(6,30)=86.827, p<.001] ,観察条件の主効果[F(1,5)=0.359, n.s.]および観察条件と観察距離の交互作用[F(6,30)=1.618, n.s.]は統計的に有意ではなかった.従って,立体眼鏡の残像 法に対する影響は無いものとし,立体眼鏡の装着・非装着条 件の知覚距離の平均を現実空間における知覚距離として,今 後の分析に用いる.. 40. ESTIMATED DISTANCE (m). た.その結果,観察距離の主効果だけが統計的に有意であり. CHECK (DW) TEXTURE (DW). SIZE (FW) SIZE (FW) SIZE (DW) SIZE (DW). 20. REAL REAL. 10. 0. 単位とし,2要因分散分析(5観察条件×7観察距離)を行 なった.その結果,観察条件の主効果 [F(4,20)=8.511, p<.001] ,. CHECK (FW) TEXTURE (FW). 30. 0. 各被験者について残像法による知覚距離の測定値を分析の. PREDICT PREDICT. N=6. 5. 10. 15. 20. 25. VIEWING DISTANCE (m). 図6.CAVE 内における残像法による知覚距離. 観察距離の主効果[F(6,30)=21.517, p<.001] ,観察条件と観察 あった.しかし,REAL 条件とテクスチャ条件間および観察 方向間に統計的に有意な差は見られなかった.残像法により 測定した知覚距離の平均値を観察距離の関数として観察条件 および観察方向別にそれぞれ図6に示す.図の中の REAL 条 件は現実空間の正面方向における結果を示す. 図6によると, 視覚的手がかりの少ないサイズ条件では知覚距離がほぼ一定 となり,この結果は特定距離傾向を示しているのかもしれな. 40. ESTIMATED DISTANCE (m). 距離の交互作用[F(24,120)=5.854, p<.001]が統計的に有意で. PREDICT PREDICT CHECK (DW) TEXTURE (DW). 30. SIZE (FW) SIZE (FW) SIZE (DW) SIZE (DW). 20. 10. 0. 0. い. ME 法による知覚距離の3 試行の平均値を分析の単位と. N=6. CHECK (FW) TEXTURE (FW). 5. 10. 15. 20. 25. VIEWING DISTANCE (m). 図7.CAVE 内におけるME 法による知覚距離. し,3要因分散分析(2観察条件×2観察方向×7観察距離) を行なった.その結果,観察条件の主効果[F(1,5)=18.917,. 7.結 論 と 展 望. p<.01] ,観察距離の主効果[F(6,30)=21.671, p<.001] ,観察条. 本研究の目標であった残像法の確立,現実空間と仮想空間. 件と観察距離の交互作用[F(6,30)=17.614, p<.001]が統計的. の距離知覚の比較については達成できたと考えた.しかし,. に有意であり,観察距離14m 以上でサイズ条件とテクスチャ. 異方性の検証については不十分であった.今後の展望として. 条件との間に差が見られた.また,観察方向の主効果は見ら. は,本研究で扱っていない10m 以上の遠距離における距離知. れず[F(1,5)=1.441, n.s.] ,観察方向と観察距離の交互作用は. 覚とその異方性を調べるとともに,知覚空間の構造に関する. 有意傾向であった[F(6,30)=2.004, p<.10] .ME 法により測定. 心理物理モデルを構築し,神経心理学や脳生理学による知覚. した知覚距離の平均値を観察距離の関数として観察条件およ. 空間の構造モデルと比較・統合することによって,ヒトの知. び観察方向別にそれぞれ図7に示した.残像法の場合と同様. 覚空間構造をより精緻に表現するモデルを完成させることを. に,サイズ条件では知覚距離がほぼ一定となり,特定距離傾. 目指したい.. 向を示しているのかもしれない.テクスチャ条件は観察距離 の増大とともに増加しているが, 理論値より過小視している.. 8.引 用 文 献. 仮想空間において正面方向と下方向の知覚距離の間に統計. 梅村浩之・渡邊 洋・松岡克典 2000 没入型仮想空間呈示. 的に有意な差は見られず,仮想空間における異方性は明らか. 装置内における効果的な高所呈示法の検討 電子情報通信. とはならなかった.また,現実空間と仮想空間における知覚. 学会技術研究報告, 100, 19-24.. 距離の間にも統計的に有意な差は見られず,現実空間と仮想. Witmer, B. G. & Sadowski, W. J. Jr. 1998 Nonvisually guided. 空間の差は明らかとはならなかった.しかし,現実空間に比. locomotion to a previously viewed target in real and virtual. べて仮想空間のばらつきは非常に大きい(図6参照) .この結. environments. Human Factors, 40, 478-488..

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