翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一 凡 例 一、 京 都 女 子 大 学 図 書 館 蔵『 かな がき 萬 葉 集』 を 可 能 な 限 り 原 本 に 忠 実 に翻刻した。 一、翻刻に当たっては、次のような方法を採った。 1、一行の字詰、字の高さ、字の大小は概ね原本に従った。 2、漢字・仮名の区別をはじめ、宛字、仮名遣い、送り仮名、振 仮名などは、すべてもとの通りとした。ただし、漢字・仮名の 区別にあたり、本文が漢字原文か仮名書きか判断しかねる場合 (例、二番歌「天乃香具山」の「乃」 )、後考に備え、漢字で示 した。 3、原本の誤字、脱字、衍字などはそのまま翻刻した。 4、漢字の字体は概ね校本万葉集の異体字表に準拠しつつ、原本 の一々の場合に近い正字体または常用漢字字体にし、二、三原 本の字体のままにした。 5、 仮名字体は現行の仮名字体とし、 ・ ˥はシテ ・ コトと改めた。 6、虫損、汚損などにより判読不能な場合は、□を以て示した。 その際、原字の一部が見え、概ね判読可能な場合は、□右傍ら に( )括弧を設け、その文字を(ヵ)と注記した。 7、補入記号のある補入、 あるいは見せ消ちによる文字の抹消は、 概ね原本通りの体裁で示した。 8、 消 し た 文 字 は( ) 括 弧 で 囲 み、 そ の 文 字 を( て示した。重ね書きによる訂正は、最後の文字をゴチック体で 示し、原字は最後にまとめて列記した。 9、傍線、濁音符の朱書は頭に(朱)と注記した。 10、濁音符は概ね原本通りに記載した。 11、丁数は各表裏の区切りに」印を施し、その右に丁数を意味す る数字と、オ(表) ・ウ(裏)の略号を以て示した。 一、翻刻本文は、江富範子・小池麻美「翻刻 京都女子大学図書館 蔵 『 かな がき 萬 葉 集』 ㈠」 〜「同 ㈣」 (『女 子 大 国 文』 百二十二号)をもとにし、今回、京都女子大学学術情報リポジト リとして公開するに当り、原本の再調査を行い、江富範子が作成 した。校正に当たり、柴田清子氏の助力を得た。 一、最後に、貴重書の翻刻掲載を御許可くださった京都女子大学図 書館及び閲覧・調査に際して種々御高配を賜った関係者各位に対 し、深甚なる謝意を表する。
翻刻
京都女子大学図書館蔵『
かな がき萬葉集』
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二 萬葉集巻第一 泊 ハツ 瀬 セ 朝 アサ 倉 クラ 宮御宇天皇代 太 オホ 泊 ハツ 瀬 セ 稚 ワカ 武 タケ 天皇 天皇御製歌 一 籠もよみ籠もちふくしもよみ ふくしもち 此岳に菜採す こ 兒 家きか 名つけさね虚見津 山路の國は 押なへて吾こそ居し 告なへて 吾こそをらし我こそは 背には告め 家をも名をも 高市 岡 ヲカモトノ 本宮 御宇天皇代 息 ヲキ 長 ナカ 足 タラ 日 シヒ 廣 ヒロ 額 ヌカ 天 ノ 皇 天皇登 二 香具 山 ニ 一 望 レ 國 ヲ 之 時 ノ 御製歌 」 舒明 1オ 二 山常庭 村山ありと 取 トリ よ ろ 呂 ふ 天乃香具山 のほり 立 チ 國見をすれは 國原は 煙立たつ 海原は かまめたちたつ 怜 ヲモシロキ 國そ 蜻 アキツ 嶋やまとの國は 天皇 遊 カリシタマフ 獵 二 内 野 ニ 一之時中皇命使 下二 間 ハシフトノムラシ 人 老 オキナヲタテマツラ 一 献 上 歌 三 八隅知之 我大王乃 朝 アシタニハ 庭 取撫たまひ 夕には い 伊 よ 縁 り 立 タテリ し 舒明 ヨセ 御 トラシ (消 ・ ノ) 執乃 梓弓乃 なか 弭 ハス の 音 ヲト すなり 朝 アサ 獵 カリ に 今 立 タ すらし 暮 ユフ 獵に今たゝすらし 御執の梓の弓のなか 弭 ハス の 音 ヲト す也 四 玉剋春内の大野に 馬 ムマ 數 ナメテ 而朝ふま すらん其草 深 フケ 野 幸讃岐國安益 郡 ニ 之時 軍 ( 王 将軍也 見 テ レ 山 ヲ 作歌 五 霞 —立 ツ 長 キ 春日の 晩 クレ にける わ 和 つ 豆 肝 キモ しらす 村 肝 キモ 乃 ノ 心を 痛 イタ み 奴 ヌ 要 エ 子 コ 鳥 トリ 卜 ウラ な 歎 きをれは 珠たすき 懸 カケ のよろしく 」 反歌 同御宇 ヌエトリ ノ フレ 2オ 遠つ神 吾大王乃 行 ミユキスル能 幸の ゝ ヤマコシカセ一点 山 ヤマ 越 コシ の風の 獨 座 ヲル 吾衣手に 朝夕に 還 カヘラ ひぬれは 大 マス 夫 ラヲ と おもへるわれも 草枕 客 タヒ にしあれは おもひやる たつきを 白 シラニ 土 網の浦の 海 アマ 處 ヲトメ 女らか やく塩のおもひそやくる 吾 ワカ 下 シタ 情 ヲモヒ 六 山 越 コシ の風を時しみぬる夜 不 ヲチス 落 家にある 妹 イマ をかけてしのひつ ノ 反歌
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 五 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 四 右検日本紀無幸於讃岐國 一亦 軍王未詳也但山上憶良 大 マウチキミ 夫 類聚 歌林曰記曰 天皇十一年己亥冬十二 月己巳朔壬 午 午 幸 イテマス 二于伊 豫 ノユノ 温 湯 宮 ミヤコニ 一 一書曰是 時 ニ 宮 ノ 前 ニ 在 リ 二樹木 一此之 二 ノ 樹 ニ 斑 イカ 鳩 ルカ 比 ヒ 米 メ 二 ノ 鳥 大 ク 集 ル 時 ニ 勑 シテ 多 ク 挂 カケテ 二稲 穂 ヲ 一而養之乃作歌 云 若 疑 クハ 従此便幸 欤 中大兄 近江宮御 宇天皇 三 山歌一首 一三 高 タカ 山は 雲 ウ 根 ネ 火 ヒ をゝしと 耳梨と 相あらそひき 」 三山者 畝火 香具 耳梨 カク 3オ 神代より か 如 此 ゝる にあらし いにしへも 然 シカ にありこそ 虚蟬も 嬬 ヲト 乎 メヲ あひて かくら思ひき 反歌 一四 高山と耳梨山とあひし時 立て見に来しいなひ國はら 一五 渡津海乃豊旗雲にいりひねし 今夜の月夜 清 スミ 明 アカク こそ 近江大津宮御宇天皇代 天皇 詔内大臣藤原朝臣 競 アラソヒヲモシロカル 憐 春 ノ 山 ノ 万花之艶 秋 ノ 山 ノ 千葉之 彩 ヲ 一時 ニ 額田王以 レ歌判之歌 一六 冬木成 春去来れは なかさりし 鳥も来鳴ぬ さかさりし 花もさけれと 山を茂み 入てもとらす 草深み とりてもみえす 秋山乃 木の葉を見ては 黄葉をは 取てそしのふ 青きをは 置てそなけく 」 4オ そこしうらみし秋山そ 吾 ワレ は 額田王下近 江 ノ 國 ニ 一時 ニ 作歌井戸 王即和歌 一七 味酒の 三輪乃山 青丹𠮷 ならの山の 山 ヤマノナニ 際 いかくるまて 道の隈 いつもるまてに 委 クハ 曲 シク も 見つゝゆかんを 數 シハ 〳〵も 見 ミ —放 サケム むやまを 情 コ な ロ く雲の 隠 カク 障 サフ へしや 反歌 ヤマキハニ ハナタン ナサケ
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 七 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 六 一八 三輪山を然もかくすか雲たにも 心あらなんかくさうへしや 明日香清御原天皇代 天武天皇 御製 二五 三𠮷野の 耳 ミ 我 カノ 嶺に 時 無 ナク そ 雲はふりける 間 ヒマ なくそ 雨はふりける 其雪の 時なきことく 其雨の ひまなきことく 隈 クマ も落す思つゝそ来る其山道を 過近江荒都時 人麿作 二九 玉手次 畝火の山の 」 5オ 橿( 消 ・ 橿 カシ )原の ひしりの御世より あれましゝ 神の あ し ら る は せ す る 樛 トカノ 木 の い 弥 や 継 ツキ —嗣 ツキ 天下 しろしめしゝを 天 ソラニミツ 満 やまとをゝきて あをによし な 平 ら 山をこえ いつ方に お 御 念 ほし めしてか あま さ 離 かる 夷にはあれと 石 —走 ル 淡海の國の 楽 サ 浪乃 大津の宮に 天下 しらしめしけん マカリ あめのした しろしめしけん すめろきの 神のみことの 大宮は こゝときけと 大殿は こゝといへとも 春草の しけり生たる 霞立 春日のきれる 百礒城の大宮處見れは悲しも 反歌 三〇 楽浪しかのから﨑 雖 サキ 幸 クア 有 レト 大宮人の舩まちかねつ 三一 さゝなみのしかの大和太よとむとも 」 6オ 昔の人に又もあはめやも 幸于𠮷野宮之時 人丸 三六 やすみしゝ わか大王の きこしめす 天下に 國はしも 澤にあれとも 山 □ 川の 清き河内と 御心を 𠮷野の國の 花 散 チラフ 相 秋津の野へに 宮柱 ふとしきませは 百しきの 大宮人は 舩 並 ナメ て 旦 アサ 川渡 リ
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 九 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 八 舟 フナクラヘ 競 夕河わたり 此川の たゆる事なく 此山の いや高からし 珠水の た 激 き 瀧 のみやこは みれとあかぬかも 三七 反歌 見れとあかぬ𠮷野の川の常滑の たゆる事なく又かへりみん 三八 やすみしゝ わかおほきみの 神なから 神さひせすと 芳野川 たきつ河内に 高殿を 高 タカ 知 シリ ま 座 して 」 7オ のほり 立 チ 國見をすれは かさねたる 青 垣 カキ 山の 山神の たつる 御 ミ —調 ツキ と 春部には 花かさしもち 秋たては もみちかさせり ゆふ川の 神も大 御 ミ 食 ケ に つかへまつると 上 ツ 瀬 に鵜川を立 テ 下つ瀬に 小 サ 網 テ さしわたし 山川も よりてつかうる 神の御代鴨 反歌 三九 山川もよりてつかふる神 な 長 柄 から たきつ河内に舩出するかも 右日本紀三年正月天皇幸𠮷野宮 八月又幸 四年二月幸 五月幸 五年正月幸 四月幸 未詳知何月 従 レ駕作歌 輕皇子宿于安騎野時 人麿 四五 八隅知之吾大王の高照日の 皇 ワカミコノ 子 神長柄 神さひせすと ふとしける 京 ミヤコ を置て 隠口乃 泊瀬の山は 真木たてる 荒 アラ 山 道 ミチ を 石の根の ふ 禁 せ 樹 キ 押 オシ 靡 ナミ 」 8オ 坂 サカ 鳥 トリ 乃 朝 アサ 越 コエ 座 マシ て たまきはる 夕さりくれは 三雪ふる 阿 ア 騎 キ の大野に 旗すゝき 四 シ 能 ノ をゝしなみ 草枕 たひやとりせす むかしおもひて 短歌 四六 阿騎のゝにやとる旅人うちなひき いもねらしやもいにしへおもふに 四七 真 マ 草 クサ 苅あら野にはあれと 葉 ハ 過 スキ 去 サル 君か形見の跡よりそこし ミ
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一一 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一〇 四八 東野の 炎 ケフリ たてる所見て かへり見すれは 月 カ 西 タフ 没 キヌ 四九 日 ヒナ 雙 ラヒ し (消 ・ シ) 皇 ミコノ 子 命 ミコトノ 馬 ムマ 副 ナメ て テ 御獦 立 タ 師 シ 斯 時は く 来 る 向 藤原宮之役民作歌 作者未詳 五〇 やすみしゝ わかおほきみの 高照 日のわかみは 荒妙の 藤原かうへに 食 ヲシ 國を めしたまはんと 都 ミヤ 宮 コ には 高 カ 知らんと 神なから おもへるな へ 戸 に 」 9オ 天 アメ 地 ツチ も 縁 ヨリ て 有 アレ こそ 磐 イハ 走 ハシル あふみの國の 衣手の 田上山の 真 マ 木 キ 佐 サ 苦 ク 檜 ヒ 乃 嬬 ツマ 手 テ 乎 ヲ 物のふの 八十氏河に 玉藻 成 ナス 浮へ流るれ 其 ソ 乎 ヲ 取 ル と さわく御民も 家わすれ 身もたなしらす 鴨 自 シ 物 モノ 水に浮居て 吾 ワカツクル 作 日の御門に しらぬ國より 巨勢ちより タヲヤメノテヲ 我國は 常世にならん 啚 フミ おへる あ 神 や しき亀も 新 アタ 代 ラヨ と 泉の河に 持 モチ 越 コセ る 真木の 都 ツ 麻 マ 手 テ を 百不足 五 イ カ 十日 たにつくり 沂 ノホス すらん いそは く 久 み 見 れは 神の 隨 マ に あ 有 ら し 之 右日本紀曰朱鳥七年癸巳秋八月幸藤原 宮地八年甲午春正月幸藤原宮冬十二月 庚戌朔 乙 六日 卯 遷居藤原宮 持統天皇九年甲午十二月乙卯也 藤原宮御井歌 作者不詳 五二 やすみしゝ わかおほきみの 」 10オ 高照す日のみこのあらたへの 藤井かはらに大御門はしめ 賜 タマヒ て 埴 ハニ 安 ヤス の 堤 ツ の ミ うへに 在 アリ 立 タ し 見 ミ したまへれは 日本の 青香具山は 日 經 ノタテ 乃 大 オホ 御 キミ 門に 春の山路 しみさひたてり 畝火の 此みつ山は 日の 緯 ヌキ の 大御門に みつ山と 山さひいます 耳高の 青 アヲ 菅 スカ 山は ( 消 ・ 背 ソ 友 トモ の 大 キ 御門に) ツネ
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一三 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一二 背 ソ 友 トモ の 大 キ 御門に 宜 ヨロシ 名 ヨクシ へ 神さひたてる 名く は 細 し き よしのゝやまは 影友の 大御門より 雲居にそ 遠くありける 高 カ 知 ル や 天 アメ の御 蔭 カケ 天 マ 知や 日の御影の 水こそは ときはにあらめ 御井の 清 キヨ 水 短歌 五三 藤原の大宮つかへあれせんや 處 ヲト 女 メカ ( 消 ・ 袖) 友 ハ しきりめすかも 」 11オ 從 或本 二藤原京 一遷 二于寧楽 宮 ニ 一時歌 七九 すへらきの みことかしこみ 柔 ニキ 備 ヒ 尒 ニ 之 シ 家を ( 消 ・ えら えら) ひて こもりくの 泊瀬の川に 舟うけて 我行河の 川隈の 八十 阿 クマ 落す 万 ヨロツタヒ 段 かへりみしつゝ 玉桙の 道行くらし 青によし 楢 ナラ のみやこの さほ川に いゆきいたりて 我 ね 宿 たる 衣の上に ヤハライシ ネキ モ ソ 朝月夜 さ 清 や か 尒 に 見れは 𣑥 タヘ の穂に 夜の霜ふり 磐 イハ 床 トコ と 川の氷こりて さ 冷 ゆ る夜を やむこともなく かよひつゝ つくれる家に 千代まてに 来ますおほきみと 吾もかよはむ 反歌 八〇 青によしならの家には万代に 我もかよはむわするとおもふな 」 12オ 第二 柿本人麿從石見國別妻上来時 歌二首 并短歌 一三一 石見乃海 角 ツノ 浦 廻を 浦 無 ナミ と 人こそ見らめ 滷 カタ 無 ナミ と 滷 一乍礒 人こそ見らめ よ 能 しえやし 浦はなくとも 縦 ヨシ ゑやし 滷 一乍 礒 はなくとも 鯨 イサナ 魚 とり 海 ウナヒ 邊 をさして 和 ニキ たつの あら礒のうへに 香 カ 青 アヲ 生 ナル 玉藻奥津藻
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一五 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一四 朝 羽 ハ 振 フル 風こそよらめ 夕羽振 浪こそ来よれ 風の む 共 た 彼 カ よりかくより 玉藻 成 ナ 依 ヨリ 宿 ネ 之 シ 妹 イモ を 一云ハシキヨシ イモカタモトヲ 露霜の 置てし 来 ク れは 此道の 八十隈ことに 万 ヨロツ ─ タヒ かへりみすれと いや遠に 里は さ 放 か りぬ いや高に 山も越来ぬ 夏草の おもひしなへて しのふらむ 妹か門 将 ミ レ見 ム 」 13オ 靡 ナヒケ 此山 反歌二首 一三二 石見のや高角山の木のまより 我ふる袖をいも見つらんか 一三三 小竹の葉はみ山も 清 サヤ にみたれとも 吾はいもおもふわかれ来ぬれは 一三五 角 ツノ 障 サハ 經 フ 石見の海の 言さへく 辛 カラ の 𥔎 サキ なる いくりにそ ふかみるおふる 荒礒にそ 玉藻はおふる 玉藻なす 靡 ナヒキ 寐之 兒 コ 乎 ヲ 深海松の ふかめておもへと さぬる夜は いくはくもあらす はふつたの 別しくれは 肝 キモ 向 ムカフ 心をいたみ おもひつゝ かへりみすれと 大舟の 渡 ワタリ の山の もみちはの ちりの ま 乱 かひに いもか袖 さ 清 やにもみえす つまこもる 屋 ヤ 上の 一云 室 ムロ 上山 山の くもりより わたらふ月の おしけれと かくろひくれは 天傳 フ 入日さしぬれ ますらをと おもへる吾も しき妙の 衣の袖は 」 14オ とをりてぬれぬる 反歌二首 一三六 青駒の 足 ア 我きをはやみ雲居にそ 妹をあたりを過てきにける 一三七 秋山におつるもみちは 須 シハ 臾 ラク は なちりみたりそ妹かあたりみん 或本歌一首 并短歌 一三八 石見の海 津の浦を な 無 み 浦 無 ナミト 跡 人こそ見らめ 滷なみと 人こそ見らめ よしゑやし 浦はなくとも よしゑやし 滷はなくとも
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一七 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一六 勇 イサナ 魚 つり 海邊をさして 柔田津の 荒礒のうへに 蚊 カ 青 アヲ 生 玉藻おきつ藻 明 アケ 来 クレ は 浪こそ来よれ 夕去は 風こそ来よれ 浪のむた 彼 カ よりかくより 玉藻なす 靡 ナヒキ 我 宿 ネ し 敷妙の 妹か手もとを 露霜の 置てし来れは 此道乃 八十隈 毎 コト に よ 万 ろ つ た 般 ひ かへりみすれと 」 15オ 弥 イヤ 遠 トヲ に 里 サカリ 放来 ぬ 益 イヤ 高に 山も 超 コエ 来ぬ 早 ハ 敷 シキ 屋 ヤ 師 吾 カ つまの 兒 コ か 夏草の 思ひしなへて なけくとも 角のさと ( 消 ・ み み ん め ) なひけ 此 ノ —山 反歌 一三九 石見の海ウ ツ 打歌 タ ノ( 消 ・□) 山の木のまより 我ふる袖をいも ( 消 ・ににほひつらん) 右歌躰雖同句 相替因此重載 天皇崩時婦人作歌一首 姓氏 未詳 一五〇 空蟬師 神にたへねは はなれ居て 朝なけく君 玉あらは 手に巻もちて 衣 キヌ あらは 脱 ヌク 時もな わかこふる 君そきその夜 夢にみえつる 太后御歌一首 一五三 鯨魚取 淡海の海を 奥 放 サケ て 榜 コキ くる舩 邊に 附 ツキ て 榜来る舩 奥津かい 痛 イタク なはねそ 邊つかい いたくなはねそ 若草の嬬のおもふ鳥立 」 16オ 從山科御陵退散之時額田王作 □一首 一五五 八隅知之 わか大王の かしこみや 御 ミ 陵 ハカ まつれる 山科の 鏡の山に 夜るはも夜のつき 晝はも日の 盡 ツキ 哭 ネ にのみを なきつゝありてや 百礒城の 大宮人はゆき別れなん 天皇崩時太后御作歌一首 一五九 八隅知之 我大王の ゆふへには 召賜ふらし 明来は 問賜ふらし (歌 カ )
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一九 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 一八 神 岳 ヤマ の 山のもみちを けふもかも 問給はまし あすもかも 召賜はまし 其山を 振放見つゝ 夕されは あやにかなしみ 明くれは 浦 さ ひ 晩 クラシ あら妙の 衣の袖は乾時もなし 天王崩之後八年九月九日奉為御斎會之 夜夢裏習 賜御歌一首 古歌集中出 一六二 明日香の 清御原の宮に 天( 消 ・ (消 ・ しろしめし) 下) 下 しろしめし 八隅知之 吾大王 高照日の 王 ワカ 子 ミコ に 」 17オ 何 イカ 方 サマ に おほしめしてか 神風の 伊勢の國は 奥津藻も 靡し波に 塩氣のみ 香をれる國に 味凝 リ て あやにともしき 高照日のみこ 日並皇子尊殯宮之時 人丸 并短歌 一六七 天地の はしめし時の 久竪の 天の河原に 八百萬 千萬神の 神 集 ツトヒ 集 ツトヒ いまして 神 カムワカレ 分 わかれし時に 天照 日 ヒル 女 メノ 之 命 ミコト 天 ツ をは しろしめさむと 葦原の 水穗の國を 天地の よりあひのかきり し 知 らし行 ク 神の 命 ミコト の 天雲の 八重かきわけて 神く た 下 り いましつかへし 高照す 日の 王 ワカ —子 ミコ は 飛鳥の 淨めし宮に 神の ま 隨 に ふとしきまして 」 18オ 天 スヘ 皇 ラキ の しきます國と 天原 石 イハ 門 ト をひらき 神あかり あかりいましぬ 吾 カ 王 キミ の 皇 ミ 子 コ の 命 ミコトノ の 天下 しろしめしせは 春花の かしこからんと 望月の 満はしけんと 天下 四方の人の 大舩の おもひたのみて 天 ツ 水 あふきて待に 何 イカ 方 サマ に しろしめしてか
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二一 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二〇 ゆへもな く キ 真弓の岡に 宮はしら ふとしきまして 御あり香を 高 タカ しりまして あさことに 御言とはせす 日月の あまたに成ぬ 其故に 皇 ミコノ 子 宮人 行 ユクエ 方 しらすも 一六八 久 反歌 堅の空みることくあふきみし 皇 ミ 子 コ の御門のあれまくおしも 一六九 茜刺日はてらせともぬま玉の 夜わたる月のかくらくおしも 人麿献泊瀬部王女忍坂部王子歌 」 19オ 一首 并短歌 一九四 とふとりの あすかの河の のほり瀬に おふる玉藻は くたり瀬に なかれふれ 經 フ る 玉藻なす かよりかくより なひきあひ ( 消 し ・て) 嬬 ツマ の ノ 命 ミコト 乃 ノ 多田名附 柔 ヤハ 膚 ハタ すらを つるきたち 身にそへねゝは むは玉の 夜床も 荒 アル らん そこゆへに なくさめてける 敷 シキモ 藻 相 アフ やとゝおもひて 玉垂の 越 コス の大野の 朝露に 玉裳はひちき 夕霧に 衣はぬれて 草枕 旅ねかもする あはぬ君ゆへ 反歌一首 一九五 しきたへの袖かへし君玉垂の 越 コシノ 野 を過て又もあはんやも 右或本曰葬河嶋王子越智野之時泊瀬 部王女歌也 日本紀曰朱鳥五年九月 己巳朔丁丑淨大参王子川嶋薨 明日香王女木 殯宮之時 人麿作 一九六 飛鳥のあすかの河の上瀬に 石 イハ 橋わたし 」 20オ くたり瀬に 打橋わたし 石橋に 生なひかせる 玉藻もそ た 絶 ゆれはおふる 打橋に おふるを す 為 れる 川藻もそ かるれははゆる 何しかも わかおほきみの 立たれは 玉藻のことく ころ ふ 臥 せは 川藻のことく なひきあひし 宜しき君か 朝 アサ 宮を わすれたまふ ( 消 ・ や と) 夕宮を そむきたまふや
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二三 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二二 うつそみと おもひし時に 春部には 花折かさし 秋たては もみち葉かさし 敷妙の 袖たつさはり 鏡なす 見れともあかす 三 モ 五 チ 月の いやめつらしみ おもほえし 君と時〳〵 幸 ミユキ して あそひたまひし 御 ミ 食 ケ むかふ 木 コ カメノ 宮を 常 トコ 宮と 定めたまひて 味 アチ 澤 サ 相 ハフ 目 マ 辞 コト も絶ぬ 」 21オ しかあれ ( 消 か ・と) も あ 綾 やに 憐 カナシ み 宿 ヌ 兄 エ 鳥の 片 —恋 の しつゝ 嬬 ツマ 朝 鳥 霧イ か 徃 よ ひ 来 し君か 夏草の おもひしなへて 夕 星 ツ の かゆきかくゆき 大舩の たゆたふみれは 遣 オモ 悶 ヒヤ る 情もあらす 其故の すへを知るしや 音 ヲト のみも 名のみもたえす 天地の いやとを長久 おもひゆかん 御 ミ 名に懸 世 セ る 明日香川 万代まてに は 早 布 しき や 屋 し 師 わかおほきみの 形見かこゝは 短歌二首 一九七 あすか川しからみわたしせかませは なかるゝ水ものとにかあらまし 一九八 あすか川あすたにみんとおもへとも わかおほきみの御名わすれせぬ 高市皇子尊城上殯宮之時 柿 本朝臣人丸 一九九 かけまくもゆゝしけれともいはまくも あやにかしこきあすかの 真 マ 神 カミノ 原に 」 22オ 久堅の 天つ御門を かしこくも 定たまひて 神さふと 磐 隠 カクレ ます 八隅しゝ わかおほきみの きかしみし そともの國の 真木たてる 不破山越て 狛錦 わさみか原の 行 カリ 宮に や 安 す も 母 り 理 ま し 座 て 天の下 治たまひて 食國を 定たまふと とりかなく あつまの國の
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二五 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二四 御 ミ 軍 イクサ を めしたまひつゝ ちはやふる 人 カミ を 和 ナコシ 為と 不 マツロハス 奉仕 國をゝさむと 皇 ワカ 子 ミコ は 隨 マ 任 ニ たまへは 大 オホ 御 ミ 身 ミ に 大刀とりはかし 大御手に 弓とりもたし 御軍士を あともひ賜 ヒ 齊 ト る ノフ 鼓の音は 雷の 音ときくまて 吹 フキ 響 ナセ る 小 ヲ 角 ツノ の 笛ノ音ハ 音も 敵 アタ 見 ミ 有 タル 虎か ほ 吼 ゆると 」 23オ 諸人の お きゝまとふ ほゆ るまてに さしあくる 旗のなひきは 冬木なり 春去くれは 野へことに 著 ツキ て あ 春野やくィ る火 の 風の 共 ムタ なひくかことく 取 持 モ たる 弓 ユ はすの 驟 ウコ キ 三雪ふる 冬の林に 飃 アラ シ かも 伊 巻 マキ わたると おもふまて 聞かかしこく 引放 箭のしけゝく 大雪の 乱て来 タ れ 不 マツロハス 奉仕 立むかふしも 露霜の けなはけぬへく ゆく鳥の あらそふはしに 渡會の いつきのみや ゆ 従 神風に いふきまとはし 天雲を 日の目もみせす 常やみに おほひ給ひて 定 シツメ なし 水穂の國を 神の 隨 マ に ふとしきまして 八隅しゝ 吾大王の 天下 申給へは 」 24オ 万代に 然 シカ しもあらんと 木 —綿花の さかゆる時に わかきみの 皇 ミコノ 子 御門を 神 カン 宮に 装 カサリ 束 まつりて 遣 使 タテマウス 御門の人も 白妙の 麻の衣 著 キ 埴 ハニ やすの 御門の原に あかねさす 日のつくるまて 鹿 シ 自 シ 物 モノ いはひふせつゝ 烏玉の ゆふへになれは 大殿を ふりさけみつゝ
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二七 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二六 鶉 成 □ス いはひ 廻 モトヲ リ さ 侍 もらへと さもらひえねは 春 ウク 鳥 ヒス の さまよひぬれは なけきしも いまたすきねはに おもすも いまたつきねは 言 コト うへく 百済の原に 神 葬 ハフリ は 葬 リ いまして 朝もよひ 木のうへの宮を 常宮と 高 タカ し ま 奉 つりて 神の 隨 マ に しつまりましぬ しかれとも 吾大王の 」 (ナヵ) 25オ 万代と きこしめしおほえつゝ 作 ツクラ しゝ かく山宮の 万代に 過 ン とおもへや 天のこ ( 消 ・ と とく) ふりさけみつゝ 玉たすき 懸てしのはん かしこけれとも 短歌二首 二〇〇 久かたの雨にしらるゝ君ゆへに 日月もしらす恋わたるかも 二〇一 はにやすの池の堤の隠沼の 行方をしらす舎人はまとふ 二〇二 哭 ナキ 澤 サハノ 神 モ —社 リ ニ 三輪すゑいのれとも わかおほきみは高日しら □ (れヵ) ぬ 右一首類聚歌林曰檜 ノ 隈 ノ 女王怨泣澤 ノ 神 社 ニ 一之歌也 弓削王子薨時置始東人作歌 并短歌 二〇四 やすみしゝわかおほ君高てらす日の 王 ワカミコハ 子 久方の 天 アメノミヤ 宮 に 神 ノ 隨 マニ 神といませし それをしも 文 アヤニ かしこみ 晝 ヒルハモ 日 ノ 盡 ツキ 夜 ル はも 夜 ノ 之 盡 ツキ 臥 フシ 居 ヰ なけゝと あきたらぬかも 二〇五 王 オホキミハ は神 ニモ 座 マセハ 天雲の五百重 ノ 下 ニ 隠 レ 賜 ヒ ぬ 二〇六 神 サ 楽波のしかさゝれ浪しく〳〵に常 ニト 君 カ おもへりける 柿本人麿妻死之後泣血哀慟作 二〇七 あ 天 ま 飛や 輕 カル の路には わきも兒か 里におもへれは ねもころに 見んとはすれと やます い 行 かは 人目をおほみ 」 又 26オ ま 根 ネ 久ゆかは 人しりぬへみ さねかつら 後もあはんと 大舩乃 思たのみて 玉 カケ 蜻 ロウ の 磐垣渕の かくれのみ 恋つゝあるに わたる日の くれ行かこと てる月の 雲かくること 奥津藻乃 なひきしいもは 黄葉はの 過て い 伊 去 ゆく と 玉桙の 使 ツカヒ のいへは 梓弓 聲 ヲト ニ きかれて いはんすへせんすへ しら (消・す) に声のみを 聞てしありえねは わかこふる 千重のひと へ 隔 も おもひやる 心もあれはと わきもこか やます出見し 輕の市に わかたちきけは 玉たすき うねひの山に なく鳥の 聲もきかれす 玉杵の 道行人も ひとりたに 似てしいはねは すへをなみ いもか名よひて 袖そふりつる
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二九 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 二八 短歌二首 二〇八 秋山のもみちをしけみ迷ぬる妹をもとめん山ちしらすも 二〇九 もみちはのちり行なへに玉 梓 ツサ のつかひをみれはあふ日おもほゆ 二一〇 打蟬と おもひし時に 取もちて わかふたりみし はしりての 堤にたてる 槻木の こ 己 ち 知 〳 慕 〵 智 の 枝 エ に 春の葉の しけきかことく おもへりし いもにはあれと たのめりし 兒らにはあれと 世間を そむきしえねは 蜻 カケ 火 ロフ の 燎 モユ る荒野に 」 コ 27オ 白妙の 天 アマ 領 ヒ —巾 レ こもり 鳥 自 シ 物 朝たちいまし 入日なす かくれにしかは わきもこか 形見にをける 若 みとり 兒の こひなくことに 取あたふ 物のなけれは 鳥 穂 ホ 自 シ 物 モノ 腋はさみもち わきも子と 二人わかねし 枕付 つま屋のうちに 晝はも 浦 不 フ 楽 レ 晩 クラシ し 夜はも 氣衝あかし なけゝとも せむすへしらに 恋れとも あふよしをなみ おほとりの 羽かへの山に わかこふる いもはいますと 人はいへは 石 イハ 根 ネ さくみを 名 ナ 積 ツミ こし よ 𠮷 け く 雲 もそなき 打蟬と おもひし妹か 珠 カケ 蜻 ロウ の ほのかにたにも 見えすおもひは 短歌二首 二一一 こそみてし秋の月夜はてらせともあひみし妹はいやとしさかる 二一二 衾 フスマ 地 チ を引手の山に妹を置て山ちをゆけは い 生 け りともなし 或本歌曰 」 地 28オ 二一三 宇 ウ 都 ツ 曽 ソ 臣 ミ 等 ト おもひし時に 携 タツサヘ 手 テ 吾 ワカ ふたりみし 出立し 百 モ 兄 エ 槻の木 こち〳〵に 枝させること おもへりし 妹にはあれと たのめりし 妹にはあれと 世中を そむきしえねは 香 カケ 切 ロウ 火の もゆるあら野に 白𣑥の 天 アマ 領 ヒ —巾 レ 隠 コモリ 鳥 トリ 自 シ 物 モノ 朝たちい行て 入日なす かくれにしかは
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三一 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三〇 わきも子か 形見にをける 緑子の 乞 コヒ 哭 ナク 別 コト に 取 トリマカス 委 物しなけれは 男 オノ し物 腋はさみもち わきも子と ふたりわかねし 枕附 嬬屋のうちに 旦 ヒル ハ 浦 ウラ 不 フ —怜 レ 晩 クラ し 夜 ヨル ハ 息 イキ つきあかし なけゝとも せんすへしらに 恋ふれとも あふよしてな 大鳥の 羽かへの山に 汝 ナカ 恋ふる 妹ましますと 」 29オ 人いへは 石根 割 サク 見て なつみこし 好 ヨケ 雲 クモ そなき うつそみと 思しいもか 灰 ハヒ れて 座 マセ は 短歌二首 二一四 去年みてし秋の月夜はわたれともあひみしいもは 二一五 衾 フス 路 マチ を 引 ヒキ 出 テ し山に妹を置て山路おもふにいけりともなし 二一六 家に来て吾屋をみれは玉床の外にむきける妹か 木 𠮷備津采女死時柿本朝臣人丸作 并短歌 二一七 秋山の したへる妹か 奈 用 ユ 竹の とをよる子等は いかさまに おもひをりてか 紲 タクナハ の 長 ナカキ —命を 露こそは 朝にをきて 夕には 消といへ 霧こそは 夕にたちて 明 アシタ には 失 ウス といへ 梓弓 音 ヲト 聞 キク 我も 髣 ホノ 髴 ニ みし事く や 悔 しきを 布𣑥の 手枕まきて 劔 ツルキタチ 刀 身にそへ 寐 ネ けん 若草の 其 嬬 ツマ の子は さ 不 ひ 怜 しみか おもひてねらん く 悔 や しみか おもひ恋らむ 時ならす 過にし子らか 」 30オ 朝露のことや 夕霧のことや 短歌二首 二一八 楽 サ 浪のしかつの 子 子 ら 等 か ゆく道の川瀬の道をみれは 二一九 天 アマ 数 カソフ 凡 ヲフシ 津の子かあひし日をおほにみしかは今そくやしき 讃岐國狭岑嶋視石中死人 人 丸作 并短歌 二二〇 玉藻よき さぬきの國は 國からか 見れともあかす 神柄か こゝたかしこき 天地の 日月とともに 満 ミチ 行かん 神の 御 ミオ 面 モト 次(消・ ツキ 来 テクル )来 中の 水 ミナト 門 ゆ 舟うけて 我こきくれは 時つ風 雲居 ニ 吹 ニ 奥みれは 跡 アトヰ 位 浪たち へをみれは 白浪とよみ いさなとる 海をかしこみ 行舟の 梶引折て をちこちの 嶋はおほかれと 名 細 クハシ 狭岑の嶋の 荒 アライソモ 礒面 に 廬 イホリ 作 て見れは 浪のをとの 茂 シケ き濱邊を しきたへの 枕になして 荒床に 自 ヨロ 伏 フス 君か 家しらは 行ても告ん 妻しらは 来ても問はましを 玉桙の 道たにしらす 欝 オホ —悒 シ く 待 マチ か
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三三 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三二 恋らむ 愛 オシキ 妻 等 ラ は 反歌 二二一 妻もあらは採てたきましさみの (消 ・ 山 山 )野上のうはき過 ニ けらしや 二二二 おきつ浪来よるあら礒をしきたへの枕と巻てなせる君かも 志貴親王薨時作 并短歌 二三〇 梓弓 手にとりもちて ますらおの 得 ト 物 モ や手狭 立 —向 ヒ 高圓山に 春 —野 焼 ヤク 野火とみるまて もゆる火を いかにと とへは 玉桙 の (朱) 道 ミチ 来 クル 人の なく 涙 (朱) ふれは 白妙の 衣 埿 ヒ 漬 ツチ て 立とまり 我にかたらく いつしかも 本 モト の名いひて 聞つれは ねのみしそなく かたらへは 心そいたき すめろきの 神の 御 オホ 子 ミコ の 御 オホ 駕 ムタ の 手 ヲ 火 ヒ の光そ 幾 コ 許 タ 照 リ 」 コサ メニ 31オ たる 短歌二首 二三一 高圓の野への秋芽子いたつらに さきか ち ち るらんみる人なしに 二三二 御笠山野へ行道はこきたくも しけくあれたるかひさにあらなくに 右歌笠朝臣金村歌集出 或本云 二三三 高圓の野への秋はきなちりそね 君かかたみにみつゝしのはん 二三四 三笠山野へゆ行道こきたくも あれにけるかも久にあらなくに 第二終 第三 長皇子遊獵路池之時人丸作 井短歌 二三九 八隅 知 シ 之 吾大王の 高 タカテラスワカ 光吾 日の 皇 ミ 子 コ の 馬 並 ナヘ て 三獵に 立 タ る わ 弱 か く 薦 さを か 獵 り ち 路 の小野に し 十六 ゝこそは いは ひ フ 拜 セラ め 鶉こそ いはひ も 廻 と ほれ し 四 ゝ 時 し し 物 いはひふせらめ 鶉なす いはひもとほり か 恐 しこみと 仕 ヘ まつりて 久堅の 天 ソラ み る ことく 」 32オ ます鏡 あふきてみれと 春草の 益 マシ めつらしき わかおほきみかも 反歌 二四〇 久堅の天ゆく月を網にさし わかおほきみは 蓋 キヌカサ にせん 二四一 皇 スメロキハ 神にしませは真木のたつ 荒 アラ 山 —中に海をなすかも 鴨君足人香具山歌 并短 歌 二五七 天 アモリ 降 付 ツク 天のかく山 霞たつ 春にいたれは 松風に 池浪たちて 又
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三五 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三四 桜花 木 コ の 晩 クレ 茂 シケ に 奥邊には 鴨 妻 メ よはひて 邊津方に 味村さわき 百礒城の 大宮人の 退 タチ いてゝ あそふ舟には 梶棹も なくて 不 サヒシ 楽 も こく人なしに 反歌二首 二五八 人 不 コカス 榜 あら雲しるし 潜 イサリ する 鴦とたかへと舩の上に住 二五九 何 イツシカモ 時 神さひけるかも香具山の 鋒 ム 椙 スキ か本に薜おふるまて 」 33オ 二六〇 天 ア 降 モリ 就 神の香具山 うちなひき 春さりくれは 桜花 木 コ ノ 暗 クレ しけみ 松風に 池浪 飈 サハキ 邊都邊 ニハ あちむら 動 サハキ 奥邊には 鴨妻よはひて 百 式 シキ の 大宮人の 去 ユキ 出て 榜来る舟は 竿梶も なくてさふしも こかんとおもへと 右今案遷 二都 ヲ 寧 楽 ニ 一 之( 消 ・ 憐 ナラヲ ) レ旧 ニ 作欤 怜 人丸献新田部皇子歌 并短歌 二六一 八隅しゝ わかおほきみの 高てらす 日のわかみこの しけます 大殿のうへに 久方の 天傅ひこし 雪しもの ゆきつゝませ とこ世なるまて 反歌 二六二 矢 ヤツリ 釣 山木立もみえすちりまかふ 雪も 驪 ハタラ にまゐくらくも 赤人望不盡山歌 并短歌 三一七 天地の わかれし時に 」 34オ 神さひて 高くかしこき 駿河なる ふしのたかねを 天原 ふりさけみれは わたる日の かけもかくろひ てる月の 光もみえす 白雲も いゆきはゝかり 時しくそ 雪はふりける 語り 告 ツキ いひ継ゆかん ふしのたかねは 反歌 三一八 田兒の浦にうち出てみれは真白にそ ふしのたかねに雪はふりける
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三七 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三六 詠不盡山歌 并短歌 三一九 なまよみの 甲斐の國には うちよする 駿河の國と こち〳〵の 國の 三 ミ 中 ナカ に いてゝある ふしのたかねは 天雲も いゆきはゝかり 飛鳥も 飛ものほらす もゆる火を 雪もてきやし ふる雪を 火もてけちつゝ い 言 ひかねて 名をもしらす 霊 アヤシタ 母 座 イマス 神かも 」 35オ 石 セ —花 ノ 海と 名つけてあるも かの山の つゝめる海そ ふし河と 人のわたりも 其山の 水のあたりそ 日本の 山との國の しつめとも います 祇 カミ かも 寳とも となる山かも するかなる ふしのたかねは みれとあかぬかも 反歌 三二〇 ふしのねにふりをく雪は六月の 十五日にけぬれは其夜ふりけり 三二一 ふしのねを高見かしこみ天雲も いゆきはゝかりたなひくものを 右一首高橋連虫麿歌 赤人至伊豫温泉作 短歌 三二二 皇 スメ 神 ロキ 祖の 神乃御言の しきます國 之 シ 盡 湯は 霜 シモ さはにあれとも 嶋山の よろしき國とこゝしき伊豫のたかねの 射 イ 狭 サ 庭の 岡にたちて 歌思 ヒ 辞 イフ 思 ヒ せし 三湯のうへの 樹 コ 村 ムラ をみれは 臣 ヲミ の木も 生 ヒ 継にけり 鳴鳥の 聲もかはらす 」 36オ とをき世 □ 神さひゆかん 行 ミユキシ 幸 處 トコロ 反歌 三二三 百しきの大宮人の 飽 ニキ 田津に 舟のりしけん年のしらなく 登神岳赤人作 并短歌 三二四 三諸山 神なひやまに 五百枝さし し 繁 ゝにおひたる とかの樹の いや継嗣に 玉かつら たゆる事なく ありつつも やますかよはん あすかの 舊 キ 京 ミヤコ 師 は 山たかみ 河とほし ろ し ( にヵ )
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三九 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 三八 春の日は 山し見 容 カホ 之 シ 秋の夜は 河 四 シ 清 サヤ けし 旦 アサ 雲 に たつは乱 レ て 夕霧に 河津は 驟 サハク く みる こ 毎 とに ねにのみなかる いにしへ思へは 反歌 三二五 あすか川河よとさらすたつ霧の おもひ 過 スク へき恋にあらなくに 角鹿津乗舩時 笠朝臣金村 并短歌 三六六 こしの海の 角 ツノカ 鹿 ノ 濱ゆ 大舟に 真梶 貫 ヌキ 下 オロシ 勇 イ —魚 サ ナ 取 トリ 海 —路 チ にいてゝ 」 37オ あへきつゝ わか 榜 コキ ゆけは ますらおの 手 タ 結 ユヒ か 浦 に 海 アマヲ 未 通 ト 女 メ 塩やく 炎 ケフリ 草枕 客にしあれは 獨して 見るしるしなみ 綿 ワタ 津 ツ 海 ミ の 手に巻したる 珠たすき かけてしのひつ 日本嶋根を 反歌 三六七 こし の 海の手結の浦をたひにして みれはともしみやまと思ひつ 登春日野 赤人 并短歌 三七二 春の日を かすかの山の 高 座 クラ の 御笠の山に 朝 さ 不 ら 離 す 雲居たなひき 容鳥の 間なく し 數 はなく 雲ゐなす 心いさよひ 其鳥の 片恋のみに 晝 ヒル ハ も日の 盡 ツキ 夜 ヨル ハモ 夜の つ 盡 き 立て居て おもひそ わ 吾 かする あはぬ こ 兒 ゆへに 反歌 三七三 たかくらの三笠の山になく鳥の やまは 継 ツカ るゝ恋もするかも 祭神歌 坂上郎女 并短歌 三七九 久堅の 天の原より 」 38オ あ 生 れ き 来 たる 神のみ こ 命 とは 奥山の 賢木のし た 枝 に 白 シラカ 香 付 ツケ 木綿取付て 斎 イハヒヘ 戸を 忌 イハヒ 穿 ホリ 居 スエ 竹 タカ 玉を 繁 シ にぬきたれ 十 シ 六 自 シ 物 モノ 膝折 ふ 伏 せて 手 は 弱 や め 女 の 押 アフ 日 ヒ とりかけ かくたにも 吾 ワレ は 折 ヲラ なむ 君にあはぬかも 反歌 三八〇 木 綿 タ 疊 手 ミ にとりもちてかくたにも われは恋なん君にあはぬかも 右歌天平五年供 二祭大伴 ノ 氏神 一 ヲ 之時作此歌 故曰 二祭 レ神歌 一
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 四一 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 四〇 登筑波岳 丹比真人國人 并短歌 三八二 ( 消 ・ 鷄 と )りかなく あ 東 つまの國に 高山は さはにあれとも あ 明 きつ神の かしこき山の と 㑪 も た 立 ちの 見 ミ 果 カホシ 石 山と 神代より 人のいひ 嗣 ツキ 國見する つくはの山を 冬木成 時 敷 シク 時と 見 不 す 見 て ゆ 徃 かは まして恋しみ 雪 消 ケ する 山道 す 尚 らを 名 ナ 積 ツキ そわか 来 ク る前 —二 ニ 反歌 」 39オ 三八三 つくはねをよそに見なからありかねて 雪けの道をなつみくるかも 羇旅歌 魚麿 三八八 わ 海 た つ 若 みは あ 霊 や 寸 しき物か あはちしま 中にたて置て 白浪を 伊与にめくらし 座 ヰ 待 マチ 月 あ 開 かしの と 門 に 従 は 者 ゆふされは 塩 し ほ を み 満 た しめ あ 明 けつれは 塩を ほ 干 さ しめ 塩 さ 左 ゐの 浪をかしこみ 淡路しま 礒かくれ居て いつしかも 此夜のあけなんと 待 ツ よりに い 寐 の ね 宿 た 勝 へねは 瀧のうへの 浅野のき ゝ 雉 す あけぬ年 立 タチサ 動 ワクラ 良 之 シ いさ 兒 コ —と 等 も あ 安 へ 倍 て 而 搒出ん にはもしつけし 反歌 三八九 嶋つたひみぬめのさきをこき ま 廻 へは やまと恋しくたつ左波になく 石田主卒時─ 丹生王 并短歌 四二〇 名 ナ 湯 ユ 竹 タケ の 十 トヲ 縁 ヨル 皇 ミ 子 コ さ 狭 に 丹 つ 頬 ら ふ 相 わかお ほ 大 き 王 みは こもりくの はつせの山に 神さひに いつきいますと 」 40オ 玉 つ 梓 さの 人そいひつる およつれか わか聞つる ま か 狂 言か 我聞つるも 天地に く 悔 やしき事の 世 —間の くやしき言は 天雲の そくへの き 極 はみ 天地の いたれるまてに 杖つきも つかすもゆきて 夕 —衢 ケ —召 ト 問 ヒ 石 イシ 卜 ウラ もちて 我やとに 御 ミ 諸 モロ をたてゝ 枕 邊 ヘ に 斎 イハ 戸 ヒヘ を す 居 ゑ
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 四三 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 四二 竹 タカ 玉を ま 無 な 間 くぬきたる ゆ 木 ふ 綿 た す 手 き 次 かひなにかけて 天 アメ にある さゝらの小野の 七 ナ 相 ミ 菅 スケ 手にとりもちて 久かたの 天の川原に 出た ( 消 ・てり) 潔 ミソキ 身 てましを 高山の 石 イハ 穂 ホ の上に いましつるかも 反歌二首 四二一 逆 サカ 言之 抂 マカ 言 コト とかも高山の いはほの上に君かふしたる 四二二 石 イソ のかみふるの山なる杉むらの 思すくへき君にあらなくに 同石田王卒之時 ⃝ 哀傷歌 山前王 」 ちて 41オ 四二三 角 ツノ 障 サハ 經 フ 石 イハ 村の道を 朝さらす よりけん人の おもひつゝ かよひけましは ほとゝきす なく五月には あやめくさ 花橘 を 玉 にぬ き かつらにせむと 九月の しくれの時は 黄葉ゝを 折かさゝむと はふ 葛 クス の いや 遠 トホ なか く 万代に たえしとおもひて かよひけん 君 を 一云君をあすよりは はあすより 一 云 ヌキ交 貫マシ ヘ 一云田 葛 クスノネ 根 の 或云に 一云大舩のおもひたのみて よそにかも見ん 右一首或云人丸作 或本反歌二首 四二四 こもりくのはつせ 越 ヲトメ 女 か手に ま 纏 ける 玉はみたれてありと (消・□) いはしやも 四二五 河風の寒きはつせをなけきつゝ 君かあるくに似る人も あ 逢 へな 過 勝 カツ 鹿 シカノ 真 マ 間 ノ 娘子墓 赤人 并 短歌 東俗語云 可 カ 豆 ツ 思 シ 賀 カ 能 ノ 麻 マ 末 能 ノ テ 胡 コ 四三一 いにしへに ありけん人の 倭 シ 父 ツ 幡 ハタ の 帯とき 替 カヘ て 廬 フセ 屋 ヤ 立 タチ 妻 問 トヒ しけ ( 消 ・り) かつしかの まゝのてこなか 奥 オキ 槨 ツキ を こゝとはきけと 」 父 ( 消 ・む) む 42オ 真木の葉や しけくあるら し む 松か根や 遠く久しき 言 コト のみも 名のみもわれは わすられかたみ 反歌 四三二 われもみつ人にもつけんかつしかの まゝのてこなか 奥 ヲキ ツキところ 四三三 かつしかのまゝの入江にうちなひき 玉藻かりけんてこなしそ思 摂 スフルツノクニノ 津國 班 田 ノ 史生 丈 ハセ 部 ヘノ 龍 タツ 麿 自 ミ 経 ワナキ 死之 時判官大 伴 ノ 宿祢 三 ミ 中 ナカ 作歌 并短歌 四四三 天雲の 向 ムカ 伏 フス 國の も 武 の 士 ゝふと いはれし人は 皇 スメ 祖 ロキ の 神の御門に
翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 四五 翻刻 京都女子大学図書館蔵『 かな がき 萬葉集』㈠ 四四 外 ト 重 ハ に 立 タチ 候 マケ 内 ウチ 重 ハ に つ 仕 か 奉 へ 玉かつら い 弥 やとをなかく お 祖 や ⃝ の 名も 継 ツキ ゆく物と 母父に 妻に子 等 トモ に かたらひて 立 タチ にし日より た 帯 ら 乳 根 ちね の 母の み 命 ことは 齋 イハヒ —忌 戸 ヘ を 前 マヘ にすへ置て 一 手 テ には 木 ユ 綿 フ とりもち 一手には 和 ヤマト 細 ホソ 布 ヌノ 奉 マツロフ 乎 ヲ ( 消 ・前にすへ置) 天地乃 神 祇 に 乞 コヒ ( 消 ・ う 禱 け) 」 間 マ 幸 サキクマセ 座 と (消 ・ ト) ねき 43オ いかならん 年の月日か 茵 ツ 花 シハナ 香 カヲレル 君か 牛 ヒク 留 ア —鳥 ミ ノ な 名 つ 津 さ 匝 ひ こ 来 ん と 与 立 チ 居 ヰ つゝ 待けん人は おほきみの みことかしこみ をしてる 難波の國に あら玉の 年ふるまてに 白 たへの 衣か は 不 か 干 す 朝夕に ありつる き みを いかさまに おもひましてか う 欝 つ蟬の おしき此世を 露霜の 置てゆきけん 時にあらすして 反歌 四四四 昨日こそ君はありしかおも(消 ・ は は)する 濱松のうへに雲とたなひく 四四五 何 イツ 時 シカ 然と待らんいもに玉 杵の 事たに告すいぬる君かも 大伴坂上郎女悲嘆尼理願死去歌 并短歌 四六〇 角 タクツノ の 新羅國 ゆ 従 人事を 𠮷ときかれて 問 ヒ 放 サ 流 クル 親 ヤカ —族 ラ 兄 ハラ —弟 カラ なき國 従 ユ わたり来まして す 大 皇 めろ きの しきます國に うち日さす 京 ミヤコ しみゝに 」 梓 ツサ 44オ 里家は さは ⃝ に あれとも いつ方に 念 オモヒ けめかも つれもなき さほの山邊に なくこ 成 ナ しのひ 来 キ まして しきたへの 家をもつくり あら玉の 年のを長く すまひつゝ いましゝ物を いける人 死 シ 去 ヌ といふ事に まぬかれぬ 物にしあれは たの め りし 人のこと〳〵 草枕 たひにある ま 間 に