第
20
号
東 京 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 ・ 経 済 学 部 地 方 公 共 団 体 金 融 機 構 寄 付 講 座 ニ ュ ー ズ レ タ ー日
時
2013
年7月2日(火)16
:00
∼18
:30
場
所
東京大学本郷キャンパス 東京大学大学院経済学研究科学術交流棟 (小島ホール)2階 小島コンファレンスルーム内
容
● 報 告 齋藤 正浩 (鶴岡市総務部財政課専門員) 三宅 隆之 (兵庫県企画県民部財政課係長) ● 討 論 齋藤 通雄 (前財務省理財局国債企画課長) 徳島 勝幸 (株式会社ニッセイ基礎研究所上席主任研究員) ● 報告者リプライ ● 質疑応答2013
年7月2日(火)、小島コンファレンスルームにおい て地方公共団体金融機構寄付講座第18
回フォーラム「住民 参加型市場公募地方債の展望」が開催され、鶴岡市財政課 専門員の齋藤正浩氏と兵庫県財政課係長の三宅隆之氏より、 それぞれの地域で行っている住民参加型市場公募地方債へ の取組みについて、その現状や成果、直面する課題、今後 の方向性などについて具体的な事例を挙げてご報告いただ きました。二人の討論者からは、個人向け国債と個人向け 社債の観点から住民参加型市場公募地方債のあり方が討論 され、報告内容を掘り下げる論点が提示されました。また、 フロアからも質問がなされ、活発な議論が展開されました。 ※当日の報告資料は寄付講座のホームページでご覧頂けます。 (URL:http://www.e.u-tokyo.ac.jp/kifu/jfm.html) 主催/東京大学大学院経済学研究科寄付講座、 地方公共団体金融機構第
18
回フォーラム
「住民参加型市場公募地方債の展望」
報告
鶴岡市総務部財政課専門員
齋藤 正浩
鶴岡市の紹介 本日は住民参加型市場公募地方債、いわゆる ミニ公募債の取組みということで、本市の事例 紹介としてご説明させていただきたいと思いま す。 資料の2ページをお開きください。鶴岡市の 概要をお話させてください。平成17
年10
月に6 市町村が合併し鶴岡市が誕生しました。位置は 秋田県の南、新潟県の北で日本海側に面したと ころにあります。山形県は地図で見ると人が横 を向いたような顔に見えますが、そちらのちょ うど鼻辺りが鶴岡市といったところでしょうか。 人口は136,000
人ほどでそれほど大きい市ではな いのですが、山形県では第2位の人口です。面 積は1,311
㎢ということで東北一の面積、市町村 では全国で第10
位という広さでございます(報 告資料p2
)。 次に3ページです。本市は歴史文化資源が 色々とありますが一例を申し上げますと、まず は出羽三山の1つである羽黒山が、フランスの ミシュラン社が発行するミシュラン・グリーン ガイド・ジャポンにて観光地として3つ星の最 高評価を頂いております。次に慶應先端研と市 先端研究産業支援センターでありますが、慶應 義塾大学の研究機関が本市にございます。バイ オの研究などを精力的に行っておりますが、本 市ではそういった研究を生かしたベンチャー企 業や地元企業との連携を図ることにより産業の 高度化を図ろうという取組みを様々に行ってお ります。その成果は早速出ており、今年5月下 旬に慶應先端研のベンチャー企業であるスパイ バー社が石油に頼らない合成クモ糸繊維という、 強度が鉄鋼の4倍、伸縮性がナイロンを上回っ て耐熱性が300
度を超えるといったクモ糸の特性 を生かした次世代の素材といわれるものを発表 し、国内のみにとどまらず世界的にも注目され ているところでございます。次は藤沢周平記念 館と映画ロケでございます。藤沢周平さんが本 市の出身者ということで平成22
年に記念館が開 館しました。映画ロケということでは藤沢周平 さんの映画ロケをはじめ、記憶に新しいところ ではアカデミー賞の外国部門映画賞を受賞した 『おくりびと』や、今秋公開予定の上戸彩さんら が出演される『おしん』の映画ロケ地というこ とでも注目を浴びているところでございます。 最後に食文化創造都市ということですが、国際 機関ユネスコの食文化部門の認定を受けようと 現在取組みを行っております。本市は昔からの 貴重な在来野菜が多く残されており、枝豆のだ だちゃ豆も本市が生産地です。近年は新しいお 米として発売中の「つや姫」も本市にある試験 場で生まれた品種で、このような地域になって おります(報告資料p3
)。 4ページをお開きください。本市の財政状況 について申し上げますと、歳入歳出規模が600
億円強の自治体ということで、財政力指数を見 ていただくと分かりますが、人口が少ない地域 ということもあり国の交付税に依存している団 体でございます。ただし近年は行財政改革にも 積極的に取り組んでおり、各種財政健全化を計 る指標も年々改善している状況にはございます。 数字から見てもお分かりの通り、大きな自治体 ではございませんので、そういったことを前 提にお聞きいただければと思います(報告資料p4
)。 住民参加型市場公募債の概要 5ページをご覧ください。住民参加型市場公 募債のクラゲドリーム債の発行概要についてです。対象事業は加茂水族館でございます。今の 建物は約
50
年経過しており老朽化が著しいとい うことと、クラゲ展示を行うには施設が手狭に なっているといったことから改築を行うことに し、総工費が約30
億円、本体工事が平成24
年・25
年度の2年、財源には合併特例債を予定して おります。合併特例債約27
億円のうち3分の1 に当たる9億円を今回のミニ公募債によって調 達するということにし、平成24
年度は3億円、 平成25
年度は来年の春に6億円を計画しており ます。 今回説明するクラゲドリーム債はこの平成24
年度の3億円分であり、発行日が4月30
日、募 集は4月18
日から、利率が国債の応募者利回り にプラス0.266
%を加算し最終的に0.536
%、5年 満期一括償還という内容になっております。購 入対象者については個人、法人、団体とし、市 内の方に限定するなどの制約は設けておりませ ん。購入単位は10
万から、10
万単位で200
万ま で、販売方法は先着順による窓口販売、取扱金 融機関は山形県の県民債で既に発行実績のある 記載の4行ということでございます。本市の指 定金融機関である荘内銀行が幹事行で、担当者 との綿密な情報交換を行い、公募債発行の準備 を進めてきました。このミニ公募債は、山形県 は既に行っておりますが県内市町村では事例が なく、初となる試みでございます。以上がクラ ゲドリーム債の大まかな内容でございます(報 告資料p5
)。 6ページは、住民参加型市場公募債の全国的 な推移のグラフを載せております。平成18
年度 をピークに発行額・発行団体数とも減少傾向に ありますが、こちらの方は先ほど司会者から詳 しくご説明がありましたので割愛させていただ きます(報告資料p6
)。 7ページは、本市が銀行等引受債の借り受け 条件と同条件の、財政融資資金貸付金利の推移 を示したグラフです。ミニ公募債のピークとさ れる平成18
年度から現在までの貸付金利の推移 を グ ラ フ 化 し た も の で、 利 率 は 平 成18
年 度 以 降、多少の増減はありますが一貫して下降線を たどっており、本市がクラゲドリーム債を発行 した今年4月には0.6
%まで下がっております。 これらに加え平成20
年秋のリーマンショック以 降、銀行は貸倒れリスクを抑制するために一般 的に企業よりも破綻懸念が小さいとされる地方 公共団体の融資を拡大することでリスクを抑え ながら融資残高を伸ばしているということも言 われており、本市も銀行等引受債の借り受け利 率は、ここ近年は同様に過去に比べ低利での借 入ができる状況にございます。このような状況 下では、全国的な傾向であろうかと思いますが、 過去と比較し低利で借入ができる借手優位の市 場になっているということが言えるかと思いま す。このように公募債の発行が減少傾向にあっ て、平成24
年度に新たにミニ公募債を発行した 団体はわずか3団体のみということでお聞きし ておりますが、ミニ公募債の目新しさが薄れた ことに加えて、銀行からの証書借入であれば、 契約書等を交わせばあとは銀行に行っていただ けるというようなことに加え、公募債の発行に は利息以外の手数料などのコストが発生する上 に、ポスターやパンフレットの制作、各種事務 手続きの手間が増えるといったこともあるので はないのかと思っております。 このような状況を踏まえた上で、なぜ手間も 掛かるうえ、銀行からの低利な資金調達が可能 な時期にあえてミニ公募債を発行するのかとい うことについてお話しさせていただきます。コ ストの低減だけが目的ということであれば場合 によってはやらない方が良いという判断もあろ うかと思いますが、なぜこのような時期に発行 するかについては税を投入して事業を行う以上、 市民の皆様にきちんと説明できる明確な考えを 持っておく必要があろうかと思います(報告資 料p7
)。 住民参加型市場公募地方債発行の意義 本市が公募債で注目しましたのは、ミニ公募 債の持つ2つの大きなメリットでございます。 住民の市政参加意識の高揚と、対象事業を特定 することで施策を広くPR
できるという2点で す。住民の市政参加意識の高揚は、建設資金に 協力することを通じて市政への参加意識を高め ていくもので、これからの地域づくりには特に 求められているものではないかと思います。その上で、ミニ公募債は対象事業を限定し明確化 することで本市ではこのような投資事業を行っ ていますということを、公募債の発行を通じ広 く
PR
できるという点です。公募債の趣旨にマッ チした対象事業を選定できればその効果はかな り大きいのではないかということを考えたわけ でございます。 本市の場合、建設後50
年が経過して老朽化の 目立つ加茂水族館という格好の事業があったわ けで、加茂水族館を対象とした公募債を発行す るということで市民に対しては地域の貴重な観 光資源である水族館を皆で支え合っていくとい うまちづくりへの市民参加の推進が図られるの ではないかという思いがございました。そして また、市民に加え全国の皆様に対しては加茂水 族館に思いを寄せる人や水族館のファンの方々 の応援を受けて建設された水族館であるという ことで、これからも積極的に応援してもらい何 度も足を運んでいただきたいという思いがござ いましたので、他団体よりは大きく市政参加意 識を捉えていると考えております。建設資金の 協力を通じ市民の自主的な市政参加と全国の皆 様に愛し親しまれる水族館になってほしいとの 思いから、本市の榎本市長から公募債の発行を 検討するよう指示があったもので、まさに市政 参加意識を高めることを期待したものでありま す。 また、政策のPR
という意味においては、クラ ゲ展示種類数でギネスの世界一に認定され活気 付く水族館を広くPR
できる貴重な機会であると 捉えるとともに、外部から再評価されることで、 全国から注目されるような水族館があるのだと いう誇りを地元の方々が持つこともできると思 います。 地方公共団体それぞれにおいて公募債を発行 する目的は当然違います。ある団体は調達コス トの低減であったり、ある団体は調達手法の多 様化であったりするわけで、本市ももちろん資 金調達の多様化という観点もありますが、特に 今の2点に重点を置いて発行の準備を進めてき たわけでございます(報告資料p8
)。 3つのK 9ページをご覧ください。本市が公募債を発 行する上で重要と感じた3つのKについてご説 明します。まず1つ目のKは共感です。例えば、 広く公共事業を行うので皆さんよろしくお願い しますと言いましてもなかなか難しく、市政参 加意識の高揚という点において手法を色々と考 えないといけないのではないのかと思います。 そのような場合ですと、他の金融商品と比較と しての魅力、いわゆるスプレッドの面などで購 買意欲をかき立てるということが一般的ではな いかと思いますが、住民が応援したい、この事 業のためなら一肌脱ぎたいと思えるような共感 できる事業をいかに選定するかが重要であろう かと思います。事実、いくら本市で努力したと しても、事業の選定の仕方によってはここまで の盛り上がりはなかったと思いますし、本日の 講演機会もなかったのではないかと思っており ます。 2つ目のKは興味で、地域にある貴重な観光 資源である水族館に興味を抱いてもらえるよう にすることです。そのためには首都圏などで広 報費などをたくさんかけてPR
するということ もあろうかと思いますが、本市ではこの公募債 の発行を貴重なPR
の機会と捉え、いかにして 市民だけでなく全国の皆様に平成26
年6月のリ ニューアルオープン予定の加茂水族館をPR
で きるかということを念頭に置いて準備を進めて まいりました。そのためには限られた予算の中 でどのようにして興味を引くことができるかと いうことが非常に重要になってきます。そして その結果、3つ目のKである活性化につながり ます。共感、興味を抱いてもらうことで加茂水 族館に1度行ってみよう、加茂水族館のある鶴 岡市を調べてみよう、鶴岡市に行くなら水族館 のすぐ近くにある湯野浜温泉やあつみ温泉にで も行ってみよう、泊まった次の日はミシュラン で3つ星の評価を得ている羽黒山にでも登って みよう、登ったらお腹が空いたので夏ならだだ ちゃ豆、冬なら寒鱈汁でも食べていこう、とな ればこれはもう本市としては本当にありがたい ことで、これ以上ない相乗効果だと思っており ます。このように公募債の発行を資金調達コストの低減などという意味合いだけでなく、地域 をいかにして活性化させていくかの一環として の使い方もあるのではないかと思っております (報告資料
p9
)。 3つのK ― 共感10
ページ目からは、3つのKについてそれぞ れ掘り下げてお話し致します。まずは1つ目の K、共感についてです。この説明に当たっては 加茂水族館のこれまでの経過を抜きにしては語 れないと思っております。加茂水族館は今から 約50
年前に現在の水族館が建設されたわけです が、平成17
年にクラゲ展示種類数世界一を達成 し、平成20
年には古賀賞という、国内の動物園・ 水族館に与えられる最高の栄誉と言われる賞を 頂いており、世界に誇れる水族館になったと自 負しております。(報告資料p10
)11
ページをご覧ください。グラフに示しまし た通り、加茂水族館は順風満帆に入館者数を増 やしてきたわけではなく、平成8年度には年間 の入館者数が10
万人を割り込むまでになってお り、一部の関係者の間では日本一必要のない水 族館だと言われるまでの状況に落ち込みました。 その後偶然に、水槽で魚と一緒に泳いでいたク ラゲが入館者の心を掴むということを発見し、 村上館長が先頭に立ってクラゲに特化した水族 館として努力し、クラゲの展示種類数でギネス 記録の認定を受けるまでになり、平成21
年度に はノーベル化学賞を受賞した下村教授もお越し いただき、昨年度には年間の入館者数が27
万人 を突破し過去最高を記録するまでに復活した水 族館でございます。このように、地域の方は加 茂水族館の苦しい時も知っており、起死回生の 中で復活した水族館のストーリー性に共感し、 自分たちの建設資金の協力によって新しい水族 館の支えになるのであればという思いを喚起す るには、ある意味とてもふさわしい施設だとい うことでございます。事実、公募債の購入に関 する電話の中には、公募債を購入できなくても 加茂水族館のために寄付をしたいといった声や、 ふるさと納税のような形で役に立ちたいという ような声もあり、まさに市政参加意識の高揚し た結果ではないかと思っております(報告資料p11
)。 3つのK ― 興味12
ページをご覧ください。2つ目のK
として 興味について説明致します。本市の場合は、公 募債の公募に関する費用は、他団体も同様だと 思いますがそんなに多くかけられるわけではご ざいませんでしたので、いかにして限られた予 算で広く興味を持っていただけるかという点に 重点を置きました。そこでまずこだわったのは この商品イメージでございます。お手元にお配 りしましたパンフレットの見開きのところを見 ていただければと思いますが、通常パンフレッ トは金融商品として公募債に関する説明や注意 事項に重点を置いたものが一般的で、経費節減 の観点からページ数も多く取ってない団体もあ ろうかと思います。本市の場合も金融商品の取 扱上、いわゆる金融商品取引法に定められてい る最低限の広告義務はきちんと載せております が、パンフレット見開きの2ページ、3ページ を見ていただくとお分かりのように加茂水族館 とはいったいどういう水族館なのか、水族館は どのようにリニューアルされるのかといった点 に重点を置いたものを制作しております。この パンフレットやポスターを作成するにあたって は、市内の各業者にポスターの制作技術をプロ ポーザル方式で提案してもらいイラスト力など を基に選定するといったことを行っており、か なり力を入れて制作業者と意見交換を行いなが ら作成した次第でございます。また、ネーミン グについてもこだわりました。資料には、丸や 二重丸といった記号を載せていますが、一般的 には「鶴岡市第1回公募公債」などでも良いの でしょうが、ネーミングも人目を引くようなも のにしようということでいろいろと考えて検討 したつもりでございます。クラゲに特化した水 族館であること、そして将来子供たちに夢を与 えられるような水族館になってほしいというこ ともあり「加茂水族館クラゲドリーム債」と いうことにしました。このネーミングによっ て、資金調達手段としての公募債の発行という よりは、夢のある加茂水族館のための公募債と いう商品イメージが強く形成されていったものと思っております。購入いただいたお客様から も、夢のある企画ですねといったことが多く聞 かれたのは、このネーミングによる効果が大き かったと思っております。資金調達手段として 全国的に定着しているミニ公募債を本市も同様 に行ったわけでございますが、公募債というよ りは水族館のために何か楽しいことをやってい るというふうに思われた方も多かったのではな いでしょうか。それを表すものとして色々と報 道されております新聞報道を見ると、「全国でも 珍しい住民参加型の公募債発行という奇手を仕 掛けた」、「クラゲ債が消化できれば、同様の資 金調達方法を模索する自治体が現れる可能性も あり、成功すれば、他自治体へ波及するのでは」 などと言ったように、ミニ公募債が新たな資金 調達手段であるかのように伝えられたのも、単 なる公募債の発行ということでなく、水族館を 前面に出した公募債の商品イメージが、新たな 取組みのように受け取られた要因になったので はないかと考えております(報告資料
p12
)。13
ページをご覧ください。ネーミングが良け ればすぐ売れるというほど甘いものではなく、 それ以外の付加価値をいかに付けて興味を引い ていくかということが売行きに大きく影響する と思います。本市の場合、2つの購入特典を付 けました。1つは、購入者には購入金額にかか わらず新水族館のプレオープン内覧会に招待す るというもので、同伴者2名まで、2名という のは年配者であれば夫婦とお孫さん、若い人で あれば夫婦にお子さんを連れて加茂水族館に来 ていただけるということを意識したものでござ います。金融機関での購入に最も寄与した事由 ということでアンケートを行いましたが、圧倒 的にその内覧会に関する問い合わせが多かった ということでございました。購入者からの声で も、内覧会に対する期待が大多数を占め、購入 前の市役所に対する問い合わせも内覧会に関す るものが多く寄せられました。一足先に直径5 メートルの世界最大級のクラゲ大水槽がある水 族館に家族で出掛けて見ることができるという 優越感のようなものが購買意欲を刺激したのか もしれません。それを裏付けるような数字もご ざいまして、購入者を購入金額別に見ると、約 半数の方が購入額50
万円までに集中し、その中 でも購入額が一番多いのが購入の最低限度額で ある10
万円で、スプレッドを含めた利率という ことも当然あろうかと思いますが、購入額にか かわらず3名まで招待される内覧会への期待の 表れが強く出ている結果ではないかと考えてお ります。この他には、抽選で50
名にクラゲドリー ムバッグというお楽しみ袋をプレゼントすると いう内容になっており、売れ行きに貢献したの は言うまでもないことではないかと思います。 資料に掲載した写真は、6月にドリームバッグ の抽選会を行いおそらく世界初となるのですが、 水槽の中にある番号付きの籠に、クラゲが入っ た籠の番号が当たりというクラゲ抽選会を行い ました。入館者や関係者からは、籠にクラゲが 入ると大きな拍手が起こり、ここでもクラゲに 大活躍していただいたということでございます (報告資料p13
)。14
ページをご覧ください。周知期間というこ とですが、通常公募債を発行するには指標金利 となる国債の動向を踏まえ、発表後1カ月程度 の期間で発売するケースが多いかと思います。 金利面などを考慮するとどうしてもそのような 形になろうかと存じますが、本市の場合は、周 知期間が唯一のポスター・パンフレットを見て いただける、いわゆるPR
期間として捉え、通常 の約2倍に当たる2カ月間を発表から発売まで の期間に費やしました。結果的にこの周知期間 を多く取ったことが、成功要因の1つになった のではないかと思います。と申しますのも、2 月19
日に市長が記者会見で発表しましたが、当 時は期待したほどの反響はまだありませんでし た。 し か し3月10
日 に 全 国 紙 で 取 上 げ ら れ た 頃から流れが大きく変わり、その後発売までの 1カ月間は多方面で取り上げられ大きな盛り上 がりを見せることになったからです。限られた 期間の中で最大限周知できたのではないかなと 思っております。 次に住所要件ですが、ミニ公募債は住民参加 型と言われることからも市内の方に限定する ケースが多いかと思います。しかし本市の場合 は、水族館の応援をしていただける方を公募債 の購入対象者として捉えました。市長も申し上げている通り、公募債の購入を通じていつまで も愛され親しまれる水族館になってほしいとい う思いがあったからにほかなりません。また、 水族館というのは当然地元の方だけの入館で成 り立つわけではなく、全国からたくさんの方が 来ていただいて初めて成功するものと思ってお ります。全国のファンに向けて
PR
し、より多 くの方から購入してもらうためには、住所要件 を市内に限定したのでは本市の一事業で終わり、 全国紙などで取り上げてはくれなかったのでは ないかと思っております。つまり、発行の目的 意義をどこに置くかによって各団体の判断が分 かれるところだとは思いますが、本市の場合市 政参加意識の高揚という意味では地域の方だけ ではなくて水族館に思いを寄せる人たちからも 広く応援してもらい、また全国に注目していた だきたくさんの観光客に来ていただきたいとい う思いがございましたので住所による制限はし なかったものでございます。 最後に情報管理ということですが、発表まで の情報管理には特に気を使いました。多くのマ スコミに取り上げていただくには、内容に新鮮 さや、強いインパクトが必要だと考えたからで す。加茂水族館の公募債が初めて報道されたの は発表の1年ほど前の地元の新聞でしたが、詳 細について報道されませんでした。この時すで に内容が分かっていれば、発表後にマスコミが 興味を持って改めて記事にすることもなかった のではないかと考えておりますので、興味を 持ってもらうために情報管理は少なからず大切 なことではないかと思っております(報告資料p14
)。 3つのK ― 活性化 最後に3つ目のKの地域活性化についてお話 しします。マスコミに多く取り上げられた中の 一つとして具体的にどういう報道をされたかに ついて、参考までに1つ映像を見ていただきた いと思います(会場内でビデオを上映)。 このような形で報道されましたが、こういっ た報道が発売開始前に集中し、発売開始後、約20
分で完売しました。インパクトが強かったの か、ヤフーのトップ記事にもなり、公募債の金 額的な換算はできないのですが、発行にかかる かかり増し以上の効果はあったのではないかと 考えております(報告資料p15
)。16
ページに記載しておりますように、公募債 発表後の入館者数として、過去最高を記録した 昨年を上回る入館者数となっており、公募債の 発行も少なからず貢献しているのではないのか と思っております(報告資料p16
)。 今後の課題 今回の発行は本市の期待以上の効果が出たた め、20
分という想定外のスピードで完売したわ けでございますが、朝から並んだにも関わらず 購入できなかった方や、店舗数に左右されて購 入できなかった方もいらっしゃるということも ありますのでそういった点を含め、今後はお求 めしやすい方法を、例えば抽選方式も含めて検 討していく必要があろうかと思います。 まとめになりますが、公募債の発行にはそれ なりの事務量もかかり、上乗せ金利、ポスター の製作など、やり方によっては、手間やコスト のかかり増しがあろうかと思いますが、一方で 公募債には市政参加意識を高める効果と施策をPR
することで注目を集め、全国から観光客が増 え、地域を結果的に活性化することができる力 もあるのだということを改めて再認識した次第 でございます。最後になりますが、今回のクラ ゲドリーム債に関する記事で、私どもの取組み が間違いではなかったのかなと感じた記事があ りましたので、それを朗読して終わりたいと思 います(報告資料p17
)。 「発行側は新たな資金調達が可能になる一方、 買い手から見れば手ごろな金額で利回りも見込 める比較的安全な商品、さらには地域の事業に 貢献できる喜びも。そんなすべてが丸く収まる ような話が実際にある。県内市町村で初めてミ ニ公募債、加茂水族館クラゲドリーム債の発 行を決めたのは鶴岡市。来年6月リニューアル オープン予定の水族館の改築事業費に充てよう と、まずは3億円を募集した結果、即日完売し た。市は『売れるか心配していたが完売してほっ とした』。市内外を対象とし、新水族館の内覧会 に招待する特典を付けたことが当たったようだ。全国から問い合わせが相次ぎ加茂水族館の人気 の高さをあらためて示した。ミニ公募債を成功 させるこつはいかに人々の心をつかむかでは。 入館者一人一人の心を癒すクラゲのように」。
兵庫県企画県民部財政課係長
三宅 隆之
兵庫県の資金調達 兵庫県財政課の三宅でございます。鶴岡市か らはミニ公募債の一番いい事例ということでご 紹介いただきました。私がお話ししますのは、 そのミニ公募債を続けていくとどのような状況 になっていくのかということです。兵庫県では 平成14
年度からミニ公募債の発行を続けており ます。平成14
年3月にミニ公募債の第1号案件 として群馬県が愛県債を出され、その第2陣に 当たります。以来11
年にわたってミニ公募債を 出し続けているわけでございますが、その中で は非常に難しい問題に直面してきており、現在 も試行錯誤の最中ということになります。本日 のお話で何か明確な結論までお示しできるのか というとそういうわけではございません。我々 がミニ公募債を続けていく中で試行錯誤をして いるその状況をお知らせするような内容になろ うかと思います。それでは本編に入らせていた だきます。 兵庫県の資金調達についてですが、兵庫県で はおおむね年間6,000
億円程度の民間資金を調達 しており、機関投資家向けの市場公募債を発行 するいわゆる公募団体でございます。結果とし て6,000
億円のうち半分の3,000
億円ほどを市場公 募債で調達し、残りの半分は銀行からの借入れ といったことで、これを基本に考えております。 フレックス枠と書いていますのは、発行形態な りを計画上は未定とし、運営していく中で決め ていくものです。ここまで含めますとだいたい3,000
億円ほど、これが市場公募債で調達してい く額となっております(報告資料p2
)。 その中で市場公募債3,000
億円を分解します と、このようになります。住民参加型市場公募 債は青色の卵型で網がかかっておりますが、兵 庫県民債と、のじぎく債という2本の住民参加 型市場公募債を兵庫県では行っております(報 告資料p3
)。 発行概況を4ページにまとめておりますが、 網のかかっている箇所が先ほどの兵庫県民債と 兵庫のじぎく債でございます。違いは発行団体 で、兵庫県民債は兵庫県民だけを対象にした兵 庫県が発行するミニ公募債であるのに対して、 兵庫のじぎく債というのは県と県下の市町で共 同発行する、そういったミニ公募債となってお ります。発行年限はいずれも5年、発行開始時 期は県民債が平成14
年から現時点で通算27
回出 しております。平均すると年に2∼3回ぐらい の回数というところです。のじぎく債は、毎年 5月に年1回ずつ発行しており、平成25
年5月 で第11
回目を迎えました。発行金額は一銘柄当 たり30
億円程度となっております。発行単位は10
万円。そして一番下のその他のところですが 県民債は購入対象者を県内在住在勤の個人・法 人に限定しております。のじぎく債の方は、共 同発行になりますので発行団体間で連帯債務を 取っているというところです(報告資料p4
)。 5ページには資金調達額の推移をグラフにま とめております。棒グラフが資金区分別の調達 額です。赤色がミニ公募債による調達、青色が 一般の市場公募債、黄色が銀行からの借入と公 的資金となっており、折れ線グラフはミニ公募 債のその年の発行総額に対する割合を示してい るグラフとなっています。ご覧の通り、発行開 始時点では調達額の5%前後を占めるミニ公募 債であったわけです。このぐらいの規模ですと資金調達という観点からもそれなりに意義ある 調達源であったと評価できるのですが、ここ数 年をご覧いただきますと既にもう1%すれすれ というところまで低下しております。 こうなってまいりますと、少し乱暴な言い方 になってしまいますが、兵庫県は資金調達にお いてミニ公募債を重要なツールとして考えてい るのかどうかということですが、正直に申しま してそこまでのものといえる現状にはない、こ れは純然とした事実でございます。
6,000
億円ほ どの調達のわずか1%、そして数千億円の一般 債を発行しているわけですから必ずしもこの手 法に頼らなくてもこの分を別途調達することは まったく問題がないわけでございます。地方債 の発行意義として資金調達、財源調達機能とい う重要な機能があるわけですが、調達という観 点からいきますと必ずしも重要ではない現状で ある。そうしますと何のためにこのミニ公募債 を発行しているのかということになってくるわ けです(報告資料p5
)。 6ページには、平成14
年、15
年に最初に発行 した時の兵庫県民債、のじぎく債の発行目的を まとめております。兵庫県民債の発行目的、1 つ目は県政を身近に感じてもらう、4番の施設 のPR
も含めまして鶴岡市のご報告と極めて近い 考え方でございます。2つ目の資金調達の多様 化ということで、当時は調達額の5%程度を占 めておりましたのでそれなりの意義がございま した。残念ながらここについては今日ではもう 失われているというところです。3つ目のペイ オフ対策というのはまさに平成14
年当時の世相 を表しておりますが、ペイオフ凍結が解禁され る中で預金では保護されないから債券を買って みませんか、というところです。そこから十数 年の時を経て今、平成25
年の兵庫県の県債発行 方針の中でこの県民債をどう位置付けているか ということなのですが、県民の投資機会の確保 という位置付けとなっております。兵庫県の発 行方針の1つの考え方ですが、我々は市場から6,000
億円という多額の資金を調達する団体であ るのだから、兵庫県債を買いたいとおっしゃる お客様は大事にしていきたい。買いたいとおっ しゃるのであればなるべく希望に沿った形で 買っていただきたいというふうに考えておりま す。従いまして一般債の中でも例えば弾力的な 増額発行というようなことも取り組みとして進 めておりますが、この個人向けの部分でも買い たいという方がいらっしゃる限りはなんとか発 行の継続をしていこう、これを1つのよりどこ ろというか支えとして継続をしているところで す。 一方で兵庫のじぎく債は県内の市町との共同 発行になるわけですが、こちらは様相が違って おります。発行目的の1つ目は市や町の資金調 達手法の多様化ということです。平成15
年当時 の市町の借り入れというのは主に公的資金が中 心でした。民間からの借入れと申しますと地元 のJA
、信金からの借入れになってくるわけです が、当時は財投改革が進む中で、公的資金から 民間資金へという大きな流れがございました。 そうしますと民間資金を調達するツールが乏し い市や町でさらに多様な資金調達を進めるた めにはこういった取り組みを進めていく意義が あるのではないか、これは県側からのサジェス チョンです。また2つ目として、県の信用力を 背景に県並みの調達コストで資金調達ができる ようにしよう、こういったことを合わせて市や 町へ投げかけをしたというのが始まりの経緯で す。 従いまして住民参加型という制度を活用して おりますが、のじぎく債はどちらかというと一 般債に近いイメージで発行を始めた、その差が 顕著に出ておりますのが参考欄に示していると ころで、兵庫県民債は購入対象者を県内の個人、 法人の方に限らせていただいております。それ から今は撤廃しましたが、なるべくたくさんの 人に買っていただきたいということで1人当た りの購入限度額を設けておりました。ところが のじぎく債は、一般債に近いイメージですので 最初からそのような制限は一切設けておりませ ん。こういったことで若干発行目的は違ってお ります(報告資料p6
)。 兵庫県民債・兵庫のじぎく債の成果 この取組みの成果としては、2銘柄合わせて 通算38
回に及ぶ住民参加型地方債の発行を10
年以上にわたって定期的に続けてきたということ で、これは全国の公募団体でも数少ない事例で ございます。以下発行履歴を記載しております ので、ご参照いただければと思います(報告資 料
p8
、p9
、p10
)。11
ぺージは、初回発行時の新聞記事の一部で すが、初回発行時は50
億円だったのですが午前 中で完売し、開店前から行列ができていた銀行 もあるなど、非常に好評を得たわけです。第2 回目の発行時も初日で完売になり、発行開始当 初は物珍しさというのもあって本当に好調な売 れ行きでした。新聞記事③はのじぎく債の発行 当初の紹介で、県と市町で発行することで新た な資金調達手段になろうかという紹介です(報 告資料p11
、p12
、p13
)。 もう少しのじぎく債について成果を紹介して おきますと、のじぎく債の本当に成果だとわれ われが思っているのは、兵庫県には独自にミニ 公募債を発行する神戸市を除き40
の市町がござ いますが、そのうち19
の団体がのじぎく債に参 加いただいたということです。全国でも140
ほど しかミニ公募債を発行している市町村がないわ けですから、その中で19
の団体、兵庫県の団体 が参加したというのは、定着しているかどうか は別にして非常に多くの参加を得ている、行っ た意義はあったのではないかなというふうに考 えているところです(報告資料p14
)。 直面する課題 ここからは私が調達サイドとして県民債に関 わり、なんとかしなければいけないと思ったこ とをお話させていただきます。16
ページ上段の グラフ、5年金利の推移をご覧ください。現在 の5年金利は0.2
%ほどですが、これは過去最低 レベルで最近は若干盛り返してきていますがそ れでも0.3
%ほどです。金融商品ですから利率が 下がると売れないというのは明らかです。5年 の債券ですと、5年前は金利が1.2
%や1.4
%で、 こういった状況があと1年弱ほど続くのではな いかと。しかし指をくわえて待っていても当然 売れるわけがないというところです(報告資料p16
)。17
ページのグラフは県民債・のじぎく債の実 際の表面利率で、ピンク色の線です。それに対 し青色の線が販売率でございます。平成18
年以 降の状況をご覧いただきますと、右軸と左軸で 幅が違うのできれいにピタッとはなりませんが、 波形だけを見ますとまさに金利と販売率ほぼ同 じ山谷を繰り返していることが分かります。販 売率は金利による影響を大きく受けているとい うのが1つ見て取れるわけですが、一方で平成14
年や平成15
年に発行を始めた当初の金利が高 かったかというとそういうわけではないのです ね。でも、当時は毎回完売していたわけです。 金利は今と大きく変わらず、若干上ぐらいです。 販売率が悪くなったのは、高い利率が付き始め た頃からで、最近は利率の低下とともにどんど ん下落していくという状況が続いております(報 告資料p17
)。 発行額も低下しております。発行開始当初は 1回で50
億円、多いときは100
億円の発行が続き ました。100
億円と申しますと一般債で発行する 規模と変わらないほど、まさに資金調達源とし て非常に意義のあるところだったわけです。し かし徐々に販売率が落ちていく中で発行額を切 り下げ、切り下げると一時的に販売率は回復す るけれどもやっぱり下がる。どんどん歯止めが 利かなくなって今や1回の発行額は30
億円を割 り込んでおります。年に、のじぎく債と県民債 を2、3回発行していますので、30
億円以下の 発行ということはかつて1回で発行できていた 額さえ年間かけても発行できてない、というの が実態です(報告資料p18
)。 そしてこれはのじぎく債の参加団体数の伸び 悩 み 状 況 で ご ざ い ま す。 平 成19
年 を 境 に メ ン バーが絞られてきました。平成23
年辺りからは ほぼ固定メンバーで発行している現状になって おります。ただ、半数以上の市や町に参加いた だいた経験があるという実績と、もともと市や 町の新たな資金調達ツールということで一般債 に近いイメージで発行してきたことを考えます と、参加団体数は絞られてきましたが落ち着く ころへ収束していったのかなというふうに考え ることもできるかと思います(報告資料p20
)。 ただ、参加団体数はこれ以上増えないのでは ないかなと思っております。やはり市場公募債につきましては市や町ではなじみのない様々 な事務処理がございます。借換えが前提になる とか、減債基金への引き当てが必要だというこ ともございます。こういった辺りに踏み込むの か踏み込まないのかといった選択肢もあります ので、参加する市町をこれ以上無理して増やす 必要はないだろうと思っております(報告資料
p20
)。 課題解消に向けた検討・取り組み 課題に向けた検討の前提条件としましては、 当面1年程度は1%半ばの高クーポンの商品が 満期を迎えますので、今の0.2
%や0.3
%のミニ 公募債をどのようにして買ってもらうかという のが1つの前提のポイントになってきます。そ れともう1つは、購入者は高齢者が中心である ということです。22
ページのグラフは、直近の 第27
回兵庫県民債でのアンケートから作成した もので、回答率はおよそ49
%ほどだったのです が、年齢構成を見ますと4割の方が70
代以上の 女性、男性も70
代以上が17
%ほどということで、 購入者の6割近くは70
代以上という現実がござ います。次に多い年齢は60
代ということで高齢 者と呼ばれる人たちに買い支えていただいてい るという事態があるわけでございます。そして もう1つ、本県ならではの難しい問題なのです が、本県は一般債も発行する市場公募団体であ る、ということです。こういった3つの前提条 件がある中で今後どうしていくかという検討を 進めてまいりました(報告資料p22
)。 昨年12
月には、直近の第27
回兵庫県民債に向 けた総点検を行いました。背景としましては、 前回の第26
回債の販売率が77.1
%で、平成24
年 兵庫のじぎく債の販売率が84
%ほどでしたので、 販売率が過去最低よりさらに悪化しているとい うことでした。これまでは売れ残りが出ている といっても、実際には、証券団は毎回全額売り 切ってくださるということもあり、販売率は9 割以上確保していました。しかし、ここまで販 売率が落ち込んでしまうと、何か工夫をしよう ということで総点検を行いました(報告資料p23
)。 2ページにわたって総点検の内容をご紹介致 します。24
ページは主に商品性の内容で、6つ の検討項目がございます。1つ目の検討項目は、 特典の付与です。第1回兵庫県民債を発行した 際に、人と防災未来センターという兵庫県の阪 神・淡路大震災から復興のシンボル的な施設の 整備に財源を使い、希望者は運営モニターに なっていただけるという特典を付与し、約98
名 からお申し込みをいただきました。そういった 経験もありましたので、金利が駄目なら商品で どうだろうということで、特典を考えたところ です。 2つ目は利率決定方法の変更です。兵庫県は 一般債の5年債をイールド・ダッチ方式という 入札で条件決定をしております。その5年債を 発行する時に同条件でこの県民債の条件を決定 しておりましたので、一般債と同じ利率なので す。ただ昨年の状況というのは入札が非常に加 熱しており、時にはこの一般債の5年債が国債 アンダーで入札が決着するという、地方債な のに国債より利率が低いということになってし まうわけです。さすがにそれは債券を発行する 立場からするといかがなものかということです ので、入札を行いたくないというのが正直なと ころでした。過度にタイトな条件の入札ができ てしまいますと後々セカンダリー市場などで乱 れが出るのでなるべく避けたいと思っていたの ですが、県民債の発行条件を決めるためには入 札をしなければいけないということで非常にジ レンマだったわけです。そこで、5年債の発行 事例は他団体でもたくさんあるし地方債のその 月の5年債のスプレッドは標準があるわけです から、わざわざ自分たちで発行しなくてもその スプレッドを使って決めたらいいのではと、こ ういった考え方を持ったわけです。ただそこに も悩ましい問題がありまして、ベースの金利が0.1
%台ですので、2bp
なり3bp
、そんな金利を乗 せて魅力ある水準になるかというとなりません。 一方で魅力ある水準にしようと思うとスプレッ ドをたくさん乗せないといけない、ところがわ れわれは一般債も発行しております。兵庫県内 の法人の方は県民債も一般債も両方買えるわけ ですが、一般債を買う方が、条件が良いから県 民債を買おうといって乗り換えられますと、確かに県民債の売れ行きは上がるのですが何かそ れはちょっと違うだろうと。そうすると上乗せ するスプレッドの範囲は限られてくるわけです。 金利には魅力を訴える力があるけれど、一般債 を発行しているが故に限界があるだろうと、そ ういったところも特典の付与という項目を優先 した1つの要因です。 3つ目は発行年限です。ずっと5年債で発行 してきたわけですが、一般債では年限を伸ばす ことで利回りを上げるという手法が一般的で、 われわれも有効に活用させていただきました。 しかし残念ながら、県民債は購入者の大半の方 が
70
代を超えています。そういった方に7年、10
年とお勧めしていけるかどうかという問題が ございます。そうしますと発想を逆転し、どう せ利率は低いのだから期間が短い方が喜ばれる のではないかということで、3年債の方がよい でしょうと。利率で魅力が取れないのならば、 特典を重視し年限は短い方が良いのではないか というところで、これは引き続き検討中となっ ています。 4つ目は購入金額要件の緩和です。現状は10
万円以上だったのですが、買いやすく1万円に したらどうかということで検討したのですが、 小口の件数が増え販売金融機関の負担が増える だけであまり効果がないだろうということで、 これはお蔵入りをするということになりました (報告資料p24
)。 5つ目は販売方法についてです。居住地制限 の撤廃、募集期間の延長、土日販売の実施など を検討しましたが、現実味がないだろうという 結論に至ったところです。 6つ目はPR
方法です。PR
方法につきまして は反省の最大要因なのですが、ポスター・チラ シの作成に関しては第13
回以来作っていないと いう現状です。資金調達として意味がないとい う中で手抜きをしてしまった、これを改めても う一度ねじを巻き直そうというところです。そ れから新聞広告や個人向けIR
なども考えました が、費用対効果が見込めないのではないかとい うことでこの辺りは現時点では見送りとなって います(報告資料p25
)。 こういった点を検討し、形にしたのが第27
回 兵庫県民債の取り組みです。購入者特典を付け ました。本日お配りしている資料に第27
回債の チラシを付けております。実はこのチラシは私 の手作りで、ポスターとして活用しました。県 民債ですので、県にゆかりのある施設や県産品 をプレゼントしようということで特典をつけま した。第27
回債の発行に当たって急遽思い付い たものですから予算もありませんでしたので、 この特典はすべて県庁各課各部署を回り協力を 得て無料で提供してもらったというところです。 これも継続するとなると無料ではすまないとい うところが大きな悩みで、続けるかどうか悩ま しいところです。いずれにしましてもこういっ た特典を抽選でプレゼントするということで、 アンケート葉書を付けて購入者の方に配布し応 募していただくというふうにしたところ、1,078
件の販売件数に対し533
件の公募がございまし た。アンケート結果から今後の参考になるポイ ントを3つ頂きました。1つ目は、アンケート で県民債を買われた回数は何回ですかというこ とをお聞きしましたら、初めての方が46.9
%と、 半分近い方が初めてだったのです。よくよく考 えてみると過去に買った人は1.5
%などの県民債 を持っているわけですから当然買いません。と いうことは初めての方をどんどん開拓するしか ないということにここで気付けたところです。 従いましてターゲットとなる層というのはリ ピーターではなくて、リピーターも相当数あり ますのでそれを無視できないのですが、リピー ターだけじゃなくてこの初めての人、ここが重 要なターゲット層になるということを気付いた ところです(報告資料p26
)。 それから、これは反省以外の何ものでもあり ませんが、県民債の情報をどこから仕入れまし たかという質問に対しては、金融機関というの がほとんどで、県のホームページやラジオ放送、 県の広報などからという方はほとんどなく、加 えて今回購入者特典があることを知らず、購入 時に初めて知ったという方がほとんどでござい ます。ですから、情報発信に関しましては工夫 の余地があるかと思っております。初回や第2 回の時は大きな新聞記事を付けていたのですが、 これだけ一生懸命取り組んだ第27
回債は新聞記事を付けておりません。大きな誤算だったので すが、第
27
回債を発表した日が衆議院の解散日 と重なってしまったわけです。結果として新聞 記事として取り上げていただいたのは日経新聞 の小さな記事だけでした。予測不可能なことで はありましたが、いずれにしても新聞なりで事 前に取り上げていただけたらもっと違う展開に なったのかなと今思っているところです(報告 資料p27
)。 アンケート結果の3番目は県民債の希望年限 についてですが、5年で良いという方がやはり 一番多く、3年の方が良いという方も相当いらっ しゃるということが分かりました。今後、年限 で工夫をしていくのであれば短い年限を追求し ていく余地があるのかなと思っているところで す(報告資料p28
)。 平成25
年ののじぎく債での取り組みをご紹介 します。利率決定方式に関して、先ほどご紹介 した通り従来の入札準拠で、国債より低い、あ るいは国債並みになる可能性のある利率決定の 仕方をスプレッド・プライシング方式に変更い たしました(報告資料p29
)。 このような形で色々な取組みを進めておりま すが、まだまだ途上でございます。考えること はいくつかありますが、厳しい販売環境が続く 中でこれまで10
年継続してきて、今後さらに10
年、20
年続けるための試行錯誤を繰り返し、買 いたい方がいる限り発行を続けるというわれわ れの姿勢をどう実現していくかということだと 思います。討論
前財務省理財局国債企画課長
齋藤 通雄
つい先日人事異動がありまして、今は金融庁 で総務企画局の市場課長をしております齋藤と 申します。異動の前までは財務省理財局の国債 企画課長として国債の仕事をしておりました。 今日はミニ公募債のお話ということですので、 国債で類似した商品である個人向け国債の観点 から、地方自治体における取り組みについてコ メントをさせていただければと思っております。 最初に個人向け国債の商品性や販売状況につ いてご紹介をさせていただきます。資料1ペー ジ目、個人向け国債の商品性でございますが、10
年、5年、3年と3種類出しております。金 利の設定の仕方は、10
年は変動金利ということ で半年ごとに応じて見直すタイプ。5年と3年 は固定金利ということで発行時に金利が決まり ます。いずれもマーケットでの国債利回りを基 準金利とし、その市場金利に連動する形で金利 が決まるような商品設計になっているというこ とです。購入については1万円から1万円単位 ということで、小口でも買える商品設計です。 購入額について上限はありません。そういう意 味ではお金持ちの方の購入で、私どもで把握し ている限りではお1人で100
億円の個人向け国債 をお持ちの方もいると、そんな状況であります。 個人向け国債の販売状況については、残念な がら低迷しているというのが実情でございます。 資料2ページのグラフですが、上の折れ線グラフが金利、下から伸びている棒グラフが販売額 を示しています。ピンクや青やオレンジに色分 けされていますが、これは先ほど申し上げた
10
年や5年や3年の種類に対応しているというこ とです。見ていただくとお分かりのように、折 れ線が割と上の方に伸びていくのに応じて販売 額が伸びたのですが、金利の折れ線グラフが右 肩下がりで下がっていくのに応じて販売額も低 下しているというのが現状であります。 平成23
年辺りから少し盛り返している感じが お分かりいただけるかと思いますが、これには 2つの理由があります。1つ目は、変動10
年に ついて金利の設定ルールを見直した結果、変動10
年の金利の水準がジャンプして、少し高い金 利を付けられるようになったという要因です。 2つ目は、平成23
年に東日本大震災がございま した。国として復興支援をするということで、 個人向け国債の資金使途を復興に充てるという ことで復興のための国債というふうに位置付け を変えて平成23
年の終わりぐらいから平成24
年 度にかけて出していました。復興への支援とい うことでPR
の形を変えたことも相まって、販売 額が一時伸びたということです。残念ながらそ の復興支援もやや一巡感が出てしまったという ことと、せっかく金利設定方法の見直しを行っ たのですが市場金利がさらに下がる中で金利水 準が下がり、販売がまた下がってきてしまって いるというのが最近の状況です。 資料3ページですが、こちらの方はどういっ た年齢層の方が個人向け国債を買われているか ということです。先ほど兵庫県のお話にもあり ましたが、個人向け国債も割と似たようなとこ ろがあって、60
代以上の方々の購入が多いとい うことです。10
年、5年、3年と3種類ありま すが、お年を召された方ほど年限が短いものを お買い求めになる傾向はあるのかなという感じ が致します。山の形を見ていただくと10
年、5 年、3年と年限が短くなるほど山が右の方に寄っ てくる、年齢層が高いところに山のピークが来 ているというのがお分かりいただけるかと思い ます。ただ、お1人当たりの購入額で見ると年 齢が高いほど購入額が多いというのが下のグラ フです。これは10
年であれ5年であれ3年であ れ同じような傾向が割と見られているというこ とです。そういう意味では先ほどの兵庫県のお 話と共通するような悩みというのは、私ども国 債の発行部署も抱えています。すなわち、金利 が低下する中で個人向け国債の販売が低迷する という状況下での課題です。 そもそも我々が個人向け国債を販売している 理由なのですが、皆さまご存知の通り日本の国 債は圧倒的に多くの部分を国内金融機関が保有 しております。その国債を管理している立場か ら申しますと、保有者が特定の投資家に偏って いるというのは、ある種のリスクを抱えている というふうに考えられます。すなわち同じよう なタイプの投資家が保有するということは、投 資判断が割と共通した方向に行きやすい、すな わち買う時には皆が一斉に買う、売る時には皆 が一斉に売るということで一定方向に流れやす い。これは要するにマーケットの金利が上がっ たり下がったりというのが一定方向に行きやす いということで、マーケットがボラタイルにな りやすいというリスクを抱えています。そうい う意味で私どもとして国債の保有者層を多様化 してそうした金融機関とは別の観点で国債を 持ってくださるような投資家を増やしたいと 思っているということです。国内金融機関とは 違う視点を持っている投資家の1つが個人投資 家、もう1つが海外の投資家で、この2つのタ イプの投資家の保有割合が残念ながら非常に低 いため、ここを増やしたいということで力を入 れているわけです。残念ながらなかなか思うよ うにはいっておりません。 先ほどの兵庫県のお話をお聞きになられてい て皆さんもお分かりかと思うのですが、国債あ るいは地方債といえども金融商品ですので、や はり購入した時のリターンが販売額の増減の要 因としては一番大きいわけですね。そういう意 味では金利が下がってくるとどうしても販売が 落ちてしまうというのは仕方がない面もあるの ですが、そこでわれわれ発行体として、国であ れ地方公共団体であれ同じく考えなければいけ ないことは、個人に国債や地方債を持ってもら う目的や意義は何なのか、政策目的や意義を達 成するためにどれぐらいコストを上乗せしてもいいと考えるのか、そういった点をきちんと突 き詰めて考えないといけないのではないかとい うことです。 単純に資金調達という観点だけから考えれば、 当然資金調達コストは低い方がいいわけですか ら個人にコストをかけて販売するよりも、他に 安い資金調達手段があればそちらを選択すると いうのは、コストの観点だけであれば妥当な判 断ということになるわけですが、それ以外にど ういう政策的な意義、目的が説明できるのかと いうところなのだろうと思います。そういう意 味では先ほどの鶴岡市のケースは非常に面白い とお話を伺っていて思いました。水族館の資金 を皆で出し合いましょうということで、住民に 対してアピールする力を非常に持っている取組 みだという感じがしたわけであります。 地方の公募債について参画意識を高めるとい うことが言われると思いますが、資金使途が不 特定な中で購入してもらい、どれだけ参加意識 を持てるのかというのは非常に難しいのではな いかと思うのですね。それはまさに国債の場合 に日本の国債を持ったからといって日本の政治 に参加しているという意識がどれだけ持てるか というと非常に難しいと思うのです。ただ、先 ほど申し上げたように、復興にご協力ください という形で資金の使途をある程度特定すると、 自分も関与しているのだという意識をより持ち やすくなる、そういう意味では地方債において も使途をある程度特定化するようなことが参加 意識を高めるという意味では重要なのかなとい う感じが致します。 ただその場合に、そうした特定の事業、アピー ル力のある事業が継続して出てくるかどうかと いうところが非常に大きな問題になってきて、 われわれの復興債もそうでしたが、一巡感が出 てしまうとあとが続かないというようなことが あると思うのです。そういう意味では、その後 も続けていくためにはコストをかけていかざる を得ない状況となり、そのためには発行の目的 や意義を整理しておくことが重要ではないかと 改めて感じた次第であります。 その上でお二方にご質問をさせていただきた いことが3点あります。1点目は、コストをか けてでも公募債を販売していくということにつ いて、自治体の中で議論がされているのかいな いのかということ。2点目は、鶴岡市のように 特定の事業目的のための資金調達ですと、1回 目は完売されたということなのですが目標額に 達しなかった場合にどのようにされるのかなと いうこと。3点目は、住民参加型市場公募地方 債の中途換金についてどういうような商品設計 をされているのかという辺りを教えていただけ ればと思います。実は個人向け国債の場合は中 途換金を希望するお客様がいた場合に、元本割 れしない形で中途換金に応じるという仕組みを 取っています。だからこそ商品設計では市場の 金利よりも利率を少し低くするような設定にし てあるのですが、もしこの中途換金を希望する 場合に、元本割れしない商品設計がうまく出来 れば、先ほどのお話にあったよりも長い年限の ものを出して、それをお買い求めいただくとい うことが地方債においても可能になっていくの かと思います。 長い年限のものを出すということになると、 調達サイドでは安定的な資金調達が可能となる というメリットがありますし、長い年限に応じ て高い利率を設定できるという面から投資家サ イドでも魅力が出てきますから、長い年限のも のを販売しやすくするという意味では中途換金 の設計が1つキーになってくるかなと思います ので、将来どうするのかということではなく、 今発行されているものについて中途換金がどの ような設計になっているのかという辺りについ て教えていただければと思います。